JP2004091248A - セメント着色用樹脂粒子および該粒子を含有するセメント - Google Patents
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Abstract
【課題】カラーセメント構造物の「色移り」、「白華」現象が生じないセメント着色材を提供すること。
【解決手段】少なくとも着色剤が樹脂中に分散されている樹脂粒子からなるセメント着色用樹脂粒子。
【選択図】なし
【解決手段】少なくとも着色剤が樹脂中に分散されている樹脂粒子からなるセメント着色用樹脂粒子。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメントを着色するためのセメント着色用樹脂粒子および該着色用樹脂粒子を含有するセメントに関する。
【0002】
【従来の技術】
セメントは、砂、砂利等の骨材および/またはその他の添加剤(貝殻等)を混ぜて、水と練り、コンクリート、モルタル、漆喰等各種建築用構造物を形成するために使用されており、その構造物表面は灰白色〜白を呈しているのが一般的である。
【0003】
最近、自然環境との整合性、美環上の目的から、白、灰白色以外のカラーセメントが使用され、ビル等の建築物の壁や床などの表面仕上げとしてセメントモルタルや漆喰を用いた塗装やタイル貼りが施されており、意匠性の要求から着色材を混合されたセメントがそれら構造物に使用されるようになった。また、ガーデニングが人気を博するようになり、各種カラーリングされたブロック、タイル等のガーデニング用コンポーネントが提供されるにいたっている。
【0004】
なお、本発明においては、コンクリート、モルタル、漆喰等各種建築用構造物、ブロック、タイル等のガーデニング用コンポーネントを含めて、「セメント構造物」ということにする。
【0005】
従来のカラーセメント構造物は、無機の顔料を混合したセメントを硬化させたものであり、セメントの着色材としては色々知られている。
【0006】
例えば特開平5−279092号公報は、平均粒径300〜1500μmの無機着色顔料粉体を使用すること、特開平7−69691号公報は、酸性酸化鉄顔料と界面活性剤を混合し造粒したものを使用すること、特開平7−89754号公報は水酸化鉄顔料粉体と界面活性剤を混合造粒したものを使用することが開示されている。
【0007】
しかし、従来は、上記のような顔料をそのまま混入してセメントを着色しているものであり、そのようなセメントを硬化させてなるセメント構造物は、「色うつり」、「白華」という問題がある。「色移り」は、セメント構造物に衣服、手などが接触したとき、セメント構造物の色が衣服、手などにつく現象である。また、「白華」とは、セメント構造物の表面に白色のまだら模様が浮き出てくる現象であり、構造物に含まれるナトリウムイオンやカリウムイオン成分が空気中の二酸化炭素と反応しNa2CO3やK2CO3等の成分に変化し構造物表面にまだらに現出したものと考えられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、カラーセメント構造物の「色移り」、「白華」現象が生じないセメント着色材を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、少なくとも着色剤が樹脂中に分散されている樹脂粒子からなる樹脂粒子をセメント着色材として使用することにより解決される。
すなわち、本発明は、少なくとも着色剤が樹脂中に分散されている樹脂粒子からなるセメント着色用樹脂粒子を提供するものである。
【0010】
本発明のセメント着色用樹脂粒子に添加される着色剤は、いわゆる無機、有機の顔料・染料を意味し、例えば、Ket Blue(シアン)、Neotun Yellow(イエロー)、キナクリドン(マゼンタ)、チタン、炭酸カルシウム(ホワイト)等各種公知の顔料、染料が使用が可能であり、その使用に特に制限はない。最終セメント構造物に、例えば変色の防止等の耐環境耐久性が要求される場合は、無機顔料等を使用するなど、要求される特性を満足するように適宜選択して使用すればよい。また、1種類のみでなく2種以上混合して使用してもよい。
