JP2004090030A - モータシャフトの溶接方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】レーザビームの出射鏡筒1を、ステンレス製のモータシャフト2の回転中心3に対して、2台対象の位置で約45度傾斜した配置とし、モータシャフト2と、モータシャフト2と接合される電解Niメッキされた金属円盤回転体4の境界にて集光し、モータシャフト2の径の半分以下の同一ビーム強度分布のレーザスポット5で、回転させながら金属円盤回転体4を溶接する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータ等の回転体のシャフトと平板との接合において、平板の面ぶれを小さく、かつ強い強度で接合するシャフトの溶接方法と装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
昨今、電気製品の小型化にともない、電子部品や機構部品の小型化が進んでいる。なかでも、携帯電話用やマイクロマシン用のモータは、シャフト径が0.5mm以下のものが多くなり、一方で携帯電話用では、落下による破損防止の為、1000Gの衝撃に耐える溶接強度を確保しつつ、マイクロ化にともなう面ぶれ精度向上が必要となっている。また、パソコンのハードディスクのスピンドルモータでは、記憶容量が飛躍的に増加するにともない、面ぶれ精度もサブミクロンオーダーが要求されている。
【0003】
図6は、従来のモータシャフトの接合方法を示しており、シャフト2を予め垂直に固定しておき、金属円盤回転体4の全面に上方からの力を加えて圧入する方法である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の圧入による方法や、従来のレーザ装置をそのまま使うだけでは、スペックを満足させるのが困難となってきている。また、パソコンのハードディスクのスピンドルモータでは、極端な歩留まり低下を招きつつあった。
【0005】
本発明は上記のような問題点を解決し、高接合強度かつ芯ぶれを極力小さくするばかりでなく、従来困難であったサブミクロンオーダの面ぶれ精度を確保し、さらには、面ぶれ不良品の面ぶれを減らすというモータシャフトの溶接方法及び装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために本発明は、電解ニッケルメッキした円盤のセンタ穴に、ステンレス製のモータシャフトを圧入し、その接合部に前記円盤を回転させながらレーザ照射することによりレーザ溶接をするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
【0008】
図1は、本発明の第1の実施の形態によるモータシャフト溶接装置の上面図と側面図を示しており、レーザビームの出射鏡筒1を、ステンレス製のモータシャフト2の回転中心3に対して、2台対象の位置で約45度傾斜した配置となっている。そして、モータシャフト2と、モータシャフト2と接合される電解Niメッキされた金属円盤回転体4の境界にて集光し、モータシャフト2の径の半分以下の同一ビーム強度分布のレーザスポット5で、回転させながら金属円盤回転体4を溶接している。これによって、シャフト傾きや芯ぶれが小さく、クラックレスなレーザ溶接を行っている。ステンレスのシャフトは剛性が高いのでレーザ照射による熱歪の残留応力が、剛性の低い回転円盤のレーザ照射部に集中し、クラックが入り安い。しかし電解ニッケルメッキを施したSPCC材等の粘りのある鉄系回転円盤との接合は、メッキによる構造欠陥が発生しにくいためクラックが入りにくい。さらにバランスのとれた多点のスポット溶接となるので面ぶれが小さく強度の強い溶接が実現できる。
【0009】
ここで、レーザビーム6は、レーザ発振器17内のランプ7とYAGロッド8、2つの平行なリアミラー9と出力ミラー10から出射されるレーザ光16を、50%反射ミラー11と100%反射ミラー12で分岐し、バリアブルアッテネータ15でパワーバランスを調整して集光レンズ13で集光し、光ファイバ14を介して出射鏡筒1に光伝送して得ている。
【0010】
なお、電解でなく無電解Niメッキの方が寸法精度を確保しやすいが、製法上、溶接欠陥を生じさせるりん等の化学物質が混入するため、溶接部にクラックが発生しやすく、強度が電解Niめっき時の数分の1になるという問題点がある。
【0011】
また、第1の実施形態において、モータシャフトを圧入した回転円盤の接合線より、シャフト中心側にレーザ光センタを照射すると、シャフト材を主に溶かして、回転円盤の溶かし込みを減らすことができ、回転円盤部の熱ひずみが小さくできるので、面ぶれが小さく強度の強い溶接が実現できる。さらに、この工法は、レーザをロングパルスにすることにより、シャフトをまず溶かして、溶けた溶融物を回転円盤にろうづけ材として、回転円盤表面を溶かし、ろうづけ的接合ができるので、シャフトと違う鉄系以外の材質との溶接も可能となる。
【0012】
図2は、本発明の第2の実施形態によるモータシャフト溶接方法及び装置の上面図と側面図を示している。
