JP2004097998A - 集塵機用フィルターおよびその製造方法 - Google Patents

集塵機用フィルターおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】PTFE多孔質膜とエンボス形状等の凹凸表面形態を有する通気性支持材とを積層する構成の集塵機用フィルターにおいて、PTFE多孔質膜の破壊を防いで、捕集効率の低下および圧力損失の増加を抑制する。
【解決手段】PTFE多孔質膜3と、任意の方向における引張強度が1.5N/cm以上である第1の通気性支持材2と、凹凸表面形態の第2の通気性支持材1とが、この順に積層されている。第1の通気性支持材2には、例えば、通気度がフラジール法で50cm/cm/s以上で、目付け重量が80g/m以下の不織布等が好適に用いられる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有価粉体や化学合成物等の回収、並びに、空調における空気中からのダスト除去等に用いられる集塵機用フィルターと、その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食品分野における小麦粉に代表される有価粉体や化学合成物の回収、および、セメントや金属粉体の回収などには、従来よりバグフィルター式集塵機やカートリッジフィルター式集塵機が用いられている。バグフィルター式集塵機は、一般的には高炉、製鉄炉、および焼却炉などに発生する排煙からのダスト除去用の大型の集塵機として用いられることが多い。最近特に問題とされている公害防止の観点から、電気式集塵機に代わって捕集性能に優れたバグフィルター式集塵機が多用されるようになっている。一方、カートリッジフィルター式集塵機は、耐熱用途でない部分で用いられることが多くなっている。特に、有価粉体や化学合成物の回収、およびセメントや金属粉体の回収等には、カートリッジフィルター式集塵機が多用されている。また、最近では、空調における空気中からのダスト除去等にも利用されることが多くなっている。一般に、カートリッジフィルター式集塵機は、小型のものが多くて扱いやすく、さらにフィルターの取り替えが容易であるという便利さから、普及してきている。
【0003】
バグフィルター式集塵機に用いられるフィルターの材料には、高い捕集性能、耐熱性、耐薬品性、および低エネルギー洗浄性等の諸物性を満足させるために、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記載する。)多孔質膜が用いられている。このPTFE多孔質膜をフィルターとして使用する場合、フェルト、織布、または帆布等の通気性支持材と積層するのが一般的である。これにより、PTFE多孔質膜によって高い捕集性およびダスト離脱性を実現すると共に、通気性支持材によって十分な強度を確保することができ、フィルター寿命を大きく延長することが可能となる。
【0004】
また、最近では有価粉体等の粒子が小さくなっており、その結果処理する粉塵もより細かくなっていることから、カートリッジフィルター式集塵機に用いられるフィルターの材料にもPTFE多孔質膜を用いなければ十分に処理できないケースがみられるようになってきている。
【0005】
また、空調における空気中からのダスト除去についても、空気中から大気塵を90%以上の捕集効率で除去してクリーンなエアーを供給するシステムもあり、フィルター材としてPTFE多孔質膜を用いる必要が生じている。
【0006】
以上のようなフィルター材は、容積内での面積をできるだけ大きくするために、プリーツ加工し、さらに円筒状もしくは平板状に加工して使用されることが多い。このため、フィルター材に積層される通気性支持材は、一般的にプリーツ加工時の形状を保持し、かつ、強度を有するように、予めエンボス加工して使われる。このような通気性支持材の代表的なものとして、エンボス加工等により表面に規則正しい凹凸模様が形成されたポリエステル系不織布が挙げられる。また、不織布からなる通気性支持材をカートリッジに成型する技術について特開2001−293310号公報や特開2001−293316号公報等に開示されている。
【0007】
