JP2004091448A - アガリクスを含む癌転移抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】癌転移抑制剤の提供。
【解決手段】アガリクスを含むことを特徴とする癌転移抑制剤。
【選択図】 なし
【解決手段】アガリクスを含むことを特徴とする癌転移抑制剤。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アガリクスの酵素処理済製剤(ABPC;Agaricus Brazei Practical Compound)を含む癌転移抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
アガリクス茸(Agaricus blazei murill)は、担子菌類ハラタケ科に属し、β−D−グルカンを最も多く含む多糖体キノコであり、カワリハラタケとも呼ばれている。β−D−グルカンから成る多糖体は免疫細胞や抗癌作用と関連のある物質として注目されているため、アガリクスは健康維持物質として期待されている。
【0003】
これまでアガリクス菌体成分は、一般的には消化し難いことが知られており、従ってアガリクスがどのように体内に吸収され、どのような作用機序に基づいて生体内において作用するのか、特にアガリクスが実際にどの程度免疫能力の調節に関与しているかなどの基礎的、臨床医学的に正確な作用は確証されておらず、それゆえアガリクスの機能は未知であった。アガリクスの健康食品としての存在は知られているが、医療用途としての有効性は推測にすぎず、医薬としては用いられていない。
【0004】
また、アガリクスの抗腫瘍効果については、ヒトにおける体験的記述が中心であり、医学生物学的に作用機序及び全身の諸生理機能に対する影響を説明した報告や技術は見当たらない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アガリクスを含む癌転移抑制剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、アガリクスが免疫担当細胞を活性化させ、癌の転移を抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、アガリクスを含むことを特徴とする癌転移抑制剤である。ここでアガリクスはその酵素処理済製剤であってもよい。また、癌の転移としては肝転移が挙げられる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、アガリクスの用途に係るものであり、免疫担当細胞を活性化させることを利用するものである。本発明においては、アガリクスを投与して免疫担当細胞を活性化させることにより、癌の転移を抑制する。従って、アガリクスは、癌転移抑制剤として使用しうる。
アガリクスは、菌糸体や子実体を発酵処理して調製することができるが(ABPC)、発酵処理済み及び未処理の市販品を用いることもできる。
【0009】
アガリクス粒子を得るためには、アガリクス菌糸体に、超音波処理等の処理又は発酵過程による分解処理を行って体内へ吸収し易くすることが好ましい。超音波処理は、適当な超音波処理装置を用いて5〜50分程度行う。また、発酵過程により分解するには、酵母菌と共存させ40℃の環境下で5〜10日間の培養処理を行う。この場合、酵母菌が最終製品に混和されていてもよい。尚、アガリクスの微小断片が混入した溶媒抽出物であってもアガリクスの免疫担当細胞活性化と、その結果として誘導される抗腫瘍効果、癌発生予防効果などの活性を保有するものであれば使用してよい。また、溶媒はアブソリュートアルコール又は10%までのアルコール溶液であってもよい。抽出期間は約5〜10日間を要する。
【0010】
アガリクスの酵素処理済製剤は、繊維分解酵素(セルラーゼ)と、子実体及び菌糸体の等量混合物とを約1対100の比率で混合し、約40℃にて5日間程度混合することにより得られる。
【0011】
アガリクスの成分により、免疫担当細胞が活性化されるため癌の転移が抑制される。本発明において「癌転移」とは、赤白血病や転移性を示す悪性腫瘍の局所発生後、他の組織に一部の癌細胞が移動し、癌組織を増殖させ、且つ新しく定着した組織及び器官の機能に障害を生じさせる事象を意味し、例えば、肝転移、腎転移, 骨転移、脳内転移などが含まれる。癌転移の抑制とは、原発巣から他の臓器への部分的な移動の阻止を意味する。転移の阻止は癌組織の局所における封鎖を意味し、封鎖に成功すれば宿主の生命維持に支障はない。最近、癌の局所封じ込め策を休眠療法で対応しようとする動きが盛んとなっている(がん休眠療法、高橋豊助著、講談社,2000)。本発明で使用するアガリクスは、免疫担当細胞を活性化することにより癌転移を抑制する。
【0012】
アガリクスが免疫担当細胞を活性化する作用機構は、アガリクス粒子の多糖体成分が体内に吸収されるとまず補体経路を活性化して補体の機能、すなわちオプソニン化(貪食亢進作用)を誘導して補体成分を断片化し、次にこの補体断片の受容体を持つリンパ系細胞が当該断片を受取ることにより活性化されることである。その結果、癌細胞の近傍に位置するリンパ球が癌細胞を攻撃し、癌細胞の溶解を引き起こす。また、アガリクスと補体との反応によりアガリクス−補体複合体を形成させ、当該複合体により感染防御担当細胞を活性化することである。
