JP2004095224A - 酸性液漏れセンサおよび電気絶縁材 - Google Patents

酸性液漏れセンサおよび電気絶縁材 Download PDF

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Abstract

【課題】バッテリーなど、酸性液が充填されたデバイスからの液漏れを素早く検知することができる酸性液漏れセンサおよびこれに用いられる電気絶縁材を提供する。
【解決手段】第1の導電体22と、第2の導電体23と、第1の導電体22および第2の導電体23を被覆し、これらの間を電気的に絶縁状態にする電気絶縁材からなる被覆層24とを有し、前記電気絶縁材が、酸性液に反応して電気絶縁性が低下するものであるバッテリー液漏れセンサ20(酸性液漏れセンサ)、および塩基性の官能基を有し、かつ酸性液に可溶な高分子化合物を含有する電気絶縁材。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バッテリー液など酸性液の液漏れを検知する酸性液漏れセンサおよびこれに用いられる電気絶縁材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、鉛蓄電池などバッテリーが、各種装置の電源として用いられている。このバッテリーには、バッテリー液として希硫酸が充填されている。
図5は、バッテリーを使用した無停電電源装置の一例を示す図である。この無停電電源装置は、商用交流電源1に接続された整流回路2と、整流回路2の出力端に接続されたスイッチング回路3と、整流回路2の出力端に接続された直列の複数のバッテリー10とを具備して概略構成されるものである。スイッチング回路3は、整流回路2の出力電圧または各バッテリー10の電圧をスイッチングにより交流電圧に変換し、出力するものであり、この出力が駆動電力として負荷4に供給される。
【0003】
商用交流電源1が正常な場合は、整流回路2の出力電圧がスイッチング回路3に入力されるとともに、整流回路2の出力電圧によって各バッテリー10が充電される。商用交流電源1に停電が生じると、各バッテリー10が放電し、その放電電圧がスイッチング回路3に入力される。この放電により、負荷4の運転が継続される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
各バッテリー10は、ケース11に収容されており、仮にバッテリー10のいずれかが液漏れを起こしても、漏れたバッテリー液12はケース外に流れ出ないようになっている。
しかしながら、ケース11が金属製の場合、バッテリー10内の極板とケース11とが漏れたバッテリー液12を介して導通し、図中の破線矢印で示すように、商用交流電源1、整流回路2、バッテリー10およびケース11を通した短絡回路が形成されてしまう。この短絡回路の形成時、バッテリー液12による導通部分に大電流が流れてスパークが生じてしまう。
【0005】
ケース11が樹脂製であれば、少なくともバッテリー10内の極板とケース11との間のバッテリー液12を介した導通については回避することができる。しかしながら、ケース11が樹脂製であっても、複数のバッテリー10が液漏れを起こした場合、これらバッテリー10間で、漏れたバッテリー液12を介して短絡が生じてしまい、バッテリー液12による導通部分に大電流が流れてスパークが生じてしまう。
【0006】
よって、本発明の目的は、バッテリーなど、酸性液が充填されたデバイスからの液漏れを素早く検知することができる酸性液漏れセンサおよびこれに用いられる電気絶縁材を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の酸性液漏れセンサは、第1の導電体と、第2の導電体と、第1の導電体および第2の導電体を被覆し、これらの間を電気的に絶縁状態にする電気絶縁材とを有し、前記電気絶縁材が、酸性液に反応して電気絶縁性が低下するものであることを特徴とする。
また、本発明の酸性液漏れセンサは、酸性液を透過できる第1の導電体からなる層と、第2の導電体からなる層と、第1の導電体からなる層と第2の導電体からなる層との間に挟まれて、これらの間を電気的に絶縁状態に接着する電気絶縁材からなる接着層とを有し、前記電気絶縁材が、酸性液に反応して電気絶縁性が低下するものであることを特徴とする。
【0008】
また、前記電気絶縁材は、酸性液に溶解するものであることが望ましい。
また、前記電気絶縁材は、塩基性の官能基を有する高分子化合物を含有するものであることが望ましい。
また、前記電気絶縁材は、体質顔料を10重量%以上含有するものであることが望ましい。
また、体質顔料は、金属炭酸塩であることが望ましい。
また、本発明の酸性液漏れセンサは、第1の導電体と第2の導電体との間の電気的な導通によって作動する報知手段を具備することが望ましい。
【0009】
また、本発明の電気絶縁材は、塩基性の官能基を有し、かつ酸性液に可溶な高分子化合物を含有するものであることを特徴とする。
また、本発明の電気絶縁塗料は、本発明の電気絶縁材を含有することを特徴とする。
また、本発明の電気絶縁接着剤は、本発明の電気絶縁材を含有することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図面を用いて詳細に説明する。
(形態例1)
図1は、本発明の酸性液漏れセンサであるバッテリー液漏れセンサの一例を示す上面図である。このバッテリー液漏れセンサ20は、シート状のベース部材21と、ベース部材21の表面に、間隔をあけて平行に配置された帯状の第1の導電体22および第2の導電体23と、ベース部材21の表面を第1の導電体22および第2の導電体23ごと被覆し、第1の導電体22と第2の導電体23との間を電気的に絶縁もしくは高抵抗の状態にする被覆層24と、第1の導電体22および第2の導電体23にリード線接続される報知器30(報知手段)とを有して概略構成されるものである。
【0011】