【0013】
まず、複数のLDバー18とFASTコリメートレンズ19を積層してなるLDスタック20から、長方形断面を有するラインコリメートLDビーム21が出射される。そして、ダウンコリメータ24を構成する凸レンズ22と凹レンズ23の距離を調整することにより、ラインコリメートLDビーム21を、FAST方向がSLOW方向より小さい長方形になるように調整して、端面をリアーミラーコートされたYAGロッド25に対して端面励起を行い、出力ミラー26からLD励起レーザ光29を出射させる。このLD励起レーザ光29を集光する集光レンズ27付の出射鏡筒形状のLD励起レーザ28を2台用いて、モータシャフトの回転中心3に対して対象にそれぞれ同じ45度の角度で傾斜して配置する。モータシャフト2とモータシャフトと接合される金属円盤回転体4の境界に、レーザ光を集光し、回転させながら溶接する。この時集光した長方形スポット30は、シャフト径の半分以下の大きさで、円周方向より径方向が小さく、同一ビーム強度分布になるようLDの電流や光学系を調整している。これによって、接合部近傍のみにレーザ溶接するので、周辺への熱影響が小さく、シャフト傾きや芯ぶれが小さいモータシャフト溶接を実現している。
【0014】
そして、照射ナゲットのアスペクト比を任意に調整できる出射鏡筒形状のLD励起レーザにより、横長レーザスポットに調整すると、周辺への熱影響が小さく、シャフト傾きや芯ぶれが小さいモータシャフト溶接が実現できる。一方、縦長レーザスポットに調整すると、クラック発生しにくいニッケルメッキ円盤とのレーザ接合面積が増え強度が強く、マシンの回転軸ぶれによる裕度が増え、安定したモータシャフト溶接が実現できる。
【0015】
図3は、ダウンコリメータ24を構成する凸レンズ22と凹レンズ23の距離を調整することにより、ラインコリメートLDビーム21の45度照射時はFAST方向:SLOW方向=1:1.41、60度照射時はFAST方向:SLOW方向=1.73:2に調整して、モータシャフト回転時の芯ぶれに対してのマージンが大きく、無用な熱影響部の小さい正方形のナゲット30を得て歪を小さくしている図を示している。
【0016】
このように、照射角度を変えても、ダウンコリメータ24内のレンズ間を調整することにより、容易に正方形のナゲット30が得られる。
【0017】
また、LD励起レーザは電流制御による出力制御が簡単なため、予め金属円盤回転体の芯ぶれ振れ量を測定しておき、レーザ照射した場所はレーザパワーにほぼ比例して収縮することを利用して、2つのLD励起レーザの電流値を回転角に応じてリアルタイムに変化させることにより、芯ぶれ量を減らした溶接を行うことも可能である。
【0018】
図4は、本発明の第3の実施の形態によるモータシャフト溶接方法及び装置の上面図及び側面図で、出射鏡筒1からの出射される回転円錐状レーザビーム6の集光スポット35より小さなシャフト径の場合のシャフト31と回転円盤4の接合を示している。
【0019】
本実施形態では、シャフト径は0.5mm以下で、シャフト31と回転円盤4の垂直度と、相対する出射鏡筒1の光軸33とシャフト31のセンタ軸3が平行かつ軸間距離34が0になるように、位置規制ステージ32で位置規制ないしアライメントした後、ドーナッツ状ないし、円形状ビームのレーザ光を出射鏡筒1より出射してスポット溶接することにより、アライメント固着している。
【0020】
なお、本実施形態では出射鏡筒を用いた例であるが、端面励起型のLD励起レーザを用いると、ファイバレスでしかも励起した通りのビームが得られるため、ワーク形状に応じて臨機応変に照射ビームを変更でき、より好適であるのは自明である。
【0021】
そして、出射鏡筒または、出射鏡筒形状のLD励起レーザにより、出射鏡筒からの集光スポットより小さな、シャフトに対して、軸や傾きをアライメントした状態で瞬間的に回転バランス良く溶接できるので、回転機構も不要で、周辺への熱影響が小さく、シャフト傾きや芯ぶれが小さいモータシャフト溶接が実現できる。
【0022】
図5は、本発明の第4の実施形態によるモータシャフト溶接方法及び装置の側面図を示しており、レーザ照射する前に、予め円盤4を回転させ、面ぶれ測定器で面ぶれを測定しておく。そして、最も面が倒れ落ちた位置が図の右端にくるように円盤を回転する。
【0023】
次に、2つのレーザ鏡筒1の右側1−aは、左側1−bより、ややレーザのパワーを強く設定しておいてシャフトとの界面5a、5bに同時照射する。
【0024】
レーザ溶接の場合、レーザパワーの大きい方が大きく歪んで収縮するので、円盤の面ぶれが減り、また一旦、部分的に接合した後は、多少パワーバランスずれがあっても接合されているため動けないので、後のレーザ照射が面ぶれに対し、悪さをほとんど与えない。
【0025】
なお、面ぶれ補正量とレーザパワーの関係は相関があるので、予め相関をとっておけば、かなり精度良く面ぶれ補正することができる。
【0026】
