JP2004093359A - ゴシックアーク溝の形状測定方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡単、且つ高精度でゴシックアーク溝の形状を測定する。
【解決手段】複数の異なる径の断面円形状の測定治具としてのボール1〜3をゴシックアーク溝Gに当接させた状態でボール1〜3の中心位置を測定し、 該測定中心位置データと複数のボール1〜3の径寸法に基づいて演算処理を施すことによりゴシックアーク溝Gの形状として左右の接触角度、溝R寸法及び溝R中心位置を算出する。
【選択図】 図1
【解決手段】複数の異なる径の断面円形状の測定治具としてのボール1〜3をゴシックアーク溝Gに当接させた状態でボール1〜3の中心位置を測定し、 該測定中心位置データと複数のボール1〜3の径寸法に基づいて演算処理を施すことによりゴシックアーク溝Gの形状として左右の接触角度、溝R寸法及び溝R中心位置を算出する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多点接触玉軸受、ボールねじ装置、リニアガイド装置、ボールスプラインなどに用いられるゴシックアーク溝の形状測定方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴシックアーク溝は左右それぞれ中心位置が異なるR形状で形成されていて、 基準球に対して2 点で接触するようになっているので、 その形状測定では左右それぞれのR寸法、 中心間距離、 及び基準球に対する接触角度等を求める必要がある。
【0003】
従来のゴシックアーク溝の測定は、特開平11−211454号公報に示すように、専用の形状測定機を用いて測定針によるゴシックアーク溝の形状測定を行っていた。多点接触玉軸受やリニアガイド装置等のゴシックアーク溝の形状測定も基本的には同様である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のゴシックアーク溝の形状測定においては、専用の形状測定機で測定針を用いるので測定が面倒で、 ワークの加工時の形状修正のための加工機側のドレッサー調整等の機械調整や多数個のワークの形状選別が容易に行えないという問題がある。
【0005】
また、 簡易測定法として、 ゴシックアーク溝又は該ゴシックアーク溝に押し当てる基準ボールにブリューペーストと称する色付きのペーストを薄く塗って相手に押し当て、相手にブリューペーストが転写されること、又は当り面に塗られたブリューペーストが相手との接触により薄く伸ばされて色調が変わることを目視で確認し、接触位置を確認する方法があるが、ペーストを塗る厚さは見るべき当りの強さ相当より薄くする必要があり(2μmの当りをみるには2μm未満の厚さで塗る)、非常に薄い範囲での転写、色調の変化を見取ることと合わせて熟練を要し、しかも精度が十分でないという問題がある。
【0006】
更に、光学式拡大投影機を用いてボールとゴシックアーク溝のすき間の光の透過を見る等の簡易測定法があるが、 これも同様に精度が充分ではないという問題がある。
更に、ゴシックアーク溝の加工機(溝研削盤) に形状測定機を取り付けて機上測定を行うことが困難で、一度加工機からワークを下ろして形状測定機でゴシックアーク溝の形状を測定した後に再度加工機にワークをセットしてゴシックアーク溝を仕上げるには再セットの手間が非常に掛かる問題がある。
【0007】
本発明はこのような不都合を解消するためになされたものであり、簡単、且つ高精度でゴシックアーク溝の形状を測定することができるゴシックアーク溝の形状測定方法及び装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係るゴシックアーク溝の形状測定方法は、複数の異なる径の断面円形状の測定治具をゴシックアーク溝に当接させた状態で該測定治具の中心位置を測定し、 該測定中心位置データと前記測定治具の複数の径寸法に基づいて演算処理を施すことによりゴシックアーク溝の形状を測定することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係るゴシックアーク溝の形状測定方法は、請求項1において、 前記演算処理により、前記ゴシックアーク溝の左右の接触角度、溝R寸法及び溝R中心位置を算出することを特徴とする。
請求項3に係る機械部品は、請求項1又は2のゴシックアーク溝の形状測定方法により品質を確認したゴシックアーク溝を有する。
【0010】
請求項4に係るゴシックアーク溝の形状測定装置は、複数の異なる径の断面円形状の測定治具をゴシックアーク溝に当接させた状態で該測定治具の中心位置を測定する測定手段と、該測定中心位置データと前記測定治具の複数の径寸法に基づいてゴシックアーク溝の左右の接触角度、溝R寸法及び溝R中心位置の少なくとも一つを算出する演算手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に係るゴシックアーク溝の形状制御装置は、請求項4のゴシックアーク溝の形状測定装置と、該形状測定装置の演算手段による算出値がゴシックアーク溝の寸法設定値に一致するようにゴシックアーク溝の加工機を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
請求項6に係るゴシックアーク溝の形状制御装置は、請求項5において、前記加工機に一体に取り付けられたことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態であるゴシックアーク溝の形状測定方法を説明するための説明図、図2は形状測定装置の一例を示す正面図、図3は図2の右側面図、図4は本発明の第2の実施の形態である溝径測定機による外輪のゴシックアーク溝の形状測定方法を説明するための説明図、図5は図4の平面図、図6は本発明の第3の実施形態であるゴシックアーク溝の形状測定方法に用いる測定器の説明図、図7は本発明の第4の実施の形態である円筒状の測定治具を用いたボールねじ装置のねじ軸のゴシックアーク溝の形状測定方法を説明するための説明図、図8は図7の下側面図、図9はデジタル表示マイクロメータによる円筒状測定治具の中心位置の測定方法を説明するための説明図、図10は本発明の第5の実施の形態であるボールねじ装置のねじ軸のゴシックアーク溝の形状測定装置の正面図、図11は図10の左側面図、図12は図10の上方から見た図である。
