JP2004098381A - インクジェット記録用シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持体上に複数の層で構成された色材受容層を有し、該色材受容層の前記支持体から最も離れた最表層を除く少なくとも一層が水溶性セルロース樹脂を含有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インク、油性インク等の液状インクや、常温では固体であり、溶融液状化させて印画に供する固体状インク等を用いたインクジェット記録に適した被記録材に関し、詳しくは、インク受容性能に優れたインクジェット記録用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報産業の急速な発展に伴い、種々の情報処理システムが開発され、その情報処理システムに適した記録方法および装置も開発され、各々実用化されている。上記記録方法の中で、インクジェット記録方法は、多種の記録材料に記録可能なこと、ハード(装置)が比較的安価であること、コンパクトであること、静粛性に優れること等の点から、オフィスは勿論、いわゆるホームユースにおいても広く用いられてきている。
【0003】
また、近年のインクジェットプリンタの高解像度化に伴い、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得ることも可能になり、更なるハード(装置)面の発展に伴ってインクジェット記録用の記録シートも各種開発されてきている。
インクジェット記録用の記録シートに要求される特性としては、一般に、(1)速乾性があること(インクの吸収速度が大きいこと)、(2)インクドットの径が適正で均一であること(ニジミのないこと)、(3)粒状性が良好であること、(4)ドットの真円性が高いこと、(5)色濃度が高いこと、(6)彩度が高いこと(くすみのないこと)、(7)印画部の耐光性、耐水性が良好なこと、(8)記録シートの白色度が高いこと、(9)記録シートの保存性が良好なこと(長期保存で黄変着色を起こさないこと、長期保存で画像が滲まないこと)、(10)変形しにくく、寸法安定性が良好であること(カールが充分小さいこと)、(11)ハード走行性が良好であること、等が挙げられる。更に、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得る目的で用いられるフォト光沢紙の用途としては、上記特性に加えて、光沢性、表面平滑性、銀塩写真に類似した印画紙状の風合い等も要求される。
【0004】
上記した諸特性の向上を目的として、近年では色材受容層に多孔質構造を有するインクジェット記録用シートが開発、実用化され、多孔質構造を有することで優れたインク受容性(速乾性)を具え、かつ高い光沢をも有している。例えば、微細な無機顔料粒子及び水溶性樹脂を含有し、高い空隙率を有する色材受容層が支持体上に設けられたインクジェット記録用シートがある(例えば、特許文献1〜2参照)。これらの記録用シートは、シリカを用いた多孔質構造からなる構成によってインク吸収性に優れており、高解像度を達成し得る高インク受容性能を有しかつ高光沢をも発揮するとされているが、高湿度環境下に保存された場合の印画画像のニジミ(経時ニジミ)の点では満足できるものではなかった。
【0005】
一方、高湿環境を含めた経時ニジミの問題を解決する技術としては、以前から多くの技術が提案されている。例えば、塩基性媒染剤ラテックスを使用する技術(例えば、特許文献3参照)や、ポリエチレンイミンを含浸させる方法(例えば、特許文献4〜6参照)、カチオン基を有する電解質ポリマーの含有(例えば、特許文献7参照)、カチオン性ポリマー媒染剤と親水性基を有する重合体を含有させる技術(例えば、特許文献8参照)、ポリアリルアミンを媒染剤として使用する技術(例えば、特許文献9〜12参照)、カチオン性媒染剤とカチオン性界面活性剤を併用する技術(例えば、特許文献13参照)、カチオン変成ポリビニルコールの含有(例えば、特許文献14参照)、特定の2種類のカチオンポリマーを併用して耐水性を向上する技術(例えば、特許文献15参照)などである。
【0006】
更に、カチオン性媒染剤を添加してインク染料の定着性を改善する技術も多数開示されている(例えば、特許文献16〜40参照)。
【0007】
ところが、先行技術に開示されているものの殆どは、シリカの如き表面がアニオン性である無機微粒子と混合した際に凝集物が形成されやすく、良好な塗布液が調製できなかったり、あるいは塗布膜面の光沢性が著しく低下する等の問題があった。これらを改良する目的で、特定のカチオンポリマーと気相法シリカとを組合せる技術もあるが(例えば、特許文献41参照)、高湿度下における経時ニジミの防止効果としては未だ完全ではなかった。
【0008】
他方、ヒドロキシプロピルセルロースを含む表面層を設けた水性インク用被記録材が開示されており(例えば、特許文献42参照)、インクの広がりを抑制して高解像度での記録が可能であるとされている。確かに、高解像度化には寄与し得るものの、最表層にヒドロキシプロピルセルロースを含有するため、画像濃度が低下してしまう問題がある。
【0009】
また、2層以上からなるインク受容層の少なくとも一層がヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース樹脂を含むインクジェット記録用シートに係る記載がなされているものもあり(例えば、特許文献43参照)、透明性、光沢性、インク吸収性、耐湿・耐水性に優れるとされている。しかし、上記同様、この公報に記載されているように単にセルロース樹脂を含有させるのみでは画像濃度の低下を招き、高濃度でコントラストのある画像を形成することは困難である。画像濃度を低下させないためには、支持体から最も離れた最表層を除くその下層に含有させることが不可欠であり、この公報にはセルロース樹脂を含む層が下層であること、下層への含有が画像濃度に有効であるとの技術思想については一切示唆されていない。
【0010】
【特許文献1】特開平10−119423号公報
【特許文献2】特開平10−217601号公報
【特許文献3】特開昭57−36692号公報
【特許文献4】特開昭53−49113号公報
【特許文献5】特開昭59−198186号公報
【特許文献6】特開昭59−198188号公報
【特許文献7】特開昭58−24492号公報
【特許文献8】特開昭63−307979号公報
【特許文献9】特開昭61−61887号公報
【特許文献10】特開昭61−72581号公報
【特許文献11】特開昭61−252189号公報
【特許文献12】特開昭62−174184号公報
【特許文献13】特開昭63−162275号公報
【特許文献14】特開平6−143798号公報
【特許文献15】特開平8−142496号公報
【特許文献16】特開昭59−20696号公報
【特許文献17】特開昭59−33176号公報
【特許文献18】特開昭59−33177号公報
【特許文献19】特開昭59−96987号公報
【特許文献20】特開昭59−155088号公報
【特許文献21】特開昭60−11389号公報
【特許文献22】特開昭60−49990号公報
【特許文献23】特開昭60−83882号公報
【特許文献24】特開昭60−109894号公報
【特許文献25】特開昭61−277484号公報
【特許文献26】特開昭61−293886号公報
【特許文献27】特開昭62−19483号公報
【特許文献28】特開昭62−198493号公報
【特許文献29】特開昭63−49478号公報
【特許文献30】特開昭63−115780号公報
【特許文献31】特開昭63−203896号公報
【特許文献32】特開昭63−274583号公報
【特許文献33】特開昭63−280681号公報
【特許文献34】特開昭63−260477号公報
【特許文献35】特開平1−9776号公報
【特許文献36】特開平1−24784号公報
【特許文献37】特開平1−40371号公報
【特許文献38】特開平3−133686号公報
【特許文献39】特開平6−234268号公報
【特許文献40】特開平7−125411号公報
【特許文献41】特開平11−348409号公報
【特許文献42】特開平8−324103号公報
【特許文献43】特開平9−39377号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、種々の技術が提案され、インク吸収性、経時ニジミ等の上記諸特性の向上が図られてきているが、画像濃度の低下をはじめとする他の性能をも損なうことがなく、特に経時ニジミを充分に抑えることができる技術は、未だ確立されるに至っていないのが現状である。
【0012】
本発明は、上記に鑑みて成されたものであり、特に、記録画像の濃度低下を招来することなく、画像の経時ニジミを効果的に抑止して高画質の画像を形成、保持することができるインクジェット記録用シートを提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、前記色材受容層が複数の層で構成され、該色材受容層の前記支持体から最も離れた最表層を除く少なくとも一層が水溶性セルロース樹脂を含有することを特徴とするインクジェット記録用シートである。
<2> 前記水溶性セルロース樹脂が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロースの少なくとも一種である前記<1>に記載のインクジェット記録用シートである。
