JP2004083749A - ガスバリア性積層フィルム - Google Patents
ガスバリア性積層フィルム Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004083749A JP2004083749A JP2002246884A JP2002246884A JP2004083749A JP 2004083749 A JP2004083749 A JP 2004083749A JP 2002246884 A JP2002246884 A JP 2002246884A JP 2002246884 A JP2002246884 A JP 2002246884A JP 2004083749 A JP2004083749 A JP 2004083749A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- compound
- film
- gas barrier
- coating
- coating layer
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Coating Of Shaped Articles Made Of Macromolecular Substances (AREA)
- Treatments Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
- Laminated Bodies (AREA)
- Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
Abstract
【解決手段】分子内に2個以上の水酸基を有する化合物と、分子内の連続する3個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物と、溶媒とを含むコーティング剤が、基材フィルムの少なくとも片面に塗布されてコーティング層が形成された積層フィルムであって、前記基材フィルムが、ポリテトラメチレングリコール単位0.5〜15質量%が共重合されたポリエチレンテレフタレート系重合体からなる少なくとも1方向に延伸されたフィルムであり、コーティング層と基材フィルムの層間接着強度が1.0N/cm以上であることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高湿度下でもガスバリア性を有するガスバリア性積層フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミドやポリエステル等からなる熱可塑性樹脂フィルムは、強度、透明性、成形性、ガスバリア性に優れていることから、包装材料として幅広い用途に使用されている。しかしながら、レトルト処理食品等のように長期間の保存性が求められる用途に用いる場合には、さらに高度なガスバリア性が要求される。
【0003】
そこで、ガスバリア性を改良するために、これらの熱可塑性樹脂フィルムの表面にポリ塩化ビニリデン(PVDC)からなる層を設けた積層フィルムが、食品包装用途等に幅広く使用されている。しかし、PVDCは、焼却時に酸性ガス等の有機物質を発生することから、近年の自然環境への関心の高まりとともに、他材料への移行が強く望まれている。
【0004】
PVDCに変わる材料として、ポリビニルアルコールが挙げられる。ポリビニルアルコールからなるフィルムは、焼却処理を行っても有毒ガスの発生がなく、自然環境に優しいものである。しかし、ポリビニルアルコールからなるフィルムは、低湿度雰囲気下でのガスバリア性には優れるものの、湿度が高くなるにつれて急激にガスバリア性が低下する傾向にある。従って、水分を含む食品等の包装には不向きであることが多い。
【0005】
このような問題を解決するものとして、ビニルアルコールとエチレンの共重合体(EVOH)からなるフィルム、あるいはEVOHをコーティング材料として熱可塑性樹脂フィルムに塗布したフィルムが知られている。しかし、ビニルアルコールとエチレンの共重合体(EVOH)からなるフィルムは、高湿度雰囲気下におけるガスバリア性が未だ充分であるとはいえない。EVOHをコーティング材料として用いる場合には、EVOHを溶媒に溶かして使用する。EVOHは水に溶けにくいため、溶媒として水と有機溶剤の混合溶媒などを使用しているが、高湿度雰囲気下でのガスバリア性を実用レベルに維持するためには、EVOH中のエチレンの含有量をある程度高くする必要があり、このような構成とするとEVOHはより水に溶けにくくなることから、溶媒における有機溶剤の割合を増やす、もしくは有機溶剤を単独で用いる必要が生じる。しかし、有機溶剤の使用は環境問題の観点から望ましくなく、また、有機溶剤の回収工程などを必要とするためコスト高になることからも好ましくない。
【0006】
また、特開平10−237180号公報には、熱可塑性樹脂フィルムにガスバリア性を付与するために、ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸の部分中和物とポリビニルアルコールからなる水溶液を、熱可塑性樹脂フィルムに塗布して、熱処理する方法が提案されている。しかしながらこの方法では、ガスバリア性を高めるために高温で長時間の加熱を行う必要があり、生産性に劣るという問題がある。また、高温で長時間の加熱を行うことによりフィルムが着色して外観が損なわれるため、食品包装用途などに使用するには改善が必要となる。
【0007】
また、従来より、ポリビニルアルコールに架橋剤を加えて架橋反応させることにより、ポリビニルアルコールからなるフィルムを耐水化する技術が種々知られている。例えば、マレイン酸単位を含有するポリマーとポリビニルアルコールや多糖類などの水酸基とが架橋反応することにより、前記ポリマーからなるフィルムが耐水化されることが広く知られている。この技術を適用したものとして、例えば、特開平8−66991号公報には、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の25〜50%部分中和物とポリビニルアルコールとからなるフィルムが優れた耐水性を有することが開示されており、特開昭49−1649号公報には、ポリビニルアルコールにアルキルビニルエーテル−マレイン酸共重合体を混合することにより、フィルムを耐水化する方法が開示されている。
【0008】
しかし、耐水化(すなわち非水溶化)によりフィルムに付与される耐水性と、ガスバリア性とは異なる性質である。耐水性は、一般的にポリマー分子を架橋することにより得られるが、ガスバリア性は、酸素等の比較的小さな分子の侵入や拡散を防ぐ性質であるため、単にポリマーを架橋してもガスバリア性が得られるとは限らず、例えば、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの三次元架橋性ポリマーは、耐水性は有するがガスバリア性は有していない。
【0009】