報知器30は、発光ダイオード31、保護抵抗32、電池33とを具備して概略構成されるものである。電池33の電圧は、発光ダイオード31、保護抵抗32を介して第1の導電体22と第2の導電体23との間に常時印加されている。
なお、電池33は直流電源として証明したが、商用交流電源でもよい。
ベース部材21は、バッテリー液を遮断する材料で、かつ難燃性を有する材料をシート状に成形したものであり、その材料としては、例えば、難燃性ポリエステル、難燃性ポリイミドなどが用いられる。
第1の導電体22および第2の導電体23は、銅、アルミニウム、鉄等の金属などの導電性材料からなる帯状部材である。
【0012】
被覆層24は、バッテリー液(酸性液)に反応して電気絶縁性が低下する電気絶縁材からなるものであり、電気絶縁材からなる電気絶縁塗料を、ベース部材21、第1の導電体22および第2の導電体23の表面に塗装し、乾燥させることによって形成される塗膜、もしくは電気絶縁材を成形した被覆シートをベース部材21、第1の導電体22および第2の導電体23の表面に貼り付けることによって形成されるものである。
この被覆層24は、通常の状態では第1の導電体22および第2の導電体23を被覆、保護し、バッテリーからバッテリー液12が漏れた場合には、バッテリー液12に反応して第1の導電体22と第2の導電体23とをバッテリー液12を介して電気的に導通状態にするものである。
【0013】
ここで、バッテリー液と電気絶縁材との反応には、中和反応、分解反応などがある。バッテリー液12によって第1の導電体22と第2の導電体23とを確実に導通させるためには、電気絶縁材としては、バッテリー液と反応することにより溶解するものが好ましい。
バッテリー液と反応して溶解する電気絶縁材としては、塩基性の官能基を有する高分子化合物を含有するものが好適である。これは、塩基性の官能基がバッテリー液などの酸性液によって中和作用を受けることによって、電気絶縁材が水に可溶な状態となりやすく、酸性液などに対する耐久性が極めて弱くなるからである。
【0014】
塩基性の官能基としては、アミノ基に代表される塩基性の官能基が好ましい。
また、高分子化合物としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂など、一般的な高分子化合物が挙げられる。中でも、酸性液(バッテリー液)への溶解性に加えて、塗膜(被覆層26)の基材に対する付着性、塗膜硬度など調整のしやすさなどを考慮した場合、塩基性の官能基を有するモノマー成分と、必要に応じてこれと共重合可能なモノマー成分とをラジカル重合させて得られる高分子化合物が好ましい。また、ラジカル重合においては、塩基性の度合いの調整などに重合反応が大きな影響を受けないことも、ラジカル重合によって得られる高分子化合物が、塩基性の官能基を有する高分子化合物として好適である理由のひとつである。
【0015】
塩基性の官能基を有するモノマー成分としては、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドブチルエーテル、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレートなどを例示することができる。
【0016】
共重合可能なモノマー成分としては、アクリル酸またはメタクリル酸のエステル、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル等のアクリル酸またはメタクリル酸の炭素数1〜18のアルキルエステル;アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸メトキシブチル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシブチル、メタクリル酸エトキシブチル等のアクリル酸またはメタクリル酸の炭素数2〜18のアルコキシアルキルエステル;アリルアクリレート、アリルメタクリレート等のアクリル酸またはメタクリル酸の炭素数2〜8のアルケニルエステル;ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸またはメタクリル酸の炭素数2〜8のヒドロキシアルキルエステル;アリルオキシエチルアクリレート、アリルオキシエチルメタクリレート等のアクリル酸またはメタクリル酸の炭素数3〜18のアルケニルオキシアルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−クロルスチレン等のビニル芳香族化合物;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のポリオレフィン系化合物;その他、カプロラクトン変性アクリル酸エステル化合物、カプロラクトン変性メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルイソプロペニルケトン、酢酸ビニル、ビニルプロピオネート、ビニルピバレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、アリルアルコール、マレイン酸などを例示することができる。
【0017】
塩基性の官能基を有するモノマー成分は、高分子化合物を構成するすべてのラジカル重合性モノマーのうち、10重量%以上であることが好ましく、より好ましくは20重量%〜80重量%であり、さらに好ましくは40〜70重量%である。塩基性の官能基を有するモノマー成分の塩基性の度合いによっても異なるが、塩基性の官能基を有するモノマー成分が10重量%未満では、塗膜(被覆層24)が酸性液(バッテリー液)に溶解しにくい、もしくは溶解しないおそれがある。また、塗膜の基材への付着性や塗膜硬度などの物性を調整するためには、塩基性の官能基を有するモノマー成分のみで高分子化合物を構成することは好ましくない。
【0018】
