JP4039902B2 - タイヤ/ホイール組立体及びランフラット用支持体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はタイヤ/ホイール組立体及びランフラット用支持体に関し、さらに詳しくは、ランフラット走行時の操縦安定性の向上と弾性リングの軽量化を可能にしたタイヤ/ホイール組立体及びランフラット用支持体に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の走行中に空気入りタイヤがパンクした場合でも、数百km程度の緊急走行を可能にするようにする技術が市場の要請から多数提案されている。これら多数の提案のうち、特開平10−297226号公報や特表2001−519279号公報で提案された技術は、リム組みされた空気入りタイヤの空洞部内側のリム上に中子を装着し、その中子によってパンクしたタイヤを支持することによりランフラット走行を可能にしたものである。
【0003】
上記ランフラット用中子(支持体)は、外周側を支持面にすると共に内周側を開脚した開脚構造の環状シェルを有し、その両脚部に弾性リングを取り付けた構成からなり、その弾性リングを介してリム上に支持されるようになっている。このランフラット用中子によれば、既存のホイール/リムに何ら特別の改造を加えることなく、そのまま使用できるため、市場に混乱をもたらすことなく受入れ可能にできる利点を有している。
【0004】
しかしながら、上記ランフラット用中子は弾性リングが硬質ゴムからなっていて、この硬質ゴムによりランラット走行時の車体重量を支えるが横方向に支える能力に乏しいため、操縦安定性が十分に上げられないという問題があった。また、弾性リングにより車体重量を支えるため、ゴム厚をその重量に耐えられるように厚く設計する必要があり、それが重量増加の原因になっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ランフラット走行時の操縦安定性を向上すると共に、弾性リングの軽量化を可能にするタイヤ/ホイール組立体及びランフラット用支持体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明のタイヤ/ホイール組立体は、空気入りタイヤの空洞部に、外周側を支持面にすると共に内周側を二股状に開脚した環状シェルと前記二股状の開脚端部をリム上に支持する弾性リングとからなるランフラット用支持体を挿入したタイヤ/ホイール組立体において、前記環状シェルの両側部にそれぞれ側方へ張り出す突出部を設け、該突出部がランフラット走行時に前記空気入りタイヤのビード部内面に接触するようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明のランフラット用支持体は、外周側を支持面にすると共に内周側を二股状に開脚した環状シェルと前記二股状の開脚端部をリム上に支持する弾性リングとからなり、前記環状シェルの両側部にそれぞれ側方へ張り出す突出部を設け、該突出部がランフラット走行時に前記空気入りタイヤのビード部内面に接触するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
このようにランフラット用支持体の主要部を構成する環状シェルの両側部にそれぞれ突出部を設け、この突出部をランフラット走行時に空気入りタイヤのビード部の内壁に接触させるようにしたことにより、ビード部によりランフラット用支持体を横方向に拘束し、コーナリング走行時やレーン変更時の操縦安定性を向上する。また、ビード部によってランフラット用支持体を拘束したことにより弾性リングへの負荷を軽減するため、弾性リングを薄肉化することが可能になって軽量化することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において、ランフラット用支持体は空気入りタイヤの空洞部に挿入される環状体として形成される。このランフラット用支持体は、外径が空気入りタイヤの空洞部内面との間に一定距離を保つように空洞部内径よりも小さく形成され、かつ内径は空気入りタイヤのビード部内径と略同一寸法に形成されている。そして、このランフラット用支持体は、空気入りタイヤの内側に挿入された状態で空気入りタイヤと共にホイールにリム組みされ、タイヤ/ホイール組立体に構成される。このタイヤ/ホイール組立体が車両に装着されて走行中に空気入りタイヤがパンクすると、そのパンクして潰れたタイヤがランフラット用支持体の外周面に支持された状態になるので、ランフラット走行を可能にする。