【0013】
まず、図2及び図3を参照して、ゴシックアーク溝の形状測定装置から説明すると、この形状測定装置10は、ベース11上にゴシックアーク溝Gを持つワーク(例えば4点接触玉軸受の内輪)Wをセットするためのワーク支持台12とワーク支持板13を備えている。
ワーク支持台12とワーク支持板13にセットしたワークWのゴシックアーク溝Gに断面円形状の測定治具としての複数(例えば3個)の異なる径のボール1〜3を当接させて各ボール1〜3の中心位置を測定するが、 各ボール1〜3はボールストッパー14によってワークWのゴシックアーク溝Wの周方向の位置決めがなされる。ボールストッパー14は径の異なるボール1〜3の中心を周方向の同一位置に位置決めするための微調機構14aを有している。なお、各ボール1〜3の径は予め測定されている。
【0014】
また、各ボール1〜3の中心位置を溝深さ方向(Y方向)及び溝直角方向(X方向)で測定するための測定子15,16を有する測定機17,18を備えており、 この測定機17,18は位置調整機構19,20、 支柱21等を介してベース11上に固定されている。
更に、図示しないが測定機17,18による各ボール1〜3の測定中心位置データと予め測定された各ボール1〜3の径寸法に基づいてゴシックアーク溝Gの形状を算出するパソコン等の演算装置(演算手段)を備えている。
【0015】
使用するボールの径は、ボールはゴシックアーク溝Gの曲率半径Rの面の範囲に接触しなければならないので、ゴシックアーク溝Gの代表値の曲率半径R、オフセットLと曲率半径Rの面の範囲から使用するボールの径の範囲は決まる。
即ち、曲率半径R、オフセットLのゴシックアーク溝Gの接触角αの点に接触するボール径をdとすると、
sinα=(L/2)/(R−d/2)
R−d/2=(L/2)/sinα
d=2R−L/sinα
使用するボールはゴシックアーク溝Gの曲率半径Rの面の範囲に接触しなければならないので、その範囲が溝底側α1から溝肩側α2の範囲とすると、d1=2R−L/sinα1からd2=2R−L/sinα2の範囲となる。
【0016】
例えば曲率半径R=3mm、オフセットL=0.314、に対してα1=10°、α2=70°とすると、d1=4.192、d2=5.666となる(小数点第4位を四捨五入)。
また、別に標準接触角45°の範囲に対して±10°の範囲で考え、α1=35°、α2=55°とすると、d1=5.453、d2=5.617となる(小数点第4位を四捨五入)。
【0017】
そして、この実施の形態では、前記形状測定装置10にセットされたワークWのゴシックアーク溝Gに予め径が測定された3 種(1条件固定とすれば二種でも可)の径のボール1〜3を当接させた状態で測定機17,18によって各ボール1〜3の中心位置を測定し、 該測定中心位置データと各ボール1〜3の径寸法に基づいて演算装置によって演算処理を施すことによりゴシックアーク溝Gの形状として左右の接触角度、溝R寸法及び溝R中心位置を算出する。
【0018】
このように、ゴシックアーク溝Gに当接させた各ボール1〜3の中心位置と径寸法からゴシックアーク溝Gの形状を測定するので、 簡単な装置で高精度な測定ができるようになる。
また、形状測定装置を独立の装置としないで、 加工機にユニットとして一体に搭載することで、 加工機上でのゴシックアーク溝の形状測定を可能にすることもできる。 このようにすると、ワークWを加工機から外さなくて済むので、位置原点がずれず、そのまま形状測定装置の演算装置による算出値に基づいてゴシックアーク溝Gの形状誤差を修正して、加工機によるゴシックアーク溝の加工を継続することができる。
【0019】
この場合、加工機側のドレッサの位置制御装置で形状測定装置の演算手段による算出値がゴシックアーク溝の寸法設定値に一致するようにドレッサの位置を制御してゴシックアーク溝の形状を修正することもできる。
次に、演算装置の計算例について説明する。
図1に3 種の異なる径のボール1〜3をゴシックアーク溝Gに当接させた状態を示す。
【0020】
各ボール1〜3の径を予め測定しておき、その半径をそれぞれR1 、R2 、R3 とする。また、測定機17,18によって測定された各ボール1〜3の中心位置を溝直角方向をX、溝深さ方向をYとする直交座標系でそれぞれ(X1 ,Y1 )、(X2 ,Y2 )、(X3 ,Y3 )とする。
そして、ゴシックアーク溝Gの溝R寸法(曲率半径) をR0 、溝R(曲率) 中心の位置を(X0 ,Y0 )とすると、これらのボール1〜3がすべてゴシックアーク溝Gの表面に当接していることから、
(R0 −R1 )2 =(X0 −X1 )2 +(Y0 −Y1 )2
(R0 −R2 )2 =(X0 −X2 )2 +(Y0 −Y2 )2
(R0 −R3 )2 =(X0 −X3 )2 +(Y0 −Y3 )2
となる。
【0021】
この3つの2次式で未知数はR0 、X0 、Y0 の3個、残りは既知なのでR0 とX0 、Y0 それぞれ2個の解があり、R0 が左右の2 つのゴシックアーク溝Gの曲率半径、(X0 ,Y0 )が曲率中心に相当する。
X0 ={−I±√(I2−HJ)}/H
ここで、H=D2 −F2 −1
I=D(E−Y1 )−X1 −F(G−R1 )
R0 =FX0 +G
ここで、F=A1+B1D
G=C1+B1E
Y0 =DX0 +E
ここで、D=(A2−A1)/(B1−B2)
