JP2004092724A - バランスシャフト - Google Patents

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Keiji Minamino
南野 圭史
Takao Kimura
木村 隆夫
Morihiro Yamamoto
山本 守広
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Otics Corp
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Toyota Motor Corp
Otics Corp
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Abstract

【課題】バランスシャフトの重心が最も下方に位置し、ジャーナルと軸受との間の所定位置で圧力が最も高くなるとき、その所定位置でのジャーナルと軸受との間の潤滑を適切に行う。
【解決手段】回転するバランスシャフト1の重心Gが最も下方に位置する状態のとき、位置P1でジャーナル6bと軸受2bとの間の圧力が最も高くなる。そして、潤滑通路10の開口部10aは、上記のような状態でジャーナル6bの外周面の位置P1よりも回転方向前側に位置するよう形成される。これにより、バランスシャフト1の回転中に開口部10aが位置P1に達するのは、同シャフト1の重心Gが最も下方に位置する前となり、このときに開口部10aから潤滑油が吐出されるようになる。このため、重心Gが最も下方に位置して位置P1にてジャーナル6bと軸受2bとの間の圧力が最も高くなるとき、それらの間に必要とされる油膜を上記潤滑油によって形成することが可能となる。
【選択図】   図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の振動抑制等に用いられるバランスシャフトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、内燃機関においては、燃料の燃焼によってピストンを往復移動させ、そのピストンの往復移動をコンロッドによって出力軸であるクランクシャフトの回転へと変換して駆動力を得るようにしている。
【0003】
内燃機関の運転中にピストンが往復移動するときには、その際の慣性力が内燃機関での振動発生の原因となる。こうした振動の発生を抑制して内燃機関を円滑に運転するためには、ピストンが往復移動する際の慣性力を可能な限り打ち消すことが好ましい。そこで従来は、重心が軸線上からずれた状態となるバランスシャフトを内燃機関に設け、このバランスシャフトをクランクシャフトと同期して回転させることで、上記慣性力を打ち消すようにしている。
【0004】
上記のようなバランスシャフトとしては、例えば特開昭63−91742公報に示されるように、軸受によって回転可能に支持されるジャーナルを備えるとともに、上記軸受とジャーナルとの間に潤滑油を供給する潤滑通路を内部に形成したものが知られている。そして、内燃機関の運転中にバランスシャフトが回転するときには、潤滑通路を通じて供給される潤滑油によってジャーナルと軸受との間に油膜が形成され、この油膜によってジャーナルと軸受との間の潤滑が行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、バランスシャフトの回転については、同シャフトの重心が軸線上からずれているため、バランスシャフトの軸線を中心とした回転とはならずに、軸受の円心周りに同軸受の内周面に沿った回転となる。こうした回転が行われることから、ジャーナルと軸受との間の圧力は、周方向位置に応じて異なるとともに、バランスシャフトの回転位置に応じて変動することとなる。そして、バランスシャフトの重心が最も下方に位置したとき、ジャーナルの外周面の下端よりも回転方向後側の位置で上記圧力が最も高くなる。
【0006】
