JP2004081042A - タンパク質溶液の調製方法、当該タンパク質溶液、当該タンパク質溶液を利用したモノクローナル抗体の作製方法及び当該モノクローナル抗体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(a)細胞内小器官を有機酸溶液に接触させて、前記細胞内小器官に含まれるタンパク質を抽出してタンパク質有機酸溶液を調製し、(b)前記タンパク質有機酸溶液を凍結乾燥してタンパク質粉末を調製し、(c)前記タンパク質粉末を変性剤溶液に溶解してタンパク質変性剤溶液を調製し、(d)前記タンパク質変性剤溶液を水またはリン酸緩衝液に対して透析してタンパク質溶液を調製する工程を含む、細胞内小器官に含まれる多種類のタンパク質が溶解したタンパク質溶液の調製方法および当該タンパク質溶液。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞内小器官に含まれるタンパク質を抽出した後、タンパク質溶液を調製する、タンパク質溶液の調製方法及び当該タンパク質溶液に関するものである。また、本発明は、当該タンパク質溶液を利用したモノクローナル抗体の作製方法及び当該モノクローナル抗体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
21世紀にヒトゲノムが解読され、現在では多くの生物種のゲノム情報が得られるようになった。こうした中で、生命科学分野の研究はポストゲノム研究へと移行してきており、特に生体内で実際に機能を担っているタンパク質の研究が注目されている。
【0003】
ヒトの場合、解読されたゲノム情報から約10万種類のタンパク質がコードされていると考えられているが、多くの場合、複数のタンパク質がネットワークを形成することで機能を発揮している。したがって、生命科学分野では、全ての、あるいは、なるべく多種類のタンパク質を対象とした網羅的な研究であるプロテオーム研究が求められている。特に創薬においては、細胞内に存在する全タンパク質の動態を網羅的に解析する手法の開発が急務となっている。
【0004】
こうした背景の中、なるべく多くのタンパク質を高効率で、天然構造をとり機能を保持した状態で抽出する技術の開発が求められており、特にタンパク質が機能を発揮する溶液状態での抽出は極めて重要である。また、二次元電気泳動やキャピラリー電気泳動と質量分析器を用いたタンパク質の網羅的プロファイリングであるプロテオーム解析、複数のカラムを用いた各タンパク質の精製や各タンパク質を抗原とした抗体作製等のために高濃度のタンパク質溶液の調製が所望されている。
【0005】
従来、細胞や細胞内小器官のタンパク質を抽出する方法として、細胞内小器官をアセトンでホモジナイズし、タンパク質を沈殿させることにより、細胞内小器官からタンパク質を抽出する方法が知られている(The use of acetone precipitation in the isolationof ribosomal proteins. Barritault D., Expert−Bezancon, Guerin M.F. and Hayes D., Eur.J.Biochem.(1976)63, 131−5)。しかしながら、かかる方法においては、アセトンによりタンパク質の非極性部分が露出し、変性したタンパク質同士が会合して沈殿するため、析出したタンパク質を再び水などの溶媒に溶解させることが困難である。アセトンにより沈殿させたタンパク質を再び水溶液に高濃度で溶解させるには、高濃度の界面活性剤の存在が必要となるが、最終的に界面活性剤を水溶液から完全に除去することは困難である。一般的に溶液中に溶解しているタンパク質が変性していたり、界面活性剤が含有されている溶液では、タンパク質の解析を十分に行うことができない。例えば、変性したタンパク質を抗原とする抗体を作製しても、生体内での機能を解析することにはつながらない。また、例えば、タンパク質溶液を用いて電気泳動を行う場合、界面活性剤が含有されていると電気泳動ゲルに高電圧を印加できず、電気泳動による解析が困難となる。
【0006】
