JP2004083456A - ジアゾニウム塩の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アゾ色素の合成中間体あるいは分析試薬,感熱記録材料用素材として重要で単離困難なジアゾニウム塩の製造方法を提供することにある。更には、油状もしくは結晶性の低い単離困難なジアゾニウム塩の簡便な製造方法を提供すること。
【解決手段】一般式(1)で表されるジアゾニウム塩を一般式(2)の化合物とともに非水溶性有機溶媒と水の混合系で塩交換することを特徴とする一般式(3)のジアゾニウム塩の製造方法。
【化1】
一般式(1) 一般式(2) 一般式(3)
(式中、R5〜R9は水素原子、アルコキシ基、アリールチオ基等を表し、Xp−、Ym−はアニオンを表し、Mn+はカチオンを表し、m、n、pは正数を表す。好ましくは、Xp−はBF4 −を、Ym−はスルホンイミドアニオンを表す。)
【選択図】 なし
【解決手段】一般式(1)で表されるジアゾニウム塩を一般式(2)の化合物とともに非水溶性有機溶媒と水の混合系で塩交換することを特徴とする一般式(3)のジアゾニウム塩の製造方法。
【化1】
一般式(1) 一般式(2) 一般式(3)
(式中、R5〜R9は水素原子、アルコキシ基、アリールチオ基等を表し、Xp−、Ym−はアニオンを表し、Mn+はカチオンを表し、m、n、pは正数を表す。好ましくは、Xp−はBF4 −を、Ym−はスルホンイミドアニオンを表す。)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジアゾニウム塩の製造方法に関し、特に感熱記録材料、感光記録材料における発色素材として有用なジアゾニウム塩の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジアゾニウム塩はアゾ色素の重要な合成中間体として知られている。アゾ色素の合成法については従来から種々の方法が知られており、「新実験化学講座」(丸善株式会社)14−III巻、1516−1534頁に記載されているように、酸化反応による合成、還元反応による合成、置換反応による合成、付加反応による合成、縮合反応による合成、その他の合成法が知られている。しかしながら、アゾ色素の工業的製造方法として広く利用されているのは、原料の入手性、コスト、収率等の点から、ジアゾニウム塩とアニリン、フェノール等のカプラーをアゾカップリングさせて製造する方法がほとんどである。
【0003】
また、ジアゾニウム塩は、ビリルビンの定量分析のための分析試薬としても知られており、重要な化合物である。これに関しては、特開平11−228517に記載がある。
【0004】
また、ジアゾニウム塩は非常に化学的活性の高い化合物であり、フェノール誘導体や活性メチレン基を有する、いわゆるカプラーと呼ばれる化合物と反応して容易にアゾ染料を形成すると共に、感光性をも有し、光照射によって分解し、その活性を失う。そこで、ジアゾ化合物は、ジアゾコピーに代表される光記録材料として古くから利用されている(日本写真学会編「写真工学の基礎−非銀塩写真編−」コロナ社(1982)P89〜P117、P182〜P201参照)。
【0005】
更に、光によって分解し活性を失う性質を利用して、最近では画像の定着が要求される記録材料にも応用され、代表的なものとして、ジアゾニウム塩とカプラーを画像信号に従って加熱し、反応させて画像を形成させた後光照射して画像を定着する、光定着型感熱記録材料が提案されている(佐藤弘次ら 画像電子学会誌第11巻 第4号(1982)P290−296など)。
【0006】
上記等の記録材料用ジアゾニウム塩は、安定性を向上させるためにマイクロカプセルに内包されたかたちで記録層中に含まれることが好ましい。マイクロカプセルの形成方法としては界面重合法および内部重合法が適している。マイクロカプセル形成方法の詳細については、米国特許第3,726,804号、同第3,796,669号等の明細書に記載がある。例えば、ポリウレタン、ポリウレアをカプセル壁材として用いる場合はポリイソシアネートおよびそれと反応してマイクロカプセル壁を形成する物質(例えばポリオール、ポリアミン、水)を水性媒体またはカプセル化すべき油性媒体中に混合し、水中でこれらを乳化分散し、次に加温することにより油滴界面で高分子形成反応を起こし、マイクロカプセル壁を形成する。このときジアゾニウム塩はマイクロカプセルの芯となる疎水性の有機溶媒に溶解または分散させる。よって、ジアゾニウム塩は疎水性有機溶媒に対する溶解度が高く、水に対する溶解度が低いことが重要である。
【0007】
これまでに、種々の対アニオンを有するジアゾニウム塩が知られている。一般的には、無機陰イオンとしては、ヘキサフルオロリン酸イオン、ホウフッ化水素酸イオン、塩化物イオン、硫酸水素イオン、硫酸イオンが、有機陰イオンとしてはポリフルオロアルキルカルボン酸イオン、ポリフルオロアルキルスルホン酸イオン、芳香族カルボン酸イオン、芳香族スルホン酸イオン、テトラアリールボレートイオン等が知られている。特にヘキサフルオロリン酸イオン、ホウフッ化水素酸イオンが一般的に用いられている。しかしながら、これらは有機溶媒に対する溶解性が低い、あるいは安定性が低い等の問題があり、記録材料用素材としては有効に用いることが困難であった。
【0008】
スルホンイミドアニオンを対アニオンとするジアゾニウム塩はJournal of Fluorine Chemistry, 2000,106,139、Inorganic.Chemistry,1993, 32,223、Mendeleev.Commun., 1992, 70、Synthesis,1998,1171、Synthesis,1999,90等に知られているが、ここに記載されているジアゾニウム塩は有機溶媒に対する溶解性が低く、水溶性が高いため記録材料用素材としては有効に用いることが困難であった。
【0009】
上記のように、感熱記録材料、感熱記録材料用素材としてのジアゾニウム塩は有機溶媒に対する溶解性が高い必要がある。しかしながら、有機溶媒に対する溶解性の高いジアゾニウム塩は融点が低い場合が多く、単離精製が困難な場合が多かった。特に、スルホンイミドアニオンを対アニオンとするジアゾニウム塩は融点が低く、室温でも油状である場合が多く、精製は困難を極めた。
【0010】
一般式(1)または(4)で表されるジアゾニウム塩は既知の方法で製造することが可能である。すなわち、対応するアニリンを酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等を用いてジアゾ化した後、一般式pMn+・nXP−の化合物(式中、Mn+はn価のカチオンを表し、XP−はp価のアニオンを表す)を添加し、塩交換することにより得られる。一般式(3)または(6)の化合物も同様に、対応するアニリンを酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等を用いてジアゾ化した後、一般式(5)で表される化合物を添加し塩交換することで得られるが、この場合、生成物の融点が低い場合が多く、結晶として単離できず、精製が困難であった。
【0011】
ところで、従来のジアゾニウム塩の精製は再結晶による方法が用いられているので、ジアゾニウム塩が油状もしくは結晶性の低い場合、再結晶の方法を用いることができず、これらの場合には単離が困難であったり、純度もしくは収率の低下を伴うという問題があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、アゾ色素の合成中間体あるいは分析試薬,感熱記録材料用素材として重要なジアゾニウム塩の製造方法を提供することにある。更には、油状もしくは結晶性の低い単離精製困難なジアゾニウム塩の簡便な製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の手段は以下の通りである。
<1> 下記一般式(1)で表されるジアゾニウム塩を一般式(2)で表される化合物と共に、非水溶性有機溶媒と水の混合系で塩交換することを特徴とする一般式(3)で表されるジアゾニウム塩の製造方法。
【0014】
【化7】
一般式(1)
(式中、R5、R6,R7,R8及びR9はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、アミド基又はニトロ基を表す。R5、R6,R7,R8及びR9が互いに結合し環を形成しても良い。XP−はp価のアニオンを表し、pは正数を表す。)
【0015】
【化8】
一般式(2)
(式中、Mn+はn価のカチオンを表し、Ym−はm価のアニオンを表し、n及びmは正数を表す。)
【0016】
【化9】
一般式(3)
(式中、R5、R6,R7,R8及びR9は、一般式(1)の置換基と同義である。Ym−及びmは、一般式(2)と同義である。)
<2> 下記一般式(4)で表されるジアゾニウム塩を一般式(5)で表される化合物と共に、非水溶性有機溶媒と水の混合系で塩交換することを特徴とする一般式(6)で表されるジアゾニウム塩の製造方法。
【0017】
【化10】
一般式(4)
(式中、R21、R22,R23はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基を表し、XP−はp価のアニオンを表し、pは正数を表す。)
【0018】
【化11】
一般式(5)
(式中、Mn+はn価のカチオンを表し、nは正数を表し、R3,R4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基を表す。R3,R4が互いに結合し環を形成しても良い。)
【0019】
【化12】
一般式(6)
(式中、R21、R22,R23はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基を表し、
R3,R4はそれぞれ独立にフルオロアルキル基、フルオロアリール基を表す。R3,R4が互いに結合し環を形成しても良い。)
【0020】
<3> 前記一般式(1)のジアゾニウム塩が一般式(3)のジアゾニウム塩よりも水溶性が高いことを特徴とする上記<1>に記載の一般式(3)で表されるジアゾニウム塩の製造方法。
<4> 前記一般式(4)のジアゾニウム塩が一般式(6)のジアゾニウム塩よりも水溶性が高いことを特徴とする上記2に記載の一般式(6)で表されるジアゾニウム塩の製造方法。
<5> 前記一般式(1)のジアゾニウム塩を固体として単離精製した後、一般式(1)で表されるジアゾニウム塩を一般式(2)で表される化合物と共に、非水溶性有機溶媒と水の混合系で塩交換することを特徴とする上記<1>または<3>に記載の一般式(3)で表されるジアゾニウム塩の製造方法。
【0021】
<6> 前記一般式(4)のジアゾニウム塩を固体として単離精製した後、一般式(4)で表されるジアゾニウム塩を一般式(5)で表される化合物と共に、非水溶性有機溶媒と水の混合系で塩交換することを特徴とする上記2または4に記載の一般式(6)で表されるジアゾニウム塩の製造方法。
<7> 前記一般式(1)または(4)において、XP−がホウフッ化水素酸イオン(BF4 −)であることを特徴とする上記<1>乃至<6>のいずれかに記載の一般式(3)または(6)のジアゾニウム塩の製造方法。
<8> 前記非水溶性有機溶媒が、前記一般式(1)、(3)、(4)及び(6)のジアゾニウム塩を溶解することができ、かつ、水と混合したとき2層分離する100℃以下の沸点を有する有機溶媒であることを特徴とする上記<1>乃至<7>のいずれかに記載のジアゾニウム塩の製造方法。
【0022】
<9> 前記非水溶性有機溶媒が酢酸エチル、メチルエチルケトンのいずれか、またはこれらを含有する溶媒であることを特徴とする上記<8>記載のジアゾニウム塩の製造方法。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のジアゾニウム塩の製造方法を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のジアゾニウム塩は(置換)ベンゼンジアゾニウムカチオンと対アニオンがイオン結合した化合物である。
本発明のジアゾニウム塩の製造方法は原料であるジアゾニウム塩と、非水溶性有機溶媒と水の混合系において、前記ジアゾニウム塩と異なる対アニオンを有するイオン性化合物との反応によりジアゾニウム塩の対アニオンとイオン性化合物の対アニオンが交換反応を起こし、対アニオンが前記イオン性化合物の対アニオンであるジアゾニウム塩へと変換される反応を利用するものである。前記イオン性化合物の対アニオンを変更することにより目的のジアゾニウム塩を得ることができる。ここで、本発明で前記非水溶性有機溶媒とは、体積で水と1:1の比率で混合したとき水と該非水溶性有機溶媒が2層に分離する有機溶媒を意味する。
【0024】
次に一般式(1)で表されるジアゾニウム塩について述べる。
(一般式(1)のジアゾニウム塩)
本発明のジアゾニウム塩は下記一般式(1)で表される。
【0025】
【化13】
一般式(1)
(式中、R5、R6,R7,R8及びR9はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、アミド基又はニトロ基を表す。R5、R6,R7,R8及びR9が互いに結合し環を形成しても良い。XP−はp価のアニオンを表し、pは正数を表す。)
【0026】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が好ましく、特にフッ素、塩素が好ましい。
