JP2004091616A - 粒状油脂及びその製造方法 - Google Patents

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Nobuhiro Okajima
岡島 伸浩
Masayuki Murayama
村山 誠之
Takeshi Kawashima
河島 武志
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Abstract

【課題】流動性、ハンドリング性に優れた粒状油脂の簡便かつ安価な製造方法を提供し、また、油脂の酸化安定性を効率的かつ簡便に向上させる。
【解決手段】溶解した油脂又は油脂組成物を、前記油脂又は油脂組成物より低温でかつ密度の小さいアルコール溶液中に滴下することで、流動性、ハンドリング性に優れた粒状油脂を簡便かつ安価に製造でき、また、アルコール溶液としてビタミンCなどの抗酸化剤を含有する溶液を用いれば、粒状油脂の表面を抗酸化剤で被覆して油脂の酸化安定性を効率的かつ簡便に向上させることができ、更に、デンプン、小麦粉、脱脂粉乳などの蛋白質、糖類の粉体を懸濁したアルコール溶液を用いて粒状油脂の表面を蛋白質、糖類で被覆すれば、粒状油脂の結着を防止し、より優れた流動性を有する粒状油脂を製造することが可能となる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粒状を呈する油脂又は油脂組成物及びその製造方法に関するものであり、本発明の粒状の油脂又は油脂組成物は、例えば、食用、健康食品用、医薬品用、化粧品用等として利用される。
【0002】
【従来の技術】
粉末油脂は、サラダ油のような液状油脂やショートニング等の固体油脂に比べて、計量や小分け等の作業性が便利であると共に、小麦粉や粉末調味料など粉体への混合や水中への分散が容易であることから、パン菓子の製造を始め、ケーキミックス類、即席スープ、その他インスタント食品に利用されている。
【0003】
粉末油脂の製造には、粉末相互の付着防止のため蛋白質や糖類などの油脂以外の被覆剤が必要であり、例えば、ゼラチン・カゼイン・デンプン等の皮膜形成成分を添加した水中油型乳化油脂組成物を噴霧乾燥して製造され、前記水中油型乳化油脂組成物全体中、油脂含量は70〜80重量%である。また、特開平7−324197号公報には、油脂類及びデキストリンを含む組成物と糖類を含有する含水エチルアルコール溶液とを混合し、常温又は加熱条件下で混合攪拌し、造粒機で押し出し成形する粉粒状の油脂組成物の製造方法が開示されている。更に、特開2001−258471号公報には、バターを加熱して流動化させ、シュガーエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル等のHLBが8以上の乳化剤を水に溶解した乳化剤溶液に滴下して乳化剤で被覆した粒状バターを製造する方法が開示されている。また、近年では、油脂含量の高い粉末油脂の需要が高まっており、油脂を低温のチャンバー内で噴霧固化するスプレークーラーによって油分100%に近い粉末油脂が製造されている。
【0004】
しかし、上記のような従来の粉末油脂や粒状油脂の製造には、スプレードライヤーや破砕機、あるいは押出し成型機などの特殊な装置を必要とし、また糖類や蛋白質などの被覆剤を多量に使用するためコスト的な課題もある。また、乳化剤溶液に滴下する方法の場合には、乳化剤溶液中から回収した粒状油脂(バター)の脱水、乾燥に手間がかかるという問題がある。
【0005】
上記のような粉末油脂以外で流動性を有する固体油脂として、凍結したバター等の油脂製品を粉砕した粒状油脂もあり、振りかけて使用するトッピング用などに利用されている。またノズルから押出し、成形された可塑性油脂をカッターで細断して製造されるチップ状マーガリンもあり、パイ生地等に使用されている。これらの固体油脂は油脂を凍結や急冷捏和で固化させてから細断しただけであり、形状もまちまちで流動性は乏しい。
【0006】