【0013】
オプソニン化は、補体レセプターを保有する細胞が微生物や抗原抗体複合体を吸着貪食することを可能とする作用であり、細胞活性化は、免疫担当細胞が標的細胞を破壊する機能を付与する作用、すなわちマクロファージや好中球の貪食反応を促進する作用であり、細胞溶解は、補体自らが標的細胞を破壊する作用である。オプソニン化の標的細胞としては、侵入微生物、異物抗原、免疫複合体、ウイルス感染細胞、癌化細胞、老化自己成分等が挙げられる。なお、補体レセプター(CR)とは、細胞表面に表現される活性化された補体に対するレセプターを意味し、C3の主要分解産物に対する4種類のレセプター(CR1、CR2、CR3及びCR4)が知られている。補体レセプターを有する細胞としては、B細胞、好中球、単球、マクロファージ、赤血球、NK細胞、白血球等が挙げられる。また、細胞溶解作用の標的細胞としては、ウイルス感染細胞、全ての種類の癌細胞や腫瘍細胞等が挙げられる。さらに、免疫担当細胞は、標的細胞を破壊する機能(細胞活性化作用)を有するものであり、そのため、抗腫瘍活性のほか、細菌やカビ等の増殖抑制活性をも示す。免疫担当細胞としては、例えばマクロファージ、T細胞、B細胞、NK細胞、好中球、単球、その他の白血球等が挙げられる。
【0014】
アガリクスの投与によって、免疫担当細胞が活性化され、腫瘍の増殖が抑制され、また癌の転移が抑制される。
また、アガリクスを有効成分として含む医薬組成物、すなわち癌転移抑制剤(腫瘍細胞増殖抑制剤)は、医薬的に許容される担体又は添加物を共に含むものであってもよい。このような担体及び添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などの他、リポゾームなどの人工細胞構造物などが挙げられる。使用される添加物は、医薬組成物の剤形に応じて上記の中から適宜又は組み合わせて選択される。
【0015】
本発明のアガリクスを含む癌転移抑制剤を腫瘍の転移予防目的で使用する場合は、使用する対象を特に限定するものではない。例えば、癌、肉腫、良性腫瘍などの少なくとも一種の腫瘍について転移予防を特異目的として用いることができる。これらの疾病は、単独であっても、併発したものであっても、上記以外の他の疾病を併発したものであっても、使用の対象とすることができる。これらの癌種は特に限定されるものではなく、例えば脳腫瘍、上咽頭癌、舌癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝癌、直腸癌、結腸癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、骨肉腫及び白血病からなる群から選択される少なくとも一種などが挙げられる。但し、単一の癌のみならず複数の癌が併発したものも含まれる。
本発明のアガリクスを含む癌転移抑制剤は、主として経口的に投与することができる。
【0016】
上記癌転移抑制剤を経口的に投与する場合は、それに適用される錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤などの固形製剤、あるいは液剤、シロップ剤などの液体製剤等とすればよい。特に顆粒剤及び散剤は、カプセル剤として単位投与剤形とすることができ、液体製剤の場合は使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。
【0017】
これら剤形のうち経口用固形剤は、通常それらの組成物中に製剤上一般に使用される結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤などの添加剤を含有する。また、経口用液体製剤は、通常それらの組成物中に製剤上一般に使用される安定剤、緩衝剤、矯味剤、保存剤、芳香剤、着色剤などの添加剤を含有する。
【0018】
上記癌転移抑制剤におけるアガリクス量は、限定されるものではないが、総重量を基準として1〜5重量%、好ましくは2〜3重量%である。また、アガリクスの有効量と適切な希釈剤及び薬理学的に使用しうる担体との組み合わせとして投与される有効量は、1日につき体重1kg当たり10〜1000mgであり、0.5日から3日の間隔で投与される。
本発明の癌転移抑制剤を投与する対象としては、限定するものではないが、ヒト、家畜、愛玩動物、実験動物でありうる。
【0019】
アガリクスは、医薬組成物としての用途に限定されず、その他、例えば食品等に配合されてもよい。従って、アガリクスが配合された食品は、癌転移を抑制するための健康補助製品として有用である。
【0020】