【0027】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアルキル基は、置換基を有していても無置換でも良い。総炭素数1から30のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルヘキシル基、ノルマルオクチル基、2−エチルヘキシル基、3,5,5,−トリメチルヘキシル基、ノルマルドデシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、α−メチルベンジル基、アリル基、2−クロロエチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−フェノキシエチル基、2−(2,5−ジ−ターシャリーアミルフェノキシ)エチル基、2−ベンゾイルオキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、ブトキシカルボニルエチル基、2−イソプロピルオキシエチル基、2−メタンスルホニルエチル基、2−エトキシカルボニルメチル基、1−(4−メトキシフェノキシ)−2−プロピル基、トリクロロメチル基又はトリフルオロメチル基が好ましい。特に、好ましくは、総炭素数1から5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基が好ましい。
【0028】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアリール基は置換基を有していても無置換でも良い。総炭素数6から30のアリール基が好ましく、たとえばフェニル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−ニトロフェニル基、4−アセトアミドフェニル基、4−オクタノイルアミノフェニル基又は4−(4−メチルフェニルスルホニルアミノ)フェニル基が好ましい。特に、好ましくは炭素数6から10のアリール基が好ましく、フェニル基、クロロフェニル基が好ましい。
【0029】
上記一般式(1)において、R5,R6,R7,R8及びR9で表されるアルコキシ基は置換基を有していてもよく、総炭素数1から20のアルコキシ基が好ましい。たとえば、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ノルマルブチルオキシ基、ターシャリーブチルオキシ基、ノルマルヘキシルオキシ基、ノルマルオクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5,−トリメチルヘキシルオキシ基、ノルマルデシルオキシ基、ノルマルドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、3−ペンチルオキシ基、ベンジルオキシ基、アリルオキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−フェノキシエトキシ基、ネオペンチルオキシ基、2−(2,5−ジ−ターシャリーアミルフェノキシ)エトキシ基、2−ベンゾイルオキシエトキシ基、メトキシカルボニルメチルオキシ基、メトキシカルボニルエチルオキシ基、ブトキシカルボニルエチルオキシ基又は2−イソプロピルオキシエチルオキシ基が好ましい。
特に好ましくは炭素数4から10のアルコキシ基が好ましく、ノルマルブチルオキシ基、ターシャリーブチルオキシ基、ノルマルヘキシルオキシ基、ノルマルオクチルオキシ基、ノルマルヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5,−トリメチルヘキシルオキシ基、ノルマルデシルオキシ、ノルマルドデシルオキシ、2−イソプロピルオキシエチルオキシ基がさらに好ましい。
【0030】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアリールオキシ基は置換基を有していてもよく、総炭素数6から20のアリールオキシ基が好ましい。たとえばフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基又は2−クロロフェノキシ基が好ましい。特に好ましくは総炭素数6から10のアリールオキシ基が好ましく、フェノキシ基又は4−クロロフェノキシ基が好ましい。
【0031】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアシル基は置換基を有していても良く、総炭素数2から30のアシル基が好ましい。たとえばアセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基又はベンゾイル基が好ましい。
【0032】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアルコキシカルボニル基は置換基を有していても良く、総炭素数2から30のアルコキシカルボニル基が好ましい。例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基又はブトキシカルボニル基が好ましい。
【0033】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアリールオキシカルボニル基は置換基を有していても良く、総炭素数7から30のアリールオキシカルボニル基が好ましい。例えばフェノキシカルボニル基が好ましい。
【0034】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるカルバモイル基は置換基を有していても良く、総炭素数1から30のカルバモイル基が好ましい。例えばカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N,N−ジオクチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピロリジノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基又はヘキサメチレンイミノカルボニル基が好ましい。
【0035】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアルキルチオ基は、置換基を有していてもよく、総炭素数1から20のアルキルチオ基が好ましい。たとえば、メチルチオ基、エチルチオ基、ノルマルブチルチオ基、ターシャリーブチルチオ基、ノルマルヘキシルチオ基、ノルマルオクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノルマルドデシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ベンジルチオ基、4−メチルベンジルチオ基、エトキシカルボニルメチルチオ基が好ましい。特に好ましくは総炭素数1から12のアルキルチオ基が好ましく、シクロヘキシルチオ基、ノルマルオクチルチオ基、ノルマルドデシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ベンジルチオ基、4−メチルベンジルチオ基が好ましい。
【0036】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアリールチオ基は置換基を有していても無置換でも良い。総炭素数6から30のアリールチオ基が好ましく、たとえばフェニルチオ基、4−メチルフェニルチオ基、3−メチルフェニルチオ基、2−メチルフェニルチオ基、4−クロロフェニルチオ基又は2−クロロフェニルチオ基が好ましい。特に好ましくは総炭素数6から10のアリールチオ基が好ましく、フェニルチオ基、4−メチルフェニルチオ基又は4−クロロフェニルチオ基が好ましい。
【0037】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアルキルスルホニル基は、置換基を有していてもよく、総炭素数1から20のアルキルスルホニル基が好ましい。たとえば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ノルマルブチルスルホニル基、ノルマルヘキシルスルホニル基、ノルマルオクチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ノルマルデシルスルホニル基、ノルマルドデシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、ベンジルスルホニル基又はエトキシカルボニルメチルスルホニル基が好ましい。特に好ましくは総炭素数1から12のアルキルスルホニル基が好ましく、ノルマルヘキシルスルホニル基、ノルマルオクチルスルホニル基、ノルマルデシルスルホニル基、ノルマルドデシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、ベンジルスルホニル基、4−メチルベンジルスルホニル基が好ましい。
【0038】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアリールスルホニル基は置換基を有していても無置換でも良い。総炭素数6から30のアリールスルホニル基が好ましく、たとえばフェニルスルホニル基、4−メチルフェニルスルホニル基、3−メチルフェニルスルホニル基、2−メチルフェニルスルホニル基、4−クロロフェニルスルホニル基又は2−クロロフェニルスルホニル基が好ましい。特に好ましくは総炭素数6から10のアリールスルホニル基が好ましく、フェニルスルホニル基、4−メチルフェニルスルホニル基または4−クロロフェニルスルホニル基が好ましい。
【0039】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアミノ基は置換基を有していても無置換でも良い。例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジ(ノルマルヘキシル)アミノ、N−メチル−N−オクチルアミノ基、N−ヘキシルーN−(1−(4−メトキシフェニルオキシ)−2−プロピル)アミノ、N,N−ビス(3−メトキシカルボニルプロピル)アミノ、N,N−ビス(3−エトキシカルボニルプロピル)アミノ、N−メチル−N−ドデシルアミノ基、N−メチル−N−2−オクタノイルオキシエチルアミノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、ヘキサメチレンイミノ基、4−(2−エチルヘキシル)ピペラジノ基、4−ベンゼンスルホニルピペラジノ基、インドリノ基、ビス(N,N−ジブチルカルバモイルメチル)アミノ基又はN−メチル−N−ベンジルアミノ基が好ましい。特に好ましくは総炭素数2から30の置換アミノ基が好ましく、ジエチルアミノ、ジ(ノルマルヘキシル)アミノ、N−ヘキシルーN−(1−(4−メトキシフェニルオキシ)−2−プロピル)アミノ、ビス(N,N−ジブチルカルバモイルメチル)アミノ基、N,N−ビス(3−メトキシカルボニルプロピル)アミノ、N,N−ビス(3−エトキシカルボニルプロピル)アミノが好ましい。
【0040】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアミド基は置換基を有していても無置換でも良い。例えばアセトアミド基、プロピオニルアミノ基、ピバロイルアミノ基、N−メチルアセトアミド基、ベンズアミド基、2−メトキシベンズアミド基、4−メトキシベンズアミド基又は2−オキソピロリジノ基、4−メチルベンズアミド、2−メチルベンズアミドが好ましい。特にアセトアミド基、ピバロイルアミノ基が好ましい。
【0041】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9が結合し環を形成する場合、形成される環は環員数5乃至6の環が好ましい。シクロペンテン環、シクロヘキセン環、ベンゼン環、ナフタレン環等の炭化水素環でも、フラン環、チオフェン環、ピラン環等の複素環であっても良い。
【0042】
上記一般式(1)において、XP−はp価のアニオンを表し、pは正数を表す。
XP−で表されるp価のアニオンである無機陰イオンとしては、ホウフッ化水素酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸水素イオン、硫酸イオンが有機陰イオンとしてはアルキルカルボン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、芳香族カルボン酸イオン、芳香族スルホン酸イオン等が挙げられる。
【0043】
原料である前記一般式(1)のジアゾニウム塩は、既知の方法で製造することが可能である。すなわち、対応するアニリンを酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等を用いてジアゾ化した後、一般式pMn+・nXP−の化合物(式中、Mn+はn価のカチオンを表し、XP−はp価のアニオンを表す)を添加し、塩交換することにより得られる。
【0044】
上記一般式(1)において、原料となるジアゾニウム塩は、最終生成物であるジアゾニウム塩よりも水溶性が高いことが好ましい。水溶性が高いジアゾニウム塩は、一般に塩交換反応後の水層側への移行が優位に進み、ジアゾ化時に副生する水溶性不純物を除去することが容易である。この段階での精製効果が高まり純度の高い原料のジアゾニウム塩を得ることができる。この点でXP−で表されるp価のアニオンとしてはホウフッ化水素酸イオンが好ましい。
【0045】
上記一般式(1)において、原料となるジアゾニウム塩は、結晶性が高いジアゾニウム塩が好ましい。結晶性が高いジアゾニウム塩は、一般に再結晶等により精製が容易であるので、ジアゾ化時に副生する不純物を除去することが容易である。この段階で精製を行ない、純度の高い原料のジアゾニウム塩を得ることができる。この点でXP−で表されるp価のアニオンとしてはホウフッ化水素酸イオンが好ましい。
【0046】
上記一般式(1)において、原料となるジアゾニウム塩は、その融点が高い方が好ましく、その融点が120℃以上のジアゾニウム塩が好ましい。融点が120℃以上のジアゾニウム塩は一般に再結晶等により精製が容易であるので、ジアゾ化時に副生する不純物を除去することが容易である。この段階で精製を行ない、純度の高い原料のジアゾニウム塩を得ることができる。この点でXP−で表されるp価のアニオンとしてはホウフッ化水素酸イオンが好ましい。