本出願人は、先に、特定の樹脂組成物を含有するコーティング剤を基材フィルムの表面に塗布することで、上記の問題が解決できることを見出し、特許出願した(PCT/JP01/10767)。すなわち先の発明のガスバリア性コーティング剤は、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)83〜15質量%と、分子内の連続する3個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物(B)17〜85質量%と、溶媒とを含み、前記化合物(B)は、カルボキシル基の間で無水物構造が作られていない化合物と、カルボキシル基の間で少なくとも一つの無水物構造が作られている化合物とのいずれかであることを特徴とするコーティング剤である。
【0010】
しかしながら、このコーティング剤を基材フィルムに塗布してガスバリア性コーティング層を形成した場合、上記の問題が解決できるものの、得られる積層フィルムにおいてはコーティング層と基材フィルムとの間の接着強度が十分でないことがあった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題点を解決し、透明性に優れ、焼却処理を行っても有害ガスの発生がなく、有機溶剤を使用していないため環境面からも生産性の点からも好ましく、高湿度雰囲気下でも実使用に耐えうるだけの高度なガスバリア性を有し、しかもガスバリア性コーティング層とフィルム層の層間接着強度の高い積層フィルムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究の結果、基材フィルムを構成する樹脂の組成を特定することにより上記課題が解決できることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、次のとおりである。
(1) 分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)と、分子内の連続する3個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物(B)と、溶媒とを含むコーティング剤が、基材フィルムの少なくとも片面に塗布されてコーティング層が形成された積層フィルムであって、前記基材フィルムが、ポリテトラメチレングリコール単位0.5〜15質量%が共重合されたポリエチレンテレフタレート系重合体(変性PET)からなる少なくとも1方向に延伸されたフィルムであり、コーティング層と基材フィルムの層間接着強度が1.0N/cm以上であることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。(2) 分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)と、分子内の連続する3個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物(B)と、溶媒とを含むコーティング剤が、基材フィルムの少なくとも片面に塗布されてコーティング層が形成された積層フィルムであって、前記基材フィルムが、ポリテトラメチレングリコール単位1〜20質量%が共重合されたポリブチレンテレフタレート系重合体(変性PBT)とポリエチレンテレフタレート系重合体(PET)とを、PET/変性PBT=70/30〜95/5(質量比)の割合で混合した原料からなる少なくとも1方向に延伸されたフィルムであり、コーティング層と基材フィルムの層間接着強度が1.0N/cm以上であることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明におけるガスバリア性コーティング剤は、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)と、分子内の連続する3個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物(B)と、溶媒とを含む必要がある。
【0014】
このようにコーティング剤において、特定の構造を有する化合物(A)と化合物(B)とを配合することで、化合物(A)と化合物(B)との反応性が良いものが得られ、化合物(A)と化合物(B)との間のエステル結合により成形体にガスバリア性が付与される。このようなエステル結合は、化合物(A)と化合物(B)の混合物を熱処理することで生成でき、これによって化合物(A)と化合物(B)とが架橋して十分な架橋密度が得られると、ガスバリア性が向上するとともに耐水性をも有するものとなり、高湿度雰囲気下でも実使用に耐えうるだけのガスバリア性を維持できる高度なガスバリア性を有する成形体が得られる。以下、本発明において「高度なガスバリア性」とは、高湿度雰囲気下でも実使用に耐えうるだけのガスバリア性を維持できるものをいう。
【0015】
本発明における分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)としては、高分子、オリゴマー、低分子化合物の何れでもよい。高分子化合物としては、例えばポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、あるいはこれらの共重合体や、エチレン−ビニルアルコール共重合体、糖類、あるいは水酸基変成された各種高分子化合物や、ポリエチレングリコールのように両末端が水酸基である高分子化合物などが挙げられる。オリゴマーとしては、例えばオリゴ糖や上記高分子化合物における分子鎖の短いものが挙げられる。低分子化合物としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、単糖類、糖アルコールなどの他に、芳香族化合物として、カテコール(1,2−ジヒドロキシベンゼン)、レゾルシノール(1,3−ジヒドロキシベンゼン)、ヒドロキノン(1,4−ジヒドロキシベンゼン)などが挙げられる。本発明においては、これらの化合物の中でも、特にポリビニルアルコールがガスバリア性の点で最も好ましい。
【0016】
ポリビニルアルコールは、ビニルエステルの重合体を、完全または部分ケン化するなどの公知の方法により得ることができる。ビニルエステルとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、中でも酢酸ビニルが工業的に最も好ましい。ビニルアルコールには、本発明の効果を損ねない範囲であれば、他のビニル化合物が共重合されていてもよい。ただし、ポリビニルアルコール中の水酸基の比率が低すぎると、化合物(B)とのエステル化反応率が低下して本発明の目的とするガスバリア性を得ることができなくなる。従って、ポリビニルアルコールにおけるビニルアルコール単位と他のビニル化合物単位との割合は、モル比で、(ビニルアルコール単位)/(他のビニル化合物単位)=10/90〜100/0(モル%)の範囲にあることが好ましい。他のビニル系モノマーとしては、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸およびそのエステル、塩、無水物、アミド、ニトリル類や、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩や、炭素数2〜30のα−オレフィン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルピロリドン類などが挙げられる。
【0017】