【0010】
上記ランフラット用支持体は、環状シェルと弾性リングとを主要部として構成されている。
【0011】
環状シェルは、外周側(外径側)にパンクしたタイヤを支えるため連続した支持面を形成し、内周側(内径側)は左右の側壁を脚部として二股状に開脚した形状にしている。外周側の支持面は、その周方向に直交する横断面での形状が外径側に凸曲面になるように形成される。その凸曲面のタイヤ軸方向に並ぶ数は単一だけでもよいが、好ましくは2以上が並ぶようにするのがよい。このように支持面を2以上の凸曲面が並ぶように形成することにより、支持面のタイヤ内壁面に対する接触箇所を2以上に分散させ、タイヤ内壁面に与える局部摩耗を低減するため、ランフラット走行を可能にする持続距離を延長することができる。
【0012】
弾性リングは、環状シェルの内径側に二股状になった両脚部の端部にそれぞれ取り付けられ、左右のリムシート上に当接することにより環状シェルを支持している。この弾性リングはゴム又は弾性樹脂から構成され、パンクしたタイヤから環状シェルが受ける衝撃や振動を緩和するほか、リムシートに対する滑り止めを行って環状シェルを安定支持するようにしている。
【0013】
ランフラット用支持体は、パンクしたタイヤを介して車両重量を支えるようにしなければならないため、環状シェルは剛体材料から構成されている。その構成材料には、金属、樹脂などが使用される。このうち金属としては、スチール、アルミニウムなどを例示することができる。また、樹脂としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれでもよい。熱可塑性樹脂としては、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ABSなどを挙げることができ、また熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などを挙げることができる。樹脂は単独で使用してもよいが、補強繊維を配合して繊維強化樹脂として使用してもよい。
【0014】
本発明のランフラット用支持体は、上述した構成を前提として、環状シェルの両側部にそれぞれ側方へ張り出す突出部を設けたことが特徴である。この突出部は、空気入りタイヤのビード部内面に対向するように設けられ、通常走行時、すなわち非パンク走行時には、ビード部内面に対し隙間を介在させて非接触状態になっていることが好ましい。この通常走行時に維持する隙間としては1mm以上が好ましく、この非接触状態の維持によりタイヤの耐久性が向上する。
【0015】
上記突出部は環状シェルの側壁を屈曲加工して形成したものでもよく、或いは、環状シェルとは独立に加工された環状部材又はブロック部材を取り付けるようにしたものでもよい。この独立部材の場合には、環状シェルの構成材と必ずしも同一である必要はなく、異種材料からなっていてもよい。また、突出部の形状は、横断面(子午線断面)では幅方向に張り出し、先端に当接面をもつものであればよく、また側面視では、連続した環状体として環状シェルの側面に同心状に形成したものでも、或いは、複数のブロックを間隔をおいて不連続に同心環状に配列したものであってもよい。
【0016】
独立に加工された環状部材又はブロック部材を環状シェルの側面に取り付ける方法は、特に限定されるものではないが、環状シェルと同一材料で形成されていて両方とも金属の場合には、溶接やハンダ付け、又はボルト,ネジによる締め付けにより、また両方とも樹脂の場合には、溶着や接着剤による接合、又はボルトやネジによる締め付けで固定することができる。
【0017】
上記構成のタイヤ/ホイール組立体を装着した車両が走行中に、タイヤのパンクによりランフラット走行になると、環状シェルが車両重量を支えて半径方向に押し潰された状態になるため、環状シェル側面の突出部は幅方向に変位し、空気入りタイヤのビード部内壁に当接した状態になる。このように突出部がビード部内壁に当接すると、ランフラット用支持体はビード部により幅方向(左右方向)に拘束されるため、操縦安定性が向上する。また、ランフラット用支持体を支える弾性リングへの負荷が軽減するため、弾性リングの幅などを薄肉化することが可能になり、弾性リングを軽量化することができる。