【0047】
上記一般式(1)で表されるジアゾニウム塩のうち、特に好ましくは一般式(4)で表されるジアゾニウム塩である。以下一般式(4)について述べる。
(一般式(4)のジアゾニウム塩)
本発明のジアゾニウム塩は下記一般式(4)で表される。
【0048】
【化14】
一般式(4)
(式中、R21、R22はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基を表し、XP−はp価のアニオンを表し、pは正数を表す。)
【0049】
R21、R22で表されるアルキル基は置換基を有していても良く、総炭素数1から30のアルキル基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基、セカンダリーブチル、イソブチル基、ノルマルペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、イソペンチル基、ノルマルヘキシル基、ノルマルオクチル基、2−エチルヘキシル基、3,5,5,−トリメチルヘキシル基、ノルマルドデシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、α−メチルベンジル基、アリル基、2−クロロエチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−イソプロピルオキシエチル基、2−アリルオキシエチル基、2−ブトキシエチル、2−フェノキシエチル基、2−(2,5−ジ−ターシャリーアミルフェノキシ)エチル基、2−ベンゾイルオキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、ブトキシカルボニルエチル基が好ましい。更に、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−イソプロピルオキシエチル基が好ましく、特にエチル基、ブチル基、2−イソプロピルオキシエチル基が好ましい。
【0050】
上記一般式(4)において、R21又はR22で表されるアリール基は置換基を有していてもよく、総炭素数6から30のアリール基が好ましい。たとえばフェニル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基又は2−クロロフェニル基が好ましい。特に、フェニル基、4−メチルフェニル基が好ましい。
【0051】
上記一般式(4)において、R23で表されるアルキル基は置換基を有していてもよく、総炭素数1から30のアルキル基が好ましい。たとえば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ノルマルペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、イソペンチル基、ノルマルヘキシル基、ノルマルオクチル基、2−エチルヘキシル基、3,5,5,−トリメチルヘキシル基、ノルマルドデシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、アリル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−フェノキシエチル基、2−(2,5−ジ−ターシャリーアミルフェノキシ)エチル基、メトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基又はブトキシカルボニルエチル基が好ましい。
【0052】
上記一般式(4)において、R23で表されるアリール基は置換基を有していてもよく、総炭素数6から30のアリール基が好ましい。たとえばフェニル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基又は2−クロロフェニル基が好ましい。
【0053】
上記一般式(4)で表されるジアゾニウム塩は結晶性が高いジアゾニウム塩が好ましい。好ましくはその融点が120℃以上のジアゾニウム塩である。融点が120℃以上のジアゾニウム塩は一般に再結晶等により精製が容易であるので、ジアゾ化時に副生する不純物を除去することが容易である。この段階で精製を行ない、純度の高い原料のジアゾニウム塩を得ることができる。この点でXP−で表されるp価のアニオンとしてはホウフッ化水素酸イオンが好ましい。
【0054】
原料である前記一般式(4)のジアゾニウム塩は、既知の方法で製造することが可能である。すなわち、対応するアニリンを酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等を用いてジアゾ化した後、一般式pMn+・nXP−の化合物(式中、Mn+はn価のカチオンを表し、XP−はp価のアニオンを表す)を添加し、塩交換することにより得られる。
【0055】
上記一般式(4)において、原料となるジアゾニウム塩は、最終生成物であるジアゾニウム塩よりも水溶性が高いことが好ましい。水溶性が高いジアゾニウム塩は、一般に塩交換反応後の水層側への移行が優位に進み、ジアゾ化時に副生する水溶性不純物を除去することが容易である。この段階での精製効果が高まり純度の高い原料のジアゾニウム塩を得ることができる。この点でXP−で表されるp価のアニオンとしてはホウフッ化水素酸イオンが好ましい。
【0056】
上記一般式(4)において、原料となるジアゾニウム塩は結晶性が高いジアゾニウム塩が好ましい。結晶性が高いジアゾニウム塩は、一般に再結晶等により精製が容易であるので、ジアゾ化時に副生する不純物を除去することが容易である。この段階で精製を行ない、純度の高い原料のジアゾニウム塩を得ることができる。この点でXP−で表されるp価のアニオンとしてはホウフッ化水素酸イオンが好ましい。
【0057】
上記一般式(4)において、原料となるジアゾニウム塩は、その融点が高い方が好ましく、その融点が120℃以上のジアゾニウム塩が好ましい。融点が120℃以上のジアゾニウム塩は一般に再結晶等により精製が容易であるので、ジアゾ化時に副生する不純物を除去することが容易である。この段階で精製を行ない、純度の高い原料のジアゾニウム塩を得ることができる。この点でXP−で表されるp価のアニオンとしてはホウフッ化水素酸イオンが好ましい。
【0058】
上記一般式(2)で表される化合物について述べる。
(一般式(2)の化合物)
本発明の化合物は下記一般式(2)で表される。
【0059】
【化15】
一般式(2)
(式中、Mn+はn価のカチオンを表し、Ym−はm価のアニオンを表し、n及びmは正数を表す。)
Mn+で表されるn価のカチオンは無機あるいは有機のカチオンが好ましい。中でも水溶性が高いカチオンが好ましい。有機カチオンとしてはテトラメチルアンモニウム等の4級アンモニウムカチオンが好ましい。特に好ましくは無機カチオンである。例えば、水素イオン、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属カチオン、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属カチオンが好ましい。特に、リチウム、ナトリウム、カリウムが好ましい。
Ym−で表されるm価のアニオンは有機溶媒への溶解性が高いアニオンが好ましい。アニオンとしては有機、無機のいずれのアニオンでも良く、無機アニオンとしてはヘキサフルオロリン酸イオンが好ましい。有機アニオンとしては(置換)スルホンイミドアニオンが好ましい。
【0060】
一般式(2)で表される化合物のうち特に好ましくは一般式(5)で表される化合物である。以下一般式(5)について述べる。
(一般式(5)の化合物)
【0061】
【化16】
一般式(5)
Mn+で表されるn価のカチオンは無機あるいは有機のカチオンが好ましい。中でも水溶性が高いカチオンが好ましい。有機カチオンとしてはテトラメチルアンモニウム等の4級アンモニウムカチオンが好ましい。特に好ましくは無機カチオンである。例えば、水素イオン、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属カチオン、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属カチオンが好ましい。特に、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムが好ましい。
【0062】
上記一般式(5)において、R3、R4で表されるアルキル基は置換基を有していてもよく総炭素数1から20のアルキル基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、ノルマルブチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基及びパーフルオロオクチル基が好ましい。この中でも、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基又はパーフルオロオクチル基が特に好ましい。
【0063】
上記一般式(5)において、R3、R4で表されるアリール基は置換基を有していてもよく総炭素数6から20のアリール基が好ましい。たとえば、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−メトキシカルボニルフェニル基、2−メトキシカルボニルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基及びペンタフルオロフェニル基を挙げることができる。この中でも、電子吸引性基が置換したアリール基が好ましく、4−フルオロフェニル基又はペンタフルオロフェニル基が特に好ましい。
【0064】
次に一般式(3)で表されるジアゾニウム塩について述べる。
(一般式(3)のジアゾニウム塩)
【0065】
【化17】
一般式(3)
(式中、R5、R6,R7,R8及びR9で表される基は一般式(1)に示した基と同一である。Ym−は一般式(2)と同一のアニオンを表し、mは正数を表す。)一般式(3)で表されるジアゾニウム塩のうち特に好ましくは一般式(6)で表されるジアゾニウム塩である。
【0066】
次に一般式(6)で表されるジアゾニウム塩について述べる。
(一般式(6)のジアゾニウム塩)
【0067】
【化18】
一般式(6)
R21、R22,R23で表される基は一般式(4)に示した基と同一である。R3、R4で表される基は一般式(5)に示した基と同一である。
【0068】
前記最終生成物のジアゾニウム塩の融点が低い場合、該ジアゾニウム塩が油状物となり単離精製が従来困難であったが、本発明に係るジアゾニウム塩の製造方法の特徴である塩交換反応により、油状物あるいは結晶としての単離が可能である。ジアゾニウム塩の融点が低い場合とは、常温では結晶としての形態を取り難く一般的に油状物となってしまうような場合をいい、40℃以下の融点を有するジアゾニウム塩等が該当する。原料であるジアゾニウム塩の融点が120℃以上が好ましいが、更に、低融点を有する場合は、生成するジアゾニウム塩との単離が従来困難であったが、本発明の製造方法によると単離精製が極めて容易となる。最終生成物であるジアゾニウム塩の融点が低く、40℃以下のとき、特に顕著な効果を奏する。
【0069】
(ジアゾニウム塩の製造方法)
本発明のジアゾニウム塩の製造方法は原料であるジアゾニウム塩と、非水溶性有機溶媒と水の混合系において、前記ジアゾニウム塩と異なる対アニオンを有するイオン性化合物との反応によりジアゾニウム塩の対アニオンとイオン性化合物の対アニオンが交換反応を起こし、対アニオンが前記イオン性化合物の対アニオンであるジアゾニウム塩へと変換される反応を利用するものである。
【0070】
前記一般式(3)または(6)のジアゾニウム塩の製造のために使用される前記非水溶性有機溶媒は、前記一般式(1)、(3)、(4)及び(6)のジアゾニウム塩を溶解することができ、かつ、体積で水と1:1の比率で混合したとき水と該非水溶性有機溶媒が2層に分離する100℃以下の沸点を有する有機溶媒を意味する。
【0071】
前記非水溶性有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の酢酸エステル類、ジエチルエーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類を挙げることができ、中でも沸点が低い酢酸エステル類、ケトン類が好ましく、更に、酢酸エステル、メチルエチルケトンが好ましく、特に酢酸エチルが好ましい。
また、これらの該非水溶性有機溶媒は単独で用いても良く、また、それらの含む混合溶媒としても使用することができる。
該非水溶性有機溶媒は、揮発性を有することが好ましく、さらに、減圧下溶媒留去が可能でその沸点が100℃以下の場合より好ましい。
【0072】
本発明に係る前記非水溶性有機溶媒の使用量は目的とするジアゾニウム塩が充分溶解する量であればよく、特に制限がないが、操作性、経済性の観点から、目的のジアゾニウム塩に対し1から20倍重量が好ましく、2から10倍重量が更に好ましい。
【0073】
本発明に使用する水としては、蒸留水、イオン交換水が好ましいが、通常の井水、水道水を使用しても良い。使用する水量は特に制限はないが、操作性及び収率等の観点から、前記非水溶性有機溶媒の使用量に対し、1/10〜10倍容量が好ましく、1/2〜2倍容量が更に好ましい。
【0074】
本発明の製造方法における反応温度は、0℃から用いた有機溶媒の還流温度までが好ましい。ジアゾニウム塩は不安定な化合物であるので、0〜30℃の低温で反応を行なうことが更に好ましい。
