JP2004083359A - エピタキシャル基板及び半導体積層構造 - Google Patents

エピタキシャル基板及び半導体積層構造 Download PDF

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Abstract

【課題】低転位で結晶性に優れた窒化物膜、特にはAl含有窒化物膜を形成することのできる、新規なエピタキシャル基板及びこれを用いた半導体積層構造を提供する。
【解決手段】厚さが600μm以上の基材上に、転位密度が1×1011/cm以下であり、(002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が200秒以下であり、少なくともAlを含むIII族窒化物層を形成してエピタキシャル基板を作製する。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エピタキシャル基板及び半導体積層構造にに関し、詳しくは、フォトニックデバイス及び電子デバイスなどの半導体素子、並びにフィールドエミッタなどの素子を構成する基板として好適に用いることのできるエピタキシャル基板、及び半導体積層構造に関する。
【0002】
【従来の技術】III族窒化物膜は、フォトニックデバイス及び電子デバイスなどの半導体素子を構成する半導体膜として用いられており、近年においては、携帯電話などに用いられる高速ICチップなどを構成する半導体膜としても注目を浴びている。また、特にAlを含むIII族窒化物膜は、フィールドエミッタへの応用材料として注目されている。
【0003】このようなIII族窒化物膜を形成する基板として、サファイア単結晶などからなる所定の基材上にエピタキシャル成長により形成した下地層を具える、いわゆるエピタキシャル基板がある。前記下地層は、特にAlを含有したIII族窒化物膜のエピタキシャル成長を容易にすべく、Alを含有したIII族窒化物から構成することが好ましい。さらに、Al含有窒化物は大きなバンドギャップを有するため、このようなバンドギャップの大きな材料からなる下地層をIII族窒化物膜と基材との間に挿入することにより、半導体素子などの効率を向上させることもできる。
【0004】そして、上記エピタキシャル基板を反応管内に設けられたサセプタ上に設置した後、前記サセプタ内外の加熱機構によって所定の温度に加熱する。次いで、III族金属供給原料及び窒素供給原料、並びに必要に応じて他の元素の供給原料をキャリアガスとともに前記反応管内に導入するとともに、前記エピタキシャル基板上に供給し、MOCVD法にしたがってIII族窒化物膜を形成する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述したエピタキシャル基板においては、基材と下地層との格子定数差に起因してミスフィット転位が発生してしまい、このミスフィット転位が貫通転位として前記下地層中を貫通し、その表面、すなわちエピタキシャル基板の表面に到達してしまう。このため、前記下地層上、すなわち前記エピタキシャル基板上に形成されるIII族窒化物膜にも、前記ミスフィット転位に起因した多量の転位が生成されてしまう。
【0006】同様の現象は、基材上にAl含有III族窒化物からなる下地層を形成する場合のみならず、Ga含有及びその他のIII族窒化物からなる下地層を形成する場合においても観察された。この結果、これらのIII族窒化物膜から、例えば半導体発光素子などを構成した場合においては、その発光効率が劣化していまい、所望の特性を有する半導体発光素子を得ることができないでいた。
【0007】本発明は、低転位で結晶性に優れた窒化物膜、特にはAl含有窒化物膜を形成することのできる、新規なエピタキシャル基板及びこれを用いた半導体積層構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく、本発明は、
厚さが600μm以上の基材と、この基材上において形成された、転位密度が1×1011/cm以下であり、(002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が200秒以下であり、少なくともAlを含むIII族窒化物層とを具えることを特徴とする、エピタキシャル基板に関する。
【0009】また、本発明は、厚さが600μm以上の基材と、この基材上において形成された、転位密度が1×1011/cm以下であり、(002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が200秒以下であり、少なくともAlを含むIII族窒化物下地層と、このIII族窒化物下地層上に形成された、III族窒化物層群とを具えることを特徴とする、半導体積層構造に関する。