【0018】
上記のようにランフラット走行時に突出部がタイヤビード部に接触した時の作用を一層向上するため、突出部の先端がビード部内面に接触する径方向長さ(ペリフェリに沿う長さ)は5〜20mmの範囲にすることが好ましい。径方向の接触長さが5mmよりも短いと、操縦安定性向上や弾性リングを軽量化する効果は少ない。また、20mmよりも長いと、突出部の重量増加と共に、製造上も困難になるという問題がある。
【0019】
本発明において更に好ましくは、上記のように突出部がタイヤビード部の内壁に接触する部分を、ほぼリムフランジの頂点近くに対応させるようにするとよい。より具体的には、タイヤ回転軸に平行にリムフランジ頂点Pを通る直線Lを引いた時、リムフランジ頂点Pから上記接触長さを臨んだときの直線Lから測定した見込み角αが20°〜50°の範囲になることが好ましい。このような見込み角αの範囲に上記接触長さを収めることにより操縦安定性向上や弾性リング軽量化の効果を一層高めることができる。
【0020】
以下、本発明を図に示す実施形態により具体的に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態からなるタイヤ/ホイール組立体(車輪)の要部を示す子午線断面図である。
【0022】
1はホイール外周のリム、2は空気入りタイヤ、3はランフラット用支持体である。これらリム1、空気入りタイヤ2、ランフラット用支持体3は、図示しないホイールの回転軸を中心として共軸に環状に形成されている。
【0023】
ランフラット用支持体3は、金属、樹脂などの剛性材から形成された環状シェル4と、硬質ゴム、弾性樹脂などの弾性材から形成された弾性リング5とから構成されている。環状シェル4は外周側に二つの凸曲面をもつ支持面を形成し、その支持面は空気入りタイヤ2が正常なときは内周面から離間しているが、パンクしたとき潰れたタイヤを支持するようになっている。また、環状シェル4の内周側は両側壁がそれぞれ脚部6,6として二股状に開脚し、その端部に弾性リング5,5を取り付けている。
【0024】
上記ランフラット用支持体3の環状シェル4は、それぞれ両脚部6,6の下端部に突出部7,7を形成している。この突出部7は、環状シェル4の側壁を外側に屈曲させ折り返すように一体に形成され、非パンク状態の空気入りタイヤ2のタイヤビード部2bの内面に対し、1mm以上の隙間を介在させている。
【0025】
しかし、空気入りタイヤ2がパンクしてランフラット走行になると、タイヤ2が環状シェル4の支持面を押圧して半径方向内側に撓ませるため、左右の突出部7,7がタイヤ2のビード部2bの内壁に接当し、ランフラット用支持体3が左右のビード部2b,2bに拘束され、それ以上横移動できないようにされる。したがって、上記タイヤ/ホイール組立体(車輪)は、ランフラット走行時の操縦安定性が向上する。また、環状シェル3を支持する弾性リング5に対する負荷が低減するので、その弾性リング5のゴム厚を低減することが可能になり、軽量化することが可能になる。
【0026】
このような効果を得るため、突出部7の先端部のビード部2bの内壁に対する半径方向の接触長さ(ペリフェリに沿う長さ)は、上述したように5〜20mmの範囲にることが好ましい。さらに好ましくは、その接触長さをリムフランジ頂点Pから臨んだときの見込み角α、すなわち、タイヤ回転軸と平行に引いたリムフランジ頂点Pを通る直線Lを基準として、この直線Lから測定した見込み角αが20°〜50°の範囲になるようにするとよい。
【0027】
図2は本発明の他の実施形態からなるタイヤ/ホイール組立体の要部を示す子午線断面図である。
【0028】
この実施形態では、環状シェル3の側面に設けた突出部7の形態が図1の実施形態と異なるだけで、それ以外は略同一の構成からなる。
【0029】
すなわち、突出部7は、環状シェル3の側壁端部をいったん内側へ折り曲げたのち外側へ反転させ、湾曲させながら上方へ反り上げるように形成されている。したがって、突出部7は自由端を有する湾曲板として形成され、幅方向の負荷に対して適度の弾性(クッション性)を有している。そのため、この突出部7はビード部2bに接触することにより与える損傷が少ないため、空気入りタイヤ2がパンクしていない正常状態において常にビード部2bの内壁に接するようにセットされている。