<3> 最表層が無機微粒子を含み、該無機微粒子が平均一次粒子径20μm以下の気相法シリカである前記<1>又は<2>に記載のインクジェット記録用シートである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のインクジェット記録用シートにおいては、複数の層からなる色材受容層の、支持体から最も離れた最表層を除く少なくとも一層に水溶性セルロース樹脂を含有する。以下、本発明のインクジェット記録用シートについて詳細に説明する。
【0015】
[色材受容層]
本発明のインクジェット記録用シートは、支持体上に色材受容層を有してなり、該色材受容層は2層以上の層(受容層)が積層されて構成される。色材受容層には、該色材受容層を構成する、支持体から最も離れた最表層(最外の受容層)を除く少なくとも一層の受容層、すなわち最表層より支持体側の下層、に水溶性セルロース樹脂を含有する。また更に、他の層が設けられていてもよい。
【0016】
複数の層で構成される色材受容層の最表層より支持体側の下層に水溶性セルロース樹脂を含有することにより、最表層において付与されたインクのインク溶媒の吸収性を向上させることができ、記録後の画像の経時ニジミを効果的に防止することができる。本発明においては、水溶性セルロース樹脂は色材受容層の最表層中にではなく、該最表層より下層となる受容層中に含有することが重要であり、これにより、画像濃度を損なわずに記録画像の経時ニジミ耐性を向上することができる。すなわち、最表層において像をなすインクの多くを保持して高濃度で鮮鋭な画像を形成すると共に、その下層においてインク溶媒を吸収することで画像を安定に保持できるように、機能分離した層構成としたものである。
【0017】
前記色材受容層は、例えば、支持体/受容層1/受容層2(シートAとする)、支持体/受容層1’/受容層2’/受容層3’(シートBとする)、支持体/受容層1’’/受容層2’’/受容層3’’/受容層4’’(シートCとする)、などのように構成することができる。この場合、支持体側から第一受容層、第二受容層の2層が積層された前記シートAでは、水溶性セルロース樹脂は下層となる受容層1に含有され、前記シートBでは、水溶性セルロース樹脂は受容層1’および/または受容層2’に含有される。また、前記シートCでは、水溶性セルロース樹脂は受容層1’’、受容層2’’および受容層3’’の少なくとも一層に含有されればよく、全層に含有してもよいし、中間となる受容層2’’のみに含有してもよい。
【0018】
前記シートB、Cのように、色材受容層の支持体から最も離れた最表層(即ち、上記の受容層3’、受容層4’’)を除く層(受容層)が複数ある場合、各層には同一の水溶性セルロース樹脂を含有してもよいし、相互に種類の異なる水溶性セルロース樹脂を含有してもよい。また、各層への含有量も、後述する含有量の範囲内であれば、互いに同量でも異なる量であってもよい。
【0019】
−水溶性セルロース樹脂−
前記水溶性セルロース樹脂としては、適宜公知のものの中から選択することができるが、中でも特にヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、又はヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。これらは、単独で用いても複数を併用してもよく、少なくとも一種を含有することによって画像の経時ニジミを効果的に向上させることができる。
【0020】
前記水溶性セルロース樹脂の、複数層からなる色材受容層中における総含有量としては、0.1〜3.0g/m2が好ましく、0.5〜1.0g/m2がより好ましい。前記総含有量が、0.1g/m2未満であると、インクジェット記録用シートの耐水性、特に高湿度下などにおける画像の耐経時ニジミが不充分となることがあり、3.0g/m2を越えると、インク吸収性が低下し、ビーディングの原因となることがある。
【0021】
次に、色材受容層に含有する各種成分について説明する。
色材受容層は、無機微粒子、水溶性樹脂を少なくとも含んで構成され、好ましくは架橋剤、媒染剤等を含んで構成され、更に必要に応じて界面活性剤や紫外線吸収剤等の他の成分を含有して構成される。
これら各種成分は色材受容層を構成する複数の層(受容層)の全てに共通するものであり、各受容層は前記水溶性セルロース樹脂を除いて同一の組成に構成することも異なる組成に構成することもできる。
【0022】
−無機微粒子−
前記無機微粒子としては、気相法シリカ、含水シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベーマイト、擬ベーマイト等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも気相法シリカが好ましく、該気相法シリカと他の無機微粒子とを併用する場合、全無機微粒子中、気相法シリカの含有量は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0023】
ここで、シリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。前記湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、前記「気相法シリカ」とは、当該気相法によって得られた無水シリカ微粒子を意味する。
【0024】
気相法シリカは、前記含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nm2で多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nm2であり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
【0025】
前記気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散を行なえば色材受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという特徴がある。色材受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用シートに適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性光沢を得る観点で重要である。
【0026】
気相法シリカの平均一次粒子径としては、20nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましく、3〜10nmが最も好ましい。前記気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が20nm以下の場合に空隙率の大きい構造を形成することができる。すなわち、平均一次粒子径が20nm以下であると、インク吸収特性を効果的に向上させることができ、また同時に色材受容層表面の光沢性をも高めることができる。したがって、最表層中に含有する場合には特に上記範囲とすることが好ましい。
【0027】
前記無機微粒子は、カチオン性樹脂で分散して用いることが好ましい。
カチオン性樹脂は、特に限定されないが、水溶性、または水性エマルションタイプなどを好適に使用できる。該カチオン性樹脂としては、例えば、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カチオン樹脂、ジシアンアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カチオン樹脂、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド−SO2共重合物、ジアリルアミン塩−SO2共重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、アリルアミン塩の重合物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩重合物、アクリルアミド−ジアリルアミン塩共重合体等のポリカチオン系カチオン樹脂などが挙げられ、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、モノメチルジアリルアンモニウムクロライドおよびポリアミジンが好ましく、耐水性の点からジメチルジアリルアンモニウムクロライド、及びモノメチルアンモニウムクロライドが特に好ましい。該カチオン性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記カチオン性樹脂の色材受容層における添加量としては、無機微粒子100質量部に対して、1〜30質量部が好ましく、さらに好ましくは3〜20質量部の範囲で調節される。カチオン性樹脂は、粉砕分散前に少量添加して、所望の粒径になるまで粉砕分散した後、さらに添加してもよい。
【0029】
−水溶性樹脂−
