JP2004084415A - 緑化構造及びその施工方法 - Google Patents

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Abstract

【目的】緑化用定着板等を採用する場合においても植物に適切な水分補給を行う。
【構成】本発明に係る緑化構造31は、緑化すべき基盤である岩盤11の表面に取り付けられた緑化用保水シート1と、該緑化用保水シートの上に積層された緑化用定着構造12と、該緑化用定着構造の上に積層された植生基材15とからなる。緑化用保水シート1は、透水性袋体に保水剤を封入してなり、該保水剤は、耐アルカリ性及び吸放湿性を有するとともに、カルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水できる材料で構成してあり、具体的には、NVA(N−ビニルアセトアミド)を主モノマーとして重合されてなるPNVA(ポリ−N−ビニルアセトアミド)で構成することができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、河川堤防や崖地等の法面をはじめ、建築物における屋上緑化や壁面緑化といったあらゆる状況で緑化を図るために使用される緑化構造及びその施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
造成地の盛土や切土、道路の盛土、河川堤防等に見られる傾斜地においては、適当な手段でこれを保護することにより、法面の侵食、剥離、落石等を未然に防止しなければならない。
【0003】
法面保護の手段としては、コンクリートやモルタルの吹付けがその典型的な方法として知られているが、最近では、環境面に配慮すべく、緑化による法面保護を採用することが多くなってきた。
【0004】
法面を緑化によって保護する方法としては、植物の種子、肥料、水、チップ材、粘着剤等を攪拌混合した水性スラリーからなる植生基材を法面に吹き付けるのが一般的であり、かかる方法によれば、法面への吹付け後、一定期間後に発芽した植物の根が傾斜地盤内に拡がって該傾斜地盤を安定させることが可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、植物が生育するためには、その生育に適した水分補給が必要であり、かかる水分補給が適切でないと、該傾斜地盤を緑化することは難しくなる。
【0006】
ところが、晴天が続くような地域や季節、あるいは植生基材の背面に法面コンクリートが存在するため、地盤からの水分補給が期待できないような状況では、植物に対して十分な水分補給がなされず、そのために法面緑化を施しても植樹した樹木が生育せず枯れてしまうことがあるという問題を生じていた。
【0007】
また、本出願人は、多数の木片を該木片同士に間隙が生じるようにセメント含有物質で相互に固結させてなる緑化用定着板及び定着構造を別途開発した。そして、かかる緑化用定着板及び定着構造の上に積層された植生基材から伸張する植物の根を木片同士の間隙に絡ませることによって、急傾斜地や吹付けコンクリートが存在する場所であっても、植物をしっかりと定着させて緑化を図ることに成功したが、かかる緑化用定着板又は定着構造からは、施工初期においてアルカリ成分が溶出することがあり、かかる場合、たとえ降雨や地盤からの湧水によって水分補給がなされたとしても、該水にはカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分が含まれることとなり、通常の保水剤あるいは保水剤を含んだ保水シート(特開平7−224430号公報参照)では、このようなアルカリ成分を含んだ水を十分に保水することができないという問題も生じていた。
【0008】
このような問題は、法面緑化に代表される土木分野に採用される場合のみならず、屋上緑化等の建築分野で採用される場合についても同様に生じる。
【0009】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、上述した緑化用定着板又は定着構造を採用する場合においても植物に対して適切な水分補給を行うことが可能な緑化構造及びその施工方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る緑化構造は請求項1に記載したように、緑化すべき基盤の表面に取り付けられた緑化用保水シートと、該緑化用保水シートの上に積層された緑化用定着構造と、該緑化用定着構造の上に積層された植生基材とからなり、前記緑化用保水シートを、耐アルカリ性及び吸放湿性を有しかつカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水可能な保水剤を透水性袋体に封入し又は所定の透水性シートに被覆して構成するとともに、前記緑化用定着構造を、セメント含有物質と多数の木片とを含む混練物を吹き付けることで該木片同士の間に間隙が形成された状態にて前記木片が相互に固結されるように構成してなるものである。
【0011】
また、本発明に係る緑化構造は請求項2に記載したように、緑化すべき基盤の表面に取り付けられた緑化用保水シートと、該緑化用保水シートの上に積層された緑化用定着板と、該緑化用定着板の上に積層された植生基材とからなり、前記緑化用保水シートを、耐アルカリ性及び吸放湿性を有しかつカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水可能な保水剤を透水性袋体に封入し又は所定の透水性シートに被覆して構成するとともに、前記緑化用定着板を、多数の木片を該木片同士に間隙が生じるようにセメント含有物質で相互に固結させて構成したものである。
【0012】
また、本発明に係る緑化構造は請求項3に記載したように、緑化すべき基盤の表面に取り付けられた緑化用定着板と、該緑化用定着板の上に積層された緑化用保水シートと、該緑化用保水シートの上に積層された植生基材とからなり、前記緑化用定着板を、多数の木片を該木片同士に間隙が生じるようにセメント含有物質で相互に固結させて構成するとともに、前記緑化用保水シートを、耐アルカリ性及び吸放湿性を有しかつカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水可能な保水剤を透水性袋体に封入し又は所定の透水性シートに被覆して構成したものである。
【0013】
また、本発明に係る緑化構造は、前記透水性袋体を、紙、パルプ等の生分解性素材で形成したものである。
【0014】