また上記粉末油脂や粒状油脂と形態は異なるが、流動ショートニングは液体油脂中に油脂結晶が懸濁した状態であり、油脂を攪拌冷却しながら結晶を析出させることにより製造される。流動ショートニングは液状油脂と同じように扱えるので、バルクハンドリングでパン・菓子を大量生産するのに適している。しかし、流動ショートニングを使用するためには専用の貯蔵タンクと配管ラインが必要であり、小規模でのパン・菓子の生産には余り適していない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、流動性に優れ、かつハンドリング性に優れた粒状油脂を、スプレードライヤー等の装置や多量の被覆剤を使用することなく、簡便で、かつ安価に製造することである。また、本発明の他の目的は、油脂の酸化を効率的かつ簡便に防止することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するため、溶液中で油滴を固化させて粒状化する方法を鋭意検討した結果、従来にはない球形の粒状油脂の製造方法を完成するに至った。
即ち、本発明の第1は、溶解した油脂又は油脂組成物を、前記油脂又は油脂組成物より低温でかつ密度の低いアルコール溶液中に滴下することを特徴とする、粒状の油脂又は油脂組成物を製造する方法である。
【0009】
溶液として水を使用する場合、油滴が水中を浮上するシステムとなり、油滴の噴出孔は冷水中に没するため、油脂が固化して噴出孔が閉塞するなどの問題が生じる。しかし、本発明方法では、油脂よりも密度の低いアルコール溶液を使用するので、低温のアルコール溶液に油脂をシャワーの様に降り注ぐだけで油滴がアルコール溶液中を沈降しながら固化して、粒状油脂が簡単に得られる。また、アルコール溶液の表面張力よりも油脂の表面張力の方が大きいため、アルコール溶液中で油脂は球形になり易く、油滴を緩やかに沈降させれば真球に近い粒状油脂が得られる。
【0010】
更に、本発明の優れた点は、アルコール溶液を入れた温度調整可能な槽と、油脂又は油脂組成物を滴下するノズルによる単純な装置で、従来の粉末油脂よりも流動性に優れた球形の粒状油脂を簡便かつ安価に製造することが可能となった点である。しかもアルコール溶液中で粒状に成形するため、アルコールの消毒作用により衛生面でも優れた粒状油脂の製造方法である。
【0011】
しかも、本発明方法によれば、グリセリド型の食用油脂だけでなく、脂肪酸や脂肪酸エステルなどアルコールに溶解しやすい脂質成分の場合でも、アルコールを冷却して脂質の溶解度を低下させることで、粒状化が可能である。
【0012】
また、ビタミンCを含有するアルコール溶液を用いることで、ビタミンCで被覆された粒状の油脂又は油脂組成物を製造することができ、デンプン、小麦粉、脱脂粉乳などの蛋白質、糖類の粉体を懸濁したアルコール溶液を用いることで、これら蛋白質、糖類で被覆された粒状の油脂又は油脂組成物を製造することができる。
【0013】
また、本発明の第2は、上記のような方法によって製造された粒状の油脂又は油脂組成物である。本発明方法により製造される粒状の油脂又は油脂組成物は、球形であり、その粒径は0.5〜5mmの範囲内とすることができる。また、粒状の油脂又は油脂組成物の表面がビタミンCで被覆されているものは、酸化劣化防止効果があり、特に酸化劣化しやすい魚油の場合に好適である。更に、粒状の油脂又は油脂組成物の表面が蛋白質、糖類で被覆されているものは、粒状の油脂又は油脂組成物の結着が防止され、流動性が高くハンドリング性も良好である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられる油脂はその種類に特に限定はなく、例えばヤシ油、綿実油、大豆油等の植物油脂、ラード、牛脂等の動物油脂、及びマグロ油等の魚油といった食用油脂、あるいはそれらの誘導体である脂肪酸、脂肪酸エステル、モノグリセリドやジグリセリドの部分グリセリドなどが挙げられる。これらの油脂は、単独で用いても又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
また、前記のような各種油脂に、栄養成分や薬効成分などの有用成分等を目的に応じて添加した油脂組成物を用いてもよい。例えば乳化剤、脂溶性ビタミン、色素、香料など脂溶性成分を油脂に添加したり、乳化剤等を用いて水分、タンパク質、糖類、ミネラルなどの油脂に不溶性の成分を油脂に分散させた油脂組成物とし、その後で油脂よりも温度及び密度の低いアルコール等に滴下する事で粒状油脂組成物にすることも可能である。本発明で用いられる油脂組成物としては、例えば、バター、マーガリン、ショートニング等が挙げられる。