アガリクスを配合する食品としては、米飯類、菓子類、麺類、カマボコ・チクワ等の水産練り製品、ハム・ソーセージ等の畜肉加工品、清涼飲料・果実飲料等の飲料類、マヨネーズ・ドレッシング・味付け調味液等の調味料等が挙げられ、これらに限定されない。食品に配合するアガリクスの量は、例えば1〜1000mg/kgであり、好ましくは500mg/kgである。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
〔実施例1〕アガリクス製剤の調製
アガリクス1000gを、超音波処理(ミツミ電機社製のウルトラソニケーターを用いて20KHzで60分間処理)することによりアガリクス製剤を調製した。実施例で用いたアガリクスは株式会社応微研製の標品である。
【0022】
〔実施例2〕癌転移の抑制
アガリクスの癌転移抑制剤としての効果を調べるため、実験動物として純系の清浄飼育マウス(C57BL/6系、BA、雌、7週齢)を使用して実験を行った。
本実施例で使用する担癌マウスは、アガリクスを投与する前に赤白血病細胞(EL−4)(10000/個体)を腰背部(局所)移植して担癌状態とし、その後3週目に採血した。
【0023】
担癌マウスには、実施例1で調製したアガリクス製剤を1日当たり200mg/kg、400mg/kg又は800mg/kgで自由摂取方式で15日間投与した。
また、上記担癌マウスの肝臓組織標本を以下の通りに調製し、癌転移の抑制に関して確認する実験を行った。
【0024】
1)固定;2〜3mmの厚さの組織を10%ホルマリンを用いて12時間以上かけて固定した。
2)脱水;[自動包埋装置にて以下の手順で行った(組織の厚さ2〜3mm)]
1 70%エタノール 2.5時間
2 80%エタノール 2.5時間
3 90%エタノール 2.5時間
4 純エタノール 2.5時間
5 無水エタノールI 2.5時間
6 無水エタノールII 2.5時間
3)脱アルコール;[脱水の続きとして行った]
7 ベンゾールI 1.5時間
8 ベンゾールII 1.5時間
9 ベンゾールIII 1.5時間
4)パラフィンの浸透;[脱アルコールの続きとして行った]
10 パラフィンI 1.5時間
11 パラフィンII 1.5時間
12 パラフィンIII 1.5時間
5)パラフィン包埋、ブロック作製;[パラフィン自動分注器包埋センターにて行った]
6)薄切;[ミクロトームにて行った]
1 5ミクロンの切片に薄切する
2 スライドガラスに薄切切片を貼る
3 切片を貼付したスライドガラスを伸展器(50〜60℃)の上に乗せ、伸展・乾燥させる
4 50〜60℃の乾燥器に15〜30分入れ、切片をスライドガラスによく貼り付ける
5 37℃の乾燥器に一晩入れて乾かす
7)染色(HE染色)
1 キシロールI 3〜5分
2 キシロールII 3〜5分
3 純エタノールI 3〜5分
4 純エタノールII 3〜5分
5 70%エタノール 3〜5分
6 流水水洗 2〜4分
7 マイヤーのヘマトキシリン液 3〜5分
8 流水水洗 10〜20分
9 エオジン液 2〜4分
10 軽く水洗(余分のエオジン液を洗う)
11 70%エタノール 適度
12 80%エタノール 適度
13 90%エタノール 適度
14 純エタノールI 適度
15 純エタノールII 適度
16 カルボール・キシロール 3〜5分
17 キシロールI 3〜5分
18 キシロールII 3〜5分
19 キシロールIII 3〜5分
8)封入;HRSオイキットにて封入(カバーガラスで組織片を覆う)
9)乾燥後鏡検
【0025】
上述の通り作製した肝臓組織標本を、図1に対照担癌マウスの肝臓、図2にアガリクス投与担癌マウスの肝臓として示す。図1は、定着可能な最低量の癌細胞(EL−4)の移植を受けて3週間後の肝臓組織の顕微鏡像である。図1では、癌細胞が肝臓実質組織に転移し、癌細胞が浸潤した部位には肝実質細胞が検出できないまでに増殖している像が観察される。このような状態から1週間後、すなわち癌細胞の移植から4週目には約85%のマウスは腫瘍死する。
一方、アガリクスの経口投与を受けた群の個体では、肝臓血管周囲に癌細胞の転移は認められるものの転移巣を形成する癌細胞数は対照群に比べて、有意に低く、また、肝臓内の転移巣そのものの数も少なかった(図2)。すなわちアガリクスは癌の転移に対して抑制的に作用することが示唆される。
【0026】
〔実施例3〕免疫細胞の活性化
アガリクスの作用機構を確証するため、アガリクス投与後の免疫細胞の活性化について実験を行った。
最初に、各群10匹のマウスにマイトマイシン−C(MMC)を5mg/kg、更に5日後に3mg/kgで合計2回投与した。続いて、MMC処理後に、アガリクスを1回当たり500mg/kgで1日おきに5回経口投与した。
【0027】
体重、リンパ器官重量、白血球数、並びに白血球の亜群であるリンパ球とその亜群であるT細胞、B細胞及びマクロファージの量的及び質的な変動について測定した。
【0028】
体重に関しては、マウスを脱随により安楽死させた直後に体重をフルスケール50gr(石田計量器製、東京)を利用して測定した。またリンパ器官重量に関しては、胸部を開胸して胸腺を解剖学的に摘出し、フルスケール10gの精密直示天秤(島津理化器械、東京)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1の結果から、体重及び胸腺の重量はMMC対照群において低下が認められるが、アガリクスの経口投与により、正常値よりも10%劣るものの、回復傾向を示した。
