JP2004091449A - アガリクスを含む肝機能正常化剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】肝機能正常化剤の提供。
【解決手段】アガリクス及び/またはその酵素処理済製剤を含むことを特徴とする肝機能正常化剤であり、肝機能パラメーターとして、GOT値、GPT値及び、TG値を指標とする。
【選択図】 なし
【解決手段】アガリクス及び/またはその酵素処理済製剤を含むことを特徴とする肝機能正常化剤であり、肝機能パラメーターとして、GOT値、GPT値及び、TG値を指標とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アガリクスの酵素処理済製剤(ABPC;Agaricus Brazei Practical Compound)を含む肝機能正常化剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
アガリクス茸(Agaricus blazei murill)は、担子菌類ハラタケ科に属し、β−D−グルカンを最も多く含む多糖体キノコであり、カワリハラタケとも呼ばれている。β−D−グルカンから成る多糖体は免疫細胞や抗癌作用と関連のある物質として注目されているため、アガリクスは健康維持物質として期待されている。
【0003】
これまでアガリクス菌体成分は、一般的には消化し難いことが知られており、従ってアガリクスがどのように体内に吸収され、どのような作用機序に基づいて生体内における免疫を高めているのか、またアガリクスが実際にどの程度免疫に関与しているかなどの基礎的、臨床医学的に正確な作用は確証されておらず、それゆえアガリクスの機能は未知であった。そのため、アガリクスの健康食品としての存在は知られているが、医療用途としての有効性は推測にすぎず、医薬としては用いられていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アガリクスを含む肝機能正常化剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、アガリクスが肝機能を正常化させ、組織の破壊とそれに付随する肝機能の低下を抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、アガリクスを含むことを特徴とする肝機能正常化剤である。ここでアガリクスはその酵素処理済製剤であってもよい。また、肝機能の正常化としては、肝機能パラメータ、例えばGOT値、GPT値及びTG値からなる群より選択される1つ以上のパラメータの正常化が挙げられる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は、アガリクスの用途に係るものであり、アガリクスが肝機能を正常化させ、かつ免疫担当細胞を活性化させることを利用するものである。従って、アガリクスは、肝機能正常化剤として使用しうる。
アガリクスは、菌糸体や子実体を発酵処理して調製することができるが(ABPC)、発酵処理済み及び未処理の市販品を用いることもできる。
【0008】
アガリクス粒子を得るためには、アガリクス菌糸体に、超音波処理等の処理又は発酵過程による分解処理を行って体内へ吸収し易くすることが好ましい。超音波処理は、適当な超音波処理装置を用いて5〜50分程度行う。また、発酵過程により分解するには、酵母菌と共存させ40℃の環境下で5〜10日間の培養処理を行う。この場合、酵母菌が最終製品に混和されていてもよい。尚、アガリクスの微小断片が混入した溶媒抽出物であってもアガリクスの免疫担当細胞活性化と、その結果として誘導される抗腫瘍効果、癌発生予防効果などの活性を保有するものであれば使用してよい。また、溶媒はアブソリュートアルコール又は10%までのアルコール溶液であってもよい。抽出期間は約5〜10日間を要する。
【0009】
アガリクスの酵素処理済製剤は、繊維分解酵素(セルラーゼ)と、子実体及び菌糸体の等量混合物とを約1対100の比率で混合し、約40℃にて5日間程度混合することにより得られる。
【0010】
アガリクスの成分により、肝機能が正常化され、また免疫担当細胞が活性化される。一般的な肝機能としては、代謝機能として、栄養素(糖質・脂質・タンパク)の同化・貯蔵・異化、核酸代謝、ビタミンの活性化・貯蔵、ホルモンの不活化・排泄、ビリルビン・胆汁酸の生成、鉄・銅その他重金属代謝などがある。また、排泄機能として胆汁の生成と排泄、解毒機能として各種化合物の酸化・還元・水解・抱合化などあり、さらに凝固・線溶因子の生成及び循環の調節機能がある。特に本発明において意図する「肝機能」とは、肝臓の血糖調節能や中間代謝産物分解能(いわゆる解毒作用など)を意味し、これは例えば肝機能パラメータを測定することにより確認することができる。肝機能パラメータとしては、限定するものではないが、GOT値、GPT値、LDH値、TG値、ビリルビンなどが挙げられる。
【0011】
GOTとは、グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼの略であり、これはアスパラギン酸−αケトグルタール酸とグルタミン酸−オキサロ酢酸との間のアミノ基転移酵素である。この酵素は、肝臓、心筋及び骨格筋に多く存在し、細胞の変性・壊死により血中に逸脱するために活性が上昇する。血清中のGOT値の上昇は、肝臓、胆道疾患、特に急性肝炎の場合に著明であり、GOT値は肝機能全体を知ることができる診断上有力な指標である。またGPTとは、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼの略であり、これはアラニン−αケトグルタール酸とグルタミン酸−ピルビン酸との間のアミノ基転移酵素である。この酵素は、肝臓、心筋及び腎臓に多く存在し、GOTと同様に、細胞の変性・壊死により血中に逸脱するために活性が上昇する。血清中のGPT値の上昇は、肝臓、胆道疾患、特に急性肝炎の場合に著明であり、GPT値も肝機能全体を知ることができる診断上有力な指標である。GOT値及びGPT値は、Reitman−Frankel法、UV法などによって測定しうる。例えば、UV法は、血清に基質(GOTに関してはL−アスパラギン酸、GPTに関してはL−アラニン)を加えて反応させ、一定時間、例えば7.5分経過後に、別に添加したNADHの340nmにおける吸光度の減少速度を測定することにより、GOT及びGPT活性値を求めるものである。