【0011】
本発明のセメント着色用樹脂粒子に使用される樹脂は、色移り防止の観点からは、公知の各種熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ樹脂等を使用可能であるが、白華現象をより確実に効果的に防止する観点からは、これらの樹脂の中でもポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエステル系樹脂としては、酸価が5〜150、好ましくは5〜100、より好ましくは7〜35KOHmg/gを有するものがより好ましいことが判明している。酸価が低すぎると、白華現象防止の効果が小さい。酸価が高すぎると吸湿を生じ、セメント構造物の強度が低下する。
【0012】
なお、本発明に好適に使用可能なポリエステル系樹脂は、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分を重縮合させることにより得られたポリエステル樹脂であり、より詳細には特開平10−246989号公報、第[0018]段〜第[0024]に記載のモノマーで構成される樹脂である。
【0013】
セメント乾燥時にCa+、Na+、K+等がセメント構造物表面に滲出し、空気中の酸素と反応してそれらの炭酸塩(CaCO3、K2CO3等)が形成されることが白華現象と考えられているが、その白華現象の原因物質であるカルシウムイオン、カリウムイオン等がポリエステル中の−COO−に捕捉され、それらの炭酸塩が表面で形成されることが抑制されるため、白華現象が抑制、防止されると考えられる。従って、上記−COO−を樹脂構造中に有し上記酸価を有している樹脂、例えばポリ(メタ)アクリル系樹脂)も上記ポリエステル系樹脂と同様に機能すると考えられる。またそれらの樹脂と、酸価を有しない他の樹脂の混合物であっても、酸価が上記範囲に調整された混合樹脂、共重合樹脂も使用可能と考えられる。
【0014】
着色剤の含量は、樹脂100重量部に対して0〜40重量部、好ましくは5〜25重量部である。40重量部より多いと、色移り防止の効果が低下する。
【0015】
着色用樹脂粒子を白色の着色材として使用する場合は、着色剤を必ずしも含ませる必要はない。着色剤を含有していない樹脂粒子で白色着色材として十分使用できる。従って、セメントを白色に着色するために本発明の着色用樹脂粒子を使用する場合、白色着色剤の含有量は、樹脂100重量部に対して0〜40重量部、好ましくは0〜20重量部の範囲に設定可能である。
なお、本発明において「着色材」とは、着色剤および/または本発明のセメント着色用樹脂粒子を含んだ着色材料を意味している。
【0016】
本発明の着色用樹脂粒子は、シリカ、ワックス等を添加してもよい。
【0017】
シリカ微粒子は、着色用樹脂粒子に流動性を付与し、また、樹脂粒子の凝集防止に有効であり、樹脂粒子に外添して使用することが好ましい。その添加量は、樹脂粒子100重量部に対して0.5〜3重量部程度である。
【0018】
本発明のセメント着色用樹脂粒子は、所定量の着色剤、樹脂、必要に応じて所望の添加剤を混合、混練、粉砕、分級工程を経て製造すればよく、その際、平均粒径200μm程度以下、5〜10μm程度にまで調整可能である。粒径は小さく調整するほど比表面積が大きくなるので、本発明の効果をより効果的に得ることができ、さらに発色効果がより大きくなる。
【0019】
本発明の着色用樹脂粒子(着色材)を添加混合できるセメントとしては、水で練ったときに硬化性を示す無機物質(混合物を含む)であり、セメント構造物を構成できるのであれば使用可能である。白華現象が現れるセメント構造物に特に使用価値がある。
【0020】
本発明の着色用樹脂粒子は、セメント全量の5〜25重量%程度の範囲で使用する。その添加量が少なすぎると着色の効果が薄く、また白華現象を有効に抑制することが困難となる。またその量が多すぎるとセメント硬化物の強度が問題となる。また、本発明のセメント着色用樹脂粒子は、異なる着色剤を含む複数種のセメント着色用樹脂粒子を同時に用いてもよい。