【0031】
続いて、白血球総数の測定に関しては、自動血球測定器を使って末梢血中の白血球総数を測定した。塗抹標本で合計200個の白血球細胞を数えて、正常群に対する百分率を計算した。結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
表2の結果から、白血球数はMMC対照群において低下が認められるが、アガリクスの経口投与により回復した。
以上の結果から、アガリクスは免疫担当細胞を量的に活性化することがわかる。
【0034】
次に、白血球の亜群別分布率を測定するために、安楽死後のマウスから脾臓を摘出して細胞を採取した。細胞の洗浄及び調製には、10% FCS、2mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、15mM HEPES、5×10−5M 2−メルカプトエタノ−ル及び10%炭酸水素ナトリウムを水でpHを7.2に調整したものを使用した。
採取した脾臓細胞の培養には、RPMI−1640培養液を使用した。その後、ろ過遠心法にて3回洗浄して、遊離脾臓細胞浮遊液を得た。
【0035】
CD4、CD11などの亜群別の測定法に関しては、リンパ球の各グループが有する細胞表層に突出している特殊な構造(CD;cluster of differentiation)を利用して、各群のCD番号に対応するモノクローナル抗体に蛍光色素を結合させた試薬(Becton−Dickinson社製、USA)を用いて該細胞を可視化して測定した。CD陽性細胞としてはCD4、CD11、CD19及びCD56を用い、上記B−D社製のFACS(fluorecent activated cell sorter)にて蛍光保持細胞を測定した。
【0036】
その結果を、表3に各群の平均蛍光保持細胞数を相対数(%)として示す。MMC対照群は、CD4、CD11、CD19及びCD56陽性細胞全般の相対数が低下した。しかし、MMC処理後、アガリクスを投与した最終投与5日後の脾臓中には正常群と同等のCD4、CD11、CD19及びCD56陽性細胞が検出された。
【0037】
【表3】
【0038】
表3の結果から、CD陽性細胞への影響を介したT細胞、B細胞、NK細胞及び食細胞への影響は、MMC対照群においてはいずれも低下が認められるが、アガリクスの経口投与により回復した。
以上の結果から、アガリクスは免疫担当細胞を量的に活性化することがわかる。
【0039】
そしてさらに白血球亜群における機能的変化を測定するために、上述と同様の手順で脾臓細胞を培養し、遊離脾臓細胞浮遊液を得た。
サイトカイン保持細胞の中から、体液性免疫担当のT細胞機能因子(Th2)としてIL−4の陽性細胞について、そして細胞性免疫担当のT細胞機能因子(Th1)としてIFN−γの陽性細胞数について、FACS法を用いて測定した。またいずれのサイトカインについても、その産生細胞の亜群を確認する意味で、多くのT細胞において発現されている表面抗原に対する抗体である抗CD3抗体と蛍光色素結合物を利用してFACS法によりCD3陽性細胞数を測定した。サイトカイン保持細胞の測定に関して以下に概略を示す。
【0040】
PMA、Ionomycin及びBSA(SIGMA社製)を加えたヘパリン化全血を37℃のインキュベーターにて4〜5時間培養した後、Percp−CD3、Percp−CD45、FITC−IFN−γ及び/又はPE−IL−4モノクローナル抗体(Becton−Dickinson社製Leu−series)を用いて慣例的な三重染色法で染色し、フローサイトメトリーにて10,000個のリンパ球を解析して、各サイトカイン保有細胞のCD3陽性細胞数(全T細胞数)に対する百分率を求めた。全T細胞数に対するIFN−γ保持細胞数(Th1)及びIL−4保持細胞数(Th2)が増大すると、それぞれ細胞性免疫及び体液性免疫が増強する、すなわち免疫力が質的に高まると言える。その結果を表4に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
表4では、IFN−γ保持細胞及びIL−4保持細胞は共に、MMC対照群において低下が認められるが、アガリクスの経口投与により回復した。
以上の結果から、アガリクスは免疫担当細胞を質的かつ量的に活性化することがわかる。従って、アガリクスは、免疫担当細胞を活性化し、癌の転移を抑制することが示された。
【0043】
【発明の効果】
本発明により、アガリクスを含む癌転移抑制剤が提供される。本発明において、アガリクスは、癌の転移を抑制するために有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で調製した、対照担癌マウスの肝臓組織標本を示す図である。写真中央の手形濃厚部が、癌細胞の転移浸潤部位を示す。