本発明の製造方法における反応時間としては30分〜6時間が好ましく、1時間〜3時間が更に好ましい。前記原料のジアゾニウム塩に対する前記イオン性化合物の使用量はその組み合わせにより適宜調製される。前記原料のジアゾニウム塩に対する前記イオン性化合物の使用量としては、1/2〜2倍モルが好ましく、0.9〜1.1倍モルが更に好ましい。該イオン化合物の添加方法としては、単独で加えることもできるが、溶液または懸濁液として添加することが好ましい。さらに、水に溶解して添加することが好ましい。
【0075】
本発明の製造方法により、対アニオンを交換したジアゾニウム塩は有機層と水層を分離した後、有機層を濃縮することにより結晶としても油状物としても単離することができる。このとき、反応終了後、有機層を更に水及び/または食塩水で洗浄することが好ましい。また得られた有機層は、濃縮前に硫酸マグネシウム等の生成したジアゾニウム塩に影響がない乾燥剤を使用して乾燥しても良い。
【0076】
本発明の製造方法により得られたジアゾニウム塩は、塩交換反応終了後に得られた有機層を濃縮せず、そのまま次の操作に使用しても良い。例えば、カプラー等の反応剤を添加し、アゾ色素形成反応に用いても良い。また、そのまま感熱記録材料のための材料として使用しても良い。
【0077】
本発明の製造方法により得られたジアゾニウム塩は、有機層を濃縮した後さらに溶媒で再結晶し精製することも可能である。使用できる溶媒としては、生成するジアゾニウム塩に応じて適宜選択することができる。前記非水溶性有機溶媒及び他の溶媒を使用することができる。他の溶媒としては、ヘキサン等の炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒及び水等の単独若しくは混合溶媒として使用することができる。特に、酢酸エチルとアルコール類(好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール)の混合溶媒、アルコール類(好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール)の混合溶媒、アルコール類単独、アルコール類(好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール)と水との混合溶媒、アルコール類(好ましくは、エタノール、イソプロパノール)とヘキサンの混合溶媒、アルコール類(好ましくは、エタノール、イソプロパノール)とトルエンの混合溶媒が好ましい。
【0078】
本発明の製造方法によりジアゾニウム塩を製造する場合、原料のジアゾニウム塩はアニオン部が異なる化合物を2種以上併用しても良い。また、生成物のジアゾニウム塩の対アニオンが異なる2種以上のジアゾニウム塩の混合物として得ることも可能である。このときは、添加するイオン性化合物のアニオン部の異なる2種以上のイオン性化合物を用いれば良い。ジアゾニウム塩のジアゾニウムカチオンが異なる2種以上のジアゾニウム塩の混合物を得ることも可能である。このときは、原料のジアゾニウム塩のジアゾニウムカチオンの異なる2種以上のジアゾニウム塩を用いれば良い。
【0079】
本発明の製造方法において、原料であるジアゾニウム塩に対応するアニリンをジアゾ化した後、イオン性化合物を添加して得られた原料となる該ジアゾニウム塩を固体として単離精製した後、前述の単離工程を含まない場合と同様に、非水溶性有機溶媒と水の混合系において、該ジアゾニウム塩と異なる対アニオンを有するイオン性化合物との反応によりジアゾニウム塩の対アニオンとイオン性化合物の対アニオンが交換反応を起こし、対アニオンが前記イオン性化合物の対アニオンであるジアゾニウム塩へと変換することもできる。
【0080】
以下に、一般式(1)または(4)で表されるジアゾニウム塩について具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0081】
【化19】
【0082】
【化20】
【0083】
以下に、一般式(2)または(5)で表される化合物について具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
【化21】
【0085】
【化22】
【0086】
以下に、一般式(3)または(6)で表されるジアゾニウム塩について具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
【化23】
【0088】
【化24】
【0089】
【化25】
【0090】
【化26】
【0091】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
<4−(4−メチルフェニルチオ)−2,5−ジ(ブトキシ)ベンゼンジアゾニウム トリフルオロメタンスルホンイミドイド(例示化合物D−3)の製造>
4−(4−メチルフェニルチオ)−2,5−ジ(ブトキシ)アニリン塩酸塩(下記化合物1−a)39.5gを200mLのメタノールに溶解し、濃塩酸18mLを加えて0℃に冷却した。ここへ亜硝酸ナトリウム7.6g、水20mLの溶液を滴下し、10℃で1時間攪拌した後、反応混合物にナトリウムテトラフルオロボレート13.2gを加えて室温で30分間攪拌した。ここへ、水500mLを加えて晶析した。析出した結晶を濾取し水で洗浄後、イソプロパノールとヘキサンの混合溶媒から再結晶した。乾燥後、例示化合物A−3を33.1g得た。
【0092】
【化27】
化合物1−a
【0093】
薄層クロマトグラフィーにおけるRf値(kiesselgel 60 (Merck 5715) 展開溶媒:酢酸エチル)は、0.56であった。
【0094】
この化合物A−3 25.0gを100mLの酢酸エチルに溶解し、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(例示化合物B−1)18.8g、水100mLの溶液と混合し、室温で2時間攪拌した。反応溶液を分液し、酢酸エチル層を濃縮した後、イソプロパノールから再結晶した。乾燥後、例示化合物D−3を31.3g得た。
【0095】
薄層クロマトグラフィーにおけるRf値(kiesselgel 60 (Merck 5715) 展開溶媒:酢酸エチル)は、0.80であった。
以下に、1H−NMRから得られたピークデータを示す。下記ピークの化学シフトδ値は、基準物質であるTMSからのδ値を示し、かっこ内にはそのピークにおけるプロトン数及びシングレット、ダブレット等のピーク形状を示す。
1H−NMR(CDCl3、δ値):7.60(s,1H)、7.44(d,2H)、7.39(d,2H)、6.22(s,1H)、4.18(t,2H)、3.86(t,2H)、2.43(s,3H)、1.84(m,2H)、1.50−1.70(m,4H)、1.34(m,2H)、1.02(t,3H)、0.90(t,3H)
【0096】
[比較例1]
<4−(4−メチルフェニルチオ)−2,5−ジ(ブトキシ)ベンゼンジアゾニウム トリフルオロメタンスルホンイミドイド(例示化合物D−3)の製造>
実施例1記載の化合物(下記化合物1−a) 2.0g、濃塩酸0.9mL、メタノール10mLの混合物を−5℃に冷却した。この縣濁液に亜硝酸ナトリウム0.4gを溶解した水3mLを内温が5℃を越えないように滴下した。5℃で30分間撹拌し、4−(4−メチルフェニルチオ)−2,5−ジ(ブトキシ)アニリンが消失したことを薄層クロマトグラフで確認した後、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(例示化合物B−1)1.7gを添加した。25℃で1時間撹拌した後、水5mLを添加し、冷蔵庫で1週間冷却した。析出した結晶を濾取し、水で洗浄した。4−(4−メチルフェニルチオ)−2,5−ジ(ブトキシ)ベンゼンジアゾニウム トリフルオロメタンスルホンイミドイド(例示化合物D−3)を2.8g得た。得られた結晶は茶色く着色していた。イソプロパノールから再結晶することができず、精製できなかった。
【0097】
[実施例2]
<4−(4−ピバロイルアミノフェニルチオ)−2,5−ジ(ブトキシ)ベンゼンジアゾニウム トリフルオロメタンスルホンイミドイド(例示化合物D−22)の製造>
4−(4−ピバロイルアミノフェニルチオ)−2,5−ジ(ブトキシ)アニリン(下記化合物2−a)13.0gを50mLのメタノールに溶解し、濃塩酸5mLを加えて0℃に冷却した。ここへ亜硝酸ナトリウム2.1g、水5mLの溶液を滴下し、10℃で1時間攪拌した後、反応混合物にナトリウムテトラフルオロボレート3.8gを加えて室温で60分間攪拌した。ここへ、水250mLを加えて晶析した。析出した結晶を濾取し水で洗浄後、酢酸エチルとイソプロパノールの混合溶媒から再結晶した。乾燥後、例示化合物A−9を9.8g得た。
【0098】
【化28】
化合物2−a
【0099】
薄層クロマトグラフィーにおけるRf値(kiesselgel 60 (Merck 5715) 展開溶媒:酢酸エチル)は、0.24であった。
【0100】
この化合物A−9 9.8gを40mLの酢酸エチルに溶解し、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(例示化合物B−1)5.7g、水40mLの溶液と混合し、室温で2時間攪拌した。反応溶液を分液し、酢酸エチル層を濃縮した。減圧乾燥後、例示化合物D−22を13.3g得た。得られた化合物は黄色透明の油状物であった。
【0101】
薄層クロマトグラフィーにおけるRf値(kiesselgel 60 (Merck 5715) 展開溶媒:酢酸エチル)は、0.55であった。
上記化合物の1H−NMRから得られたピークデータは以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3、δ値):7.82(d,2H)、7.65(s,1H)、7.56(s,1H)、7.55(d,2H)、6.30(s,1H)、4.27(t,2H)、3.93(t,2H)、1.84(m,2H)、1.66(m,2H)、1.51〜1.62(m,4H)、1.36(s,9H)、1.00(t,3H)、0.90(t,3H)
【0102】
[比較例2]
<4−(4−ピバロイルアミノフェニルチオ)−2,5−ジ(ブトキシ)ベンゼンジアゾニウム トリフルオロメタンスルホンイミドイド(例示化合物D−22)の製造>
実施例2記載の化合物2−a 13.0gを50mLのメタノールに溶解し、濃塩酸5mLを加えて0℃に冷却した。ここへ亜硝酸ナトリウム2.1g、水5mLの溶液を内温が5℃を越えないように滴下し、10℃で1時間攪拌した後、反応混合物にリチウムトリフルオロメタンスルホンイミド10.1gを加えて室温で30分間攪拌した。ここへ水250mLを加えたが結晶は析出せず、タール状の褐色油状物が分離した。この油状物は精製できなかった。
【0103】
[実施例3]
<4−(4−メチルフェニルチオ)−2,5−ジ(ブトキシ)ベンゼンジアゾニウム (2−オクチルオキシカルボニルベンゼン)スルホンイミドイド(例示化合物D−17)の製造>
実施例1の例示化合物A−3 2.1gを10mLの酢酸エチルに溶解し、例示化合物B−6 3.0g、水10mLの溶液と混合し、室温で2時間攪拌した。反応溶液を分液し、酢酸エチル層を濃縮した後、イソプロパノールとヘキサンの混合溶媒から再結晶した。乾燥後、例示化合物D−17を4.4g得た。
【0104】
薄層クロマトグラフィーにおけるRf値(kiesselgel 60 (Merck 5715) 展開溶媒:酢酸エチル)は、0.13であった。
上記化合物の1H−NMRから得られたピークデータは以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3、δ値):8.36(s,1H)、8.04(d,2H)、7.25〜7.48(m,10H)、6.16(s,1H)、4.21(t,2H)、4.18(t,4H)、3.83(t,2H)、2.43(s,3H)、1.57〜1.80(m,8H)、1.48(m,2H)、1.21〜1.39(m,22H)、0.82〜1.00(m,12H)
【0105】
以上の結果より、単離精製が困難なジアゾニウム塩を本発明の製造方法により極めて容易に単離することができ、更に、純度を上げるための再結晶操作が実施可能であることが分かる。
【0106】
【発明の効果】
結晶性の高いジアゾニウム塩をスルホンイミドアニオンと共に非水溶性有機溶媒と2相系の混合溶媒で塩交換することにより、従来単離精製が困難であった結晶性、融点の低いジアゾニウム塩を容易に結晶化させることができ、単離精製が極めて容易となる。さらに室温で油状のジアゾニウム塩も精製が可能となる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジアゾニウム塩の製造方法に関し、特に感熱記録材料、感光記録材料における発色素材として有用なジアゾニウム塩の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジアゾニウム塩はアゾ色素の重要な合成中間体として知られている。アゾ色素の合成法については従来から種々の方法が知られており、「新実験化学講座」(丸善株式会社)14−III巻、1516−1534頁に記載されているように、酸化反応による合成、還元反応による合成、置換反応による合成、付加反応による合成、縮合反応による合成、その他の合成法が知られている。しかしながら、アゾ色素の工業的製造方法として広く利用されているのは、原料の入手性、コスト、収率等の点から、ジアゾニウム塩とアニリン、フェノール等のカプラーをアゾカップリングさせて製造する方法がほとんどである。
【0003】
また、ジアゾニウム塩は、ビリルビンの定量分析のための分析試薬としても知られており、重要な化合物である。これに関しては、特開平11−228517に記載がある。
【0004】
また、ジアゾニウム塩は非常に化学的活性の高い化合物であり、フェノール誘導体や活性メチレン基を有する、いわゆるカプラーと呼ばれる化合物と反応して容易にアゾ染料を形成すると共に、感光性をも有し、光照射によって分解し、その活性を失う。そこで、ジアゾ化合物は、ジアゾコピーに代表される光記録材料として古くから利用されている(日本写真学会編「写真工学の基礎−非銀塩写真編−」コロナ社(1982)P89〜P117、P182〜P201参照)。