【0021】
【実施例】
下記組成1〜4の材料を使用し、セメント着色用樹脂粒子▲1▼〜▲5▼を得た。
(組成1;セメント着色用樹脂粒子▲1▼)
ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bの1:1混合物(酸価9) 93重量部
カーボンブラック(モーガルL、キャボット社製) 5重量部
【0022】
上記材料をヘンシェルミキサーで十分混合し、二軸押出混練機で溶融混練後、冷却した。得られた混練物をハンマーミルで粗粉砕しジェット粉砕機で微粉砕した後、分級して体積平均粒径10μmの着色粒子を得た。
この着色粒子に疎水性シリカ微粒子(H2000:ヘキスト社製)2重量部を加えて混合し着色樹脂微粒子▲1▼を得た。
【0023】
なお、ポリエステル樹脂AおよびBは以下のようにして製造した。
ポリエステル樹脂A
温度計、攪拌器、流下式コンデンサーおよび窒素導入管を取り付けたガラス製4つ口フラスコに、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、イソドデセニル無水コハク酸、テレフタル酸およびフマル酸を重量比82:77:16:32:30に調整して重合開始剤であるジブチル錫オキサイドとともに入れた。これをマントルヒーター中で窒素雰囲気下にて、220℃で攪拌しつつ反応させポリエステル樹脂Aを得た。
【0024】
ポリエステル樹脂B
スチレンおよび2−エチルヘキシルアクリレートを重量比17:3.2に調整し、重合開始剤であるジグミルパーオキサイドとともに滴下ロートに入れた。一方、温度計、攪拌器、流下式コンデンサーおよび窒素導入管を取り付けたガラス製4つ口フラスコに、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、イソドデセニル無水コハク酸、テレフタル酸、無水1,2,4−ベンゼントリカルボン酸およびアクリル酸を重量比42:11:11:11:8:1に調整して重合開始剤であるジブチル錫オキサイドとともに入れた。これをマントルヒーター中で窒素雰囲気下にて、135℃で攪拌しつつ、滴下ロートよりスチレン等を滴下した後、昇温して230℃で反応させポリエステル樹脂Bを得た。
【0025】
(組成2;セメント着色用樹脂粒子▲2▼)
下記材料を使用し、着色樹脂粒子▲1▼と同様にして着色樹脂粒子▲2▼(平均粒径8μm)を得た。
スチレンアクリル樹脂(アルマテックスPA−772H:三井化学社製) 93重量部
カーボンブラック(リーガル330:キャボット社製) 5重量部
【0026】
(組成3;セメント着色用樹脂粒子▲3▼)
下記材料を使用し、着色樹脂粒子▲1▼と同様にして着色樹脂粒子▲3▼(平均粒径10μm)を得た。
ポリエチレン樹脂(高密度ポリエチレン:サンプラテック社製) 93重量部
カーボンブラック(リーガル330:キャボット社製) 5重量部
【0027】
(組成4;セメント着色用樹脂粒子▲4▼)
下記材料を使用し、着色樹脂粒子▲1▼と同様にして着色樹脂粒子▲4▼(平均粒径10μm)を得た。
アクリル樹脂(アルマテックス:三井化学社製) 93重量部
カーボンブラック(リーガル330:キャボット社製) 5重量部
【0028】
(組成5;セメント着色用樹脂粒子▲5▼)
下記材料を使用し、着色樹脂粒子▲1▼と同様にして着色樹脂粒子▲5▼(平均粒径10μm)を得た。
ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bの3:2混合物
(酸価30KOHmg/g) 93重量部
カーボンブラック(モーガルL、キャボット社製) 5重量部
【0029】
市販のセメント(白セメント、一般セメント、漆喰)、着色材、水からなる材料を、スパチュラで混合、混練(約2分)し、泥状になったものを70mm×70mm×20mmの型に入れ、3日間自然乾燥させて評価サンプルを形成した。
【0030】
