JP2004084920A - 真空用歯車装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】真空環境下で使用する真空用歯車装置の固定部材と出力部材との間に接触式真空シールを設け、上記真空用歯車装置の接触式真空シールの反真空側で固定部材と出力部材との間に主軸受を設け、上記真空用歯車装置が、クランク部を有するカム軸と、該カム軸によって偏心運動する外歯歯車部材と、該外歯歯車部材の外歯に噛み合う内歯を内周面に形成した内歯歯車部材と、前記外歯歯車部材の両端に位置し、カム軸の両端を支持する支持部材とからなる偏心揺動型真空用歯車装置であって、内歯歯車部材を固定部材とし、支持部材を出力部材としたことによって、真空環境下で使用する搬送用ロボットの駆動装置を小型とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウエハや液晶基板等の被処理体を真空環境下で製造する製造装置の駆動部に使用することができる真空用歯車装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体ウエハや液晶基板等の被処理体をそれぞれの処理室へ搬送するため、処理室と連設される搬送室に搬送ロボットが使用される。半導体ウエハや液晶基板等の被処理体は、パーティクルを嫌う精巧な処理を必要とするため、搬送ロボットは真空環境下で使用される。また、真空環境下にパーティクルが発生することがないように搬送ロボットはメンテナンスが行なわれる。
【0003】
搬送ロボットに使用される従来の駆動装置としては、搬送室の隔壁に軸受ハウジングを設け、軸受ハウジングに回転入力軸を2つの軸受を介して回転自在に設け、回転入力軸は2つの軸受の間に設けられた磁性流体シールによって気密にシールされ、これらによってシールユニットを構成している。さらに、回転入力軸の下端には減速機を介して駆動モータを連結している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、搬送ロボットのその他の駆動装置としては、モータステータとモータロータとの間を金属隔壁によって密封機能を備えた真空駆動装置が広く一般的に使用されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−285780号公報
【特許文献2】
特許登録第2761438号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1のような従来の真空環境下で使用する駆動装置では、真空状態の気密性能を確保するためには磁性流体シールを複数個直列に配置する必要があるため、構造が複雑となり大型化しさらに高価となる。また、磁性流体シールは、特殊な流体を使用するためエンドユーザでのメンテナンスは不可能であり、真空中に磁性流体のミストが常時放出されるため搬送室が汚れるという問題があった。
【0007】
また、特許文献2のようなモータステータとモータロータとの間を金属隔壁によって密封機能を備えた真空駆動装置では、気密性能は良いが外部負荷が作用する出力回動部材を回転支持するための軸受を真空中に配置せざるを得ないため、高価な真空用軸受が必要となり、真空にさらされる面積が大きくなり真空を引くためのランニングコストが高くなって駆動装置が高価となっていた。さらにまた、出力が大きなトルク伝達を必要とする場合は、ダイレクトドライブモータ自体が減速機と比較して大型化する問題があった。
【0008】
本発明は、半導体ウエハや液晶基板等の被処理体を真空環境下で製造する製造装置の駆動部として使用することができ、小型かつ安価でメンテナンス性に優れた真空用歯車装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本件発明の請求項1の真空用歯車装置によれば、真空環境下で使用する真空用歯車装置の固定部材と出力部材との間に接触式真空シールを設けたことを特徴とする。このような構成にすることにより、真空環境下で使用する駆動装置を小型とすることができる。また、真空シールは真空用歯車装置の固定部材と出力部材の芯にならって配置できるため、従来のシールユニットと減速機との芯出し作業が不要になりメンテナンス性が向上する。
【0010】
さらに、本発明の請求項2の真空用歯車装置によれば、上記真空用歯車装置の接触式真空シールの反真空側で固定部材と出力部材との間に主軸受を設けたことを特徴とする。このような構成にすることにより、真空用歯車装置内の大容量、高剛性な主軸受により、大きな外部荷重を容易に支持することができる。