また、細胞や細胞内小器官のタンパク質を抽出するその他の方法として、特開昭62−65696号に記載されているように、有機酸を用いてタンパク質を抽出する方法が知られている。かかる方法によると、有機酸に溶解した状態でタンパク質を抽出することができるため、アセトンなどの有機溶媒によるタンパク質の非極性基の露出による変性および凝集を回避することができる。しかしながら、このように抽出されたタンパク質を用いても、電気泳動や抗体作製をはじめとするタンパク質の解析を行うために要求されている高濃度のタンパク質溶液の調製は困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、細胞内小器官由来のタンパク質であって、天然構造に近いと考えられる構造を保持しているタンパク質を水などの溶媒に高濃度で溶解したタンパク質溶液の調製方法及び当該タンパク質溶液を提供することを目的とする。また、当該タンパク質溶液を用いて多種類のモノクローナル抗体を同時に作製できるモノクローナル抗体の作製方法及びモノクローナル抗体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係るタンパク質溶液の抽出方法は、細胞内小器官に含まれる多種類のタンパク質が溶解したタンパク質溶液の調製方法であって、(a)細胞内小器官を有機酸溶液に接触させて、前記細胞内小器官に含まれるタンパク質を抽出してタンパク質有機酸溶液を調製し、(b)前記タンパク質有機酸溶液を凍結乾燥してタンパク質粉末を調製し、(c)前記タンパク質粉末を変性剤溶液に溶解してタンパク質変性剤溶液を調製し、(d)前記タンパク質変性剤溶液を水またはリン酸緩衝液に対して透析してタンパク質溶液を調製する工程を含むことを特徴とする。
【0009】
工程(a)の有機酸溶液は、有機酸溶液中にタンパク質を溶解させ、その後分析や材料に用いる際に支障をきたす核酸等の他の生体分子とタンパク質を分離する作用を有する。また、有機酸溶液を用いることよって、タンパク質を比較的穏やかな変性状態で非極性残基が露出することがなく、タンパク質分子同士が凝集することがなく溶液状態で抽出することができる。したがって、タンパク質の非極性残基が露出した状態で抽出される場合と比較して、より天然構造に近い構造を保持した状態でタンパク質を抽出することができる。工程(b)では、凍結乾燥により、タンパク質有機酸溶液中の溶媒である有機酸溶液を蒸発させてタンパク質粉末を得る。この工程においては、凍結乾燥を行っているので、タンパク質は工程(a)において溶解している際の水和状態をほぼ保ったまま乾燥しているといえる。工程(c)の変性剤は、タンパク質の高次構造を完全にほどく作用を有する。工程(c)においてタンパク質の高次構造を一旦ほどき、工程(d)において水またはリン酸緩衝液に対して透析してタンパク質溶液を調製することにより、タンパク質が巻き戻され天然状態に近い構造をとると考えられている(R.K.Scopes、in Protein Purification:Principle and Practice、1984、Springer Verlag)。上記の方法によると、細胞内小器官由来のタンパク質であって、天然構造に近い構造を保持しているタンパク質を水などの溶媒に高濃度で溶解した溶液を得ることができる。
【0010】
請求項2に係るタンパク質溶液の調製方法は、前記細胞内小器官として染色体を用いるものである。
【0011】
請求項3に係るタンパク質溶液の調製方法は、前記有機酸として酢酸を用いるものである。
【0012】
請求項4に係るタンパク質溶液の調製方法は、前記変性剤として尿素を用いるものである。
【0013】
請求項5に係るタンパク質溶液は、請求項1乃至4のいずれかに記載のタンパク質溶液の調製方法により調整したものである。
【0014】
請求項6に係るモノクローナル抗体の作製方法は、請求項5に記載のタンパク質溶液を用いることを特徴とする。この方法によると、高濃度のタンパク質溶液を用いることができるので、細胞内小器官に由来する多種類のタンパク質を抗原とするモノクローナル抗体を同時に網羅的に作製することができる。また、天然構造に近いと考えられる構造を保持しているタンパク質を抗原とする抗体を作製することができるので、生きた状態での生体機能の解明に有用なモノクローナル抗体を作製することができる。