【0016】
一方、本発明で用いられるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類が例示できる。特に食用を目的とする場合にはエタノールの使用が望ましい。
【0017】
前記油脂又は油脂組成物の密度は、15℃の測定値で0.85g/cm以上、また、表面張力は、15℃の測定値で30dyn/cm以上であることが好ましい。例えば、文献(日本油化学協会編、「改訂三版 油脂化学便覧」、丸善、平成2年2月28日)によれば、ヤシ油の場合は密度が0.914g/cmで表面張力は33.4dyn/cm、綿実油の場合は密度が0.914g/cmで表面張力は35.4dyn/cm、大豆油の場合は密度が0.926g/cm、ラードの密度は0.918g/cm、更に牛脂の場合は密度が0.909g/cmである。
【0018】
一方、用いるべきアルコール溶液の密度は、使用する油脂及び油脂組成物の密度より低ければよいが、15℃の測定値で0.85g/cm未満が望ましい。なぜなら、油脂がアルコール中を沈降しながら固化することが本発明の基本であり、アルコールの15℃における密度が0.85g/cm以上のものを用いると、前記油脂及び油脂組成物が沈降しない場合があるからである。例えば、メタノールは密度が0.796g/cmで表面張力が22.5dyn/cm、エタノールは密度が0.789g/cmで表面張力が22.4dyn/cm、プロパノールは密度が0.804g/cmで表面張力が23.7dyn/cm、更にブタノールは密度が0.809g/cmで表面張力は25.4dyn/cmである。上記密度及び表面張力の値は15℃での測定値であるが、温度によって変化する。なお、上記アルコール溶液の密度及び表面張力は文献値(「改訂三版
油脂化学便覧」)である。
【0019】
上記アルコールに水を混合して、アルコール溶液の密度や油脂の溶解度を調整してもよい。例えば、約70%(v/v)エタノール溶液は5℃で密度が約0.84g/cmとなり、油滴がゆっくりと沈降するので粒状油脂及び粒状油脂組成物の製造に適したアルコール溶液である。つまりは、アルコール濃度を変えて密度を調整すれば油滴の沈降速度を調整することが可能であり、油脂が低速度で沈降すれば比較的少量のアルコールで粒状油脂及び粒状油脂組成物を得ることができる。他にもアルコールを使用する利点は、冷却温度の幅が広く、エタノールは融点が−114.5℃であり、理論的には−100℃以下にも油脂を急速に冷却することが可能である。
【0020】
またアルコールに溶解あるいは分散する成分を予めアルコール溶液に混合しておけば、油脂が沈降固化する時にそれらの成分を油脂表面に取り込ませることも可能である。アルコール溶液に溶解させる成分について特に限定は無く、例えば水溶性の色素、香料、調味料、ミネラル、塩類、水溶性ビタミンなど目的に応じて選択すればよい。ビタミンCは油脂との相溶性が特に悪いが(今田勝美 New Food Industry,35,p23,1993)、この方法を用いれば簡単に必要量を油脂表面に取り込ませることができる。従って、例えば魚油のように酸化劣化しやすい油脂を、ビタミンCを混合したアルコール溶液中に滴下して粒状化することで、得られる粒状油脂の表面がビタミンCにより被覆され酸化劣化を防止することができる。更に、前記のようにビタミンCを混合したアルコール溶液中に滴下して粒状化することに加えて、ビタミンEを油脂中に添加しておくことで、より効果的に油脂の酸化劣化を防止することができる。更に粒状油脂が高温などに曝されて結着しやすい環境下での使用も想定されるが、デンプン、小麦粉、脱脂粉乳などの蛋白質、糖類の粉体を懸濁したアルコール溶液に油脂を滴下すれば、表面が粉体で被覆された粒状油脂が得られるので、粒状油脂の結着を防止でき、より優れた流動性を有する粒状油脂を製造することが可能である。
【0021】
上記以外の製造条件としては、滴下する油脂又は油脂組成物の融解温度は、融点より高ければ良く、40〜80℃で溶解した油脂を滴下すればよい。また、アルコール溶液の温度は油脂又は油脂組成物の融点よりも低く設定する必要があり、油脂の融点よりも10℃以上低い温度に設定すれば粒状化において特に問題はない。またアルコール溶液の使用量やアルコールを入れた槽の深さについて特に限定はないが、油滴が沈降している間に固化することが重要で、アルコールを入れた槽の深さが浅い場合は、油滴が固化しない間にアルコール槽の底に達すると、油脂がペレット状に変形したり油滴同士が結着して球形の粒状油脂が得られにくい場合がある。