前記水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセタール、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等〕、キチン類、キトサン類、デンプン;エーテル結合を有する樹脂であるポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE);アミド基またはアミド結合を有する樹脂であるポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、並びに、解離性基としてカルボキシル基を有する、ポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0030】
これらの中でもポリビニルアルコールが好ましく、該ポリビニルアルコールと他の水溶性樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中、ポリビニルアルコールの含有量は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0031】
前記ポリビニルアルコールとしては、ポリビニルアルコール(PVA)に加え、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコールおよびその他ポリビニルアルコールの誘導体も含まれる。ポリビニルアルコールは1種単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記PVAは、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基とシリカ微粒子表面のシラノール基とが水素結合を形成して、シリカ微粒子の二次粒子を鎖単位とする三次元網目構造を形成しやすくする。これは三次元網目構造の形成によって、空隙率の高い多孔質構造の色材受容層を形成しうると考えられる。
インクジェット記録において、上述のようにして得た多孔質の色材受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みのない真円性の良好なドットを形成することができる。
【0033】
前記ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)の含有量としては、該含有量の過少による、膜強度の低下や、乾燥時のひび割れを防止し、かつ該含有量の過多によって、該空隙が樹脂により塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、色材受容層の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がさらに好ましい。
【0034】
前記ポリビニルアルコールは、ひび割れ防止の観点から、数平均重合度が1800以上が好ましく、2000以上がさらに好ましい。また、透明性や色材受容層用塗布液の粘度の観点から、鹸化度88%以上のPVAが好ましく、鹸化度95%以上のPVAが特に好ましい。
【0035】
−気相法シリカとポリビニルアルコールとの含有比−
気相法シリカ(他の無機微粒子と併用する場合には全無機微粒子;i)とポリビニルアルコール(他の水溶性樹脂と併用する場合には全水溶性樹脂;p)との含有比〔PB比(i:p)〕は、色材受容層の膜構造にも大きな影響を与える。即ち、PB比が大きくなると、空隙率、細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなる。具体的には、前記PB比(i:p)としては、該PB比が大きすぎることに起因する、膜強度の低下や、乾燥時のひび割れを防止し、かつ該PB比が小さすぎることによって、該空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5:1〜10:1が好ましい。
【0036】
インクジェットプリンターの搬送系を通過する場合、記録用シートに応力が加わることがあるので、色材受容層には充分な膜強度を有していることが必要である。さらにシート状に裁断加工する場合、色材受容層の割れ、剥がれ等を防止する上でも色材受容層には充分な膜強度を有していることが必要である。
この場合、前記PB比としては5:1以下が好ましく、インクジェットプリンターで高速インク吸収性をも確保する観点からは、2:1以上であることが好ましい。
【0037】
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の無水シリカ微粒子と水溶性樹脂とをPB比2:1〜5:1で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布し、該塗布層を乾燥した場合、シリカ微粒子の二次粒子を鎖単位とする三次元網目構造が形成され、平均細孔径が30nm以下、空隙率が50%〜80%、細孔比容積0.5ml/g以上、比表面積が100m2/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
【0038】
−架橋剤−
本発明のインクジェット記録用シートの色材受容層は、無機微粒子および水溶性樹脂等を含む層が、更に該水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含み、該架橋剤と水溶性樹脂との架橋反応によって硬化された多孔質層である態様が好ましい。上記の水溶性樹脂、特にポリビニルアルコール系樹脂の架橋には、ホウ素化合物が好ましい。
【0039】
前記ホウ素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO3、ScBO3、YBO3、LaBO3、Mg3(BO3)2、Co3(BO3)2、二硼酸塩(例えば、Mg2B2O5、Co2B2O5)、メタ硼酸塩(例えば、LiBO2、Ca(BO2)2、NaBO2、KBO2)、四硼酸塩(例えば、Na2B4O7・10H2O)、五硼酸塩(例えば、KB5O8・4H2O、Ca2B6O11・7H2O、CsB5O5)等が挙げられる。
中でも、ポリビニルアルコールと速やかに架橋反応を起こす点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、硼酸がより好ましい。
【0040】
また、グリオキザール、メラミン・ホルムアルデヒド(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン)、メチロール尿素、レゾール樹脂、ポリイソシアネート、エポキシ樹脂等を併用することもできる。
【0041】
前記ホウ素化合物は、前記水溶性樹脂1質量部に対して、0.05〜0.50質量部含有されることが好ましく、0.08〜0.30質量部含有されることがより好ましい。ホウ素化合物の含有量が上記範囲であると、水溶性樹脂を架橋して効果的にひび割れ等を防止することができる。また、色材受容層の形成に際し、ホウ素化合物は後述の色材受容層用塗布液および塩基性溶液のいずれに含有してもよいが、画像の印画濃度及び光沢感の向上の点で色材受容層用塗布液に含有するのが好ましい。なお、色材受容層用塗布液中のホウ素化合物の濃度としては、0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜7質量%がより好ましい。
【0042】
更に、上記水溶性樹脂の架橋剤として、ホウ素化合物以外の下記化合物を併用することもできる。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;
【0043】
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等である。
上記の架橋剤は、一種単独でも、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0044】
架橋剤は、色材受容層形成用の塗布液(色材受容層用塗布液)を塗布する際に色材受容層用塗布液中および/または色材受容層の隣接層を形成するための塗布液中に添加してもよく、あるいは予め架橋剤を含む塗布液を塗布した支持体上に、前記色材受容層用塗布液を塗布する、架橋剤非含有の色材受容層用塗布液を塗布・乾燥後に架橋剤溶液をオーバーコートする、等して色材受容層に架橋剤を供給することができる。好ましくは、製造効率の点から、色材受容層用塗布液またはこの隣接層形成用の塗布液中に架橋剤を添加し、色材受容層の形成と同時に架橋剤を供給するのが好ましい。
【0045】
例えば、以下のようにして好適に架橋剤を付与することができる。ここでは、ホウ素化合物を例に説明する。すなわち、色材受容層が色材受容層形成用の塗布液(色材受容層用塗布液)Aを塗布した塗布層を架橋硬化させた層である場合、架橋硬化は、(1)前記塗布液Aを塗布して塗布層を形成すると同時、(2)前記塗布液Aを塗布して形成される塗布層の乾燥塗中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、又は(3)前記塗布液Aを塗布して形成される塗布層を乾燥して塗膜を形成した後、のいずれかのときに、pH8以上の塩基性溶液(塗布液B)を前記塗布層に付与することにより行われる。架橋剤であるホウ素化合物は、塗布液A又は塗布液Bのいずれかに含有すればよく、塗布液A及び塗布液Bの両方に含有させておいてもよい。
【0046】
−媒染剤−
本発明においては、形成画像の耐水性、耐経時ニジミの更なる向上を図るために、色材受容層に媒染剤を含有することが好ましい。媒染剤としては、カチオン性のポリマー(カチオン性媒染剤)等の有機媒染剤、及び水溶性金属化合物等の無機媒染剤のいずれも使用できる。中でも、有機媒染剤が好ましく、特にカチオン性媒染剤が好ましい。