【0015】
請求項7に係るモノクローナル抗体は、請求項6に記載のモノクローナル抗体の作製方法により作製したものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のタンパク質溶液抽出方法は、細胞内小器官に含まれる多種類のタンパク質が溶解されたタンパク質溶液の調製方法であって、(a)細胞内小器官を有機酸溶液に接触させて、前記細胞内小器官に含まれるタンパク質を抽出してタンパク質有機酸溶液を調製し、(b)前記タンパク質有機酸溶液を凍結乾燥してタンパク質粉末を調製し、(c)前記タンパク質粉末を変性剤溶液に溶解してタンパク質変性剤溶液を調製し、(d)前記タンパク質変性剤溶液を水またはリン酸緩衝液に対して透析してタンパク質溶液を調製する工程を含むものである。
【0017】
本発明のタンパク質溶液抽出方法において、タンパク質を抽出する対象となる細胞内小器官は、動物細胞、植物細胞いずれの細胞内小器官であってもよい。対象となる細胞内小器官は、染色体、ミトコンドリア等、いずれの細胞内小器官であってもよいが、生体の機能を解明するために興味深いタンパク質が多種類含有されていると考えられている染色体を対象とするのが好ましい。
【0018】
細胞内小器官は、公知の方法に従い細胞から分画したものを用いることができる。具体的には、多段階遠心等により得ることができる。
【0019】
上記工程(a)において用いる有機酸としては、好ましくは、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸およびその混合物からなる群から選ばれるものであり、最も好ましくは酢酸である。有機酸溶液の使用量は、好ましくは2倍量である。
【0020】
上記工程(b)においては、工程(a)で調製したタンパク質有機酸溶液を凍結乾燥する。凍結乾燥は公知の方法で行うことができる。
【0021】
上記工程(c)においては、工程(b)で調製したタンパク質粉末を、変性剤溶液に溶解してタンパク質変性剤溶液を調製する。変性剤としては、尿素、塩酸グアニジン等公知の変性剤を用いることができるが、尿素を用いることが好ましい。尿素の添加量は好ましくは2M以上、より好ましくは8Mである。
【0022】
上記工程(d)においては、工程(c)で調製したタンパク質変性剤溶液を水またはリン酸緩衝液に対して透析してタンパク質溶液を調製する。透析は公知の方法で行うことができ、具体的にはタンパク質が通過せず低分子のみが通過できる分子量カットが1000程度の透析膜を用いるとよい。透析外液として、水またはリン酸緩衝液を用いるのは、タンパク質の解析や抗体の作製にあたっては、水やリン酸緩衝液にタンパク質が溶解した溶液を用いることが最適だからである。
【0023】
本発明のタンパク質溶液調製方法により調整したタンパク質溶液は、抗体の作製に用いることができる。抗体の作製は、常法に従い行うことができ、上記タンパク質溶液を、マウス、ウサギ、ラットあるいはヤギなどの動物に免疫することによって得ることができる。免疫は一般的方法により行われ、上記タンパク質溶液、好ましくはタンパク質リン酸緩衝溶液を適切な濃度に調製し、動物の腹腔内若しくは静脈内に投与すればよい。その際、免疫原を牛血清アルブミン(BSA)や菌体等の担体に担持させてもよく、また、フロイントアジュバントや菌体アジュバントを共に注射してもよい。
【0024】
動物から採取した形質細胞は骨髄腫細胞と融合させる。形質細胞は一般に脾細胞として得られる。骨髄腫細胞としては、マウス骨髄腫細胞が好ましく、既に公知の種々の細胞が使用できる。融合方法は公知の手法に準じて行われる。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、センダイウィルス(HVJ)等が使用される。脾細胞と骨髄腫細胞との混合比は一般的方法と同様であり、1対1〜10対1が好ましい。
【0025】
