JP2004091514A - 低温抽出魚油 - Google Patents

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CHOSHI OCEAN MEDICAL SUPPLIES
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Abstract

【課題】加熱工程を伴わない天然に含まれる魚油そのものの成分の効率的な回収方法により、健康上有用な成分を失うことなくそのまま含有した低温抽出魚油を提供する。
【解決手段】魚肉すり身排液から遠心分離法により抽出された構成の低温抽出魚油とした。
【選択図】      なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は公衆の健康に有用な新規な手法により抽出された、従来にない組成のイワシ油に関する。
【0002】
【従来の技術】
イワシ油、マグロ眼窩油、カツオ油といった魚油は、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのn−3系の多価不飽和脂肪酸を多量に含むため、コレステロール低下作用や中性脂肪低下作用を有することが知られている。これらの生理作用により、魚油は抗動脈硬化作用や高血圧低下作用を有するとされており、その健康食品などへの積極的利用が図られている。
【0003】
従来の魚油の製造は、一般に煮取り法と呼ばれる方法を採用している。この煮取り法は次の工程により行なう。即ち、原料とする魚の頭や骨、その他の部位を煮沸する。この煮沸により、原料中の油脂成分は湯面上方へ浮き上がる。この油脂成分の液体層(この中にはカス等の不純物も混入している)を採取し、これを水と水酸化ナトリウム(NaOH)等の化学薬品で繰り返して洗浄し、これを精製して魚油(煮取り油)を得るものである。
【0004】
しかし、煮取り法は製造工程が煩雑で手間が掛かると共に、特に煮取り油は通常煮取り油を得る段階で通常90℃程度、さらに精製する段階で230℃以上の高温で処理される。このため、魚油が酸化し易く、品質が低下する問題を有している。
【0005】
一般に用いられる魚油は、煮取り法と呼ばれる工程を経て、イワシ、カツオ、マグロなどの魚体各部から工業的に製造されている。
【0006】
一方、フィッシュミールの生産工程でも魚油が得られるが、この場合、蒸煮したイワシを圧搾し、生じた油分を低速遠心分離機と高速遠心分離機に供することで採油を行っている。
【0007】
ところで、魚体を高温で蒸し煮する煮取り法で得られた魚油はそのまま食用油脂として用いることはできず、さらに、精製(脱色・脱臭など)を行う必要がある。しかし、魚油に多く含まれるDHAやEPAは分子中に多数の二重結合を有するため極めて不安定であり、煮取り工程などのように高温で処理する方法ではDHAやEPAは容易に酸化され、得られた魚油の品質が低下する恐れがある。
【0008】
また、煮取りで得られた粗油の精製も高温で行われるため、こうした工程では反応性の高いDHAやEPAは異性化や重合など様々な反応を起こし、その本来の栄養価が損なわれることも懸念される。さらに、魚体組織に存在する“生の”魚油中にはEPAやDHA以外にも各種の機能性の脂溶性成分や微量の水溶性成分が含まれていることも予想されるが、従来の方法で得られた魚油ではこうした成分は失われる可能性がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、加熱工程を伴わない天然に含まれる魚油そのものの成分の効率的な回収方法により、健康上有用な成分を失うことなくそのまま含有した低温抽出魚油を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち上記目的は、以下の本発明の構成により達成される。
(1)魚肉すり身排液から遠心分離法により抽出された低温抽出魚油。
(2)摂氏20度以下の温度で抽出された上記(1)の低温抽出魚油。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の低温抽出魚油は、魚肉すり身排液から、好ましくは20℃以下の低温で遠心分離法により抽出されたものである。