このように、フィルター材としてのPTFE多孔質膜の必要性は近年増加しており、PTFE多孔質膜と通気性支持材とのラミネートが重要なポイントとなっている。表面にエンボス加工が施された通気性支持材にPTFE多孔質膜を積層する場合、一般に、熱融着による接着もしくは接着剤による接着により、積層が行われている。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−293310号公報(第2−4頁、第1−11図)
【特許文献2】
特開2001−293316号公報(第2−4頁、第1−4図)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、表面に設けられた凹凸の高低差が激しい通気性支持材にPTFE多孔質膜をラミネートする場合、PTFE多孔質膜がクラックや割れ等のダメージを受けてしまうという問題が生じる。また、従来のラミネート技術においては、通気性支持材表面の凸部にのみPTFE多孔質膜がラミネートされ、凹部でPTFE多孔質膜が密着せずに浮いた状態となってしまうことがある。このため、プリーツ加工時や、集塵機運転中にダスト払い落としのために逆圧をかけた時等に、PTFE多孔質膜が破壊されたり通気性支持材から剥離したりして、十分な捕集効率が得られないという問題が生じる。また、このようなダスト払い落とし時に生じるPTFE多孔質膜の破壊や剥離を考慮して加える圧力を小さくすると、ダスト離脱性が悪くなり圧力損失が増加するので好ましくない。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の集塵機用フィルターは、PTFE多孔質膜と、前記PTFE多孔質膜と貼り合わされた、任意の方向における引張強度が1.5N/cm以上の第1の通気性支持材と、前記第1の通気性支持材の前記PTFE多孔質膜が貼り合わされた面と反対側の面に貼り合わされた、表面に凹凸形状を含む第2の通気性支持材とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の集塵機用フィルターの製造方法は、PTFE多孔質膜と、任意の方向における引張強度が1.5N/cm以上である第1の通気性支持材とを貼り合わせて、積層構造体を作製する第1の工程と、表面に凹凸形状を含む第2の通気性支持材と前記積層構造体とを、前記第2の通気性支持材と前記第1の通気性支持材とを対向させて貼り合わせる第2の工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の集塵機用フィルターは、PTFE多孔質膜と、前記PTFE多孔質膜と貼り合わされた、任意の方向における引張強度が1.5N/cm以上の第1の通気性支持材と、前記第1の通気性支持材の前記PTFE多孔質膜が貼り合わされた面と反対側の面に貼り合わされた、表面に凹凸形状を含む第2の通気性支持材とを含んでいる。
【0013】
なお、前記引張強度は、JIS L 1096 6.12に基づいて測定される値であり、試験片30cm×5cm、引張速度15cm/分、つかみ間隔20cmである。
【0014】
この集塵機用フィルターは、PTFE多孔質膜と凹凸形状を含む第2の通気性支持材とを直接貼り合わせるのではなく、間に引張強度が1.5N/cmの第1の通気性支持材を介して貼り合わせた構成となっている。このような構成では、PTFE多孔質膜は第1の通気性支持材自体の強度により補強されることになる。このように補強されたPTFE多孔質膜と第2の通気性支持材とが貼り合わされているので、たとえ第2の通気性支持材の凹凸の高低差が激しい場合であっても、PTFE多孔質膜にクラック等の破壊が生じにくい。なお、このような構成においても、やはり第2の通気性支持材の表面は凹凸形状となっているので凹部には第1の通気性支持材が密着しにくく、PTFE多孔質膜と第1の通気性支持材とを積層させた積層構造体が第2の通気性支持材の凹部表面から浮いた状態になりやすい。しかしながら、第1の通気性支持材にて補強されたPTFE多孔質膜は、プリーツ加工時や集塵機運転中にダスト払い落としのために逆圧をかけた時であっても破壊されにくく、さらに第2の通気性支持体から剥離しにくい。この第1の通気性支持材の任意の方向における引張強度は1.5N/cm以上であるため、PTFE多孔質膜はプリーツ加工時のストレスや、ダストを十分に払い落とせる大きさの逆圧(例えば0.7MPa程度の逆圧)にも、十分に耐えることができる。
【0015】