融合終了後、通常の選択用培地にて培養することによりハイブリドーマを選択する。前記した骨髄腫細胞はHAT培地(ヒポキサンチン、アミノブリテン及びチミジンを含む培地)中では生育できないため、HAT培地中で生育する細胞を選択すればよい。
【0026】
ハイブリドーマのコロニーが大きくなったところで目的とする抗体の産生株の検索及びクローニングが行われる。
【0027】
各抗体産生株は、一般に抗体の検出に用いられている方法、例えばELISA法、凝集反応法、二重免疫拡散法等により行われる。
【0028】
具体的には、タンパク質抗原を付着させたプレートをゼラチンにてブロッキングした後、被検ハイブリドーマの培養上清と反応させ、さらに、酵素標識した一次抗体に対する抗体(二次抗体)を反応させ、各抗原に結合した抗体の存在を、酵素活性を測定することにより確認し、所望の抗体産生株を選択する。
【0029】
また、クローニングは限界希釈法により行われる。すなわち、96穴マイクロタイタプレート上に、ハイブリドーマが各ウェル当たり1個以下になるよう配分し、単一コロニーを生育させる。この際、フィーダ細胞としてマウス胸腺細胞を添加することが好ましい。
【0030】
上述のクローニングを繰り返し、モノクローン化されたハイブリドーマを得る。
【0031】
ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を得るには、ハイブリドーマを培地中にて培養し、培養上清から分離する方法、あるいはハイブリドーマをマウス腹腔内に投与し、その腹水より回収する方法がある。さらに、一般的な方法、すなわち、硫安沈澱、ゲル濾過、イオン交換カラムクロマトグラフィ等を用いて精製することも可能である。
【0032】
本発明の方法により作製されたモノクローナル抗体は、例えば、免疫組織化学染色法、サンドイッチ免疫法、及びウェスタンブロッティングなどに使用することができる。
【0033】
また、本発明の方法により作製されたモノクローナル抗体は、プロテインチップの作製に使用することができる。本発明におけるモノクローナル抗体は、網羅的に多種類できるため、抗体を用いたプロテインチップにおいて極めて有効である。かかるプロテインチップは、例えば各染色体タンパク質の発現量を検出することに利用でき、特定の疾患に係わる染色体タンパク質の量も検出できる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0035】
タンパク質溶液の調製
(実施例1)
ヒトリンパ球細胞BALL−1株にコルセミドを添加後16h培養し、同調処理した。同調率は約50%であった。細胞収穫後、低調処理、続いてジギトニン/ポリアミンバッファーを用いた細胞膜破砕を行い、遠心機(トミー工業社製LX−120)を用いた2段階の遠心操作(4℃、1000rpmの回転数で3分間および3000rpmの回転数で10分間)により染色体画分を分取した。ここで回転数1000rpmは190×g、回転数3000rpmは1750×gに相当する。以下、全ての操作は特に記載のない限り、氷上で行った。染色体タンパク質の抽出は以下のように行った。
【0036】
染色体画分に1MのMgCl2(ナカライテスク社)を1/10量加えたのち、2倍容量の氷酢酸を添加し、1時間穏やかにインキュベートした。3000rpmの回転数で10分間遠心後、上清を回収した。沈殿には4℃の33mMMgCl2および67重量%酢酸溶液を添加し、再び1時間穏やかにインキュベートした。3000rpmの回転数で10分間遠心後、上清を回収した。さらにもう一度、沈殿に4℃の33mMMgCl2および67重量%酢酸溶液を添加し、再び1時間穏やかにインキュベートした。3000rpmの回転数で10分間遠心後、上清を回収した。全ての上清を混合し、分子量カット3000の透析カップを用いて2重量%酢酸溶液を外液として12時間透析した。透析した得られたタンパク質2重量%酢酸溶液を凍結乾燥し染色体タンパク質粉末を得た。400×106個の細胞より約1mgの染色体タンパク質が抽出された。
【0037】
次に染色体タンパク質粉末1mgに8M尿素水溶液100mlを加え、ほぼ完全に溶解させた。次にこの溶液について超純水を外液とした透析を24時間行い、染色体タンパク質水溶液約200mlを得た。ブラッドフォード法により決定したタンパク質溶液の濃度は5mg/mlであった。
