JP2004099554A - アルキレングリコール及びジアルキルカーボネートの併産方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】副生物が少なく、効率よく、経済的に、かつ連続的にアルキレングリコール及びジアルキルカーボネートを併産し得る方法を提供する。
【解決手段】アルカリ化合物及び4級ホスホニウム塩からなる触媒並びに水の存在下に酸化アルキレンと炭酸ガスとを反応させる付加反応工程、該工程の生成液の少なくとも一部から、アルキレンカーボネート、アルキレングリコール及び触媒を残留させつつ酸化アルキレン及び水を除去して得られたエステル交換反応原料液にアルカノールを加え、エステル交換反応させるエステル交換工程、及び、該工程の生成物流から導かれたアルキレンカーボネート及びアルキレングリコールを含有する流出液を加水分解する加水分解工程、を含むアルキレングリコール及びジアルキルカーボネートの併産方法。
【選択図】 図1
【解決手段】アルカリ化合物及び4級ホスホニウム塩からなる触媒並びに水の存在下に酸化アルキレンと炭酸ガスとを反応させる付加反応工程、該工程の生成液の少なくとも一部から、アルキレンカーボネート、アルキレングリコール及び触媒を残留させつつ酸化アルキレン及び水を除去して得られたエステル交換反応原料液にアルカノールを加え、エステル交換反応させるエステル交換工程、及び、該工程の生成物流から導かれたアルキレンカーボネート及びアルキレングリコールを含有する流出液を加水分解する加水分解工程、を含むアルキレングリコール及びジアルキルカーボネートの併産方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルキレングリコール及びジアルキルカーボネートの併産方法に関する。詳しくは本発明は、酸化アルキレン及び炭酸ガスからアルキレングリコール及びジアルキルカーボネートを効率よく連続的に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
触媒の存在下に酸化アルキレンを炭酸ガスと付加反応させてアルキレンカーボネートを生成させることは公知である。また、アルキレンカーボネートをアルコールとエステル交換反応させてジアルキルカーボネートを得ることも公知である。さらにこれら二つの反応を結合して、先ず酸化アルキレンを炭酸ガスと反応させてアルキレンカーボネートを生成させ、次いでアルキレンカーボネートをアルコールとエステル交換反応させてジアルキルカーボネートを得ることも知られている。
【0003】
特開昭54−48715号公報には、グリコールカーボネートとアルコールとを高温においてアルカリ金属化合物の存在下に反応させてジアルキルカーボネートを製造することが記載されている。
特開昭56−10144号公報には、アルキレンカーボネートとアルコールとを第4ホスホニウム塩を触媒として反応させてジアルキルカーボネートを製造する方法が記載されている。
【0004】
特開平5−97774号公報には、第1工程においてはアルキレンオキシドを、反応媒質として予め製造されたアルキレンカーボネート中で、二酸化炭素と反応させてアルキレンカーボネートを生成させ、第2工程においてはアルキレンカーボネートを脂肪族モノヒドロキシ化合物とエステル交換させてジアルキルカーボネートを生成させ、これら第1工程及び第2工程を共に、周期表の第3周期第IIa族等に属する金属の陽イオンと無機または有機の酸の陰イオンとからなる塩:Aa−Xb、並びに、アルカリ金属、アルカリ土類金属の陽イオンまたは4級アンモニウム、4級ホスホニウム等のオニウムの陽イオンとハロゲンイオンとからなる塩:BcYd、からなる二官能性触媒:[Aa−Xb]m・[BcYd]n、の存在下に行うジアルキルカーボネートの製造方法、が記載されている。
【0005】
他方、アルキレンカーボネートを加水分解してアルキレングリコールを得ることも知られており、これを先の反応と結合させて、先ず酸化アルキレンを炭酸ガスと反応させてアルキレンカーボネートを生成させ、次いで得られるアルキレンカーボネートを加水分解してアルキレングリコールを得ることも知られている。
特開2001−199913号公報には、(イ)エチレンオキサイドと二酸化炭素とを反応させてエチレンカーボネートを含む反応液を生成させ、これを水と反応させて加水分解してエチレングリコールを含む水溶液を生成させ、これからエチレングリコールを精製、取得するエチレングリコールの製造工程と、(ロ)エチレンカーボネートと水酸基含有化合物とをエステル交換させて対応する炭酸エステルとエチレングリコールとを生成させ、この生成液から炭酸エステルを分離する炭酸エステルの製造工程とを、(ハ)上記エチレンカーボネートを含む反応液の少なくとも一部及び上記の炭酸エステル分離後の残液を受け入れて、蒸留によりエチレンカーボネートを分離して工程(ロ)のエステル交換段階へ供給するとともに、残液を工程(イ)の加水分解段階へ供給するエチレンカーボネート精製工程を介して複合化することを内容とするエチレングリコールと炭酸エステルの併産方法が記載されている(特許文献1参照)。
【0006】
上記特開2001−199913号公報には、酸化アルキレンと炭酸ガスとの反応に用いる触媒としては、ホスホニウム塩が好ましく、助触媒としてはアルカリ金属炭酸塩を使用するのが好ましいと記載されている。他方、エチレンカーボネートのエステル交換反応の触媒としては、トリエチルアミン等のアミン類、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属化合物等の均一系触媒や、変性イオン交換樹脂、珪酸塩を含浸した無定型シリカ類、アンモニウム交換Y型ゼオライト、コバルトとニッケルとの混合酸化物等の不均一系触媒などが例示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−199913号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開2001−199913号公報に記載の方法では、酸化アルキレンと炭酸ガスとの反応生成液から蒸留によりエチレンカーボネートを分離してそれをエステル交換反応に用いている。即ち、酸化アルキレンと炭酸ガスとの反応の触媒等を含有しない精製されたエチレンカーボネートをエステル交換反応に供しており、また、エステル交換の触媒としては、酸化アルキレンと炭酸ガスとの付加反応のときの触媒とは異なる触媒が新たに使用されている。
【0009】
従って特開2001−199913号公報に記載の方法は、エチレングリコールと炭酸エステルとを効率的に併産する方法として大きな利点を有する一方で、エチレングリコールの製造工程と炭酸エステルの製造工程とが、エチレンカーボネートの精製工程によっていわば隔離され、二つの独立した製造工程として構成されていることに基づく複雑さ及び経済的な不十分さとを有していた。
【0010】
従って本発明の課題は、酸化アルキレン及び炭酸ガス並びにアルコールから、副生物が少なく、効率よく、経済的に、かつ連続的に、アルキレングリコール及びジアルキルカーボネートを併産することのできる方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、水の存在下に酸化アルキレンと炭酸ガスとを反応させてアルキレンカーボネート及びアルキレングリコールを生成させる付加反応工程において特定の二元系触媒を使用し、反応生成液から酸化アルキレン及び水を除去することによって得られた付加反応生成物及び触媒を含有する反応生成液は、そのままエステル交換反応に供し得ること、さらにこのエステル交換反応においては、副生物が少なく、効率よくジアルキルカーボネートを連続的に製造し得ることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明の要旨は、少なくとも下記の工程(a)〜(c):
(a)アルカリ化合物及び4級ホスホニウム塩からなる触媒並びに水の存在下に酸化アルキレンと炭酸ガスとを反応させてアルキレンカーボネート及びアルキレングリコールを生成させる付加反応工程、
(b)付加反応工程の生成液の少なくとも一部から、アルキレンカーボネート、アルキレングリコール及び上記触媒を残留させつつ、酸化アルキレン及び水を除去して得られたエステル交換反応原料液にアルカノールを加え、エステル交換反応させてジアルキルカーボネートを生成させるエステル交換工程、及び
(c) エステル交換工程の生成物流から導かれたアルキレンカーボネート及びアルキレングリコールを含有する流出液を加水分解してアルキレンカーボネートからアルキレングリコールを生成させる加水分解工程、
を含むことを特徴とするアルキレングリコール及びジアルキルカーボネートの併産方法、に存する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明方法は、少なくとも(a)アルキレンカーボネート及びアルキレングリコールを生成させる付加反応工程、(b)ジアルキルカーボネートを生成させるエステル交換工程、及び(c)アルキレングリコールを生成させる加水分解工程、の各工程を含んでいる。
【0014】
[付加反応工程]
付加反応工程においては、アルカリ化合物及び4級ホスホニウム塩からなる触媒並びに水の存在下に酸化アルキレンと炭酸ガスとを反応させてアルキレンカーボネート及びアルキレングリコールを生成させる。
(酸化アルキレン)
原料の酸化アルキレンとしては、通常、炭素数2〜5のオレフィン性不飽和化合物の酸化物が使用される。具体的には、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、酸化ペンチレンなどが挙げられる。これらのなかで酸化エチレンおよび酸化プロピレンが好ましい。
【0015】
(水)
酸化アルキレンと炭酸ガスとの付加反応は、水の存在下で実施される。水の量は、酸化アルキレンに対し、モル比で通常0.1〜10倍、好ましくは0.5〜5倍とする。