ビニルエステルをケン化する方法としては、公知のアルカリケン化法や酸ケン化法を適用できるが、中でもメタノール中で水酸化アルカリを使用して加アルコール分解する方法が好ましい。ケン化度は、ガスバリア性を考慮すると100%に近いほど好ましい。ケン化度が低すぎるとガスバリア性能が低下する傾向にあることから、ケン化度は90%以上あることが好ましく、95%以上あることがより好ましい。また、ビニルエステルの平均重合度は、50〜3000の範囲であることが好ましく、80〜2500の範囲であることがより好ましく、100〜2000の範囲であるのが最適である。
【0018】
本発明における分子内の連続する3個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物(B)としては、例えば、分子内に下記構造式(1)で表される構造を含む化合物が挙げられる。
【0019】
【化1】
【0020】
ここでRは原子または原子団を表し、全て同じものであっても、全て異なっていてもよく、またいくつかは同じ原子または原子団であってもよい。Rとしては、例えば水素や、塩素、臭素といったハロゲン原子のほか、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、エステル基、フェニル基等でもよく、メチル基やエチル基などのアルキル基でもよい。ただし、廃棄処理などを考慮すると、塩素などのハロゲン原子は含まれていないことがより好ましい。
また、化合物(B)は環状になっていてもよく、芳香環を有するものであってもよい。そのような場合には、構造式(1)におけるRの数が少なくなることもある。また、化合物(B)のカルボキシル基のうち、2つのカルボキシル基の間で無水物構造が少なくとも1つ作られている化合物も、本発明においては、上記構造式(1)で表される化合物と同様の効果を発現する。
【0021】
この様な化合物としては、高分子、オリゴマー、低分子化合物の何れでもよいが、低分子化合物を用いると、粘度が低くなって取り扱いやすくなるためより好ましい。高分子やオリゴマーとしては、ポリマレイン酸やポリマレイン酸無水物およびこれらの共重合体が挙げられる。このようなものとしては、例えば(無水)マレイン酸とアクリル酸の(交互)共重合体などが挙げられる。なお、この化合物(B)を後述のようにコーティング剤として使用する場合には、粘度が低い方が取り扱いやすいため、数平均分子量が10,000未満であるオリゴマーが好ましい。また、低分子化合物としては、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、クエン酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、ベンゼンペンタカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキサカルボン酸、あるいはこれら化合物の無水物などが挙げられるが、本発明においては、中でも特に、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸が、反応性の点で好ましい。
【0022】
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸は、部分的にエステル化もしくはアミド化されていてもよい。なお、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸中のカルボキシル基は、乾燥状態では隣接したカルボキシル基どうしが脱水環化した酸無水物構造となりやすく、湿潤時や水溶液中では開環してカルボン酸構造となるが、本発明ではこれら閉環、開環を区別せず1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸として記述する。
【0023】
本発明におけるガスバリア性コーティング剤は、上記のように構成された化合物(A)83〜15質量%と、化合物(B)17〜85質量%とを含むことが好ましい。このように特定の構造を有する化合物(A)と化合物(B)とを用いることで、化合物(A)と化合物(B)との反応性が良くなり、化合物(A)と化合物(B)との配合割合を特定の割合とすることで、化合物(A)と化合物(B)との十分なエステル結合が得られ、優れたガスバリア性を有するものとなる。化合物(A)の配合割合が83質量%を超える、あるいは化合物(A)の配合割合が15質量%未満であると、化合物(A)と化合物(B)との十分なエステル結合が得られず、ガスバリア性に劣るものとなる。従って、化合物(A)と化合物(B)との配合割合は、化合物(A)65〜15質量%、化合物(B)35〜85質量%であることが好ましく、化合物(A)60〜20質量%、化合物(B)40〜80質量%であることがより好ましく、化合物(A)50〜20質量%、化合物(B)50〜80質量%であることがさらに好ましい。
【0024】
本発明におけるガスバリア性コーティング剤としては、その反応性や成形性、機械的特性などを考慮すると、化合物(A)としてポリビニルアルコールを用い、化合物(B)として1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸を用いて、両者の配合割合を、化合物(A)50〜20質量%、化合物(B)50〜80質量%としたものが特に好ましい。このような組成とすると、後述のように、優れたガスバリア性を有し、透明性や機械的特性に優れたコーティング層を、成形性良く作成できる。
【0025】
本発明におけるガスバリア性コーティング剤は、化合物(A)と化合物(B)とが溶媒に溶解あるいは分散されることで得られる。
【0026】
コーティング剤に使用される溶媒は特に限定されるものではなく、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、グリコール、グリセロールなどの有機溶剤や水などが適用できるが、有機溶剤を使用しない方が環境汚染の問題がなく、また有機溶剤を回収する必要がなくなって生産性が良くなり、コストダウンも図れる。従って、溶媒としては水を用いることが好ましい。なお、溶媒として水を用いる場合には、溶解性の向上や乾燥工程の短縮、溶液の安定性の改善などを考慮して、アルコールなどの揮発性の有機溶媒を少量添加してもよい。
【0027】
溶媒として水を用いるためには、コーティング剤の調製時にアルカリ化合物を加えることが好ましく、特に、化合物(B)の水溶液にアルカリ化合物を添加することが好ましい。化合物(B)は化合物(A)に比べて水への溶解度が低いため、水溶液とすることはできるものの、水溶液の安定性に劣る傾向にある。しかし、アルカリ化合物を添加すると、化合物(B)のカルボキシル基が中和されて水への溶解度が高まり、水溶液の安定性が向上する。その結果、得られるフィルムのガスバリア性も格段に良好なものとなる。アルカリ化合物の配合割合は、化合物(B)のカルボキシル基に対して0.1〜30モル%とすることが適切である。
【0028】
アルカリ化合物としては、化合物(B)が有するカルボキシル基を中和できるものであればよく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、有機水酸化アンモニウム化合物等が挙げられる。また、上記アルカリ化合物として、またはアルカリ化合物と併用して、アルカリ金属塩を加えることにより、アルカリ化合物と同様にガスバリア性が向上する。このようなアルカリ金属塩としては、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩等が好ましく、特に、次亜リン酸ナトリウムが好ましい。