【0012】
このように、上記煮取り法に対して、魚(例えばイワシ等)のすり身排液から遠心分離により得られた魚油(低温抽出魚油)では、すべての製造工程が低温で行われるため、魚油中に含まれる活性成分の消失が最小限に抑えられている可能性が高い。また、通常の工程(煮取り工程)で得られた魚油のような精製工程中での非栄養成分の生成も起こらない。したがって、低温抽出魚油は、従来の煮取り法により回収された魚油などと比べて機能性の高い可能性がある。
【0013】
本発明の魚油は、上記のように魚肉すり身を得る際に生じる排液、すなわち魚肉すり身となる固形分と、水溶液分とを分離し、さらにその排液を水質液と、油脂とを遠心分離法により分離し、油脂分のみを抽出するものである。
【0014】
このように、すり身の廃液から遠心分離工程で魚油を抽出することにより、蒸したり、煮沸するといった高温加熱工程が不要となり、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下の低温下での魚油の抽出が可能となる。
【0015】
このため、魚油に本来含まれる健康上有用な有効成分を、そのまま抽出することができ、公衆の健康向上に大きく寄与することができる。
【0016】
このような魚油の低温抽出方法、装置としては、例えば先に本発明者によって出願された特願2002−130992号に記載されているように以下のような態様がある。
【0017】
第1の態様は、原料魚をミンチ肉に加工処理する工程(工程1)と、前記ミンチ肉を水で晒す工程(工程2)と、工程2で晒したスラリー中に混在している魚骨類を分離除去する工程(工程3)と、工程3で魚骨類を除去したスラリーをデカンターで固形分の層と水溶液の層とに分離処理する工程(工程4)とを含み、この分離した水溶液を遠心分離機へ送給して油脂の層(相)と水溶液の層(相)とに分離する工程(工程5)とを含み、前記油脂の層(相)を回収して魚油を得ることを特徴とする。また、工程4で分離した固形分の層を捕集して魚すり身を得ることもできる。なお、本発明において、前記原料魚としては特に限定されることなく、例えば、イワシ、サンマ、アジ、サバその他の任意の魚体を使用できるが、中でもイワシが好ましい。
【0018】
第1の態様によれば、従来例のような原料魚の前処理作業を省略して機械的に処理して魚すり身を製造できるので、魚油の捕集や魚すり身の生産性が向上する。なお、本発明においては、原料魚として、第3の態様のように、冷凍魚を使用することができる。
【0019】
第2の態様は、原料魚をミンチ肉に加工処理する工程(工程1)と、前記ミンチ肉を晒し用処理槽へ捕集し、これに水を供給して前記槽内で晒す工程(工程2)と、工程2で晒したスラリーを骨類分離機へ送給し、前記スラリーに混在している魚骨類を分離除去する工程(工程3)と、工程3で魚骨類を除去したスラリーをデカンターへ供給してスラリーを固形分の層と水溶液の層とに分離する工程(工程4)と、この分離した水溶液を遠心分離機へ送給して油脂の層(相)と水溶液の層(相)とに分離する工程(工程5)とを含み、工程5で分離した油脂の層を捕集して魚油を得ること特徴とする。この第2の態様によれば第1の態様と同様の作用効果を奏する。
【0020】
第4の態様は、原料魚をミンチ肉に加工処理するチョッパーと、前記チョッパーから送出されるミンチ肉を捕集する晒し用処理槽と、前記処理槽内へ水を供給し、前記槽内のミンチ肉を晒すための水供給部と、前記処理槽と管路で連結して配設され、前記晒し用処理槽から供給されるスラリーを、スラリー中に混在している魚骨類を分離して除去する骨類除去機と、前記分離機で魚骨類を分離除去したスラリーを捕集するスラリー受槽と、前記スラリー受槽と管路で連結して配設され、前記受槽から送給されるスラリーを固形分の層と液体の層とに分離するデカンターとを備えた装置であることを特徴とする。なお、この明細書において、「魚骨類」とは魚の骨、皮、スジ等を含む用語として用いられている。
【0021】