【0010】本発明者らは、サファイア単結晶などからなる基材上に、低転位密度かつ高結晶性の、Al含有III族窒化物膜を形成すべく、長年研究を行なっている。従来においては、エピタキシャル基板を構成する下地層は、基材と前記エピタキシャル基板上に形成すべきIII族窒化物膜などのIII族窒化物層群との格子定数差を補完してミスフィット転位の発生を抑制すべき、低結晶性かつ多量の転位を含有する低結晶品質のIII族窒化物から構成するのが常識であると考えられていた。この結果、目的とするIII族窒化物層群の、前記ミスフィット転位に起因した転位密度を低減することはできるものの、前記下地層の低結晶品質に起因して、前記III族窒化物層群中の転位密度を十分に低減することができないとともに、結晶性も劣化してしまっていた。
【0011】これに対して、本発明者らは、前記下地層をAlを比較的多量に含むIII族窒化物から構成した場合は、前記下地層の結晶性を向上させ、転位密度を低減させて結晶品質を向上させた場合においても、前記基材と前記III族窒化物層群との格子定数差が補完され、ミスフィット転位の発生が抑制されることを見出した。そして、前記下地層の高結晶品質に起因して、前記III族窒化物層群の結晶品質をも向上させることができ、転位密度のさらなる低減を実現できるとともに、結晶性の向上をも実現できることを見出したものである。
【0012】一方、上述した高結晶品質のAl含有III族窒化物下地層を用いた場合においても、使用する基材の種類によっては前記下地層上、すなわちエピタキシャル基板上に形成するIII族窒化物膜などのIII族窒化物層群の結晶品質を十分に向上させることができない場合があった。そこで、本発明者らはさらなる鋭意検討を実施したところ、前記エピタキシャル基板を構成する前記基材の厚さが、前記III族窒化物層群の結晶品質に影響を及ぼしていることを見出し、前記基材の厚さを所定の値以上に設定することによって、前記III族窒化物層群の結晶品質を向上できることを見出したものである。
【0013】エピタキシャル基板を構成する基材の厚さがIII族窒化物層群の結晶品質に影響を及ぼす原因は明確ではないが、前記基材の厚さに依存した応力変化に起因するものと推察される。
【0014】したがって、本発明によれば、エピタキシャル基板を構成する基材の種類によらず、前記エピタキシャル基板上に形成するIII族窒化物層群の結晶品質を向上させることができる。そして、このようなIII族窒化物層群を含む半導体素子及びデバイスの特性を向上させることができる。
【0015】なお、本発明の半導体積層構造における「III族窒化物層群」は、作製すべき半導体素子の種類などに応じて、単層のIII族窒化物層から構成することもできるし、複数のIII族窒化物層が積層されてなる多層膜構造として構成することもできる。さらには、複数のIII族窒化物層が交互に周期的に積層されてなる周期的多層膜構造として構成することもできる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、発明の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のエピタキシャル基板を用いて形成した半導体発光素子の一例を示す構成図である。図1に示す半導体発光素子30は、基材1と、この基材1上に順次に形成された、下地層2と、n型導電層3と、発光層4と、p型クラッド層5と、p型導電層6とを具えている。そして、n型導電層3の一部はは露出しており、この露出したn型導電層3上には、例えばAl/Tiからなるn型電極8が形成され、p型導電層6上には例えばAu/Niからなるp型電極9が形成されて、いわゆるPIN型の半導体発光素子を構成している。なお、p型クラッド層5は必要に応じて省略することもできる。
【0017】図1において、基材1及び下地層2がエピタキシャル基板10を構成し、n型導電層3からp型導電層6までがIII族窒化物層群20を構成する。
【0018】基材1の厚さは本発明に従って600μm以上の厚さであることが必要であり、さらには800μm、特には1000μmであることが好ましい。これによって、エピタキシャル基板10を構成する基材1の種類に依存することなく、III族窒化物層群20の結晶品質を向上させることができる。
【0019】なお、基材1の厚さの上限は特には限定されないが、現状では3000μm程度である。基材1の厚さを前記値を超えて大きくした場合においても、本発明の効果を得ることができない。さらに、このような厚さの基材1の入手が困難になるとともに費用がかさむため、エピタキシャル基板10、しいては半導体発光素子30全体の製造コストが増大してしまう。
【0020】基材1は、サファイア単結晶、ZnO単結晶、LiAlO単結晶、LiGaO単結晶、MgAl単結晶、MgO単結晶などの酸化物単結晶、Si単結晶、SiC単結晶などのIV族あるいはIV−IV族単結晶、GaAs単結晶、AlN単結晶、GaN単結晶、及びAlGaN単結晶などのIII−V族単結晶、ZrBなどのホウ化物単結晶などの、公知の基板材料から構成することができる。特にサファイア単結晶から基材1を構成した場合において、本発明の効果をより効果的に発揮することができるようになる。