塩基性の官能基を有する高分子化合物としては、架橋反応を併用するような構成のものも可能であるが、バッテリー液への溶解性を考慮した場合、ラッカータイプのような一液組成とすることが好ましい。この場合、塩基性の官能基を有する高分子化合物のガラス転移温度(Tg)は、常温以上の設定することが好ましい。この理由は、電気絶縁材からなる被覆層24が、夏場などの高温時に軟化し、べとつくなどの不具合が生じるからである。
【0019】
Tgは、高分子化合物の分子量や合成条件によって変動するため正確に確定できる値ではないが、本発明においては下記(式1)によって計算するものとする。
Tg=W1×Tg1+W2×Tg2・・・+WnTgn (式1)
n種類のモノマーからなる共重合体においては、各モノマーからなるホモポリマーの公知のガラス転移温度の値をそれぞれTg1、Tg2・・・Tgnとし、共重合体におけるそれぞれのモノマーの重量分率をW1、W2・・・Wnとする。
この式を用いて求められる、塩基性の官能基を有する高分子化合物のTgは、40℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは60℃以上である。
【0020】
また、塩基性の官能基を有する高分子化合物としては、有機溶剤中におけるラジカル重合によって得られる高分子化合物がさらに好ましい。塩基性の官能基を有する高分子化合物が、有機溶剤中におけるラジカル重合以外で得られたもの、例えば、水性エマルションの状態のものでは、形成された塗膜(被覆層24)の酸性液(バッテリー液)への溶解性が小さい、もしくは溶解しないために好ましくない。
【0021】
このような高分子化合物は、通常のアクリル樹脂、ビニル樹脂等のラジカル重合によって得られるものと同様の方法、条件で得ることができる。具体的には、各モノマー成分を有機溶剤に溶解し、ラジカル重合開始剤の存在下に窒素雰囲気下で60〜180℃程度の温度で撹拌しながら加熱する方法を例示することができる。反応時間は、通常1〜10時間程度とすればよい。
【0022】
有機溶剤としては、エーテル系溶媒、アルコール系溶剤、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒を使用できる。
ラジカル重合開始剤としては、通常用いられているものを用いることができ、その一例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等を示すことができる。
【0023】
電気絶縁材は、1種類以上の体質顔料を含むことが好ましい。この理由は、体質顔料を使用することで塗膜(被覆層24)の酸性液(バッテリー液)に対する耐久性が低下し、被覆層24の溶解に有利に作用するからである。この体質顔料としては、結晶性シリカ、溶融シリカ、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、マイカ、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、ベントナイト、珪藻土、亜鉛化合物、バリウム化合物などを例示することができる。中でも、バッテリー液と反応した際に、被覆層24に無数の微細孔を形成してバッテリー液と被覆層24との接触面積を増やして被覆層24の溶解を促進すると同時に、気泡(二酸化炭素)を発生して被覆層24を第1の導電体22および第2の導電体23から引きはがすように作用することから、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩が好ましく、炭酸カルシウムがより好ましい。
【0024】
これら体質顔料は1種類もしくは数種類を併用することができる。塗料組成中での体質顔料の割合は、粒子の形状や大きさによっても異なるが塗料固形分として10重量%以上含むことが好ましい。より好ましくは30重量%以上である。
この理由としては、10重量%以下の体質顔料を使用した場合では先に述べたような酸性液に対する耐久性の低下による被覆層24の溶解作用が少ないからである。また、体質顔料としては、なるべく細かい粒子径のものが好ましい。具体的には平均粒子径として0.1〜10マイクロメートル程度であることが好ましい。
【0025】
また、電気絶縁材に、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウムなどに示されるような無機系やハロゲン化合物、リン酸化合物などの有機系の難燃剤を添加し、被覆層24に難燃性を付与することが好ましい。
また、電気絶縁材には、必要に応じて、公知の塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、着色顔料、マイカ粉顔料、染料、有機溶剤等を加えることができる。ただし、バッテリーの容器としてABS樹脂を使用している場合は、ABS樹脂を侵してしまう理由から、電気絶縁材は、可塑剤、防錆剤、界面活性剤、グリス・オイル類(鉱物オイル、シリコンオイル等)、レベリング剤、顔料分散剤、消泡剤、反応触媒、液状の染料、液状の紫外線吸収剤、液状の光安定剤、沸点120℃以上の有機溶剤を含まないことが好ましい。
【0026】
被覆層24は、電気絶縁材を、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤等の単独もしくは混合溶剤によって希釈して電気絶縁塗料とし、これをベース部材21、第1の導電体22および第2の導電体23の表面にスプレー塗装、ロール塗装、ハケ塗り等の塗装方法によって塗装することによって形成することができる。なお、バッテリーの容器としてABS樹脂を使用している場合は、ABS樹脂を侵してしまう理由から、電気絶縁塗料は、沸点120℃以上の有機溶剤を含まないことが好ましい。
【0027】
次に、図1のバッテリー液漏れセンサ20の動作について説明する。
バッテリーの上面、亀裂などから液漏れが生じると、漏れたバッテリー液12が、バッテリーが収容されたケースの内底面や、バッテリーの外周面に配置されたバッテリー液漏れセンサ20に垂れ落ちる。
垂れ落ちたバッテリー液12は、バッテリー液漏れセンサ20の被覆層24と反応してこれを溶解し、第1の導電体22および第2の導電体23の表面に到達する。このとき、第1の導電体22と第2の導電体23とが、バッテリー液12を介して電気的に導通する。