上記付加反応を水の存在下に行うと、水が存在しない系と比較して反応速度を向上させることができる。ただし、水によりアルキレンカーボネートの一部が加水分解され、酸化アルキレンの一部が水和されて、アルキレングリコールが生成する。
【0016】
(触媒)
酸化アルキレンと炭酸ガスとの付加反応に使用される触媒は、アルカリ化合物と4級ホスホニウム塩とを混合した二元系触媒である。
ここで、触媒成分の一つである上記アルカリ化合物とは、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物を意味する。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩、リン酸塩等の塩、及び水酸化物等が挙げられる。なかでも炭酸塩が好ましい。
【0017】
アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。中でも炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムが好ましい。
次に、触媒成分の他の一つである4級ホスホニウム塩としては、例えば下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0018】
【化1】
[PR1R2R3R4]+X− (1)
(式中、Pはリン原子を表し、R1、R2、R3及びR4はそれぞれアルキル基又はアリール基を表し、相互に異なっていてもよい。また、Xはハロゲン原子を表す。)
上記アルキル基とは、炭素数1〜10の飽和又は不飽和の、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基であり、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル等が挙げられる。
【0019】
上記アリール基とは、置換されていてもよい炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であり、具体的には、フェニル、トリル、ナフチル等が挙げられる。中でもフェニル基が好ましい。
また、ハロゲン原子としては、具体的には、ヨウ素原子、臭素原子、及び塩素原子が挙げられる。中でもヨウ素原子または臭素原子が好ましい。
【0020】
上記4級ホスホニウム塩の具体例としては、トリプロピルメチルホスホニウムヨージド、トリプロピルエチルホスホニウムクロリド、テトラプロピルホスホニウムブロミド、トリプロピルブチルホスホニウムヨージド、トリプロピルオクチルホスホニウムヨージド、トリプロピルシクロヘキシルホスホニウムクロリド、トリプロピルフェニルホスホニウムブロミド、トリブチルメチルホスホニウムヨージド、トリブチルメチルホスホニウムブロミド、トリブチルエチルホスホニウムブロミド、トリブチルプロピルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムヨージド、トリブチルアミルホスホニウムブロミド、トリブチルヘキシルホスホニウムクロリド、トリブチルオクチルホスホニウムヨージド、トリブチルデシルホスホニウムブロミド、トリブチルセチルホスホニウムヨージド、トリブチルベンジルホスホニウムクロリド、トリブチルアリルホスホニウムクロリド、トリブチルシクロヘキシルホスホニウムブロミド、トリアミルメチルホスホニウムブロミド、トリヘプチルブチルホスホニウムクロリド、トリヘキシルメチルホスホニウムヨージド、トリヘキシルブチルホスホニウムブロミド、トリヘキシルオクチルホスホニウムクロリド、トリオクチルメチルホスホニウムヨージド、トリオクチルメチルホスホニウムブロミド、トリオクチルエチルホスホニウムブロミド、トリオクチルプロピルホスホニウムクロリド、トリオクチルブチルホスホニウムヨージド、トリオクチルアミルホスホニウムブロミド、テトラオクチルホスホニウムクロリド、トリオクチルセチルホスホニウムヨージド、トリオクチルベンジルホスホニウムクロリド、トリフェニルメチルホスホニウムヨージド、トリフェニルプロピルホスホニウムブロミド、トリフェニルブチルホスホニウムヨージド、トリフェニルヘプチルホスホニウムブロミド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロリド、トリトリルメチルホスホニウムヨージド、トリキシリルベンジルホスホニウムブロミド、トリベンジルエチルホスホニウムクロリド、トリシクロヘキシルメチルホスホニウムヨージド、トリシクロペンチルイソブチルホスホニウムクロリド、ジメチルエチルフェニルホスホニウムヨージド、ジブチルメチルフェニルホスホニウムヨージドなどが挙げられる。
【0021】
これらの中で、トリブチルメチルホスホニウムブロミド、トリブチルメチルホスホニウムヨージド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムヨージド等が好ましい。
上記二元系の触媒の添加量は、酸化アルキレンと炭酸ガスとを反応させる付加反応工程の反応液に対して、アルカリ化合物が、通常0.001〜1重量%、好ましくは0.01〜1重量%、より好ましくは0.05〜1重量%、4級ホスホニウム塩が、通常0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜7重量%、より好ましくは1〜5重量%である。
上記二元系触媒中のアルカリ化合物と4級ホスホニウム塩との比率は、重量比で通常、1:5〜1:1000、好ましくは1:10〜1:100である。
【0022】
(反応条件)
付加反応工程での反応器の形式は特に限定されるものではないが、底部から酸化アルキレン、炭酸ガス、水及び触媒を供給し、頂部から生成するアルキレンカーボネートを含む反応生成液と未反応の炭酸ガスとを流出させる気泡塔型反応器を用いるのが好ましい。
【0023】
上記反応の反応温度は通常70〜200℃、好ましくは100〜170℃であり、圧力は通常500〜5000kPa(ゲージ圧)、好ましくは1000〜3000kPa(ゲージ圧)である。また、酸化アルキレンに対する炭酸ガスの供給量(モル比)は、通常0.1〜5、好ましくは0.5〜3である。
上記反応は発熱反応なので、反応液の一部を外部へ抜き出し、熱交換器により冷却して系内に返送する外部循環冷却方式で反応温度を制御するのが好ましい。
上記した方法により、反応生成液が得られる。反応生成物は、主としてアルキレングリコール及びアルキレンカーボネートであり、条件によっては微量のジアルキレングリコール等が副生成する。
【0024】
(アルキレンカーボネート)
生成するアルキレンカーボネートのアルキレン基は、原料の酸化アルキレンのそれに対応している。アルキレンカーボネートの具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ペンチレンカーボネート等が挙げられる。これらのなかで、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートが好ましい。
上記付加反応工程の生成液の少なくとも一部はエステル交換工程に供給される。該生成液の全部をエステル交換工程に供給してもよいが、目的生成物のバランス上の必要性からアルキレングリコールの生成比率を高める必要がある場合には、付加反応工程の生成液の一部を加水分解工程に供給することもできる。
【0025】
[エステル交換工程]
エステル交換工程に供給された付加反応工程の生成液からは、アルキレンカーボネート、アルキレングリコール及び触媒を残留させつつ、酸化アルキレン及び水が除去されて、エステル交換反応原料液が得られる。酸化アルキレン及び水の除去の方法は特に限定されないが、通常、蒸留が行われる。酸化アルキレンを除去するための独立の工程を設けてもよいが、通常、水除去の工程において酸化アルキレンも炭酸ガスも除去することができる。これら除去された水、酸化アルキレン、炭酸ガス等は上記付加反応工程の反応系に循環させて再使用することができる。なお、酸化アルキレン及び水の除去処理に際しては、アルキレンカーボネート、アルキレングリコール及び触媒が生成液中に実質的に残留するようにしなければならず、かくして得られたアルキレンカーボネート、アルキレングリコール及び触媒を含有する生成液がエステル交換反応原料液となる。
【0026】
酸化アルキレン及び水の除去工程の好ましい態様としては、蒸留塔を用い、通常5〜30kPa、好ましくは10〜20kPa、の減圧条件で運転し、水及び酸化アルキレンを留出させ、アルキレンカーボネート、アルキレングリコール及び触媒を含有する混合物を缶出させる。操作圧力が高過ぎると塔底温度が上昇して触媒の分解を招き、逆に圧力が低過ぎるとコンデンサーの凝縮温度が低くなり過ぎるので適度の操作圧力を選択する。
【0027】
缶出した混合物中のアルキレングリコールの含有量は、通常5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは10〜20重量%とするのが、アルキレングリコールとジアルキルカーボネートの両方を効率よく生産する上で好ましい。
この缶出混合物をエステル交換反応原料液として、これにアルカノールを加え、アルキレンカーボネートとエステル交換反応させて、ジアルキルカーボネートとアルキレングリコールとを生成させる。
【0028】
(アルカノール)
原料のアルカノールは、通常、炭素数1〜5の脂肪族基に水酸基が結合したものであり、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール等が挙げられる。これらの中でメタノール及びエタノールが好ましい。
【0029】
(ジアルキルカーボネート)
生成するジアルキルカーボネートのアルキル基は、原料のアルカノールのそれに対応している。ジアルキルカーボネートの具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、ジ−i−ブチルカーボネート、ジ−n−ペンチルカーボネートおよびジ−i−ペンチルカーボネート等が挙げられる。