【0029】
本発明におけるガスバリア性コーティング剤は、水溶性とすることが生産上好ましく、疎水性の共重合成分を多量に含有させると水溶性が損なわれるので好ましくない。
【0030】
コーティング剤の溶液濃度は、液の粘度や反応性、用いる装置の仕様によって適宜設定されるものであるが、あまりに希薄な溶液では、ガスバリア性を発現するのに十分な厚みのコーティング層を形成することが困難となり、また、その後の乾燥工程において時間がかかるという問題を生じやすい。一方、溶液濃度が高すぎると、混合操作や保存性などに問題を生じることがある。従って、コーティング剤における固形分濃度は、5〜60質量%の範囲であることが好ましく、10〜50質量%の範囲であることがより好ましい。
【0031】
コーティング剤の調製方法としては、撹拌機を備えた溶解釜等を用いて公知の方法で行えばよく、撹拌機としては、ホモジナイザー、ボールミル、高圧分散装置などの公知の装置を用いることができる。
【0032】
本発明におけるガスバリア性コーティング剤としては、塗布性や透明性、環境問題などを考慮すると、化合物(A)としてポリビニルアルコールを用い、化合物(B)として1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸を用い、この化合物(B)の有するカルボキシル基に対して0.1〜30モル%のアルカリ化合物を配合して、溶媒として水を用いたものが特に好ましい。このようなコーティング剤とすると、後述のように基材の少なくとも片面に塗布するだけで、成形体に優れたガスバリア性と透明性とを付与できる。
【0033】
なお、本発明におけるコーティング剤および/または基材フィルムには、その特性を大きく損わない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤などが添加されていてもよい。
【0034】
熱安定剤、酸化防止剤及び劣化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
強化材としては、例えばクレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、ゼオライト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、フッ素雲母、金属繊維、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維、フラーレン(C60、C70など)、カーボンナノチューブなどが挙げられる。
【0036】
また、本発明のガスバリア性コーティング剤には、少量の架橋剤成分を添加することもできる。少量の架橋剤を配合することにより、後述のように、熱処理により生じる架橋反応が進行しやすくなり、ガスバリア性とともに耐水性が向上して、高度なガスバリア性を有するものとなる。
【0037】
架橋剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、ジルコニウム塩化合物などが好適に使用できる。
【0038】
本発明におけるガスバリア性フィルムに使用される基材フィルムとしては、▲1▼ポリテトラメチレングリコール(PTMG)単位0.5〜15質量%が共重合されたポリエチレンテレフタレート系重合体(変性PET)からなる少なくとも1方向に延伸されたフィルム(以下フィルムAという)、または、▲2▼ポリテトラメチレングリコール(PTMG)単位1〜20質量%が共重合されたポリブチレンテレフタレート系重合体(変性PBT)とポリエチレンテレフタレート系重合体(PET)とを、PET/変性PBT=70/30〜95/5(質量比)の割合で混合した原料からなる少なくとも1方向に延伸されたフィルム(以下、フィルムBという)であることが必要である。
【0039】
本発明におけるフィルムAを構成する変性PETは、公知の製法、たとえばPETの重合工程においてPTMGを添加して重縮合して得ることができる。たとえばテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールを触媒の存在下にエステル交換させた後、所定量のPTMGを添加して重縮合する方法などが挙げられる。また本変性PETには発明の効果を損ねない範囲であれば他の成分を共重合することができる。
【0040】
他の共重合成分としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン、乳酸などのオキシカルボン酸、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのグリコールや、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多官能化合物が挙げられる。
【0041】。
変性PETにおけるPTMG単位の共重合量は、0.5〜15質量%であることが必要であり、1〜15質量%であることが好ましい。PTMGの共重合量が0.5質量%未満の場合には、コーティング層とフィルムAとの接着強力が低下するため好ましくない。また、PTMGの共重合量が15質量%を超える場合には、フィルムA表面の濡れ性が低下し、コーティング剤を塗布する際に、はじきを生じやすくなるため好ましくない。
【0042】
変性PETの分子量はフィルム状に溶融成形可能な範囲にあれば特に制限はない。例えば、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの等質量混合物を溶媒として、濃度0.5g/dl 、温度20℃で測定した相対粘度が、1.1〜3.0、好ましくは1.2〜2.5のものが用いられる。
【0043】
本発明において、もう一つの基材フィルムであるフィルムBは、PETと変性PBTとから構成される。このうちPETは、公知の製法、すなわち、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとからのエステル交換反応法、あるいは、テレフタル酸とエチレングリコールとからの直接エステル化法によりオリゴマーを得た後、溶融重合、あるいはさらに固相重合して得られる。また本発明の効果を損ねない範囲であれば他の成分を共重合することができる。他の共重合成分としては、前述の変性PETの共重合成分として例示した化合物を挙げることができる。
【0044】
また、変性PBTは、PBTの重合工程においてPTMGを添加して重縮合して得ることができる。たとえばテレフタル酸ジメチルと1,4−ブタンジオールを触媒の存在下にエステル交換させた後、所定量のPTMGを添加して重縮合する方法などが挙げられる。また本発明の効果を損ねない範囲であれば他の成分を共重合することができる。他の共重合成分としては、前述の変性PETの共重合成分として例示した化合物を挙げることができる。
【0045】。