また、本発明に係る緑化構造は、前記透水性袋体を、周縁部にて相互に接着されてなる二枚のシート体で構成したものである。
【0015】
また、本発明に係る緑化構造は、前記保水剤を、NVA(N−ビニルアセトアミド)を主モノマーとして重合されてなるPNVA(ポリ−N−ビニルアセトアミド)としたものである。
【0016】
また、本発明に係る緑化構造の施工方法は請求項7に記載したように、緑化すべき基盤の表面に緑化用保水シートを取り付け、該緑化用保水シートの上にセメント含有物質と多数の木片とを含む混練物を吹き付けることで該木片同士の間に間隙が形成された状態にて前記木片が相互に固結されてなる緑化用定着構造を形成し、該緑化用定着構造の上に植生基材を吹き付ける緑化構造の施工方法であって、前記緑化用保水シートを、耐アルカリ性及び吸放湿性を有しかつカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水可能な保水剤を透水性袋体に封入し又は透水性シートに被覆して構成したものである。
【0017】
また、本発明に係る緑化構造の施工方法は請求項8に記載したように、緑化すべき基盤の表面に緑化用保水シートを取り付け、該緑化用保水シートの上に緑化用定着板を積層し、該緑化用定着板の上に植生基材を吹き付ける緑化構造の施工方法であって、前記緑化用保水シートを、耐アルカリ性及び吸放湿性を有しかつカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水可能な保水剤を透水性袋体に封入し又は透水性シートに被覆して構成するとともに、前記緑化用定着板を、多数の木片を該木片同士に間隙が生じるようにセメント含有物質で相互に固結させて構成したものである。
【0018】
また、本発明に係る緑化構造の施工方法は請求項9に記載したように、緑化すべき基盤の表面に緑化用定着板を取り付け、該緑化用定着板の上に緑化用保水シートを積層し、該緑化用保水シートの上に植生基材を吹き付ける緑化構造の施工方法であって、前記緑化用定着板を、多数の木片を該木片同士に間隙が生じるようにセメント含有物質で相互に固結させて構成するとともに、前記緑化用保水シートを、耐アルカリ性及び吸放湿性を有しかつカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水可能な保水剤を透水性袋体に封入し又は透水性シートに被覆して構成したものである。
【0019】
また、本発明に係る緑化構造の施工方法は、前記透水性袋体を、紙、パルプ等の生分解性素材で形成したものである。
【0020】
また、本発明に係る緑化構造の施工方法は、前記透水性袋体を、周縁部にて相互に接着されてなる二枚のシート体で構成したものである。
【0021】
また、本発明に係る緑化構造の施工方法は、前記保水剤を、NVA(N−ビニルアセトアミド)を主モノマーとして重合されてなるPNVA(ポリ−N−ビニルアセトアミド)としたものである。
【0022】
本発明に係る緑化構造においては、緑化用保水シート、緑化用定着構造又は緑化用定着板、及び植生基材から概ね構成してあり、植生基材から発芽発根した植物は、緑化用定着構造又は緑化用定着板内に形成されている木片同士の間隙にその根を伸張させながら、該木片に絡みつかせることでしっかりと自立し、背後に既設の吹付けコンクリートが存在したり、法面の勾配が急な場合であっても、植物を成長させて緑化を図ることができる。
【0023】
また、降雨や地盤からの湧水あるいは人工的な散水があった場合、かかる降雨や湧水あるいは散水による水は、植物の補給水となる反面、緑化用定着板又は緑化用定着構造からの溶出成分により、アルカリを呈する水となるが、本発明に係る緑化構造は、耐アルカリ性でかつカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水可能な保水剤を用いて緑化用保水シートを構成してあるため、上述した補給水は、該緑化用保水シートに確実に保水される。また、本発明に係る保水剤は、吸放湿性をも有するため、該保水剤にいったん保水された水は、周囲の湿度低下に伴って放湿され、植生基材に適宜供給される。
【0024】
なお、緑化用定着板又は緑化用定着構造からは、上述したようにセメント成分と水との水和反応で生じた水酸化カルシウムが主としてアルカリ成分となり、外部に溶出するが、かかるアルカリ成分の溶出による補給水のpH上昇は、植物の生育を阻害するほど大きくなることはない。
【0025】
本発明に係る緑化構造及びその施工方法は、植生基材が最上層にくることは共通しているが、緑化用定着構造又は緑化用定着板のいずれを構成要件とするか、及びこれらと緑化用保水シートとのいずれが上層、下層になるかで大きく3つの発明に分かれる。
【0026】
すなわち、第1の発明は、緑化すべき基盤の表面に緑化用保水シートを取り付け、その上に緑化用定着構造を積層し、第2の発明は、緑化すべき基盤の表面に緑化用保水シートを取り付け、その上に緑化用定着板を積層し、第3の発明は、緑化すべき基盤の表面に緑化用定着板を取り付け、その上に緑化用保水シートを積層するものである。
【0027】
ここで、第1及び第2の発明においては、緑化すべき基盤の表面に緑化用保水シートを取り付けるため、保水領域が最下層となり、保水された水が蒸散するのを最優先したい場合に適する。
【0028】
一方、第3の発明においては、緑化用定着板は上述したように、植物の根を定着させてその自立を図る機能を有するが、これに加えて木片同士の間隙を介した排水機能をも有するため、背後の地盤から突発的な湧水がある場合や、背後の地盤が酸性土壌であるためにpHが小さな水が湧水する場合に適する。
【0029】
緑化用保水シートは、耐アルカリ性及び吸放湿性を有しかつカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水可能な材料を保水剤とし、かかる保水剤を透水性袋体に封入し、又は所定の透水性シートに被覆して構成する。
【0030】
透水性袋体は、保水剤を封入できる中空内部空間が形成されていれば、その断面の大きさや形状あるいは全体の厚みは任意であり、例えば扁平状袋体とすることができるが、紙、パルプ等の透水性を有する生分解性素材で形成した場合においては、保水剤が封入された透水性袋体は、植物の生長とともに微生物によって二酸化炭素と水に徐々に分解され、環境上何ら問題とはならない。
【0031】