【0022】
以上のように、本発明における粒状の油脂又は油脂組成物の製造方法は、まず用いる油脂又は油脂組成物を融解し、所定温度に冷却したアルコール溶液に滴下し、沈降する間に固化させた後、固化した粒状の油脂又は油脂組成物をアルコール中から回収し、冷風や減圧などによりアルコールを乾燥すればよい。使用したアルコール溶液は何度でも利用でき、蒸発したり油脂に付着して減少した分だけアルコールを補充すればよい。また油脂の滴下方法は特に限定はなく、複数のノズルから油滴を落下させれば効率的に粒状油脂が生産される。
【0023】
上記のような方法で製造された粒状の油脂又は油脂組成物は、基本的に球形となる。ここでいう球形とは、見た目で丸く鞠のようであればよい。望ましくは、粒状油脂が水平に対して10度以上の傾斜した平滑な面の上を自由に転がることができる球状である。製造の際、ノズル口径を調整すれば直径が0.5mm〜5mmの範囲で目的に適した粒径の粒状の油脂又は油脂組成物を製造することが出来る。直径が0.5mm未満のサイズはこの方法では製造困難であり、また5mm以上のサイズも、大きな油滴を作ることが困難である。一定した量で油滴を滴下すれば、ほぼ均一な粒径サイズからなる粒状油脂を製造できるが、アルコール溶液からの回収時又は回収乾燥後の粒状油脂を篩にかけ、更に均一サイズの粒子を選別することも可能である。
【0024】
【実施例】
以下に代表的な実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。アルコール溶液及び油脂又は油脂組成物の密度の測定は、100mlのメスフラスコにてアルコール溶液又は油脂、油脂組成物を秤量し、その重量を測定して、1mlの重量を求めた。表面張力の測定は毛細管上昇法により行った。なお、油脂及び油脂組成物の密度及び表面張力は60℃での測定値であり、アルコール溶液の密度及び表面張力は5℃での測定値である。また、「部」は「重量部」を示す。
【0025】
(実施例1)
70%(v/v)エタノール水溶液(密度:0.86g/cm、表面張力:25.0dyn/cm)1リットルをビーカーに取り(深さ200mm)、エタノール溶液の温度を5℃に維持しながら、60℃に溶解した精製パーム油(密度:0.89g/cm、表面張力:32.5dyn/cm、融点34.3℃)をエタノール溶液の水面より20mmの高さから直径1mmのノズルを用いて1分間当たり10gの油脂を一定量づつ滴下したところ、パーム油の油滴はエタノール中を沈降しながら球状に固化した。この時、攪拌は特に行わなかった。
100gのパーム油を滴下して、固化を進行させるため30分間そのまま静置した。ビーカーの底に沈殿した粒状のパーム油を16メッシュ(口径1.0mm)の篩で回収し、網かごに粒状パーム油を拡げて5℃の冷蔵庫内で約1時間冷風を当ててエタノールを乾燥させた。更に、5℃で24時間放置して油脂結晶を安定化させた。
得られた粒状パーム油は、粒径約2mmの球形で、肉眼的にほぼ均一なサイズであった。また、この粒状パーム油の状態は、15℃以下では粒同士が結着せず、サラサラした手触りであり、傾斜角度が10度の斜面に置くと自然に転がる非常に転がりやすい粒子であった。25℃では表面がやや溶融した様子になり、粒同士が結着したり容器に付着しやすくなるが、容器を振動すればバラバラに分散するので、計量スプーンなどでの測り取りや小分け作業には不都合はなかった。
【0026】
(実施例2)
精製パーム油全体中に乳化剤としてレシチン0.2重量%を添加したことと、アルコール溶液1リットルに小麦粉10gを添加して懸濁させたこと以外は、実施例1と同じ条件で粒状パーム油を作成した。得られた粒状パーム油の表面は光沢が無く、実体顕微鏡で観察すると小麦粉の被覆が確認された。この小麦粉で被覆された粒状パーム油は、30℃以下ならば粒子同士が結着することはなくサラサラの状態を維持しており、傾斜角度が10度の斜面では自然に転がる流動性を示した。従って、小麦粉をアルコール溶液に懸濁することによって、実施例1よりも高温で優れた流動性を有する粒状油脂が製造可能である。
【0027】