本発明の集塵機用フィルターに用いられる第1の通気性支持材は、PTFE多孔質膜と第2の通気性支持材とを貼り合わせるためのバインダーとしての役割を果たしている。従って、第1の通気性支持材の物性によって、得られる集塵機用フィルターの特性が決定される。そこで、本発明の集塵機用フィルターにおいては、前記第1の通気性支持材の通気度がフラジール法で50cm/cm/s以上であることが好ましく、さらに、100cm/cm/s以上であることがより好ましい。得られる集塵機用フィルターの通気性を低下させないためである。なお、フラジール法による通気度の測定とは、圧力12.7mmHO条件下で試験片を透過する空気量を測定することによって行われる。より具体的には、JIS L 1096(6.27.1 A法)に従い、フラジール型試験機を用いて測定される値である。
【0016】
また、本発明の集塵機用フィルターにおいては、前記第1の通気性支持材の目付け重量が80g/m以下であることが好ましく、さらに、50g/m以下であることがより好ましい。PTFE多孔質膜や第2の通気性支持材と熱融着にて接着する場合に、十分な熱伝達率を確保して接着力の低下を防ぐためである。
【0017】
また、本発明の集塵機用フィルターにおいては、前記第1の通気性支持材が不織布であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の集塵機用フィルターにおいては、前記第1の通気性支持材は、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ナイロン系、およびポリウレタン系から選ばれる少なくとも一種類の材質からなることが好ましい。この場合、これらの材質を混合した混合品であってもよく、また、組み合わせによっては芯鞘構造を採用することもできる。熱融着によりPTFE多孔質膜および第2の通気性支持材と貼り合わせるためである。
【0019】
また、本発明の集塵機用フィルターにおいては、前記第1の通気性支持材の融点が100〜260℃の範囲であることが好ましい。
【0020】
本発明の集塵機用フィルターにおいては、前記第2の通気性支持材はポリエステル系の材質からなることが好ましい。また、本発明の集塵機用フィルターにおいては、前記第2の通気性支持材が不織布であることが好ましい。なお、第2の通気性支持体の表面に設けられている凹凸の形状や数は特に規定するものではないが、凹凸の高低差は100μm〜1.5mmの範囲程度のものが好ましい。また、凹凸形状の例としては、図2(a)(b)に示されるような形状が挙げられる。図2(a)(b)は、凹凸が設けられている面側から見た第2の通気性支持材1の平面図であり、1aは凹部、1bは凸部を示している。なお、図2(a)に示す第2の通気性支持材1に設けられた凹部1aの形状は円形に限定されるものではなく、楕円形であってもよい。また、第2の通気性支持材の引張強度は特に規定するものではないが、集塵機用フィルターに用いられるものとしての一般的な引張強度は、縦方向300〜500N/cm、横方向200〜400N/cm程度である。
【0021】
本発明の集塵機用フィルターにおいては、前記PTFE多孔質膜の通気度が、フラジール法で4cm/cm/s以上であることが好ましい。PTFE多孔質膜の通気度がフラジール法で4cm/cm/s未満であると、得られるフィルターの通気性が低下して、集塵機運転時の圧力損失が増大してしまうからである。一方、PTFE多孔質膜の通気度の上限は特に規定されるものではないが、フラジール法で30cm/cm/s以上であることが好ましい。また、PTFE多孔質膜の通気度のより好ましい範囲は8〜20cm/cm/sである。
【0022】
PTFE多孔質膜の上記以外の特性は、特に限定されないが、通常、膜厚は3〜50μm、孔径は0.5〜10μm、気孔率は40〜95%である。
【0023】
上記特性を有するPTFE多孔質膜は、例えば、未焼成のPTFEシートを延伸により多孔質化することによって作製することができる。以下、このPTFE多孔質膜の製造方法の一例について簡単に説明する。
【0024】
PTFEシートは、未焼成のPTFE粉末と液状潤滑剤とを混合し、この混合物を押出しおよび圧延から選ばれる少なくとも1つの手段によりシート状に成形することにより得られる。PTFE粉末としてはPTFEファインパウダーが好適に用いられる。また、液状潤滑剤としては、流動パラフィン、ナフサなどの炭化水素油、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類等が使用できる。液状潤滑剤の添加量は、PTFE粉末100重量部に対して5〜50重量部が適当である。なお、PTFEシートの厚さは0.1〜0.7mm程度が適当である。