なお、市販セメントとして、日曜セメント ホワイト(商品名)(家庭化学工業社製)、一般セメントとして、速乾セメント(商品名)(家庭化学工業社製)、漆喰として、インスタントしっくい(商品名)(家庭化学工業社製)を使用した。また市販着色剤として、色粉(家庭化学工業社製)を用いた。
【0031】
(実施例)
なお(「部」は、「重量部を」表す。以下、同様)
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
(評価)
実施例1〜5、比較例1〜3で得られたブロックについて色移り、白華現象について下記記載のように評価した。評価結果を表1に示す。
【0040】
色移り:アームの付いたスタンドを定盤に取り付け、アームの先端に上記評価サンプルを固定した。評価サンプルと定盤との間にコピー用紙を挟み、評価サンプルの上から2kgの荷重を加えながら1cm/秒の速度でコピー用紙を引き抜き、15cmの長さの線を引いた。コピー用紙下面に付着した線を息で吹いて残った線の残量を目視判定した。
○:線の残存付着なし
△:線がわずかに残存付着
×:線が明確に残存付着
【0041】
白華:上記作製方法で得た評価サンプルに、さらに次のように水分を含有させ、乾燥させることにより白華現象を起こし、評価を行なった。白セメントおよび一般セメントについては水中に1時間浸し、漆喰については霧吹きで十分に湿らせ、その後3日間自然乾燥して評価サンプルとした。着色剤を直接混ぜ込んだ評価サンプル(比較例1)を基準に白華状態の目視判定を行なった。
○:白色粉の析出が無い、または明らかに減少
△:白色粉の析出量がやや減少
×:白色粉の析出量の差が認められない
【0042】
【表1】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメントを着色するためのセメント着色用樹脂粒子および該着色用樹脂粒子を含有するセメントに関する。
【0002】
【従来の技術】
セメントは、砂、砂利等の骨材および/またはその他の添加剤(貝殻等)を混ぜて、水と練り、コンクリート、モルタル、漆喰等各種建築用構造物を形成するために使用されており、その構造物表面は灰白色〜白を呈しているのが一般的である。
【0003】
最近、自然環境との整合性、美環上の目的から、白、灰白色以外のカラーセメントが使用され、ビル等の建築物の壁や床などの表面仕上げとしてセメントモルタルや漆喰を用いた塗装やタイル貼りが施されており、意匠性の要求から着色材を混合されたセメントがそれら構造物に使用されるようになった。また、ガーデニングが人気を博するようになり、各種カラーリングされたブロック、タイル等のガーデニング用コンポーネントが提供されるにいたっている。
【0004】
なお、本発明においては、コンクリート、モルタル、漆喰等各種建築用構造物、ブロック、タイル等のガーデニング用コンポーネントを含めて、「セメント構造物」ということにする。
【0005】
従来のカラーセメント構造物は、無機の顔料を混合したセメントを硬化させたものであり、セメントの着色材としては色々知られている。
【0006】
例えば特開平5−279092号公報は、平均粒径300〜1500μmの無機着色顔料粉体を使用すること、特開平7−69691号公報は、酸性酸化鉄顔料と界面活性剤を混合し造粒したものを使用すること、特開平7−89754号公報は水酸化鉄顔料粉体と界面活性剤を混合造粒したものを使用することが開示されている。
【0007】
しかし、従来は、上記のような顔料をそのまま混入してセメントを着色しているものであり、そのようなセメントを硬化させてなるセメント構造物は、「色うつり」、「白華」という問題がある。「色移り」は、セメント構造物に衣服、手などが接触したとき、セメント構造物の色が衣服、手などにつく現象である。また、「白華」とは、セメント構造物の表面に白色のまだら模様が浮き出てくる現象であり、構造物に含まれるナトリウムイオンやカリウムイオン成分が空気中の二酸化炭素と反応しNa2CO3やK2CO3等の成分に変化し構造物表面にまだらに現出したものと考えられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、カラーセメント構造物の「色移り」、「白華」現象が生じないセメント着色材を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、少なくとも着色剤が樹脂中に分散されている樹脂粒子からなる樹脂粒子をセメント着色材として使用することにより解決される。