変性PBTにおけるPTMG単位の共重合量は、1〜20質量%であることが必要であり、5〜15質量%であることが好ましい。PTMGの含有量が1質量%未満の場合には、コーティング層とフィルムBとの接着強力が低下するため好ましくない。また、PTMGの含有量が20質量%を超える場合には、特に量産スケールで生産した場合に押出時にフィルムが脈動する現象(いわゆるバラス現象)が発現することがありフィルムの厚み斑が大きくなるため好ましくない。
【0046】
フィルムBにおけるPETおよび変性PBTの分子量は、フィルム状に溶融成形可能な範囲にあれば特に制限はない。例えば、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの等質量混合物を溶媒として、濃度0.5g/dl 、温度20℃で測定した相対粘度が、1.1〜3.0、好ましくは1.2〜2.5のものが用いられる。
【0047】
本発明においてフィルムBを構成するPETと変性PBTの混合比率は、PET/変性PBT=70/30〜90/5(質量比)であることが必要であり、80/20〜90/5(質量比)であることが好ましい。変性PBTの混合比がこれより大きいと押出時にフィルムが脈動する現象(いわゆるバラス現象)が起こりやすかったり、フィルムの耐熱性が損なわれるため好ましくない。変性PBTの混合比がこれより小さいとコーティング層とフィルムB間の層間接着強度が低下するため好ましくない。
【0048】
フィルムAまたはBを構成する樹脂から未延伸フィルムを製造する方法としては、これら樹脂を押出機で加熱・溶融してTダイより押し出し、冷却ロールなどにより冷却固化させる方法、もしくは円形ダイより押し出して水冷あるいは空冷により固化させる方法、あるいは樹脂を溶媒に溶解し、その溶液を流延して溶媒を除去乾燥する方法などが挙げられる。
【0049】
延伸フィルムを製造する方法としては、前記のようにして作成した未延伸フィルムを一旦巻き取った後に延伸処理を行う方法、あるいは未延伸フィルムを巻き取ることなく引き続いて延伸処理を行う方法が挙げられる。延伸処理としては、同時2軸延伸法や逐次2軸延伸法を行うことが好ましい。本発明においては、フィルムの機械的強力や厚み均一性などを考慮すると、Tダイによるフラット式製膜法とテンター延伸法とを組み合わせることがより好ましい。
【0050】
基材フィルムのコーティング剤塗布面には、フィルムとコーティング層の接着性を向上するために、フィルム表面にコロナ放電処理をしてもよく、アンカーコーティング処理を施してもよい。
【0051】
上記のように構成された基材フィルムに、ガスバリア性コーティング剤が塗布される。本発明においては、化合物(A)がポリビニルアルコールであり、化合物(B)が1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸であり、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸中のカルボキシル基に対して0.1〜30モル%のアルカリ化合物を含有しており、溶媒として水を用いたコーティング剤を用いて、基材フィルムの少なくとも片面に、コーティング層を形成することが好ましい。
【0052】
コーティング剤の塗布方法は特に限定されるものではないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング等の通常の方法を用いることができる。本発明のコーティング剤は塗布性の良いものであるため、基材の表面に均一な厚みのコーティング層を形成できる。
【0053】
コーティング剤の塗布は、基材フィルムとして延伸フィルムを使用する場合には基材フィルムの延伸に先立って行ってもよく、あるいは延伸後の基材フィルムに行ってもよい。基材フィルムの延伸に先立ってコーティングを行う場合には、まず未延伸フィルムにコーティングして乾燥させた後、テンター式延伸機に供給してフィルムを走行方向と幅方向に同時に延伸(同時2軸延伸)し、その後、熱処理して乾燥する方法が挙げられる。また、多段熱ロール等を用いてフィルムの走行方向に延伸を行ってコーティングし、コーティング剤を乾燥させた後、テンター式延伸機によって幅方向に延伸(逐次2軸延伸)してもよい。また、走行方向の延伸とテンターでの同時2軸延伸を組み合わせることも可能である。
【0054】
コーティング剤は、自然乾燥により溶剤を揮発させて硬化してもよく、あるいは加熱乾燥して硬化してもよい。コーティング剤を熱処理したコーティング層には、エステル結合した化合物(A)と化合物(B)とが含まれているため、得られたコーティングフィルムは、ガスバリア性を発現するようになる。また、コーティング剤にアルカリ化合物が配合されている場合には、コーティング層には、前記の化合物(A)と化合物(B)とに加えて、さらにアルカリ化合物も含まれている。
【0055】
本発明においては、コーティング剤の乾燥後に熱処理を施すことが好ましい。コーティング剤に含まれる化合物(A)と化合物(B)とは反応性の良いものであるが、熱処理を施すとさらに反応性が向上して、架橋反応が生じることとなる。この架橋反応により十分な架橋密度が得られると、高湿度雰囲気下においても優れたガスバリア性を有するようになる。このような架橋反応を生じさせるためには、コーティング剤を塗布した後のコーティングフィルムに、120℃以上の熱処理を施すことが好ましく、150℃以上の高温で熱処理を施すことがより好ましい。熱処理温度があまりに低すぎると、コーティング層における架橋反応を十分に進行させることができず、高湿度雰囲気下におけるガスバリア性が低下する傾向にある。また、熱処理時間は、生産性やエネルギー消費を考慮すると短時間で行うことが好ましいが、あまりに短かすぎると上記架橋反応を十分に進行させることができず、十分なガスバリア性を有するフィルムを得ることが困難になる。また、熱処理時間が長くなりすぎると、架橋反応は促進されるものの、フィルムに着色が生じることがある。従って、本発明においては、熱処理時間は通常1秒以上300秒以下、好ましくは3秒以上180秒以下であるのがよい。
【0056】
本発明によって得られるガスバリア性積層フィルムにおいては、コーティング層と基材フィルムの層間接着強度を1.0N/cm以上とすることができる。ここでいう層間接着強度とは、幅15mm、長さ150mmの試験片を切り出し、引張速度300mm/minの条件で測定したT型剥離強度のことであり、かつコーティング層と基材フィルム間で剥離が起こった場合の剥離強度のことをいう。層間剥離強度が1.0N/cm未満の場合、たとえば製袋品に加工した際に層間剥離を起こし、包装袋としての実用性に劣るため好ましくない。
【0057】
コーティングフィルムのガスバリア性は、基材フィルムの種類や厚み、コーティング層の厚みにより変化するものであるが、20℃、85%RHにおける酸素透過係数が2000ml・μm/m2・day・MPa以下であることが好ましく、1000ml・μm/m2・day・MPa以下であることがより好ましく、500ml・μm/m2・day・MPa以下であることがさらに好ましい。
【0058】
コーティング層自体の酸素透過係数は、コーティングフィルムの酸素透過度と、熱可塑性樹脂フィルムの酸素透過度と、コーティング層の厚みとが分かれば、下記(1)式より求めることができる。
1/QF=1/QB+L/PC (1)式