【0025】
延伸は、以下に説明するような条件で2軸方向に行うことが好ましい。また、延伸に先立って、PTFEシートに含まれる液状潤滑剤を加熱または抽出によって除去しておくことが好ましい。
【0026】
まず、シートの成形(押出し)方向、つまり長尺シートにおいてはその長手方向に一軸延伸する。延伸はロール延伸、テンター延伸等の慣用の方法により行うことができる。延伸温度は、PTFEの融点(327℃)より低ければ特に限定するものではないが、均一な延伸のためには240〜320℃に設定することが好ましい。また、延伸倍率は、5〜30倍、更には10〜20倍の範囲とすることが好ましい。5倍未満であるとPTFE多孔質膜の通気度を十分に確保することが困難であり、30倍を超えるとPTFE多孔質膜の長手方向における破断伸度を20%以上とすることが困難だからである。
【0027】
更に、前記延伸の方向と直交する方向、通常は長尺シートにおける幅方向に延伸する。この幅方向の延伸においても慣用の延伸方法を採用できる。幅方向の延伸は、好ましくは25〜200℃、更に好ましくは30〜130℃で行う。また、延伸倍率は、10〜50倍、更には10〜30倍とすることが好ましい。10倍未満であるとPTFE多孔質膜の通気性を十分に確保することが困難であり、50倍を超えるとPTFE多孔質膜の幅方向における破断伸度を20%以上とすることが困難となるからである。
【0028】
PTFE多孔質膜の破断伸度および通気度は、上記延伸における諸条件を変化させることにより、適宜増大ないし減少させることが可能である。例えば、長手方向の破断伸度は、長手方向の延伸倍率が小さいほど増大し、長手方向の延伸倍率が大きいほど減少する。また、幅方向の破断伸度は、幅方向の延伸倍率が小さいほど増大し、幅方向の延伸倍率が大きいほど減少する。また、幅方向の延伸倍率が同等であれば、長手方向の延伸倍率が小さいほど、幅方向の破断伸度は増大する。
【0029】
一方、通気度は、長手方向および幅方向の少なくとも一方の延伸倍率を大きくすることによって増大させることができる。
【0030】
上記のようにして得られるPTFE多孔質膜は、熱処理を施し、寸法安定性を向上させることが好ましい。熱処理に際し、多孔質膜における延伸方向の寸法を固定すれば、この多孔質膜の膜厚や孔径の変化を抑制できる。熱処理温度は、適宜調整できるが、その温度をPTFEの融点以上とすれば、焼成された多孔質膜を得ることができる。この焼成された多孔質膜は、機械的強度が高いという利点を有する。熱処理温度をPTFEの融点以上とする場合は、多孔質膜の変質を防止するという観点から、470℃以下とすることが好ましい。なお、熱処理時間は、多孔質膜の膜厚や熱処理温度によっても変わり得るが、通常、60秒以下である。
【0031】
上記熱処理は、その条件によりPTFE多孔質膜の通気度に影響を与えることがあり、例えば、熱処理時間を長くするほど通気度が向上する。
【0032】
本発明の集塵機用フィルターは、上記のPTFE多孔質膜、第1の通気性支持材、および第2の通気性支持材を積層することにより作製される。
【0033】
本発明の集塵機用フィルターの製造方法は、PTFE多孔質膜と、任意の方向における引張強度が1.5N/cm以上である第1の通気性支持材とを貼り合わせて、積層構造体を作製する第1の工程と、表面に凹凸形状を含む第2の通気性支持材と前記積層構造体とを、前記第2の通気性支持材の凹凸面と前記積層構造体の不織布とを対向させて貼り合わせる第2の工程とを含むことを特徴とする。これにより、十分な捕集効率が得られ、かつ、圧力損失の増加が抑制された、集塵機用フィルターを製造することができる。PTFE多孔質膜と第1の通気性支持材との貼り合わせ、および、第1の通気性支持材と第2の通気性支持材との貼り合わせを熱融着にて行う場合は、例えば、まずPTFE多孔質膜と第1の通気性支持材とを、第1の通気性支持材の融点近傍に加熱した熱ロールを用いてラミネートし、次いで、第1の通気性支持材と第2の通気性支持材の凹凸面とを、同様に第1の通気性支持材の融点近傍に加熱した熱ロールを用いてラミネートする。また、PTFE多孔質膜と第1の通気性支持材とを仮接着しておき、その後、第1の通気性支持材と第2の通気性支持材の凹凸面とを接着する際に同時に第1の通気性支持材とPTFE多孔質膜とを本接着する方法を用いることもできる。