以上のように、予め面ぶれを測定して置き、2つのレーザのアンバランスを利用して面ぶれを減らすことができるので、従来困難であったサブミクロンオーダの面ぶれ精度を確保し、さらには、面ぶれ不良品の面ぶれを減らすことにより、不良を良品によみがえらせることができる。
【0027】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、高接合強度かつ芯ぶれを極力小さくするばかりでなく、従来困難であったサブミクロンオーダの面ぶれ精度を確保し、さらには、面ぶれ不良品の面ぶれを減らすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の第1の実施形態によるモータシャフト溶接装置を示す上面図
(b)本発明の第1の実施形態によるモータシャフト溶接装置を示す側面図
【図2】(a)本発明の第2の実施形態によるモータシャフト溶接装置を示す上面図
(b)本発明の第2の実施形態によるモータシャフト溶接装置を示す側面図
【図3】接合部にて正方形のナゲットを形成したワークの上面図
【図4】(a)本発明の第3の実施形態によるモータシャフト溶接装置を示す上面図
(b)本発明の第3の実施形態によるモータシャフト溶接装置を示す側面図
【図5】(a)本発明の第4の実施形態によるモータシャフト溶接装置を示す上面図
(b)本発明の第4の実施形態によるモータシャフト溶接装置を示す側面図
【図6】従来のモータシャフト溶接装置の構成図
【符号の説明】
1 出射鏡筒
2 ステンレス製のモータシャフト
3 回転中心
4 金属円盤回転体
5 シャフト径の半分以下の同一ビーム強度分布のレーザスポット
6 レーザビーム
Claims (12)
- 電解ニッケルメッキした円盤のセンタ穴に、ステンレス製のモータシャフトを圧入し、その接合部に前記円盤を回転させながらレーザ照射することによりレーザ溶接をすることを特徴とするモータシャフトの溶接方法。
- レーザの照射は、モータシャフトを圧入した円盤の接合線よりモータシャフト中心側にレーザ光センタにして、モータシャフト材料を主に溶かしてレーザ溶接をすることを特徴とする請求項1に記載のモータシャフトの溶接方法。
- 長方形断面を有する2つのコリメータ光を、モータシャフトの回転中心に対して対称でかつ同じ角度で傾斜させて前記モータシャフトと金属円盤回転体の境界に集光させ、前記モータシャフト径の半分以下の同一ビーム強度分布のレーザスポットで前記金属円盤回転体との溶接部を回転させながら溶接することを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載のモータシャフトの溶接方法。
- コリメータ光をダウンコリメータの凸凹レンズ間の距離を調整して、LDビームを鉛直方向に圧縮した長方形ビームにしてレーザ媒体端面に照射することにより、鉛直方向に圧縮した長方形LD励起レーザビームを得ることを特徴とする請求項3に記載のモータシャフトの溶接方法。
- コリメータ光をダウンコリメータの凸凹レンズ間の距離を調整して、LDビームを水平方向に圧縮した長方形ビームにしてレーザ媒体端面に照射することにより、水平方向に圧縮した長方形LD励起レーザビームを得ることを特徴とする請求項3に記載のモータシャフトの溶接方法。
- 予め金属円盤回転体の面振れ量を測定しておき、前記金属円盤回転体の面が最も下がっている位置を、先に時間差にてレーザ照射することを特徴とする請求項3に記載のモータシャフトの溶接方法。
- 予め測定した金属円盤回転体の面振れ量に応じて、2つのコリメータ光のパワーまたは照射位置をアンバランスにしたことを特徴とする請求項3に記載のモータシャフトの溶接方法。
- コリメータ光は、出射鏡筒型LD励起レーザで生成し、このLD励起レーザの電流値を回転角に応じてリアルタイムに変化させることを特徴とする請求項6に記載のモータシャフト溶接方法。
- モータシャフトを金属円盤回転体に圧入し、その接合部をスポット径が前記モータシャフト径より大であるレーザ光で、前記モータシャフトと前記金属円盤回転体の垂直度をアライメントした後、このモータシャフト中心に対称なドーナッツ状、円形状または四角形状ビームのレーザ光を集光してスポット溶接することによりアライメント固着することを特徴としたモータシャフト溶接方法。
- モータシャフトを位置規正し、円錐形集光レーザビームの回転対象型集光スポットセンタ軸と合せることを特徴とする請求項9に記載のモータシャフト溶接方法。
- 複数のLDバーとFASTコリメートレンズを積層したLDスタックと、このLDスタックからの長方形断面を有するラインコリメート光のビームサイズを小さくするダウンコリメータとを有したLD励起レーザを、前記モータシャフトに照射し、モータシャフトの回転中心に対して対象でかつ同じ角度で傾斜して2台配置したことを特徴とするモータシャフト溶接装置。
- ダウンコリメータが凸凹レンズを有し、この凸凹レンズ間の距離を調整する調整機構を有することを特徴とする請求項11に記載のモータシャフト溶接装置。
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