【0047】
少なくとも色材受容層の上層に位置する層に前記媒染剤を存在させることによって、アニオン性染料を色材として有する液状インクとの間で相互作用が働き、該色材を安定化させて耐水性や耐経時ニジミを更に改善することができる。
【0048】
この場合、上記の色材受容層用塗布液(塗布液A)および塩基性溶液(塗布液B)のいずれに含有してもよいが、無機微粒子(特に気相法シリカ)を含む液とは別液となる塗布液Bに含有して用いることが好ましい。すなわち、媒染剤を直接色材受容層用塗布液に添加すると、アニオン電荷を有する気相法シリカとの共存下では凝集を生ずる場合があるが、媒染剤を含む液と色材受容層用塗布液とをそれぞれを独立に調製し、個々に塗布する方法を採用すれば、無機微粒子の凝集を考慮する必要がなく、媒染剤の選択範囲が広がる。
【0049】
中でも特に、塩基性媒染剤(例えばポリアリルアミン)を用いることが好ましい。塩基性媒染剤を用いると、媒染剤としての役割を果たすと同時に、塩基性物質としての役割をも果たし、塩基性物質を用いることなく塩基性溶液を調製することが可能となる。
【0050】
前記カチオン性媒染剤としては、カチオン性基として、第1級〜第3級アミノ基、または第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好適に用いられるが、カチオン性の非ポリマー媒染剤も使用することができる。
前記ポリマー媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、または第4級アンモニウム塩基を有する単量体(以下、「媒染剤モノマー」という。)の単独重合体や、該媒染モノマーと他のモノマー(以下、「非媒染剤ポリマー」という。)との共重合体または縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマー媒染剤は、水溶性ポリマー、または水分散性のラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
【0051】
前記媒染剤モノマーとしては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド;
【0052】
トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート;
【0053】
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイド若しくはエチルアイオダイドによる4級化物、又はそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩若しくはアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
【0054】
具体的な化合物としては、例えば、モノメチルジアリルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド;
【0055】
N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムブロマイド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムスルホネート、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムアセテート等を挙げることができる。
その他、共重合可能なモノマーとして、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール等も挙げられる。
【0056】
また、アリルアミンやジアリルアミン、その誘導体、塩なども利用できる。このような化合物の例としてはアリルアミン、アリルアミン塩酸塩、アリルアミン酢酸塩、アリルアミン硫酸塩、ジアリルアミン、ジアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン酢酸塩、ジアリルアミン硫酸塩、ジアリルメチルアミンおよびこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルエチルアミンおよびこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルジメチルアンモニウム塩(該塩の対アニオンとしてはクロライド、酢酸イオン硫酸イオンなど)等が挙げられる。尚、これらのアリルアミン及びジアリルアミン誘導体はアミンの形態では重合性が劣るので塩の形で重合し、必要に応じて脱塩することが一般的な製法である。
また、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどの重合単位を用い、重合後に加水分解によってビニルアミン単位とすること、及びこれを塩にしたものも利用できる。
【0057】
前記非媒染剤モノマーとは、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、又は第4級アンモニウム塩基等の塩基性あるいはカチオン性部分を含まず、インクジェット用インク中の染料と相互作用を示さない、あるいは相互作用が実質的に小さい単量体をいう。
前記非媒染剤モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等のアラルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類、等が挙げられる。
【0058】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル部位の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、具体的には例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。前記非媒染剤モノマーも、一種単独で又は二種以上を組合せて使用できる。
【0059】
更に、ポリマー媒染剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレニミン、ポリアリルアミンおよびその変性体、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化でんぷん、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物、ポリアミジン、ポリビニルアミン等も好ましいものとして挙げることができ、ポリアリルアミン及びポリアリルアミン変性体が特に好ましい。
【0060】
前記ポリアリルアミン変性体は、アクリルニトリル、クロロメチルスチレン、TEMPO、エポキシヘキサン、ソルビン酸等をポリアリルアミンに2〜50mol%付加したものであり、好ましくは、アクリルニトリル、クロロメチルスチレン、TEMPOの5〜10mol%付加物であり、特にポリアリルアミンの5〜10mol%TEMPO付加物が、オゾン褪色性防止効果を発揮する観点から好ましい。
【0061】
前記媒染剤の分子量としては、重量平均分子量で2000〜300000が好ましい。分子量が上記範囲にあると、耐水性および耐経時ニジミ性をより向上させることができる。
【0062】
−色材受容層の形成方法−
インクジェット記録用シートを構成する色材受容層(および必要に応じて適宜設けられる下塗り層など各種層)を支持体上に形成する方法は、公知の方法から適宜選択することができる。好ましい方法としては、支持体上に層を構成する塗布液を塗布、乾燥する方法がある。この場合、2層以上を同時塗布により形成することもでき、特に全ての親水性層を1回の塗布で行なう同時塗布が好ましい。
【0063】
形成される色材受容層の空隙容量としては、概ね20〜40ml/m2が好適であり、その空隙率としては概ね50〜80%が好適である。また、2層以上からなる色材受容層の各層の構成は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0064】
本発明のインクジェット記録用シートの色材受容層は、以下に示す方法によって形成することも好適である。
すなわち、支持体表面に、無機微粒子と水溶性樹脂とを少なくとも含有する塗布液A(色材受容層用塗布液)を塗布して塗布層を形成し、さらに前記塗布液A及び/又は下記塩基性溶液(塗布液B)に架橋剤を添加し、かつ(i)前記塗布液Aを塗布して塗布層を形成すると同時、(ii)前記塗布液Aを塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、又は(iii)前記塗布液Aを塗布して形成される塗布層を乾燥して塗膜を形成した後、のいずれかのときに、pH8以上の塩基性溶液(塗布液B)を前記塗布層に付与し、前記塗布層を架橋硬化させる方法によって形成することができる。ここで、前記水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤は、前記塗布液あるいは塩基性溶液の少なくとも一方又は両方に含有せしめることができる。このようにして架橋硬化させた色材受容層を設けることは、インク吸収性や膜のひび割れ防止などの観点から好ましい。
【0065】