ここで、QFはコーティングフィルムの酸素透過度(ml/m2・day・MPa)、QBは熱可塑性樹脂フィルムの酸素透過度(ml/m2・day・MPa)、PCはコーティング層の酸素透過係数(ml・μm/m2・day・MPa)、Lはコーティング層厚み(μm)である。
【0059】
本発明においては、上記の(1)式により求めたコーティング層の酸素透過係数が、500ml/m2・day・MPa以下であることが好ましく、300ml/m2・day・MPa以下がより好ましく、100ml/m2・day・MPa以下がさらに好ましい。
【0060】
本発明におけるガスバリア性フィルムのコーティング層の厚みは特に限定されるものではないが、上記のようなガスバリア性を有するフィルムとするためには、コーティング層の厚みを少なくとも0.1μm以上とすることが望ましい。コーティング層の厚みの上限は特に限定されるものではないが、あまり厚すぎるとベースフィルムの特性が活かせなくなるため、通常は100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下であることが望ましい。
【0061】
上記のようにコーティング剤が塗布されてなるガスバリア性フィルムは、ガスバリア性を有するコーティング層の厚みを薄くできるため、その適用範囲が広く、しかも短時間で作成できるため生産性の良いものとなる。
【0062】
また、本発明におけるガスバリア性フィルムには、ラミネート加工を施してもよい。
【0063】
本発明におけるガスバリア性フィルムは、酸素を遮断すべき物品の包装に好適に使用できる。このような物品としては、水、漬物、佃煮、惣菜、液体スープ、粉末スープ、ドレッシング、みそ、からし、わさび、調味料、畜肉(ハム、ソーセージ、ベーコン、ウィンナー)、ビーフジャーキー、水産練り製品、飲料、ゼリー、酒、ワイン、米飯、(無菌)米飯、おこわ、おにぎりの外装、もち、チーズ、ピザトースト、ラーメン、珍味、菓子、生菓子、饅頭の固装、食品のボイルあるいはレトルト用途(ミートソース、おかゆ、中華ソース、牛丼などの丼物、メンマ、煮豆、タケノコ、スープ、カレー類等)、タレ、スイートコーン、ペットフード、入浴剤、芳香剤、シャンプー、リンス、ボディソープ、ハンドソープ、フタ材、電子部品外装、輸液外装、殺菌処理分野、薬の分包、医薬品、医療用器具、化粧品関係、お茶袋、ティーパック、塩、塩乾物、テープ、煙草の外装などが挙げられる。また、このような物品を包装するために本発明のフィルムが用いられる形態は特に限定されないが、通常用いる方法としては、四方袋、連包三方袋、ガゼット袋、スタンディングパウチ、フタ材、成形容器の一部、ピロー袋などが挙げられる。
【0064】
本発明のガスバリア性フィルムを上記のような用途及び包装形態に使用する場合は、本発明のフィルムの少なくとも一方の面にヒートシール性を有するフィルムを積層して用いることが好ましい。ヒートシール性を有するフィルムとしては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)などのフィルムが挙げられる。また、本発明のフィルムに、ガスバリア性や水蒸気バリア性を有するさらに別のフィルムを積層して、さらに機能を高めて使用することもできる。ガスバリア性や水蒸気バリア性に優れたフィルムとしては、アルミニウム蒸着(VM)フィルム、金属酸化物蒸着フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)やナイロン(NY)などからなるフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリ酢酸ビニル(PVA)などが挙げられる。さらに、本発明のフィルムには、紙を積層しても良い。これらのフィルムは単独で積層してもよく、あるいは複数を組み合わせて積層しても良い。なお、このようなフィルムの積層を行う場合に、本発明のガスバリア性フィルムの配置は特に限定されるものではなく、最外層にあっても良く、あるいはフィルムの両面を他のフィルムによって被覆されていても良い。
【0065】
具体的な構成としては、本発明のガスバリア性フィルムをBFとして表すと、BF/PE、BF/PP、BF/EVA、BF/VMPE、BF/金属酸化物蒸着フィルム、BF/PET、BF/NY、BF/紙、PE/BF/PE、PP/BF/PE、NY/BF/PE、VMPET/BF/PE、BF/EVOH/PE、PP/BF/PE、BF/BF/PE、PE/BF/NY/PE、PP/BF/NY/PE、紙/BF/PE、BF/紙/PE、紙/PE/BF/PE、BF/PE/紙/PE、PE/紙/PE/BF/PE、NY/紙/PE/BF/PE、NY/PE/BF/PE、PE/PET/PE/BF/PE、PE/PET/PE/BF/PE/BF/PE/PVA/PEなどのような構成が挙げられるが、本発明のフィルムの使用形態はこれらに限定されるものではない。
【0066】
【実施例】
以下、本発明の実施例が詳細に説明される。しかし、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0067】
以下の実施例及び比較例における各物性値等の測定方法、コーティング剤の調製方法、ならびに基材フィルムの製造に用いた樹脂は、次に示す通りである。
【0068】
酸素透過係数
ガスバリア性の指標となる酸素透過係数は、酸素バリア測定器(モコン社製、OX−TRAN 2/20)を用いて、20℃、85%RHの雰囲気における酸素透過度を測定した。
【0069】
層間接着強度
グラビアコート法によりコーティング層側の面に接着剤((a)主剤ディックドライLX63F(大日本インキ化学工業社製)、(b)硬化剤KP−90(大日本インキ化学工業社製)、(c)酢酸エチル:(a)/(b)/(c)=1/12/10(質量比))を厚み約1μmとなるように塗布した後、80℃熱風で20秒間熱風乾燥した。続いて接着面にポリエチレンシーラント(TUXFCS#50:厚み50μm、東セロ社製)をドライラミネートした後、40℃で48時間エージング処理した。このようにして得られたラミネートフィルムについて、幅15mm、長さ150mmの試験片を切り出し、T型剥離強度を測定した。測定には島津製作所社製Autograph/AGS−100Gを用い、引張速度300mm/minの条件で測定した。剥離面が基材フィルムとコーティング層間であった場合のみ、本剥離強度をもって基材フィルム−コーティング層の層間剥離強度とした。
【0070】
参考例1 コーティング剤の調製
化合物(A)を含む溶液として、重合度1000、ケン化度99.3以上のポリビニルアルコール(ユニチカケミカル社製、UF−100)を用い、ポリビニルアルコールの20質量%水溶液を作成した。また、化合物(B)を含む溶液として、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(新日本理化社製、リカシッドBTW)を用い、化合物(B)の有するカルボキシル基に対して10モル%の水酸化ナトリウムが配合された水溶液を作成した。そして、化合物(A)と化合物(B)との配合割合が、質量比で、化合物(A)/化合物(B)=30/70(質量%)となるようにそれぞれの水溶液を混合・攪拌して、固形分濃度20質量%のコーティング剤を調製した。
【0071】
参考例2 変性PET1(PTMG共重合量1.0質量%)の調製