【0011】
また、本発明の請求項3の真空用歯車装置によれば、上記真空用歯車装置が、クランク部を有するカム軸と、該カム軸によって偏心運動する外歯歯車部材と、該外歯歯車部材の外歯に噛み合う内歯を内周面に形成した内歯歯車部材と、前記外歯歯車部材の両端に位置し、カム軸の両端を支持する支持部材とからなる偏心揺動型真空用歯車装置であって、内歯歯車部材を固定部材とし、支持部材を出力部材としたことを特徴とする。このような構成にすることにより、カム軸の両端が支持部材に支持されていることにより、ねじり剛性の高い小型な駆動装置とすることができる。
【0012】
さらに、本発明の請求項4の真空用歯車装置によれば、上記真空用歯車装置が、楕円形状を有する波動発生器と、該波動発生器によって可撓変形する可撓性外歯歯車部材と、該外歯歯車部材の外歯に噛み合う内歯を内周面に形成した剛性の内歯歯車部材とからなる撓み噛合式減速機であることを特徴とする。このような構成にすることにより、部品点数の少ない撓み噛合式減速機を用いることによって、コンパクトな駆動装置とすることができる。
【0013】
また、本発明の請求項5の真空用歯車装置によれば、少なくとも2つの駆動モータと少なくとも2つの減速機とを有し真空環境下で使用する真空用駆動装置であって、一方の減速機の出力回転部に連結される中空の第1出力伝達軸と前一方の減速機の固定部に取り付けられるハウジングとの間に、又は/及び前記第1出力伝達軸と他方の減速機に取り付けられ前記第1出力伝達軸の中空内に設けられた第2出力伝達軸との間に、接触式真空シールを設けたことを特徴とする。このような構成にすることにより、出力回転軸とハウジングとの間に接触式真空シールを設けたことによって、従来の磁性流体シールを用いた装置より、小型で安価とすることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1実施形態について図面に基づいて説明する。
図1において、1は半導体ウエハや液晶基板等の被処理体を真空環境下で製造する製造装置の駆動装置として使用する真空用歯車装置であり、この真空用歯車装置1は搬送室等の真空容器の隔壁2にOリングなどのシール手段を介して取り付けられる。真空用歯車装置1の入力側には駆動モータ3が設けられており、駆動モータ3の出力回転が真空用歯車装置1を介して出力されるようになっている。ここでは、駆動モータ3は大気環境下に置かれている。
【0015】
真空用歯車装置1は、クランク部11a,11bを有するカム軸11と、クランク部11a,11bを収容する孔を備え、カム軸11の回転によって偏心運動する2枚の外歯歯車部材12と、外歯歯車部材12の外周面に形成された外歯に噛み合い、外歯の歯数より若干歯数の多い内歯を内周面に形成した内歯歯車部材13と、外歯歯車部材12の両側端に位置し、カム軸11の両端をころ軸受を介して回転自在に支持する支持部材14とからなる偏心揺動型真空用歯車装置であり、大気環境下で真空環境側に配設されている。
【0016】
駆動モータ3の出力回転は、駆動モータ3の出力回転軸に取り付けた入力歯車15を通して、入力歯車15より歯数の多い伝達歯車16に伝えられ、伝達歯車16に取り付けられたカム軸11を減速回転させる。
【0017】
カム軸11は入力歯車15の外周部に複数個(本実施例では、3個)等配的に配置されている。クランク部11a,11bはそれぞれが180度の偏心位相を持っており、カム軸11に一体的に形成されている。クランク部11a,11bにはニードル軸受が取り付けられ、外歯歯車部材12の孔に挿入される。外歯歯車部材12の外周にはエピトロコイド歯形が形成されており、内歯歯車部材13の内周で等配的に形成された複数の半円状の溝に保持されるピン(内歯)に噛み合う。
【0018】
内歯歯車部材13の内部には支持部材14が位置し、支持部材14は、外歯歯車部材12のカム軸11用孔の間に形成された貫通孔に遊嵌される柱部17と、柱部17の両端に一対の円板18,19とを有し、カム軸11の両端を回転自在に支持する。一対の円板18,19の外周には、一対の主軸受20が設けられ内歯歯車部材13に対して支持部材14を回転支持するようになっている。主軸受20はアンギュラ玉軸受であり、予圧を与えることによって剛性を増すようになっている。また、内歯歯車部材13と一方の円板18の間にはオイルシール21が設けられ、真空用歯車装置1内の潤滑剤を封止するようになっている。
【0019】