すなわち、本発明は、少なくとも着色剤が樹脂中に分散されている樹脂粒子からなるセメント着色用樹脂粒子を提供するものである。
【0010】
本発明のセメント着色用樹脂粒子に添加される着色剤は、いわゆる無機、有機の顔料・染料を意味し、例えば、Ket Blue(シアン)、Neotun Yellow(イエロー)、キナクリドン(マゼンタ)、チタン、炭酸カルシウム(ホワイト)等各種公知の顔料、染料が使用が可能であり、その使用に特に制限はない。最終セメント構造物に、例えば変色の防止等の耐環境耐久性が要求される場合は、無機顔料等を使用するなど、要求される特性を満足するように適宜選択して使用すればよい。また、1種類のみでなく2種以上混合して使用してもよい。
【0011】
本発明のセメント着色用樹脂粒子に使用される樹脂は、色移り防止の観点からは、公知の各種熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ樹脂等を使用可能であるが、白華現象をより確実に効果的に防止する観点からは、これらの樹脂の中でもポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエステル系樹脂としては、酸価が5〜150、好ましくは5〜100、より好ましくは7〜35KOHmg/gを有するものがより好ましいことが判明している。酸価が低すぎると、白華現象防止の効果が小さい。酸価が高すぎると吸湿を生じ、セメント構造物の強度が低下する。
【0012】
なお、本発明に好適に使用可能なポリエステル系樹脂は、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分を重縮合させることにより得られたポリエステル樹脂であり、より詳細には特開平10−246989号公報、第[0018]段〜第[0024]に記載のモノマーで構成される樹脂である。
【0013】
セメント乾燥時にCa+、Na+、K+等がセメント構造物表面に滲出し、空気中の酸素と反応してそれらの炭酸塩(CaCO3、K2CO3等)が形成されることが白華現象と考えられているが、その白華現象の原因物質であるカルシウムイオン、カリウムイオン等がポリエステル中の−COO−に捕捉され、それらの炭酸塩が表面で形成されることが抑制されるため、白華現象が抑制、防止されると考えられる。従って、上記−COO−を樹脂構造中に有し上記酸価を有している樹脂、例えばポリ(メタ)アクリル系樹脂)も上記ポリエステル系樹脂と同様に機能すると考えられる。またそれらの樹脂と、酸価を有しない他の樹脂の混合物であっても、酸価が上記範囲に調整された混合樹脂、共重合樹脂も使用可能と考えられる。
【0014】
着色剤の含量は、樹脂100重量部に対して0〜40重量部、好ましくは5〜25重量部である。40重量部より多いと、色移り防止の効果が低下する。
【0015】
着色用樹脂粒子を白色の着色材として使用する場合は、着色剤を必ずしも含ませる必要はない。着色剤を含有していない樹脂粒子で白色着色材として十分使用できる。従って、セメントを白色に着色するために本発明の着色用樹脂粒子を使用する場合、白色着色剤の含有量は、樹脂100重量部に対して0〜40重量部、好ましくは0〜20重量部の範囲に設定可能である。
なお、本発明において「着色材」とは、着色剤および/または本発明のセメント着色用樹脂粒子を含んだ着色材料を意味している。
【0016】
本発明の着色用樹脂粒子は、シリカ、ワックス等を添加してもよい。
【0017】
シリカ微粒子は、着色用樹脂粒子に流動性を付与し、また、樹脂粒子の凝集防止に有効であり、樹脂粒子に外添して使用することが好ましい。その添加量は、樹脂粒子100重量部に対して0.5〜3重量部程度である。
【0018】