この方法の場合、PTFE多孔質膜と第1の通気性支持材との仮接着時には第1の通気性支持材の融点まで加熱する必要はなく、その後の本接着時(第1の通気性支持材と、PTFE多孔質膜および第2の通気性支持材との接着時)に第1の通気性支持材の融点近傍まで加熱する。これらの方法によれば、第2の通気性支持材の凹部であってもPTFE多孔質膜は第1の通気性支持材と貼り合わされて補強されており、さらに、第2の通気性支持材の凸部においては第1の通気性支持材と第2の通気性支持材とが接着されてPTFE多孔質膜、第1の通気性支持材、および第2の通気性支持材が一体的に貼り合わされている状態を実現することができる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
【0035】
以下に示す実施例1〜4および比較例1,2において用いられたPTFE多孔質膜は、次のようにして作製されたものである。まず、PTFEファインパウダー(ポリフロンF104:ダイキン(株)製)100重量部に対して、液状潤滑材(流動パラフィン)25重量部を均一に混合し、この混合物を圧力20kg/cmの条件で圧縮予備成形した。次いで、この予備成形体を丸棒状に押出し、更にこの丸棒状物を1対の金属圧延ロール間に通し、厚さ0.2mmの長尺の未焼成シートを得た。次いで、炭化水素系溶媒を用いた抽出法により液状潤滑材を除去した後、このシートを、管状芯体にロール状に巻回した。このシートを、ロール延伸により長手方向に延伸した後、テンター延伸により幅方向に延伸し、次いで、シートの長手方向および幅方向の寸法を固定し、370℃の温度で5秒間熱処理を行い、焼成されたPTFE多孔質膜を得た。なお、延伸条件は以下の通りである。
【0036】
Figure 2004097998
また、得られたPTFE膜の通気度は、フラジール法で測定したところ10cm/cm/sであった。なお、フラジール法による通気度の測定は、JIS L 1096に従い、フラジール型試験機を用いて行った。ここでは、フラジール試験機(東洋精機製作所製)を用いて測定を行った。
【0037】
また、以下の実施例1〜4および比較例1,2において、第2の通気性支持材には、ポリエステル系の不織布である東レ(株)製のアクスターG2260−1S(厚み:0.6mm、目付け重量:260g/m、通気度:12cm/cm/s)を用いた。このアクスターG2260−1Sには、エンボス加工等により表面に規則正しい凹凸模様が設けられていた。この凹凸の高低差は0.5mmであった。
【0038】
また、実施例1〜4および比較例2において用いた第1の通気性支持材の引張強度の測定は、JIS L 1096(6.12)に基づいて行った。試験片は30cm×5cm、引張速度は15cm/分、つかみ間隔は20cmで、縦方向、横方向、斜め45度方向それぞれについて測定した。
【0039】
(実施例1)
第1の通気性支持材には、PP(ポリプロピレン)/PE(ポリエチレン)系の不織布である大紀商事(株)製のオキロンHM800(厚み:0.08mm、目付け重量:16g/m、通気度:400cm/cm/s、縦方向引張強度:15N/cm、横方向引張強度:2N/cm、斜め45度方向引張強度:4.5N/cm、融点:170℃(PP)/125℃(PE))を用いた。まず、PTFE多孔質膜と第1の通気性支持材とを130℃に加熱した熱ロールを用いて加圧ラミネートし(仮接着)、積層構造体を作製した。次に、170℃に加熱した熱ロールを用いて、第2の通気性支持体と積層構造体を構成する第1通気性支持材とを加圧ラミネートすると同時に、仮接着されていたPTFE多孔質膜と第1の通気性支持体とを接着して、集塵機用フィルターを作製した。
【0040】
(実施例2)
第1の通気性支持材には、PET(ポリエチレンテレフタレート)系の不織布である大紀商事(株)製のモイスターW18(厚み:0.08mm、目付け重量:18g/m、通気度:400cm/cm/s、縦方向引張強度:15N/cm、横方向引張強度:3N/cm、斜め45度方向引張強度:7.5N/cm、融点255℃)を用いた。まず、PTFE多孔質膜と第1の通気性支持材とを170℃に加熱した熱ロールを用いて加圧ラミネートし(仮接着)、積層構造体を作製した。次に、230℃に加熱した熱ロールを用いて、第2の通気性支持体と積層構造体を構成する第1通気性支持材とを加圧ラミネートすると同時に、仮接着されていたPTFE多孔質膜と第1の通気性支持体とを接着して、集塵機用フィルターを作製した。