第4の態様によれば、原料魚はチョッパーでミンチ肉に加工処理され、晒し用処理槽へ捕集され、槽内へ供給される水で晒される。晒されたミンチ肉のスラリーは、骨類分離機へ送給され、分離機により、スラリー中に混在している魚骨類(魚の骨、皮、スジ等)を分離して除去される。次いで魚骨類を分離除去されたスラリーは、スラリー受槽に捕集され、デカンターに送給されてデカンターにおいて固形分の層と水溶液の層とに分離される。そして、前記デカンターで分離した固形分を捕集して魚すり身の製品が得られる。したがって、第4の態様によれば簡単かつ効率よく魚油や魚すり身を製造することがでさる。
【0022】
第5の態様は、第1の態様の魚すり身の製造方法における製造工程において、前記デカンターで固形分の層と水溶液の層とに分離し、この分離した水溶液を第1の遠心分離機へ送給して前記水溶液を軽液成分の層(相)と重液成分の層(相)とに分離処理する工程と、前記軽液成分を、前記分離機より高速回転する第2の遠心分離機へ送給し、第2の遠心分離機で前記軽液成分を油脂の層(相)と水溶液の層(相)とに分離する工程とを含み、前記油脂の層(相)を回収して魚油を得ることを特徴とする。
【0023】
第5の態様によれば、低温条件下で2段階の遠心分離工程で処理して魚油を製造するので、精製度の高い魚油が得られる。第1〜第4の態様同様に、この魚油(低温油)は酸化安定性を向上し、DHA及びEPAの含有最が多く、品質的に優れた魚油を得ることができる。
【0024】
第6の態様は第5の態様の魚油の製造方法において、前記第2の遠心分離機で油脂の層(相)と分離した水質液の層(相)を循環管路を通じ、前記第1の遠心分離機から第2の遠心分離機へ送給される送給路中へ環流させる工程を含むことを特徴とする。
【0025】
第6の態様によれば、第2の遠心分離機から排出される排液(水質液)を循環させて再利用(水質液中には油脂成分が残留して混在している)できるので、第5の態様の作用効果に加え、前記軽液中に含有されている有効成分(魚の油脂)の回収率を高めることができる。
【0026】
第7の態様は、第6の態様の魚油の製造方法において、前記送給路中へ環流される前記水質液を環流途中で加温する工程を含むことを特徴とする。第7の態様によれば、第6の態様と同様に軽液中に含有されている魚の油脂の回収率を高めることができる。但し、この態様によると加温する工程を含む魚油(低温加熱油)となるので、この低温加熱油は態様5及び6の低温油に比べDHAあるいはEPAの含有量は幾分少なくなる。
【0027】
第8の態様は、第4の態様の魚すり身製造装置に加え、デカンターの水溶液用の送出口と管路で連結して配設され、デカンターから排出された水溶液を軽液成分の層(相)と重液成分の層(相)とに分離する第1の遠心分離機と、前記分離機で分離した前記軽液成分を捕集する軽液受槽と、この槽と管路で連結して配設され、前記受槽から送給される軽液成分を油脂の層(相)と水質液の層(相)とに分離する第2の遠心分離機とを備え、前記第2の遠心分離機は、第1の遠心分離機より高速回転する遠心分離機で構成されていることを特徴とする。
【0028】
第8の態様によればデカンターの水溶液用の送出口から排出される水溶液は、第1の遠心分離機へ送給され、前記分離機で前記水溶液(油成分含有水溶液)を比重差により軽液成分の層(相)と重液成分の層(相)とに分離され、この軽液成分は軽液受層へ捕集される。次いで受槽内の軽液成分は、第2の遠心分離機(高速遠心分離機)へ送給され、軽液成分を油脂の層(相)と水質液の層(相)とに分離される。そして、油脂の層(相)を回収して魚油の製品が得られる。したがって、第8の態様によれば、第5の態様で説明したように、酸化安定性を向上し、DHA及びEPAの含有量が多く、品質的に優れた魚油を製造することができる。
【0029】
第9の態様は、第8の態様の魚油の製造装置において、前記第2の遠心分離機の水質液用の排出口側と管路で連結して設け、第2の遠心分離機から排出される水質液を回収する循環用受槽と、この受槽と前記軽液受槽とを連結した循環管路と、前記循環用受槽内の水質液を前記軽液受槽へ循環させるポンプとを備えたことを特徴とする。
【0030】