本発明において、例えば、気相法シリカ、カチオン性樹脂、ホウ酸、ポリビニルアルコール(PVA)、並びに後述の他の成分としてノニオン系若しくは両性界面活性剤および高沸点有機溶剤を含む塗布液(色材受容層用塗布液)は、以下のようにして調製できる。
すなわち、気相法シリカを水中に添加し、カチオン性樹脂を更に添加して、高圧ホモジナイザー、サンドミル等で分散した後、ホウ酸を加え、PVA水溶液(例えば、気相法シリカの1/3程度の質量のPVAとなるように)を加え、さらにノニオン系若しくは両性界面活性剤、高沸点有機溶剤を添加し、攪拌することによって調製することができる。ここで、水溶性セルロース樹脂を加える系ではPVA水溶液と共に水溶性セルロース樹脂を添加すればよい。得られた塗布液は均一ゾルであり、これを下記塗布方法で支持体上に塗布形成することにより、三次元網目構造を有する多孔質性の色材受容層を形成することができる。また、上記のように、ホウ酸をうすめた後にPVAを加えると、PVAの部分的なゲル化を防止することができる。
【0066】
本発明に係る色材受容層は、上記のように複数の層で構成されるため、無機微粒子及び水溶性樹脂と共に更に水溶性セルロース樹脂を含む塗布液A(色材受容層用塗布液)を少なくとも一液と、無機微粒子及び水溶性樹脂を含む塗布液A(水溶性セルロース樹脂を含まない色材受容層用塗布液)を少なくとも一液それぞれ調製する。
【0067】
本発明において、色材受容層用塗布液(塗布液A)は酸性溶液であることが好ましく、該塗布液のpHは5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましく、4.0以下であることが更に好ましい。塗布液のpHは、前記カチオン性樹脂の種類や添加量を適宜選定することで調整することができる。また、有機又は無機の酸を添加して調整してもよい。色材受容層用塗布液のpHが5.0以下であると、塗布液中におけるホウ素化合物による水溶性樹脂の架橋反応をより充分に抑制することができる。
【0068】
色材受容層用塗布液の塗布は、例えば、エクストルージョンダイコータ、エアードクターコータ、ブレッドコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、バーコータ等を用いた公知の塗布方法により行なうことができる。
【0069】
本発明に係る色材受容層は複数の層で構成されるが、色材受容層が受容層1および受容層2の二層からなる場合、例えば、まず支持体上に、水溶性セルロース樹脂含有の色材受容層用塗布液を塗布して受容層1を形成し、その後更に水溶性セルロース樹脂非含有の色材受容層用塗布液を塗布して受容層2を形成する。そして、上記した(i)〜(iii)のいずれかのときに、pH8以上の塩基性溶液を前記受容層2の上から付与し、受容層1及び2を架橋硬化させる。また、後述するように、受容層1および受容層2を同時塗布(好ましくは更に塩基性溶液も同時塗布)することにより形成することもできる。
ここで、色材受容層用塗布液の総塗布量としては、50〜300g/m2が一般的であり、100〜250g/m2が好ましい。
【0070】
塩基性溶液(塗布液B)は、pHが8.0以上であることが望ましい。更には、9.0以上であることがより好ましく、9.2以上であることが特に好ましく、9.5以上であることが最も好ましい。塗布液BのpHが8.0未満であると、色材受容層のひび割れが発生することがある。なお、このpH調整は、塩基性媒染剤(例えば、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、及びこれらの変性体等)及び/又は塩基性物質(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、エタノールアミン、エチレンジアミン、及びこれらの塩等)を用いることにより行うことができる。
また、塗布液B中に塗布液Aに用いた架橋剤をpHが8以上の条件のもとに添加してもよい。
【0071】
塩基性溶液(塗布液B)を付与する時期としては、色材受容層用塗布液(塗布液A)を塗布した後の塗布層が減率乾燥を示すようになる前に付与することが好ましい。
ここで、前記「塗布層が減率乾燥を示すようになる前」とは、通常、色材受容層用塗布液の塗布直後から数分間の過程を指し、この間においては、塗布された塗布層中の溶剤(分散媒体)の含有量が時間に比例して減少する「恒率乾燥」の現象を示す。この「恒率乾燥」を示す時間については、例えば、化学工学便覧(p.707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0072】
上記のように、塗布層は減率乾燥速度を示すようになるまで乾燥されるが、該乾燥は一般に40〜180℃で0.5〜10分間(好ましくは0.5〜5分間)行なわれる。この乾燥時間としては、塗布量により異なるが上記範囲が適当である。
【0073】
前記塗布層が減率乾燥を示すようになる前に塩基性溶液を付与する方法としては、▲1▼塩基性溶液を塗布層上に更に塗布する方法、▲2▼スプレー等の方法により噴霧する方法、▲3▼塩基性溶液中に、該塗布層が形成された支持体を浸漬する方法、等が挙げられる。
【0074】
上記方法▲1▼において、塩基性溶液を塗布する方法としては、例えば、カーテンフローコータ、エクストルージョンダイコータ、エアードクターコーター、ブレッドコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、バーコータ等を用いた公知の塗布方法を利用することができる。しかし、エクストリュージョンダイコータ、カーテンフローコータ、バーコータ等のように、既に形成されている塗布層にコータが直接接触しない方法を利用することが好ましい。
【0075】
塩基性溶液の付与(塗布)量としては、5〜50g/m2であることが一般的であり、10〜30g/m2であることが好ましい。
【0076】
また、塩基性溶液は、色材受容層用塗布液の塗布と同時に付与してもよい。
この場合、色材受容層用塗布液および塩基性溶液を、該色材受容層用塗布液が支持体と接触するようにして支持体上に同時塗布(重層塗布)し、その後乾燥硬化させることにより色材受容層を形成することができる。ここで、色材受容層用塗布液として複数の塗布液を同時に塗布してもよく、例えば色材受容層が二層構成よりなる場合、水溶性セルロース樹脂含有の塗布液A1と非含有の塗布液A2の二種(色材受容層用塗布液)および塗布液B(塩基性溶液)の合計3液を、水溶性セルロース樹脂含有の塗布液A1が支持体と接触するようにして支持体上に同時塗布(重層塗布)すればよい。
【0077】
上記の同時塗布(重層塗布)は、例えば、エクストルージョンダイコータ、カーテンフローコータを用いた塗布方法により行なうことができる。同時塗布の後、形成された塗布層は乾燥されるが、この場合の乾燥は、一般に塗布層を40〜150℃で0.5〜10分間加熱することにより行なわれ、好ましくは、40〜100℃で0.5〜5分間加熱することにより行なわれる。
例えば、ホウ素化合物を使用する場合は、60〜100℃で5〜20分間加熱することが好ましい。
【0078】
例えば、エクストルージョンダイコータにより3液の同時塗布(重層塗布)を行なった場合、同時に吐出される3種の塗布液(例えば、上記の塗布液A1、塗布液A2、塗布液B)は、エクストルージョンダイコータの吐出口附近で、即ち、支持体上に移る前に重層形成され、その状態で支持体上に重層塗布される。塗布前に重層された3つの塗布液は、支持体に移る際、既に液界面で架橋反応を生じ易いことから、エクストルージョンダイコータの吐出口付近では、吐出される3液が混合して増粘し易くなり、塗布操作に支障を来す場合がある。したがって、同時塗布する際には色材受容層用塗布液(塗布液A1及びA2)及び塩基性溶液(塗布液B)の塗布と共に、更に架橋剤と反応しない材料からなるバリアー層液(中間層液)を、特に水溶性セルロース非含有の塗布液A2と塗布液Bとの間に介在させて同時4重層塗布することが好ましい。
【0079】
前記バリアー層液は、ホウ素化合物と反応せず液膜を形成できるものであれば、特に制限なく選択できる。例えば、ホウ素化合物と反応しない水溶性樹脂を微量含む水溶液や、水等を挙げることができる。水溶性樹脂は、増粘剤等の目的で、塗布性を考慮して使用されるもので、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、メチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルメチルセルロ−ス、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等のポリマーが挙げられる。
尚、バリアー層液には、上記媒染剤を含有させることもできる。
【0080】
また、各液の調製に使用可能な溶媒としては、水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒が挙げられる。前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
【0081】
支持体上に色材受容層を形成した後、該色材受容層は、例えば、スーパーカレンダ、グロスカレンダ等を用い、加熱加圧下にロールニップ間を通してカレンダー処理を施すことにより、表面平滑性、光沢度、透明性および塗膜強度を向上させることが可能である。しかしながら、該カレンダー処理は、空隙率を低下させる要因となることがあるため(即ち、インク吸収性が低下することがあるため)、空隙率の低下が少ない条件を設定して行なう必要がある。