【0012】
検査施設により多少異なるが、GOT値は10〜40IU/l、GPT値は5〜40IU/lであればヒトでは正常とみなされ、それぞれ上限を超えると肝機能の異常が疑われる。
【0013】
血清GOT値及びGPT値は共に急性又は潜在性肝障害のスクリーニングに不可欠の検査であり、GOT値及びGPT値の相対変化に対する臨床的意義は次の通りである。すなわち、肝障害が進行するとGOT/GPT比が大きくなるが、これは肝細胞中に含まれるGPTが減少するために相対的にGOTが高くなることに起因する。しかしながらGOT/GPT比は疾患の種類、程度などによって異なる。例えば急性肝炎では、血中GOT値及びGPT値が発病に先だって上昇し、GOT<GPTとなる場合が多い。また慢性肝炎と脂肪肝の場合は、GOT値及びGPT値は軽度の上昇を示し、GOT>GPTであることが多い。
【0014】
TGとは、トリグリセリドの略であり、肝臓は、食事由来の脂肪酸や脂肪組織から動員された脂肪酸を摂取してTGを合成し、低比重リポタンパク(LDL)に組み込んで血中に放出する。肝臓における脂肪酸合成が増加すると、TGを血中に放出してTG値を上昇させる。この状態は、肥満、糖尿病等による脂肪肝の状態に平行する。従って、TG値は肝臓の脂質代謝機能を知ることができ、TG値の上昇は、脂肪肝の指標となる。TG値の測定は、アセチルアセトン法、酵素法、ネフェロメトリー法などにより行われる。例えば、酵素法では、第一反応としてグリセロールキナーゼ、グリセロール−3−リン酸オキシダーゼ及びカターゼの作用で遊離グリセリンを除去する。次に第二反応として、リポプロテインリパーゼ、グリセロールキナーゼ及びグリセロール−3−リン酸オキシダーゼの作用でTGから過酸化水素が生成する。この過酸化水素は、ペルオキシダーゼにより4−アミノアンチピリンと3,5−ジメトキシン−N−エチル−N−(2−ハイドロキシ−3−スルホプロピル)アニリンナトリウムを酸化縮合させ青色の色素を生成させる。この色素の吸光度を測定することによりTG値を求める。
【0015】
TG値は、検査施設により多少異なるが、50〜150mg/dlであれば正常とみなされ、下限より低値であれば肝硬変などが疑われ、上限を超えれば脂肪肝、肥満などが疑われる。
【0016】
例示した肝機能パラメータ又はその他の肝機能パラメータを測定することによって肝機能状態を知ることができる。本発明において、「肝機能の正常化」とは、上述のような肝機能パラメータ値を正常化する、すなわち正常値に保つ又は異常である場合には正常値(近似値も含む)に補正することを指す。従って、本発明の肝機能正常化剤には、GOT値上昇抑制剤、GPT値上昇抑制剤、LDH値上昇抑制剤、TG値上昇抑制剤などが含まれる。
【0017】
アガリクスが肝機能を正常化させる作用機構としては、肝細胞の新生を直接促進する直接作用と、肝臓類洞に定着するクッパー細胞を活性化し、その細胞から分泌されたサイトカインにより肝原基細胞を活性化促進する間接作用が考えられる。ここでクッパー細胞とは、細胞質性の突起で類洞内壁に付着し、血中の異物や古い赤血球を貪食する単球性食細胞(例えばマクロファージ)の一員である。
【0018】
アガリクスが免疫担当細胞を活性化する作用機構は、アガリクス粒子の多糖体成分が体内に吸収されるとまず補体経路を活性化して補体の機能、すなわちオプソニン化(貪食亢進作用)を誘導して補体成分を断片化し、次にこの補体断片の受容体を持つリンパ系細胞が当該断片を受取ることにより活性化されることである。
【0019】
オプソニン化は、補体レセプターを保有する細胞が微生物や抗原抗体複合体を吸着貪食することを可能とする作用であり、細胞活性化は、免疫担当細胞が標的細胞を破壊する機能を付与する作用、すなわちマクロファージや好中球の貪食反応を促進する作用であり、細胞溶解は、補体自らが標的細胞を破壊する作用である。オプソニン化の標的細胞としては、侵入微生物、異物抗原、免疫複合体、ウイルス感染細胞、癌化細胞、老化自己成分等が挙げられる。なお、補体レセプター(CR)とは、細胞表面に表現される活性化された補体に対するレセプターを意味し、C3の主要分解産物に対する4種類のレセプター(CR1、CR2、CR3及びCR4)が知られている。補体レセプターを有する細胞としては、B細胞、好中球、単球、マクロファージ、赤血球、NK細胞、白血球等が挙げられる。また、細胞溶解作用の標的細胞としては、ウイルス感染細胞、全ての種類の癌細胞や腫瘍細胞等が挙げられる。免疫担当細胞としては、例えばマクロファージ、T細胞、B細胞、NK細胞、好中球、単球、その他の白血球等が挙げられる。
【0020】
アガリクスの投与によって、免疫担当細胞が活性化され、肝機能、すなわち血糖調節能、中間代謝産物分解能(いわゆる解毒作用など)等を正常化することにより肝臓機能が維持される。
【0021】
また、アガリクスを有効成分として含む医薬組成物、すなわち肝機能正常化剤は、医薬的に許容される担体又は添加物を共に含むものであってもよい。このような担体及び添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などの他、リポゾームなどの人工細胞構造物などが挙げられる。使用される添加物は、医薬組成物の剤形に応じて上記の中から適宜又は組み合わせて選択される。