第9の態様によれば、第2の遠心分離機の水質液用の排出□から排出される排液(水質液)は、循環用受槽へ回収され、この水質液(この液体中には油脂成分が残留して混在している)は軽液受槽へ還流され第2の遠心分離機へ戻される。そして、第2の遠心分離機で再度分離処理され、油脂の層(相)を回収して魚油の製品が得られる。したがって、第9の態様によれば、第8の態様の作用効果に加え、軽液中に含有されている有効成分(魚の油脂)の回収率を高めることができる。
【0031】
第10の態様は、第9の態様の魚油の製造装置において、前記管路中に加熱器を介装して設けたことを特徴とする。第10の態様によれば、第9の態様と同様の作用効果を奏する。但し、この態様によると加温する工程を含む魚油(低温加熱油)となるので、第8の態様及び第9の態様の低温油に比べてDHAあるいはEPAの含有量は若干少なくなる。
【0032】
第11の態様は、魚すり身の製造工程中において、魚のミンチ肉を水で晒し、このミンチ肉のスラリーを固形分の層と水溶液の層とに分離し、この分離した水溶液を第1の遠心分離機へ供給して、水溶液を軽液成分の層(相)と重液成分の層(相)とに分離処理する工程と、前記軽液成分を、前記分離機より高速回転する第2の遠心分離機へ送給し、第2の遠心分離機で前記軽液成分を油脂の層(相)と水質液の層(相)とに分離処理する工程とを含み、前記油脂の層(相)を回収して魚油を得ることを特徴とする。この第11の態様によれば、低温条件下で処理して魚油を製造するので、第5の態様と同様の作用効果を奏する。
【0033】
以下、図面を参照して本発明の魚油を得るための製造装置、製造方法についてより詳細に説明する。図1は本発明の魚油の製造装置の一実施の形態の全体構成の概要を示す説明図、図2は図1の製造装置の略左半部を拡大して示す説明図、図3は図1の製造装置の略右半部を拡大して示す説明図である。
【0034】
これら図1〜図3において、この実施の形態の製造装置は魚すり身製造部1と、この製造部1と連接して配置した魚油製造部2とからなっている。
【0035】
魚すり身製造部1は、原料供給部11と、ブローズカッター12と、チョッパー13と、晒し用処理槽14と、水供給部15と、骨類分離機16と、スラリー受槽17と、デカンター18とを備えている。
【0036】
前記原料供給部11は、コンベア等で構成され、前記カッター12の入口12a側に配置して設けられ、原料魚Fをカッター12へ所定の速度で移送して供給するように構成してある
【0037】
前記カッター12は供給部11から供給される原料魚Fを適当な大きさのブロック状にカットないし破砕するもので、このカッター12は任意の構成のものを採用する。前記カッター12へ供給された原料魚Fはブロック状にカットないし破砕されカッター12の出口12bからチョッパー13へ順次落下送給される。
【0038】
前記チョッパー13はホッパー13aを備え、ホッパー13aをカッター12の出口12bの下部に位置させて配設されている。チョッパー13はモータM1で駆動され、カッター12から供給される原料魚FのブロックBをミンチ肉に加工処理する。このチョッパー13も、任意の構成のものを採用できる。チョッパー13で加工処理されたミンチ肉は、チョッパー13の出口13bから順次排出され、晒し用処理槽14へ捕集される。
【0039】
前記処理槽14は、チョッパー13から供給されるミンチ肉を、水供給部15から導入される水道水等の水で晒し処理するもので、この実施の形態の処理槽14はモータM2で回転する撹拌羽根19を備えている。
【0040】
前記水供給部15から前記処理槽14へ導入する水の分量は任意に設定できるが、例えば処理槽14へ供給される原料魚に対し、約4倍程度の割合が例示できる。これにより、処理槽14へ供給されたミンチ肉は水で晒されてスラリーとなる。なお、この実施の形態のように撹拌羽根19を設けると、ミンチ肉の分解が良好になるが、羽根19は省略することもできる。
【0041】
前記骨類除去機16は処理槽14の出□14aと管路20で連結して配設されモータM3で駆動するように構成されている。この実施の形態の前記除去機16は処理槽14から供給されるミンチ肉のスラリー中に混在している魚骨類(魚の骨、皮、スジ、エラ、ウロコ等)を分離して除去する構成を備えている。また、前記除去機16はスラリー用の入口16aと、送出口16bと、残渣用の出口16cとを備えている。