このようにジャーナルと軸受との間の圧力が最も高くなる部分では、油膜が形成されにくくなって潤滑が厳しくなることから、この部分に必要とされる油膜を形成することが良好な潤滑を行う上で重要である。しかし、このことを考慮せずに潤滑通路をジャーナルの外周面における任意の位置で開口させると、ジャーナルと軸受との間において最も圧力が高くなる部分に必要とされる油膜を形成できず、潤滑に支障を来すおそれがある。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、バランスシャフトの重心が最も下方に位置し、ジャーナルと軸受との間の所定位置で圧力が最も高くなるとき、その所定位置でのジャーナルと軸受との間の潤滑を適切に行うことのできるバランスシャフトを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、軸受により回転可能に支持されるジャーナルを備え、前記軸受と前記ジャーナルとの間に潤滑油を供給する潤滑通路が形成されているバランスシャフトにおいて、前記潤滑通路は、前記ジャーナルの外周面であって、同ジャーナルの回転中に前記軸受との間に生じる圧力が最も高くなる部分よりも回転方向前側で開口していること要旨とした。
【0009】
バランスシャフトの回転中におけるジャーナルと軸受との間の圧力は、同シャフトの重心が最も下方に位置したときに、ジャーナルの外周面の下端よりも回転方向後側の部分で最も高くなる。そして、この部分よりも回転方向前側で開口する潤滑通路の開口部が同部分に達するのは、バランスシャフトの重心が最も下方に位置する前になり、このときには開口部から潤滑油が吐出されるようになる。このため、バランスシャフトの重心が最も下方に位置し、上記の部分でジャーナルと軸受との間における圧力が最も高くなるとき、それらの間に必要とされる油膜を上記潤滑油によって形成することが可能となる。従って、上記の部分でジャーナルと軸受との間の潤滑が最も厳しくはなるものの、この部分に必要な油膜を形成して適切な潤滑を行うことができるようになる。
【0010】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記潤滑通路の開口位置は、前記ジャーナルと前記軸受との間において圧力が最大となる部分が生じる状況のもとにあって、前記圧力が当該潤滑通路からの潤滑油の吐出圧力よりも小さくなる位置に設定されているものとした。
【0011】
バランスシャフトの重心が最下方に位置した状態にあって、ジャーナルの外周面の下端よりも回転方向後側の部分でジャーナルと軸受との間の圧力が最も高くなるとき、バランスシャフトの回転方向前側ほど上記圧力は小さくなる。このため、潤滑通路の開口位置がバランスシャフトの回転方向前側の位置になるほど、ジャーナルと軸受との間の圧力が小さくなり、潤滑通路の開口部から潤滑油が吐出され易くなる。従って、上記のように潤滑通路の開口位置を設定することで、バランスシャフトの重心が最も下方に位置して上記の部分で圧力が最も高くなるとき、潤滑通路の開口部からジャーナルと軸受との間に潤滑油を供給することができ、上記の部分に必要とされる油膜を形成し易くなる。
【0012】
請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載の発明において、前記潤滑通路の開口位置は、前記ジャーナルの外周面における軸線方向中央に設定されているものとした。
【0013】
上記構成によれば、潤滑油の開口部からジャーナルと軸受との間に供給された潤滑油が、その間における軸線方向両端部のうちの一方から流れ落ち易くなるのを抑制することができる。
【0014】
請求項4記載の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記潤滑通路は、前記ジャーナルの外周面で一箇所だけに開口しているものとした。
【0015】
上記構成によれば、潤滑通路がジャーナルの外周面の複数箇所で開口する場合に比べ、潤滑通路の開口部における潤滑油の吐出圧力が低下しないため、上述したジャーナルと軸受との間の最も圧力が高くなる部分に対し、一層近い位置に潤滑通路を開口させることができる。これは、当該開口から吐出される潤滑油の吐出圧力が低下しにくくなることで、上記の部分に潤滑通路の開口部を近づけても、当該開口部での潤滑油の吐出圧力がジャーナルと軸受との間の圧力よりも高くなり、当該開口部から潤滑油を吐出可能になるためである。そして、潤滑通路の開口部を上記の部分に一層近づけることで当該部分に油膜を形成し易くなる。
【0016】
請求項5記載の発明では、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記ジャーナルのアンバランスマス側と反対側に位置する反アンバランスマス側の軸線方向長さは、前記アンバランスマス側の軸線方向長さよりも短くされ、前記潤滑通路の開口位置は、前記ジャーナルの外周面における前記アンバランスマス側に設定されているものとした。