PETオリゴマーの存在するエステル化反応缶にテレフタル酸とエチレングリコールとのモル比1/1.6のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.1MPaG、滞留時間8時間の条件で、エステル化反応を行い、平均重合度7.5のPETオリゴマーを連続的に得た。
このPETオリゴマー59.4kgを重縮合反応缶に移送し、平均分子量1000のポリテトラメチレングリコール(PTMG)を0.6kg(共重合量1.0質量%)を添加し、常圧下、260℃の温度で、60分攪拌混合した。その後、ポリエステルの全酸成分1モルに対して、2×10−4モルの三酸化アンチモンと、1.7×10−4モルのリン酸トリエチルをそれぞれ添加し、重縮合反応缶内の温度を30分間で280℃に昇温し、圧力を徐々に減じて60分後に1.2hPa以下とした。この条件で、攪拌しながら4時間重縮合反応を行い、定法により払い出してペレット化した。得られた変性PETのフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの等重量混合物を溶媒として、濃度0.5g/dl、温度20℃で測定した相対粘度は1.40であった。
【0072】
参考例3 ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)
ユニチカ社製、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの等質量混合物を溶媒として、濃度0.5g/dl 、温度20℃で測定した相対粘度1.38のものを用いた。
【0073】
参考例4 変性PBT樹脂(PTMG共重合量10質量%)の調製
ジメチルテレフタレート194質量部、1,4−ブタンジオール108質量部、及びテトラブチルチタネート80ppm(ポリマーに対するチタン金属の質量に換算した数値)を加え、150℃から210℃に加熱昇温しながら2.5時間エステル交換反応を行った。得られたエステル交換反応生成物90質量部を重合缶に移送し、テトラブチルチタネートを40ppm添加した後、分子量1100のPTMGを10質量部添加して減圧を開始し、最終的に1hPaの減圧下、210℃から昇温し最終的に245℃の温度で2時間溶融重合して変性PBT樹脂を得た。フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの等質量混合物を溶媒として、濃度0.5g/dl、温度20℃で測定した相対粘度は1.60であった。
【0074】
実施例1
参考例2において調製した変性PET1を結晶化、乾燥した後、コートハンガータイプのTダイを具備したシリンダー径90mmの単軸押出機を使用して樹脂温度275℃で溶融押出し、20℃に温調されたキャストロールにピニングワイヤーに7KVの印加電圧をかけて密着急冷し、厚さ約190μmの未延伸シートを得た。得られた未延伸シートをロール縦延伸機で90℃、3.5倍、テンター横延伸機で120℃、4.5倍に延伸した後、横方向の弛緩率を3%として、225℃で熱処理を施し、室温まで徐冷し、厚さ約12μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸延伸フィルムを基材フィルムとし、この片面にコロナ処理を施した後、コロナ処理面に参考例1で調製したガスバリア性コーティング剤をマイヤーコーティング法によりコートした。80℃の熱風で2分間予備乾燥を行った後、フィルム端部を固定した状態で220℃、15秒間熱風処理することにより、ガスバリア層の厚みが約1μmのガスバリア性積層フィルムを得た。得られたフィルムの透明性、外観はいずれもコーティング前のフィルムとほとんど変わらなかった。得られたフィルムの酸素透過係数と層間剥離強度を測定した結果を表1に示した。
【0075】
実施例2〜3
参考例2においてPTMGの共重合量を5.0および10.0質量%となるようにした以外は同様の方法で変性PET2および変性PET3を調製した。これらを用い、縦延伸温度を86℃、横延伸温度を105℃とした以外は実施例1と同様にして厚さ約12μmの二軸延伸フィルムを作製した。得られた二軸延伸フィルムを基材フィルムとして、実施例1と同様の方法でガスバリア性積層フィルムを得た。得られたフィルムの酸素透過係数と層間剥離強度を測定した結果を表1に示した。
【0076】
比較例1
実施例1において変性PETの代わりにPETを用いた以外は実施例1と同様の方法によりガスバリア性積層フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数と層間剥離強度を測定した結果を表1に示した。
【0077】
比較例2
参考例2においてPTMGの共重合量を0.3質量%となるようにした以外は同様の方法で変性PET4を作製した。これを用いて実施例1と同様にしてガスバリア性積層フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数と層間剥離強度を測定した結果を表1に示した。
【0078】
比較例3
比較例1において、ガスバリア層を積層しなかった以外は比較例1と同様にしてPET単層フィルムを作製した。得られたフィルムの酸素透過係数を測定した結果を表1に示した。
【0079】
実施例4〜6、比較例4〜5
PETおよび参考例4により得られた変性PBTを表1に示す割合で混合した混合ポリエステル樹脂を用いて、実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。これを基材フィルムとして、実施例1と同様にしてガスバリア性コーティング剤をコート後、熱処理して積層フィルムを得た。得られたフィルムの酸素透過係数と層間剥離強度を測定した結果を表1に示した。
【0080】
【表1】
【0081】
これらの結果より、基材フィルムを構成する変性PETのPTMG共重合量が本発明に規定された範囲内である場合、また基材フィルムを構成するPETと変性PBTの質量比が本発明に規定された範囲内である場合に、ガスバリア性が高く、かつガスバリアコーティング層と基材フィルムとの層間接着強度の改善された積層フィルムが得られることがわかる。
【0082】
【発明の効果】
本発明によれば、透明性に優れ、焼却処理を行っても有害ガスの発生がなく、有機溶剤を使用していないため環境面からも生産性の点からも好ましく、高湿度雰囲気下でも実使用に耐えうるだけの高度なガスバリア性を有し、しかもガスバリア性コーティング層と基材フィルムの層間接着強度の高い積層フィルムを提供することができる。
Claims (8)
- 分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)と、分子内の連続する3個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物(B)と、溶媒とを含むコーティング剤が、基材フィルムの少なくとも片面に塗布されてコーティング層が形成された積層フィルムであって、前記基材フィルムが、ポリテトラメチレングリコール単位0.5〜15質量%が共重合されたポリエチレンテレフタレート系重合体(変性PET)からなる少なくとも1方向に延伸されたフィルムであり、コーティング層と基材フィルムの層間接着強度が1.0N/cm以上であることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