【0042】
前記管路20中には、スラリー送給用のポンプP1が介装して設けられ、処理槽14内のスラリーは、出口14aから管路20を通って骨類除去機16へ送給され、この除去機16でスラリー中に混在している魚骨類を分離して除去される。そして、魚骨類を分離除去したスラリーは送出口16bから管路21を通り、スラリー受槽17へ順次捕集されるようになっている。また、前記除去機16で分離された魚骨類は残渣用の出口16cから管路22を通り、残渣コンテナー23へ回収され、廃棄24するように構成してある。
【0043】
前記デカンター18は、スラリー受槽17の出口17aと管路25で連結して配設され、モータM4で駆動するように構成されている。このデカンター18はミンチ肉のスラリーを固形分の層と水溶液の層とに分離するもので、固形分用の送出口18bと水溶液用の送出口18aとを備えている。
【0044】
前記管路25中には送給ポンプP2が介装して設けられ、前記スラリー受槽17内のスラリーは受槽17の出口17aから管路25を通り、デカンター18へ送給されるように構成してある。これによりデカンター18へ供給されたスラリーは固形分(ミンチ肉)の層と水溶液(油成分含有水溶液)の層とに分離され、固形分の層は送出口18bから排出され、捕集部26へ順次捕集される。この捕集部26へ捕集された固形分の層は魚すり身の製品であり、これを包装して出荷27する。一方、デカンター18で分離された水溶液は水溶液用の送出口18aから排出され、後述するように魚油製造部2へ送給され、魚油製造の原料として使用される。
【0045】
なお、この実施の形態では、前記管路25中に凍結防止用の補助加熱器28が介装して設けてあり、前記受槽17から送給されるスラリーは加熱器28を通ってデカンター18へ導入されるようになっている。前記加熱器28の熱源としては、例えば蒸気や温風等が利用できる。また、この加熱器28は冬場等においてスラリーがシャーベット状等になっている場合に使用するもので、加熱温度は約10℃程度に設定してある。なお、この加熱器28は所望に応じて設けるもので省略することもできる。
【0046】
原料魚Fは特に限定するものではなく、例えばイワシ、サンマ、アジ、サバ、カツオ、マグロその他の任意の魚を所望に応じて選択し採用することができる。また、原料魚は冷凍魚を使用することが多いが、冷凍していない魚を使用することもできる。冷凍していない魚を採用する場合には晒し用処理槽14内へ氷を入れて晒し用の水を冷却することが好ましい。この実施の形態では、イワシ等の任意数の魚F1を箱詰めにした状態で冷凍した冷凍魚のブロックを原料魚Fとして採用している。
【0047】
実施の形態の魚すり身製造部1は上記のように構成したもので、この構成によれば機械的に処理して魚すり身を製造できるので、魚すり身の生産性を向上することができる。
【0048】
次に、魚油製造部2について説明する。この実施の形態の魚油製造部2は、第1の遠心分離機31と、軽液受槽32と、第2の遠心分離機33と、油脂受槽34と、循環用受槽35とを備えている。
【0049】
前記第1の遠心分離機31は、水溶液用の入口31aを備え、この入口31aを前記デカンター18の水溶液用の送出口18aと管路36で連結して配設されている。この実施の形態の遠心分離機31は三相分離型の遠心分離機を採用し、軽液用の排出口31bと、中質液用の排出口31cと、重液用の排出口31dとを備えている。前記分離機31の回転速度は例えば毎分約6500〜約7500回転程度に設定できる。
【0050】
前記管路36中には、水溶液送給用のポンプP3が介装して設けられ、デカンター18の水溶液用の送出□18aから排出される水溶液を前記分離機31へ順次送給するように構成してある。前記分離機31へ導入された水溶液(油成分含有水溶液)は分離機31で軽液成分の層(相)と重液成分の層(相)に分離(この実施の形態の重液成分は中質液と重質液で構成)され、軽液成分は排出口31bから管路37を通って軽液受槽32へ回収するように構成してある。また、重液成分、即ち、中質液および重質液は排出口31cおよび31dから排出され、捕集部38,39へそれぞれ捕集される。この重液成分は再度利用する等、用途を有しているが、説明が長くなるため、ここでは省略する。