E=(C2−C1)/(B1−B2)
A1=(X1 −X2 )/(R1 −R2 )
A2=(X2 −X3 )/(R2 −R3 )
A3=(X3 −X1 )/(R3 −R1 )
B1=(Y1 −Y2 )/(R1 −R2 )
B2=(Y2 −Y3 )/(R2 −R3 )
B3=(Y3 −Y1 )/(R3 −R1 )
C1={(R1 +R2 )−(X1 +X2 )/(R1 −R2 )−(Y1 +Y2 )/R1 −R2 )}/2
C2={(R2 +R3 )−(X2 +X3 )/(R2 −R3 )−(Y2 +Y3 )/R2 −R3 )}/2
C3={(R3 +R1 )−(X3 +X1 )/(R3 −R1 )−(Y3 +Y1 )/R3 −R1 )}/2
以上の式で測定値(X1 、Y1 、X2 、Y2 、X3 、Y3 、R1 、R2 、R3 )から未知のR0 とX0 ,Y0 を求めることができる。
実際の数値例を示す。R1 =5.556/2、R2 =5.450/2、R3 =5.650/2のボールの中心位置が表1のように測定された。
【0022】
【表1】
【0023】
このときの計算結果は次の表2になる。
【0024】
【表2】
【0025】
以上の計算により、ゴシックアーク溝Gの左右の溝R寸法が3.0、溝R中心のX方向の距離が0.157+0.157=0.314、Y方向の高さの違いは0.000であることが分かる。 更に、基準ボール径をボール1の5.556とするとその中心は(0,0)にあり、接触角をαとすると、α=tan−1(X0 /Y0 )でα=±45.0°となる。
【0026】
なお、座標系については、符号はY軸では溝底方向をマイナス、溝外の方向をプラスとし、X軸では図示の右向きをプラス、左向きをマイナスとしたが、式の展開に符号は無関係である。
測定値X1 、Y1 、X2 、Y2 、X3 ,Y3 の符号と求める値X0 、Yの符号の方向の関係を特定の同一の向きで考えれば良いだけである。測定値を上記のような符号で考えれば、結果も同一の符号で考える必要があるし、逆の符合で考えれば結果も逆の符号で考えればよい。
別の計算例で、R1 =5.556/2、R2 =5.450/2、R3 =5.650/2の中心位置が表3のように測定された場合の結果は次の表4のようになる。
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】
以上の計算により、ゴシックアーク溝Gの左右の溝R寸法が2.961と3.031、溝R中心のX方向の距離が0.134+0.189=0.323、Y方向の高さの違いは0.167−0.125=0.042であることが分かる。 さらに基準ボール径をボール1の5.556とすると、その中心は(0,0)にあり、接触角をαとすると、α=tan−1(X0 /Y0 )で、α=+47.1°と−48.5°となる。
【0030】
以上の方法でゴシックアーク溝Gの形状測定を溝R寸法、 溝R中心位置、 接触角について行うことができる。
なお、本発明のゴシックアーク溝の形状測定方法及び装置は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0031】
例えば、ボールねじ装置のねじ軸又はナットのゴシックアーク溝を測定する場合は溝直角方向で測定するために測定機の測定子をリード角分だけ傾けて測定する。 また、溝が深いのでボールの直径方向でボール中心の溝直角方向位置が測定できない場合はボールの高い位置で測定して該測定値を演算により中心位置に換算して求めることもできる。
【0032】
また、ゴシックアーク溝が多点接触玉軸受の外輪溝やボールねじ装置のナットの溝ように内面にある場合も外面のゴシックアーク溝の測定と同様である。 ボールストッパーと各測定子がワークの内面に干渉なく挿入できるような配置にすればよい。
更に、上記実施の形態では、測定治具はボールでその中心位置を測定する例を示しているが、これに限定されない。
【0033】
他の例を示すと、ゴシックアーク溝の精度誤差はゴシックアーク溝研削を総型砥石でフランジ研削で作る場合にはドレッサーダイヤモンドの摩耗とセット誤差により、溝R寸法誤差とオフセット誤差が生じる場合がある。
このように左右(上記座標系でX軸方向)に対称な形状の場合は前記測定において測定治具のX軸方向位置の測定は行わず、Y軸方向の位置のみ測定すれば、R寸法とオフセットを求めることができる。
【0034】
この場合、ワークWが図4及び図5に示すような4点接触玉軸受外輪のゴシックアーク溝Gであれば溝径測定機22で異なる複数の径の断面円形状の測定治具のY軸方向の位置を測定すれば溝R寸法とオフセットひいては接触角を求めることができる。
この溝径測定機22は、ゴシックアーク溝Gに当接する測定治具として互いに180°離間配置された一対のボール状の測定子23を用いており、これらの測定子23は一方が筐体24に固定され、他方が筐体24内に配置された移動機構25に取り付けられている。
【0035】
移動機構25は板ばね26を備えてワークWの径方向に移動可能とされており、この移動機構25の位置をダイヤルゲージ27の測定子28等で測定することで測定治具のY軸方向の位置を測定するようになっている。
また、図6に示すように、リニアガイド装置の案内レール31又はスライダのゴシックアーク溝Gについても同様である。図6では、ゴシックアーク溝Gに当接する測定治具としてボールを用いた例でマイクロメータ等の測長器32で測定治具のY軸方向の位置を測定するようになっている。
【0036】
詳述すると、この例では、図6に示すように、接触子にボールを用いた測長器で測定する。被測定ゴシックアーク溝に当接する径の異なる3個のボールを用いることは上記第1の実施の形態と同様である。
まず、同一のマスター、例えば(有効径−基準ボール径)のブロックゲージを用いて径の異なるボールの接触子を持つ3つの測長器のゼロ点調整を行う。
【0037】