本発明のアガリクスを含む肝機能正常化剤は、主として経口的に投与することができる。
【0022】
上記肝機能正常化剤を経口的に投与する場合は、それに適用される錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤などの固形製剤、あるいは液剤、シロップ剤などの液体製剤等とすればよい。特に顆粒剤及び散剤は、カプセル剤として単位投与剤形とすることができ、液体製剤の場合は使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。
【0023】
これら剤形のうち経口用固形剤は、通常それらの組成物中に製剤上一般に使用される結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤などの添加剤を含有する。また、経口用液体製剤は、通常それらの組成物中に製剤上一般に使用される安定剤、緩衝剤、矯味剤、保存剤、芳香剤、着色剤などの添加剤を含有する。
【0024】
上記肝機能正常化剤におけるアガリクス量は、限定されるものではないが、総重量を基準として1〜5重量%、好ましくは2〜3重量%である。また、アガリクスの有効量と適切な希釈剤及び薬理学的に使用しうる担体との組み合わせとして投与される有効量は、1日につき体重1kg当たり10〜1000mgであり、0.5日から3日の間隔で投与される。
【0025】
本発明の肝機能正常化剤を投与する対象としては、限定するものではないが、肝機能の正常化が望まれる又は肝機能を正常に維持させようとする、ヒト、家畜、愛玩動物、実験動物でありうる。
【0026】
アガリクスは、医薬組成物としての用途に限定されず、その他、例えば食品等に配合されてもよい。従って、アガリクスが配合された食品は、肝機能を正常化させるための健康補助製品として有用である。
【0027】
アガリクスを配合する食品としては、米飯類、菓子類、麺類、カマボコ・チクワ等の水産練り製品、ハム・ソーセージ等の畜肉加工品、清涼飲料・果実飲料等の飲料類、マヨネーズ・ドレッシング・味付け調味液等の調味料等が挙げられ、これらに限定されない。食品に配合するアガリクスの量は、例えば1〜1000mg/kgであり、好ましくは500mg/kgである。
アガリクスは、肝機能の正常化剤として有用であり、また、肝機能を正常化することによって、肝臓の生理機能の調節などに有効でもある。
【0028】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
〔実施例1〕アガリクス製剤の調製
アガリクス1000gを、超音波処理(ミツミ電機社製のウルトラソニケーターを用いて20KHzで60分間処理)することによりアガリクス製剤を調製した。実施例で用いたアガリクスは株式会社応微研製の標品である。
【0029】
〔実施例2〕肝機能測定;GOT値測定
アガリクスの肝機能正常化剤としての効果を調べるため、実験動物として純系の清浄飼育マウス(C57BL/6、BA、雌、7週齢)を使用して実験を行った。
【0030】
本実施例で使用する担癌マウスは、アガリクスを投与する前に赤白血病細胞(EL−4)(10000/個体)を腰背部(局所)移植して担癌状態、すなわち肝臓機能障害を呈する状態とし、その後3週目に採血した。
【0031】
担癌マウスには、実施例1で調製したアガリクス製剤を1日当たり200mg/kg、400mg/kg又は800mg/kgで自由摂取方式で15日間投与した。
【0032】
UV法により、マウスから採取した血液のGOT値を測定した結果、アガリクス製剤を投与した担癌マウスではGOT値の低下が認められた(図1)。図1中、アガリクス200は200mg投与群、アガリクス400は400mg投与群、アガリクス800は800mg投与群を示す。
【0033】
〔実施例3〕肝機能測定;GPT値測定
実施例2に記載の実験手順と同様に、担癌マウスにアガリクス製剤を投与した。
UV法によりマウス血液のGPT値を測定した結果、アガリクス製剤を投与した担癌マウスではGPT値の低下が認められた(図2)。
【0034】
実施例2で得られたGOT値と本実施例で得られたGPT値とを相対的に評価すると、担癌宿主において、GOT及びGPTは共に上昇したが、アガリクス製剤の投与に伴い低下が見られた(図1及び図2)。また、投与量に反比例して数値の改善が見られた。GOTとGPTのそれぞれの変動幅を比較すると、正常と担癌状態ではGPT値の変動が大きく、この担癌状態は急性期の肝炎症状への影響と考えられる。
【0035】
〔実施例4〕肝機能測定;トリグリセリド(TG)値の測定
実施例2に記載の実験手順と同様に、担癌マウスにアガリクス製剤を投与した。
酵素法によりマウス血液のTG値を測定した結果、アガリクスを投与した担癌マウスではTG値の低下が認められた(図3)。
【0036】
〔実施例5〕免疫細胞の活性化
アガリクスの作用機構を確証するため、アガリクス投与後の免疫細胞の活性化について実験を行った。
最初に、各群10匹のマウスにマイトマイシン−C(MMC)を5mg/kg、更に5日後に3mg/kgで合計2回投与した。続いて、MMC処理後に、アガリクスを1回当たり500mg/kgで1日おきに5回経口投与した。
【0037】
体重、リンパ器官重量、白血球数、並びに白血球の亜群であるリンパ球とその亜群であるT細胞、B細胞及びマクロファージの量的及び質的な変動について測定した。
【0038】
体重に関しては、マウスを脱随により安楽死させた直後に体重をフルスケール50gr(石田計量器製、東京)を利用して測定した。またリンパ器官重量に関しては、胸部を開胸して胸腺を解剖学的に摘出し、フルスケール10gの精密直示天秤(島津理化器械、東京)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1の結果から、体重及び胸腺の重量はMMC対照群において低下が認められるが、アガリクスの経口投与により、正常値よりも10%劣るものの、回復傾向を示した。
