JP2004082771A - タイヤ/ホイール組立体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】環状シェル4の脚端部に外側に屈曲する折曲げ部4fを形成し、該環状シェル4の周方向に直交する断面において折曲げ部4fの軸方向外端P3 からリム上のハンプ1fの頂点P1 を通る線分L1 がタイヤ軸に垂直な方向となす傾斜角度α1 を±5°以内にし、環状シェルの半径方向内端から少なくとも断面高さAの35%の高さBの領域4sを直線状に形成し、該直線状領域4sの内面に沿う延長線L2 がタイヤ軸に垂直な方向となす傾斜角度α2 を軸方向内側へ15°〜30°にすると共に、ハンプ1hの頂点P1 とタイヤビード部のトウ先端P2 との間を通過するようにしたタイヤ/ホイール組立体である。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はタイヤ/ホイール組立体に関し、さらに詳しくは、タイヤビード部の脱落防止性の向上によりランフラット耐久性を一層向上したタイヤ/ホイール組立体に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の走行中に空気入りタイヤがパンクした場合でも、数百km程度の緊急走行を可能にするようにする技術が市場の要請から多数提案されている。これら多数の提案のうち、特許文献1や特許文献2で提案された技術は、リム組みされた空気入りタイヤの空洞部内側のリム上に中子を装着し、その中子によってパンクしたタイヤを支持することによりランフラット走行を可能にしたものである。
【0003】
上記ランフラット用中子(支持体)は、外周側を支持面にすると共に内周側を開脚した開脚構造の環状シェルを有し、その両脚部に弾性リングを取り付けた構成からなり、その弾性リングを介してリム上に支持されるようになっている。このランフラット用中子によれば、既存のホイール/リムに何ら特別の改造を加えることなく、そのまま使用できるため、市場に混乱をもたらすことなく受入れ可能にできる利点を有している。
【0004】
しかしながら、上記構成からなるタイヤ/ホイール組立体(車輪)においては、タイヤがパンクしてランフラット走行する際に、タイヤビード部がリムから脱落して、以後のランフラット走行が不可能になる場合がある。そのため、ランフラット用中子(支持体)としては、ランフラット走行時に車体荷重を支える機能を有することが最重要な要求特性ではあるが、同時にタイヤビード部に対して優れた脱落防止機能を有することもランフラット耐久性を向上する上で重要な要求特性になっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−297226号公報(〔要約〕、図1)
【特許文献2】
特表2001−519279号公報(〔要約〕、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、タイヤビード部に対する脱落防止性を向上することによりランフラット耐久性を一層向上するようにしたタイヤ/ホイール組立体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明のタイヤ/ホイール組立体は、空気入りタイヤの空洞部に、外周側を支持面にすると共に内周側を二股状に開脚した環状シェルと前記二股状の開脚端部をリム上に支持する弾性リングとからなるランフラット用支持体を挿入したタイヤ/ホイール組立体において、前記環状シェルの脚端部に外側に屈曲する折曲げ部を形成し、該環状シェルの周方向に直交する断面において前記折曲げ部の軸方向外端P3 から前記リム上のハンプ頂点P1 を通る線分L1 がタイヤ軸に垂直な方向となす傾斜角度α1 を±5°以内にし、該環状シェルの半径方向内端から少なくとも断面高さAの35%の高さBの領域を直線状に形成し、該直線状領域の内面に沿う延長線L2 がタイヤ軸に垂直な方向となす傾斜角度α2 を軸方向内側へ15°〜30°にすると共に、前記リム上のハンプ頂点P1 とタイヤビード部のトウ先端P2 との間を通過するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