次に、被測定ゴシックアーク溝の径測定を上記3つの測長器で行い、その結果から溝R寸法、溝R中心のオフセット量、基準ボールに対する接触角を演算で求める。
この方法では、溝深さ方向の測定しか行わないので、左右の溝Rの違いを扱うことはできない。つまり、左右の溝R寸法が等しく、左右の溝R中心高さが等し場合の溝R寸法、溝R中心のオフセット量及び基準ボールに対する接触角を測定結果から演算で求める。
【0038】
例えば、溝R=1.715、オフセット量0.180で、φ3.175の基準ボールに対して接触角45°を狙ったゴシックアーク溝をボール径d0 =3.175(基準ボール)、d1 =3.225(大径ボール)、d2 =3.095(小径ボール)の三種の測長器で測定する。その結果はボール径3.175の測定値を基準として、3.225のとき+0.033、3.095のとき−0.022であったとする。それぞれのボール中心高さはY1=(0.033+0.05)/2=0.0415、Y2=(−0.022−0.08)/2=−0.051となり、溝R=1.714、オフセット量A=0.179、接触角α=45°と計算される。
【0039】
このときの計算式は、
溝R:R=a/b
a=(d0 /2)1/2 ×(Y2−Y1)−(d1 /2)1/2 ×Y2+(d2 /2)1/2 ×Y1
b=d0 ×(Y2−Y1)−d1 ×Y2+d2 ×Y1
オフセット量A:A={(R−d1 /2)2 −B2 }1/2 ×2
B={(R−d1 /2)2 −(R−d0 /2)2 −Y12 }/(2Y1)
接触角α:α=asin{A/2×(R−d0 /2)}である。
【0040】
また、ボール径3.175の測定値を基準として、3.225のとき+0.018、3.095のとき−0.017では、それぞれボール中心高さはY1=(0.018+0.05)/2=0.034、Y2=(−0.017−0.08)/2=−0.0485となり、溝R=1.762、オフセット量A=0.318、接触角α=38.7°と計算される。
【0041】
更に、ボールねじ装置のねじ軸やナットのゴシックアーク溝ではリード角があるので対向した溝で測定することはできないが、図7〜図9に示すように、ゴシックアーク溝Gの3溝を用いて測定すれば上述した玉軸受やリニアガイド装置と同様に3種の異なる径の測定治具を用いて測定治具のY軸方向の位置をデジタル表示のマイクロメータ40等で測定することで溝R寸法とオフセット、接触角を求めることができる。
【0042】
なお、ここでは断面円形状の測定治具として円筒状の測定治具41を用いている。また、異なる径の測定治具41は3溝に接触させる3 個の内の片側の1 個のみでもよいし、反対側の2 個を含めた3 個全部でもよい。更に、3 溝での測定ではなく斜め方向の2溝の測定でもよい。
【0043】
更に、図10〜図12は、図2及び図3で説明した形状測定装置10の変形例で、ワークWがボールねじ装置のねじ軸とされている。この形状測定装置50は基本的には上記形状測定装置10と略同様であるが、ベース51上でねじ軸の両端部を支持するワーク支持突起52とワーク支持板53を備えている点と、各ボール1〜3のボールストッパー54並びにX軸方向の測定子57及びY軸方向の測定子58のうちのX軸方向の測定子57がリード角分だけ傾いている点が相違している。
更に、上記実施の形態では、ワークWを固定してゴシックアーク溝の形状を測定しているが、ワークWを周方向に回転させてゴシックアーク溝の形状を測定することで周方向にばらつきがあるか否かを検出することもできる。
【0044】
【発明の効果】
上記の説明から明らかなように、本発明によれば、簡単、且つ高精度でゴシックアーク溝の形状を測定することができるので、 ワークの加工時において形状修正のための機械調整や多数個のワークの形状選別が容易に行うことができる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態であるゴシックアーク溝の形状測定方法を説明するための説明図である。
【図2】形状測定装置の一例を示す正面図である。
【図3】図2の右側面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態である溝径測定機による外輪のゴシックアーク溝の形状測定方法を説明するための説明図である。
【図5】図4の平面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態であるゴシックアーク溝の形状測定方法に用いる測定器の説明図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態である円筒状の測定治具を用いたボールねじ装置のねじ軸のゴシックアーク溝の形状測定方法を説明するための説明図である。
【図8】図7の下側面図である。
【図9】デジタル表示マイクロメータによる円筒状測定治具の中心位置の測定方法を説明するための説明図である。
【図10】本発明の第5の実施の形態であるボールねじ装置のねじ軸のゴシックアーク溝の形状測定装置の正面図である。
【図11】図10の左側面図である。
【図12】図10の上方から見た図である。
【符号の説明】
1〜3…ボール(測定治具)
G…ゴシックアーク溝
10…形状測定装置
17,18…測定機(測定手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、多点接触玉軸受、ボールねじ装置、リニアガイド装置、ボールスプラインなどに用いられるゴシックアーク溝の形状測定方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴシックアーク溝は左右それぞれ中心位置が異なるR形状で形成されていて、 基準球に対して2 点で接触するようになっているので、 その形状測定では左右それぞれのR寸法、 中心間距離、 及び基準球に対する接触角度等を求める必要がある。
【0003】