【0021】下地層2中の転位密度は1×1011/cm以下であることが必要であり、さらには5×1011/cm以下、特には1×1010/cm以下であることが好ましい。また、下地層2の(002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅は200秒以下であることが必要であり、さらには150秒以下、特には100秒以下であることが好ましい。上述したように、下地層2が高い結晶品質を有することによって、下地層2上、すなわちエピタキシャル基板10上に形成するn型導電層3からp型導電層6までの結晶品質を向上させることができる。そして、例えば、半導体発光素子30の発光効率などのデバイス特性を向上させることができる。さらに、副次的な効果として、基板の反りを低減することができ、デバイス歩留まりの向上も期待することができる。
【0022】また、上述したように、下地層2はAl含有III族窒化物から構成することが必要である。また、前記窒化物中におけるAl含有量は全III族元素に対して50原子%以上であることが好ましく、さらには下地層2をAlN(全III族元素に対して100原子%)から構成することが好ましい。これによって、基材1の格子定数差を補完しながら、下地層2の結晶品質を向上させることができ、この結果、n型導電層3〜p型送電層6までのIII族窒化物層群20の結晶品質を向上させることができる。
【0023】また、下地層2の表面粗さRaは2Å以下であることが好ましい。本測定は、AFMを用いて5μm角の範囲で測定する。
【0024】なお、下地層2の膜厚は大きい方が好ましく、具体的には0.1μm以上、さらには0.5μm以上の厚さに形成することが好ましい。下地層13の厚さの上限値は特に限定されるものではなく、クラックの発生や用途などを考慮して適宜選択し、設定する。
【0025】下地層2は、上記要件を満足する限り公知の成膜手段を用いて形成することができる。しかしながら、MOCVD法を用い、その成膜温度を1100℃以上に設定することによって簡易に得ることができる。なお、本特許の成膜温度は、基材1の設定温度を意味する。なお、下地層2の表面の粗れなどを抑制する観点より、前記成膜温度は1250℃以下であることが好ましい。
【0026】下地層2は、Alの他に、Ga及びInなどのIII族元素、B、Si、Ge、Zn、Be及びMgなどの添加元素を含むこともできる。さらに、意識的に添加した元素に限らず、成膜条件などに依存して必然的に取り込まれる微量元素、並びに原料、反応管材質に含まれる微量不純物を含むこともできる。
【0027】n型導電層3からp型導電層6についても、Al、Ga及びInなどのIII族元素を含む窒化物から構成することができる。なお、各層の組成は、各層の機能や特性、並びに作製すべき半導体発光素子30の特性などに応じて適宜設計することができる。さらに、前記同様、B、Si、Ge、Zn、Be及びMgなどの添加元素、並びに意識的に添加した元素に限らず、成膜条件などに依存して必然的に取り込まれる微量元素、原料、反応管材質に含まれる微量不純物を含むこともできる。
【0028】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
本実施例においては、図1に示すような半導体発光素子を作製した。4インチ径の厚さ1000μmのサファイア基板をHSO+Hで前処理した後、MOCVD装置の中に設置した。キャリアガスとして、Hを流速1m/secで流しながら、基板を1200℃まで昇温した後、トリメチルアルミニウム(TMA)とNHを平均流速1m/secで流して、前記サファイア基板上に下地層としてのAlN層を厚さ1μmまで成長させ、エピタキシャル基板を作製した。前記AlN層の(002)面におけるX線回折ロッキングカーブの半値幅は90秒であり、転位密度は2×1010/cmであり、結晶品質に優れることが判明した。また、表面粗さRaは2Åであった。
【0029】次いで、基板温度を1080℃とし、n型導電層としてのSiをドープn−GaN層を厚さ1μm成長させた。次いで、このn−GaN層上に、発光層としてのi−Ga0.9In0.1N層を厚さ200Åに成長させた。次いで、i−Ga0.9In0.1N層からなる発光層上に、p型クラッド層としてのMgドープp−Al0.1Ga0.9N層及びp型導電層としてのMgドープp−GaN層を、それぞれ厚さ100Å及び0.3μm成長させた。
【0030】成長終了後、n型導電層を構成するn−GaN層が露出するまで除去し、この露出した部分の表面上にAl/Tiからなるn−電極を形成した。また、p型導電層としてのp−GaN層上にAu/Niからなるp−電極を形成した。
【0031】なお、n型導電層であるn−GaN層からp型導電層であるp−GaN層までの各層中の転位密度は1×10/cm以下であった。また、(002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅は100秒以下であった。
【0032】
(比較例1)
上記実施例において、下地層を高結晶品質のAlNに代えて、600℃の低温で形成したGaNから構成した以外は同様にしてエピタキシャル基板を作製し、半導体発光素子を作製した。n型導電層であるn−GaN層からp型導電層であるp−GaN層までの各層中の転位密度は1×10/cm以下であり、(002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅は300秒以下であった。