【0030】
(アルキレングリコール)
生成するアルキレングリコールのアルキレン基は、原料であるアルキレンカーボネートのそれに対応している。アルキレングリコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコールなどが挙げられる。
【0031】
(反応系の構成)
アルキレンカーボネートとアルカノールとをエステル交換反応させて、ジアルキルカーボネ一トを製造する反応は、1モルのアルキレンカーボネートと2モルのアルカノールから1モルのジアルキルカーボネートと1モルのアルキレングリコールが生成する反応である。この反応は1モルのアルカノールがエステル交換された中間体の生成を伴う2段階反応として進行する。
【0032】
エステル交換反応は平衡反応であり、第1段目の反応は無触媒でもある程度は進行するが、さらに第2段目の反応を進行させてジアルキルカーボネートを得るためには適当な触媒を使用する必要がある。
本発明方法においては、エステル交換反応の触媒として、基本的には酸化アルキレンと炭酸ガスとを反応させる付加反応と同じアルカリ化合物と4級ホスホニウム塩とからなる二元系触媒を使用する。該触媒の存在量は、エステル交換反応原料液中に、通常、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上であり、また、通常、15重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
【0033】
ただし、エステル交換工程において、改めて同一又は異なった触媒を追加的に供給してもよい。また、エステル交換反応原料液をエステル交換反応用の固体触媒と接触させてもよい。
ところで、上記エステル交換反応原料液中には、アルキレンカーボネート及びアルキレングリコールが存在するが、アルキレングリコールはエステル交換反応の生成物に相当するので、平衡反応系中に存在すると反応を原系に戻す働きをする。従って、反応論のみを考えるならば、エステル交換反応に供する前にアルキレングリコールをできるだけ除去するのが好ましいと考えるのが一般的であろう。しかしながら、上記のアルカリ化合物と4級ホスホニウム塩とからなる二元系のエステル交換反応用触媒は、アルキレングリコールを徹底的に除去したエステル交換反応原料液に対して溶解性が極めて小さく、種々のトラブルを生じる恐れがある。
【0034】
これに対し、本発明においては、エステル交換反応原料液中に意識的にアルキレングリコールを存在させることにより、エステル交換反応時の触媒の析出、それに伴う閉塞や付着等のトラブルを防止することができるのである。
【0035】
(反応条件)
エステル交換反応において、反応物質であるアルキレンカーボネートとアルカノールとのモル比は特に限定されない。アルカノールの比率を上げるとアルキレンカーボネートの転化率を上げることができる。一方、アルキレンカーボネートの比率を上げてもアルカノールの転化率は上がりにくいので、アルキレンカーボネートに対するアルカノールの比率は、通常1〜20、好ましくは2〜10、の範囲とするのが適当である。
【0036】
反応温度は、原料物質の種類、原料組成、触媒の種類等により異なるが、通常40℃以上、好ましくは80℃以上、また、通常180℃以下、好ましくは160℃以下、より好ましくは100℃以下とする。反応温度が低すぎると反応速度が低下し、逆に高すぎると触媒の分解や副生物の生成が促進される傾向がある。エステル交換反応は液相反応なので、反応圧力は低沸点の原料が気化しない範囲に設定する。たとえば原料アルカノールにメタノールを使用する場合、メタノールの沸点が50℃になるのは約56kPa、160℃になるのは約1750kPaなので、温度に応じた沸点以上の圧力に設定する必要がある。
【0037】
エステル交換反応に用いる反応器の形式はとくに限定されるものではないが、プラグ流反応器や攪拌槽型反応器を使用するのが経済的である。
エステル交換反応後の反応液中には、アルキレンカーボネート、アルキレングリコール、ジアルキルカーボネート、アルカノール及び触媒が含まれている。後処理の過程での不純物の生成を避けるために、この混合物から触媒を除去する。触媒は他の成分に比べて極めて高沸点であるのに対し、エステル交換反応の原料であるアルカノールと生成物であるジアルキルカーボネートとは一般に低沸点なので、触媒分離工程では単純なフラッシュ分離でアルカノール、ジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート及びアルキレングリコールからなる留出ベーパーと、触媒、アルキレンカーボネート及びアルキレングリコールからなる缶出液とに分けることができる。
【0038】
こうして得られた留出ベーパーから、蒸留等の通常の手段でアルカノールとジアルキルカーボネートとを分離し、アルカノールはエステル交換工程にリサイクルし、ジアルキルカーボネートは製品として取り出す。
【0039】
[加水分解工程]
(供給液)
上記エステル交換工程における触媒分離で得られた触媒、アルキレンカーボネート及びアルキレングリコールを含有する缶出液、並びに、留出ベーパーからアルカノール及びジアルキルカーボネートを分離した後に残ったアルキレンカーボネート及びアルキレングリコールを含有する残留液、等のエステル交換工程の生成物流から導かれたアルキレンカーボネート及びアルキレングリコールを含有する流出液を加水分解工程に供給し、アルキレンカーボネートを加水分解してアルキレングリコールを生成させる。また、目的生成物のバランス上の必要性からアルキレングリコールの生成比率を高める必要がある場合には、付加反応工程の生成液の一部をも加水分解工程に供給して、加水分解に供することもできる。
【0040】
(反応条件)
加水分解反応は高温で行う方が反応速度の点で有利であるが、あまり温度が高いと触媒の分解やアルキレングリコールの品質の悪化(着色等)を引き起こす傾向がある。反応温度は、通常100〜180℃とする。圧力は、加水分解の促進の観点からは、低い方が生成する炭酸ガスが抜けやすくなり有利であるが、反応液の飽和蒸気圧と比べてあまりに低い場合は、水やアルキレングリコールが気化してしまって反応が遅くなったり、製品の損失を招く可能性がある。圧力は、通常は常圧〜2000kPaの範囲で反応液が沸騰しないように選定するとよい。また、水の量は、加水分解工程入口においてアルキレンカーボネートに対し水が等モル以上、好ましくは2〜5倍モルとする。
【0041】
加水分解後の反応液にはアルキレングリコール、水及び触媒が含有されている。加水分解後の反応液は蒸留等の通常の操作を組み合わせて脱水し、触媒と微量不純物を除去して、アルキレングリコールを製品として取り出す。分離した触媒は付加反応工程にリサイクルすることができる。
【0042】
【実施例】
次に本発明の具体的態様を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
図1に概略を示す製造工程に従って、酸化エチレン及び炭酸ガスからジメチルカーボネート及びエチレングリコールを併産した。
【0043】
(1)付加反応工程
図1において、1は付加反応器であり、L1は酸化エチレンの供給ライン、L2は炭酸ガスの供給ライン、L3は触媒の供給ライン、L4は付加反応器の生成液の抜き出しライン、L5は後述の脱水塔の留出ラインである。付加反応器1の詳細を図2に示す。
【0044】
図2において、気泡塔型の第1段反応器に、ラインL101(=L1)から水47重量部/hrを含む酸化エチレン65重量部/hrを、ラインL102(=L2)から炭酸ガス140重量部/hrを、またラインL103(=L3)からテトラブチルホスホニウムヨージド9.3重量部/hr及び炭酸カリウム0.373重量部/hrをエチレングリコール16.5重量部/hrに溶解した触媒液を、それぞれ連続的にフィードし、温度110℃で、酸化エチレンの転化率86%まで反応させた。
【0045】
第1段反応器の出口から得られた反応液を、多管型の第2段反応器にフィードし、温度110℃、圧力1960kPaで、酸化エチレンの転化率99.9%まで反応させた。
第1段反応器の出口液をL105(=L4)から分岐してジメチルカーボネート原料液とした。なお、第2段反応器の出口液(ラインL104(=L17))は加水分解工程に供給してエチレングリコール原料とするが、本実施例ではラインL104からは抜き出さず、全量をラインL105から抜き出した。
【0046】
(2)脱水工程
図1において、ラインL4から抜き出した反応液を理論段数9段(コンデンサー、リボイラーは含まない。以下同じ)の脱水塔2の4段目に連続的にフィードしながら圧力13kPa、還流比0.04で蒸留操作を行った。塔頂コンデンサーは30℃で分縮し、ベーパーとして炭酸ガスと酸化エチレン、凝縮液として水を抜き出した。これらは付加反応工程において再使用される。脱水塔2の缶出液の組成はエチレンカーボネート76重量%、エチレングリコール16.1重量%、テトラブチルホスホニウムヨージド7重量%、炭酸カリウム0.3重量%で、他にジエチレングリコールを0.5重量%含んでいた。
【0047】
(3)エステル交換工程
脱水塔2からラインL6を経て抜き出した缶出液を攪拌槽式のエステル交換反応器3に連続的にフィードした。また、ラインL7からはメタノールを、脱水塔2の缶出液中のエチレンカーボネートに対するメタノールの流量が2倍モルとなるように、フィードした。
【0048】
エステル交換反応器3は断熱反応器とした。脱水塔2の缶出液の温度が158℃であり、メタノールが63℃だったので、反応温度は106℃となった。この温度は大気圧下でのメタノールの沸点を超えているので、反応器圧力は300kPaの加圧とした。