このように環状シェルの端部に折曲げ部を形成し、その折曲げ部の軸方向外端P3 からリム上のハンプ頂点P1 に至る線分L1 の方向をタイヤ軸に略垂直(傾斜角度α1 を±5°以内)にしたので、ランフラット走行時の環状シェルからの荷重を的確に支持し、良好なランフラット走行を維持する。更に環状シェルの半径方向内端から少なくとも断面高さAの35%の高さBの領域を直線状に形成し、この直線状領域の内面に沿う延長線L2 をタイヤ軸に垂直な方向に対して内側へ傾斜させ(傾斜角度α2 が軸方向内側へ15°〜30°)、リム上のハンプ頂点P1 とタイヤビード部のトウ先端P2 との間を通過させるようにしたため、ランフラット走行時に環状シェルに負荷する荷重の一部を弾性リングを介してタイヤビード部をリムフランジに押し付ける分力として作用させ、タイヤビード部をリムから脱落させないようにすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において、ランフラット用支持体は空気入りタイヤの空洞部に挿入される環状体として形成される。このランフラット用支持体は、外径が空気入りタイヤの空洞部内面との間に一定距離を保つように空洞部内径よりも小さく形成され、かつ内径は空気入りタイヤのビード部内径と略同一寸法に形成されている。そして、このランフラット用支持体は、空気入りタイヤの内側に挿入された状態で空気入りタイヤと共にホイールにリム組みされ、タイヤ/ホイール組立体に構成される。このタイヤ/ホイール組立体が車両に装着されて走行中に空気入りタイヤがパンクすると、そのパンクして潰れたタイヤがランフラット用支持体の外周面に支持された状態になるので、ランフラット走行を可能にする。
【0010】
上記ランフラット用支持体は、環状シェルと弾性リングとを主要部として構成されている。
【0011】
環状シェルは、外周側(外径側)にパンクしたタイヤを支えるため連続した支持面を形成し、内周側(内径側)は左右の側壁を脚部として二股状に開脚した形状になっている。外周側の支持面は、その周方向に直交する横断面での形状が外径側に凸曲面になるように形成される。環状シェル外周側の凸部の数は1個でも、2個以上の複数のいずれであってもよい。しかし、凸部の数を複数にした場合には、ランフラット走行時に支持する荷重を複数の凸部に分散させることができるので、全体として環状シェルの耐久性を向上することができる。
【0012】
本発明のランフラット用支持体は、パンクしたタイヤを介して車両重量を支えなければならないため、環状シェルは剛体材料から構成されている。その構成材料には、金属、樹脂などが使用される。このうち金属としては、スチール、アルミニウムなどを例示することができる。また、樹脂としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれでもよい。熱可塑性樹脂としては、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ABSなどを挙げることができ、また熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などを挙げることができる。樹脂は単独で使用してもよいが、補強繊維を配合して繊維強化樹脂として使用してもよい。
【0013】
弾性リングは、環状シェルの内径側の二股状になった両脚部の端部にそれぞれ取り付けられ、左右のリムシート上に当接することにより環状シェルからの荷重を支持するが、本発明においては、さらにタイヤビード部のリムからの脱落防止作用を向上するため、後述する特別の構造になっている。弾性リングは、ゴム又は弾性樹脂から構成され、パンクしたタイヤから環状シェルが受ける衝撃や振動を緩和するほか、リムシートに対して滑り止めを行って環状シェルを安定支持する。
【0014】
本発明において、上記環状シェルは、弾性リングと連結する脚部の端部にフランジ状の折曲げ部を有する。このような折曲げ部を有することにより、弾性リングとの接合面積が増大し、大きな連結強度を得ることができる。さらに、この折曲げ部により、ランフラット走行時に環状シェルからの荷重をリム及びタイヤビード部に安定した状態で伝達する。
【0015】
また、環状シェルは、周方向に直交する断面にしたとき、上記折曲げ部の軸方向外端P3 から弾性リングを経由してリムシートのハンプ頂点P1 を通るようにした線分L1 が、タイヤ軸に垂直な方向に対して±5°以内、好ましくは±2°以内の略垂直な傾斜角度α1 を有するようにしてある。このように傾斜角度α1 が略垂直に設定されることにより、ランフラット走行時に環状シェルに負荷される荷重がリム(ホイール)に的確に支持されるため、良好なランフラット走行を維持することができる。
【0016】