この導通によって、報知器30の発光ダイオード31に電流が流れ、発光ダイオード31が発光する。この発光によって、バッテリーの液漏れの発生が保守員に報知される。
【0028】
以上のようなバッテリー液漏れセンサ20にあっては、第1の導電体22および第2の導電体23が、バッテリー液に反応して電気絶縁性が低下する電気絶縁材からなる被覆層24によって被覆されているので、通常の状態では第1の導電体22および第2の導電体23は被覆層24によって保護され、バッテリーからバッテリー液12が漏れた場合には、被覆層24がバッテリー液12に反応することによって第1の導電体22と第2の導電体23とがバッテリー液12を介して電気的に導通する。これによって、バッテリーからの液漏れを素早く検知することができる。
【0029】
(形態例2)
図2は、本発明の酸性液漏れセンサであるバッテリー液漏れセンサの他の例を示す側面図である。このバッテリー液漏れセンサ40は、バッテリー液(酸性液)を透過できる第1の導電体層41と、第2の導電体層42と、第1の導電体層41と第2の導電体層42との間に挟まれて、これらの間を電気的に絶縁もしくは高抵抗の状態に接着する接着層43と、第1の導電体層41の表面を覆う被覆層44と、第2の導電体層42の表面に接するシート状のベース部材21と、第1の導電体層41および第2の導電体層42にリード線接続される報知器30(報知手段)とを有して概略構成されるものである。
【0030】
第1の導電体層41および第2の導電体層42は、銅、アルミニウム、鉄等の金属などの導電性材料からなる導電体シートからなるものである。
第1の導電体層41を形成する導電体シートとしては、バッテリー液を透過できるように、図3に示すような多数のパンチング孔45が形成されたものや、図4に示すようなメッシュ状のものを用いることができる。
【0031】
接着層43は、バッテリー液(酸性液)に反応して電気絶縁性が低下する電気絶縁材からなる電気絶縁接着剤もしくは電気絶縁材を成形した接着剤シートによって形成されているものである。
この接着層43は、通常の状態では第1の導電体層41および第2の導電体層42を接着し、バッテリーからバッテリー液12が漏れた場合には、バッテリー液12に反応して第1の導電体層41と第2の導電体層42とをバッテリー液12を介して電気的に導通状態にするものである。
【0032】
電気絶縁材としては、形態例1のものと同様に、バッテリー液と反応することにより溶解するものが好ましく、塩基性の官能基を有する高分子化合物を含有するものが好適である。酸性液(バッテリー液)への溶解性に加えて、接着層43の導電体層に対する接着強度などを考慮した場合、塩基性の官能基を有するモノマー成分と、必要に応じてこれと共重合可能なモノマー成分とをラジカル重合させて得られる高分子化合物が好ましい。塩基性の官能基を有するモノマー成分、および共重合可能なモノマー成分としては、上述のものと同じものを用いることができる。
【0033】
塩基性の官能基を有するモノマー成分は、高分子化合物を構成するすべてのラジカル重合性モノマーのうち、10重量%以上であることが好ましく、より好ましくは20重量%〜80重量%であり、さらに好ましくは40〜70重量%である。塩基性の官能基を有するモノマー成分の塩基性の度合いによっても異なるが、塩基性の官能基を有するモノマー成分が10重量%未満では、接着層43が酸性液(バッテリー液)に溶解しにくい、もしくは溶解しないおそれがある。また、接着層43の導電体層への接着強度などの物性を調整するためには、塩基性の官能基を有するモノマー成分のみで高分子化合物を構成することは好ましくない。
【0034】
このような高分子化合物は、形態例1と同様の方法、条件で得ることができる。具体的には、各モノマー成分を有機溶剤に溶解し、ラジカル重合開始剤の存在下に窒素雰囲気下で60〜180℃程度の温度で撹拌しながら加熱する方法を例示することができる。
【0035】
電気絶縁材は、1種類以上の体質顔料を含むことが好ましい。この理由は、体質顔料を使用することで接着層43の酸性液(バッテリー液)に対する耐久性が低下し、接着層43の溶解に有利に作用するからである。この体質顔料としては、上述のものと同じものを用いることができる。
【0036】
これら体質顔料は1種類もしくは数種類を併用することができる。塗料組成中での体質顔料の割合は、粒子の形状や大きさによっても異なるが塗料固形分として10重量%以上含むことが好ましい。より好ましくは30重量%以上である。
この理由としては、10重量%以下の体質顔料を使用した場合では先に述べたような酸性液に対する耐久性の低下による接着層43の溶解作用が少ないからである。また、体質顔料の粒子の大きさとしては、なるべく細かい粒子径のものが好ましい。具体的には平均粒子径として0.1〜10マイクロメートル程度であることが好ましい。
【0037】
また、電気絶縁材に、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウムなどに示されるような無機系やハロゲン化合物、リン酸化合物などの有機系の難燃剤を添加し、接着層43に難燃性を付与することが好ましい。
また、電気絶縁材には、必要に応じて、公知の塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、着色顔料、マイカ粉顔料、染料、有機溶剤等を加えることができる。ただし、バッテリーの容器としてABS樹脂を使用している場合は、ABS樹脂を侵してしまう理由から、電気絶縁材は、可塑剤、防錆剤、界面活性剤、グリス・オイル類(鉱物オイル、シリコンオイル等)、レベリング剤、顔料分散剤、消泡剤、反応触媒、液状の染料、液状の紫外線吸収剤、液状の光安定剤、沸点120℃以上の有機溶剤を含まないことが好ましい。
【0038】