22は内歯歯車部材13と一体的に結合されたハウジングであり、固定部材となっている。また、23は出力伝達軸であり、アダプタ24を介して支持部材14に一体的に取り付き、出力部材となって真空環境下で操作される搬送ロボットのアーム等が取り付く取り付け部を有している。
【0020】
ハウジング22と出力伝達軸23との間には、真空シール30が設けられている。真空シール30は、出力伝達軸23の外周に接触する主リップと、主リップに接触力を付与する弾性部材と、嵌め合い部を有する接触式真空シールである。真空シール30は、嵌め合い部がケーシング31に保持され、真空シール30の取り付け、取り外しのメンテナンスが容易に行なえるようになっている。また、ハウジング22の開口端部には、ラビリンスシール機構32が設けられている。
【0021】
出力伝達軸23の真空シール30の主リップとの接触面には、特殊処理が施される。その接触面の特殊処理は、算術平均粗さRaを0.1μm以下となし、さらに、その硬度をHV650以上としている。また、算術平均粗さRaを0.1μm以下を得るために、接触面に硬化処理を施してもよい。上の説明において、接触面の硬度をHV650以上としたが、真空度によっては必ずしもこの硬さを必要としない。
【0022】
図2は本発明の第2実施形態を示す図である。前述の第1実施形態においては、駆動モータ3を真空用歯車装置1の回動中心に配置したが、この実施形態においては、真空用歯車装置100の回動中心から駆動モータ130をずらし、真空用歯車装置100の回動中心部に中空空間50を形成したものである。ここでは、中空空間50は大気空間に置かれている。真空用歯車装置100の構造については第1実施形態の真空用歯車装置1と共通する部分は説明を省略する。駆動モータ130の出力回転は、駆動モータ130の出力回転軸に取り付けた入力歯車115を通して、真空用歯車装置100の回動中心部に設けられた中間歯車133を介して伝達歯車116に伝えられ、伝達歯車116に取り付けられたカム軸111を減速回転させる。
【0023】
中間歯車133は、一方が他方の円板119に軸受を介して保持され、他方が駆動モータ取り付けフランジ134に軸受を介して保持されている。また、真空用歯車装置100の中央部には、一端が一方の円板118に固定され、他端が駆動モータ取り付けフランジ134との間で真空用歯車装置100内の潤滑剤を封止するオイルシール136を備えた筒部135を有している。
【0024】
台123がボルト124で出力伝達軸23に取り付けられている。台123は真空環境及び大気環境を不連通に区画する壁部125を形成している。台123は出力伝達軸23の一部を構成している。
搬送ロボットのアーム126がボルト127で台123の壁部125に取り付けられている。台123の壁部125をなくし、台123の端部に直接、アーム126を取り付けることにより、真空環境及び大気環境を不連通に区画するようにしても良い。また、台123の壁部125をなくし、台123の端部に直接、真空環境及び大気環境を不連通に区画した搬送ロボット機構を取り付けることにより、真空環境及び大気環境を不連通に区画するようにしても良い。即ち、大気環境状態の中空空間50と真空環境状態とを不連通に区画する、台123の端部の閉鎖方法は種々考えられる。
【0025】
真空用歯車装置100の回動中心部に中空空間50を形成したことによって、搬送ロボット機構のための配線や配管等を通すことが可能となる。真空用歯車装置100は大気環境側に配設されている。
【0026】
図3は本発明の第3実施形態を示す図である。この実施形態においては、一方の円板218と内歯歯車部材213との間に真空シール230を設けている。真空用歯車装置200の構造については第1実施形態の真空用歯車装置1と共通する部分は説明を省略する。一方の円板218の真空シールの主リップとの接触面には、特殊処理が施される。その接触面の特殊処理は、算術平均粗さRaを0.1μm以下となし、さらに、その硬度をHV650以上としている。また、算術平均粗さRaを0.1μm以下の面粗さを得るために、接触面に硬化処理を施してもよい。上の説明において、接触面の硬度をHV650以上としたが、真空度によっては必ずしもこの硬さを必要としない。
【0027】
一方の円板218と内歯歯車部材213との間に真空シールを設けたことによって、真空用歯車装置200をさらに小型にすることができる。
【0028】
以上のように本発明を実施形態により説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲で各種の変形が可能である。例えば、以上の実施形態においては、中心の外周部に複数のカム軸を有した真空用歯車装置について説明したが、中心に1つのカム軸を有した真空用歯車装置や、以下に示す一般的に撓み噛合式減速機と呼ばれる真空用歯車装置についても適用可能である。