【0017】
仮に、ジャーナルの外周面において軸線方向長さが短い反アンバランスマス側に潤滑通路を開口させる場合、その開口部からジャーナルの外周面における軸線方向両縁までの距離が短くなり、当該開口周りに必要とされるランド幅を確保することが困難になる。しかし、上記構成によれば、潤滑油の開口部がジャーナルの外周面における軸線方向長さが長いアンバランスマス側に形成されるため、上記のような不都合が生じることはない。
【0018】
請求項6記載の発明では、請求項5記載の発明において、前記ジャーナルの外周面における前記アンバランスマス側から前記反アンバランスマス側へと繋がる部分については、その両縁間の軸線方向長さが前記反アンバランスマス側に向かうほど徐々に短くなるよう形成されているものとした。
【0019】
潤滑通路の開口位置をジャーナルの外周面のアンバランスマス側における反アンバランスマス側寄りに設定したとき、前記アンバランスマス側から前記反アンバランスマス側へと繋がる部分の軸線方向両縁が、潤滑通路の開口部に対し過度に近くなることはない。従って、潤滑通路の開口位置を上記のように設定したとき、当該開口周りに必要なランド幅を確保しにくくなって、当該開口部から吐出された潤滑油の上記両縁からのリーク量が過度に多くなるのを抑制することができる。
【0020】
請求項7記載の発明では、請求項6記載の発明において、前記アンバランスマス側から前記反アンバランスマス側へと繋がる部分の軸線方向両縁は、前記潤滑通路の開口位置を前記アンバランスマス側における前記反アンバランスマス側寄りに設定したとき、前記ジャーナルの外周面における前記潤滑通路の開口周りに必要なランド幅が確保されるように形成されているものとした。
【0021】
上記構成によれば、潤滑通路の開口位置をジャーナルの外周面のアンバランスマス側における反アンバランスマス側寄りに設定したとき、当該開口周りに必要なランド幅が確保されるため、潤滑通路の開口部から吐出された潤滑油の上記両縁からのリーク量が過度に多くなるのを的確に抑制することができる。
【0022】
請求項8記載の発明では、請求項1〜4のいずれかに記載のバランスシャフトにおいて、前記ジャーナルのアンバランスマス側と反対側に位置する反アンバランスマス側の軸線方向長さは、前記アンバランスマス側の軸線方向長さよりも短くされ、前記潤滑通路の開口位置は、前記ジャーナルの外周面の前記反アンバランスマス側における前記アンバランスマス側寄りに設定され、前記反アンバランスマス側における前記アンバランスマス側に繋がる部分については、その両縁間の軸線方向長さが前記アンバランス側から離れるほど徐々に短くなるよう形成されているものとした。
【0023】
上記構成によれば、ジャーナルの外周面において軸線方向長さが短い反アンバランスマス側にて潤滑通路が開口するが、その開口部に対し反アンバランスマス側におけるアンバランスマス側と繋がる部分の軸線方向両縁が過度に近くなることはない。従って、当該開口部から吐出された潤滑油の上記両縁からのリーク量が過度に多くなるのを抑制することができる。
【0024】
請求項9記載の発明では、請求項8記載の発明において、前記反アンバランスマス側における前記アンバランスマス側に繋がる部分の軸線方向両縁は、前記ジャーナルの外周面における前記潤滑通路の開口周りに必要なランド幅が確保されるように形成されているものとした。
【0025】
上記構成によれば、潤滑通路の開口周りに必要なランド幅が確保されるため、潤滑通路の開口部から吐出された潤滑油の上記両縁からのリーク量が過度に多くなるのを的確に抑制することができる。
【0026】
請求項10記載の発明では、請求項7又は9記載の発明において、前記ランド幅は、前記潤滑通路の開口から吐出された潤滑油の前記ジャーナルと前記軸受との間からのリーク量を許容値未満に抑制可能な値に設定されるものとした。
【0027】
上記構成によれば、潤滑通路の開口位置をジャーナルの外周面のアンバランスマス側における反アンバランスマス側寄りに設定したとき、潤滑通路の開口部から吐出された潤滑油の上記リーク量が許容値よりも多くなり、ジャーナルと軸受との間の潤滑に支障を来すのを抑制することができる。
【0028】