従来のゴシックアーク溝の測定は、特開平11−211454号公報に示すように、専用の形状測定機を用いて測定針によるゴシックアーク溝の形状測定を行っていた。多点接触玉軸受やリニアガイド装置等のゴシックアーク溝の形状測定も基本的には同様である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のゴシックアーク溝の形状測定においては、専用の形状測定機で測定針を用いるので測定が面倒で、 ワークの加工時の形状修正のための加工機側のドレッサー調整等の機械調整や多数個のワークの形状選別が容易に行えないという問題がある。
【0005】
また、 簡易測定法として、 ゴシックアーク溝又は該ゴシックアーク溝に押し当てる基準ボールにブリューペーストと称する色付きのペーストを薄く塗って相手に押し当て、相手にブリューペーストが転写されること、又は当り面に塗られたブリューペーストが相手との接触により薄く伸ばされて色調が変わることを目視で確認し、接触位置を確認する方法があるが、ペーストを塗る厚さは見るべき当りの強さ相当より薄くする必要があり(2μmの当りをみるには2μm未満の厚さで塗る)、非常に薄い範囲での転写、色調の変化を見取ることと合わせて熟練を要し、しかも精度が十分でないという問題がある。
【0006】
更に、光学式拡大投影機を用いてボールとゴシックアーク溝のすき間の光の透過を見る等の簡易測定法があるが、 これも同様に精度が充分ではないという問題がある。
更に、ゴシックアーク溝の加工機(溝研削盤) に形状測定機を取り付けて機上測定を行うことが困難で、一度加工機からワークを下ろして形状測定機でゴシックアーク溝の形状を測定した後に再度加工機にワークをセットしてゴシックアーク溝を仕上げるには再セットの手間が非常に掛かる問題がある。
【0007】
本発明はこのような不都合を解消するためになされたものであり、簡単、且つ高精度でゴシックアーク溝の形状を測定することができるゴシックアーク溝の形状測定方法及び装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係るゴシックアーク溝の形状測定方法は、複数の異なる径の断面円形状の測定治具をゴシックアーク溝に当接させた状態で該測定治具の中心位置を測定し、 該測定中心位置データと前記測定治具の複数の径寸法に基づいて演算処理を施すことによりゴシックアーク溝の形状を測定することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係るゴシックアーク溝の形状測定方法は、請求項1において、 前記演算処理により、前記ゴシックアーク溝の左右の接触角度、溝R寸法及び溝R中心位置を算出することを特徴とする。
請求項3に係る機械部品は、請求項1又は2のゴシックアーク溝の形状測定方法により品質を確認したゴシックアーク溝を有する。
【0010】
請求項4に係るゴシックアーク溝の形状測定装置は、複数の異なる径の断面円形状の測定治具をゴシックアーク溝に当接させた状態で該測定治具の中心位置を測定する測定手段と、該測定中心位置データと前記測定治具の複数の径寸法に基づいてゴシックアーク溝の左右の接触角度、溝R寸法及び溝R中心位置の少なくとも一つを算出する演算手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に係るゴシックアーク溝の形状制御装置は、請求項4のゴシックアーク溝の形状測定装置と、該形状測定装置の演算手段による算出値がゴシックアーク溝の寸法設定値に一致するようにゴシックアーク溝の加工機を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
請求項6に係るゴシックアーク溝の形状制御装置は、請求項5において、前記加工機に一体に取り付けられたことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態であるゴシックアーク溝の形状測定方法を説明するための説明図、図2は形状測定装置の一例を示す正面図、図3は図2の右側面図、図4は本発明の第2の実施の形態である溝径測定機による外輪のゴシックアーク溝の形状測定方法を説明するための説明図、図5は図4の平面図、図6は本発明の第3の実施形態であるゴシックアーク溝の形状測定方法に用いる測定器の説明図、図7は本発明の第4の実施の形態である円筒状の測定治具を用いたボールねじ装置のねじ軸のゴシックアーク溝の形状測定方法を説明するための説明図、図8は図7の下側面図、図9はデジタル表示マイクロメータによる円筒状測定治具の中心位置の測定方法を説明するための説明図、図10は本発明の第5の実施の形態であるボールねじ装置のねじ軸のゴシックアーク溝の形状測定装置の正面図、図11は図10の左側面図、図12は図10の上方から見た図である。
【0013】
まず、図2及び図3を参照して、ゴシックアーク溝の形状測定装置から説明すると、この形状測定装置10は、ベース11上にゴシックアーク溝Gを持つワーク(例えば4点接触玉軸受の内輪)Wをセットするためのワーク支持台12とワーク支持板13を備えている。
ワーク支持台12とワーク支持板13にセットしたワークWのゴシックアーク溝Gに断面円形状の測定治具としての複数(例えば3個)の異なる径のボール1〜3を当接させて各ボール1〜3の中心位置を測定するが、 各ボール1〜3はボールストッパー14によってワークWのゴシックアーク溝Wの周方向の位置決めがなされる。ボールストッパー14は径の異なるボール1〜3の中心を周方向の同一位置に位置決めするための微調機構14aを有している。なお、各ボール1〜3の径は予め測定されている。
【0014】
また、各ボール1〜3の中心位置を溝深さ方向(Y方向)及び溝直角方向(X方向)で測定するための測定子15,16を有する測定機17,18を備えており、 この測定機17,18は位置調整機構19,20、 支柱21等を介してベース11上に固定されている。