接着剤層43は、電気絶縁材を、上述の溶剤によって希釈して電気絶縁接着剤とし、これを第1の導電体層41および/または第2の導電体層42を形成する導電体シートの表面にスプレー塗装、ロール塗装、ハケ塗り等の塗装方法によって塗装し、これらを貼り合わせる方法;電気絶縁材をシート状に成形して接着剤シートとし、これを第1の導電体層41および/または第2の導電体層42を形成する導電体シートの間に挟んで、これらを加熱する方法によって形成することができる。なお、バッテリーの容器としてABS樹脂を使用している場合は、ABS樹脂を侵してしまう理由から、電気絶縁接着剤は、沸点120℃以上の有機溶剤を含まないことが好ましい。
【0039】
被覆層44は、バッテリー液(酸性液)に反応して電気絶縁性が低下する電気絶縁材からなる電気絶縁塗料もしくは電気絶縁材を成形した被覆シートによって形成されているものである。
電気絶縁材としては、形態例1と同様のものを用いることができる。
【0040】
次に、図2のバッテリー液漏れセンサ40の動作について説明する。
バッテリーの上面、亀裂などから液漏れが生じると、漏れたバッテリー液12が、バッテリーが収容されたケースの内底面や、バッテリーの外周面に配置されたバッテリー液漏れセンサ40に垂れ落ちる。
垂れ落ちたバッテリー液12は、バッテリー液漏れセンサ40の被覆層44と反応してこれを溶解した後、第1の導電体層41を透過して接着層43に到達する。
【0041】
接着層43に到達したバッテリー液12は、接着層43と反応してこれを溶解し、第2の導電体層42の表面に到達する。このとき、第1の導電体層41と第2の導電体層42とが、バッテリー液12を介して電気的に導通する。
この導通によって、報知器30の発光ダイオード31に電流が流れ、発光ダイオード31が発光する。この発光によって、バッテリーの液漏れの発生が保守員に報知される。
【0042】
以上のようなバッテリー液漏れセンサ40にあっては、第1の導電体層41および第2の導電体層42が、バッテリー液に反応して電気絶縁性が低下する電気絶縁材からなる接着層43によって接着されているので、通常の状態では第1の導電体層41および第2の導電体層42は接着層43によって絶縁状態で接着され、バッテリーからバッテリー液12が漏れた場合には、接着層43がバッテリー液12に反応することによって第1の導電体層41と第2の導電体層42とがバッテリー液12を介して電気的に導通する。これによって、バッテリーからの液漏れを素早く検知することができる。
【0043】
なお、本発明の酸性液漏れセンサは、これら形態例のものに限定はされない。
例えば、バッテリーの液漏れを検知するセンサ以外に、酸性液が充填されたデバイスからの液漏れを検知するセンサとして応用することができる。
また、本発明の酸性液漏れセンサにおける報知手段は、図示例の報知器30に限定はされず、第1の導電体22と第2の導電体23とがバッテリー液12を介して電気的に導通した際に、外部に液漏れを報知することができるものであれば、発光ダイオードの代わりに電球、ブザー、サイレン等を組み込んだ報知器や無線報知器など、どのようなものであっても構わない。
【0044】
【実施例】
以下、本発明を実施例を示して詳しく説明する。
[実施例1]
(塩基性の官能基を有する高分子化合物の合成)
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた2リットルの丸底4つ口フラスコにイソプロピルアルコール1120g、スチレン96g、メタクリル酸n−ブチル144g、メタクリル酸ジメチルアミノエチル240gを仕込み、80℃に加熱した。その後30分ごとにABN−E(日本ヒドラジン工業(株)製アゾ化合物)1gを合計5回加え、その後4時間に渡ってフラスコ内の温度を80℃に保った後常温まで冷却して反応を終了した。
【0045】
(電気絶縁塗料の調製)
得られた高分子化合物の溶液99重量部に、MA−100(三菱化学(株)製カーボンブラック)1重量部をペイントシェーカーを用いて分散し、黒色の電気絶縁塗料を得た。得られた高分子化合物のガラス転移温度は37℃であり、高分子化合物を構成するモノマー成分の50重量%は塩基性の官能基を有するモノマーであった。
【0046】
[実施例2]
(塩基性の官能基を有する高分子化合物の合成)
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた2リットルの丸底4つ口フラスコにイソプロピルアルコール1120g、スチレン240g、メタクリル酸ジメチルアミノエチル240gを仕込み、80℃に加熱した。その後30分ごとにABN−E(日本ヒドラジン工業(株)製アゾ化合物)1gを合計5回加え、その後4時間に渡ってフラスコ内の温度を80℃に保った後常温まで冷却して反応を終了した。
【0047】
(電気絶縁塗料の調製)
実施例1と同様にして黒色の電気絶縁塗料を得た。
得られた高分子化合物のガラス転移温度は63℃であり、高分子化合物を構成するモノマー成分の50重量%は塩基性の官能基を有するモノマーであった。
【0048】
[実施例3]
(塩基性の官能基を有する高分子化合物の合成)
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた2リットルの丸底4つ口フラスコにイソプロピルアルコール1120g、アクリル酸ブチル240g、メタクリル酸ジメチルアミノエチル240gを仕込み、80℃に加熱した。その後30分ごとにABN−E(日本ヒドラジン工業(株)製アゾ化合物)1gを合計5回加え、その後4時間に渡ってフラスコ内の温度を80℃に保った後常温まで冷却して反応を終了した。
【0049】
(電気絶縁塗料の調製)
実施例1と同様にして黒色の電気絶縁塗料を得た。
得られた高分子化合物のガラス転移温度は−17℃であり、高分子化合物を構成するモノマー成分の50重量%は塩基性の官能基を有するモノマーであった。
【0050】
[実施例4]
(塩基性の官能基を有する高分子化合物の合成)