請求項11記載の発明では、請求項1〜10のいずれかに記載の発明において、前記ジャーナルの外周面に前記潤滑通路の開口から回転方向後側に延びる案内溝を形成した。
【0029】
上記構成によれば、潤滑通路の開口部から吐出された潤滑油が案内溝を通って回転方向後側に導かれるため、その潤滑油をジャーナルと軸受との間における最も圧力が高くなる部分に近づけ易くなる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を内燃機関のバランスシャフトに具体化した一実施形態を図1〜図6に従って説明する。
【0031】
図1に示されるバランスシャフト1は、軸受2a,2bによって内燃機関の支持部3a,3bに対し回転可能に支持されるジャーナル6a,6bと、同シャフト1の重心を軸線L上からずらすための重りであるアンバランスマス5とを備えている。このバランスシャフト1は、内燃機関の出力軸からの回転伝達によって、軸受2a,2bの内周面に沿って滑りながら回転する。そして、機関運転中にピストンが往復移動するとともにバランスシャフト1が回転すると、その回転に基づき上記ピストンの慣性力が打ち消され、当該慣性力が原因となる振動の発生は抑制される。
【0032】
バランスシャフト1の一方のジャーナル6bにおいて、アンバランスマス側7と反対側に位置する反アンバランスマス側8の軸線方向長さは、アンバランスマス側7の軸線方向長さよりも短くなっている。これにより、反アンバランスマス側8が軽くなるため、アンバランスマス5をそれほど重くしなくてもバランスシャフト1の重心を上記軸線L上から所望の量だけずらすことができるようになる。従って、反アンバランスマス側8の軸線方向長さを上記のように短くしない場合に比べると、アンバランスマス5を重くしなくてもよい分、バランスシャフト1全体を軽量化することができるようになる。
【0033】
また、バランスシャフト1の内部には、支持部3aの油通路9から潤滑油の供給を受ける潤滑通路10が軸線方向に延びるように設けられている。この潤滑通路10において、ジャーナル6aの内部に位置する部分は、同ジャーナル6aの外周面に向かって延び、同外周面に形成された溝11と連通している。そして、その部分には上記支持部3aの油通路9から当該溝11を介して潤滑油が供給される。また、支持部3aの油通路9から溝11に供給される潤滑油の一部は、ジャーナル6aの外周面と軸受2aの内周面との間に入り込む。これにより、ジャーナル6aの外周面と軸受2aの内周面との間に油膜が形成され、その間の潤滑が行われるようになる。
【0034】
潤滑通路10において、ジャーナル6bの内部に位置する部分は、ジャーナル6bの外周面に向かって延び、同外周面上の一箇所だけに開口している。そして、潤滑通路10内を流れる潤滑油は、同通路10の開口部10aからジャーナル6bの外周面と軸受2bの内周面との間に吐出される。これにより、ジャーナル6bの外周面と軸受2bの内周面との間に油膜が形成され、その間の潤滑が行われるようになる。そして、ジャーナル6bの外周面と軸受2bの内周面との間の潤滑油は、ジャーナル6bの軸線方向両縁から外部に流れ落ちる。
【0035】
次に、潤滑通路10における上記開口部10aの位置、及びその周辺の構造について、図2〜図6を参照して説明する。
図2〜図4は、図1のバランスシャフト1(ジャーナル6b)を矢印A−A方向から見た断面図であって、内燃機関の出力軸からの回転伝達によって同シャフト1が矢印B方向に回転する状態を示している。
【0036】
バランスシャフト1の重心Gは上述したように軸線L上からずれているため、バランスシャフト1は軸受2bの円心M周りに同軸受2bの内周面に沿って回転することとなる。このようにバランスシャフト1が回転するときのジャーナル6bと軸受2bとの間の圧力は、周方向位置に応じて異なるとともに、バランスシャフト1の回転位置に応じて変動する。そして、図2に示されるように、バランスシャフト1の重心Gが最も下方に位置したとき、ジャーナル6bの外周面の下端よりも回転方向後側の位置P1で上記圧力が最も高くなる。
【0037】
なお、バランスシャフト1の重心Gが最も下端に位置した状態にあるときのジャーナル6bと軸受2bとの間の圧力は、図5に示されるように位置P1から進角する(回転方向前側に進む)ほど小さくなるとともに、位置P1から遅角する(回転方向後側に進む)ほど小さくなる。同図から分かるように、潤滑通路10の開口部10aから吐出される潤滑油の吐出圧力は、バランスシャフト1の重心Gが最も下端に位置した状態にあるときのジャーナル6bと軸受2bとの間の圧力の最大値よりも小さくなる。