【0029】
偏心揺動型真空用歯車装置を用いた駆動装置は、例えば、液晶基板のような重量物を搬送するのに最適であり、以下に示す撓み噛合式減速機を用いた駆動装置は、撓み噛合式減速機が楕円形状を有する波動発生器と、該波動発生器によって可撓変形する可撓性外歯歯車部材と、該外歯歯車部材の外歯に噛み合う内歯を内周面に形成した剛性の内歯歯車部材との3つの部品によって非常にコンパクトに構成されているので、1枚の半導体ウエハのような軽量物を搬送するのに適している。
また、1枚の半導体ウエハのような軽量物を搬送する場合、負荷トルクは小さいため、真空用歯車装置の出力部材の伝達軸部を小径にすることができるので、真空シール径も小さくできる。
さらに、シール部の接触負荷を小さくできるため、小型の減速機を選定することができる。
以下に、撓み噛合式減速機を用いた例を図4〜図9に示す。
【0030】
図4は本発明の第4実施形態を示す図である。この真空用歯車装置300は、前述の第1実施形態の偏心揺動型真空用歯車装置を撓み噛合式減速機に変えたものである。303は、駆動モータであり、駆動モータ303の出力回転軸の先端には、楕円形状を有する波動発生器310が取り付けられる。波動発生器310の外周には、波動発生器310によって楕円形状に可撓変形される可撓性外歯歯車部材311が波動発生器310を覆うように嵌め込まれている。外歯歯車部材311は、外歯312とボス部313とを有している。また、外歯歯車部材311の外周には、外歯312に噛み合う内歯315を内周面に形成した剛性の内歯歯車部材314が配置されている。
内歯歯車部材314と外歯歯車部材311のボス部313との間には、主軸受320が設けられ内歯歯車部材314に対して外歯歯車部材311を回転支持するようになっている。また、内歯歯車部材314とボス部との間にはオイルシール321が設けられ、真空用歯車装置300内の潤滑剤を封止するようになっている。
322は内歯歯車部材314と一体的に結合されたハウジングであり、固定部材となっている。また、323は出力伝達軸であり、ボス部313に一体的に取り付き、出力部材となっている。
ハウジング322と出力伝達軸323との間には、真空シール330が設けられている。真空シール330は、出力伝達軸323の外周に接触する主リップと、主リップに接触力を付与する弾性部材と、嵌め合い部を有する接触式真空シールである。真空シール330は、嵌め合い部がケーシング331に保持され、真空シール330の取り付け、取り外しのメンテナンスが容易に行なえるようになっている。また、ハウジング322の開口端部には、ラビリンスシール機構332が設けられている。
この真空用歯車装置300の使用環境や、出力伝達軸323の真空シール330の主リップとの接触面の処理は、第1実施形態と同様である。
【0031】
図5は本発明の第5実施形態を示す図である。この真空用歯車装置400は、前述の第2実施形態の偏心揺動型真空用歯車装置を撓み噛合式減速機に変えさらに、中空駆動モータ403を用いたものである。駆動モータ403の出力回転軸の先端には、楕円形状を有する中空波動発生器410が取り付けられる。波動発生器410の外周には、波動発生器410によって楕円形状に可撓変形される可撓性外歯歯車部材411が波動発生器410を覆うように嵌め込まれている。外歯歯車部材411は、外歯412とボス部413とを有している。また、外歯歯車部材411の外歯412の外周には、外歯412に噛み合う内歯415を内周面に形成した剛性の内歯歯車部材414が配置されている。
内歯歯車部材414と外歯歯車部材411のボス部413との間には、主軸受420が設けられボス部413に対して内歯歯車部材414を回転支持するようになっている。また、ボス部413と一体的に結合された主軸受420の外輪部材と内歯歯車部材414と一体的に結合された内輪部材との間にはオイルシール421が設けられ、真空用歯車装置400内の潤滑剤を封止するようになっている。
422はボス部413と一体的に結合されたハウジングであり、固定部材となっている。また、423は出力伝達軸であり、内歯歯車部材414に一体的に取り付き、出力部材となっている。
中空波動発生器410は、一方が出力伝達軸423の内部に軸受を介して保持され、他方が駆動モータ取り付けフランジ434に軸受を介して保持されている。また、中空波動発生器410の両端部には、真空用歯車装置400内の潤滑油を封止するオイルシール436,437を有している。