【0030】
【実施例】
タイヤサイズが205/55R16 89Vの空気入りタイヤと、リムサイズが16×6 1/2JJのホイールとに、厚さ1.0mmのスチール板から両側面に突出部を形成した環状シェルを加工し、厚さ12.0mmの硬質ゴムからなる弾性リングを組み付けた図1の構成からなるランフラット用支持体を挿入して組み付けたタイヤ/ホイール組立体(車輪)を製作した(実施例)。
【0031】
また、比較のため、上記実施例のタイヤ/ホイール組立体において、ランフラット用支持体の環状シェルに突出部を設けず、弾性リングの硬質ゴム厚さを15.0mmに変えた以外は、実施例と同一構造にしたタイヤ/ホイール組立体(車輪)を製作した(従来例)。
【0032】
上記2種類のタイヤ/ホイール組立体について、下記の測定方法によるランフラット走行時の操縦安定性と弾性リング重量とを測定したところ、表1の結果を得た。
【0033】
〔操縦安定性の測定方法〕
2.5リットルのFR車の前右輪に装着し、時速90kmで周回路を左廻りに走行するときのハンドリング性を5人のテストドライバーにより5点法により採点し、5人の平均値で評価した。評価値は従来例の値を100とする指数で表示した。指数値が大きいほど操縦安定性が優れていることを意味する。
【0034】
〔弾性リング重量の測定方法〕
ランフラット用支持体に組み付ける前の弾性リングの重量を直接計量した。評価値は従来例の弾性リング重量を100とする指数で表示した。指数値が小さいほど弾性リング重量が軽いことを意味する。
【0035】
【表1】
Figure 0004039902
【0036】
【発明の効果】
上述したように本発明によれば、ランフラット用支持体の主要部を構成する環状シェルの両側部にそれぞれ側方へ張り出す突出部を設け、この突出部をランフラット走行時に前記空気入りタイヤのビード部内面に接触させるようにしたので、ランフラット走行時にはランフラット用支持体がビード部により横方向に拘束され、操縦安定性を向上することができる。また、ランフラット用支持体をビード部で拘束することで弾性リングへの負荷を軽減するため、弾性リングを薄肉化し軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなるタイヤ/ホイール組立体の要部を示す子午線断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態からなるタイヤ/ホイール組立体の要部を示す子午線断面図である。
【符号の説明】
1(ホイールの)リム
2 空気入りタイヤ
2b ビード部
3 ランフラット用支持体
4 環状シェル
5 弾性リング
6 脚部
7 突出部

Claims (5)

  1. 空気入りタイヤの空洞部に、外周側を支持面にすると共に内周側を二股状に開脚した環状シェルと前記二股状の開脚端部をリム上に支持する弾性リングとからなるランフラット用支持体を挿入したタイヤ/ホイール組立体において、前記環状シェルの両側部にそれぞれ側方へ張り出す突出部を設け、該突出部がランフラット走行時に前記空気入りタイヤのビード部内面に接触するようにしたタイヤ/ホイール組立体。
  2. 前記突出部が通常走行時に前記空気入りタイヤのビード部内面と1mm以上の隙間を介在するようにした請求項1に記載のタイヤ/ホイール組立体。
  3. 前記突出部がランフラット走行時に前記空気入りタイヤのビード部内面に接触する径方向長さを5〜20mmにした請求項1又は2に記載のタイヤ/ホイール組立体。
  4. 前記突出部がランフラット走行時に前記空気入りタイヤのビード部内面に接触する径方向の長さのタイヤ回転軸に平行にリムフランジ頂点を通る直線に対する該リムフランジ頂点からの見込み角αが20°〜50°の範囲である請求項3に記載のタイヤ/ホイール組立体。
  5. 外周側を支持面にすると共に内周側を二股状に開脚した環状シェルと前記二股状の開脚端部をリム上に支持する弾性リングとからなり、前記環状シェルの両側部にそれぞれ側方へ張り出す突出部を設け、該突出部がランフラット走行時に前記空気入りタイヤのビード部内面に接触するようにしたランフラット用支持体。
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