かかる透水性袋体は、例えば周縁部にて相互に接着されてなる二枚のシート体で構成することができる。この場合、接着とは、いわゆる接着剤を使用した狭義の接着を意味するものではなく、互いに当接された状態にて接合されるあらゆる形態を包摂するものとし、例えば、接着剤を使用せずとも必要に応じて加熱しながら圧着する方法でもよい。
【0032】
一方、所定の透水性シートに保水剤を被覆して緑化用保水シートを構成する場合においては、例えば透水性シートを織布とし、これに液体状の保水剤を被覆したものを使用することができる。
【0033】
保水剤は上述したように、耐アルカリ性及び吸放湿性を有しかつカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水可能な材料で構成するのであれば、その材料については任意であるが、例えば、NVA(N−ビニルアセトアミド)を主モノマーとして重合されてなるPNVA(ポリ−N−ビニルアセトアミド)を用いることが考えられる。
【0034】
PNVAは、NVA(N−ビニルアセトアミド)をラジカル重合して得られる吸液性ポリマーであり、例えば昭和電工株式会社から提供されているPNVA NAグレードのうち、NA−010、NA−150等を採用することができる。
【0035】
NA−010、NA−150は粉体であり、広範囲のpH領域で安定した吸水性能を示すとともに、強アルカリ環境下でも吸水性能が低下せず、しかも高湿度環境下では吸湿し、低湿度環境下では放湿するので、本発明に係る保水剤に適している。
【0036】
緑化用定着構造は、セメント含有物質と多数の木片とを含む混練物を吹き付けることで該木片同士の間に間隙が形成された状態にて前記木片が相互に固結されるように構成し、緑化用定着板は、多数の木片を該木片同士に間隙が生じるようにセメント含有物質で相互に固結させて構成すればよい。
【0037】
セメント含有物質とは、具体的には、セメントと水との水和反応による固結作用が得られるものであれば、その形態は任意であり、セメント及び水とからなるセメントミルク(セメントペースト)、セメント、水及び細骨材からなるフレッシュモルタルあるいはセメント、水、細骨材及び粗骨材からなるフレッシュコンクリートのいずれでもかまわない。緑化用定着構造の場合、セメントの凝結硬化を促進すべく、例えばリグニンスルホン酸及びロダン化合物を主成分とする無塩化形の混和剤を添加することも任意である。
【0038】
なお、木片については微生物による分解作用を受けることとなるため、緑化用定着板あるいは緑化用定着構造は、経年的に分解されることとなるが、その上に吹き付けられた植生基材の樹木は、若齢期においては、その根を木片に絡ませて定着を図ることにより自らを自立させることが可能であり、成長期においては、緑化用定着板あるいは緑化用定着構造が分解されたとしても、背面側の基盤に根を伸張させることにより、通常の土壌と同様に生育していく。背面側に法面コンクリートが吹き付けられている場合にも、該法面コンクリートのわずかな隙間や亀裂から根を地盤側に伸張させていくので、樹木の生長には何ら問題とはならない。
【0039】
ここで、緑化用定着板の厚さを10mm以上30mm以下とした場合、十分な強度を確保しつつ重量の軽減を図ることが可能となり、法面に設置する作業の効率を大幅に向上させることが可能となるとともに、急斜面での施工も可能となる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る緑化構造及びその施工方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
(第1実施形態)
【0042】
図1は、本実施形態に係る緑化構造を示した断面図である。同図でわかるように、本実施形態に係る緑化構造31は、緑化すべき基盤である岩盤11の表面に取り付けられた緑化用保水シート1と、該緑化用保水シートの上に積層された緑化用定着構造12と、該緑化用定着構造の上に積層された植生基材15とからなる。
【0043】
緑化用保水シート1は図2に示すように、所定幅Wを有する長尺状に形成された扁平状の透水性袋体2に保水剤4を封入してなる。
【0044】
透水性袋体2は、透水性を有する生分解性素材としての紙で形成された帯状をなす二枚のシート体3,3をそれらの周縁部である両側方縁部にて相互に接着してなり、上述した保水剤4は、透水性袋体2内の中空内部空間、言い換えれば二枚のシート体3,3に挟まれた中空内部空間5に封入してある。
【0045】
保水剤4は、耐アルカリ性及び吸放湿性を有するとともに、カルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水できる材料で構成してあり、具体的には、NVA(N−ビニルアセトアミド)を主モノマーとして重合されてなるPNVA(ポリ−N−ビニルアセトアミド)で構成することができる。
【0046】
緑化用保水シート1を製造するには、例えば二枚のシート体3,3の間に保水剤4を挟み込み、かかる状態で所定のプレス機でシート体3,3の両側方縁部を圧着することで、透水性袋体2の製作工程と保水剤4の封入工程とを同時に行えばよいが、保水剤4が中空内部空間5内でずれることがないよう、該保水剤が封入された中央領域にも所定の圧力を載荷するようにするのが望ましい。
【0047】
保水剤4は、粉砕され粉末状となったものを利用することができる。従来、保水剤は、植生基材に混入させて吹き付けることが多かったため、粉末状のものを使用することは困難であったが、本実施形態では、透水性袋体2内に封入するため、粉末状であっても支障はないし、むしろ、従来、利用価値が低かった粉末状の保水剤を積極的に利用することが可能となる。なお、保水剤4の量は、植栽する植物の種類や植栽する場所の気候等を考慮し、例えば10g〜300g/mを目安とすればよい。
【0048】
緑化用定着構造12は図1でわかるように、セメント含有物質であるセメントミルクと多数の木片13とを含む混練物を緑化用保水シート1の上に吹き付けることにより、木片13の間に間隙14が形成されるように該木片を相互に固結させて構成してある。
【0049】
植生基材15は、植物の種子、肥料、水、チップ材、粘着剤等を攪拌混合した水性スラリーからなり、該植生基材を緑化用定着構造12の上に吹き付けて構成する。
【0050】
なお、上述した緑化用定着構造12は、木片13同士の間隙14に植物の根を伸張させながら、該木片に絡みつかせることでしっかりと植物を自立させる定着作用を有しており、同様の定着作用を有する植生基材15の代替材として機能する。そのため、植生基材15の厚みを従来の例えば半分にし、その分、緑化用定着構造12に代替させるようにすればよい。
【0051】