この真空用歯車装置400の使用環境や、出力伝達軸423の真空シール430の主リップとの接触面の処理、および中空空間450の形成は、第2実施形態と同様である。
【0032】
図6は本発明の第6実施形態を示す図である。この真空用歯車装置500は、前述の第3実施形態の偏心揺動型真空用歯車装置を撓み噛合式減速機に変えたものである。503は、駆動モータであり、駆動モータ503の出力回転軸の先端には、楕円形状を有する波動発生器510が取り付けられる。波動発生器510の外周には、波動発生器510によって楕円形状に可撓変形される可撓性外歯歯車部材511が波動発生器510を覆うように嵌め込まれている。外歯歯車部材511は、外歯512とボス部513とを有している。また、外歯歯車部材511の外周には、外歯512に噛み合う内歯515を内周面に形成した剛性の内歯歯車部材514が配置されている。
内歯歯車部材514と外歯歯車部材511のボス部513との間には、主軸受520が設けられ内歯歯車部材514に対して外歯歯車部材511を回転支持するようになっている。また、内歯歯車部材514とボス部513との間には真空シール530を設けている。真空シール530は、真空環境と大気環境とを区画するとともに、真空用歯車装置500内の潤滑剤を封止する。
この真空用歯車装置500の使用環境や、ボス部(出力部材)513の真空シール530の主リップとの接触面の処理は、第3実施形態と同様である。
【0033】
図7は本発明の第7実施形態を示す図である。この真空用歯車装置600は、搬送室等の真空容器の隔壁に取り付けられるものである。真空用歯車装置600の入力側には駆動モータ603が設けられており、駆動モータ603の出力回転が減速機を介して出力されるようになっている。ここでは、減速機601は楕円形状を有する波動発生器610と、波動発生器610によって可撓変形する可撓性外歯歯車部材611と、外歯歯車部材611の外歯に噛み合う内歯を内周面に形成した剛性の内歯歯車部材614とからなる撓み噛合式減速機である。
駆動モータ603と減速機601は同軸上に離れて配置され、さらに同軸上に離れて減速機601の出力回転部に取り付けられた出力伝達軸623と減速機の固定部に取り付けられたハウジング622との間にアンギュラ玉軸受620および真空シール630が配列されている。このように配列したことによって、装置全体をより小径に構成することができる。また、アンギュラ玉軸受620を減速機601と同軸上に離れて配置することによって、径は小さいものの球径を大きくする等の外部荷重に対する剛性のある軸受を使用することができる。
この真空用歯車装置600の使用環境や、出力伝達軸623の真空シール630の主リップとの接触面の処理は、第1実施形態と同様である。
【0034】
図8は本発明の第8実施形態を示す図である。この真空用歯車装置700は、前述の第7実施形態の1つの出力伝達軸を2つの同軸出力伝達軸に変えたものである。駆動モータ703と減速機701は同軸上に離れて配置され、さらに同軸上にアンギュラ玉軸受720および真空シール730が配列され、駆動モータ703によって中実の出力伝達軸723が駆動される。また、減速機701とアンギュラ玉軸受との間には、もう1つの中空駆動モータ753とその中空駆動モータ753と接続されるもう1つの減速機751が配置されている。もう1つの減速機751の出力回転部には、中空の出力伝達軸773が取り付けられ、中実の出力伝達軸723とハウジング722との間に配置されている。アンギュラ玉軸受720と真空シール730は、中実の出力伝達軸723と中空の出力伝達軸773との間に配置され、さらに、他のアンギュラ玉軸受770と真空シール780が中空の出力伝達軸773とハウジング722との間に配置される。
この真空用歯車装置700の使用環境や、出力伝達軸723,773の真空シール730,780の主リップとの接触面の処理は、第1実施形態と同様である。
【0035】
図9は本発明の第9実施形態を示す図である。この真空用歯車装置800は、前述の第8実施形態の2組の駆動モータおよび減速機を同一平面上に平行に配置したものである。第8実施形態と異なる部分について説明する。一方の減速機801の出力回転部には小プーリ841が形成され、中実の出力伝達軸823の一端に形成された大プーリ842とベルト843を介して連結されている。また、他方の減速機851の出力回転部には小プーリ891が形成され、中空の出力伝達軸873の一端に形成された大プーリ892とベルト893を介して連結されている。このように、2組の駆動モータおよび減速機を平行に配置したことにより、偏平な駆動装置とすることができる。