本発明のセメント着色用樹脂粒子は、所定量の着色剤、樹脂、必要に応じて所望の添加剤を混合、混練、粉砕、分級工程を経て製造すればよく、その際、平均粒径200μm程度以下、5〜10μm程度にまで調整可能である。粒径は小さく調整するほど比表面積が大きくなるので、本発明の効果をより効果的に得ることができ、さらに発色効果がより大きくなる。
【0019】
本発明の着色用樹脂粒子(着色材)を添加混合できるセメントとしては、水で練ったときに硬化性を示す無機物質(混合物を含む)であり、セメント構造物を構成できるのであれば使用可能である。白華現象が現れるセメント構造物に特に使用価値がある。
【0020】
本発明の着色用樹脂粒子は、セメント全量の5〜25重量%程度の範囲で使用する。その添加量が少なすぎると着色の効果が薄く、また白華現象を有効に抑制することが困難となる。またその量が多すぎるとセメント硬化物の強度が問題となる。また、本発明のセメント着色用樹脂粒子は、異なる着色剤を含む複数種のセメント着色用樹脂粒子を同時に用いてもよい。
【0021】
【実施例】
下記組成1〜4の材料を使用し、セメント着色用樹脂粒子▲1▼〜▲5▼を得た。
(組成1;セメント着色用樹脂粒子▲1▼)
ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bの1:1混合物(酸価9) 93重量部
カーボンブラック(モーガルL、キャボット社製) 5重量部
【0022】
上記材料をヘンシェルミキサーで十分混合し、二軸押出混練機で溶融混練後、冷却した。得られた混練物をハンマーミルで粗粉砕しジェット粉砕機で微粉砕した後、分級して体積平均粒径10μmの着色粒子を得た。
この着色粒子に疎水性シリカ微粒子(H2000:ヘキスト社製)2重量部を加えて混合し着色樹脂微粒子▲1▼を得た。
【0023】
なお、ポリエステル樹脂AおよびBは以下のようにして製造した。
ポリエステル樹脂A
温度計、攪拌器、流下式コンデンサーおよび窒素導入管を取り付けたガラス製4つ口フラスコに、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、イソドデセニル無水コハク酸、テレフタル酸およびフマル酸を重量比82:77:16:32:30に調整して重合開始剤であるジブチル錫オキサイドとともに入れた。これをマントルヒーター中で窒素雰囲気下にて、220℃で攪拌しつつ反応させポリエステル樹脂Aを得た。
【0024】
ポリエステル樹脂B
スチレンおよび2−エチルヘキシルアクリレートを重量比17:3.2に調整し、重合開始剤であるジグミルパーオキサイドとともに滴下ロートに入れた。一方、温度計、攪拌器、流下式コンデンサーおよび窒素導入管を取り付けたガラス製4つ口フラスコに、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、イソドデセニル無水コハク酸、テレフタル酸、無水1,2,4−ベンゼントリカルボン酸およびアクリル酸を重量比42:11:11:11:8:1に調整して重合開始剤であるジブチル錫オキサイドとともに入れた。これをマントルヒーター中で窒素雰囲気下にて、135℃で攪拌しつつ、滴下ロートよりスチレン等を滴下した後、昇温して230℃で反応させポリエステル樹脂Bを得た。
【0025】
(組成2;セメント着色用樹脂粒子▲2▼)
下記材料を使用し、着色樹脂粒子▲1▼と同様にして着色樹脂粒子▲2▼(平均粒径8μm)を得た。
スチレンアクリル樹脂(アルマテックスPA−772H:三井化学社製) 93重量部
カーボンブラック(リーガル330:キャボット社製) 5重量部
【0026】
(組成3;セメント着色用樹脂粒子▲3▼)
下記材料を使用し、着色樹脂粒子▲1▼と同様にして着色樹脂粒子▲3▼(平均粒径10μm)を得た。
ポリエチレン樹脂(高密度ポリエチレン:サンプラテック社製) 93重量部
カーボンブラック(リーガル330:キャボット社製) 5重量部
【0027】
(組成4;セメント着色用樹脂粒子▲4▼)
下記材料を使用し、着色樹脂粒子▲1▼と同様にして着色樹脂粒子▲4▼(平均粒径10μm)を得た。