【0082】
カレンダー処理を行なう場合のロール温度としては、30〜150℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。また、カレンダー処理時のロール間の線圧としては、50〜400kg/cmが好ましく、100〜200kg/cmがより好ましい。
【0083】
前記色材受容層の層厚としては、インクジェット記録の場合では、液滴を全て吸収するだけの吸収容量をもつ必要があるため、層中の空隙率との関連で決定する必要がある。例えば、インク量が8nL/mm2で、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上の膜が必要となる。この点を考慮すると、本発明に係る色材受容層全体の層厚としては、10〜50μmが好ましい。
【0084】
また、色材受容層の細孔径は、メジアン径で0.005〜0.030μmが好ましく、0.01〜0.025μmがより好ましい。空隙率および細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター(商品名:ボアサイザー9320−PC2、(株)島津製作所製)を用いて測定することができる。
【0085】
また、色材受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、色材受容層を透明フイルム支持体上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株))を用いて測定することができる。
【0086】
−他の成分−
更に、色材受容層は、必要に応じて下記成分を含有して構成される。
色材受容層用塗布液には、ノニオン系若しくは両性界面活性剤を含有し、色材受容層用塗布液と異なる前記塩基性溶液にはノニオン系界面活性剤を含有することが好ましい。
【0087】
前記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(例えば、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等)、グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、グリセロールモノオレート等)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類(モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリン等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート等)、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が好ましい。
【0088】
前記ノニオン系界面活性剤は、前記色材受容層用塗布液および塩基性溶液において使用することができる。また、前記ノニオン系界面活性剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。前記色材受容層用塗布液および塩基性溶液の両液にノニオン系界面活性剤を含有する場合、同種および異種のいずれであってもよい。
【0089】
前記両性界面活性剤としては、アミノ酸型、カルボキシアンモニウムベタイン型、スルホンアンモニウムベタイン型、アンモニウム硫酸エステルベタイン型、イミダゾリウムベタイン型等が挙げられ、例えば、米国特許第3,843,368号明細書、特開昭59−49535号公報、同63−236546号公報、特開平5−303205号公報、同8−262742号公報、同10−282619号公報等に記載されているものを好適に使用できる。該両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤が好ましく、該アミノ酸型両性界面活性剤としては、特開平5−303205号公報に記載されているように、例えば、アミノ酸(グリシン、グルタミン酸、ヒスチジン酸等)から誘導体化されたものであり、長鎖のアシル基を導入したN−アミノアシル酸およびその塩が挙げられる。上記両性界面活性剤は1種で使用してもよく、2種以上を併用してもよく、さらに、上記ノニオン系界面活性剤と併用してもよい。
【0090】
色材受容層用塗布液におけるノニオン系若しくは両性界面活性剤の含有量としては、0.01〜1質量%が好ましく、特に好ましくは0.03〜0.6質量%である。また、塩基性溶液におけるノニオン系界面活性剤の含有量としては、0.001〜0.5質量%が好ましく、特に好ましくは0.05〜0.3%質量である。
【0091】
色材受容層用塗布液にノニオン系若しくは両性界面活性剤と高沸点有機溶剤とを含有させると、インクジェット記録用シートのカールを回避し、平面性を保持することができる。
前記高沸点有機溶剤としては、水溶性のものが好ましく、該水溶性の高沸点有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ポロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコール(重量平均分子量が400以下)等のアルコール類が挙げられる。好ましくは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)である。
【0092】
前記高沸点有機溶剤の色材受容層用塗布液中における含有量としては、0.05〜1質量%が好ましく、特に好ましくは0.1〜0.6質量%である。
【0093】
また、色材受容層にチオウレアまたはチオシアン酸塩等のオゾン褪色防止剤を含有することにより画像のオゾン褪色を防止することができる。
チオシアン酸塩としては、例えば、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸亜鉛、チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸マグネシウム、チオシアン酸アルミニウム、チオシアン酸リチウム、チオシアン酸銀、チオシアン酸クロロメチル、チオシアン酸コバルト、チオシアン酸銅、チオシアン酸鉛、チオシアン酸バリウム、チオシアン酸ベンジル等が挙げられる。チオウレアおよびチオシアン酸塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
前記チオウレアまたはチオオシアン酸塩は、色材受容層用塗布液および塩基性溶液のいずれに添加してもよいが、液安定性の点から塩基性溶液に添加して色材受容層に付与するのが好ましい。
前記チオウレアまたはチオシアン酸塩の色材受容層中における含有量としては、1〜20質量%が好ましく、特に好ましくは2〜10質量%である。該含有量が1質量%以上であると、オゾン褪色防止効果がより充分に発揮され、20質量%未満であると、ひび割れの発生を効果的に抑制することができる。
【0095】
また更に、色材の劣化を抑制する目的で、各種の紫外線吸収剤、酸化防止剤、一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤を含んでいてもよい。
上記紫外線吸収剤としては、桂皮酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾリルフェノール誘導体等が挙げられる。例えば、α−シアノ−フェニル桂皮酸ブチル、o−ベンゾトリアゾールフェノール、o−ベンゾトリアゾール−p−クロロフェノール、o−ベンゾトリアゾール−2,4−ジ−t−ブチルフェノール、o−ベンゾトリアゾール−2,4−ジ−t−オクチルフェノール等が挙げられる。ヒンダートフェノール化合物も紫外線吸収剤として使用でき、具体的には少なくとも2位または6位のうち1ヵ所以上が分岐アルキル基で置換されたフェノール誘導体が好ましい。
【0096】
また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤等も使用できる。例えば、特開昭47−10537号公報、同58−111942号公報、同58−212844号公報、同59−19945号公報、同59−46646号公報、同59−109055号公報、同63−53544号公報、特公昭36−10466号公報、同42−26187号公報、同48−30492号公報、同48−31255号公報、同48−41572号公報、同48−54965号公報、同50−10726号公報、米国特許第2,719,086号明細書、同3,707,375号明細書、同3,754,919号明細書、同4,220,711号明細書等に記載されている。
【0097】
蛍光増白剤も紫外線吸収剤として使用でき、例えば、クマリン系蛍光増白剤等が挙げられる。具体的には、特公昭45−4699号公報、同54−5324号公報等に記載されている。
【0098】