また、環状シェルは、周方向に直交する断面において、半径方向内端から少なくとも断面高さAの35%の高さBの領域を直線状に形成しており、この直線状領域の内面に沿う延長線L2 がタイヤ軸に垂直な方向に対して、軸方向内側へ15°〜30°、好ましくは20°〜25°の傾斜角度α2 を有する状態で、リムシート上のハンプ頂点P1 とタイヤビード部のトウ先端P2 との間を通過するように設定されている。このような設定により、ランフラット走行時に環状シェルに負荷される荷重は、弾性リングを介して軸方向外側向きの分力を発生するため、その弾性リングがタイヤビード部をリムフランジ側へ強く押し付けるように作用し、タイヤビード部のリムからの脱落を防止する。
【0017】
このようなタイヤビード部の脱落防止効果を得るため、環状シェルの脚部に形成する直線状領域Bは、環状シェルの断面高さAの少なくとも35%が必要である。直線状領域Bは特に限定されないが、あまり長すぎると環状シェル頂部の曲率を滑らかに形成できなくなるので、好ましくは環状シェル断面高さAの50%を上限とするとよい。直線状領域の内面に沿う延長線L2 の傾斜角度α2 は、これが15°よりも小さいと、弾性リングによるリムフランジ側への分力が小さくなり、タイヤビード部の脱落防止効果が得られなくなる。また、30°よりも大きくなると、垂直荷重に対して弾性リングが座屈しやすくなる。
【0018】
以下、図を参照して本発明を具体的に説明する。
【0019】
図1は本発明の実施形態からなるタイヤ/ホイール組立体(車輪)の要部を示すタイヤ幅方向断面図(子午線断面図)である。
【0020】
1はホイール外周のリム、2は空気入りタイヤ、3はランフラット用支持体である。これらリム1、空気入りタイヤ2、ランフラット用支持体3は、図示しないホイールの回転軸を中心として共軸に環状に形成されている。
【0021】
ランフラット用支持体3は、金属、樹脂などの剛性材から形成された環状シェル4と硬質ゴム、弾性樹脂などの弾性材から形成された弾性リング5とから構成されている。環状シェル4は外周側に二つの凸曲面からなる凸部4a,4aをタイヤ幅方向に並べるように形成されている。この環状シェル4の内周側の両側壁は、それぞれ脚部6,6として二股状に開脚し、それぞれ端部に弾性リング5,5が取り付けられている。
【0022】
上記のように構成されたランフラット用支持体3は、空気入りタイヤ2の内側に挿入された状態で、弾性リング5,5をビード部2b,2bと共にリム1のリムシート1s,1sに同時装着されている。各ビード部2bにはビードコア7がタイヤ周方向に沿って環状に埋設され、このビードコア7の埋設によりビード部2bに剛性を与えられている。
【0023】
上記環状シェル4の両端部には、図2に示すように、それぞれフランジ状の折曲げ部4f,4fが形成され、その折曲げ部4fが環状の弾性リング5の外周側に埋設するように一体に連結されている。この環状シェル4の周方向に直交する断面において、折曲げ部4fの軸方向外端P3 からリムシート1s上のハンプ1hの頂点P1 を通る線分L1 を引くとき、この線分L1 がタイヤ軸に垂直な方向となす傾斜角度α1 が±5°以内(好ましくは±2°以内)になるように設定されている。なお、上記のハンプ1hが一定高さの平面頂部を有するように形成されている場合は、その平面頂部の幅寸法の中心をもって頂点P1 にする。
【0024】
このように折曲げ部4fの軸方向外端P3 からハンプ頂点P1 に至る線分L1 の方向を、タイヤ軸に略垂直(傾斜角度α1 を±5°以内)にすることにより、ランフラット走行時に環状シェルからの荷重を的確に支持するため良好なランフラット走行を可能にする。
【0025】
また、環状シェル4は、周方向に直交する断面において、半径方向内端から少なくとも環状シェル4の断面高さAの35%の高さBの領域4sを直線状に形成している。そして、この直線状の領域4sの内面に沿ってリム1側へ延長する延長線L2 が、タイヤ軸に垂直な方向に対してなす傾斜角度α2 を、軸方向内側へ15°〜30°(好ましくは20°〜25°)とし、かつ実線と鎖線とで示すように、リムシート1s上のハンプ1hの頂点P1 とタイヤビード部2bのトウ先端P2 との間の領域を通過するように設定されている。
【0026】
このような設定により、ランフラット走行時に環状シェルに負荷される荷重の一部を、弾性リング5を介して軸方向外側向きの分力として発生するため、その分力により弾性リング5がタイヤビード部2bをリムフランジ1f側へ強く押し付け、タイヤビード部2bのリム1からの脱落を防止するようにする。
【0027】
【実施例】