【0051】
前記第2の遠心分離機33は第1の遠心分離機31より高速回転する遠心分離機で構成されている。この分離機33は軽液用の導入口33aと、油脂用の排出口33bと、水質液用の排出口33cとを備え、前記導入口33aを管路40で軽液受槽32の送出口32aと連結して配設されている。前記分離機33の回転速度は、例えば毎分約12000〜14000回転程度に設定でさる。
【0052】
前記管路40中には受槽32内の軽液成分を第2の遠心分離機33へ送給するポンプP4が介装して設けられ、受槽32から排出される軽液成分を前記分離機33へ順次送給するように構成してある。前記分離機33へ導入された軽液成分は、分離機33で油脂の層(相)と水質液の層(相)に分離され、油脂の層(相)は油脂用の排出口33bから管路41を通って油脂受槽34へ回収される。また、水質液の層(相)は水質液用の排出□33cから管路42を通り、循環用受槽35へ回収される。
【0053】
前記のように油脂受槽34へ回収された油脂は魚油の製品であり、この油脂は管路43を通ってポンプP5で製品受部44へ送られ、この油脂(低温油)をそのまま魚油製品とし、或いはカプセル状等に形成して出荷される。
【0054】
この実施の形態により得られる魚油製品は上記したように低温条件下で処理して製造するので、この魚油(低温油)は酸化安定性を向上し、DHA及びEPAの含有量が多く、品質的に優れたものとなる。この事実は実験の結果判明している。
【0055】
また、この実施の形態の魚油製造部2は、前記循環用受槽35の出口35aと軽液受槽32とを連結した循環管路45を備え、この管路45中に介装して設けた循環用のポンプP6により循環用受槽35内の水溶液を軽液受槽32へ環流させるように構成してある。
【0056】
循環用受槽35内の水質液中には油脂成分が残留して混在している。そして、この水質液は第2の遠心分離機33へ供給され、分離機33で前記と同様に油脂の層(相)と水質液の層(相)に分離され、油脂の層(相)は前記と同様に油脂受槽34へ回収される。また、水質液の層(相)は管路42を通り、循環用受槽35へ回収され、再び軽液受槽32へ循環する。
【0057】
前記により油脂受槽34へ回収された油脂は魚油の製品であり、前記と同様に製品受部44へ送られ、この油脂(二次低温油)はそのまま魚油製品とし、或いはカプセル状等に形成して出荷される。この魚油(二次低温油)は上述した魚油(低温油)と同様に酸化安定性が良く、DHA及びEPAの含有量も多い。但しDHA或いはEPAの含有量は上述した魚油(低温油)に比べ若干少なくなる。
【0058】
さらにまた、この実施の形態の魚油製品部2は、前記循環管路45中に介装して設けた加熱器46を備え、循環用受槽35から送給される水質液は加熱器46を通って加温され、軽液受槽32へ循環させるように構成してある。前記加熱器46の熱源としては、例えば蒸気や温風等が利用できる。前記加熱器46は水質液の分離性を良好にするために設けたもので、加熱温度は約30℃〜約40℃程度に設定できる。これにより循環用受槽35内の水質液は送給途中で加温され、軽液受槽32へ還流し、第2の遠心分離機33で前記と同様に分離処理され、油脂の相(層)は油脂受槽34へ回収される。
【0059】
前記により油脂受槽34へ回収された油脂は魚油の製品であり、前記と同様に製品受部44へ送られ、この油脂(低温加熱油)はそのまま魚油製品とし、或いはカプセル状等に形成して出荷される。この魚油(低温加熱油)は酸化安定性は良く、DHAおよびEPAの含有量も多い。但し、DHAあるいはEPAの含有量は上述した低温油と比べ若干少なくなる。図中47はベース台、48は排水処理部を示す。
【0060】
なお、この実施の形態の製造装置によれば、一連の製造工程で魚すり身と魚油を製造することができる。また、実施の形態の製造装置(魚すり身製造部1、及び魚油製造部2)は一例として開示したもので、この製造装置は図示の構成に限定されることなく任意に変更可能なこと勿論である。