本実施形態に係る緑化構造の施工方法においては、まず、岩盤11に緑化用保水シート1を取り付ける。緑化用保水シート1は、ピンやアンカーなどを用いて岩盤11に適宜固定すればよい。
【0052】
次に、緑化用保水シート1の上にラス(図示せず)を敷設し、しかる後、該ラスの上から緑化用保水シート1に向けて、セメントミルクと多数の木片13とを含む混練物を吹き付け、緑化用定着構造12を積層形成する。
【0053】
混練物は、木片13とセメント含有物質としてのセメントミルクとを混合して構成してあり、セメントミルクが硬化した状態において、木片13同士の間に空隙14が形成された状態で該木片が相互に固結されるように、木片13及びセメントミルクの混合割合を設定する。
【0054】
具体的には、セメントミルクを木片13の量に対して貧配合とし、ミキサー内で木片13の周囲にセメントミルクを付着させるように混合し、かかる状態で木片13を吹き付けるようにすることが望ましい。
【0055】
かかる混練物を吹き付けるにあたっては、例えば数cm程度の大きさの木片13とセメントミルクとをそれぞれ必要な量だけ計量槽で計量し、これらをミキサーに投入して混合した後、例えばコンクリート吹付機を用いてその吹付けノズルから噴出するようにすればよい。
【0056】
次に、植物の種子、肥料、水、チップ材、粘着剤等を攪拌混合した水性スラリーを緑化用定着構造12の上に吹き付けることで該緑化用定着構造の上に植生基材15を積層形成する。
【0057】
なお、下地になっている緑化用定着構造12の表面には、多数の木片13が突出することによる凹凸が全面に形成されているので、かかる木片が定着作用を発揮することとなる。そのため、植生基材15を吹き付ける前にラスを別途配置する必要はない。
【0058】
また、植生基材15の吹付け作業を遅滞なく行うようにするため、上述したセメントミルクに例えばリグニンスルホン酸及びロダン化合物を主成分とする無塩化形の混和剤を添加しておき、該セメントミルクの凝結硬化を促進するように構成しておくのが望ましい。
【0059】
本実施形態に係る緑化構造31においては、緑化用保水シート1、緑化用定着構造12及び植生基材15を岩盤11に順次積層してなり、植生基材15から発芽発根した植物21は図3に示すように、緑化用定着構造12内に形成されている木片13同士の間隙14にその根22を伸張させながら、該木片に絡みつかせることでしっかりと自立し、背後に既設の吹付けコンクリートが存在したり、法面の勾配が急な場合であっても、植物を成長させて緑化を図ることができる。
【0060】
また、降雨や地盤である岩盤11からの湧水あるいは人工的な散水があった場合、かかる降雨や湧水あるいは散水による水は、植物21の補給水として緑化用保水シート1に保水される。
【0061】
具体的には、保水前の緑化用保水シート1が例えば厚さ1〜2mmであった場合、封入された保水剤が水を吸水すると、粉末状の保水剤であれば、各粉末微粒子がゲル化して膨らんで互いに接触し連続化するようになり、各微粒子間での水の移動も可能となる。ちなみに、かかる吸水状態では、緑化用保水シート1は、当初の厚みの数倍になる。
【0062】
ここで、緑化用定着構造12からの溶出成分により、補給水は、アルカリを呈する水となるが、本実施形態に係る緑化構造31は、耐アルカリ性でかつカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水可能な保水剤4を用いて緑化用保水シート1を構成してあるため、上述した補給水は、該緑化用保水シートに確実に保水される。
【0063】
また、本実施形態に係る保水剤4は、吸放湿性をも有するため、該保水剤にいったん保水された水は、周囲の湿度低下に伴って放湿され、植生基材15に適宜供給される。
【0064】
なお、緑化用定着構造12からは、上述したようにセメント成分と水との水和反応で生じた水酸化カルシウムが主としてアルカリ成分となり、外部に溶出するが、かかるアルカリ成分の溶出による補給水のpH上昇は、植物の生育を阻害するほど大きくなることはない。
【0065】
かくして、植生基材15の植物21は上述したように、緑化用定着構造12にその根を定着させることでしっかりと自立しながら、緑化用定着構造12を介して図3の矢印に示すように緑化用保水シート1からの水分供給を受けつつ、あるいはさらなる根の伸張によって緑化用保水シート1から直接的に水分を吸い上げつつ成長する。
【0066】
以上説明したように、本実施形態に係る緑化構造31及びその施工方法によれば、晴天が続いたり緑化を施す岩盤からの湧水がほとんど期待できない場合でも、そのわずかな降雨や湧水を逃がすことなく、緑化用保水シート1に確実に保水することができる。なお、必要に応じて散水を行えば、かかる散水による水を確実に保水することができることはいうまでもない。
【0067】
また、本実施形態に係る緑化構造31及びその施工方法によれば、緑化用保水シート1を構成する保水剤4を、耐アルカリ性を有しかつカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水可能な材料で構成したので、緑化用定着構造12から溶出するアルカリ成分のために降雨や湧水のpHが大きくなったとしても、かかる降雨や湧水を植物の補給水として確実に保水し、これを植生基材15に供給することが可能となり、かくして緑化用定着構造12を使って緑化を図る場合においても、植物21に対して適切な水分補給を行うことができる。
【0068】
また、本実施形態に係る緑化構造31及びその施工方法によれば、吸放湿性を有する材料で保水剤4を構成したので、湿度が高い場合には補給水としてこれを保水する一方、湿度が低い場合には、保水された水を放湿し、これを緑化用定着構造12を介して植生基材15に供給することが可能となり、植物21に対して適切な水分補給を行うことができる。
【0069】
また、本実施形態に係る緑化構造31及びその施工方法によれば、透水性袋体2に保水剤4を封入するようにしたので、保水剤4の取付け作業が容易になることは言うに及ばず、降雨による保水剤4の流出を防止することができるとともに、植生基材に保水剤を混入させたときの問題点を解消することが可能となる。
【0070】