【0038】
従って、仮にジャーナル6bの外周面における位置P1に対応する位置に潤滑通路10の開口部10aを形成したとすると、その位置P1に開口部10aから潤滑油を供給することは困難になる。これは、図5に示されるように、位置P1でのジャーナル6bと軸受2bとの間の圧力は、開口部10aから吐出される潤滑油の吐出圧力よりも高くなり、開口部10aから潤滑油を吐出させようとしても同潤滑油が潤滑通路10内に押し戻されてしまうためである。このため、上記のように開口部10aを形成した場合、バランスシャフト1の重心Gが最も下端に位置した状態となるとき、位置P1においてジャーナル6bと軸受2bとの間に必要とされる油膜を形成することが困難になる。
【0039】
また、ジャーナル6bの外周面において、位置P1に対応する位置よりも回転方向後側に開口部10aを形成した場合には以下のようになる。この場合、重心Gが最も下方に位置した状態にあって(図2)、開口部10a付近のジャーナル6bと軸受2bとの間の圧力が、当該開口部10aから吐出される潤滑油の吐出圧力よりも低くなる程度まで、同開口部10aを上記位置P1に対応する位置よりも回転方向後側に位置させる。これにより、バランスシャフト1が図2に示される状態にあるとき、開口部10aからジャーナル6bと軸受2bとの間に潤滑油を供給することができるようになる。ただし、この開口部10aが位置P1に達するのは、重心Gが最も下方に位置した状態を経過した後になる。このため、開口部10aが位置P1に達したときに開口部10aから潤滑油が吐出したとしても、位置P1でジャーナル6bと軸受2bとの間の圧力が最も高くなるとき、それらの間に必要とされる油膜を上記潤滑油によって形成することは困難である。
【0040】
本実施形態では、こうした実情を考慮し、ジャーナル6bの外周面における位置P1に対応する位置よりも回転方向前側に開口部10aを形成する。更に、同開口部10aの位置については、重心Gが最も下方に位置した状態にあって(図2)、開口部10a付近のジャーナル6bと軸受2bとの間の圧力が、当該開口部10aから吐出される潤滑油の吐出圧力よりも低下量ΔP分だけ低くなる程度まで、位置P1に対応する位置よりも回転方向前側とされる。なお、上記のような開口部10aの形成位置は、図2及び図5に示される位置P2に対応する位置となる。
【0041】
このように開口部10aを形成することで、重心Gが最も下方に位置したとき(図2)、開口部10aからジャーナル6bと軸受2bとの間に潤滑油を供給することができる。また、図4に示されるように開口部10aが位置P1に達するのは、重心Gが最も下方に位置した状態(図2)を経過する前になり、このときに開口部10aから潤滑油が吐出されるようになる。このため、重心Gが最も下方に位置して位置P1でジャーナル6bと軸受2bとの間の圧力が最も高くなるとき、それらの間に必要とされる油膜を上記潤滑油によって形成することが可能となる。従って、重心Gが最も下方に位置した状態となるとき、上記位置P1でジャーナル6bと軸受2bとの間の潤滑が最も厳しくはなるものの、この部分に必要な油膜を形成して適切な潤滑を行うことができるようになる。
【0042】
図6は、バランスシャフト1のジャーナル6b、及びジャーナル6bの外周面上に位置する開口部10aを示す拡大斜視図である。
同図に示されるように、ジャーナル6bの外周面におけるアンバランスマス側7から反アンバランスマス側8に繋がる部分については、その軸線方向両縁間の長さが反アンバランスマス側8に向かうほど徐々に短くなるように形成されている。そして、潤滑通路10の開口部10a(正確には開口部10aの中心)は、ジャーナル6bの外周面において、バランスシャフト1の軸線方向中央であってアンバランスマス側7の反アンバランスマス側8寄りに位置している。
【0043】
ジャーナル6bの外周面において、開口部10a周りにはある程度のランド幅を確保する必要がある。これはランド幅が短すぎると、開口部10aから吐出された潤滑油のうちジャーナル6bと軸受2bとの間から流れ落ちる分(リーク量)が多くなり、ジャーナル6bと軸受2bとの間の潤滑が適切に行えなくなるためである。
【0044】