【0061】
【実施例】
低温抽出イワシ油と市販のイワシ油との機能性、特に、肥満防止(脂肪蓄積抑制)と脂質代謝改善作用について検討した。
【0062】
(1)使用したイワシ油
▲1▼ 低温抽出イワシ油:マイワシすり身排液から低温下、遠心分離法により得られた魚油。こうして得られた油脂は黄色をしており透明感も強かった。また、味も通常の市販魚油と変わらず苦み等もなかった。したがって、これらの油脂はこれ以上の精製(脱色・脱臭)をせずに食用油脂として利用できると考えられた。▲2▼ 市販のイワシ油:蒸煮したカタクチイワシを圧搾し、生じた油分を遠心分離することで得られた魚油。いわゆる一般のイワシ油で、こうした方法で得られるイワシ油は主としてフィッシュミールの生産工程で製造される。蒸煮の工程で酸化・重合及び他の成分の反応等が起こるため、原油は黒く着色した粘性の高い液体である。したがって、製品化には脱ガム、脱酸、脱臭、脱色などの工程が必要であり、本検討で用いたイワシ油も原油からさらに、脱ガム、脱酸、脱臭、脱色、水蒸気蒸留などを用いて精製したものを用いた。
【0063】
(2)使用した試料油の性状
▲1▼ 脂肪酸組成:各イワシ油を酸触媒下でメチル化後、ケイ酸カラムクロマトグラフィーにて精製後ガスクロマトグラフィーで分析した。各イワシ油の主要構成脂肪酸は以下の表1に示す通りである。
【0064】
表−1 各イワシ油の主要脂肪酸組成
【0065】
【表1】
Figure 2004091514
【0066】
▲2▼ 過酸化物:いずれのイワシ油も過酸化物価は3.0meq/kg以下であった。
【0067】
3)動物実験の条件:
▲1▼ 動物:ラット(wister rats;4週齢)
▲2▼ 飼育条件:餌と水は自由摂取、餌はAIN−93Gを基本食として与えた。餌中に脂質は7重量%含まれており、この内、コントロールは7%すべてが大豆油、また、低温抽出イワシ油投与群及び市販のイワシ油投与群では、3%のイワシ油+4%大豆油とした。
▲3▼ 分析項目:各臓器重量、白色脂肪組織重量、血漿総コレステロール、血漿中性脂肪などを検討した。白色脂肪組織は副精巣周辺部の脂肪組織重量を分析することにより求めた。
【0068】
(4)結果(各群7匹;数値は平均値±標準誤差として表した。)
▲1▼ 体重、臓器重量等の結果を下記の表2に示す。
【0069】
表−2  各群の体重及び臓器重量(解剖時)
【0070】
【表2】
Figure 2004091514
【0071】
上記の結果より、イワシ油投与による成長等での悪影響は見られないことが確かめられた。
【0072】
▲2▼ 脂肪重量、血漿コレステロールを下記の表3に示す。
表−3  各群の脂肪重量及び血漿コレステロール
【0073】
【表3】
Figure 2004091514
【0074】
a,bコントロールと比べて有意差あり(P<0.05;P<0.005)。従って、例えば血漿総コレステロールでは、危険率0.05以下(a)で煮取り油(市販のイワシ油)は、コントロールに対して有意差があるが、低温抽出油は、危険率0.005以下(b)で有意差があり、より有意な効果が高いことがわかる。
【0075】
上記の結果により、いずれのイワシ油も血漿総コレステロールをコントロールと比較して有意に低下させたが、その活性は低温抽出イワシ油の方が高かった。コレステロールの低下作用は、イワシ油に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)に起因すると考えられたが、両イワシ油のEPA,DHA含量に大きな違いは見られないことから(表−1)、低温抽出油のコレステロール低下作用は他の要因によるものと考えられた。
【0076】
また、白色脂肪組織重量も、イワシ油投与群で低下傾向にあり、そのレベルは低温抽出油でより顕著であった。
【0077】
以上の結果より、低温抽出油は、市販のイワシ油よりもより強い体脂肪抑制及びコレステロール低下作用を示すことがわかった。
【0078】
▲3▼ 血漿トリグリセリド、血漿リン脂質、β−リポタンパク質の結果を下記表4に示す。
【0079】