タイヤサイズとリムサイズを、それぞれ205/55R16,16×6 1/2JJにし、またランフラット用支持体の環状シェルを厚さ1mmの鋼板から成形し、その直線状領域を環状シェルの断面高さの35%にし、弾性リングをJIS−A硬度85のゴムで図2に示す断面形状に形成する点を共通の同一条件とし、傾斜角度α1 , α2 及び延長線L2 が通過する位置をそれぞれ表1のように異ならせた実施例1〜11及び比較例1〜3のタイヤ/ホイール組立体(車輪)を製作した。
【0028】
上記14種類のタイヤ/ホイール組立体について、下記の測定方法によりランフラット耐久性とビード部のリムからの脱落の有無を測定し、その結果を表1に示した。
【0029】
表1の結果から、本発明によるタイヤ/ホイール組立体は、いずれもビード部の脱落がなく、良好なランフラット耐久性を示しているが、比較例1〜3は、ビード部の脱落を発生している。
【0030】
〔ランフラット耐久性〕
試験用タイヤ/ホイール組立体をタイヤ空気圧を0にして、排気量2500ccの乗用車の前輪左側に装着し、他のタイヤは200kPaにして、テストドライバーにより時速90km/hで周回路を走行し、タイヤビード部がリムから脱落して走行不能になるまでの走行距離を、またタイヤビード部の脱落がなかったものはタイヤ又はランフラット用支持体が破損するまでの走行距離を測定した。
【0031】
評価は比較例1のタイヤ/ホイール組立体で測定した走行距離を100とする指数で表示した。指数が大きいほどランフラット耐久性が優れていることを意味する。
【0032】
【表1】
【0033】
【発明の効果】
上述したように本発明によれば、環状シェルの端部に折曲げ部を形成し、その折曲げ部の軸方向外端P3 からリム上のハンプ頂点P1 に至る線分L1 の方向をタイヤ軸に略垂直にしたので、ランフラット走行時の環状シェルからの荷重を的確に支持し、良好なランフラット走行を維持することができ、更に環状シェルの半径方向内端から少なくとも断面高さAの35%の高さBの領域を直線状に形成し、この直線状領域の内面に沿う延長線L2 をタイヤ軸に垂直な方向に対して内側へ傾斜させ、リム上のハンプ頂点P1 とタイヤビード部のトウ先端P2 との間を通過させるようにしたため、ランフラット走行時に環状シェルに負荷する荷重の一部を弾性リングを介してタイヤビード部をリムフランジに押し付け、タイヤビード部をリムから脱落させないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなるタイヤ/ホイール組立体の要部を示す子午線断面図である。
【図2】図1のタイヤ/ホイール組立体のタイヤビード部の箇所を拡大して示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1(ホイールの)リム
1h ハンプ
1f リムフランジ
2 空気入りタイヤ
2b ビード部
3 ランフラット用支持体
4 環状シェル
4f 折曲げ部
4s 直線状領域
5 弾性リング
L1 線分
L2 延長線
α1 ,α2 傾斜角度
P1 (ハンプの)頂点
P2 トウ先端
P3 (折曲げ部の)軸方向外端
Claims (4)
- 空気入りタイヤの空洞部に、外周側を支持面にすると共に内周側を二股状に開脚した環状シェルと前記二股状の開脚端部をリム上に支持する弾性リングとからなるランフラット用支持体を挿入したタイヤ/ホイール組立体において、前記環状シェルの脚端部に外側に屈曲する折曲げ部を形成し、該環状シェルの周方向に直交する断面において前記折曲げ部の軸方向外端P3 から前記リム上のハンプ頂点P1 を通る線分L1 がタイヤ軸に垂直な方向となす傾斜角度α1 を±5°以内にし、該環状シェルの半径方向内端から少なくとも断面高さAの35%の高さBの領域を直線状に形成し、該直線状領域の内面に沿う延長線L2 がタイヤ軸に垂直な方向となす傾斜角度α2 を軸方向内側へ15°〜30°にすると共に、前記リム上のハンプ頂点P1 とタイヤビード部のトウ先端P2 との間を通過するようにしたタイヤ/ホイール組立体。
- 前記傾斜角度α1 を±2°以内にした請求項1に記載のタイヤ/ホイール組立体。
- 前記傾斜角度α2 を軸方向内側へ20°〜25°にした請求項1または2に記載のタイヤ/ホイール組立体。
- 前記延長線L2 が前記リム上のハンプ頂点P1 を通過するようにした請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ/ホイール組立体。
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