【0005】
更に、光によって分解し活性を失う性質を利用して、最近では画像の定着が要求される記録材料にも応用され、代表的なものとして、ジアゾニウム塩とカプラーを画像信号に従って加熱し、反応させて画像を形成させた後光照射して画像を定着する、光定着型感熱記録材料が提案されている(佐藤弘次ら 画像電子学会誌第11巻 第4号(1982)P290−296など)。
【0006】
上記等の記録材料用ジアゾニウム塩は、安定性を向上させるためにマイクロカプセルに内包されたかたちで記録層中に含まれることが好ましい。マイクロカプセルの形成方法としては界面重合法および内部重合法が適している。マイクロカプセル形成方法の詳細については、米国特許第3,726,804号、同第3,796,669号等の明細書に記載がある。例えば、ポリウレタン、ポリウレアをカプセル壁材として用いる場合はポリイソシアネートおよびそれと反応してマイクロカプセル壁を形成する物質(例えばポリオール、ポリアミン、水)を水性媒体またはカプセル化すべき油性媒体中に混合し、水中でこれらを乳化分散し、次に加温することにより油滴界面で高分子形成反応を起こし、マイクロカプセル壁を形成する。このときジアゾニウム塩はマイクロカプセルの芯となる疎水性の有機溶媒に溶解または分散させる。よって、ジアゾニウム塩は疎水性有機溶媒に対する溶解度が高く、水に対する溶解度が低いことが重要である。
【0007】
これまでに、種々の対アニオンを有するジアゾニウム塩が知られている。一般的には、無機陰イオンとしては、ヘキサフルオロリン酸イオン、ホウフッ化水素酸イオン、塩化物イオン、硫酸水素イオン、硫酸イオンが、有機陰イオンとしてはポリフルオロアルキルカルボン酸イオン、ポリフルオロアルキルスルホン酸イオン、芳香族カルボン酸イオン、芳香族スルホン酸イオン、テトラアリールボレートイオン等が知られている。特にヘキサフルオロリン酸イオン、ホウフッ化水素酸イオンが一般的に用いられている。しかしながら、これらは有機溶媒に対する溶解性が低い、あるいは安定性が低い等の問題があり、記録材料用素材としては有効に用いることが困難であった。
【0008】
スルホンイミドアニオンを対アニオンとするジアゾニウム塩はJournal of Fluorine Chemistry, 2000,106,139、Inorganic.Chemistry,1993, 32,223、Mendeleev.Commun., 1992, 70、Synthesis,1998,1171、Synthesis,1999,90等に知られているが、ここに記載されているジアゾニウム塩は有機溶媒に対する溶解性が低く、水溶性が高いため記録材料用素材としては有効に用いることが困難であった。
【0009】
上記のように、感熱記録材料、感熱記録材料用素材としてのジアゾニウム塩は有機溶媒に対する溶解性が高い必要がある。しかしながら、有機溶媒に対する溶解性の高いジアゾニウム塩は融点が低い場合が多く、単離精製が困難な場合が多かった。特に、スルホンイミドアニオンを対アニオンとするジアゾニウム塩は融点が低く、室温でも油状である場合が多く、精製は困難を極めた。
【0010】
一般式(1)または(4)で表されるジアゾニウム塩は既知の方法で製造することが可能である。すなわち、対応するアニリンを酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等を用いてジアゾ化した後、一般式pMn+・nXP−の化合物(式中、Mn+はn価のカチオンを表し、XP−はp価のアニオンを表す)を添加し、塩交換することにより得られる。一般式(3)または(6)の化合物も同様に、対応するアニリンを酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等を用いてジアゾ化した後、一般式(5)で表される化合物を添加し塩交換することで得られるが、この場合、生成物の融点が低い場合が多く、結晶として単離できず、精製が困難であった。
【0011】
ところで、従来のジアゾニウム塩の精製は再結晶による方法が用いられているので、ジアゾニウム塩が油状もしくは結晶性の低い場合、再結晶の方法を用いることができず、これらの場合には単離が困難であったり、純度もしくは収率の低下を伴うという問題があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、アゾ色素の合成中間体あるいは分析試薬,感熱記録材料用素材として重要なジアゾニウム塩の製造方法を提供することにある。更には、油状もしくは結晶性の低い単離精製困難なジアゾニウム塩の簡便な製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の手段は以下の通りである。
<1> 下記一般式(1)で表されるジアゾニウム塩を一般式(2)で表される化合物と共に、非水溶性有機溶媒と水の混合系で塩交換することを特徴とする一般式(3)で表されるジアゾニウム塩の製造方法。
【0014】
【化7】
一般式(1)
(式中、R5、R6,R7,R8及びR9はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、アミド基又はニトロ基を表す。R5、R6,R7,R8及びR9が互いに結合し環を形成しても良い。XP−はp価のアニオンを表し、pは正数を表す。)
【0015】
【化8】
一般式(2)
(式中、Mn+はn価のカチオンを表し、Ym−はm価のアニオンを表し、n及びmは正数を表す。)
【0016】
【化9】
一般式(3)
(式中、R5、R6,R7,R8及びR9は、一般式(1)の置換基と同義である。Ym−及びmは、一般式(2)と同義である。)
<2> 下記一般式(4)で表されるジアゾニウム塩を一般式(5)で表される化合物と共に、非水溶性有機溶媒と水の混合系で塩交換することを特徴とする一般式(6)で表されるジアゾニウム塩の製造方法。
【0017】
【化10】
一般式(4)
(式中、R21、R22,R23はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基を表し、XP−はp価のアニオンを表し、pは正数を表す。)
【0018】
【化11】
一般式(5)
(式中、Mn+はn価のカチオンを表し、nは正数を表し、R3,R4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基を表す。R3,R4が互いに結合し環を形成しても良い。)
【0019】
【化12】
一般式(6)
(式中、R21、R22,R23はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基を表し、
R3,R4はそれぞれ独立にフルオロアルキル基、フルオロアリール基を表す。R3,R4が互いに結合し環を形成しても良い。)
【0020】
<3> 前記一般式(1)のジアゾニウム塩が一般式(3)のジアゾニウム塩よりも水溶性が高いことを特徴とする上記<1>に記載の一般式(3)で表されるジアゾニウム塩の製造方法。
<4> 前記一般式(4)のジアゾニウム塩が一般式(6)のジアゾニウム塩よりも水溶性が高いことを特徴とする上記2に記載の一般式(6)で表されるジアゾニウム塩の製造方法。
<5> 前記一般式(1)のジアゾニウム塩を固体として単離精製した後、一般式(1)で表されるジアゾニウム塩を一般式(2)で表される化合物と共に、非水溶性有機溶媒と水の混合系で塩交換することを特徴とする上記<1>または<3>に記載の一般式(3)で表されるジアゾニウム塩の製造方法。
【0021】
<6> 前記一般式(4)のジアゾニウム塩を固体として単離精製した後、一般式(4)で表されるジアゾニウム塩を一般式(5)で表される化合物と共に、非水溶性有機溶媒と水の混合系で塩交換することを特徴とする上記2または4に記載の一般式(6)で表されるジアゾニウム塩の製造方法。
<7> 前記一般式(1)または(4)において、XP−がホウフッ化水素酸イオン(BF4 −)であることを特徴とする上記<1>乃至<6>のいずれかに記載の一般式(3)または(6)のジアゾニウム塩の製造方法。
<8> 前記非水溶性有機溶媒が、前記一般式(1)、(3)、(4)及び(6)のジアゾニウム塩を溶解することができ、かつ、水と混合したとき2層分離する100℃以下の沸点を有する有機溶媒であることを特徴とする上記<1>乃至<7>のいずれかに記載のジアゾニウム塩の製造方法。
【0022】
<9> 前記非水溶性有機溶媒が酢酸エチル、メチルエチルケトンのいずれか、またはこれらを含有する溶媒であることを特徴とする上記<8>記載のジアゾニウム塩の製造方法。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のジアゾニウム塩の製造方法を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のジアゾニウム塩は(置換)ベンゼンジアゾニウムカチオンと対アニオンがイオン結合した化合物である。
本発明のジアゾニウム塩の製造方法は原料であるジアゾニウム塩と、非水溶性有機溶媒と水の混合系において、前記ジアゾニウム塩と異なる対アニオンを有するイオン性化合物との反応によりジアゾニウム塩の対アニオンとイオン性化合物の対アニオンが交換反応を起こし、対アニオンが前記イオン性化合物の対アニオンであるジアゾニウム塩へと変換される反応を利用するものである。前記イオン性化合物の対アニオンを変更することにより目的のジアゾニウム塩を得ることができる。ここで、本発明で前記非水溶性有機溶媒とは、体積で水と1:1の比率で混合したとき水と該非水溶性有機溶媒が2層に分離する有機溶媒を意味する。
【0024】
次に一般式(1)で表されるジアゾニウム塩について述べる。
(一般式(1)のジアゾニウム塩)
本発明のジアゾニウム塩は下記一般式(1)で表される。
【0025】
【化13】
一般式(1)
(式中、R5、R6,R7,R8及びR9はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、アミド基又はニトロ基を表す。R5、R6,R7,R8及びR9が互いに結合し環を形成しても良い。XP−はp価のアニオンを表し、pは正数を表す。)
【0026】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が好ましく、特にフッ素、塩素が好ましい。
【0027】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアルキル基は、置換基を有していても無置換でも良い。総炭素数1から30のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルヘキシル基、ノルマルオクチル基、2−エチルヘキシル基、3,5,5,−トリメチルヘキシル基、ノルマルドデシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、α−メチルベンジル基、アリル基、2−クロロエチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−フェノキシエチル基、2−(2,5−ジ−ターシャリーアミルフェノキシ)エチル基、2−ベンゾイルオキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、ブトキシカルボニルエチル基、2−イソプロピルオキシエチル基、2−メタンスルホニルエチル基、2−エトキシカルボニルメチル基、1−(4−メトキシフェノキシ)−2−プロピル基、トリクロロメチル基又はトリフルオロメチル基が好ましい。特に、好ましくは、総炭素数1から5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基が好ましい。
【0028】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアリール基は置換基を有していても無置換でも良い。総炭素数6から30のアリール基が好ましく、たとえばフェニル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−ニトロフェニル基、4−アセトアミドフェニル基、4−オクタノイルアミノフェニル基又は4−(4−メチルフェニルスルホニルアミノ)フェニル基が好ましい。特に、好ましくは炭素数6から10のアリール基が好ましく、フェニル基、クロロフェニル基が好ましい。
【0029】
上記一般式(1)において、R5,R6,R7,R8及びR9で表されるアルコキシ基は置換基を有していてもよく、総炭素数1から20のアルコキシ基が好ましい。たとえば、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ノルマルブチルオキシ基、ターシャリーブチルオキシ基、ノルマルヘキシルオキシ基、ノルマルオクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5,−トリメチルヘキシルオキシ基、ノルマルデシルオキシ基、ノルマルドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、3−ペンチルオキシ基、ベンジルオキシ基、アリルオキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−フェノキシエトキシ基、ネオペンチルオキシ基、2−(2,5−ジ−ターシャリーアミルフェノキシ)エトキシ基、2−ベンゾイルオキシエトキシ基、メトキシカルボニルメチルオキシ基、メトキシカルボニルエチルオキシ基、ブトキシカルボニルエチルオキシ基又は2−イソプロピルオキシエチルオキシ基が好ましい。