【0038】
(実施例2)
透析の外液として、超純水の代わりにリン酸緩衝液を用いた以外は、実施例1と同様の方法でタンパク質溶液を調製した。
【0039】
(比較例1)
上記実施例1と同様の方法により、凍結乾燥後の染色体タンパク質粉末を得た。次に、この染色体タンパク質粉末1mgに超純水200mlを添加し、15000rpmの回転数で10分間遠心後上清を回収し、比較例1のタンパク質溶液を調製した。
【0040】
(比較例2)
上記実施例1と同様の方法により、凍結乾燥後の染色体タンパク質粉末を得た。次に、この染色体タンパク質粉末1mgにリン酸緩衝食塩水(PBS)100mlを添加し、15000rpmの回転数で10分間遠心後上清を回収し、比較例2のタンパク質溶液を調製した。
【0041】
(比較例3)
アセトン抽出法により染色体タンパク質を抽出し、比較例3の染色体タンパク質溶液を調製した。まず、実施例1と同様の方法で染色体を分画後、アセトン抽出(蛋白質・酵素の基礎実験法、1994年、南江堂、堀尾武一編集)により染色体タンパク質を抽出した。具体的には染色体液50mlに−20℃のアセトンを20倍量(1ml)添加し、1時間氷上でインキュベートした。15000rpmの回転数で15分間遠心後沈殿を回収し、2時間減圧乾燥して染色体タンパク質粉末を得た。この粉末に100mlの超純水を添加し、15000rpmの回転数で10分間遠心後上清を回収し、比較例3のタンパク質溶液を調製した。
【0042】
タンパク質溶液の濃度比較試験
実施例1、比較例1および比較例2のタンパク質溶液のタンパク質溶解量をSDSポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動により分析した。試料溶液2.5mlにサンプルバッファー(200mM トリス塩酸緩衝液 pH6.8、8mMEDTA、40%グリセロール、4%SDS、0.4%ブロムフェノールブルー 、及び12mM2−メルカプトエタノール)2.5mlを添加した計5mlをサンプルウェルにアプライした。20mMの定電流で45分間泳動した後、CBB(クマシー染色液R−250)染色液を用いて染色を行った。電気泳動の結果を図1に示す。アプライしたタンパク質量が多い場合、すなわち高濃度のタンパク質溶液ほど濃いバンドとして検出される。図1より、実施例1のタンパク質溶液は、比較例1、2のタンパク質溶液と比較して、濃いバンドが検出されており高濃度であることがわかる。
【0043】
次に、実施例1および比較例3のタンパク質溶液のタンパク質溶解量をSDSポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動により分析した。試料の調製方法及び電気泳動の方法は上記と同様である。電気泳動の結果を図2に示す。図2より、実施例1のタンパク質溶液は、比較例3のタンパク質溶液と比較して、濃いバンドが検出されており高濃度であることがわかる。尚、比較例3のタンパク質溶液については、バンドがほとんど検出されておらず、タンパク質溶液におけるタンパク質溶液の溶解量が非常に少ないことがわかる。
【0044】
モノクローナル抗体の作製
実施例1のタンパク質溶液を2mg/mlに調製し、当該溶液にフロイント完全アジュバント0.5mlを加えて乳濁した後、この300μlをBalb/cマウス(雄、6週齡)に皮下及び腹腔内注射した。さらに2週間おきに3回、フロイント完全アジュバントの代わりにフロイント不完全アジュバントを用いることを除いて上記と同様に調製したものを用いて同様に注射し、免疫を完了した。最終免疫の3日後に脾臓を摘出し単細胞にほぐしRPMI1640培地(GIBCO社)にて洗浄した。一方、対数増殖期にあるマウス骨髄細胞を集め、RPMI1640培地にて洗浄した。脾臓細胞8.8×107個の浮遊液とマウスミエローマ4.4×107個の浮遊液とを混合し遠心分離にて培地を除去した。37℃に加温した水浴中にて、混合した細胞に50%ポリエチレングリコールRPMI1640培地1mlを1分間かけて徐々に加え、1分間ゆるやかに撹拌させ融合を行った。RPMI1640培地2mlを2分間かけ、さらに7mlを2分間かけゆるやかに撹拌しつつ添加した。遠心分離にて培地を除去し、細胞に10%牛胎児血清含有RPMI1640培地20mlを加え、96穴プレート3枚に1穴当たり0.1mlずつ分配した。24時間後、HAT培地0.1ml各ウェルに加えた。各ウェルの培地は、さらに、3日又は4日毎にHAT培地に半量ずつ交換した。3週間後、60%のウェルにハイブリドーマの育成が見られた。