ラインL8から抜き出した反応液の組成はエチレンカーボネート36.4重量%、エチレングリコール17.0重量%、ジエチレングリコール0.3重量%、メタノール26.5重量%、ジメチルカーボネート15.2重量%、ヒドロキシエチルメチルカーボネート0.2重量%、テトラブチルホスホニウムヨージド4.3重量%、炭酸カリウム0.2重量%であった。
【0049】
(4)フラッシュ分離工程
エステル交換反応器の反応液をラインL8からフラッシュドラム4に導き、圧力120kPaで気液分離した。この操作でエステル交換の反応液に含まれるメタノールの98%、ジメチルカーボネートの96.1%がベーパーとしてラインL9から取り出された。また、触媒のテトラブチルホスホニウムヨージド及び炭酸カリウムは全量が缶出液としてラインL10から取り出された。エチレンカーボネート、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ヒドロキシエチルメチルカーボネートのベーパーへの分配率はそれぞれ12.6%、40.1%、8.0%、0.5%であった。
【0050】
(5)メタノール回収工程
フラッシュドラムで分離し、ラインL9から取り出されたベーパーは理論段数19段のメタノール分離塔5の9段目に連続的にフィードした。メタノールとジメチルカーボネートとは共沸し、通常の蒸留では分離できない。そこで第1段目にエチレンカーボネートをフィードして、抽出蒸留によりメタノールを塔頂から分離した。抽出溶媒のエチレンカーボネートとしては共沸蒸留塔7の缶出液(ラインL16)を使用した。
メタノール分離塔5の蒸留操作は101kPaの圧力下、還流比1で行った。留出液中のメタノール組成は86.2重量%で、13.4重量%のジメチルカーボネートと、微量のエチレンカーボネートおよびエチレングリコールを含んでいた。この留出液はラインL11よりエステル交換工程にリサイクルした。
【0051】
(6)ジメチルカーボネート分離工程
ラインL12から抜き出したメタノール分離塔5の缶出液を、理論段数19段のジメチルカーボネート分離塔6の14段目に連続的にフィードした。蒸留操作は12kPaの圧力下、還流比0.7で行った。塔頂留出液(ラインL13)としてジメチルカーボネートが18.0重量部/hr得られた。この中にはメタノール及びエチレングリコール(いずれも10重量ppm未満)が含まれていた。
【0052】
(7)エチレングリコール分離工程
ラインL14から抜き出したジメチルカーボネート分離塔6の缶出液を理論段数18段の共沸蒸留塔7の9段目に連続的にフィードした。フィード液にはエチレングリコールとエチレンカーボネートが含まれている。これらは共沸するため、塔頂留出液としてエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物、缶出液としてエチレンカーボネートが得られる。
【0053】
共沸蒸留塔7の蒸留操作は6kPaの圧力下、還流比1で行った。ラインL15から得られた留出液組成はエチレングリコールが77.4重量%、エチレンカーボネートが22.6重量%で、ジエチレングリコールが240重量ppm含まれていた。また、ラインL16から得られた缶出液組成はエチレンカーボネート98.4重量%、エチレングリコール1重量%、ジエチレングリコール0.5重量%であった。
【0054】
(8)加水分解工程
ラインL10からのフラッシュドラム缶出液とラインL15からの共沸蒸留塔留出液とを、加水分解反応器8にフィードした。この中には38重量部/hrのエチレンカーボネートが含まれていた。そこで、エチレンカーボネートに対し2倍モルに相当する水16重量部/hrをラインL25からフィードした。加水分解反応器8は横型の槽型反応器で、内部に仕切り板を配置して逆混合が起きないようにし、液層がプラグ流に近い状態で流れるように工夫したものを使用した。
【0055】
なお、付加反応工程の反応器1から抜き出した反応液をラインL17から加水分解反応器8にフィードして加水分解し、エチレングリコールの製造比率を高くすることもできるが、本例ではL17からの抜き出しは行わなかった。
加水分解工程は、反応温度150℃、圧力177kPaで操作した。反応温度は外部から水蒸気で加温して維持した。加水分解反応器の出口ラインL18の反応液のエチレンカーボネート濃度はガスクロマトグラフィーの検出限界(10重量ppm)以下であった。
【0056】
(9)エチレングリコール精製工程
ラインL18から抜き出した加水分解反応液を理論段数20段のエチレングリコール脱水塔9の8段目にフィードした。蒸留操作は11kPaの圧力下、還流比1でおこない、ラインL19から水を除去した。
エチレングリコール脱水塔9の缶出液はラインL20から圧力8kPa、温度140℃で操作される触媒分離槽10にフィードし、ラインL21から触媒及び高沸点不純物を除去した粗エチレングリコールを得た。
【0057】
触媒分離槽10の缶出液はラインL22から付加反応工程にリサイクルし、再使用した。その際、高沸点不純物の蓄積を回避するため、循環液の一部を系外に抜き出した。
ラインL21からの粗エチレングリコールは理論段数20段のエチレングリコール分離塔11の10段目にフィードした。蒸留操作は7kPaの圧力下、還流比0.6でおこない、缶出ラインL24から高沸点不純物を除去しながら、留出ラインL23から精製エチレングリコール91.6重量部/hrを得た。
【0058】
[参考例1]
内容積500mlのオートクレーブにメタノール38重量%、エチレンカーボネート51重量%、エチレングリコール11重量%の反応液350mlを仕込み、これに触媒として炭酸カリウム0.7gとテトラブチルホスホニウムヨージド16gを添加した。反応液を攪拌しながら窒素で1.96MPaまで昇圧するとともに、反応器のジャケットを循環する熱媒の温度を90℃に保持し、1時間反応を継続した。反応後の液組成をガスクロマトグラフィー(以下、「GC」と略記する。ヒューレットパッカード社製6890シリーズ、カラム:J&W製DB−1、検出器:FID、昇温条件:100℃で10分保持後、8℃/分で230℃まで昇温)で分析したところ、ジメチルカーボネートが14.5重量%含まれ、エチレングリコールが21.3重量%に増加していた。他にエステル交換反応の中間生成物であるヒドロキシエチルメチルカーボネートが0.3重量%含まれていた。エチレンカーボネートの転化率は29.6%、ジメチルカーボネート収率は27.7%であった。
【0059】
[参考例2]
炭酸カリウムを添加しなかったことを除き、参考例1と同じ操作でエステル交換反応を行った。1時間後の反応液をGCで分析すると、ジメチルカーボネートが1.6重量%含まれ、エチレングリコールが12.2重量%に増加していた。他にエステル交換反応の中間生成物であるヒドロキシエチルメチルカーボネートが14.4重量%含まれていた。エチレンカーボネートの転化率は23.4%、ジメチルカーボネート収率は3.1%であった。
以上、参考例1及び2より、4級ホスホニウム塩触媒のみではエステル交換反応が著しく遅延することが確認された。
【0060】
[参考例3]
触媒として炭酸カリウム0.02gとテトラブチルホスホニウムヨージド16gを添加し、反応温度を110℃にしたこと以外は参考例1と同じ方法で反応を行った。3時間後の液組成をGCで分析したところ、ジメチルカーボネートが10.9重量%含まれ、エチレングリコールが18.6重量%に増加していた。他にエステル交換反応の中間生成物であるヒドロキシエチルメチルカーボネートが4.2重量%含まれていた。エチレンカーボネートの転化率は25.4%、ジメチルカーボネート収率は20.8%であった。また、構造の不明な不純物(GC保持時間が25〜33分)があり、その含有量は6000ppm(GCチャートの面積比)であった。
【0061】
[参考例4]
テトラブチルホスホニウムヨージドを添加しなかったことを除き、参考例3と同じ操作でエステル交換反応を行った。3時間後の反応液をGCで分析すると、ジメチルカーボネートが6.7重量%含まれ、エチレングリコールが15.2重量%に増加していた。また、ヒドロキシエチルメチルカーボネートが12.2重量%含まれていた。エチレンカーボネートの転化率は31.5%、ジメチルカーボネート収率は12.2%で、ジメチルカーボネートの収率が低下するとともに、保持時間25〜33分で検出される構造の不明な不純物の含有量が12000ppm(GCチャートの面積比)であった。該不純物の含有量は、参考例3に比して約2倍になっていた。
【0062】
以上、参考例3及び4より、炭酸カリウム触媒のみでは不純物の生成量が増加する結果となった。当該不純物は沸点がトリエチレングリコールと近接しているので触媒とともに循環され、蓄積される可能性がある。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、均一触媒を使用し、水の存在下で酸化アルキレンと炭酸ガスとを反応させ、得られた付加反応液を脱水しただけでエステル交換反応の原料として使用することができる。本発明で使用する特定の均一触媒系は、アルキレンカーボネートとアルカノールとのエステル交換反応の触媒としても有効である。そのような触媒を選択することにより付加反応液をエステル交換反応に使用する際に、触媒分離の操作を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における製造工程全体の概略を示す流れ図である。
【図2】実施例1における付加反応器部分の工程を示す流れ図である。
【符号の説明】
1 付加反応器
2 脱水塔
3 エステル交換反応器
4 フラッシュドラム
5 メタノール分離塔(抽出蒸留塔)
6 ジメチルカーボネート分離塔
7 共沸蒸留塔
8 加水分解反応器
9 エチレングリコール脱水塔
10 触媒分離槽
11 エチレングリコール分離塔
L1 酸化エチレン供給ライン
L2 炭酸ガス供給ライン
L3 触媒供給ライン
L7 メタノール供給ライン
L13 ジメチルカーボネート抜き出しライン
L23 エチレングリコール分離塔留出ライン
L25 水供給ライン