特に好ましくは炭素数4から10のアルコキシ基が好ましく、ノルマルブチルオキシ基、ターシャリーブチルオキシ基、ノルマルヘキシルオキシ基、ノルマルオクチルオキシ基、ノルマルヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5,−トリメチルヘキシルオキシ基、ノルマルデシルオキシ、ノルマルドデシルオキシ、2−イソプロピルオキシエチルオキシ基がさらに好ましい。
【0030】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアリールオキシ基は置換基を有していてもよく、総炭素数6から20のアリールオキシ基が好ましい。たとえばフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基又は2−クロロフェノキシ基が好ましい。特に好ましくは総炭素数6から10のアリールオキシ基が好ましく、フェノキシ基又は4−クロロフェノキシ基が好ましい。
【0031】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアシル基は置換基を有していても良く、総炭素数2から30のアシル基が好ましい。たとえばアセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基又はベンゾイル基が好ましい。
【0032】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアルコキシカルボニル基は置換基を有していても良く、総炭素数2から30のアルコキシカルボニル基が好ましい。例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基又はブトキシカルボニル基が好ましい。
【0033】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアリールオキシカルボニル基は置換基を有していても良く、総炭素数7から30のアリールオキシカルボニル基が好ましい。例えばフェノキシカルボニル基が好ましい。
【0034】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるカルバモイル基は置換基を有していても良く、総炭素数1から30のカルバモイル基が好ましい。例えばカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N,N−ジオクチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピロリジノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基又はヘキサメチレンイミノカルボニル基が好ましい。
【0035】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアルキルチオ基は、置換基を有していてもよく、総炭素数1から20のアルキルチオ基が好ましい。たとえば、メチルチオ基、エチルチオ基、ノルマルブチルチオ基、ターシャリーブチルチオ基、ノルマルヘキシルチオ基、ノルマルオクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノルマルドデシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ベンジルチオ基、4−メチルベンジルチオ基、エトキシカルボニルメチルチオ基が好ましい。特に好ましくは総炭素数1から12のアルキルチオ基が好ましく、シクロヘキシルチオ基、ノルマルオクチルチオ基、ノルマルドデシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ベンジルチオ基、4−メチルベンジルチオ基が好ましい。
【0036】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアリールチオ基は置換基を有していても無置換でも良い。総炭素数6から30のアリールチオ基が好ましく、たとえばフェニルチオ基、4−メチルフェニルチオ基、3−メチルフェニルチオ基、2−メチルフェニルチオ基、4−クロロフェニルチオ基又は2−クロロフェニルチオ基が好ましい。特に好ましくは総炭素数6から10のアリールチオ基が好ましく、フェニルチオ基、4−メチルフェニルチオ基又は4−クロロフェニルチオ基が好ましい。
【0037】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアルキルスルホニル基は、置換基を有していてもよく、総炭素数1から20のアルキルスルホニル基が好ましい。たとえば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ノルマルブチルスルホニル基、ノルマルヘキシルスルホニル基、ノルマルオクチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ノルマルデシルスルホニル基、ノルマルドデシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、ベンジルスルホニル基又はエトキシカルボニルメチルスルホニル基が好ましい。特に好ましくは総炭素数1から12のアルキルスルホニル基が好ましく、ノルマルヘキシルスルホニル基、ノルマルオクチルスルホニル基、ノルマルデシルスルホニル基、ノルマルドデシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、ベンジルスルホニル基、4−メチルベンジルスルホニル基が好ましい。
【0038】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアリールスルホニル基は置換基を有していても無置換でも良い。総炭素数6から30のアリールスルホニル基が好ましく、たとえばフェニルスルホニル基、4−メチルフェニルスルホニル基、3−メチルフェニルスルホニル基、2−メチルフェニルスルホニル基、4−クロロフェニルスルホニル基又は2−クロロフェニルスルホニル基が好ましい。特に好ましくは総炭素数6から10のアリールスルホニル基が好ましく、フェニルスルホニル基、4−メチルフェニルスルホニル基または4−クロロフェニルスルホニル基が好ましい。
【0039】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアミノ基は置換基を有していても無置換でも良い。例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジ(ノルマルヘキシル)アミノ、N−メチル−N−オクチルアミノ基、N−ヘキシルーN−(1−(4−メトキシフェニルオキシ)−2−プロピル)アミノ、N,N−ビス(3−メトキシカルボニルプロピル)アミノ、N,N−ビス(3−エトキシカルボニルプロピル)アミノ、N−メチル−N−ドデシルアミノ基、N−メチル−N−2−オクタノイルオキシエチルアミノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、ヘキサメチレンイミノ基、4−(2−エチルヘキシル)ピペラジノ基、4−ベンゼンスルホニルピペラジノ基、インドリノ基、ビス(N,N−ジブチルカルバモイルメチル)アミノ基又はN−メチル−N−ベンジルアミノ基が好ましい。特に好ましくは総炭素数2から30の置換アミノ基が好ましく、ジエチルアミノ、ジ(ノルマルヘキシル)アミノ、N−ヘキシルーN−(1−(4−メトキシフェニルオキシ)−2−プロピル)アミノ、ビス(N,N−ジブチルカルバモイルメチル)アミノ基、N,N−ビス(3−メトキシカルボニルプロピル)アミノ、N,N−ビス(3−エトキシカルボニルプロピル)アミノが好ましい。
【0040】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9で表されるアミド基は置換基を有していても無置換でも良い。例えばアセトアミド基、プロピオニルアミノ基、ピバロイルアミノ基、N−メチルアセトアミド基、ベンズアミド基、2−メトキシベンズアミド基、4−メトキシベンズアミド基又は2−オキソピロリジノ基、4−メチルベンズアミド、2−メチルベンズアミドが好ましい。特にアセトアミド基、ピバロイルアミノ基が好ましい。
【0041】
上記一般式(1)において、R5、R6,R7,R8及びR9が結合し環を形成する場合、形成される環は環員数5乃至6の環が好ましい。シクロペンテン環、シクロヘキセン環、ベンゼン環、ナフタレン環等の炭化水素環でも、フラン環、チオフェン環、ピラン環等の複素環であっても良い。
【0042】
上記一般式(1)において、XP−はp価のアニオンを表し、pは正数を表す。
XP−で表されるp価のアニオンである無機陰イオンとしては、ホウフッ化水素酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸水素イオン、硫酸イオンが有機陰イオンとしてはアルキルカルボン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、芳香族カルボン酸イオン、芳香族スルホン酸イオン等が挙げられる。
【0043】
原料である前記一般式(1)のジアゾニウム塩は、既知の方法で製造することが可能である。すなわち、対応するアニリンを酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等を用いてジアゾ化した後、一般式pMn+・nXP−の化合物(式中、Mn+はn価のカチオンを表し、XP−はp価のアニオンを表す)を添加し、塩交換することにより得られる。
【0044】
上記一般式(1)において、原料となるジアゾニウム塩は、最終生成物であるジアゾニウム塩よりも水溶性が高いことが好ましい。水溶性が高いジアゾニウム塩は、一般に塩交換反応後の水層側への移行が優位に進み、ジアゾ化時に副生する水溶性不純物を除去することが容易である。この段階での精製効果が高まり純度の高い原料のジアゾニウム塩を得ることができる。この点でXP−で表されるp価のアニオンとしてはホウフッ化水素酸イオンが好ましい。
【0045】
上記一般式(1)において、原料となるジアゾニウム塩は、結晶性が高いジアゾニウム塩が好ましい。結晶性が高いジアゾニウム塩は、一般に再結晶等により精製が容易であるので、ジアゾ化時に副生する不純物を除去することが容易である。この段階で精製を行ない、純度の高い原料のジアゾニウム塩を得ることができる。この点でXP−で表されるp価のアニオンとしてはホウフッ化水素酸イオンが好ましい。
【0046】
上記一般式(1)において、原料となるジアゾニウム塩は、その融点が高い方が好ましく、その融点が120℃以上のジアゾニウム塩が好ましい。融点が120℃以上のジアゾニウム塩は一般に再結晶等により精製が容易であるので、ジアゾ化時に副生する不純物を除去することが容易である。この段階で精製を行ない、純度の高い原料のジアゾニウム塩を得ることができる。この点でXP−で表されるp価のアニオンとしてはホウフッ化水素酸イオンが好ましい。
【0047】
上記一般式(1)で表されるジアゾニウム塩のうち、特に好ましくは一般式(4)で表されるジアゾニウム塩である。以下一般式(4)について述べる。
(一般式(4)のジアゾニウム塩)
本発明のジアゾニウム塩は下記一般式(4)で表される。
【0048】
【化14】
一般式(4)
(式中、R21、R22はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基を表し、XP−はp価のアニオンを表し、pは正数を表す。)
【0049】
R21、R22で表されるアルキル基は置換基を有していても良く、総炭素数1から30のアルキル基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基、セカンダリーブチル、イソブチル基、ノルマルペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、イソペンチル基、ノルマルヘキシル基、ノルマルオクチル基、2−エチルヘキシル基、3,5,5,−トリメチルヘキシル基、ノルマルドデシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、α−メチルベンジル基、アリル基、2−クロロエチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−イソプロピルオキシエチル基、2−アリルオキシエチル基、2−ブトキシエチル、2−フェノキシエチル基、2−(2,5−ジ−ターシャリーアミルフェノキシ)エチル基、2−ベンゾイルオキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、ブトキシカルボニルエチル基が好ましい。更に、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−イソプロピルオキシエチル基が好ましく、特にエチル基、ブチル基、2−イソプロピルオキシエチル基が好ましい。
【0050】
上記一般式(4)において、R21又はR22で表されるアリール基は置換基を有していてもよく、総炭素数6から30のアリール基が好ましい。たとえばフェニル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基又は2−クロロフェニル基が好ましい。特に、フェニル基、4−メチルフェニル基が好ましい。
【0051】