【図2】実施例2で調製した、アガリクス投与担癌マウスの肝臓組織標本を示す図である。写真中央の円形濃厚部が、癌細胞の転移浸潤部位を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、アガリクスの酵素処理済製剤(ABPC;Agaricus Brazei Practical Compound)を含む癌転移抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
アガリクス茸(Agaricus blazei murill)は、担子菌類ハラタケ科に属し、β−D−グルカンを最も多く含む多糖体キノコであり、カワリハラタケとも呼ばれている。β−D−グルカンから成る多糖体は免疫細胞や抗癌作用と関連のある物質として注目されているため、アガリクスは健康維持物質として期待されている。
【0003】
これまでアガリクス菌体成分は、一般的には消化し難いことが知られており、従ってアガリクスがどのように体内に吸収され、どのような作用機序に基づいて生体内において作用するのか、特にアガリクスが実際にどの程度免疫能力の調節に関与しているかなどの基礎的、臨床医学的に正確な作用は確証されておらず、それゆえアガリクスの機能は未知であった。アガリクスの健康食品としての存在は知られているが、医療用途としての有効性は推測にすぎず、医薬としては用いられていない。
【0004】
また、アガリクスの抗腫瘍効果については、ヒトにおける体験的記述が中心であり、医学生物学的に作用機序及び全身の諸生理機能に対する影響を説明した報告や技術は見当たらない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アガリクスを含む癌転移抑制剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、アガリクスが免疫担当細胞を活性化させ、癌の転移を抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、アガリクスを含むことを特徴とする癌転移抑制剤である。ここでアガリクスはその酵素処理済製剤であってもよい。また、癌の転移としては肝転移が挙げられる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、アガリクスの用途に係るものであり、免疫担当細胞を活性化させることを利用するものである。本発明においては、アガリクスを投与して免疫担当細胞を活性化させることにより、癌の転移を抑制する。従って、アガリクスは、癌転移抑制剤として使用しうる。
アガリクスは、菌糸体や子実体を発酵処理して調製することができるが(ABPC)、発酵処理済み及び未処理の市販品を用いることもできる。
【0009】
アガリクス粒子を得るためには、アガリクス菌糸体に、超音波処理等の処理又は発酵過程による分解処理を行って体内へ吸収し易くすることが好ましい。超音波処理は、適当な超音波処理装置を用いて5〜50分程度行う。また、発酵過程により分解するには、酵母菌と共存させ40℃の環境下で5〜10日間の培養処理を行う。この場合、酵母菌が最終製品に混和されていてもよい。尚、アガリクスの微小断片が混入した溶媒抽出物であってもアガリクスの免疫担当細胞活性化と、その結果として誘導される抗腫瘍効果、癌発生予防効果などの活性を保有するものであれば使用してよい。また、溶媒はアブソリュートアルコール又は10%までのアルコール溶液であってもよい。抽出期間は約5〜10日間を要する。
【0010】
アガリクスの酵素処理済製剤は、繊維分解酵素(セルラーゼ)と、子実体及び菌糸体の等量混合物とを約1対100の比率で混合し、約40℃にて5日間程度混合することにより得られる。
【0011】
アガリクスの成分により、免疫担当細胞が活性化されるため癌の転移が抑制される。本発明において「癌転移」とは、赤白血病や転移性を示す悪性腫瘍の局所発生後、他の組織に一部の癌細胞が移動し、癌組織を増殖させ、且つ新しく定着した組織及び器官の機能に障害を生じさせる事象を意味し、例えば、肝転移、腎転移, 骨転移、脳内転移などが含まれる。癌転移の抑制とは、原発巣から他の臓器への部分的な移動の阻止を意味する。転移の阻止は癌組織の局所における封鎖を意味し、封鎖に成功すれば宿主の生命維持に支障はない。最近、癌の局所封じ込め策を休眠療法で対応しようとする動きが盛んとなっている(がん休眠療法、高橋豊助著、講談社,2000)。本発明で使用するアガリクスは、免疫担当細胞を活性化することにより癌転移を抑制する。
【0012】
アガリクスが免疫担当細胞を活性化する作用機構は、アガリクス粒子の多糖体成分が体内に吸収されるとまず補体経路を活性化して補体の機能、すなわちオプソニン化(貪食亢進作用)を誘導して補体成分を断片化し、次にこの補体断片の受容体を持つリンパ系細胞が当該断片を受取ることにより活性化されることである。その結果、癌細胞の近傍に位置するリンパ球が癌細胞を攻撃し、癌細胞の溶解を引き起こす。また、アガリクスと補体との反応によりアガリクス−補体複合体を形成させ、当該複合体により感染防御担当細胞を活性化することである。
【0013】