ジャーナル6bの外周面において、アンバランスマス側7から反アンバランスマス側8に繋がる部分における軸線方向両縁部は、開口部10a周りに上記リーク量を許容値未満に抑えるのに必要なランド幅Hを確保できるように形成されている。従って、上記リーク量が許容値以上に多くなり、ジャーナル6bと軸受2bとの間の潤滑に支障を来すのを抑制することができる。
【0045】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)回転するバランスシャフト1の重心Gが最も下方に位置する状態にあるとき、上記位置P1でジャーナル6bと軸受2bとの間の圧力が最も高くなる。そして、潤滑通路10の開口部10aは、上記のような状態ではジャーナル6bの外周面における位置P1よりも回転方向前側に位置している。このように開口部10aを形成することにより、図4に示されるようにバランスシャフト1の回転中に開口部10aが位置P1に達するのは、図2に示されるように同シャフト1の重心Gが最も下方に位置する前となり、このときに開口部10aから潤滑油が吐出されるようになる。このため、重心Gが最も下方に位置して上記位置P1にてジャーナル6bと軸受2bとの間の圧力が最も高くなるとき、それらの間に必要とされる油膜を上記潤滑油によって形成することが可能となる。従って、上記位置P1にてジャーナル6bと軸受2bとの間の潤滑が最も厳しくはなるものの、この部分に必要な油膜を形成して適切な潤滑を行うことができるようになる。
【0046】
(2)上記開口部10aは、バランスシャフト1の重心Gが最も下方に位置し、上記位置P1でジャーナル6bと軸受2bとの間の圧力が最も高くなる状況のもとにあって、当該圧力が開口部10aから吐出される潤滑油の吐出圧力よりも小さくなる程度まで回転方向前側の位置に形成される。この位置は図2において位置P2に対応する位置となる。このため、上記のような状況のもとにあっても、開口部10aからジャーナル6bと軸受2bとの間に潤滑油を供給することができ、位置P1でジャーナル6bと軸受2bとの間の圧力が最も高くなるとしても、その部分に必要とされる油膜を形成し易くなる。
【0047】
(3)上記開口部10aは、ジャーナル6bの外周面における軸線方向中央に位置している。仮に開口部10aがジャーナル6bの外周面における軸線方向縁部に寄っている場合、開口部10aからジャーナル6bと軸受2bとの間に供給された潤滑油が上記縁部から流れ落ち易くなる。しかし、上記のように開口部10aを形成することにより、開口部10aからジャーナル6bと軸受2bとの間に供給された潤滑油が、その間における軸線方向両縁部のうちの一方から流れ落ち易くなるのを抑制することができる。
【0048】
(4)上記開口部10aは、ジャーナル6bの外周面における一箇所のみに形成されている。仮に開口部10aが上記外周面に複数形成されているとすると、各開口部10aにおける潤滑油の吐出圧力が低下し易くなる。そのため、開口部10aをより回転方向前側に形成しないと、重心Gが最も下方に位置して上記位置P1でジャーナル6bと軸受2bとの間の圧力が最も高くなるとき、開口部10aから吐出される潤滑油の吐出圧力がジャーナル6bと軸受2bとの間の圧力よりも大きくならない。しかし、上記のように開口部10aを形成することで、重心Gが最も下方に位置して上記位置P1でジャーナル6bと軸受2bとの間の圧力が最も高くなるとき、位置P1の近くに開口部10aを位置させることができ、その位置P1でのジャーナル6bと軸受2bとの間に油膜を形成し易くなる。
【0049】
(5)上記開口部10aは、反アンバランスマス側8に比べて軸線方向長さの長いアンバランスマス側7における反アンバランスマス側8寄りに形成されている。しかし、ジャーナル6bの外周面において、アンバランスマス側7から反アンバランスマス側8に繋がる部分については、その両縁部間の軸線方向長さが反アンバランスマス側8に向かうほど徐々に短くなるように形成されている。更に上記両縁部は、開口部10a周りに必要とされるランド幅Hを確保できるように形成されている。従って、上記開口部10aに対し、アンバランスマス側7から反アンバランスマス側8に繋がる部分の軸線方向両縁が過度に近くなり、開口部10aから吐出された潤滑油の上記両縁からのリーク量が過度に多くなるのを抑制することができる。
【0050】