すなわち、従来であれば、植生基材を吹き付ける際に比重差等によって保水剤がどうしても均一に分散せず、植生基材内で偏ってしまうという問題があったが、本実施形態ではそのような懸念はない。また、植生基材が乾燥した場合、表面に近いために保水剤に保水された水もすぐに蒸散してしまうという問題があったが、本実施形態では緑化用保水シート1の上に緑化用定着構造12及び植生基材15があるため、緑化用保水シート1は最下層に位置することとなり、該緑化用保水シート内に保水された水が容易に蒸散するのが防止される。さらに、植生基材に保水剤を混入させると、植生基材の乾燥収縮によって保水剤の周囲に間隙が生じるため、保水剤に水が保水されているとしても、かかる水は、該間隙に阻まれて植生基材全体に行き渡らず、結果として植物への補給水とはならないという問題があったが、本実施形態では保水剤を植生基材に直接混入してはいないため、かかる問題を回避することが可能となる。
【0071】
また、本実施形態に係る緑化構造31及びその施工方法によれば、透水性袋体2を、透水性を有する生分解性素材としての紙で形成された帯状をなす二枚のシート体3,3をそれらの周縁部である両側方縁部にて相互に接着して構成したので、全体が軽量化され取付け時の作業性が向上することはもちろん、保水剤4が封入された透水性袋体2は、植物21の生長とともに微生物によって二酸化炭素と水に最終的に分解され、環境上何ら問題とはならない。
【0072】
また、本実施形態に係る緑化構造31及びその施工方法によれば、緑化用保水シート1、緑化用定着構造12及び植生基材15の順に積層するようにしたので、緑化用保水シート1からの水の蒸散を防止することができる。
【0073】
また、本実施形態に係る緑化構造31及びその施工方法によれば、従来、植生基材として必要とされた所要厚さを例えば半分にし、その分、緑化用定着構造12で代用することが可能となり、コストの高い植生基材を節約することができるとともに、利用価値のなかった膨大な量の木質廃材を有効利用することができる。
【0074】
本実施形態では、本実施形態に係る緑化構造31を傾斜地である岩盤11に適用したが、本発明に係る緑化構造は、かかる土木分野に限定されるものではなく、建築分野においても、屋上緑化や壁面緑化に適用することが可能である。
【0075】
例えば、壁面緑化の場合、建築物の壁面に本実施形態に係る緑化用保水シート1を取り付けるとともにその上に緑化用定着構造12を積層形成し、その上に植生基材15をさらに積層形成するようにすることで、上述したとほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0076】
また、本実施形態では、保水剤4を透水性袋体2に封入して緑化用保水シート1を構成したが、かかる構成に代えて、織布等の透水性シートに液体状の保水剤を被覆して緑化用保水シートを構成するようにしてもよい。
【0077】
(第2実施形態)
【0078】
次に、第2実施形態について説明する。なお、上述の実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0079】
図4は、本実施形態に係る緑化構造を示した断面図である。同図でわかるように、本実施形態に係る緑化構造41は、緑化すべき基盤である岩盤11の表面に取り付けられた緑化用保水シート1と、該緑化用保水シートの上に積層された緑化用定着板12aと、該緑化用定着板の上に積層された植生基材15とからなる。
【0080】
緑化用保水シート1は、図2で説明した第1実施形態と同様、所定幅Wを有する長尺状に形成された扁平状の透水性袋体2に保水剤4を封入してなる。以下、緑化用保水シート1については第1実施形態で既に説明したので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0081】
緑化用定着板12aは、多数の木片13を該木片同士に間隙14が生じるようにセメント含有物質としてのセメントミルクで相互に固結させてなり、該間隙に植物の根を伸張させて木片13に絡みつかせることにより、植物をしっかりと支える定着機能を発揮する。緑化用定着板12aは、工場にて製造した後、現場に適宜搬入するようにすればよい。
【0082】
緑化用定着板12aは、その厚さを10mm以上30mm以下、特に20mm以上30mm以下とするのが望ましい。10mm未満では、強度が不足して搬送時や法面に固定する際の釘打ち作業時に破損するおそれがあり、30mmを越えると、重量が大きくなって作業性が低下するからである。なお、上述した厚さ範囲でも間隙14が断面内に形成されるよう、木片13の大きさを10mm以上30mm以下とするのが望ましい。
【0083】
このような緑化用定着板12aは、施工能率を低下させずしかも法面施工時に作業員が持ち運ぶことができるよう、その大きさを300mm×300mm以上500mm×500mm以下、特に、400mm×400mm以上500mm×500mm以下とするのが望ましい。
【0084】
緑化用定着板12aをこのような条件で製造すると、質量を1〜3kg、曲げ破壊荷重を400N程度以上、曲げ強さを0.7N/mm程度以上にすることが可能となり、上述したように施工能率と作業性の両方を確保することができる。
【0085】
緑化用定着板12aを製造するには、例えば数cmの大きさの木片13とセメントと少量の水とをミキサー内で混合して木片13の表面にセメントミルクを絡ませるようにし、かかる状態で板状物製作用型枠内に投入し、適宜プレスをかけながら硬化乾燥させ、板状に成形すればよい。
【0086】
ここで、セメントミルクが多すぎると、製造された緑化用定着板12a内の間隙14が少なくなり、セメントペーストが少なすぎると、木片13同士を固結させる強度が不足して板状体としての強度が不足するため、セメント及び水の量は、かかる観点を考慮して適宜決定する。
【0087】
なお、かかる緑化用定着板12aは、木片13同士の間隙14に植物の根を伸張させながら、該木片に絡みつかせることでしっかりと植物を自立させる定着作用を有しており、同様の定着作用を有する植生基材15の代替材として機能する。そのため、植生基材15の厚みを従来の例えば半分にし、その分、緑化用定着板12aに代替させるようにすればよい。
【0088】
本実施形態に係る緑化構造の施工方法においては、まず、岩盤11に緑化用保水シート1を取り付ける。緑化用保水シート1は、ピンやアンカーなどを用いて岩盤11に適宜固定すればよい。
【0089】
次に、緑化用保水シート1の上に緑化用定着板12aを積層する。緑化用定着板12aは、やはりピンやアンカーなどを用いて緑化用保水シート1の上から岩盤11に適宜固定すればよい。
【0090】