次に、実施例2の粒状パーム油を用いてロールパンを作成した。強力粉90部、薄力粉10部、砂糖12部、卵12部、イースト3.5部、脱脂粉乳2部、食塩1.8部、イーストフード0.1部を混合し、上記の粒状パーム油を15部加えて28℃になるように混合し、50分予備発酵させ、フロアタイム30分で発酵を行い、分割してベンチタイム30分ののち成形し、38℃で50分間ホイロを行い、200℃で10分間焼成を行った。
粒状パーム油はスムーズに生地と混ざり合い、作業性は良好であった。また焼成後のロールパンの内相も均一でムラも無く、粒状パーム油が生地に均一に練り込まれている。従って、この粒状パーム油は、パン菓子用の練り込み油脂として作業性に優れた油脂である。
【0028】
(比較例1)
比較例として、実施例1と同じ精製パーム油で製造したショートニングによる製パンの結果を記す。精製パーム油全体中にレシチン0.2重量%を添加し、定法である急冷捏和によりショートニングを作成した。ショートニングは5℃で24時間安定化したのち、実施例2でのロールパンの作成と同じ条件により製パンを行った。ショートニングをそのままブロック状の固まりの状態で生地に添加した。
ショートニングが生地に完全に混ざるまでに約3分間であり、実施例2での粒状油脂に比べて混合に時間を要した。
【0029】
(実施例3)
60℃で溶解したバター(密度:0.89g/cm、表面張力:32.0dyn/cm、融点28.5℃)100gを水分が分離しないよう攪拌しながら乳化状態を保ち、実施例1と同様に5℃のエタノール溶液1リットルに直径1mmのノズルを用いて滴下した。滴下後、そのまま30分間エタノール中で放置したのち粒状バターを16メッシュ(口径1.0mm)の篩で回収し、網かごに拡げて5℃の冷蔵庫内で約1時間冷風を当てて乾燥させた。更に5℃で24時間放置して、粒径約2mmの粒状バターを得た。
得られた粒状バターは外観が非常に美しく、マーガリンの語源である「真珠の輝き」に相応しい粒状のバターであった。また、この粒状バターは5℃以下では傾斜角10度以上の斜面を転がる流動性を有していた。
従来においては、バターは冷蔵以下で保存されるのが通常であり、冷蔵庫から取り出した直後のバターは硬いためトーストなどに塗り延ばしにくく、いわゆる低温では可塑性に乏しい問題があった。しかし、上記粒状バターは、冷蔵庫から取り出した直後でも、トーストなどのパンに塗るのが非常に容易であり、従来のバターが低温では硬くて使用しづらかった欠点を粒状バターによって解決することができた。
【0030】
(比較例2)
60℃に加熱溶解した精製パーム油(実施例1と同じもの;融点34.3℃)100部に、乳化剤として、コハク酸モノグリセリド0.5部とレシチン0.5部を添加して油相部を調製した。これとは別に水150部に脱脂粉乳25部を60℃で混合溶解して水相部を調製した。この水相部に前記油相部を加えて60℃で10分間予備乳化して、ホモゲナイザーにより水中油型乳化液を作成した。この乳化液にデキストリン45部、カゼインナトリウム10部、砂糖40部を加えて均質に溶解し、次にスプレードライヤー(乾燥温度150℃、出口温度60℃)により粉末油脂を作成した。
このようにして従来の方法で製造した粉末油脂はパウダー状であり、計量や粉体への混合には便利である。しかし粉末油脂は粒子が細かいために、傾斜角が30度以下の緩い傾斜では手で掻き出さなければ流動性を示さない。それに対して本発明の粒状油脂は10度以上の傾斜角であれば自然に転がる流動性を示す。従って、本発明の粒状油脂は従来の粉末油脂よりも流動性に優れている。
【0031】
(実施例4)
精製マグロ油(DHA22%、密度:0.91g/cm、表面張力:33.4dyn/cm、融点10℃)60部と硬化パーム油(融点40℃)40部とを混合し、レシチン0.3部及びトコフェロール(ビタミンE)0.3部を添加してDHA含有油脂を調整した。
ビタミンCを1.0重量%含有するエタノール水溶液(70%v/v)を1リットルのビーカーに取り、エタノール溶液を5℃に維持しながら、60℃に溶解した上記のDHA含有油脂を直径1mmのノズルを用いて1分間当たり10gの流量で一定量づつ滴下した。
100gのDHA含有油脂を滴下して30分間そのまま静置して、ビーカーの底に沈殿した粒状油脂を16メッシュ(口径1.0mm)の篩で回収し、網かごに粒状油脂を拡げて5℃の冷蔵庫内で約1時間冷風を当ててエタノールを乾燥させた。