続いて、白血球総数の測定に関しては、自動血球測定器を使って末梢血中の白血球総数を測定した。塗抹標本で合計200個の白血球細胞を数えて、正常群に対する百分率を計算した。結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
表2の結果から、白血球数はMMC対照群において低下が認められるが、アガリクスの経口投与により回復した。
以上の結果から、アガリクスは免疫担当細胞を量的に活性化することがわかる。
【0043】
次に、白血球の亜群別分布率を測定するために、安楽死後のマウスから脾臓を摘出して細胞を採取した。細胞の洗浄及び調製には、10% FCS、2mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、15mM HEPES、5×10−5M 2−メルカプトエタノ−ル及び10%炭酸水素ナトリウムを水でpHを7.2に調整したものを使用した。
採取した脾臓細胞の培養には、RPMI−1640培養液を使用した。その後、ろ過遠心法にて3回洗浄して、遊離脾臓細胞浮遊液を得た。
【0044】
CD4、CD11などの亜群別の測定法に関しては、リンパ球の各グループが有する細胞表層に突出している特殊な構造(CD;cluster of differentiation)を利用して、各群のCD番号に対応するモノクローナル抗体に蛍光色素を結合させた試薬(Becton−Dickinson社製、USA)を用いて該細胞を可視化して測定した。CD陽性細胞としてはCD4、CD11、CD19及びCD56を用い、上記B−D社製のFACS(fluorecent activated cell sorter)にて蛍光保持細胞を測定した。
【0045】
その結果を、表3に各群の平均蛍光保持細胞数を相対数(%)として示す。MMC対照群は、CD4、CD11、CD19及びCD56陽性細胞全般の相対数が低下した。しかし、MMC処理後、アガリクスを投与した最終投与5日後の脾臓中には正常群と同等のCD4、CD11、CD19及びCD56陽性細胞が検出された。
【0046】
【表3】
【0047】
表3の結果から、CD陽性細胞への影響を介したT細胞、B細胞、NK細胞及び食細胞への影響は、MMC対照群においてはいずれも低下が認められるが、アガリクスの経口投与により回復した。
以上の結果から、アガリクスは免疫担当細胞を量的に活性化することがわかる。
そしてさらに白血球亜群における機能的変化を測定するために、上述と同様の手順で脾臓細胞を培養し、遊離脾臓細胞浮遊液を得た。
【0048】
サイトカイン保持細胞の中から、体液性免疫担当のT細胞機能因子(Th2)としてIL−4の陽性細胞について、そして細胞性免疫担当のT細胞機能因子(Th1)としてIFN−γの陽性細胞数について、FACS法を用いて測定した。またいずれのサイトカインについても、その産生細胞の亜群を確認する意味で、多くのT細胞において発現されている表面抗原に対する抗体である抗CD3抗体と蛍光色素結合物を利用してFACS法によりCD3陽性細胞数を測定した。サイトカイン保持細胞の測定に関して以下に概略を示す。
【0049】
PMA、Ionomycin及びBSA(SIGMA社製)を加えたヘパリン化全血を37℃のインキュベーターにて4〜5時間培養した後、Percp−CD3、Percp−CD45、FITC−IFN−γ及び/又はPE−IL−4モノクローナル抗体(Becton−Dickinson社製Leu−series)を用いて慣例的な三重染色法で染色し、フローサイトメトリーにて10,000個のリンパ球を解析して、各サイトカイン保有細胞のCD3陽性細胞数(全T細胞数)に対する百分率を求めた。全T細胞数に対するIFN−γ保持細胞数(Th1)及びIL−4保持細胞数(Th2)が増大すると、それぞれ細胞性免疫及び体液性免疫が増強する、すなわち免疫力が質的に高まると言える。その結果を表4に示す。
【0050】
【表4】
【0051】
表4では、IFN−γ保持細胞及びIL−4保持細胞は共に、MMC対照群において低下が認められるが、アガリクスの経口投与により回復した。
以上の結果から、アガリクスは免疫担当細胞を質的かつ量的に活性化することがわかる。従って、アガリクスは、肝機能を正常化及び調節し、かつ免疫も高めることが示された。
【0052】
【発明の効果】
本発明により、アガリクスを含む肝機能正常化剤が提供される。本発明において、アガリクスは、肝機能を正常化、すなわちGOT値、GPT値、TG値などを正常化するために有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で試験したGOT値の結果を示す図である。
【図2】実施例3で試験したGPT値の結果を示す図である。
【図3】実施例4で試験したトリグリセリド値の結果を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、アガリクスの酵素処理済製剤(ABPC;Agaricus Brazei Practical Compound)を含む肝機能正常化剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
アガリクス茸(Agaricus blazei murill)は、担子菌類ハラタケ科に属し、β−D−グルカンを最も多く含む多糖体キノコであり、カワリハラタケとも呼ばれている。β−D−グルカンから成る多糖体は免疫細胞や抗癌作用と関連のある物質として注目されているため、アガリクスは健康維持物質として期待されている。
【0003】