【0045】
ハイブリドーマの増殖が認められたウェルについて、以下に記載するELISA法を用いて、培養上清中の抗染色体タンパク質抗体の存在の有無を検索した。抗原として、染色体タンパク質を用いた。抗原500ngをELISA用マイクロタイタプレートに付着させ、0.5%ゼラチンPBS溶液にてブロッキングした後、培養上清を反応させた。さらに、パーオキシダーゼ修飾ヤギ抗マウス免疫グロブリン抗体を反応させ、基質としてオルトフェニレンジアミンを用い、492nmの吸光度を測定することにより目的の抗体を検出した。その結果、一つのウェルに活性が認められた。この活性は、抗原として用いた染色体タンパク質に対するものであることが確認された。
【0046】
このようにして、抗染色体タンパク質抗体価が認められたハイブリドーマは、さらに限界希釈法でクローニングを行い、モノクローン化し、モノクローン化された抗染色体タンパク質抗体産生細胞株を得た。
【0047】
このようにして得られた各モノクローナル抗体は、染色体に含有された多種類のタンパク質に対するモノクローナル抗体であり、したがって網羅的モノクローナル抗体であるといえる。
【0048】
【発明の効果】
本発明のタンパク質溶液の調製方法によると、天然構造に近いと考えられる構造を保持しているタンパク質が水などの溶媒に高濃度で溶解しているタンパク質溶液を得ることができる。従って、タンパク質の解析に適したタンパク質溶液を得ることができる。
【0049】
本発明のモノクローナル抗体の作製方法によると、高濃度のタンパク質溶液を用いることができるので、細胞内小器官に由来する多種類のタンパク質を抗原とする網羅的なモノクローナル抗体を同時に作製することができる。また、天然構造に近いと考えられる構造を保持しているタンパク質を抗原とする抗体を作製することができるので、生体機能の解明や医薬品として有用なモノクローナル抗体を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
実施例1、比較例1、比較例2についてのSDSポリアクリルアミドゲル電気
泳動の結果を示す。
【図2】
実施例1、比較例3についてのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示す。
Claims (7)
- 細胞内小器官に含まれる多種類のタンパク質が溶解されたタンパク質溶液の調製方法であって、以下の工程、すなわち;
(a)細胞内小器官を有機酸溶液に接触させて、前記細胞内小器官に含まれるタンパク質を抽出してタンパク質有機酸溶液を調製し、
(b)前記タンパク質有機酸溶液を凍結乾燥してタンパク質粉末を調製し、
(c)前記タンパク質粉末を変性剤溶液に溶解してタンパク質変性剤溶液を調製し、
(d)前記タンパク質変性剤溶液を水またはリン酸緩衝液に対して透析してタンパク質溶液を調製する
工程を含む、ことを特徴とするタンパク質溶液の調製方法。 - 前記細胞内小器官が染色体である請求項1に記載のタンパク質溶液の調製方法。
- 前記有機酸が酢酸である請求項1または2に記載のタンパク質溶液の調製方法。
- 前記変性剤が尿素である請求項1乃至3のいずれかに記載のタンパク質溶液の調製方法。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載のタンパク質溶液の調製方法により調製したタンパク質溶液。
- 請求項5に記載のタンパク質溶液を用いることを特徴とするモノクローナル抗体の作製方法。
- 請求項6に記載のモノクローナル抗体の作製方法により作製したモノクローナル抗体。
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