オプソニン化は、補体レセプターを保有する細胞が微生物や抗原抗体複合体を吸着貪食することを可能とする作用であり、細胞活性化は、免疫担当細胞が標的細胞を破壊する機能を付与する作用、すなわちマクロファージや好中球の貪食反応を促進する作用であり、細胞溶解は、補体自らが標的細胞を破壊する作用である。オプソニン化の標的細胞としては、侵入微生物、異物抗原、免疫複合体、ウイルス感染細胞、癌化細胞、老化自己成分等が挙げられる。なお、補体レセプター(CR)とは、細胞表面に表現される活性化された補体に対するレセプターを意味し、C3の主要分解産物に対する4種類のレセプター(CR1、CR2、CR3及びCR4)が知られている。補体レセプターを有する細胞としては、B細胞、好中球、単球、マクロファージ、赤血球、NK細胞、白血球等が挙げられる。また、細胞溶解作用の標的細胞としては、ウイルス感染細胞、全ての種類の癌細胞や腫瘍細胞等が挙げられる。さらに、免疫担当細胞は、標的細胞を破壊する機能(細胞活性化作用)を有するものであり、そのため、抗腫瘍活性のほか、細菌やカビ等の増殖抑制活性をも示す。免疫担当細胞としては、例えばマクロファージ、T細胞、B細胞、NK細胞、好中球、単球、その他の白血球等が挙げられる。
【0014】
アガリクスの投与によって、免疫担当細胞が活性化され、腫瘍の増殖が抑制され、また癌の転移が抑制される。
また、アガリクスを有効成分として含む医薬組成物、すなわち癌転移抑制剤(腫瘍細胞増殖抑制剤)は、医薬的に許容される担体又は添加物を共に含むものであってもよい。このような担体及び添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などの他、リポゾームなどの人工細胞構造物などが挙げられる。使用される添加物は、医薬組成物の剤形に応じて上記の中から適宜又は組み合わせて選択される。
【0015】
本発明のアガリクスを含む癌転移抑制剤を腫瘍の転移予防目的で使用する場合は、使用する対象を特に限定するものではない。例えば、癌、肉腫、良性腫瘍などの少なくとも一種の腫瘍について転移予防を特異目的として用いることができる。これらの疾病は、単独であっても、併発したものであっても、上記以外の他の疾病を併発したものであっても、使用の対象とすることができる。これらの癌種は特に限定されるものではなく、例えば脳腫瘍、上咽頭癌、舌癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝癌、直腸癌、結腸癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、骨肉腫及び白血病からなる群から選択される少なくとも一種などが挙げられる。但し、単一の癌のみならず複数の癌が併発したものも含まれる。
本発明のアガリクスを含む癌転移抑制剤は、主として経口的に投与することができる。
【0016】
上記癌転移抑制剤を経口的に投与する場合は、それに適用される錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤などの固形製剤、あるいは液剤、シロップ剤などの液体製剤等とすればよい。特に顆粒剤及び散剤は、カプセル剤として単位投与剤形とすることができ、液体製剤の場合は使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。
【0017】
これら剤形のうち経口用固形剤は、通常それらの組成物中に製剤上一般に使用される結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤などの添加剤を含有する。また、経口用液体製剤は、通常それらの組成物中に製剤上一般に使用される安定剤、緩衝剤、矯味剤、保存剤、芳香剤、着色剤などの添加剤を含有する。
【0018】
上記癌転移抑制剤におけるアガリクス量は、限定されるものではないが、総重量を基準として1〜5重量%、好ましくは2〜3重量%である。また、アガリクスの有効量と適切な希釈剤及び薬理学的に使用しうる担体との組み合わせとして投与される有効量は、1日につき体重1kg当たり10〜1000mgであり、0.5日から3日の間隔で投与される。
本発明の癌転移抑制剤を投与する対象としては、限定するものではないが、ヒト、家畜、愛玩動物、実験動物でありうる。
【0019】
アガリクスは、医薬組成物としての用途に限定されず、その他、例えば食品等に配合されてもよい。従って、アガリクスが配合された食品は、癌転移を抑制するための健康補助製品として有用である。
【0020】
アガリクスを配合する食品としては、米飯類、菓子類、麺類、カマボコ・チクワ等の水産練り製品、ハム・ソーセージ等の畜肉加工品、清涼飲料・果実飲料等の飲料類、マヨネーズ・ドレッシング・味付け調味液等の調味料等が挙げられ、これらに限定されない。食品に配合するアガリクスの量は、例えば1〜1000mg/kgであり、好ましくは500mg/kgである。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
〔実施例1〕アガリクス製剤の調製