(6)上記ランド幅Hは、潤滑通路10の開口部10aから吐出された潤滑油のジャーナル6bと軸受2bとの間からのリーク量が許容値未満に抑制可能な値とされる。従って、開口部10aから吐出された潤滑油の上記リーク量が許容値よりも多くなり、ジャーナル6bと軸受2bとの間の潤滑に支障を来すのを抑制することができる。
【0051】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・開口部10aの形成位置をジャーナル6bの外周面の周方向に適宜変更してもよい。この場合、潤滑通路10の開口部10aから吐出される潤滑油の吐出圧力に応じて、開口部10aの形成位置を変更することが好ましい。
【0052】
即ち、上記吐出圧力が小となる場合には、図7に示されるように開口部10aを上記実施形態の場合よりも回転方向前側に変更する。このように変更するのは、図7に示されるようにバランスシャフト1の重心Gが最も下方に位置し、位置P1にてジャーナル6bと軸受2bとの間の圧力が最大となるとき、当該圧力が開口部10aから吐出される潤滑油の吐出圧力よりも小さくなる位置が位置P2よりも回転方向前側の位置P3となるためである。この場合、バランスシャフト1が図9に示される状態にあるときの開口部10aを上記位置P3に対応して位置するように形成することが好ましい。そして、開口部10aが反アンバランスマス側8におけるアンバランスマス側7寄りに位置する場合にも、開口部10a周りに必要とされるランド幅Hが確保されるよう、ジャーナル6bの外周面におけるアンバランスマス側7と反アンバランスマス側8とを繋ぐ部分の軸線方向両縁が図8に示されるように形成される。その結果、上記両縁間の軸線方向長さがアンバランスマス側7から離れるほど短くなる。
【0053】
一方、上記吐出圧力が大となる場合には、図9に示されるように開口部10aを上記実施形態の場合よりも回転方向後側に変更することができる。これは、図9に示されるようにバランスシャフト1の重心Gが最も下方に位置し、位置P1にてジャーナル6bと軸受2bとの間の圧力が最大となるとき、当該圧力が開口部10aから吐出される潤滑油の吐出圧力よりも小さくなる位置が位置P2よりも回転方向後側の位置P4となるためである。この場合、バランスシャフト1が図9に示される状態にあるときの開口部10aを上記位置P4に対応して位置するように形成することが好ましい。また、この場合、ジャーナル6bの外周面におけるアンバランスマス側7と反アンバランスマス側8とを繋ぐ部分の軸線方向両縁を、上記両縁間の距離が反アンバランスマス側8に向かうほど図10に示されるように急に短くなるように形成してもよい。
【0054】
・図11及び図12に示されるように、開口部10aから回転方向後側に延びる案内溝12を形成してもよい。この場合、開口部10aから吐出された潤滑油が案内溝12を通って回転方向後側に導かれるため、その潤滑油をジャーナル6bと軸受2bとの間における最も圧力が高くなる部分(位置P1)に近づけ易くなる。
【0055】
・開口部10aをジャーナル6bの外周面における軸線方向中央に形成したが、必ずしも軸線方向中央である必要はなく軸線方向両縁側のうちのいずれかにずらしてもよい。
【0056】
・開口部10aをジャーナル6bの外周面上の一箇所に設けたが、複数箇所に設けてもよい。
・ジャーナル6bの反アンバランスマス側8の軸線方向長さを必ずしもアンバランスマス側7の軸線方向長さよりも短くする必要はない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態におけるバランスシャフト、及びその支持構造を示す断面図。
【図2】図1のバランスシャフトを矢印A−A方向から見た断面図。
【図3】上記バランスシャフトを回転させた状態を示す断面図。
【図4】上記バランスシャフトを回転させた状態を示す断面図。
【図5】ジャーナルと軸受との間の圧力における回転方向位置に応じた変化を示すグラフ。
【図6】上記ジャーナル、及び潤滑通路の開口部を示す拡大斜視図。
【図7】開口部の形成位置の変更例を示すバランスシャフトの断面図。
【図8】開口部の形成位置の変更例を示すバランスシャフトの側面図。
【図9】開口部の形成位置の変更例を示すバランスシャフトの断面図。
【図10】開口部の形成位置の変更例を示すバランスシャフトの側面図。
【図11】他の実施形態として開口部に繋がる案内溝を形成した例を示すバランスシャフトの断面図。