【0036】
以上のように本発明を実施形態により説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲で各種の変形が可能である。例えば、以上の実施形態においては、中心の外周部に複数のカム軸を有した真空用歯車装置について説明したが、中心に1つのカム軸を有した真空用歯車装置についても適用可能である。また、出力伝達軸の形態についても、2軸以上あってもよいのは当然であり、さらに、軸の配置、例えば同軸、平行軸、直角軸についても限定するものではない。
【0037】
【発明の効果】
本発明の請求項1によれば、真空環境下で使用する真空用歯車装置の固定部材と出力部材との間に接触式真空シールを設けたことによって、真空環境下で使用する駆動装置を小型とすることができる。また、真空シールは真空用歯車装置の固定部材と出力部材の芯にならって配置できるため、従来のシールユニットと減速機との芯出し作業が不要になりメンテナンス性が向上する。
【0038】
本発明の請求項2によれば、真空用歯車装置内の大容量、高剛性な主軸受により、大きな外部荷重を容易に支持することができる。
【0039】
本発明の請求項3によれば、カム軸の両端が支持部材に支持されていることにより、ねじり剛性の高い小型な駆動装置とすることができる。
【0040】
本発明の請求項4の真空用歯車装置によれば、部品点数の少ない撓み噛合式減速機を用いることによって、コンパクトな駆動装置とすることができる。
【0041】
本発明の請求項5の真空用歯車装置によれば、出力回転軸とハウジングとの間に接触式真空シールを設けたことによって、従来の磁性流体シールを用いた装置より、小型で安価とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態の側断面図である。
【図2】本発明の第二実施形態の側断面図である。
【図3】本発明の第三実施形態の側断面図である。
【図4】本発明の第四実施形態の側断面図である。
【図5】本発明の第五実施形態の側断面図である。
【図6】本発明の第六実施形態の側断面図である。
【図7】本発明の第七実施形態の側断面図である。
【図8】本発明の第八実施形態の側断面図である。
【図9】本発明の第九実施形態の側断面図である。
【符号の説明】
1、100、200、300、400、500、600、700、800・・・真空用歯車装置
11、111 ・・・・カム軸
12 ・・・・・・・外歯歯車部材
13、213 ・・・・内歯歯車部材(固定部材)
14 ・・・・・・・支持部材(出力部材)
20、320、420、520 ・・・・・・・主軸受
620、720 ・・・・・・・アンギュラ玉軸受
30、230、330、430、530、630、730 ・・・・真空シール
311、411、511、611・・・・可撓性外歯歯車部材
314、414、514、614 ・・・・内歯歯車部材
Claims (5)
- 真空環境下で使用する真空用歯車装置であって、該真空用歯車装置の固定部材と出力部材との間に接触式真空シールを設けたことを特徴とする真空用歯車装置。
- 上記歯車装置の接触式真空シールの反真空側で固定部材と出力部材との間に主軸受を設けたことを特徴とする請求項1記載の真空用歯車装置。
- 上記歯車装置が、クランク部を有するカム軸と、該カム軸によって偏心運動する外歯歯車部材と、該外歯歯車部材の外歯に噛み合う内歯を内周面に形成した内歯歯車部材と、前記外歯歯車部材の両端に位置し、カム軸の両端を支持する支持部材とからなる偏心揺動型歯車装置であって、内歯歯車部材を固定部材とし、支持部材を出力部材としたことを特徴とする請求項1または2記載の真空用歯車装置。
- 上記真空用歯車装置が、楕円形状を有する波動発生器と、該波動発生器によって可撓変形する可撓性外歯歯車部材と、該外歯歯車部材の外歯に噛み合う内歯を内周面に形成した剛性の内歯歯車部材とからなる撓み噛合式減速機であることを特徴とする請求項1または2記載の真空用歯車装置。
- 少なくとも2つの駆動モータと少なくとも2つの減速機とを有し真空環境下で使用する真空用駆動装置であって、一方の減速機の出力回転部に連結される中空の第1出力伝達軸と前一方の減速機の固定部に取り付けられるハウジングとの間に、又は/及び前記第1出力伝達軸と他方の減速機に取り付けられ前記第1出力伝達軸の中空内に設けられた第2出力伝達軸との間に、接触式真空シールを設けたことを特徴とする真空用歯車装置。
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