表−4  各群の血漿トリグリセリド、血漿リン脂質、β−リポタンパク質
【0080】
【表4】
Figure 2004091514
【0081】
a,bコントロールと比べて有意差あり(P<0.05;P<0.005)。従って、例えば血漿総リン脂質では、危険率0.05以下(a)で煮取り油は、コントロールに対して有意差があるが、低温抽出油は、危険率0.005以下(b)で有意差があり、より有意な効果が高いことがわかる。
【0082】
上記の結果より、いずれのイワシ油も血漿トリグリセリドをコントロールと比較して有意に低下させたが、その活性は低温抽出イワシ油の方が高かった。トリグリセリドの低下作用も、イワシ油に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)に起因すると考えられたが、やはりこの場合も両イワシ油のEPA,DHA含量に大きな違いは見られないことから(表−1)、低温抽出油のトリグリセリド低下作用は他の要因によるものと考えられた。
【0083】
また、他の分析結果も、低温抽出油の方が市販のイワシ油よりもより強い脂質代謝改善作用を示すことがわかった。
【0084】
5)結果の要約
▲1▼ いずれのイワシ油も脂肪重量、総コレステロール、中性脂肪がコントロールよりも減少した。これは、イワシ油中に含まれるEPAやDHAに起因するものと考えられた。(これについては公知の事実)
【0085】
▲2▼  しかし、DHAとEPAの含有量に大きな違いはなかったにもかかわらず、低温抽出イワシ油の方が、明かに脂質代謝改善作用と肥満防止作用が強かった。
【0086】
▲3▼  低温抽出油の機能性が高かった理由として以下の点が考えられる。
a)低温抽出することにより、脂肪酸以外の脂溶性有用成分(ステロール、カロテノイド、脂溶性ビタミンなど)がイワシ油中に残存した。一方、市販のイワシ油では精製工程中にこれらの成分は分解などにより失われた。
b)低温抽出油中に残存する低分子の水溶性成分(ペプチド、核酸など)の効果。イワシすり身排液から遠心法による回収された低温抽出油はそれ以上の精製を行う必要がないため、市販のイワシのように加熱等による精製をする必要がない。したがって、低温抽出イワシ油では、これらの成分の損失を防ぐことができたため、油中に水溶性の活性成分が残存した。
c)煮取り油では高温による処理のためトランス酸が生成することが考えられるが、低温抽出油ではそういったことはない。トランス酸の脂質代謝に対する影響については不明であるが、もしトランス酸が脂質代謝に悪影響を及ぼすとすれば、煮取り油中のDHAやEPAの栄養効果がトランス酸の存在により相殺されている可能性もある。
【0087】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、加熱工程を伴わない天然に含まれる魚油そのものの成分の効率的な回収方法により、健康上有用な成分を失うことなくそのまま含有した低温抽出魚油を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の魚油を製造する製造装置の一実施の形態の全体構成の概要を示す説明図。
【図2】図1の製造装置の略左半部を拡大して示す説明図。
【図3】図1の製造装置の略右半部を拡大して示す説明図。
【符号の説明】
13  チョッパー
16  骨類除去器
18  デカンター
26  捕集部
31  第1の遠心分離機
32  第2の遠心分離機

Claims (2)

  1. 魚肉すり身排液から遠心分離法により抽出された低温抽出魚油。
  2. 摂氏20度以下の温度で抽出された請求項1記載の低温抽出魚油。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110055127A (zh) * 2019-05-23 2019-07-26 湖南文理学院 一种淡水鱼鱼油提取装置及方法
CN116286163A (zh) * 2023-04-10 2023-06-23 中国科学院海洋研究所 一种鲑鳟鱼内脏团鱼油冷冻提取的方法

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