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた2リットルの丸底4つ口フラスコにイソプロピルアルコール1120g、スチレン144g、メタクリル酸ジメチルアミノエチル336gを仕込み、80℃に加熱した。その後30分ごとにABN−E(日本ヒドラジン工業(株)製アゾ化合物)1gを合計5回加え、その後4時間に渡ってフラスコ内の温度を80℃に保った後常温まで冷却して反応を終了した。
【0051】
(電気絶縁塗料の調製)
実施例1と同様にして黒色の電気絶縁塗料を得た。
得られた高分子化合物のガラス転移温度は46℃であり、高分子化合物を構成するモノマー成分の70重量%は塩基性の官能基を有するモノマーであった。
【0052】
[実施例5]
(電気絶縁塗料の調製)
実施例2で得た塩基性の官能基を有する高分子化合物の溶液75重量部に、MA−100(三菱化学(株)製カーボンブラック)2重量部およびNS#600(日東粉化工業(株)製炭酸カルシウム粉末、平均粒子径1.48マイクロメートル)22重量部をペイントシェーカーを用いて分散し、黒色の電気絶縁塗料を得た。得られた高分子化合物のガラス転移温度は63℃であり、高分子化合物を構成するモノマー成分の50重量%は塩基性の官能基を有するモノマーであった。また、体質顔料として炭酸カルシウムを電気絶縁塗料中に50重量%含有していた。
【0053】
[実施例6]
(電気絶縁塗料の調製)
実施例2で得た塩基性の官能基を有する高分子化合物97重量部に、MA−100(三菱化学(株)製カーボンブラック)1重量部およびNS#600(日東粉化工業(株)製炭酸カルシウム粉末、平均粒子径1.48マイクロメートル)3重量部をペイントシェーカーを用いて分散し、黒色の電気絶縁塗料を得た。得られた高分子化合物のガラス転移温度は63℃であり、高分子化合物を構成するモノマー成分の50重量%は塩基性の官能基を有するモノマーであった。また、体質顔料として炭酸カルシウムを電気絶縁塗料中に7重量%含有していた。
【0054】
[実施例7]
(電気絶縁塗料の調製)
実施例2で得た塩基性の官能基を有する高分子化合物の溶液65重量部に、MA−100(三菱化学(株)製カーボンブラック)2重量部およびNS#600(日東粉化工業(株)製炭酸カルシウム粉末、平均粒子径1.48マイクロメートル)33重量部をペイントシェーカーを用いて分散し、黒色の電気絶縁塗料を得た。得られた高分子化合物のガラス転移温度は63℃であり、高分子化合物を構成するモノマー成分の50重量%は塩基性の官能基を有するモノマーであった。また、体質顔料として炭酸カルシウムを電気絶縁塗料中に63重量%含有していた。
【0055】
[比較例1]
(塩基性の官能基を有する高分子化合物の合成)
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた2リットルの丸底4つ口フラスコにイソプロピルアルコール1120g、スチレン456g、メタクリル酸ジメチルアミノエチル24gを仕込み、80℃に加熱した。その後30分ごとにABN−E(日本ヒドラジン工業(株)製アゾ化合物)1gを合計5回加え、その後4時間に渡ってフラスコ内の温度を80℃に保った後常温まで冷却して反応を終了した。
【0056】
(電気絶縁塗料の調製)
実施例1と同様にして黒色の電気絶縁塗料を得た。
得られた高分子化合物のガラス転移温度は101℃であり、高分子化合物を構成するモノマー成分の5重量%は塩基性の官能基を有するモノマーであった。
【0057】
[比較例2]
(塩基性の官能基を有する高分子化合物の合成)
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた2リットルの丸底4つ口フラスコにイソプロピルアルコール1120g、スチレン288g、メタクリル酸n−ブチル168g、メタクリル酸ジメチルアミノエチル24gを仕込み、80℃に加熱した。その後30分ごとにABN−E(日本ヒドラジン工業(株)製アゾ化合物)1gを合計5回加え、その後4時間に渡ってフラスコ内の温度を80℃に保った後常温まで冷却して反応を終了した。
【0058】
(電気絶縁塗料の調製)
実施例1と同様にして黒色の電気絶縁塗料を得た。
得られた高分子化合物のガラス転移温度は71℃であり、高分子化合物を構成するモノマー成分の5重量%は塩基性の官能基を有するモノマーであった。
【0059】
[塗膜評価方法]
(イ)塗装処理と塗装乾燥
銅電極およびポリエチレンテレフタレート樹脂製フィルムに、イソプロピルアルコールで20℃におけるフォードカップNo.4での粘度が10秒になるように稀釈された実施例1〜7および比較例1〜2の電気絶縁塗料をエアースプレー塗装により均一に塗装した。
スプレー終了後、2日間常温放置した後に各種試験を行った。試験結果は表1である。
【0060】
(ロ)塗膜試験項目と評価方法
▲1▼密着性:塗膜を1mm×1mm×100個の碁盤目にカットし、セロハンテープ剥離試験後の残存碁盤目数から評価した。
▲2▼耐水性試験:25℃の純水1ミリリットルを塗面にスポットし、5分後拭取り、塗膜を1mm×1mm×100個の碁盤目にカットし、セロハンテープ剥離試験後の残存碁盤目数から評価した。
▲3▼酸溶解性:10重量%の希硫酸水溶液1ミリリットルを塗面にスポットし、塗膜の溶解状態を相対的に評価した。
▲4▼耐アルカリ性:1Nの水酸化カリウム水溶液1ミリリットルを塗面にスポットし、5分後に拭取り、塗膜を1mm×1mm×100個の碁盤目にカットし、セロハンテープ剥離試験後の残存碁盤目数から評価した。
▲5▼塗膜硬度:常温での塗膜硬度を評価した。
【0061】
(ハ)試験評価判定基準
○:良好、
△:やや劣るが使用可能範囲、
×:不良
【0062】
【表1】
Figure 2004095224
【0063】
[実施例8]
(塩基性の官能基を有する高分子化合物の合成)
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた2リットルの丸底4つ口フラスコにイソプロピルアルコール1120g、アクリル酸ブチル240g、メタクリル酸ジメチルアミノエチル240gを仕込み、80℃に加熱した。その後30分ごとにABN−E(日本ヒドラジン工業(株)製アゾ化合物)1gを合計5回加え、その後4時間に渡ってフラスコ内の温度を80℃に保った後常温まで冷却して反応を終了した。