更に、図示しないが測定機17,18による各ボール1〜3の測定中心位置データと予め測定された各ボール1〜3の径寸法に基づいてゴシックアーク溝Gの形状を算出するパソコン等の演算装置(演算手段)を備えている。
【0015】
使用するボールの径は、ボールはゴシックアーク溝Gの曲率半径Rの面の範囲に接触しなければならないので、ゴシックアーク溝Gの代表値の曲率半径R、オフセットLと曲率半径Rの面の範囲から使用するボールの径の範囲は決まる。
即ち、曲率半径R、オフセットLのゴシックアーク溝Gの接触角αの点に接触するボール径をdとすると、
sinα=(L/2)/(R−d/2)
R−d/2=(L/2)/sinα
d=2R−L/sinα
使用するボールはゴシックアーク溝Gの曲率半径Rの面の範囲に接触しなければならないので、その範囲が溝底側α1から溝肩側α2の範囲とすると、d1=2R−L/sinα1からd2=2R−L/sinα2の範囲となる。
【0016】
例えば曲率半径R=3mm、オフセットL=0.314、に対してα1=10°、α2=70°とすると、d1=4.192、d2=5.666となる(小数点第4位を四捨五入)。
また、別に標準接触角45°の範囲に対して±10°の範囲で考え、α1=35°、α2=55°とすると、d1=5.453、d2=5.617となる(小数点第4位を四捨五入)。
【0017】
そして、この実施の形態では、前記形状測定装置10にセットされたワークWのゴシックアーク溝Gに予め径が測定された3 種(1条件固定とすれば二種でも可)の径のボール1〜3を当接させた状態で測定機17,18によって各ボール1〜3の中心位置を測定し、 該測定中心位置データと各ボール1〜3の径寸法に基づいて演算装置によって演算処理を施すことによりゴシックアーク溝Gの形状として左右の接触角度、溝R寸法及び溝R中心位置を算出する。
【0018】
このように、ゴシックアーク溝Gに当接させた各ボール1〜3の中心位置と径寸法からゴシックアーク溝Gの形状を測定するので、 簡単な装置で高精度な測定ができるようになる。
また、形状測定装置を独立の装置としないで、 加工機にユニットとして一体に搭載することで、 加工機上でのゴシックアーク溝の形状測定を可能にすることもできる。 このようにすると、ワークWを加工機から外さなくて済むので、位置原点がずれず、そのまま形状測定装置の演算装置による算出値に基づいてゴシックアーク溝Gの形状誤差を修正して、加工機によるゴシックアーク溝の加工を継続することができる。
【0019】
この場合、加工機側のドレッサの位置制御装置で形状測定装置の演算手段による算出値がゴシックアーク溝の寸法設定値に一致するようにドレッサの位置を制御してゴシックアーク溝の形状を修正することもできる。
次に、演算装置の計算例について説明する。
図1に3 種の異なる径のボール1〜3をゴシックアーク溝Gに当接させた状態を示す。
【0020】
各ボール1〜3の径を予め測定しておき、その半径をそれぞれR1 、R2 、R3 とする。また、測定機17,18によって測定された各ボール1〜3の中心位置を溝直角方向をX、溝深さ方向をYとする直交座標系でそれぞれ(X1 ,Y1 )、(X2 ,Y2 )、(X3 ,Y3 )とする。
そして、ゴシックアーク溝Gの溝R寸法(曲率半径) をR0 、溝R(曲率) 中心の位置を(X0 ,Y0 )とすると、これらのボール1〜3がすべてゴシックアーク溝Gの表面に当接していることから、
(R0 −R1 )2 =(X0 −X1 )2 +(Y0 −Y1 )2
(R0 −R2 )2 =(X0 −X2 )2 +(Y0 −Y2 )2
(R0 −R3 )2 =(X0 −X3 )2 +(Y0 −Y3 )2
となる。
【0021】
この3つの2次式で未知数はR0 、X0 、Y0 の3個、残りは既知なのでR0 とX0 、Y0 それぞれ2個の解があり、R0 が左右の2 つのゴシックアーク溝Gの曲率半径、(X0 ,Y0 )が曲率中心に相当する。
X0 ={−I±√(I2−HJ)}/H
ここで、H=D2 −F2 −1
I=D(E−Y1 )−X1 −F(G−R1 )
R0 =FX0 +G
ここで、F=A1+B1D
G=C1+B1E
Y0 =DX0 +E
ここで、D=(A2−A1)/(B1−B2)
E=(C2−C1)/(B1−B2)
A1=(X1 −X2 )/(R1 −R2 )
A2=(X2 −X3 )/(R2 −R3 )
A3=(X3 −X1 )/(R3 −R1 )
B1=(Y1 −Y2 )/(R1 −R2 )
B2=(Y2 −Y3 )/(R2 −R3 )
B3=(Y3 −Y1 )/(R3 −R1 )
C1={(R1 +R2 )−(X1 +X2 )/(R1 −R2 )−(Y1 +Y2 )/R1 −R2 )}/2
C2={(R2 +R3 )−(X2 +X3 )/(R2 −R3 )−(Y2 +Y3 )/R2 −R3 )}/2
C3={(R3 +R1 )−(X3 +X1 )/(R3 −R1 )−(Y3 +Y1 )/R3 −R1 )}/2
以上の式で測定値(X1 、Y1 、X2 、Y2 、X3 、Y3 、R1 、R2 、R3 )から未知のR0 とX0 ,Y0 を求めることができる。
実際の数値例を示す。R1 =5.556/2、R2 =5.450/2、R3 =5.650/2のボールの中心位置が表1のように測定された。
【0022】
【表1】
【0023】
このときの計算結果は次の表2になる。
【0024】
【表2】
【0025】
以上の計算により、ゴシックアーク溝Gの左右の溝R寸法が3.0、溝R中心のX方向の距離が0.157+0.157=0.314、Y方向の高さの違いは0.000であることが分かる。 更に、基準ボール径をボール1の5.556とするとその中心は(0,0)にあり、接触角をαとすると、α=tan−1(X0 /Y0 )でα=±45.0°となる。
【0026】