【0033】
(比較例2)
上記実施例において、基材を上記1000μmの厚さのサファイア単結晶に代えて、430μmの厚さのサファイア単結晶から構成した以外は同様にしてエピタキシャル基板を作製し、半導体発光素子を作製した。n型導電層であるn−GaN層からp型導電層であるp−GaN層までの各層中の転位密度は5×10/cm以下であり、(002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅は100秒以下であった。
【0034】以上、実施例1と比較例1及び2との対比から明らかなように、本発明に従って、サファイア単結晶基材の厚さを600μm以上とし、下地層を転位密度が高結晶品質のAlN層から構成したことによって、エピタキシャル基板上に形成された、III族窒化物層群の結晶品質が向上することが分かる。したがって、発光効率などのデバイス特性を向上させることができる。
【0035】以上、具体例を挙げながら、本発明を発明の実施の形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記発明の実施に形態に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない範囲であらゆる変更や変形が可能である。例えば、エピタキシャル基板とIII族窒化物層群との間にバッファ層やひずみ超格子などの多層積層膜を挿入し、前記III族窒化物層群の結晶品質をさらに向上させることもできる。さらに、同様の目的でエピタキシャル基板を構成する基材の表面を窒化処理することもできる。
【0036】また、エピタキシャル基板を構成する基材を凹面状のサファイア単結晶などから構成することによって、III族窒化物層群を積層してなる半導体積層構造の反りを低減することもできる。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、低転位で結晶性に優れた窒化物膜、特にはAl含有窒化物膜を形成することのできる、新規なエピタキシャル基板及びこれを用いた半導体積層構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエピタキシャル基板を含む半導体発光素子の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
1 基材、2 下地層、3 n型導電層、4 発光層、5 p型クラッド層、6 p型導電層、8 n型電極、9 p型電極、10 エピタキシャル基板、20 III族窒化物層群、30 半導体発光素子

Claims (9)

  1. 厚さが600μm以上の基材と、この基材上において形成された、転位密度が1×1011/cm以下であり、(002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が200秒以下であり、少なくともAlを含むIII族窒化物層とを具えることを特徴とする、エピタキシャル基板。
  2. 前記III族窒化物層中のAl含有量が、全III族元素に対して50原子%以上であることを特徴とする、請求項1に記載のエピタキシャル基板。
  3. 前記III族窒化物層はAlNからなることを特徴とする、請求項2に記載のエピタキシャル基板。
  4. 前記基材はサファイア単結晶からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載のエピタキシャル基板。
  5. 厚さが600μm以上の基材と、この基材上において形成された、転位密度が1×1011/cm以下であり、(002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が200秒以下であり、少なくともAlを含むIII族窒化物下地層と、このIII族窒化物下地層上に形成された、III族窒化物層群とを具えることを特徴とする、半導体積層構造。
  6. 前記III族窒化物下地層中のAl含有量が、全III族元素に対して50原子%以上であることを特徴とする、請求項5に記載の半導体積層構造。
  7. 前記III族窒化物層はAlNからなることを特徴とする、請求項6に記載の半導体積層構造。
  8. 前記基材はサファイア単結晶からなることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一に記載の半導体積層構造。
  9. 前記III族窒化物層群の転位密度が1×10/cm以下であり、(002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が200秒以下であることを特徴とする、請求項5〜8のいずれか一に記載の半導体積層構造。
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