【0032】
(実施例5)
エタノール溶液にビタミンCを添加しない以外は実施例4と同様の方法によりDHAを含有する粒状油脂を作成した。
【0033】
実施例4と実施例5で得られた、DHAを含有する粒状油脂の酸化安定性について、20℃の冷暗所にて窒素シールをせずに3ヶ月間保存した場合の過酸化物価(POV)の変化を調べた結果を表1に示す。なお、POVの測定方法は基準油脂分析試験法による。
【0034】
【表1】
Figure 2004091616
【0035】
表1から明らかなように、ビタミンCを添加していないエタノール中で作成した実施例5のDHAを含有する粒状油脂はPOVの上昇が大きいのに対して、ビタミンCを溶解したエタノール中で作成した実施例4のDHAを含有する粒状油脂は、20℃で3ヶ月後もPOVの上昇が認められず、酸化安定性が非常に優れていた。
従って、ビタミンCを添加したエタノール中で粒状油脂を製造することによって、粒状油脂の表面がビタミンCで被覆されると考えられ、油脂の酸化安定性を飛躍的に向上させることができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の粉末油脂や粒状油脂よりも流動性に優れた球形の粒状油脂又は粒状油脂組成物を、従来よりも簡便な装置で容易かつ安価に製造することが可能となった。
また、ビタミンC等の抗酸化剤を含有するアルコール溶液を用いることで、油脂との相溶性の低いビタミンC等の抗酸化剤を簡便に油脂表面に被覆でき、効果的に油脂の酸化安定性を向上させることができ、特に魚油などの酸化安定性に劣る油脂の場合に効果的である。
更に、デンプン、小麦粉、脱脂粉乳などの蛋白質、糖類の粉体を懸濁したアルコール溶液を用い、粒状油脂の表面を蛋白質、糖類で被覆すれば、粒状油脂の結着を防止でき、より優れた流動性を有する粒状油脂を製造することが可能である。

Claims (10)

  1. 溶解した油脂又は油脂組成物を、前記油脂又は油脂組成物より低温でかつ密度の低いアルコール溶液中に滴下することを特徴とする、粒状の油脂又は油脂組成物を製造する方法。
  2. ビタミンCを含有するアルコール溶液を用いる請求項1記載の粒状の油脂又は油脂組成物を製造する方法。
  3. 油脂又は油脂組成物が魚油である請求項2記載の粒状の油脂又は油脂組成物を製造する方法。
  4. デンプン、小麦粉、脱脂粉乳などの蛋白質、糖類の粉体を懸濁したアルコール溶液を用いる請求項1〜3のいずれかに記載の粒状の油脂又は油脂組成物を製造する方法。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載の方法によって製造された粒状の油脂又は油脂組成物。
  6. 球形である請求項5記載の粒状の油脂又は油脂組成物。
  7. 粒径が0.5〜5mmの範囲内である請求項6記載の粒状の油脂又は油脂組成物。
  8. 表面がビタミンCで被覆されている請求項5〜7のいずれかに記載の粒状の油脂又は油脂組成物。
  9. 魚油である請求項8記載の粒状の油脂又は油脂組成物。
  10. 表面が蛋白質、糖類で被覆されている請求項5〜9のいずれかに記載の粒状の油脂又は油脂組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011032181A (ja) * 2009-07-30 2011-02-17 Key Tranding Co Ltd 組み合わせ化粧料およびその製法
JP5601432B1 (ja) * 2012-12-06 2014-10-08 不二製油株式会社 粉末油脂及びその製造法と、それを用いたチョコレート様食品
EP3213640B1 (en) 2014-10-30 2021-07-21 Fuji Oil Holdings Inc. Long-chain polyunsaturated fatty-acid-containing fat and food containing same
WO2021230053A1 (ja) * 2020-05-11 2021-11-18 株式会社J-オイルミルズ 焼成菓子の製造方法

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