前記酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、同309401号公報、同309402号公報、同310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同60−107384号公報、同60−107383号公報、同60−125470号公報、同60−125471号公報、同60−125472号公報、同60−287485号公報、同60−287486号公報、同60−287487号公報、同60−287488号公報、同61−160287号公報、同61−185483号公報、同61−211079号公報、同62−146678号公報、同62−146680号公報、同62−146679号公報、同62−282885号公報、同62−262047号公報、同63−051174号公報、同63−89877号公報、同63−88380号公報、同66−88381号公報、同63−113536号公報、
【0099】
同63−163351号公報、同63−203372号公報、同63−224989号公報、同63−251282号公報、同63−267594号公報、同63−182484号公報、特開平1−239282号公報、特開平2−262654号公報、同2−71262号公報、同3−121449号公報、同4−291685号公報、同4−291684号公報、同5−61166号公報、同5−119449号公報、同5−188687号公報、同5−188686号公報、同5−110490号公報、同5−1108437号公報、同5−170361号公報、特公昭48−43295号公報、同48−33212号公報、米国特許第4814262号、同第4980275号公報等に記載のものが挙げられる。
【0100】
具体的には、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4,−テトラヒドロキノリン、シクロヘキサン酸ニッケル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2−メチル−4−メトキシ−ジフェニルアミン、1−メチル−2−フェニルインドール等が挙げられる。
【0101】
前記褪色性防止剤は、単独でも2種以上を併用してもよい。この上記褪色性防止剤は、水溶性化、分散、エマルション化してもよく、マイクロカプセル中に含ませることもできる。褪色性防止剤の添加量としては、第1の塗布液の0.01〜10質量%が好ましい。
【0102】
また、色材受容層は、無機微粒子の分散性を高める目的で、各種無機塩類、pH調整剤として酸やアルカリ等を含んでいてもよい。
更に、表面の摩擦帯電や剥離帯電を抑制する目的で、電子導電性を持つ金属酸化物微粒子を、表面の摩擦特性を低減する目的で各種のマット剤を含んでいてもよい。
【0103】
[支持体]
支持体としては、プラスチック等の透明材料よりなる透明支持体、紙等の不透明材料からなる不透明支持体のいずれをも使用できる。色材受容層の透明性を生かす上では、透明支持体又は高光沢性の不透明支持体を用いることが好ましい。
【0104】
前記透明支持体に使用可能な材料としては、透明性で、OHPやバックライトディスプレイで使用される時の輻射熱に耐え得る性質を有する材料が好ましい。該材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類;ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等を挙げることができる。中でも、ポリエステル類が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
前記透明支持体の厚みとしては、特に制限はないが、取り扱い易い点で、50〜200μmが好ましい。
【0105】
高光沢性の不透明支持体としては、色材受容層の設けられる側の表面が40%以上の光沢度を有するものが好ましい。前記光沢度は、JIS P−8142(紙及び板紙の75度鏡面光沢度試験方法)に記載の方法に従って求められる値である。具体的には、下記支持体が挙げられる。
【0106】
例えば、アート紙、コート紙、キャストコート紙、銀塩写真用支持体等に使用されるバライタ紙等の高光沢性の紙支持体;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ニトロセルロース,セルロースアセテート,セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル類、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等のプラスチックフィルムに白色顔料等を含有させて不透明にした(表面カレンダー処理が施されていてもよい。)高光沢性のフィルム;或いは、前記各種紙支持体、前記透明支持体若しくは白色顔料等を含有する高光沢性のフィルムの表面に、白色顔料を含有若しくは含有しないポリオレフィンの被覆層が設けられた支持体等が挙げられる。
白色顔料含有発泡ポリエステルフィルム(例えば、ポリオレフィン微粒子を含有させ、延伸により空隙を形成した発泡PET)も好適に挙げることができる。更に銀塩写真用印画紙に用いられるレジンコート紙も好適である。
【0107】
前記不透明支持体の厚みについても特に制限はないが、取り扱い性の点で、50〜300μmが好ましい。
【0108】
また、前記支持体の表面には、濡れ特性及び接着性を改善するために、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等を施したものを使用してもよい。
【0109】
次に、前記レジンコート紙に用いられる原紙について詳述する。
前記原紙としては、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ、あるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。前記木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。
但し、LBSP及び/又はLDPの比率としては、10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
【0110】
前記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸パルプ)が好ましく用いられ、漂白処理を行なって白色度を向上させたパルプも有用である。
【0111】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0112】
抄紙に使用するパルプの濾水度としては、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長が、JIS P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0113】
原紙の坪量としては、30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さとしては、40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P−8118)が一般的である。
更に、原紙剛度としては、JIS P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0114】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては、前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
原紙のpHは、JIS P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0115】
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/又は高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0116】
特に、色材受容層を形成する側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広く行なわれているように、ルチル又はアナターゼ型の酸化チタン、蛍光増白剤、群青をポリエチレン中に添加し、不透明度、白色度及び色相を改良したものが好ましい。ここで、酸化チタン含有量としては、ポリエチレンに対して、概ね3〜20質量%が好ましく、4〜13質量%がより好ましい。ポリエチレン層の厚みは特に限定はないが、表裏面層とも10〜50μmが好適である。さらにポリエチレン層上に色材受容層との密着性を付与するために下塗り層を設けることもできる。該下塗り層としては、水性ポリエステル、ゼラチン、PVAが好ましい。また、該下塗り層の厚みとしては、0.01〜5μmが好ましい。
【0117】
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理を行なって通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも使用できる。
【0118】
支持体にはバックコート層を設けることもでき、このバックコート層に添加可能な成分としては、白色顔料や水性バインダー、その他の成分が挙げられる。
バックコート層に含有される白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
【0119】