【0064】
(電気絶縁接着剤の調製)
得られた塩基性の官能基を有する高分子化合物の溶液99重量部に、MA−100(三菱化学(株)製カーボンブラック)1重量部をペイントシェーカーを用いて分散し、黒色の電気絶縁接着剤を得た。得られた高分子化合物を構成するモノマー成分の50重量%は塩基性の官能基を有するモノマーである。
【0065】
[実施例9]
(塩基性の官能基を有する高分子化合物の合成)
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた2リットルの丸底4つ口フラスコにイソプロピルアルコール1120g、メタクリル酸n−ブチル240g、メタクリル酸ジメチルアミノエチル240gを仕込み、80℃に加熱した。その後30分ごとにABN−E(日本ヒドラジン工業(株)製アゾ化合物)1gを合計5回加え、その後4時間に渡ってフラスコ内の温度を80℃に保った後常温まで冷却して反応を終了した。
【0066】
(電気絶縁接着剤の調製)
実施例8と同様にして黒色の接着剤を得た。
得られた高分子化合物を構成するモノマー成分の50重量%は塩基性の官能基を有するモノマーである。
【0067】
[実施例10]
(塩基性の官能基を有する高分子化合物の合成)
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた2リットルの丸底4つ口フラスコにイソプロピルアルコール1120g、アクリル酸ブチル120g、アクリル酸2−ヒドロキシエチル120g、メタクリル酸ジメチルアミノエチル240gを仕込み、80℃に加熱した。その後30分ごとにABN−E(日本ヒドラジン工業(株)製アゾ化合物)1gを合計5回加え、その後4時間に渡ってフラスコ内の温度を80℃に保った後常温まで冷却して反応を終了した。
【0068】
(電気絶縁接着剤の調製)
実施例8と同様にして黒色の接着剤を得た。
得られた高分子化合物を構成するモノマー成分の50重量%は塩基性の官能基を有するモノマーである。
【0069】
[実施例11]
(塩基性の官能基を有する高分子化合物の合成)
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた2リットルの丸底4つ口フラスコにイソプロピルアルコール1120g、アクリル酸n−ブチル120g、メタクリル酸ジメチルアミノエチル360gを仕込み、80℃に加熱した。その後30分ごとにABN−E(日本ヒドラジン工業(株)製アゾ化合物)1gを合計5回加え、その後4時間に渡ってフラスコ内の温度を80℃に保った後常温まで冷却して反応を終了した。
【0070】
(電気絶縁接着剤の調製)
実施例8と同様にして黒色の接着剤を得た。
得られた高分子化合物を構成するモノマー成分の75重量%は塩基性の官能基を有するモノマーである。
【0071】
[実施例12]
(電気絶縁接着剤の調製)
実施例8で得た塩基性の官能基を有する高分子化合物の溶液76重量部に、MA−100(三菱化学(株)製カーボンブラック)1重量部およびNS#600(日東粉化工業(株)製炭酸カルシウム粉末、平均粒子径1.48マイクロメートル)23重量部をペイントシェーカーを用いて分散し、黒色の電気絶縁接着剤を得た。得られた高分子化合物を構成するモノマー成分の50重量%は塩基性の官能基を有するモノマーである。また、体質顔料として炭酸カルシウムを電気絶縁接着剤中に50重量%含有していた。
【0072】
[実施例13]
(電気絶縁接着剤の調製)
実施例8で得た塩基性の官能基を有する高分子化合物の溶液96重量部に、MA−100(三菱化学(株)製カーボンブラック)1重量部およびNS#600(日東粉化工業(株)製炭酸カルシウム粉末、平均粒子径1.48マイクロメートル)3重量部をペイントシェーカーを用いて分散し、黒色の電気絶縁接着剤を得た。得られた高分子化合物を構成するモノマー成分の50重量%は塩基性の官能基を有するモノマーである。また、体質顔料として炭酸カルシウムを電気絶縁接着剤中に7重量%含有していた。
【0073】
[実施例14]
(電気絶縁接着剤の調製)
実施例8で得た塩基性の官能基を有する高分子化合物の溶液65重量部に、MA−100(三菱化学(株)製カーボンブラック)1重量部およびNS#600(日東粉化工業(株)製炭酸カルシウム粉末、平均粒子径1.48マイクロメートル)34重量部をペイントシェーカーを用いて分散し、黒色の電気絶縁接着剤を得た。得られた高分子化合物を構成するモノマー成分の50重量%は塩基性の官能基を有するモノマーである。また、体質顔料として炭酸カルシウムを電気絶縁接着剤中に63重量%含有していた。
【0074】
[比較例3]
(塩基性の官能基を有する高分子化合物の合成)
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた2リットルの丸底4つ口フラスコにイソプロピルアルコール1120g、アクリル酸n−ブチル456g、メタクリル酸ジメチルアミノエチル24gを仕込み、80℃に加熱した。その後30分ごとにABN−E(日本ヒドラジン工業(株)製アゾ化合物)1gを合計5回加え、その後4時間に渡ってフラスコ内の温度を80℃に保った後常温まで冷却して反応を終了した。
【0075】
(電気絶縁接着剤の調製)
実施例8と同様にして黒色の接着剤を得た。
得られた高分子化合物を構成するモノマー成分の5重量%は塩基性の官能基を有するモノマーである。
【0076】
[接着剤評価方法]
(イ)評価用試験板の作成方法
直径3ミリメートルの穴を10ミリメートル間隔で空けた、厚さ0.3ミリメートル、一辺の長さが100ミリメートルである正方形の穴明き銅板に、実施例8〜14および比較例3で調製した電気絶縁接着剤をエアースプレーを用いて均一に塗布し、60℃の循環型乾燥炉で5分間乾燥を行った後、接着剤が塗布された穴明き銅板同士を貼り合わせて評価用の試験板を作成した。
【0077】