これまでアガリクス菌体成分は、一般的には消化し難いことが知られており、従ってアガリクスがどのように体内に吸収され、どのような作用機序に基づいて生体内における免疫を高めているのか、またアガリクスが実際にどの程度免疫に関与しているかなどの基礎的、臨床医学的に正確な作用は確証されておらず、それゆえアガリクスの機能は未知であった。そのため、アガリクスの健康食品としての存在は知られているが、医療用途としての有効性は推測にすぎず、医薬としては用いられていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アガリクスを含む肝機能正常化剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、アガリクスが肝機能を正常化させ、組織の破壊とそれに付随する肝機能の低下を抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、アガリクスを含むことを特徴とする肝機能正常化剤である。ここでアガリクスはその酵素処理済製剤であってもよい。また、肝機能の正常化としては、肝機能パラメータ、例えばGOT値、GPT値及びTG値からなる群より選択される1つ以上のパラメータの正常化が挙げられる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は、アガリクスの用途に係るものであり、アガリクスが肝機能を正常化させ、かつ免疫担当細胞を活性化させることを利用するものである。従って、アガリクスは、肝機能正常化剤として使用しうる。
アガリクスは、菌糸体や子実体を発酵処理して調製することができるが(ABPC)、発酵処理済み及び未処理の市販品を用いることもできる。
【0008】
アガリクス粒子を得るためには、アガリクス菌糸体に、超音波処理等の処理又は発酵過程による分解処理を行って体内へ吸収し易くすることが好ましい。超音波処理は、適当な超音波処理装置を用いて5〜50分程度行う。また、発酵過程により分解するには、酵母菌と共存させ40℃の環境下で5〜10日間の培養処理を行う。この場合、酵母菌が最終製品に混和されていてもよい。尚、アガリクスの微小断片が混入した溶媒抽出物であってもアガリクスの免疫担当細胞活性化と、その結果として誘導される抗腫瘍効果、癌発生予防効果などの活性を保有するものであれば使用してよい。また、溶媒はアブソリュートアルコール又は10%までのアルコール溶液であってもよい。抽出期間は約5〜10日間を要する。
【0009】
アガリクスの酵素処理済製剤は、繊維分解酵素(セルラーゼ)と、子実体及び菌糸体の等量混合物とを約1対100の比率で混合し、約40℃にて5日間程度混合することにより得られる。
【0010】
アガリクスの成分により、肝機能が正常化され、また免疫担当細胞が活性化される。一般的な肝機能としては、代謝機能として、栄養素(糖質・脂質・タンパク)の同化・貯蔵・異化、核酸代謝、ビタミンの活性化・貯蔵、ホルモンの不活化・排泄、ビリルビン・胆汁酸の生成、鉄・銅その他重金属代謝などがある。また、排泄機能として胆汁の生成と排泄、解毒機能として各種化合物の酸化・還元・水解・抱合化などあり、さらに凝固・線溶因子の生成及び循環の調節機能がある。特に本発明において意図する「肝機能」とは、肝臓の血糖調節能や中間代謝産物分解能(いわゆる解毒作用など)を意味し、これは例えば肝機能パラメータを測定することにより確認することができる。肝機能パラメータとしては、限定するものではないが、GOT値、GPT値、LDH値、TG値、ビリルビンなどが挙げられる。
【0011】
GOTとは、グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼの略であり、これはアスパラギン酸−αケトグルタール酸とグルタミン酸−オキサロ酢酸との間のアミノ基転移酵素である。この酵素は、肝臓、心筋及び骨格筋に多く存在し、細胞の変性・壊死により血中に逸脱するために活性が上昇する。血清中のGOT値の上昇は、肝臓、胆道疾患、特に急性肝炎の場合に著明であり、GOT値は肝機能全体を知ることができる診断上有力な指標である。またGPTとは、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼの略であり、これはアラニン−αケトグルタール酸とグルタミン酸−ピルビン酸との間のアミノ基転移酵素である。この酵素は、肝臓、心筋及び腎臓に多く存在し、GOTと同様に、細胞の変性・壊死により血中に逸脱するために活性が上昇する。血清中のGPT値の上昇は、肝臓、胆道疾患、特に急性肝炎の場合に著明であり、GPT値も肝機能全体を知ることができる診断上有力な指標である。GOT値及びGPT値は、Reitman−Frankel法、UV法などによって測定しうる。例えば、UV法は、血清に基質(GOTに関してはL−アスパラギン酸、GPTに関してはL−アラニン)を加えて反応させ、一定時間、例えば7.5分経過後に、別に添加したNADHの340nmにおける吸光度の減少速度を測定することにより、GOT及びGPT活性値を求めるものである。
【0012】
検査施設により多少異なるが、GOT値は10〜40IU/l、GPT値は5〜40IU/lであればヒトでは正常とみなされ、それぞれ上限を超えると肝機能の異常が疑われる。
【0013】
血清GOT値及びGPT値は共に急性又は潜在性肝障害のスクリーニングに不可欠の検査であり、GOT値及びGPT値の相対変化に対する臨床的意義は次の通りである。すなわち、肝障害が進行するとGOT/GPT比が大きくなるが、これは肝細胞中に含まれるGPTが減少するために相対的にGOTが高くなることに起因する。しかしながらGOT/GPT比は疾患の種類、程度などによって異なる。例えば急性肝炎では、血中GOT値及びGPT値が発病に先だって上昇し、GOT<GPTとなる場合が多い。また慢性肝炎と脂肪肝の場合は、GOT値及びGPT値は軽度の上昇を示し、GOT>GPTであることが多い。