なお、座標系については、符号はY軸では溝底方向をマイナス、溝外の方向をプラスとし、X軸では図示の右向きをプラス、左向きをマイナスとしたが、式の展開に符号は無関係である。
測定値X1 、Y1 、X2 、Y2 、X3 ,Y3 の符号と求める値X0 、Yの符号の方向の関係を特定の同一の向きで考えれば良いだけである。測定値を上記のような符号で考えれば、結果も同一の符号で考える必要があるし、逆の符合で考えれば結果も逆の符号で考えればよい。
別の計算例で、R1 =5.556/2、R2 =5.450/2、R3 =5.650/2の中心位置が表3のように測定された場合の結果は次の表4のようになる。
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】
以上の計算により、ゴシックアーク溝Gの左右の溝R寸法が2.961と3.031、溝R中心のX方向の距離が0.134+0.189=0.323、Y方向の高さの違いは0.167−0.125=0.042であることが分かる。 さらに基準ボール径をボール1の5.556とすると、その中心は(0,0)にあり、接触角をαとすると、α=tan−1(X0 /Y0 )で、α=+47.1°と−48.5°となる。
【0030】
以上の方法でゴシックアーク溝Gの形状測定を溝R寸法、 溝R中心位置、 接触角について行うことができる。
なお、本発明のゴシックアーク溝の形状測定方法及び装置は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0031】
例えば、ボールねじ装置のねじ軸又はナットのゴシックアーク溝を測定する場合は溝直角方向で測定するために測定機の測定子をリード角分だけ傾けて測定する。 また、溝が深いのでボールの直径方向でボール中心の溝直角方向位置が測定できない場合はボールの高い位置で測定して該測定値を演算により中心位置に換算して求めることもできる。
【0032】
また、ゴシックアーク溝が多点接触玉軸受の外輪溝やボールねじ装置のナットの溝ように内面にある場合も外面のゴシックアーク溝の測定と同様である。 ボールストッパーと各測定子がワークの内面に干渉なく挿入できるような配置にすればよい。
更に、上記実施の形態では、測定治具はボールでその中心位置を測定する例を示しているが、これに限定されない。
【0033】
他の例を示すと、ゴシックアーク溝の精度誤差はゴシックアーク溝研削を総型砥石でフランジ研削で作る場合にはドレッサーダイヤモンドの摩耗とセット誤差により、溝R寸法誤差とオフセット誤差が生じる場合がある。
このように左右(上記座標系でX軸方向)に対称な形状の場合は前記測定において測定治具のX軸方向位置の測定は行わず、Y軸方向の位置のみ測定すれば、R寸法とオフセットを求めることができる。
【0034】
この場合、ワークWが図4及び図5に示すような4点接触玉軸受外輪のゴシックアーク溝Gであれば溝径測定機22で異なる複数の径の断面円形状の測定治具のY軸方向の位置を測定すれば溝R寸法とオフセットひいては接触角を求めることができる。
この溝径測定機22は、ゴシックアーク溝Gに当接する測定治具として互いに180°離間配置された一対のボール状の測定子23を用いており、これらの測定子23は一方が筐体24に固定され、他方が筐体24内に配置された移動機構25に取り付けられている。
【0035】
移動機構25は板ばね26を備えてワークWの径方向に移動可能とされており、この移動機構25の位置をダイヤルゲージ27の測定子28等で測定することで測定治具のY軸方向の位置を測定するようになっている。
また、図6に示すように、リニアガイド装置の案内レール31又はスライダのゴシックアーク溝Gについても同様である。図6では、ゴシックアーク溝Gに当接する測定治具としてボールを用いた例でマイクロメータ等の測長器32で測定治具のY軸方向の位置を測定するようになっている。
【0036】
詳述すると、この例では、図6に示すように、接触子にボールを用いた測長器で測定する。被測定ゴシックアーク溝に当接する径の異なる3個のボールを用いることは上記第1の実施の形態と同様である。
まず、同一のマスター、例えば(有効径−基準ボール径)のブロックゲージを用いて径の異なるボールの接触子を持つ3つの測長器のゼロ点調整を行う。
【0037】
次に、被測定ゴシックアーク溝の径測定を上記3つの測長器で行い、その結果から溝R寸法、溝R中心のオフセット量、基準ボールに対する接触角を演算で求める。
この方法では、溝深さ方向の測定しか行わないので、左右の溝Rの違いを扱うことはできない。つまり、左右の溝R寸法が等しく、左右の溝R中心高さが等し場合の溝R寸法、溝R中心のオフセット量及び基準ボールに対する接触角を測定結果から演算で求める。
【0038】
例えば、溝R=1.715、オフセット量0.180で、φ3.175の基準ボールに対して接触角45°を狙ったゴシックアーク溝をボール径d0 =3.175(基準ボール)、d1 =3.225(大径ボール)、d2 =3.095(小径ボール)の三種の測長器で測定する。その結果はボール径3.175の測定値を基準として、3.225のとき+0.033、3.095のとき−0.022であったとする。それぞれのボール中心高さはY1=(0.033+0.05)/2=0.0415、Y2=(−0.022−0.08)/2=−0.051となり、溝R=1.714、オフセット量A=0.179、接触角α=45°と計算される。
【0039】
このときの計算式は、
溝R:R=a/b
a=(d0 /2)1/2 ×(Y2−Y1)−(d1 /2)1/2 ×Y2+(d2 /2)1/2 ×Y1
b=d0 ×(Y2−Y1)−d1 ×Y2+d2 ×Y1
オフセット量A:A={(R−d1 /2)2 −B2 }1/2 ×2
B={(R−d1 /2)2 −(R−d0 /2)2 −Y12 }/(2Y1)
接触角α:α=asin{A/2×(R−d0 /2)}である。
【0040】