次に、植物の種子、肥料、水、チップ材、粘着剤等を攪拌混合した水性スラリーを緑化用定着板12aの上に吹き付けることで該緑化用定着板の上に植生基材15を積層形成する。なお、下地になっている緑化用定着板12aの表面には、多数の木片13が突出することによる凹凸が全面に形成されているので、かかる木片が定着作用を発揮することとなる。そのため、植生基材15を吹き付ける前にラスを別途配置する必要はない。
【0091】
本実施形態に係る緑化構造41においては、緑化用保水シート1、緑化用定着板12a及び植生基材15を岩盤11に順次積層してなり、植生基材15から発芽発根した植物21は、図3で説明した第1実施形態と同様、緑化用定着板12a内に形成されている木片13同士の間隙14にその根22を伸張させながら、該木片に絡みつかせることでしっかりと自立し、背後に既設の吹付けコンクリートが存在したり、法面の勾配が急な場合であっても、植物を成長させて緑化を図ることができる。
【0092】
また、降雨や地盤である岩盤11からの湧水あるいは人工的な散水があった場合、かかる降雨や湧水あるいは散水による水は、植物21の補給水として緑化用保水シート1に保水される。
【0093】
ここで、緑化用定着板12aからの溶出成分により、補給水は、アルカリを呈する水となるが、本実施形態に係る緑化構造41は、耐アルカリ性でかつカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水可能な保水剤4を用いて緑化用保水シート1を構成してあるため、上述した補給水は、該緑化用保水シートに確実に保水される。
【0094】
また、本実施形態に係る保水剤4は、吸放湿性をも有するため、該保水剤にいったん保水された水は、周囲の湿度低下に伴って放湿され、植生基材15に適宜供給される。
【0095】
なお、緑化用定着板12aからは、上述したようにセメント成分と水との水和反応で生じた水酸化カルシウムが主としてアルカリ成分となり、外部に溶出するが、かかるアルカリ成分の溶出による補給水のpH上昇は、植物の生育を阻害するほど大きくなることはない。
【0096】
かくして、植生基材15の植物21は上述したように、緑化用定着板12aにその根を定着させることでしっかりと自立しながら、緑化用定着板12aを介して緑化用保水シート1からの水分供給を受けつつ成長する。
【0097】
以上説明したように、本実施形態に係る緑化構造41及びその施工方法によれば、晴天が続いたり緑化を施す岩盤からの湧水がほとんど期待できない場合でも、そのわずかな降雨や湧水を逃がすことなく、緑化用保水シート1に確実に保水することができる。なお、必要に応じて散水を行えば、かかる散水による水を確実に保水することができることはいうまでもない。
【0098】
また、本実施形態に係る緑化構造41及びその施工方法によれば、緑化用保水シート1、緑化用定着板12a及び植生基材15の順に積層するようにしたので、緑化用保水シート1からの水の蒸散を防止することができる。
【0099】
また、本実施形態に係る緑化構造41及びその施工方法によれば、従来、植生基材として必要とされた所要厚さを例えば半分にし、その分、緑化用定着板12aで代用することが可能となり、コストの高い植生基材を節約することができるとともに、利用価値のなかった膨大な量の木質廃材を有効利用することができる。
【0100】
以下、本実施形態に係る緑化構造41及びその施工方法によっても、第1実施形態と同様の効果を奏するが、ここではその説明を省略することとする。
【0101】
本実施形態では、緑化構造41を傾斜地である岩盤11に適用したが、本発明に係る緑化構造は、かかる土木分野に限定されるものではなく、建築分野においても、屋上緑化や壁面緑化に適用することが可能である。
【0102】
例えば、壁面緑化の場合、建築物の壁面に本実施形態に係る緑化用保水シート1を取り付けるとともにその上に緑化用定着板12aを積層形成し、その上に植生基材15をさらに積層形成するようにすることで、上述したとほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0103】
また、本実施形態では、保水剤4を透水性袋体2に封入して緑化用保水シート1を構成したが、かかる構成に代えて、織布等の透水性シートに液体状の保水剤を被覆して緑化用保水シートを構成するようにしてもよい。
【0104】
(第3実施形態)
【0105】
次に、第3実施形態について説明する。なお、上述の実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0106】
図5は、本実施形態に係る緑化構造を示した断面図である。同図でわかるように、本実施形態に係る緑化構造51は、緑化すべき基盤である岩盤11の表面に取り付けられた緑化用定着板12aと、該緑化用定着板の上に緑化用保水シート1と、該緑化用保水シートの上に積層された植生基材15とからなる。
【0107】
緑化用保水シート1は、図2で説明した第1実施形態と同様、所定幅Wを有する長尺状に形成された扁平状の透水性袋体2に保水剤4を封入してなる。以下、緑化用保水シート1については第1実施形態で既に説明したので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0108】
緑化用定着板12aは第2実施形態と同様、多数の木片13を該木片同士に間隙14が生じるようにセメント含有物質としてのセメントミルクで相互に固結させてなり、該間隙に植物の根を伸張させて木片13に絡みつかせることにより、植物をしっかりと支える定着機能を発揮する。緑化用定着板12aは、工場にて製造した後、現場に適宜搬入するようにすればよい。
【0109】
本実施形態に係る緑化構造の施工方法においては、まず、岩盤11に緑化用定着板12aを敷設する。緑化用定着板12aは、ピンやアンカーなどを用いて岩盤11に適宜固定すればよい。
【0110】
次に、緑化用定着板12aの上に緑化用保水シート1を取り付ける。緑化用保水シート1は、ピンやアンカーなどを用いて岩盤11や緑化用定着板12aに適宜固定すればよい。
【0111】
次に、植物の種子、肥料、水、チップ材、粘着剤等を攪拌混合した水性スラリーを緑化用保水シート1の上に吹き付けることで該緑化用保水シートの上に植生基材15を積層形成する。なお、植生基材15の吹付け前に、所定のラスを緑化用保水シート1の上に予め敷設しておく。
【0112】
本実施形態に係る緑化構造51においては、緑化用定着板12a、緑化用保水シート1及び植生基材15を岩盤11に順次積層してなり、植生基材15から発芽発根した植物21は、緑化用保水シート1を貫通して緑化用定着板12a内に形成されている木片13同士の間隙14にその根22を伸張させながら、該木片に絡みつかせることでしっかりと自立し、背後に既設の吹付けコンクリートが存在したり、法面の勾配が急な場合であっても、植物を成長させて緑化を図ることができる。