【0014】
TGとは、トリグリセリドの略であり、肝臓は、食事由来の脂肪酸や脂肪組織から動員された脂肪酸を摂取してTGを合成し、低比重リポタンパク(LDL)に組み込んで血中に放出する。肝臓における脂肪酸合成が増加すると、TGを血中に放出してTG値を上昇させる。この状態は、肥満、糖尿病等による脂肪肝の状態に平行する。従って、TG値は肝臓の脂質代謝機能を知ることができ、TG値の上昇は、脂肪肝の指標となる。TG値の測定は、アセチルアセトン法、酵素法、ネフェロメトリー法などにより行われる。例えば、酵素法では、第一反応としてグリセロールキナーゼ、グリセロール−3−リン酸オキシダーゼ及びカターゼの作用で遊離グリセリンを除去する。次に第二反応として、リポプロテインリパーゼ、グリセロールキナーゼ及びグリセロール−3−リン酸オキシダーゼの作用でTGから過酸化水素が生成する。この過酸化水素は、ペルオキシダーゼにより4−アミノアンチピリンと3,5−ジメトキシン−N−エチル−N−(2−ハイドロキシ−3−スルホプロピル)アニリンナトリウムを酸化縮合させ青色の色素を生成させる。この色素の吸光度を測定することによりTG値を求める。
【0015】
TG値は、検査施設により多少異なるが、50〜150mg/dlであれば正常とみなされ、下限より低値であれば肝硬変などが疑われ、上限を超えれば脂肪肝、肥満などが疑われる。
【0016】
例示した肝機能パラメータ又はその他の肝機能パラメータを測定することによって肝機能状態を知ることができる。本発明において、「肝機能の正常化」とは、上述のような肝機能パラメータ値を正常化する、すなわち正常値に保つ又は異常である場合には正常値(近似値も含む)に補正することを指す。従って、本発明の肝機能正常化剤には、GOT値上昇抑制剤、GPT値上昇抑制剤、LDH値上昇抑制剤、TG値上昇抑制剤などが含まれる。
【0017】
アガリクスが肝機能を正常化させる作用機構としては、肝細胞の新生を直接促進する直接作用と、肝臓類洞に定着するクッパー細胞を活性化し、その細胞から分泌されたサイトカインにより肝原基細胞を活性化促進する間接作用が考えられる。ここでクッパー細胞とは、細胞質性の突起で類洞内壁に付着し、血中の異物や古い赤血球を貪食する単球性食細胞(例えばマクロファージ)の一員である。
【0018】
アガリクスが免疫担当細胞を活性化する作用機構は、アガリクス粒子の多糖体成分が体内に吸収されるとまず補体経路を活性化して補体の機能、すなわちオプソニン化(貪食亢進作用)を誘導して補体成分を断片化し、次にこの補体断片の受容体を持つリンパ系細胞が当該断片を受取ることにより活性化されることである。
【0019】
オプソニン化は、補体レセプターを保有する細胞が微生物や抗原抗体複合体を吸着貪食することを可能とする作用であり、細胞活性化は、免疫担当細胞が標的細胞を破壊する機能を付与する作用、すなわちマクロファージや好中球の貪食反応を促進する作用であり、細胞溶解は、補体自らが標的細胞を破壊する作用である。オプソニン化の標的細胞としては、侵入微生物、異物抗原、免疫複合体、ウイルス感染細胞、癌化細胞、老化自己成分等が挙げられる。なお、補体レセプター(CR)とは、細胞表面に表現される活性化された補体に対するレセプターを意味し、C3の主要分解産物に対する4種類のレセプター(CR1、CR2、CR3及びCR4)が知られている。補体レセプターを有する細胞としては、B細胞、好中球、単球、マクロファージ、赤血球、NK細胞、白血球等が挙げられる。また、細胞溶解作用の標的細胞としては、ウイルス感染細胞、全ての種類の癌細胞や腫瘍細胞等が挙げられる。免疫担当細胞としては、例えばマクロファージ、T細胞、B細胞、NK細胞、好中球、単球、その他の白血球等が挙げられる。
【0020】
アガリクスの投与によって、免疫担当細胞が活性化され、肝機能、すなわち血糖調節能、中間代謝産物分解能(いわゆる解毒作用など)等を正常化することにより肝臓機能が維持される。
【0021】
また、アガリクスを有効成分として含む医薬組成物、すなわち肝機能正常化剤は、医薬的に許容される担体又は添加物を共に含むものであってもよい。このような担体及び添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などの他、リポゾームなどの人工細胞構造物などが挙げられる。使用される添加物は、医薬組成物の剤形に応じて上記の中から適宜又は組み合わせて選択される。
本発明のアガリクスを含む肝機能正常化剤は、主として経口的に投与することができる。
【0022】
上記肝機能正常化剤を経口的に投与する場合は、それに適用される錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤などの固形製剤、あるいは液剤、シロップ剤などの液体製剤等とすればよい。特に顆粒剤及び散剤は、カプセル剤として単位投与剤形とすることができ、液体製剤の場合は使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。
【0023】
これら剤形のうち経口用固形剤は、通常それらの組成物中に製剤上一般に使用される結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤などの添加剤を含有する。また、経口用液体製剤は、通常それらの組成物中に製剤上一般に使用される安定剤、緩衝剤、矯味剤、保存剤、芳香剤、着色剤などの添加剤を含有する。
【0024】
上記肝機能正常化剤におけるアガリクス量は、限定されるものではないが、総重量を基準として1〜5重量%、好ましくは2〜3重量%である。また、アガリクスの有効量と適切な希釈剤及び薬理学的に使用しうる担体との組み合わせとして投与される有効量は、1日につき体重1kg当たり10〜1000mgであり、0.5日から3日の間隔で投与される。