上記一般式(4)において、R23で表されるアルキル基は置換基を有していてもよく、総炭素数1から30のアルキル基が好ましい。たとえば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ノルマルペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、イソペンチル基、ノルマルヘキシル基、ノルマルオクチル基、2−エチルヘキシル基、3,5,5,−トリメチルヘキシル基、ノルマルドデシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、アリル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−フェノキシエチル基、2−(2,5−ジ−ターシャリーアミルフェノキシ)エチル基、メトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基又はブトキシカルボニルエチル基が好ましい。
【0052】
上記一般式(4)において、R23で表されるアリール基は置換基を有していてもよく、総炭素数6から30のアリール基が好ましい。たとえばフェニル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基又は2−クロロフェニル基が好ましい。
【0053】
上記一般式(4)で表されるジアゾニウム塩は結晶性が高いジアゾニウム塩が好ましい。好ましくはその融点が120℃以上のジアゾニウム塩である。融点が120℃以上のジアゾニウム塩は一般に再結晶等により精製が容易であるので、ジアゾ化時に副生する不純物を除去することが容易である。この段階で精製を行ない、純度の高い原料のジアゾニウム塩を得ることができる。この点でXP−で表されるp価のアニオンとしてはホウフッ化水素酸イオンが好ましい。
【0054】
原料である前記一般式(4)のジアゾニウム塩は、既知の方法で製造することが可能である。すなわち、対応するアニリンを酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等を用いてジアゾ化した後、一般式pMn+・nXP−の化合物(式中、Mn+はn価のカチオンを表し、XP−はp価のアニオンを表す)を添加し、塩交換することにより得られる。
【0055】
上記一般式(4)において、原料となるジアゾニウム塩は、最終生成物であるジアゾニウム塩よりも水溶性が高いことが好ましい。水溶性が高いジアゾニウム塩は、一般に塩交換反応後の水層側への移行が優位に進み、ジアゾ化時に副生する水溶性不純物を除去することが容易である。この段階での精製効果が高まり純度の高い原料のジアゾニウム塩を得ることができる。この点でXP−で表されるp価のアニオンとしてはホウフッ化水素酸イオンが好ましい。
【0056】
上記一般式(4)において、原料となるジアゾニウム塩は結晶性が高いジアゾニウム塩が好ましい。結晶性が高いジアゾニウム塩は、一般に再結晶等により精製が容易であるので、ジアゾ化時に副生する不純物を除去することが容易である。この段階で精製を行ない、純度の高い原料のジアゾニウム塩を得ることができる。この点でXP−で表されるp価のアニオンとしてはホウフッ化水素酸イオンが好ましい。
【0057】
上記一般式(4)において、原料となるジアゾニウム塩は、その融点が高い方が好ましく、その融点が120℃以上のジアゾニウム塩が好ましい。融点が120℃以上のジアゾニウム塩は一般に再結晶等により精製が容易であるので、ジアゾ化時に副生する不純物を除去することが容易である。この段階で精製を行ない、純度の高い原料のジアゾニウム塩を得ることができる。この点でXP−で表されるp価のアニオンとしてはホウフッ化水素酸イオンが好ましい。
【0058】
上記一般式(2)で表される化合物について述べる。
(一般式(2)の化合物)
本発明の化合物は下記一般式(2)で表される。
【0059】
【化15】
一般式(2)
(式中、Mn+はn価のカチオンを表し、Ym−はm価のアニオンを表し、n及びmは正数を表す。)
Mn+で表されるn価のカチオンは無機あるいは有機のカチオンが好ましい。中でも水溶性が高いカチオンが好ましい。有機カチオンとしてはテトラメチルアンモニウム等の4級アンモニウムカチオンが好ましい。特に好ましくは無機カチオンである。例えば、水素イオン、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属カチオン、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属カチオンが好ましい。特に、リチウム、ナトリウム、カリウムが好ましい。
Ym−で表されるm価のアニオンは有機溶媒への溶解性が高いアニオンが好ましい。アニオンとしては有機、無機のいずれのアニオンでも良く、無機アニオンとしてはヘキサフルオロリン酸イオンが好ましい。有機アニオンとしては(置換)スルホンイミドアニオンが好ましい。
【0060】
一般式(2)で表される化合物のうち特に好ましくは一般式(5)で表される化合物である。以下一般式(5)について述べる。
(一般式(5)の化合物)
【0061】
【化16】
一般式(5)
Mn+で表されるn価のカチオンは無機あるいは有機のカチオンが好ましい。中でも水溶性が高いカチオンが好ましい。有機カチオンとしてはテトラメチルアンモニウム等の4級アンモニウムカチオンが好ましい。特に好ましくは無機カチオンである。例えば、水素イオン、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属カチオン、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属カチオンが好ましい。特に、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムが好ましい。
【0062】
上記一般式(5)において、R3、R4で表されるアルキル基は置換基を有していてもよく総炭素数1から20のアルキル基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、ノルマルブチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基及びパーフルオロオクチル基が好ましい。この中でも、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基又はパーフルオロオクチル基が特に好ましい。
【0063】
上記一般式(5)において、R3、R4で表されるアリール基は置換基を有していてもよく総炭素数6から20のアリール基が好ましい。たとえば、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−メトキシカルボニルフェニル基、2−メトキシカルボニルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基及びペンタフルオロフェニル基を挙げることができる。この中でも、電子吸引性基が置換したアリール基が好ましく、4−フルオロフェニル基又はペンタフルオロフェニル基が特に好ましい。
【0064】
次に一般式(3)で表されるジアゾニウム塩について述べる。
(一般式(3)のジアゾニウム塩)
【0065】
【化17】
一般式(3)
(式中、R5、R6,R7,R8及びR9で表される基は一般式(1)に示した基と同一である。Ym−は一般式(2)と同一のアニオンを表し、mは正数を表す。)一般式(3)で表されるジアゾニウム塩のうち特に好ましくは一般式(6)で表されるジアゾニウム塩である。
【0066】
次に一般式(6)で表されるジアゾニウム塩について述べる。
(一般式(6)のジアゾニウム塩)
【0067】
【化18】
一般式(6)
R21、R22,R23で表される基は一般式(4)に示した基と同一である。R3、R4で表される基は一般式(5)に示した基と同一である。
【0068】
前記最終生成物のジアゾニウム塩の融点が低い場合、該ジアゾニウム塩が油状物となり単離精製が従来困難であったが、本発明に係るジアゾニウム塩の製造方法の特徴である塩交換反応により、油状物あるいは結晶としての単離が可能である。ジアゾニウム塩の融点が低い場合とは、常温では結晶としての形態を取り難く一般的に油状物となってしまうような場合をいい、40℃以下の融点を有するジアゾニウム塩等が該当する。原料であるジアゾニウム塩の融点が120℃以上が好ましいが、更に、低融点を有する場合は、生成するジアゾニウム塩との単離が従来困難であったが、本発明の製造方法によると単離精製が極めて容易となる。最終生成物であるジアゾニウム塩の融点が低く、40℃以下のとき、特に顕著な効果を奏する。
【0069】
(ジアゾニウム塩の製造方法)
本発明のジアゾニウム塩の製造方法は原料であるジアゾニウム塩と、非水溶性有機溶媒と水の混合系において、前記ジアゾニウム塩と異なる対アニオンを有するイオン性化合物との反応によりジアゾニウム塩の対アニオンとイオン性化合物の対アニオンが交換反応を起こし、対アニオンが前記イオン性化合物の対アニオンであるジアゾニウム塩へと変換される反応を利用するものである。
【0070】
前記一般式(3)または(6)のジアゾニウム塩の製造のために使用される前記非水溶性有機溶媒は、前記一般式(1)、(3)、(4)及び(6)のジアゾニウム塩を溶解することができ、かつ、体積で水と1:1の比率で混合したとき水と該非水溶性有機溶媒が2層に分離する100℃以下の沸点を有する有機溶媒を意味する。
【0071】
前記非水溶性有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の酢酸エステル類、ジエチルエーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類を挙げることができ、中でも沸点が低い酢酸エステル類、ケトン類が好ましく、更に、酢酸エステル、メチルエチルケトンが好ましく、特に酢酸エチルが好ましい。
また、これらの該非水溶性有機溶媒は単独で用いても良く、また、それらの含む混合溶媒としても使用することができる。
該非水溶性有機溶媒は、揮発性を有することが好ましく、さらに、減圧下溶媒留去が可能でその沸点が100℃以下の場合より好ましい。
【0072】
本発明に係る前記非水溶性有機溶媒の使用量は目的とするジアゾニウム塩が充分溶解する量であればよく、特に制限がないが、操作性、経済性の観点から、目的のジアゾニウム塩に対し1から20倍重量が好ましく、2から10倍重量が更に好ましい。
【0073】
本発明に使用する水としては、蒸留水、イオン交換水が好ましいが、通常の井水、水道水を使用しても良い。使用する水量は特に制限はないが、操作性及び収率等の観点から、前記非水溶性有機溶媒の使用量に対し、1/10〜10倍容量が好ましく、1/2〜2倍容量が更に好ましい。
【0074】
本発明の製造方法における反応温度は、0℃から用いた有機溶媒の還流温度までが好ましい。ジアゾニウム塩は不安定な化合物であるので、0〜30℃の低温で反応を行なうことが更に好ましい。
本発明の製造方法における反応時間としては30分〜6時間が好ましく、1時間〜3時間が更に好ましい。前記原料のジアゾニウム塩に対する前記イオン性化合物の使用量はその組み合わせにより適宜調製される。前記原料のジアゾニウム塩に対する前記イオン性化合物の使用量としては、1/2〜2倍モルが好ましく、0.9〜1.1倍モルが更に好ましい。該イオン化合物の添加方法としては、単独で加えることもできるが、溶液または懸濁液として添加することが好ましい。さらに、水に溶解して添加することが好ましい。
【0075】
本発明の製造方法により、対アニオンを交換したジアゾニウム塩は有機層と水層を分離した後、有機層を濃縮することにより結晶としても油状物としても単離することができる。このとき、反応終了後、有機層を更に水及び/または食塩水で洗浄することが好ましい。また得られた有機層は、濃縮前に硫酸マグネシウム等の生成したジアゾニウム塩に影響がない乾燥剤を使用して乾燥しても良い。
【0076】
本発明の製造方法により得られたジアゾニウム塩は、塩交換反応終了後に得られた有機層を濃縮せず、そのまま次の操作に使用しても良い。例えば、カプラー等の反応剤を添加し、アゾ色素形成反応に用いても良い。また、そのまま感熱記録材料のための材料として使用しても良い。
【0077】
本発明の製造方法により得られたジアゾニウム塩は、有機層を濃縮した後さらに溶媒で再結晶し精製することも可能である。使用できる溶媒としては、生成するジアゾニウム塩に応じて適宜選択することができる。前記非水溶性有機溶媒及び他の溶媒を使用することができる。他の溶媒としては、ヘキサン等の炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒及び水等の単独若しくは混合溶媒として使用することができる。特に、酢酸エチルとアルコール類(好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール)の混合溶媒、アルコール類(好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール)の混合溶媒、アルコール類単独、アルコール類(好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール)と水との混合溶媒、アルコール類(好ましくは、エタノール、イソプロパノール)とヘキサンの混合溶媒、アルコール類(好ましくは、エタノール、イソプロパノール)とトルエンの混合溶媒が好ましい。
【0078】
本発明の製造方法によりジアゾニウム塩を製造する場合、原料のジアゾニウム塩はアニオン部が異なる化合物を2種以上併用しても良い。また、生成物のジアゾニウム塩の対アニオンが異なる2種以上のジアゾニウム塩の混合物として得ることも可能である。このときは、添加するイオン性化合物のアニオン部の異なる2種以上のイオン性化合物を用いれば良い。ジアゾニウム塩のジアゾニウムカチオンが異なる2種以上のジアゾニウム塩の混合物を得ることも可能である。このときは、原料のジアゾニウム塩のジアゾニウムカチオンの異なる2種以上のジアゾニウム塩を用いれば良い。
【0079】