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルキレングリコール及びジアルキルカーボネートの併産方法に関する。詳しくは本発明は、酸化アルキレン及び炭酸ガスからアルキレングリコール及びジアルキルカーボネートを効率よく連続的に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
触媒の存在下に酸化アルキレンを炭酸ガスと付加反応させてアルキレンカーボネートを生成させることは公知である。また、アルキレンカーボネートをアルコールとエステル交換反応させてジアルキルカーボネートを得ることも公知である。さらにこれら二つの反応を結合して、先ず酸化アルキレンを炭酸ガスと反応させてアルキレンカーボネートを生成させ、次いでアルキレンカーボネートをアルコールとエステル交換反応させてジアルキルカーボネートを得ることも知られている。
【0003】
特開昭54−48715号公報には、グリコールカーボネートとアルコールとを高温においてアルカリ金属化合物の存在下に反応させてジアルキルカーボネートを製造することが記載されている。
特開昭56−10144号公報には、アルキレンカーボネートとアルコールとを第4ホスホニウム塩を触媒として反応させてジアルキルカーボネートを製造する方法が記載されている。
【0004】
特開平5−97774号公報には、第1工程においてはアルキレンオキシドを、反応媒質として予め製造されたアルキレンカーボネート中で、二酸化炭素と反応させてアルキレンカーボネートを生成させ、第2工程においてはアルキレンカーボネートを脂肪族モノヒドロキシ化合物とエステル交換させてジアルキルカーボネートを生成させ、これら第1工程及び第2工程を共に、周期表の第3周期第IIa族等に属する金属の陽イオンと無機または有機の酸の陰イオンとからなる塩:Aa−Xb、並びに、アルカリ金属、アルカリ土類金属の陽イオンまたは4級アンモニウム、4級ホスホニウム等のオニウムの陽イオンとハロゲンイオンとからなる塩:BcYd、からなる二官能性触媒:[Aa−Xb]m・[BcYd]n、の存在下に行うジアルキルカーボネートの製造方法、が記載されている。
【0005】
他方、アルキレンカーボネートを加水分解してアルキレングリコールを得ることも知られており、これを先の反応と結合させて、先ず酸化アルキレンを炭酸ガスと反応させてアルキレンカーボネートを生成させ、次いで得られるアルキレンカーボネートを加水分解してアルキレングリコールを得ることも知られている。
特開2001−199913号公報には、(イ)エチレンオキサイドと二酸化炭素とを反応させてエチレンカーボネートを含む反応液を生成させ、これを水と反応させて加水分解してエチレングリコールを含む水溶液を生成させ、これからエチレングリコールを精製、取得するエチレングリコールの製造工程と、(ロ)エチレンカーボネートと水酸基含有化合物とをエステル交換させて対応する炭酸エステルとエチレングリコールとを生成させ、この生成液から炭酸エステルを分離する炭酸エステルの製造工程とを、(ハ)上記エチレンカーボネートを含む反応液の少なくとも一部及び上記の炭酸エステル分離後の残液を受け入れて、蒸留によりエチレンカーボネートを分離して工程(ロ)のエステル交換段階へ供給するとともに、残液を工程(イ)の加水分解段階へ供給するエチレンカーボネート精製工程を介して複合化することを内容とするエチレングリコールと炭酸エステルの併産方法が記載されている(特許文献1参照)。
【0006】
上記特開2001−199913号公報には、酸化アルキレンと炭酸ガスとの反応に用いる触媒としては、ホスホニウム塩が好ましく、助触媒としてはアルカリ金属炭酸塩を使用するのが好ましいと記載されている。他方、エチレンカーボネートのエステル交換反応の触媒としては、トリエチルアミン等のアミン類、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属化合物等の均一系触媒や、変性イオン交換樹脂、珪酸塩を含浸した無定型シリカ類、アンモニウム交換Y型ゼオライト、コバルトとニッケルとの混合酸化物等の不均一系触媒などが例示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−199913号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開2001−199913号公報に記載の方法では、酸化アルキレンと炭酸ガスとの反応生成液から蒸留によりエチレンカーボネートを分離してそれをエステル交換反応に用いている。即ち、酸化アルキレンと炭酸ガスとの反応の触媒等を含有しない精製されたエチレンカーボネートをエステル交換反応に供しており、また、エステル交換の触媒としては、酸化アルキレンと炭酸ガスとの付加反応のときの触媒とは異なる触媒が新たに使用されている。
【0009】
従って特開2001−199913号公報に記載の方法は、エチレングリコールと炭酸エステルとを効率的に併産する方法として大きな利点を有する一方で、エチレングリコールの製造工程と炭酸エステルの製造工程とが、エチレンカーボネートの精製工程によっていわば隔離され、二つの独立した製造工程として構成されていることに基づく複雑さ及び経済的な不十分さとを有していた。
【0010】
従って本発明の課題は、酸化アルキレン及び炭酸ガス並びにアルコールから、副生物が少なく、効率よく、経済的に、かつ連続的に、アルキレングリコール及びジアルキルカーボネートを併産することのできる方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、水の存在下に酸化アルキレンと炭酸ガスとを反応させてアルキレンカーボネート及びアルキレングリコールを生成させる付加反応工程において特定の二元系触媒を使用し、反応生成液から酸化アルキレン及び水を除去することによって得られた付加反応生成物及び触媒を含有する反応生成液は、そのままエステル交換反応に供し得ること、さらにこのエステル交換反応においては、副生物が少なく、効率よくジアルキルカーボネートを連続的に製造し得ることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明の要旨は、少なくとも下記の工程(a)〜(c):
(a)アルカリ化合物及び4級ホスホニウム塩からなる触媒並びに水の存在下に酸化アルキレンと炭酸ガスとを反応させてアルキレンカーボネート及びアルキレングリコールを生成させる付加反応工程、
(b)付加反応工程の生成液の少なくとも一部から、アルキレンカーボネート、アルキレングリコール及び上記触媒を残留させつつ、酸化アルキレン及び水を除去して得られたエステル交換反応原料液にアルカノールを加え、エステル交換反応させてジアルキルカーボネートを生成させるエステル交換工程、及び
(c) エステル交換工程の生成物流から導かれたアルキレンカーボネート及びアルキレングリコールを含有する流出液を加水分解してアルキレンカーボネートからアルキレングリコールを生成させる加水分解工程、
を含むことを特徴とするアルキレングリコール及びジアルキルカーボネートの併産方法、に存する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明方法は、少なくとも(a)アルキレンカーボネート及びアルキレングリコールを生成させる付加反応工程、(b)ジアルキルカーボネートを生成させるエステル交換工程、及び(c)アルキレングリコールを生成させる加水分解工程、の各工程を含んでいる。
【0014】
[付加反応工程]
付加反応工程においては、アルカリ化合物及び4級ホスホニウム塩からなる触媒並びに水の存在下に酸化アルキレンと炭酸ガスとを反応させてアルキレンカーボネート及びアルキレングリコールを生成させる。
(酸化アルキレン)
原料の酸化アルキレンとしては、通常、炭素数2〜5のオレフィン性不飽和化合物の酸化物が使用される。具体的には、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、酸化ペンチレンなどが挙げられる。これらのなかで酸化エチレンおよび酸化プロピレンが好ましい。
【0015】
(水)
酸化アルキレンと炭酸ガスとの付加反応は、水の存在下で実施される。水の量は、酸化アルキレンに対し、モル比で通常0.1〜10倍、好ましくは0.5〜5倍とする。
上記付加反応を水の存在下に行うと、水が存在しない系と比較して反応速度を向上させることができる。ただし、水によりアルキレンカーボネートの一部が加水分解され、酸化アルキレンの一部が水和されて、アルキレングリコールが生成する。
【0016】
(触媒)
酸化アルキレンと炭酸ガスとの付加反応に使用される触媒は、アルカリ化合物と4級ホスホニウム塩とを混合した二元系触媒である。
ここで、触媒成分の一つである上記アルカリ化合物とは、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物を意味する。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩、リン酸塩等の塩、及び水酸化物等が挙げられる。なかでも炭酸塩が好ましい。
【0017】
アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。中でも炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムが好ましい。
次に、触媒成分の他の一つである4級ホスホニウム塩としては、例えば下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0018】
【化1】
[PR1R2R3R4]+X− (1)
(式中、Pはリン原子を表し、R1、R2、R3及びR4はそれぞれアルキル基又はアリール基を表し、相互に異なっていてもよい。また、Xはハロゲン原子を表す。)