【図12】他の実施形態として開口部に繋がる案内溝を形成した例を示すバランスシャフトの側面図。
【符号の説明】
1…バランスシャフト、2a,2b…軸受、3a,3b…支持部、5…アンバランスマス、6a,6b…ジャーナル、7…アンバランスマス側、8…反アンバランスマス側、9…油通路、10…潤滑通路、10a…開口部、11…溝、12…案内溝。

Claims (11)

  1. 軸受により回転可能に支持されるジャーナルを備え、前記軸受と前記ジャーナルとの間に潤滑油を供給する潤滑通路が形成されているバランスシャフトにおいて、
    前記潤滑通路は、前記ジャーナルの外周面であって、同ジャーナルの回転中に前記軸受との間に生じる圧力が最も高くなる部分よりも回転方向前側で開口している
    ことを特徴とするバランスシャフト。
  2. 前記潤滑通路の開口位置は、前記ジャーナルと前記軸受との間において圧力が最大となる部分が生じる状況のもとにあって、前記圧力が当該潤滑通路からの潤滑油の吐出圧力よりも小さくなる位置に設定されている
    請求項1記載のバランスシャフト。
  3. 前記潤滑通路の開口位置は、前記ジャーナルの外周面における軸線方向中央に設定されている
    請求項1又は2記載のバランスシャフト。
  4. 前記潤滑通路は、前記ジャーナルの外周面で一箇所だけに開口している
    請求項1〜3のいずれかに記載のバランスシャフト。
  5. 前記ジャーナルのアンバランスマス側と反対側に位置する反アンバランスマス側の軸線方向長さは、前記アンバランスマス側の軸線方向長さよりも短くされ、
    前記潤滑通路の開口位置は、前記ジャーナルの外周面における前記アンバランスマス側に設定されている
    請求項1〜4のいずれかに記載のバランスシャフト。
  6. 前記ジャーナルの外周面における前記アンバランスマス側から前記反アンバランスマス側へと繋がる部分については、その両縁間の軸線方向長さが前記反アンバランス側に向かうほど徐々に短くなるよう形成されている
    請求項5記載のバランスシャフト。
  7. 前記アンバランスマス側から前記反アンバランスマス側へと繋がる部分の軸線方向両縁は、前記潤滑通路の開口位置を前記アンバランスマス側における前記反アンバランスマス側よりに設定したとき、前記ジャーナルの外周面における前記潤滑通路の開口周りに必要なランド幅が確保されるように形成されている
    請求項6記載のバランスシャフト。
  8. 前記ジャーナルのアンバランスマス側と反対側に位置する反アンバランスマス側の軸線方向長さは、前記アンバランスマス側の軸線方向長さよりも短くされ、
    前記潤滑通路の開口位置は、前記ジャーナルの外周面の前記反アンバランスマス側における前記アンバランスマス側よりに設定され、
    前記反アンバランスマス側における前記アンバランスマス側に繋がる部分については、その両縁間の軸線方向長さが前記アンバランス側から離れるほど徐々に短くなるよう形成されている
    請求項1〜4のいずれかに記載のバランスシャフト。
  9. 前記反アンバランスマス側における前記アンバランスマス側に繋がる部分の軸線方向両縁は、前記ジャーナルの外周面における前記潤滑通路の開口周りに必要なランド幅が確保されるように形成されている
    請求項8記載のバランスシャフト。
  10. 前記ランド幅は、前記潤滑通路の開口から吐出された潤滑油の前記ジャーナルと前記軸受との間からのリーク量を許容値未満に抑制可能な値に設定される
    請求項7又は9記載のバランスシャフト。
  11. 前記ジャーナルの外周面に前記潤滑通路の開口から回転方向後側に延びる案内溝を形成した
    請求項1〜10のいずれかに記載のバランスシャフト。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008144603A (ja) * 2006-12-06 2008-06-26 Toyota Motor Corp バランスシャフトの軸受潤滑構造
JP2010071295A (ja) * 2008-08-21 2010-04-02 Kubota Corp エンジンの回転バランサ
JP2017082638A (ja) * 2015-10-27 2017-05-18 スズキ株式会社 内燃機関の潤滑構造及び自動二輪車

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