(ロ)接着剤試験項目と評価方法
▲1▼接着強度:常温における試験板の接着強度を相対的に評価した。
▲2▼耐水性:25℃の水中に試験板を2時間浸漬し、接着層の軟化、接着強度の低下を相対的に評価した。
▲3▼耐アルカリ性:1Nの水酸化カリウム水溶液中に試験板を2時間浸漬し、接着層の軟化、接着強度の低下を相対的に評価した。
▲4▼酸溶解性:10重量%の希硫酸水溶液中に試験板を2時間浸漬し、接着層の溶解性を相対的に評価した。
▲5▼水中絶縁性:試験板に50グラム/平方センチメートルの荷重をかけた状態で水中に2時間浸漬した時の2電極間の絶縁性を相対的に評価した。
▲6▼アルカリ絶縁性:試験板に50グラム/平方センチメートルの荷重をかけた状態で0.1Nの水酸化カリウム水溶液中に試験板を2時間浸漬した時の2電極間の絶縁性を相対的に評価した。
▲7▼酸通電性:試験板に50グラム/平方センチメートルの荷重をかけた状態で10重量%の希硫酸中に2時間浸漬した時の2電極間の通電性を相対的に評価した。
【0078】
(ハ)試験評価判定基準
○:良好、
△:やや劣るが使用可能範囲、
×:不良
【0079】
【表2】
Figure 2004095224
【0080】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の酸性液漏れセンサは、第1の導電体と、第2の導電体と、第1の導電体および第2の導電体を被覆し、これらの間を電気的に絶縁状態にする電気絶縁材とを有し、前記電気絶縁材が、酸性液に反応して電気絶縁性が低下するものであるので、バッテリーなど、酸性液が充填されたデバイスからの液漏れを素早く検知することができる。
【0081】
また、本発明の酸性液漏れセンサは、酸性液を透過できる第1の導電体からなる層と、第2の導電体からなる層と、第1の導電体からなる層と第2の導電体からなる層との間に挟まれて、これらの間を電気的に絶縁状態に接着する電気絶縁材からなる接着層とを有し、前記電気絶縁材が、酸性液に反応して電気絶縁性が低下するものであるので、バッテリーなど、酸性液が充填されたデバイスからの液漏れを素早く検知することができる。
【0082】
また、本発明の電気絶縁材は、塩基性の官能基を有する高分子化合物を含有するものであるので、バッテリー液などの酸性液によって中和作用を受けることによって、水に可溶な状態となりやすく、酸性液などに対する耐久性が極めて弱くなる。このような電気絶縁材は、バッテリーなど、酸性液が充填されたデバイスからの液漏れを素早く検知する酸性液漏れセンサに好適である。
また、前記電気絶縁材が、体質顔料を10重量%以上含有するものであれば、さらに水に可溶な状態となりやすく、酸性液などに対する耐久性がさらに弱くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酸性液漏れセンサの一例を示す上面図である。
【図2】本発明の酸性液漏れセンサの他の例を示す側断面図である。
【図3】本発明における導電体シートの一例を示す上面図である。
【図4】本発明における導電体シートの他の例を示す上面図である。
【図5】無停電電源装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
20 バッテリー液漏れセンサ(酸性液漏れセンサ)
22 第1の導電体
23 第2の導電体
24 被覆層(電気絶縁材)
30 報知器(報知手段)
40 バッテリー液漏れセンサ(酸性液漏れセンサ)
41 第1の導電体層
42 第2の導電体層
43 接着層

Claims (13)

  1. 第1の導電体と、第2の導電体と、第1の導電体および第2の導電体を被覆し、これらの間を電気的に絶縁状態にする電気絶縁材とを有し、前記電気絶縁材が、酸性液に反応して電気絶縁性が低下するものであることを特徴とする酸性液漏れセンサ。
  2. 酸性液を透過できる第1の導電体からなる層と、第2の導電体からなる層と、第1の導電体からなる層と第2の導電体からなる層との間に挟まれて、これらの間を電気的に絶縁状態に接着する電気絶縁材からなる接着層とを有し、
    前記電気絶縁材が、酸性液に反応して電気絶縁性が低下するものであることを特徴とする酸性液漏れセンサ。
  3. 前記電気絶縁材が、酸性液に溶解するものであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の酸性液漏れセンサ。
  4. 前記電気絶縁材が、塩基性の官能基を有する高分子化合物を含有するものであることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項に記載の酸性液漏れセンサ。
  5. 前記電気絶縁材が、体質顔料を10重量%以上含有するものであることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項に記載の酸性液漏れセンサ。
  6. 体質顔料が、金属炭酸塩であることを特徴とする請求項5記載の酸性液漏れセンサ。
  7. 酸性液が、バッテリー液であることを特徴とする請求項1ないし6いずれか一項に記載の酸性液漏れセンサ。
  8. 第1の導電体と第2の導電体との間の電気的な導通によって作動する報知手段を具備することを特徴とする請求項1ないし7いずれか一項に記載の酸性液漏れセンサ。
  9. 塩基性の官能基を有し、かつ酸性液に可溶な高分子化合物を含有するものであることを特徴とする電気絶縁材。
  10. 前記電気絶縁材が、体質顔料を10重量%以上含有するものであることを特徴とする請求項9記載の電気絶縁材。
  11. 体質顔料が、金属炭酸塩であることを特徴とする請求項10記載の電気絶縁材。
  12. 請求項9ないし11いずれか一項に記載の電気絶縁材を含有することを特徴とする電気絶縁塗料。
  13. 請求項9ないし11いずれか一項に記載の電気絶縁材を含有することを特徴とする電気絶縁接着剤。
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