アガリクス1000gを、超音波処理(ミツミ電機社製のウルトラソニケーターを用いて20KHzで60分間処理)することによりアガリクス製剤を調製した。実施例で用いたアガリクスは株式会社応微研製の標品である。
【0022】
〔実施例2〕癌転移の抑制
アガリクスの癌転移抑制剤としての効果を調べるため、実験動物として純系の清浄飼育マウス(C57BL/6系、BA、雌、7週齢)を使用して実験を行った。
本実施例で使用する担癌マウスは、アガリクスを投与する前に赤白血病細胞(EL−4)(10000/個体)を腰背部(局所)移植して担癌状態とし、その後3週目に採血した。
【0023】
担癌マウスには、実施例1で調製したアガリクス製剤を1日当たり200mg/kg、400mg/kg又は800mg/kgで自由摂取方式で15日間投与した。
また、上記担癌マウスの肝臓組織標本を以下の通りに調製し、癌転移の抑制に関して確認する実験を行った。
【0024】
1)固定;2〜3mmの厚さの組織を10%ホルマリンを用いて12時間以上かけて固定した。
2)脱水;[自動包埋装置にて以下の手順で行った(組織の厚さ2〜3mm)]
1 70%エタノール 2.5時間
2 80%エタノール 2.5時間
3 90%エタノール 2.5時間
4 純エタノール 2.5時間
5 無水エタノールI 2.5時間
6 無水エタノールII 2.5時間
3)脱アルコール;[脱水の続きとして行った]
7 ベンゾールI 1.5時間
8 ベンゾールII 1.5時間
9 ベンゾールIII 1.5時間
4)パラフィンの浸透;[脱アルコールの続きとして行った]
10 パラフィンI 1.5時間
11 パラフィンII 1.5時間
12 パラフィンIII 1.5時間
5)パラフィン包埋、ブロック作製;[パラフィン自動分注器包埋センターにて行った]
6)薄切;[ミクロトームにて行った]
1 5ミクロンの切片に薄切する
2 スライドガラスに薄切切片を貼る
3 切片を貼付したスライドガラスを伸展器(50〜60℃)の上に乗せ、伸展・乾燥させる
4 50〜60℃の乾燥器に15〜30分入れ、切片をスライドガラスによく貼り付ける
5 37℃の乾燥器に一晩入れて乾かす
7)染色(HE染色)
1 キシロールI 3〜5分
2 キシロールII 3〜5分
3 純エタノールI 3〜5分
4 純エタノールII 3〜5分
5 70%エタノール 3〜5分
6 流水水洗 2〜4分
7 マイヤーのヘマトキシリン液 3〜5分
8 流水水洗 10〜20分
9 エオジン液 2〜4分
10 軽く水洗(余分のエオジン液を洗う)
11 70%エタノール 適度
12 80%エタノール 適度
13 90%エタノール 適度
14 純エタノールI 適度
15 純エタノールII 適度
16 カルボール・キシロール 3〜5分
17 キシロールI 3〜5分
18 キシロールII 3〜5分
19 キシロールIII 3〜5分
8)封入;HRSオイキットにて封入(カバーガラスで組織片を覆う)
9)乾燥後鏡検
【0025】
上述の通り作製した肝臓組織標本を、図1に対照担癌マウスの肝臓、図2にアガリクス投与担癌マウスの肝臓として示す。図1は、定着可能な最低量の癌細胞(EL−4)の移植を受けて3週間後の肝臓組織の顕微鏡像である。図1では、癌細胞が肝臓実質組織に転移し、癌細胞が浸潤した部位には肝実質細胞が検出できないまでに増殖している像が観察される。このような状態から1週間後、すなわち癌細胞の移植から4週目には約85%のマウスは腫瘍死する。
一方、アガリクスの経口投与を受けた群の個体では、肝臓血管周囲に癌細胞の転移は認められるものの転移巣を形成する癌細胞数は対照群に比べて、有意に低く、また、肝臓内の転移巣そのものの数も少なかった(図2)。すなわちアガリクスは癌の転移に対して抑制的に作用することが示唆される。
【0026】
〔実施例3〕免疫細胞の活性化
アガリクスの作用機構を確証するため、アガリクス投与後の免疫細胞の活性化について実験を行った。
最初に、各群10匹のマウスにマイトマイシン−C(MMC)を5mg/kg、更に5日後に3mg/kgで合計2回投与した。続いて、MMC処理後に、アガリクスを1回当たり500mg/kgで1日おきに5回経口投与した。
【0027】
体重、リンパ器官重量、白血球数、並びに白血球の亜群であるリンパ球とその亜群であるT細胞、B細胞及びマクロファージの量的及び質的な変動について測定した。
【0028】
体重に関しては、マウスを脱随により安楽死させた直後に体重をフルスケール50gr(石田計量器製、東京)を利用して測定した。またリンパ器官重量に関しては、胸部を開胸して胸腺を解剖学的に摘出し、フルスケール10gの精密直示天秤(島津理化器械、東京)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1の結果から、体重及び胸腺の重量はMMC対照群において低下が認められるが、アガリクスの経口投与により、正常値よりも10%劣るものの、回復傾向を示した。
【0031】
続いて、白血球総数の測定に関しては、自動血球測定器を使って末梢血中の白血球総数を測定した。塗抹標本で合計200個の白血球細胞を数えて、正常群に対する百分率を計算した。結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