バックコート層に用いられる水性バインダーとしては、例えば、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、澱粉、カチオン化澱粉、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。
バックコート層に含有されるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
【0120】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を表す。
【0121】
(実施例1)
−支持体の作製−
秤量186g/m2のアート紙(OK金藤;王子製紙(株)製)にコロナ放電処理を行なった後、溶融押出機を用いて高密度ポリエチレンを厚さ19μmとなるようにコーティングし、マット面からなる樹脂層を形成した(以下、樹脂層面を「裏面」と称する。)。この裏面側の樹脂層にさらにコロナ放電処理を施し、その後、帯電防止剤として、酸化アルミニウム(アルミナゾル100、日産化学工業(株)製)と二酸化ケイ素(スノーテックスO、日産化学工業(株)製)とを1:2の比(質量比)で水に分散した分散液を、乾燥質量が0.2g/m2となるように塗布した。
【0122】
更に、樹脂層の設けられていない側のフェルト面(表面)側にコロナ放電処理を施した後、アナターゼ型二酸化チタン10%、微量の群青、および蛍光増白剤0.01%(対ポリエチレン)を含有する、MFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを溶融押出機を用いて、厚み24μmとなるように溶融押し出しし、高光沢な熱可塑性樹脂層を基紙の表面側に形成し(以下、この高光沢面を「オモテ面」と称する。)、支持体とした。なお、支持体のオモテ面は塗布液を塗布する前にコロナ放電処理をして使用した。
【0123】
−表層形成用塗布液の調製−
下記組成中のイオン交換水に気相法シリカ微粒子を混合し、これにモノメチルジアリルアンモニウムクロライドをさらに混合し、ナノマーザーLA31(ナノマーザー(株)製)を用いて、500kg/m2の圧力で2回処理を行なった。その後、60分間攪拌を行ない、撹拌しながらホウ酸溶液(5.3%)を添加した。そこに、下記組成中のポリビニルアルコール7%水溶液を攪拌しながら加え、さらにポリオキシエチレンラウリルエーテル及びメガファックF1405(100%)とジエチレングリコールモノブチルエーテルとを加え、pH3.5の表層形成用塗布液(受容層2用塗布液)を調製した。無機微粒子と水溶性樹脂との質量比(無機微粒子:水溶性樹脂)は、4.5:1であった。
【0124】
【0125】
−下層形成用塗布液の調製−
下記組成中のイオン交換水に気相法シリカ微粒子を混合し、これにモノメチルジアリルアンモニウムクロライドをさらに混合し、ナノマーザーLA31(ナノマーザー(株)製)を用いて、500kg/m2の圧力で2回処理を行なった。その後、60分間攪拌を行ない、撹拌しながらホウ酸溶液(5.3%)を添加した。そこに、下記組成中のポリビニルアルコール7%水溶液とヒドロキシプロピルセルロース(水溶性セルロース樹脂)とを攪拌しながら加え、さらにポリオキシエチレンラウリルエーテル及びメガファックF1405(100%)とジエチレングリコールモノブチルエーテルとを加え、pH3.5の下層形成用塗布液(受容層1用塗布液)を調製した。無機微粒子と水溶性樹脂との質量比(無機微粒子:水溶性樹脂)は、4.5:1であった。
【0126】
【0127】
−インクジェット記録用シートの作製−
上記より得た表層形成用塗布液と下層形成用塗布液とを、支持体のオモテ面に下層形成用塗布液が接するようにエクストルージョンダイコーターを用いて二層同時に各々100ml/m2(乾燥固形分10g/m2相当)の塗布量で塗布し(全塗布量200ml/m2)、熱風乾燥機にて80℃(風速3〜8m/sec)で塗布層の固形分濃度が20%になるまで乾燥させた。塗布層はこの期間恒率乾燥を示した。その直後、下記組成の塩基性溶液(pH9.5)に30秒浸漬して該塗布層上にその20g/m2を付着させ、更に80℃下で10分間乾燥させた。これにより、支持体/受容層1/受容層2で構成され、受容層1及び受容層2からなる乾燥膜厚32μmの色材受容層が設けられた、本発明のインクジェット記録用シート(1)を得た。
【0128】
〔塩基性溶液の組成〕
・イオン交換水 …34.7kg
・ポリアリルアミン10%水溶液(塩基性媒染剤) …10.0kg
(PAA−10C、日東紡(株)製;重量平均分子量15000)
・塩化アンモニウム(表面pH調整剤) … 0.3kg
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル … 5.0kg
(ノニオン系界面活性剤;エマルゲン109P(2%)、花王(株)製)
【0129】
(実施例2)
実施例1において、下層形成用塗布液の調製に用いたヒドロキシプロピルセルロース(HPC−SSL)を、メチルセルロース(メトローズSM(10%)、信越化学工業(株)製;水溶性セルロース樹脂)に代えたこと以外、実施例1と同様にして、二層からなる色材受容層を有する本発明のインクジェット記録用シート(2)を得た。
【0130】
(比較例1)
実施例1において、表層形成用塗布液を用いず、実施例1と同様にして得た下層形成用塗布液を、支持体のオモテ面にエクストルージョンダイコーターを用いて200ml/m2の塗布量で塗布したこと以外、実施例1と同様にして、単層構成の色材受容層を有する比較のインクジェット記録用シート(3)を得た。
【0131】
(比較例2)
実施例1において、下層形成用塗布液を用いず、実施例1と同様にして得た表層形成用塗布液を、支持体のオモテ面にエクストルージョンダイコーターを用いて200ml/m2の塗布量で塗布したこと以外、実施例1と同様にして、単層構成の色材受容層を有する比較のインクジェット記録用シート(4)を得た。
【0132】
(比較例3)
実施例1において、表層形成用塗布液に更にメチルセルロース(メトローズSM(10%)、信越化学工業(株)製;水溶性セルロース樹脂)19.8kgを加えたこと以外、実施例1と同様にして、二層からなる色材受容層を有する比較のインクジェット記録用シート(5)を得た。
【0133】
(評価)
上記より得られた各インクジェット記録用シート(1)〜(5)を用いて、以下の評価を行なった。評価した結果は下記表1に示す。
(1) 色濃度
インクジェットプリンタ(PM−900C、セイコーエプソン社製)を用いて、各インクジェット記録用シート上にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのベタ画像をそれぞれ印画し、23℃、60%RHの環境条件下に24時間保管した。各色の濃度を反射濃度測定計(X−rite938、X−rite社製)を用いて測定した。
【0134】
(2) 経時ニジミ
インクジェットプリンタ(PM−900C、セイコーエプソン社製)を用いて、各インクジェット記録用シート上にマゼンタインクとブラックインクとを隣り合わせにした格子状の線状パターン(線幅0.28mm)を印画した。印画直後に透明PP製ファイルに挿入して35℃、80%RH環境下で3日間保存し、線状パターンの黒線の幅を測定した。別途、印画直後の黒線の幅を求めておき、下記式で経時ニジミ(%)を算出し、評価の指標とした。
経時ニジミ(%)= (3日間保存後の線状パターンの黒線の幅)/(印画直後の黒線の幅)×100
【0135】
【表1】
【0136】
上記表1に示すように、色材受容層を複数層で構成し、その最表層以外の下層に水溶性セルロース樹脂を含有した本発明のインクジェット記録用シート(1)〜(2)では、高濃度の画像が得られただけでなく、形成された画像の経時ニジミをも抑制することができた。
一方、色材受容層が水溶性セルロース樹脂を含む単層で構成されたインクジェット記録用シート(3)では、経時ニジミは抑えられたものの、高濃度は得られなかった。水溶性セルロース樹脂を含まない色材受容層が設けられたインクジェット記録用シート(4)では、高濃度が得られたが経時ニジミを抑止することはできなかった。また、色材受容層を二層構成としたが、その表層にも水溶性セルロース樹脂を含有したインクジェット記録用シート(5)では、比較例1と同様に高濃度の画像を得ることはできなかった。
【0137】
【発明の効果】
本発明によれば、記録画像の濃度低下を招来することなく、画像の経時ニジミを効果的に抑止して高画質の画像を形成、保持することができるインクジェット記録用シートを提供することができる。
Claims (3)
- 支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、
前記色材受容層が複数の層で構成され、該色材受容層の前記支持体から最も離れた最表層を除く少なくとも一層が水溶性セルロース樹脂を含有することを特徴とするインクジェット記録用シート。 - 前記水溶性セルロース樹脂が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロースの少なくとも一種である請求項1に記載のインクジェット記録用シート。
- 最表層が無機微粒子を含み、該無機微粒子が平均一次粒子径20μm以下の気相法シリカである請求項1又は2に記載のインクジェット記録用シート。
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