本発明の製造方法において、原料であるジアゾニウム塩に対応するアニリンをジアゾ化した後、イオン性化合物を添加して得られた原料となる該ジアゾニウム塩を固体として単離精製した後、前述の単離工程を含まない場合と同様に、非水溶性有機溶媒と水の混合系において、該ジアゾニウム塩と異なる対アニオンを有するイオン性化合物との反応によりジアゾニウム塩の対アニオンとイオン性化合物の対アニオンが交換反応を起こし、対アニオンが前記イオン性化合物の対アニオンであるジアゾニウム塩へと変換することもできる。
【0080】
以下に、一般式(1)または(4)で表されるジアゾニウム塩について具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0081】
【化19】
【0082】
【化20】
【0083】
以下に、一般式(2)または(5)で表される化合物について具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
【化21】
【0085】
【化22】
【0086】
以下に、一般式(3)または(6)で表されるジアゾニウム塩について具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
【化23】
【0088】
【化24】
【0089】
【化25】
【0090】
【化26】
【0091】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
<4−(4−メチルフェニルチオ)−2,5−ジ(ブトキシ)ベンゼンジアゾニウム トリフルオロメタンスルホンイミドイド(例示化合物D−3)の製造>
4−(4−メチルフェニルチオ)−2,5−ジ(ブトキシ)アニリン塩酸塩(下記化合物1−a)39.5gを200mLのメタノールに溶解し、濃塩酸18mLを加えて0℃に冷却した。ここへ亜硝酸ナトリウム7.6g、水20mLの溶液を滴下し、10℃で1時間攪拌した後、反応混合物にナトリウムテトラフルオロボレート13.2gを加えて室温で30分間攪拌した。ここへ、水500mLを加えて晶析した。析出した結晶を濾取し水で洗浄後、イソプロパノールとヘキサンの混合溶媒から再結晶した。乾燥後、例示化合物A−3を33.1g得た。
【0092】
【化27】
化合物1−a
【0093】
薄層クロマトグラフィーにおけるRf値(kiesselgel 60 (Merck 5715) 展開溶媒:酢酸エチル)は、0.56であった。
【0094】
この化合物A−3 25.0gを100mLの酢酸エチルに溶解し、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(例示化合物B−1)18.8g、水100mLの溶液と混合し、室温で2時間攪拌した。反応溶液を分液し、酢酸エチル層を濃縮した後、イソプロパノールから再結晶した。乾燥後、例示化合物D−3を31.3g得た。
【0095】
薄層クロマトグラフィーにおけるRf値(kiesselgel 60 (Merck 5715) 展開溶媒:酢酸エチル)は、0.80であった。
以下に、1H−NMRから得られたピークデータを示す。下記ピークの化学シフトδ値は、基準物質であるTMSからのδ値を示し、かっこ内にはそのピークにおけるプロトン数及びシングレット、ダブレット等のピーク形状を示す。
1H−NMR(CDCl3、δ値):7.60(s,1H)、7.44(d,2H)、7.39(d,2H)、6.22(s,1H)、4.18(t,2H)、3.86(t,2H)、2.43(s,3H)、1.84(m,2H)、1.50−1.70(m,4H)、1.34(m,2H)、1.02(t,3H)、0.90(t,3H)
【0096】
[比較例1]
<4−(4−メチルフェニルチオ)−2,5−ジ(ブトキシ)ベンゼンジアゾニウム トリフルオロメタンスルホンイミドイド(例示化合物D−3)の製造>
実施例1記載の化合物(下記化合物1−a) 2.0g、濃塩酸0.9mL、メタノール10mLの混合物を−5℃に冷却した。この縣濁液に亜硝酸ナトリウム0.4gを溶解した水3mLを内温が5℃を越えないように滴下した。5℃で30分間撹拌し、4−(4−メチルフェニルチオ)−2,5−ジ(ブトキシ)アニリンが消失したことを薄層クロマトグラフで確認した後、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(例示化合物B−1)1.7gを添加した。25℃で1時間撹拌した後、水5mLを添加し、冷蔵庫で1週間冷却した。析出した結晶を濾取し、水で洗浄した。4−(4−メチルフェニルチオ)−2,5−ジ(ブトキシ)ベンゼンジアゾニウム トリフルオロメタンスルホンイミドイド(例示化合物D−3)を2.8g得た。得られた結晶は茶色く着色していた。イソプロパノールから再結晶することができず、精製できなかった。
【0097】
[実施例2]
<4−(4−ピバロイルアミノフェニルチオ)−2,5−ジ(ブトキシ)ベンゼンジアゾニウム トリフルオロメタンスルホンイミドイド(例示化合物D−22)の製造>
4−(4−ピバロイルアミノフェニルチオ)−2,5−ジ(ブトキシ)アニリン(下記化合物2−a)13.0gを50mLのメタノールに溶解し、濃塩酸5mLを加えて0℃に冷却した。ここへ亜硝酸ナトリウム2.1g、水5mLの溶液を滴下し、10℃で1時間攪拌した後、反応混合物にナトリウムテトラフルオロボレート3.8gを加えて室温で60分間攪拌した。ここへ、水250mLを加えて晶析した。析出した結晶を濾取し水で洗浄後、酢酸エチルとイソプロパノールの混合溶媒から再結晶した。乾燥後、例示化合物A−9を9.8g得た。
【0098】
【化28】
化合物2−a
【0099】
薄層クロマトグラフィーにおけるRf値(kiesselgel 60 (Merck 5715) 展開溶媒:酢酸エチル)は、0.24であった。
【0100】
この化合物A−9 9.8gを40mLの酢酸エチルに溶解し、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(例示化合物B−1)5.7g、水40mLの溶液と混合し、室温で2時間攪拌した。反応溶液を分液し、酢酸エチル層を濃縮した。減圧乾燥後、例示化合物D−22を13.3g得た。得られた化合物は黄色透明の油状物であった。
【0101】
薄層クロマトグラフィーにおけるRf値(kiesselgel 60 (Merck 5715) 展開溶媒:酢酸エチル)は、0.55であった。
上記化合物の1H−NMRから得られたピークデータは以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3、δ値):7.82(d,2H)、7.65(s,1H)、7.56(s,1H)、7.55(d,2H)、6.30(s,1H)、4.27(t,2H)、3.93(t,2H)、1.84(m,2H)、1.66(m,2H)、1.51〜1.62(m,4H)、1.36(s,9H)、1.00(t,3H)、0.90(t,3H)
【0102】
[比較例2]
<4−(4−ピバロイルアミノフェニルチオ)−2,5−ジ(ブトキシ)ベンゼンジアゾニウム トリフルオロメタンスルホンイミドイド(例示化合物D−22)の製造>
実施例2記載の化合物2−a 13.0gを50mLのメタノールに溶解し、濃塩酸5mLを加えて0℃に冷却した。ここへ亜硝酸ナトリウム2.1g、水5mLの溶液を内温が5℃を越えないように滴下し、10℃で1時間攪拌した後、反応混合物にリチウムトリフルオロメタンスルホンイミド10.1gを加えて室温で30分間攪拌した。ここへ水250mLを加えたが結晶は析出せず、タール状の褐色油状物が分離した。この油状物は精製できなかった。
【0103】
[実施例3]
<4−(4−メチルフェニルチオ)−2,5−ジ(ブトキシ)ベンゼンジアゾニウム (2−オクチルオキシカルボニルベンゼン)スルホンイミドイド(例示化合物D−17)の製造>
実施例1の例示化合物A−3 2.1gを10mLの酢酸エチルに溶解し、例示化合物B−6 3.0g、水10mLの溶液と混合し、室温で2時間攪拌した。反応溶液を分液し、酢酸エチル層を濃縮した後、イソプロパノールとヘキサンの混合溶媒から再結晶した。乾燥後、例示化合物D−17を4.4g得た。
【0104】
薄層クロマトグラフィーにおけるRf値(kiesselgel 60 (Merck 5715) 展開溶媒:酢酸エチル)は、0.13であった。
上記化合物の1H−NMRから得られたピークデータは以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3、δ値):8.36(s,1H)、8.04(d,2H)、7.25〜7.48(m,10H)、6.16(s,1H)、4.21(t,2H)、4.18(t,4H)、3.83(t,2H)、2.43(s,3H)、1.57〜1.80(m,8H)、1.48(m,2H)、1.21〜1.39(m,22H)、0.82〜1.00(m,12H)
【0105】
以上の結果より、単離精製が困難なジアゾニウム塩を本発明の製造方法により極めて容易に単離することができ、更に、純度を上げるための再結晶操作が実施可能であることが分かる。
【0106】
【発明の効果】
結晶性の高いジアゾニウム塩をスルホンイミドアニオンと共に非水溶性有機溶媒と2相系の混合溶媒で塩交換することにより、従来単離精製が困難であった結晶性、融点の低いジアゾニウム塩を容易に結晶化させることができ、単離精製が極めて容易となる。さらに室温で油状のジアゾニウム塩も精製が可能となる。
Claims (9)
- 下記一般式(1)で表されるジアゾニウム塩を一般式(2)で表される化合物と共に、非水溶性有機溶媒と水の混合系で塩交換することを特徴とする一般式(3)で表されるジアゾニウム塩の製造方法。
(式中、R5、R6,R7,R8及びR9はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、アミド基又はニトロ基を表す。R5、R6,R7,R8及びR9が互いに結合し環を形成しても良い。XP−はp価のアニオンを表し、pは正数を表す。)
(式中、Mn+はn価のカチオンを表し、Ym−はm価のアニオンを表し、n及びmは正数を表す。)
(式中、R5、R6,R7,R8及びR9は、一般式(1)の置換基と同義である。Ym−及びmは、一般式(2)と同義である。) - 下記一般式(4)で表されるジアゾニウム塩を一般式(5)で表される化合物と共に、非水溶性有機溶媒と水の混合系で塩交換することを特徴とする一般式(6)で表されるジアゾニウム塩の製造方法。
(式中、R21、R22,R23はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基を表し、XP−はp価のアニオンを表し、pは正数を表す。)
(式中、Mn+はn価のカチオンを表し、nは正数を表し、R3,R4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基を表す。R3,R4が互いに結合し環を形成しても良い。)
(式中、R21、R22,R23はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基を表し、
R3,R4はそれぞれ独立にフルオロアルキル基、フルオロアリール基を表す。R3,R4が互いに結合し環を形成しても良い。) - 一般式(3)のジアゾニウム塩よりも水溶性が高い前記一般式(1)のジアゾニウム塩を用いることを特徴とする請求項1に記載の一般式(3)で表されるジアゾニウム塩の製造方法。
- 一般式(6)のジアゾニウム塩よりも水溶性が高い前記一般式(4)のジアゾニウム塩を用いることを特徴とする請求項2に記載の一般式(6)で表されるジアゾニウム塩の製造方法。
- 前記一般式(1)のジアゾニウム塩を固体として単離精製した後、一般式(1)で表されるジアゾニウム塩を一般式(2)で表される化合物と共に、非水溶性有機溶媒と水の混合系で塩交換することを特徴とする請求項1または3に記載の一般式(3)で表されるジアゾニウム塩の製造方法。
- 前記一般式(4)のジアゾニウム塩を固体として単離精製した後、一般式(4)で表されるジアゾニウム塩を一般式(5)で表される化合物と共に、非水溶性有機溶媒と水の混合系で塩交換することを特徴とする請求項2または4に記載の一般式(6)で表されるジアゾニウム塩の製造方法。
- 前記一般式(1)または(4)において、XP−がホウフッ化水素酸イオン(BF4 −)であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の一般式(3)または(6)のジアゾニウム塩の製造方法。
- 前記非水溶性有機溶媒が、前記一般式(1)、(3)、(4)及び(6)のジアゾニウム塩を溶解することができ、かつ、水と混合したとき2層分離する100℃以下の沸点を有する有機溶媒であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のジアゾニウム塩の製造方法。
- 前記非水溶性有機溶媒が、酢酸エチル、メチルエチルケトンのいずれか、またはこれらを含有する溶媒であることを特徴とする請求項8記載のジアゾニウム塩の製造方法。
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JP2018519289A (ja) * | 2015-06-15 | 2018-07-19 | キューエーエーエム ファーマシューティカルズ,エルエルシー | グリコピロニウム脂肪酸塩およびグリコピロニウム脂肪酸塩を作る方法 |
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2002
- 2002-08-26 JP JP2002244817A patent/JP2004083456A/ja active Pending
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