アクリル樹脂(アルマテックス:三井化学社製) 93重量部
カーボンブラック(リーガル330:キャボット社製) 5重量部
【0028】
(組成5;セメント着色用樹脂粒子▲5▼)
下記材料を使用し、着色樹脂粒子▲1▼と同様にして着色樹脂粒子▲5▼(平均粒径10μm)を得た。
ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bの3:2混合物
(酸価30KOHmg/g) 93重量部
カーボンブラック(モーガルL、キャボット社製) 5重量部
【0029】
市販のセメント(白セメント、一般セメント、漆喰)、着色材、水からなる材料を、スパチュラで混合、混練(約2分)し、泥状になったものを70mm×70mm×20mmの型に入れ、3日間自然乾燥させて評価サンプルを形成した。
【0030】
なお、市販セメントとして、日曜セメント ホワイト(商品名)(家庭化学工業社製)、一般セメントとして、速乾セメント(商品名)(家庭化学工業社製)、漆喰として、インスタントしっくい(商品名)(家庭化学工業社製)を使用した。また市販着色剤として、色粉(家庭化学工業社製)を用いた。
【0031】
(実施例)
なお(「部」は、「重量部を」表す。以下、同様)
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
(評価)
実施例1〜5、比較例1〜3で得られたブロックについて色移り、白華現象について下記記載のように評価した。評価結果を表1に示す。
【0040】
色移り:アームの付いたスタンドを定盤に取り付け、アームの先端に上記評価サンプルを固定した。評価サンプルと定盤との間にコピー用紙を挟み、評価サンプルの上から2kgの荷重を加えながら1cm/秒の速度でコピー用紙を引き抜き、15cmの長さの線を引いた。コピー用紙下面に付着した線を息で吹いて残った線の残量を目視判定した。
○:線の残存付着なし
△:線がわずかに残存付着
×:線が明確に残存付着
【0041】
白華:上記作製方法で得た評価サンプルに、さらに次のように水分を含有させ、乾燥させることにより白華現象を起こし、評価を行なった。白セメントおよび一般セメントについては水中に1時間浸し、漆喰については霧吹きで十分に湿らせ、その後3日間自然乾燥して評価サンプルとした。着色剤を直接混ぜ込んだ評価サンプル(比較例1)を基準に白華状態の目視判定を行なった。
○:白色粉の析出が無い、または明らかに減少
△:白色粉の析出量がやや減少
×:白色粉の析出量の差が認められない
【0042】
【表1】
Claims (4)
- 少なくとも着色剤が樹脂中に分散されている樹脂粒子からなるセメント着色用樹脂粒子。
- 樹脂がポリエステルである、請求項1に記載のセメント着色用樹脂粒子。
- ポリエステルが酸価5〜150を有する、請求項2に記載のセメント着色用樹脂粒子。
- 請求項1〜3いずれかに記載のセメント着色用樹脂粒子を含有するセメント。
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---|---|---|---|
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010083710A (ja) * | 2008-09-30 | 2010-04-15 | Taiheiyo Materials Corp | 高流動モルタル用白華防止剤及び高流動モルタル |
CN101913794A (zh) * | 2010-08-13 | 2010-12-15 | 江苏尼高科技有限公司 | 水泥砂浆抑制泛碱添加剂 |
CN114702261A (zh) * | 2022-04-08 | 2022-07-05 | 新疆越隆达再生资源科技有限公司 | 一种水泥基装饰砂浆的抑碱剂及其制备方法 |
-
2002
- 2002-08-30 JP JP2002253350A patent/JP2004091248A/ja active Pending
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