上記アルキル基とは、炭素数1〜10の飽和又は不飽和の、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基であり、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル等が挙げられる。
【0019】
上記アリール基とは、置換されていてもよい炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であり、具体的には、フェニル、トリル、ナフチル等が挙げられる。中でもフェニル基が好ましい。
また、ハロゲン原子としては、具体的には、ヨウ素原子、臭素原子、及び塩素原子が挙げられる。中でもヨウ素原子または臭素原子が好ましい。
【0020】
上記4級ホスホニウム塩の具体例としては、トリプロピルメチルホスホニウムヨージド、トリプロピルエチルホスホニウムクロリド、テトラプロピルホスホニウムブロミド、トリプロピルブチルホスホニウムヨージド、トリプロピルオクチルホスホニウムヨージド、トリプロピルシクロヘキシルホスホニウムクロリド、トリプロピルフェニルホスホニウムブロミド、トリブチルメチルホスホニウムヨージド、トリブチルメチルホスホニウムブロミド、トリブチルエチルホスホニウムブロミド、トリブチルプロピルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムヨージド、トリブチルアミルホスホニウムブロミド、トリブチルヘキシルホスホニウムクロリド、トリブチルオクチルホスホニウムヨージド、トリブチルデシルホスホニウムブロミド、トリブチルセチルホスホニウムヨージド、トリブチルベンジルホスホニウムクロリド、トリブチルアリルホスホニウムクロリド、トリブチルシクロヘキシルホスホニウムブロミド、トリアミルメチルホスホニウムブロミド、トリヘプチルブチルホスホニウムクロリド、トリヘキシルメチルホスホニウムヨージド、トリヘキシルブチルホスホニウムブロミド、トリヘキシルオクチルホスホニウムクロリド、トリオクチルメチルホスホニウムヨージド、トリオクチルメチルホスホニウムブロミド、トリオクチルエチルホスホニウムブロミド、トリオクチルプロピルホスホニウムクロリド、トリオクチルブチルホスホニウムヨージド、トリオクチルアミルホスホニウムブロミド、テトラオクチルホスホニウムクロリド、トリオクチルセチルホスホニウムヨージド、トリオクチルベンジルホスホニウムクロリド、トリフェニルメチルホスホニウムヨージド、トリフェニルプロピルホスホニウムブロミド、トリフェニルブチルホスホニウムヨージド、トリフェニルヘプチルホスホニウムブロミド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロリド、トリトリルメチルホスホニウムヨージド、トリキシリルベンジルホスホニウムブロミド、トリベンジルエチルホスホニウムクロリド、トリシクロヘキシルメチルホスホニウムヨージド、トリシクロペンチルイソブチルホスホニウムクロリド、ジメチルエチルフェニルホスホニウムヨージド、ジブチルメチルフェニルホスホニウムヨージドなどが挙げられる。
【0021】
これらの中で、トリブチルメチルホスホニウムブロミド、トリブチルメチルホスホニウムヨージド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムヨージド等が好ましい。
上記二元系の触媒の添加量は、酸化アルキレンと炭酸ガスとを反応させる付加反応工程の反応液に対して、アルカリ化合物が、通常0.001〜1重量%、好ましくは0.01〜1重量%、より好ましくは0.05〜1重量%、4級ホスホニウム塩が、通常0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜7重量%、より好ましくは1〜5重量%である。
上記二元系触媒中のアルカリ化合物と4級ホスホニウム塩との比率は、重量比で通常、1:5〜1:1000、好ましくは1:10〜1:100である。
【0022】
(反応条件)
付加反応工程での反応器の形式は特に限定されるものではないが、底部から酸化アルキレン、炭酸ガス、水及び触媒を供給し、頂部から生成するアルキレンカーボネートを含む反応生成液と未反応の炭酸ガスとを流出させる気泡塔型反応器を用いるのが好ましい。
【0023】
上記反応の反応温度は通常70〜200℃、好ましくは100〜170℃であり、圧力は通常500〜5000kPa(ゲージ圧)、好ましくは1000〜3000kPa(ゲージ圧)である。また、酸化アルキレンに対する炭酸ガスの供給量(モル比)は、通常0.1〜5、好ましくは0.5〜3である。
上記反応は発熱反応なので、反応液の一部を外部へ抜き出し、熱交換器により冷却して系内に返送する外部循環冷却方式で反応温度を制御するのが好ましい。
上記した方法により、反応生成液が得られる。反応生成物は、主としてアルキレングリコール及びアルキレンカーボネートであり、条件によっては微量のジアルキレングリコール等が副生成する。
【0024】
(アルキレンカーボネート)
生成するアルキレンカーボネートのアルキレン基は、原料の酸化アルキレンのそれに対応している。アルキレンカーボネートの具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ペンチレンカーボネート等が挙げられる。これらのなかで、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートが好ましい。
上記付加反応工程の生成液の少なくとも一部はエステル交換工程に供給される。該生成液の全部をエステル交換工程に供給してもよいが、目的生成物のバランス上の必要性からアルキレングリコールの生成比率を高める必要がある場合には、付加反応工程の生成液の一部を加水分解工程に供給することもできる。
【0025】
[エステル交換工程]
エステル交換工程に供給された付加反応工程の生成液からは、アルキレンカーボネート、アルキレングリコール及び触媒を残留させつつ、酸化アルキレン及び水が除去されて、エステル交換反応原料液が得られる。酸化アルキレン及び水の除去の方法は特に限定されないが、通常、蒸留が行われる。酸化アルキレンを除去するための独立の工程を設けてもよいが、通常、水除去の工程において酸化アルキレンも炭酸ガスも除去することができる。これら除去された水、酸化アルキレン、炭酸ガス等は上記付加反応工程の反応系に循環させて再使用することができる。なお、酸化アルキレン及び水の除去処理に際しては、アルキレンカーボネート、アルキレングリコール及び触媒が生成液中に実質的に残留するようにしなければならず、かくして得られたアルキレンカーボネート、アルキレングリコール及び触媒を含有する生成液がエステル交換反応原料液となる。
【0026】
酸化アルキレン及び水の除去工程の好ましい態様としては、蒸留塔を用い、通常5〜30kPa、好ましくは10〜20kPa、の減圧条件で運転し、水及び酸化アルキレンを留出させ、アルキレンカーボネート、アルキレングリコール及び触媒を含有する混合物を缶出させる。操作圧力が高過ぎると塔底温度が上昇して触媒の分解を招き、逆に圧力が低過ぎるとコンデンサーの凝縮温度が低くなり過ぎるので適度の操作圧力を選択する。
【0027】
缶出した混合物中のアルキレングリコールの含有量は、通常5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは10〜20重量%とするのが、アルキレングリコールとジアルキルカーボネートの両方を効率よく生産する上で好ましい。
この缶出混合物をエステル交換反応原料液として、これにアルカノールを加え、アルキレンカーボネートとエステル交換反応させて、ジアルキルカーボネートとアルキレングリコールとを生成させる。
【0028】
(アルカノール)
原料のアルカノールは、通常、炭素数1〜5の脂肪族基に水酸基が結合したものであり、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール等が挙げられる。これらの中でメタノール及びエタノールが好ましい。
【0029】
(ジアルキルカーボネート)
生成するジアルキルカーボネートのアルキル基は、原料のアルカノールのそれに対応している。ジアルキルカーボネートの具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、ジ−i−ブチルカーボネート、ジ−n−ペンチルカーボネートおよびジ−i−ペンチルカーボネート等が挙げられる。
【0030】
(アルキレングリコール)
生成するアルキレングリコールのアルキレン基は、原料であるアルキレンカーボネートのそれに対応している。アルキレングリコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコールなどが挙げられる。
【0031】
(反応系の構成)
アルキレンカーボネートとアルカノールとをエステル交換反応させて、ジアルキルカーボネ一トを製造する反応は、1モルのアルキレンカーボネートと2モルのアルカノールから1モルのジアルキルカーボネートと1モルのアルキレングリコールが生成する反応である。この反応は1モルのアルカノールがエステル交換された中間体の生成を伴う2段階反応として進行する。
【0032】
エステル交換反応は平衡反応であり、第1段目の反応は無触媒でもある程度は進行するが、さらに第2段目の反応を進行させてジアルキルカーボネートを得るためには適当な触媒を使用する必要がある。
本発明方法においては、エステル交換反応の触媒として、基本的には酸化アルキレンと炭酸ガスとを反応させる付加反応と同じアルカリ化合物と4級ホスホニウム塩とからなる二元系触媒を使用する。該触媒の存在量は、エステル交換反応原料液中に、通常、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上であり、また、通常、15重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
【0033】