【0041】
(実施例3)
第1の通気性支持材には、ポリウレタン系の不織布である鐘紡合繊(株)製のエスパンシオーネUEO25(厚み:0.12mm、目付け重量:25g/m、通気度:400cm/cm/s、縦方向引張強度:2.8N/cm、横方向引張強度:3.6N/cm、斜め45度方向引張強度:3N/cm、融点150℃)を用いた。まず、PTFE多孔質膜と第1の通気性支持材とを120℃に加熱した熱ロールを用いて加圧ラミネートし(仮接着)、積層構造体を作製した。次に、150℃に加熱した熱ロールを用いて、第2の通気性支持体と積層構造体を構成する第1通気性支持材とを加圧ラミネートすると同時に、仮接着されていたPTFE多孔質膜と第1の通気性支持体とを接着して、集塵機用フィルターを作製した。
【0042】
(実施例4)
第1の通気性支持材には、ポリウレタン系の不織布である鐘紡合繊(株)製のエスパンシオーネUEO100(厚み:0.38mm、目付け重量:100g/m、通気度:200cm/cm/s、縦方向引張強度:5.2N/cm、横方向引張強度:7.5N/cm、斜め45度方向引張強度:6.3N/cm、融点150℃)を用いた。まず、PTFE多孔質膜と第1の通気性支持材とを120℃に加熱した熱ロールを用いて加圧ラミネートし(仮接着)、積層構造体を作製した。次に、150℃に加熱した熱ロールを用いて、第2の通気性支持体と積層構造体を構成する第1通気性支持材とを加圧ラミネートすると同時に、仮接着されていたPTFE多孔質膜と第1の通気性支持体とを接着して、集塵機用フィルターを作製した。
【0043】
(比較例1)
比較例1においては、第1の通気性支持材を用いずに、PTFE多孔質膜と第2の通気性支持材とを直接貼り合わせた。PTFE多孔質膜と第2の通気性支持材とを250℃に加熱した熱ロールを用いて加圧ラミネートにて積層し、集塵機用フィルターを作製した。
【0044】
(比較例2)
第1の通気性支持材には、PP系のメルトブロー法により製造された不織布である東洋紡(株)製のシャンファインPM010JF(厚み:0.09mm、目付け重量:10g/m、通気度:45cm/cm/s、縦方向引張強度:3N/cm、横方向引張強度:1.2N/cm、斜め45度方向引張強度:1.4N/cm、融点170℃)を用いた。まず、PTFE多孔質膜と第1の通気性支持材とを160℃に加熱した熱ロールを用いて加圧ラミネートし(仮接着)、積層構造体を作製した。次に、170℃に加熱した熱ロールを用いて、第2の通気性支持体と積層構造体を構成する第1通気性支持材とを加圧ラミネートすると同時に、仮接着されていたPTFE多孔質膜と第1の通気性支持体とを接着して、集塵機用フィルターを作製した。
【0045】
以上のようにして作製された実施例1〜4および比較例1,2の集塵機用フィルターについて、それぞれ、▲1▼フラジール法で測定した通気度、▲2▼手で折り曲げた時の折曲部分のクラックの発生状況を目視で観察した結果、▲3▼JIS Z 8901に規定されているジオクチルフタレート粒子(DOP)(粒径0.3〜0.5μm)をJIS K 0901に規定の方法で測定した捕集効率、▲4▼0.7MPa圧のエアーを第2の通気性支持材側の面から加えた際のPTFE多孔質膜の破壊状況および層間の剥離状況、を表1に示す。なお、▲4▼の試験においては、得られた集塵機用フィルターを図1に示す治具に固定して試験を行った。まず、図1に示すように、PTFE多孔質膜3の面を上にして、PTFE多孔質膜3、第1の通気性支持材2、および第2の通気性支持材1からなる集塵機用フィルターをO−リング4,6でシールして治具5に固定した。この治具5はステンレス製であった。集塵機用フィルターを治具5に固定した後、第2の通気性支持材1側の面から圧力0.7MPaのエアーもしくは窒素等の不活性ガスを10秒間付加し、加圧停止5秒後にさらに同様の作業を行った。この操作を5回繰り返した後、PTFE多孔質膜3の変化を観察した。本実施例においては、第1の通気性支持材2と第2の通気性支持材1との間の剥離と、PTFE多孔質膜3の破壊の有無、とを観察した。
【0046】
Figure 2004097998
【0047】