【0025】
本発明の肝機能正常化剤を投与する対象としては、限定するものではないが、肝機能の正常化が望まれる又は肝機能を正常に維持させようとする、ヒト、家畜、愛玩動物、実験動物でありうる。
【0026】
アガリクスは、医薬組成物としての用途に限定されず、その他、例えば食品等に配合されてもよい。従って、アガリクスが配合された食品は、肝機能を正常化させるための健康補助製品として有用である。
【0027】
アガリクスを配合する食品としては、米飯類、菓子類、麺類、カマボコ・チクワ等の水産練り製品、ハム・ソーセージ等の畜肉加工品、清涼飲料・果実飲料等の飲料類、マヨネーズ・ドレッシング・味付け調味液等の調味料等が挙げられ、これらに限定されない。食品に配合するアガリクスの量は、例えば1〜1000mg/kgであり、好ましくは500mg/kgである。
アガリクスは、肝機能の正常化剤として有用であり、また、肝機能を正常化することによって、肝臓の生理機能の調節などに有効でもある。
【0028】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
〔実施例1〕アガリクス製剤の調製
アガリクス1000gを、超音波処理(ミツミ電機社製のウルトラソニケーターを用いて20KHzで60分間処理)することによりアガリクス製剤を調製した。実施例で用いたアガリクスは株式会社応微研製の標品である。
【0029】
〔実施例2〕肝機能測定;GOT値測定
アガリクスの肝機能正常化剤としての効果を調べるため、実験動物として純系の清浄飼育マウス(C57BL/6、BA、雌、7週齢)を使用して実験を行った。
【0030】
本実施例で使用する担癌マウスは、アガリクスを投与する前に赤白血病細胞(EL−4)(10000/個体)を腰背部(局所)移植して担癌状態、すなわち肝臓機能障害を呈する状態とし、その後3週目に採血した。
【0031】
担癌マウスには、実施例1で調製したアガリクス製剤を1日当たり200mg/kg、400mg/kg又は800mg/kgで自由摂取方式で15日間投与した。
【0032】
UV法により、マウスから採取した血液のGOT値を測定した結果、アガリクス製剤を投与した担癌マウスではGOT値の低下が認められた(図1)。図1中、アガリクス200は200mg投与群、アガリクス400は400mg投与群、アガリクス800は800mg投与群を示す。
【0033】
〔実施例3〕肝機能測定;GPT値測定
実施例2に記載の実験手順と同様に、担癌マウスにアガリクス製剤を投与した。
UV法によりマウス血液のGPT値を測定した結果、アガリクス製剤を投与した担癌マウスではGPT値の低下が認められた(図2)。
【0034】
実施例2で得られたGOT値と本実施例で得られたGPT値とを相対的に評価すると、担癌宿主において、GOT及びGPTは共に上昇したが、アガリクス製剤の投与に伴い低下が見られた(図1及び図2)。また、投与量に反比例して数値の改善が見られた。GOTとGPTのそれぞれの変動幅を比較すると、正常と担癌状態ではGPT値の変動が大きく、この担癌状態は急性期の肝炎症状への影響と考えられる。
【0035】
〔実施例4〕肝機能測定;トリグリセリド(TG)値の測定
実施例2に記載の実験手順と同様に、担癌マウスにアガリクス製剤を投与した。
酵素法によりマウス血液のTG値を測定した結果、アガリクスを投与した担癌マウスではTG値の低下が認められた(図3)。
【0036】
〔実施例5〕免疫細胞の活性化
アガリクスの作用機構を確証するため、アガリクス投与後の免疫細胞の活性化について実験を行った。
最初に、各群10匹のマウスにマイトマイシン−C(MMC)を5mg/kg、更に5日後に3mg/kgで合計2回投与した。続いて、MMC処理後に、アガリクスを1回当たり500mg/kgで1日おきに5回経口投与した。
【0037】
体重、リンパ器官重量、白血球数、並びに白血球の亜群であるリンパ球とその亜群であるT細胞、B細胞及びマクロファージの量的及び質的な変動について測定した。
【0038】
体重に関しては、マウスを脱随により安楽死させた直後に体重をフルスケール50gr(石田計量器製、東京)を利用して測定した。またリンパ器官重量に関しては、胸部を開胸して胸腺を解剖学的に摘出し、フルスケール10gの精密直示天秤(島津理化器械、東京)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1の結果から、体重及び胸腺の重量はMMC対照群において低下が認められるが、アガリクスの経口投与により、正常値よりも10%劣るものの、回復傾向を示した。
続いて、白血球総数の測定に関しては、自動血球測定器を使って末梢血中の白血球総数を測定した。塗抹標本で合計200個の白血球細胞を数えて、正常群に対する百分率を計算した。結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
表2の結果から、白血球数はMMC対照群において低下が認められるが、アガリクスの経口投与により回復した。
以上の結果から、アガリクスは免疫担当細胞を量的に活性化することがわかる。
【0043】
次に、白血球の亜群別分布率を測定するために、安楽死後のマウスから脾臓を摘出して細胞を採取した。細胞の洗浄及び調製には、10% FCS、2mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、15mM HEPES、5×10−5M 2−メルカプトエタノ−ル及び10%炭酸水素ナトリウムを水でpHを7.2に調整したものを使用した。
採取した脾臓細胞の培養には、RPMI−1640培養液を使用した。その後、ろ過遠心法にて3回洗浄して、遊離脾臓細胞浮遊液を得た。
【0044】