表2の結果から、白血球数はMMC対照群において低下が認められるが、アガリクスの経口投与により回復した。
以上の結果から、アガリクスは免疫担当細胞を量的に活性化することがわかる。
【0034】
次に、白血球の亜群別分布率を測定するために、安楽死後のマウスから脾臓を摘出して細胞を採取した。細胞の洗浄及び調製には、10% FCS、2mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、15mM HEPES、5×10−5M 2−メルカプトエタノ−ル及び10%炭酸水素ナトリウムを水でpHを7.2に調整したものを使用した。
採取した脾臓細胞の培養には、RPMI−1640培養液を使用した。その後、ろ過遠心法にて3回洗浄して、遊離脾臓細胞浮遊液を得た。
【0035】
CD4、CD11などの亜群別の測定法に関しては、リンパ球の各グループが有する細胞表層に突出している特殊な構造(CD;cluster of differentiation)を利用して、各群のCD番号に対応するモノクローナル抗体に蛍光色素を結合させた試薬(Becton−Dickinson社製、USA)を用いて該細胞を可視化して測定した。CD陽性細胞としてはCD4、CD11、CD19及びCD56を用い、上記B−D社製のFACS(fluorecent activated cell sorter)にて蛍光保持細胞を測定した。
【0036】
その結果を、表3に各群の平均蛍光保持細胞数を相対数(%)として示す。MMC対照群は、CD4、CD11、CD19及びCD56陽性細胞全般の相対数が低下した。しかし、MMC処理後、アガリクスを投与した最終投与5日後の脾臓中には正常群と同等のCD4、CD11、CD19及びCD56陽性細胞が検出された。
【0037】
【表3】
【0038】
表3の結果から、CD陽性細胞への影響を介したT細胞、B細胞、NK細胞及び食細胞への影響は、MMC対照群においてはいずれも低下が認められるが、アガリクスの経口投与により回復した。
以上の結果から、アガリクスは免疫担当細胞を量的に活性化することがわかる。
【0039】
そしてさらに白血球亜群における機能的変化を測定するために、上述と同様の手順で脾臓細胞を培養し、遊離脾臓細胞浮遊液を得た。
サイトカイン保持細胞の中から、体液性免疫担当のT細胞機能因子(Th2)としてIL−4の陽性細胞について、そして細胞性免疫担当のT細胞機能因子(Th1)としてIFN−γの陽性細胞数について、FACS法を用いて測定した。またいずれのサイトカインについても、その産生細胞の亜群を確認する意味で、多くのT細胞において発現されている表面抗原に対する抗体である抗CD3抗体と蛍光色素結合物を利用してFACS法によりCD3陽性細胞数を測定した。サイトカイン保持細胞の測定に関して以下に概略を示す。
【0040】
PMA、Ionomycin及びBSA(SIGMA社製)を加えたヘパリン化全血を37℃のインキュベーターにて4〜5時間培養した後、Percp−CD3、Percp−CD45、FITC−IFN−γ及び/又はPE−IL−4モノクローナル抗体(Becton−Dickinson社製Leu−series)を用いて慣例的な三重染色法で染色し、フローサイトメトリーにて10,000個のリンパ球を解析して、各サイトカイン保有細胞のCD3陽性細胞数(全T細胞数)に対する百分率を求めた。全T細胞数に対するIFN−γ保持細胞数(Th1)及びIL−4保持細胞数(Th2)が増大すると、それぞれ細胞性免疫及び体液性免疫が増強する、すなわち免疫力が質的に高まると言える。その結果を表4に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
表4では、IFN−γ保持細胞及びIL−4保持細胞は共に、MMC対照群において低下が認められるが、アガリクスの経口投与により回復した。
以上の結果から、アガリクスは免疫担当細胞を質的かつ量的に活性化することがわかる。従って、アガリクスは、免疫担当細胞を活性化し、癌の転移を抑制することが示された。
【0043】
【発明の効果】
本発明により、アガリクスを含む癌転移抑制剤が提供される。本発明において、アガリクスは、癌の転移を抑制するために有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で調製した、対照担癌マウスの肝臓組織標本を示す図である。写真中央の手形濃厚部が、癌細胞の転移浸潤部位を示す。
【図2】実施例2で調製した、アガリクス投与担癌マウスの肝臓組織標本を示す図である。写真中央の円形濃厚部が、癌細胞の転移浸潤部位を示す。
Claims (3)
- アガリクスを含むことを特徴とする癌転移抑制剤。
- アガリクスがその酵素処理済製剤である請求項1記載の癌転移抑制剤。
- 癌の転移が肝転移である請求項1又は2記載の癌転移抑制剤。
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