以上の結果から、PTFE多孔質膜と表面が凹凸形状の第2の通気性支持材とを、不織布等の第1の通気性支持材を介して貼り合わせることにより、折り曲げ時のストレスに耐え得る集塵機用フィルターを得ることができることが確認された。また、任意の方向における引張強度が1.5N/cm以上の第1の通気性支持材を用いることにより、0.7MPaの逆圧にも耐え得る集塵機用フィルターが得られることが確認された。また、第1の通気性支持材の通気度を50cm/cm/s以上とすることで、十分な通気性を有する集塵機用フィルターが得られることも確認された。
【0048】
また、実施例4で得られた集塵機用フィルターは、各層の間を手で剥がす試験を行ったところ、実施例1〜3で得られた集塵機用フィルターよりも層間の接着強度が弱いことも確認できた。これは、実施例4で得られた集塵機用フィルターは、目付け重量が80g/mを超える第1の通気性支持材を用いているため熱伝達率が小さく、そのために熱融着による接着強度が弱くなってしまったからであると考えられる。
【0049】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の集塵機用フィルターおよびその製造方法によれば、凹凸のあるエンボス形状の表面形態を有する通気性支持材とPTFE多孔質膜とを積層した構成であっても、プリーツ加工時のストレスやダスト払い落とし時の逆圧等によるPTFE多孔質膜の破壊や剥離が生じにくくなる。これにより、十分な捕集効率が得られ、かつ、圧力損失の少ない集塵機用フィルターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】剥離状況の試験の際、集塵機用フィルターが治具に固定される様子を示した断面図である。
【図2】(a)および(b)は、本発明の集塵機用フィルターに用いられる第2の通気性支持材の表面凹凸形状の例を示す平面図である。
【符号の説明】
1  第2の通気性支持材
1a 凹部
1b 凸部
2  第1の通気性支持材
3  PTFE多孔質膜
4  O−リング
5  治具
6  O−リング

Claims (10)

  1. ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と、
    前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と貼り合わされた、任意の方向における引張強度が1.5N/cm以上の第1の通気性支持材と、
    前記第1の通気性支持材の前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜が貼り合わされた面と反対側の面に貼り合わされた、表面に凹凸形状を含む第2の通気性支持材とを含むことを特徴とする集塵機用フィルター。
  2. 前記第1の通気性支持材の通気度が、フラジール法で50cm/cm/s以上である請求項1に記載の集塵機用フィルター。
  3. 前記第1の通気性支持材の目付け重量が、80g/m以下である請求項1に記載の集塵機用フィルター。
  4. 前記第1の通気性支持材は、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ナイロン系、およびポリウレタン系から選ばれる少なくとも一種類の材質からなる請求項1に記載の集塵機用フィルター。
  5. 前記第1の通気性支持材が不織布である請求項1に記載の集塵機用フィルター。
  6. 前記第2の通気性支持材はポリエステル系の材質からなる請求項1に記載の集塵機用フィルター。
  7. 前記第2の通気性支持材が不織布である請求項1に記載の集塵機用フィルター。
  8. 前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の通気度が、フラジール法で4cm/cm/s以上である請求項1に記載の集塵機用フィルター。
  9. 前記第2の通気性支持材の表面に設けられた凹凸の高低差が、100μm〜1.5mmの範囲である請求項1に記載の集塵機用フィルター。
  10. ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と、任意の方向における引張強度が1.5N/cm以上である第1の通気性支持材とを貼り合わせて、積層構造体を作製する第1の工程と、
    表面に凹凸形状を含む第2の通気性支持材と前記積層構造体とを、前記第2の通気性支持材と前記第1の通気性支持材とを対向させて貼り合わせる第2の工程とを含むことを特徴とする集塵機用フィルターの製造方法。
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