CD4、CD11などの亜群別の測定法に関しては、リンパ球の各グループが有する細胞表層に突出している特殊な構造(CD;cluster of differentiation)を利用して、各群のCD番号に対応するモノクローナル抗体に蛍光色素を結合させた試薬(Becton−Dickinson社製、USA)を用いて該細胞を可視化して測定した。CD陽性細胞としてはCD4、CD11、CD19及びCD56を用い、上記B−D社製のFACS(fluorecent activated cell sorter)にて蛍光保持細胞を測定した。
【0045】
その結果を、表3に各群の平均蛍光保持細胞数を相対数(%)として示す。MMC対照群は、CD4、CD11、CD19及びCD56陽性細胞全般の相対数が低下した。しかし、MMC処理後、アガリクスを投与した最終投与5日後の脾臓中には正常群と同等のCD4、CD11、CD19及びCD56陽性細胞が検出された。
【0046】
【表3】
【0047】
表3の結果から、CD陽性細胞への影響を介したT細胞、B細胞、NK細胞及び食細胞への影響は、MMC対照群においてはいずれも低下が認められるが、アガリクスの経口投与により回復した。
以上の結果から、アガリクスは免疫担当細胞を量的に活性化することがわかる。
そしてさらに白血球亜群における機能的変化を測定するために、上述と同様の手順で脾臓細胞を培養し、遊離脾臓細胞浮遊液を得た。
【0048】
サイトカイン保持細胞の中から、体液性免疫担当のT細胞機能因子(Th2)としてIL−4の陽性細胞について、そして細胞性免疫担当のT細胞機能因子(Th1)としてIFN−γの陽性細胞数について、FACS法を用いて測定した。またいずれのサイトカインについても、その産生細胞の亜群を確認する意味で、多くのT細胞において発現されている表面抗原に対する抗体である抗CD3抗体と蛍光色素結合物を利用してFACS法によりCD3陽性細胞数を測定した。サイトカイン保持細胞の測定に関して以下に概略を示す。
【0049】
PMA、Ionomycin及びBSA(SIGMA社製)を加えたヘパリン化全血を37℃のインキュベーターにて4〜5時間培養した後、Percp−CD3、Percp−CD45、FITC−IFN−γ及び/又はPE−IL−4モノクローナル抗体(Becton−Dickinson社製Leu−series)を用いて慣例的な三重染色法で染色し、フローサイトメトリーにて10,000個のリンパ球を解析して、各サイトカイン保有細胞のCD3陽性細胞数(全T細胞数)に対する百分率を求めた。全T細胞数に対するIFN−γ保持細胞数(Th1)及びIL−4保持細胞数(Th2)が増大すると、それぞれ細胞性免疫及び体液性免疫が増強する、すなわち免疫力が質的に高まると言える。その結果を表4に示す。
【0050】
【表4】
【0051】
表4では、IFN−γ保持細胞及びIL−4保持細胞は共に、MMC対照群において低下が認められるが、アガリクスの経口投与により回復した。
以上の結果から、アガリクスは免疫担当細胞を質的かつ量的に活性化することがわかる。従って、アガリクスは、肝機能を正常化及び調節し、かつ免疫も高めることが示された。
【0052】
【発明の効果】
本発明により、アガリクスを含む肝機能正常化剤が提供される。本発明において、アガリクスは、肝機能を正常化、すなわちGOT値、GPT値、TG値などを正常化するために有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で試験したGOT値の結果を示す図である。
【図2】実施例3で試験したGPT値の結果を示す図である。
【図3】実施例4で試験したトリグリセリド値の結果を示す図である。
Claims (4)
- アガリクスを含むことを特徴とする肝機能正常化剤。
- アガリクスがその酵素処理済製剤である請求項1記載の肝機能正常化剤。
- 肝機能の正常化が肝機能パラメータの正常化である請求項1又は2記載の肝機能正常化剤。
- 肝機能パラメータが、GOT値、GPT値及び、TG値からなる群より選択される1つ以上のものである請求項3記載の肝機能正常化剤。
Priority Applications (1)
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JP2002258912A JP2004091449A (ja) | 2002-09-04 | 2002-09-04 | アガリクスを含む肝機能正常化剤 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2006101181A1 (ja) * | 2005-03-23 | 2006-09-28 | Fuji Oil Company, Limited | 肝機能障害予防もしくは改善組成物、及び肝機能障害予防もしくは改善法 |
JP2007126410A (ja) * | 2005-11-04 | 2007-05-24 | Seo Hyungu Choi | 肝疾患予防及び治療用生薬組成 |
-
2002
- 2002-09-04 JP JP2002258912A patent/JP2004091449A/ja active Pending
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WO2006101181A1 (ja) * | 2005-03-23 | 2006-09-28 | Fuji Oil Company, Limited | 肝機能障害予防もしくは改善組成物、及び肝機能障害予防もしくは改善法 |
JP2007126410A (ja) * | 2005-11-04 | 2007-05-24 | Seo Hyungu Choi | 肝疾患予防及び治療用生薬組成 |
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