ただし、エステル交換工程において、改めて同一又は異なった触媒を追加的に供給してもよい。また、エステル交換反応原料液をエステル交換反応用の固体触媒と接触させてもよい。
ところで、上記エステル交換反応原料液中には、アルキレンカーボネート及びアルキレングリコールが存在するが、アルキレングリコールはエステル交換反応の生成物に相当するので、平衡反応系中に存在すると反応を原系に戻す働きをする。従って、反応論のみを考えるならば、エステル交換反応に供する前にアルキレングリコールをできるだけ除去するのが好ましいと考えるのが一般的であろう。しかしながら、上記のアルカリ化合物と4級ホスホニウム塩とからなる二元系のエステル交換反応用触媒は、アルキレングリコールを徹底的に除去したエステル交換反応原料液に対して溶解性が極めて小さく、種々のトラブルを生じる恐れがある。
【0034】
これに対し、本発明においては、エステル交換反応原料液中に意識的にアルキレングリコールを存在させることにより、エステル交換反応時の触媒の析出、それに伴う閉塞や付着等のトラブルを防止することができるのである。
【0035】
(反応条件)
エステル交換反応において、反応物質であるアルキレンカーボネートとアルカノールとのモル比は特に限定されない。アルカノールの比率を上げるとアルキレンカーボネートの転化率を上げることができる。一方、アルキレンカーボネートの比率を上げてもアルカノールの転化率は上がりにくいので、アルキレンカーボネートに対するアルカノールの比率は、通常1〜20、好ましくは2〜10、の範囲とするのが適当である。
【0036】
反応温度は、原料物質の種類、原料組成、触媒の種類等により異なるが、通常40℃以上、好ましくは80℃以上、また、通常180℃以下、好ましくは160℃以下、より好ましくは100℃以下とする。反応温度が低すぎると反応速度が低下し、逆に高すぎると触媒の分解や副生物の生成が促進される傾向がある。エステル交換反応は液相反応なので、反応圧力は低沸点の原料が気化しない範囲に設定する。たとえば原料アルカノールにメタノールを使用する場合、メタノールの沸点が50℃になるのは約56kPa、160℃になるのは約1750kPaなので、温度に応じた沸点以上の圧力に設定する必要がある。
【0037】
エステル交換反応に用いる反応器の形式はとくに限定されるものではないが、プラグ流反応器や攪拌槽型反応器を使用するのが経済的である。
エステル交換反応後の反応液中には、アルキレンカーボネート、アルキレングリコール、ジアルキルカーボネート、アルカノール及び触媒が含まれている。後処理の過程での不純物の生成を避けるために、この混合物から触媒を除去する。触媒は他の成分に比べて極めて高沸点であるのに対し、エステル交換反応の原料であるアルカノールと生成物であるジアルキルカーボネートとは一般に低沸点なので、触媒分離工程では単純なフラッシュ分離でアルカノール、ジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート及びアルキレングリコールからなる留出ベーパーと、触媒、アルキレンカーボネート及びアルキレングリコールからなる缶出液とに分けることができる。
【0038】
こうして得られた留出ベーパーから、蒸留等の通常の手段でアルカノールとジアルキルカーボネートとを分離し、アルカノールはエステル交換工程にリサイクルし、ジアルキルカーボネートは製品として取り出す。
【0039】
[加水分解工程]
(供給液)
上記エステル交換工程における触媒分離で得られた触媒、アルキレンカーボネート及びアルキレングリコールを含有する缶出液、並びに、留出ベーパーからアルカノール及びジアルキルカーボネートを分離した後に残ったアルキレンカーボネート及びアルキレングリコールを含有する残留液、等のエステル交換工程の生成物流から導かれたアルキレンカーボネート及びアルキレングリコールを含有する流出液を加水分解工程に供給し、アルキレンカーボネートを加水分解してアルキレングリコールを生成させる。また、目的生成物のバランス上の必要性からアルキレングリコールの生成比率を高める必要がある場合には、付加反応工程の生成液の一部をも加水分解工程に供給して、加水分解に供することもできる。
【0040】
(反応条件)
加水分解反応は高温で行う方が反応速度の点で有利であるが、あまり温度が高いと触媒の分解やアルキレングリコールの品質の悪化(着色等)を引き起こす傾向がある。反応温度は、通常100〜180℃とする。圧力は、加水分解の促進の観点からは、低い方が生成する炭酸ガスが抜けやすくなり有利であるが、反応液の飽和蒸気圧と比べてあまりに低い場合は、水やアルキレングリコールが気化してしまって反応が遅くなったり、製品の損失を招く可能性がある。圧力は、通常は常圧〜2000kPaの範囲で反応液が沸騰しないように選定するとよい。また、水の量は、加水分解工程入口においてアルキレンカーボネートに対し水が等モル以上、好ましくは2〜5倍モルとする。
【0041】
加水分解後の反応液にはアルキレングリコール、水及び触媒が含有されている。加水分解後の反応液は蒸留等の通常の操作を組み合わせて脱水し、触媒と微量不純物を除去して、アルキレングリコールを製品として取り出す。分離した触媒は付加反応工程にリサイクルすることができる。
【0042】
【実施例】
次に本発明の具体的態様を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
図1に概略を示す製造工程に従って、酸化エチレン及び炭酸ガスからジメチルカーボネート及びエチレングリコールを併産した。
【0043】
(1)付加反応工程
図1において、1は付加反応器であり、L1は酸化エチレンの供給ライン、L2は炭酸ガスの供給ライン、L3は触媒の供給ライン、L4は付加反応器の生成液の抜き出しライン、L5は後述の脱水塔の留出ラインである。付加反応器1の詳細を図2に示す。
【0044】
図2において、気泡塔型の第1段反応器に、ラインL101(=L1)から水47重量部/hrを含む酸化エチレン65重量部/hrを、ラインL102(=L2)から炭酸ガス140重量部/hrを、またラインL103(=L3)からテトラブチルホスホニウムヨージド9.3重量部/hr及び炭酸カリウム0.373重量部/hrをエチレングリコール16.5重量部/hrに溶解した触媒液を、それぞれ連続的にフィードし、温度110℃で、酸化エチレンの転化率86%まで反応させた。
【0045】
第1段反応器の出口から得られた反応液を、多管型の第2段反応器にフィードし、温度110℃、圧力1960kPaで、酸化エチレンの転化率99.9%まで反応させた。
第1段反応器の出口液をL105(=L4)から分岐してジメチルカーボネート原料液とした。なお、第2段反応器の出口液(ラインL104(=L17))は加水分解工程に供給してエチレングリコール原料とするが、本実施例ではラインL104からは抜き出さず、全量をラインL105から抜き出した。
【0046】
(2)脱水工程
図1において、ラインL4から抜き出した反応液を理論段数9段(コンデンサー、リボイラーは含まない。以下同じ)の脱水塔2の4段目に連続的にフィードしながら圧力13kPa、還流比0.04で蒸留操作を行った。塔頂コンデンサーは30℃で分縮し、ベーパーとして炭酸ガスと酸化エチレン、凝縮液として水を抜き出した。これらは付加反応工程において再使用される。脱水塔2の缶出液の組成はエチレンカーボネート76重量%、エチレングリコール16.1重量%、テトラブチルホスホニウムヨージド7重量%、炭酸カリウム0.3重量%で、他にジエチレングリコールを0.5重量%含んでいた。
【0047】
(3)エステル交換工程
脱水塔2からラインL6を経て抜き出した缶出液を攪拌槽式のエステル交換反応器3に連続的にフィードした。また、ラインL7からはメタノールを、脱水塔2の缶出液中のエチレンカーボネートに対するメタノールの流量が2倍モルとなるように、フィードした。
【0048】
エステル交換反応器3は断熱反応器とした。脱水塔2の缶出液の温度が158℃であり、メタノールが63℃だったので、反応温度は106℃となった。この温度は大気圧下でのメタノールの沸点を超えているので、反応器圧力は300kPaの加圧とした。
ラインL8から抜き出した反応液の組成はエチレンカーボネート36.4重量%、エチレングリコール17.0重量%、ジエチレングリコール0.3重量%、メタノール26.5重量%、ジメチルカーボネート15.2重量%、ヒドロキシエチルメチルカーボネート0.2重量%、テトラブチルホスホニウムヨージド4.3重量%、炭酸カリウム0.2重量%であった。
【0049】
(4)フラッシュ分離工程
エステル交換反応器の反応液をラインL8からフラッシュドラム4に導き、圧力120kPaで気液分離した。この操作でエステル交換の反応液に含まれるメタノールの98%、ジメチルカーボネートの96.1%がベーパーとしてラインL9から取り出された。また、触媒のテトラブチルホスホニウムヨージド及び炭酸カリウムは全量が缶出液としてラインL10から取り出された。エチレンカーボネート、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ヒドロキシエチルメチルカーボネートのベーパーへの分配率はそれぞれ12.6%、40.1%、8.0%、0.5%であった。
【0050】
(5)メタノール回収工程
フラッシュドラムで分離し、ラインL9から取り出されたベーパーは理論段数19段のメタノール分離塔5の9段目に連続的にフィードした。メタノールとジメチルカーボネートとは共沸し、通常の蒸留では分離できない。そこで第1段目にエチレンカーボネートをフィードして、抽出蒸留によりメタノールを塔頂から分離した。抽出溶媒のエチレンカーボネートとしては共沸蒸留塔7の缶出液(ラインL16)を使用した。
メタノール分離塔5の蒸留操作は101kPaの圧力下、還流比1で行った。留出液中のメタノール組成は86.2重量%で、13.4重量%のジメチルカーボネートと、微量のエチレンカーボネートおよびエチレングリコールを含んでいた。この留出液はラインL11よりエステル交換工程にリサイクルした。