【0113】
また、降雨や地盤である岩盤11からの湧水あるいは人工的な散水があった場合、かかる降雨や湧水あるいは散水による水は、植物21の補給水として緑化用保水シート1に保水される。
【0114】
具体的には、保水前の緑化用保水シート1が例えば厚さ1〜2mmであった場合、封入された保水剤が水を吸水すると、粉末状の保水剤であれば、各粉末微粒子がゲル化して膨らんで互いに接触し連続化するようになり、各微粒子間での水の移動も可能となる。ちなみに、かかる吸水状態では、緑化用保水シート1は、当初の厚みの数倍になる。
【0115】
ここで、緑化用定着板12aからの溶出成分により、補給水は、アルカリを呈する水となるが、本実施形態に係る緑化構造51は、耐アルカリ性でかつカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水可能な保水剤4を用いて緑化用保水シート1を構成してあるため、上述した補給水は、該緑化用保水シートに確実に保水される。
【0116】
また、本実施形態に係る保水剤4は、吸放湿性をも有するため、該保水剤にいったん保水された水は、周囲の湿度低下に伴って放湿され、植生基材15に適宜供給される。
【0117】
なお、緑化用定着板12aからは、上述したようにセメント成分と水との水和反応で生じた水酸化カルシウムが主としてアルカリ成分となり、外部に溶出するが、かかるアルカリ成分の溶出による補給水のpH上昇は、植物の生育を阻害するほど大きくなることはない。
【0118】
一方、背後の地盤である岩盤11から突発的な湧水があったとき、緑化用定着板12aは、その余剰水を木片13同士の間隙14を介して下流側へと排水する排水機能を発揮し、必要な量の水だけが毛細管現象等によって緑化用保水シート1へと移動し、該緑化用保水シートに保水される。
【0119】
岩盤11が酸性土壌であって酸性水が湧水する場合も同様であり、緑化用定着板12aは、その酸性水を木片13同士の間隙14を介して下流側へと排水する排水機能を発揮し、必要な量の水だけが毛細管現象等によって緑化用保水シート1へと移動し、該緑化用保水シートに保水される。なお、酸性水は、緑化用定着板12aを通過している間に該緑化用定着板から溶出するアルカリ成分によって中和されるため、緑化用保水シート1には、植物の生育に適したpHの水が保水される。
【0120】
かくして、植生基材15の植物21は上述したように、緑化用定着板12aにその根を定着させることでしっかりと自立しながら、緑化用保水シート1からの水分供給を受けつつ成長する。
【0121】
以上説明したように、本実施形態に係る緑化構造51及びその施工方法によれば、晴天が続いたり緑化を施す岩盤からの湧水がほとんど期待できない場合でも、そのわずかな降雨や湧水を逃がすことなく、緑化用保水シート1に確実に保水することができる。なお、必要に応じて散水を行えば、かかる散水による水を確実に保水することができることはいうまでもない。
【0122】
また、本実施形態に係る緑化構造51及びその施工方法によれば、万一、岩盤11からの湧水があったとしても、緑化用定着板12aは、必要な水だけを緑化用保水シート1へと移動させ、その他の余剰水を間隙14を介して下流へと排水する。
【0123】
そのため、例えば酸性水が湧水したとしても、緑化用定着板12aが有する排水機能と中和機能により、植生基材15が冠水したり、緑化用保水シート1に植生に適さないpHの水が保水されたりするのを未然に防止することができる。
【0124】
また、本実施形態に係る緑化構造51及びその施工方法によれば、緑化用定着板12a、緑化用保水シート1及び植生基材15の順に積層するようにしたので、緑化用保水シート1から植生基材15への保水が行いやすくなるとともに、万一の湧水があっても、緑化用定着板12aによる排水機能を利用することで余剰水の排水を行うことができる。
【0125】
また、本実施形態に係る緑化構造51及びその施工方法によれば、従来、植生基材として必要とされた所要厚さを例えば半分にし、その分、緑化用定着板12aで代用することが可能となり、コストの高い植生基材を節約することができるとともに、利用価値のなかった膨大な量の木質廃材を有効利用することができる。
【0126】
以下、本実施形態に係る緑化構造51及びその施工方法によっても、上述の各実施形態と同様の効果を奏するが、ここではその説明を省略することとする。
【0127】
本実施形態では、本実施形態に係る緑化構造51を傾斜地である岩盤11に適用したが、本発明に係る緑化構造は、かかる土木分野に限定されるものではなく、建築分野においても、屋上緑化や壁面緑化に適用することが可能である。
【0128】
例えば、壁面緑化の場合、建築物の壁面に本実施形態に係る緑化用定着板12aを取り付けるとともにその上に緑化用保水シート1を積層し、その上に植生基材15をさらに積層形成するようにすることで、上述したとほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0129】
また、本実施形態では、保水剤4を透水性袋体2に封入して緑化用保水シート1を構成したが、かかる構成に代えて、織布等の透水性シートに液体状の保水剤を被覆して緑化用保水シートを構成するようにしてもよい。
【0130】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係る緑化構造及びその施工方法によれば、晴天が続いたり緑化を施す岩盤からの湧水がほとんど期待できない場合でも、そのわずかな降雨や湧水を逃がすことなく確実に保水することができる。また、保水剤を、耐アルカリ性を有しかつカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水可能な材料で構成したので、緑化用定着板又は定着構造から溶出するアルカリ成分のために降雨や湧水のpHが大きくなったとしても、かかる降雨や湧水を植物の補給水として確実に保水し、これを植生基材に供給することが可能となり、かくして緑化用定着板又は定着構造を使って緑化を図る場合においても、植物に対して適切な水分補給を行うことができる。さらに、保水剤を吸放湿性を有する材料で構成したので、湿度が高い場合には補給水としてこれを保水する一方、湿度が低い場合には、保水された水を放湿し、これを緑化用定着板又は定着構造を介して植生基材に供給することが可能となり、植物に対して適切な水分補給を行うことができる。