- 分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)と、分子内の連続する3個以上の炭素原子のそれぞれに少なくとも1個のカルボキシル基が結合されている化合物(B)と、溶媒とを含むコーティング剤が、基材フィルムの少なくとも片面に塗布されてコーティング層が形成された積層フィルムであって、前記基材フィルムが、ポリテトラメチレングリコール単位1〜20質量%が共重合されたポリブチレンテレフタレート系重合体(変性PBT)とポリエチレンテレフタレート系重合体(PET)とを、PET/変性PBT=70/30〜95/5(質量比)の割合で混合した原料からなる少なくとも1方向に延伸されたフィルムであり、コーティング層と基材フィルムの層間接着強度が1.0N/cm以上であることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
- 化合物(A)と化合物(B)の質量比(A/B)が83/17〜15/85であることを特徴とする請求項1または2記載のガスバリア性積層フィルム。
- 化合物(A)がポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
- 化合物(B)が1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
- コーティング層に、化合物(B)の有するカルボキシル基に対して0.1〜30モル%のアルカリ化合物が含まれることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
- コーティング層が、少なくとも120℃以上の温度で熱処理されていることを特徴とする請求項1〜6に記載のガスバリア性積層フィルム。
- 20℃、85%RHにおける酸素透過係数が2000ml・μm/m2・day・MPa以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002246884A JP2004083749A (ja) | 2002-08-27 | 2002-08-27 | ガスバリア性積層フィルム |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002246884A JP2004083749A (ja) | 2002-08-27 | 2002-08-27 | ガスバリア性積層フィルム |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004083749A true JP2004083749A (ja) | 2004-03-18 |
Family
ID=32054660
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002246884A Pending JP2004083749A (ja) | 2002-08-27 | 2002-08-27 | ガスバリア性積層フィルム |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004083749A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2019044525A1 (ja) * | 2017-08-30 | 2019-03-07 | 東レフィルム加工株式会社 | 積層体およびそれを用いた封止部材 |
-
2002
- 2002-08-27 JP JP2002246884A patent/JP2004083749A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2019044525A1 (ja) * | 2017-08-30 | 2019-03-07 | 東レフィルム加工株式会社 | 積層体およびそれを用いた封止部材 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR101613137B1 (ko) | 이접착성 폴리에스테르 필름 및 그것을 사용한 포장재료 | |
KR102621631B1 (ko) | 드라이블렌드 혼합물 | |
JP4162489B2 (ja) | ガスバリア性成形体、その製造方法、ガスバリア性フィルム、その製造方法 | |
JP4573959B2 (ja) | ガスバリア性コート剤、それを用いたガスバリア性フィルム、およびその製造方法 | |
KR101629050B1 (ko) | 열수축성 필름 | |
JP2004285194A (ja) | ポリエステル系樹脂組成物および成形体 | |
JPH0839716A (ja) | 複合蒸着フィルム及びその製造方法 | |
JP4146169B2 (ja) | ガスバリア性組成物、コート剤およびフィルム | |
JP4689780B2 (ja) | ガスバリア性フィルムおよびその製造方法 | |
JP2004083749A (ja) | ガスバリア性積層フィルム | |
JP2003112385A (ja) | ガスバリア性積層フィルム | |
JP2001158069A (ja) | ガスバリア性積層フィルム | |
JP3010758B2 (ja) | 積層体 | |
JP4302260B2 (ja) | ガスバリア性フィルム | |
JP4374638B2 (ja) | ガスバリア性積層フィルム | |
JP2002103446A (ja) | ニ軸配向ポリアミドフィルムの製造方法及びそれによって得られるニ軸配向ポリアミドフィルムとそれを用いた積層フィルム。 | |
JP4633341B2 (ja) | ガスバリア性組成物前駆体、コート剤およびフィルム | |
JP4326188B2 (ja) | ガスバリア性コート剤およびフィルム | |
JP2001205767A (ja) | 芳香族ポリエステル樹脂系積層フィルム | |
JP4651783B2 (ja) | ガスバリア性フィルムの製造方法 | |
JP4290228B2 (ja) | 積層体の製法 | |
JP7357422B1 (ja) | ガスバリア性積層体及びその製造方法 | |
JP4463902B2 (ja) | ガスバリア性フィルムの製造方法 | |
JP4478849B2 (ja) | 積層二軸配向ポリアミドフィルムの製造方法 | |
JP3801824B2 (ja) | ガスバリア性積層フィルム |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050808 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20071001 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080226 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20080415 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20090210 |