【0051】
(6)ジメチルカーボネート分離工程
ラインL12から抜き出したメタノール分離塔5の缶出液を、理論段数19段のジメチルカーボネート分離塔6の14段目に連続的にフィードした。蒸留操作は12kPaの圧力下、還流比0.7で行った。塔頂留出液(ラインL13)としてジメチルカーボネートが18.0重量部/hr得られた。この中にはメタノール及びエチレングリコール(いずれも10重量ppm未満)が含まれていた。
【0052】
(7)エチレングリコール分離工程
ラインL14から抜き出したジメチルカーボネート分離塔6の缶出液を理論段数18段の共沸蒸留塔7の9段目に連続的にフィードした。フィード液にはエチレングリコールとエチレンカーボネートが含まれている。これらは共沸するため、塔頂留出液としてエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物、缶出液としてエチレンカーボネートが得られる。
【0053】
共沸蒸留塔7の蒸留操作は6kPaの圧力下、還流比1で行った。ラインL15から得られた留出液組成はエチレングリコールが77.4重量%、エチレンカーボネートが22.6重量%で、ジエチレングリコールが240重量ppm含まれていた。また、ラインL16から得られた缶出液組成はエチレンカーボネート98.4重量%、エチレングリコール1重量%、ジエチレングリコール0.5重量%であった。
【0054】
(8)加水分解工程
ラインL10からのフラッシュドラム缶出液とラインL15からの共沸蒸留塔留出液とを、加水分解反応器8にフィードした。この中には38重量部/hrのエチレンカーボネートが含まれていた。そこで、エチレンカーボネートに対し2倍モルに相当する水16重量部/hrをラインL25からフィードした。加水分解反応器8は横型の槽型反応器で、内部に仕切り板を配置して逆混合が起きないようにし、液層がプラグ流に近い状態で流れるように工夫したものを使用した。
【0055】
なお、付加反応工程の反応器1から抜き出した反応液をラインL17から加水分解反応器8にフィードして加水分解し、エチレングリコールの製造比率を高くすることもできるが、本例ではL17からの抜き出しは行わなかった。
加水分解工程は、反応温度150℃、圧力177kPaで操作した。反応温度は外部から水蒸気で加温して維持した。加水分解反応器の出口ラインL18の反応液のエチレンカーボネート濃度はガスクロマトグラフィーの検出限界(10重量ppm)以下であった。
【0056】
(9)エチレングリコール精製工程
ラインL18から抜き出した加水分解反応液を理論段数20段のエチレングリコール脱水塔9の8段目にフィードした。蒸留操作は11kPaの圧力下、還流比1でおこない、ラインL19から水を除去した。
エチレングリコール脱水塔9の缶出液はラインL20から圧力8kPa、温度140℃で操作される触媒分離槽10にフィードし、ラインL21から触媒及び高沸点不純物を除去した粗エチレングリコールを得た。
【0057】
触媒分離槽10の缶出液はラインL22から付加反応工程にリサイクルし、再使用した。その際、高沸点不純物の蓄積を回避するため、循環液の一部を系外に抜き出した。
ラインL21からの粗エチレングリコールは理論段数20段のエチレングリコール分離塔11の10段目にフィードした。蒸留操作は7kPaの圧力下、還流比0.6でおこない、缶出ラインL24から高沸点不純物を除去しながら、留出ラインL23から精製エチレングリコール91.6重量部/hrを得た。
【0058】
[参考例1]
内容積500mlのオートクレーブにメタノール38重量%、エチレンカーボネート51重量%、エチレングリコール11重量%の反応液350mlを仕込み、これに触媒として炭酸カリウム0.7gとテトラブチルホスホニウムヨージド16gを添加した。反応液を攪拌しながら窒素で1.96MPaまで昇圧するとともに、反応器のジャケットを循環する熱媒の温度を90℃に保持し、1時間反応を継続した。反応後の液組成をガスクロマトグラフィー(以下、「GC」と略記する。ヒューレットパッカード社製6890シリーズ、カラム:J&W製DB−1、検出器:FID、昇温条件:100℃で10分保持後、8℃/分で230℃まで昇温)で分析したところ、ジメチルカーボネートが14.5重量%含まれ、エチレングリコールが21.3重量%に増加していた。他にエステル交換反応の中間生成物であるヒドロキシエチルメチルカーボネートが0.3重量%含まれていた。エチレンカーボネートの転化率は29.6%、ジメチルカーボネート収率は27.7%であった。
【0059】
[参考例2]
炭酸カリウムを添加しなかったことを除き、参考例1と同じ操作でエステル交換反応を行った。1時間後の反応液をGCで分析すると、ジメチルカーボネートが1.6重量%含まれ、エチレングリコールが12.2重量%に増加していた。他にエステル交換反応の中間生成物であるヒドロキシエチルメチルカーボネートが14.4重量%含まれていた。エチレンカーボネートの転化率は23.4%、ジメチルカーボネート収率は3.1%であった。
以上、参考例1及び2より、4級ホスホニウム塩触媒のみではエステル交換反応が著しく遅延することが確認された。
【0060】
[参考例3]
触媒として炭酸カリウム0.02gとテトラブチルホスホニウムヨージド16gを添加し、反応温度を110℃にしたこと以外は参考例1と同じ方法で反応を行った。3時間後の液組成をGCで分析したところ、ジメチルカーボネートが10.9重量%含まれ、エチレングリコールが18.6重量%に増加していた。他にエステル交換反応の中間生成物であるヒドロキシエチルメチルカーボネートが4.2重量%含まれていた。エチレンカーボネートの転化率は25.4%、ジメチルカーボネート収率は20.8%であった。また、構造の不明な不純物(GC保持時間が25〜33分)があり、その含有量は6000ppm(GCチャートの面積比)であった。
【0061】
[参考例4]
テトラブチルホスホニウムヨージドを添加しなかったことを除き、参考例3と同じ操作でエステル交換反応を行った。3時間後の反応液をGCで分析すると、ジメチルカーボネートが6.7重量%含まれ、エチレングリコールが15.2重量%に増加していた。また、ヒドロキシエチルメチルカーボネートが12.2重量%含まれていた。エチレンカーボネートの転化率は31.5%、ジメチルカーボネート収率は12.2%で、ジメチルカーボネートの収率が低下するとともに、保持時間25〜33分で検出される構造の不明な不純物の含有量が12000ppm(GCチャートの面積比)であった。該不純物の含有量は、参考例3に比して約2倍になっていた。
【0062】
以上、参考例3及び4より、炭酸カリウム触媒のみでは不純物の生成量が増加する結果となった。当該不純物は沸点がトリエチレングリコールと近接しているので触媒とともに循環され、蓄積される可能性がある。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、均一触媒を使用し、水の存在下で酸化アルキレンと炭酸ガスとを反応させ、得られた付加反応液を脱水しただけでエステル交換反応の原料として使用することができる。本発明で使用する特定の均一触媒系は、アルキレンカーボネートとアルカノールとのエステル交換反応の触媒としても有効である。そのような触媒を選択することにより付加反応液をエステル交換反応に使用する際に、触媒分離の操作を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における製造工程全体の概略を示す流れ図である。
【図2】実施例1における付加反応器部分の工程を示す流れ図である。
【符号の説明】
1 付加反応器
2 脱水塔
3 エステル交換反応器
4 フラッシュドラム
5 メタノール分離塔(抽出蒸留塔)
6 ジメチルカーボネート分離塔
7 共沸蒸留塔
8 加水分解反応器
9 エチレングリコール脱水塔
10 触媒分離槽
11 エチレングリコール分離塔
L1 酸化エチレン供給ライン
L2 炭酸ガス供給ライン
L3 触媒供給ライン
L7 メタノール供給ライン
L13 ジメチルカーボネート抜き出しライン
L23 エチレングリコール分離塔留出ライン
L25 水供給ライン
Claims (5)
- 少なくとも下記の工程(a)〜(c):
(a)アルカリ化合物及び4級ホスホニウム塩からなる触媒並びに水の存在下に酸化アルキレンと炭酸ガスとを反応させてアルキレンカーボネート及びアルキレングリコールを生成させる付加反応工程、
(b)付加反応工程の生成液の少なくとも一部から、アルキレンカーボネート、アルキレングリコール及び上記触媒を残留させつつ、酸化アルキレン及び水を除去して得られたエステル交換反応原料液にアルカノールを加え、エステル交換反応させてジアルキルカーボネートを生成させるエステル交換工程、及び
(c) エステル交換工程の生成物流から導かれたアルキレンカーボネート及びアルキレングリコールを含有する流出液を加水分解してアルキレンカーボネートからアルキレングリコールを生成させる加水分解工程、
を含むことを特徴とするアルキレングリコール及びジアルキルカーボネートの併産方法。 - 付加反応工程の生成液の一部を加水分解工程に供給して加水分解に供する、請求項1に記載のアルキレングリコール及びジアルキルカーボネートの併産方法。
- エステル交換反応原料液中に上記触媒を0.05重量%以上存在させる、請求項1又は2に記載のアルキレングリコール及びジアルキルカーボネートの併産方法。
- エステル交換反応原料液中にアルキレングリコールを5〜50重量%存在させる、請求項1〜3のいずれかに記載のアルキレングリコール及びジアルキルカーボネートの併産方法。
- 上記触媒中のアルカリ化合物に対する4級ホスホニウム塩の重量比が5〜1000である、請求項1〜4のいずれかに記載のアルキレングリコール及びジアルキルカーボネートの併産方法。
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