【0131】
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る緑化構造31を示した断面図。
【図2】緑化用保水シート1の図であり、(a)は一部を切除した全体斜視図、(b)は断面図。
【図3】本実施形態に係る緑化構造31の作用を示した断面図。
【図4】第2実施形態に係る緑化構造41を示した断面図。
【図5】第3実施形態に係る緑化構造51を示した断面図。
【符号の説明】
1             緑化用保水シート
2             透水性袋体
3             紙(シート体、生分解性素材)
4             保水剤
11            岩盤(基盤)
12            緑化用定着構造
12a           緑化用定着板
13            木片
14            間隙
15            植生基材
31,41,51      緑化構造

Claims (12)

  1. 緑化すべき基盤の表面に取り付けられた緑化用保水シートと、該緑化用保水シートの上に積層された緑化用定着構造と、該緑化用定着構造の上に積層された植生基材とからなり、前記緑化用保水シートを、耐アルカリ性及び吸放湿性を有しかつカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水可能な保水剤を透水性袋体に封入し又は所定の透水性シートに被覆して構成するとともに、前記緑化用定着構造を、セメント含有物質と多数の木片とを含む混練物を吹き付けることで該木片同士の間に間隙が形成された状態にて前記木片が相互に固結されるように構成してなることを特徴とする緑化構造。
  2. 緑化すべき基盤の表面に取り付けられた緑化用保水シートと、該緑化用保水シートの上に積層された緑化用定着板と、該緑化用定着板の上に積層された植生基材とからなり、前記緑化用保水シートを、耐アルカリ性及び吸放湿性を有しかつカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水可能な保水剤を透水性袋体に封入し又は所定の透水性シートに被覆して構成するとともに、前記緑化用定着板を、多数の木片を該木片同士に間隙が生じるようにセメント含有物質で相互に固結させて構成したことを特徴とする緑化構造。
  3. 緑化すべき基盤の表面に取り付けられた緑化用定着板と、該緑化用定着板の上に積層された緑化用保水シートと、該緑化用保水シートの上に積層された植生基材とからなり、前記緑化用定着板を、多数の木片を該木片同士に間隙が生じるようにセメント含有物質で相互に固結させて構成するとともに、前記緑化用保水シートを、耐アルカリ性及び吸放湿性を有しかつカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水可能な保水剤を透水性袋体に封入し又は所定の透水性シートに被覆して構成したことを特徴とする緑化構造。
  4. 前記透水性袋体を、紙、パルプ等の生分解性素材で形成した請求項1乃至請求項3のいずれか一記載の緑化構造。
  5. 前記透水性袋体を、周縁部にて相互に接着されてなる二枚のシート体で構成した請求項4記載の緑化構造。
  6. 前記保水剤を、NVA(N−ビニルアセトアミド)を主モノマーとして重合されてなるPNVA(ポリ−N−ビニルアセトアミド)とした請求項1乃至請求項3のいずれか一記載の緑化構造。
  7. 緑化すべき基盤の表面に緑化用保水シートを取り付け、該緑化用保水シートの上にセメント含有物質と多数の木片とを含む混練物を吹き付けることで該木片同士の間に間隙が形成された状態にて前記木片が相互に固結されてなる緑化用定着構造を形成し、該緑化用定着構造の上に植生基材を吹き付ける緑化構造の施工方法であって、前記緑化用保水シートを、耐アルカリ性及び吸放湿性を有しかつカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水可能な保水剤を透水性袋体に封入し又は透水性シートに被覆して構成したことを特徴とする緑化構造の施工方法。
  8. 緑化すべき基盤の表面に緑化用保水シートを取り付け、該緑化用保水シートの上に緑化用定着板を積層し、該緑化用定着板の上に植生基材を吹き付ける緑化構造の施工方法であって、前記緑化用保水シートを、耐アルカリ性及び吸放湿性を有しかつカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水可能な保水剤を透水性袋体に封入し又は透水性シートに被覆して構成するとともに、前記緑化用定着板を、多数の木片を該木片同士に間隙が生じるようにセメント含有物質で相互に固結させて構成したことを特徴とする緑化構造の施工方法。
  9. 緑化すべき基盤の表面に緑化用定着板を取り付け、該緑化用定着板の上に緑化用保水シートを積層し、該緑化用保水シートの上に植生基材を吹き付ける緑化構造の施工方法であって、前記緑化用定着板を、多数の木片を該木片同士に間隙が生じるようにセメント含有物質で相互に固結させて構成するとともに、前記緑化用保水シートを、耐アルカリ性及び吸放湿性を有しかつカルシウムイオンを主体とするアルカリ成分を含む水を保水可能な保水剤を透水性袋体に封入し又は透水性シートに被覆して構成したことを特徴とする緑化構造の施工方法。
  10. 前記透水性袋体を、紙、パルプ等の生分解性素材で形成した請求項7乃至請求項9のいずれか一記載の緑化構造の施工方法。
  11. 前記透水性袋体を、周縁部にて相互に接着されてなる二枚のシート体で構成した請求項10記載の緑化構造の施工方法。
  12. 前記保水剤を、NVA(N−ビニルアセトアミド)を主モノマーとして重合されてなるPNVA(ポリ−N−ビニルアセトアミド)とした請求項7乃至請求項9のいずれか一記載の緑化構造の施工方法。
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CN102864785A (zh) * 2012-10-09 2013-01-09 西安科技大学 一种风化岩壁绿化护坡方法

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JP2011157714A (ja) * 2010-01-29 2011-08-18 Ohbayashi Corp 木片コンクリートを用いた緑化構造
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