また、ボール径3.175の測定値を基準として、3.225のとき+0.018、3.095のとき−0.017では、それぞれボール中心高さはY1=(0.018+0.05)/2=0.034、Y2=(−0.017−0.08)/2=−0.0485となり、溝R=1.762、オフセット量A=0.318、接触角α=38.7°と計算される。
【0041】
更に、ボールねじ装置のねじ軸やナットのゴシックアーク溝ではリード角があるので対向した溝で測定することはできないが、図7〜図9に示すように、ゴシックアーク溝Gの3溝を用いて測定すれば上述した玉軸受やリニアガイド装置と同様に3種の異なる径の測定治具を用いて測定治具のY軸方向の位置をデジタル表示のマイクロメータ40等で測定することで溝R寸法とオフセット、接触角を求めることができる。
【0042】
なお、ここでは断面円形状の測定治具として円筒状の測定治具41を用いている。また、異なる径の測定治具41は3溝に接触させる3 個の内の片側の1 個のみでもよいし、反対側の2 個を含めた3 個全部でもよい。更に、3 溝での測定ではなく斜め方向の2溝の測定でもよい。
【0043】
更に、図10〜図12は、図2及び図3で説明した形状測定装置10の変形例で、ワークWがボールねじ装置のねじ軸とされている。この形状測定装置50は基本的には上記形状測定装置10と略同様であるが、ベース51上でねじ軸の両端部を支持するワーク支持突起52とワーク支持板53を備えている点と、各ボール1〜3のボールストッパー54並びにX軸方向の測定子57及びY軸方向の測定子58のうちのX軸方向の測定子57がリード角分だけ傾いている点が相違している。
更に、上記実施の形態では、ワークWを固定してゴシックアーク溝の形状を測定しているが、ワークWを周方向に回転させてゴシックアーク溝の形状を測定することで周方向にばらつきがあるか否かを検出することもできる。
【0044】
【発明の効果】
上記の説明から明らかなように、本発明によれば、簡単、且つ高精度でゴシックアーク溝の形状を測定することができるので、 ワークの加工時において形状修正のための機械調整や多数個のワークの形状選別が容易に行うことができる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態であるゴシックアーク溝の形状測定方法を説明するための説明図である。
【図2】形状測定装置の一例を示す正面図である。
【図3】図2の右側面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態である溝径測定機による外輪のゴシックアーク溝の形状測定方法を説明するための説明図である。
【図5】図4の平面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態であるゴシックアーク溝の形状測定方法に用いる測定器の説明図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態である円筒状の測定治具を用いたボールねじ装置のねじ軸のゴシックアーク溝の形状測定方法を説明するための説明図である。
【図8】図7の下側面図である。
【図9】デジタル表示マイクロメータによる円筒状測定治具の中心位置の測定方法を説明するための説明図である。
【図10】本発明の第5の実施の形態であるボールねじ装置のねじ軸のゴシックアーク溝の形状測定装置の正面図である。
【図11】図10の左側面図である。
【図12】図10の上方から見た図である。
【符号の説明】
1〜3…ボール(測定治具)
G…ゴシックアーク溝
10…形状測定装置
17,18…測定機(測定手段)
Claims (6)
- 複数の異なる径の断面円形状の測定治具をゴシックアーク溝に当接させた状態で該測定治具の中心位置を測定し、 該測定中心位置データと前記測定治具の複数の径寸法に基づいて演算処理を施すことによりゴシックアーク溝の形状を測定することを特徴とするゴシックアーク溝の形状測定方法。
- 請求項1において、 前記演算処理により、前記ゴシックアーク溝の左右の接触角度、溝R寸法及び溝R中心位置を算出することを特徴とするゴシックアーク溝の形状測定方法。
- 請求項1又は2のゴシックアーク溝の形状測定方法により品質を確認したゴシックアーク溝を有する機械部品。
- 複数の異なる径の断面円形状の測定治具をゴシックアーク溝に当接させた状態で該測定治具の中心位置を測定する測定手段と、該測定中心位置データと前記測定治具の複数の径寸法に基づいてゴシックアーク溝の左右の接触角度、溝R寸法及び溝R中心位置の少なくとも一つを算出する演算手段とを備えたことを特徴とするゴシックアーク溝の形状測定装置。
- 請求項4のゴシックアーク溝の形状測定装置と、該形状測定装置の演算手段による算出値がゴシックアーク溝の寸法設定値に一致するようにゴシックアーク溝の加工機を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするゴシックアーク溝の形状制御装置。
- 前記加工機に一体に取り付けられたことを特徴とする請求項5記載のゴシックアーク溝の形状制御装置。
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JP2007309447A (ja) * | 2006-05-19 | 2007-11-29 | Fuji Heavy Ind Ltd | スプライン嵌合部品の製造方法 |
JP2016159397A (ja) * | 2015-03-02 | 2016-09-05 | 日本精工株式会社 | 溝研削装置 |
-
2002
- 2002-08-30 JP JP2002255065A patent/JP2004093359A/ja active Pending
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