JP2004080901A - 電動車両用の制御弁式鉛蓄電池の充電方式 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電動車両が運転中の制御弁式鉛蓄電池の総放電量(a)と平均放電電流(I)とを測定する。そして、前記総放電量(a)に、前記平均放電電流(I)に応じて決定される一定の係数(%)を乗算して得られる規定充電量(Ah)を算出し、該規定充電量(Ah)まで充電する。ここで、回生充電時には、原則として、回生電流値とその回生充電時間とを乗算して得られた充電量の総和を、前記総放電量(a)から減算するが、回生充電時における制御弁式鉛蓄電池の電圧が規定値以上の場合には、前記回生充電時における充電量の総和を前記総放電量(a)から減算しないようにする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気自動車や電動式ゴルフカートなどの電動車両用の制御弁式鉛蓄電池の充電方式に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気自動車や電動式ゴルフカートなどのサイクル用途に用いられる鉛蓄電池としては、安価な液式の鉛蓄電池を用いるのが一般的であった。しかしながら、最近はこれらの用途に制御弁式鉛蓄電池が使用され始めている。
【0003】
なお、制御弁式鉛蓄電池は従来の液式の鉛蓄電池とは異なり、水の電気分解によって充電時に正極で発生する酸素ガスを、負極で水に還元することができるために、補水不要を特徴とするものである。
【0004】
なお、これらに使用される制御弁式鉛蓄電池は、一般的には、放電量に係数として102〜108%を乗じた電気量を充電した場合に、最もサイクル寿命が長くなることが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、電気自動車や電動式ゴルフカートなどの電動車両に制御弁式鉛蓄電池を用いた場合には、走行路に急な上り坂や下り坂があるか否か又は、走行速度などの使用状況がまちまちである。したがって、使用中の放電量の測定のみでは、適切な充電量を決定できないという問題点が認められている。
【0006】
ここで、放電量それ自体は、放電電流値に放電時間を乗算して計算をすることができるために、比較的、精度良く把握することができる。しかしながら、制御弁式鉛蓄電池を含めた電池は、一般的に放電電流値に応じて放電可能な容量が変化するという特徴がある。すなわち、高い電流値で放電した場合には、低い電流値で放電した場合に比べて、放電可能な容量が少なくなるという一般的な傾向がある。
【0007】
したがって、電動車両の使用環境によっては、放電量に一定の係数を乗じた電気量を充電した場合には、充電量が不足しやすいという問題点がある。そして、充電量が不足することによって負極活物質が粗大化し、充放電反応が起こりににくくなり、電池の寿命が短くなるという問題点がある。
【0008】
また、最近の電気自動車や電動式ゴルフカートなどの電動車両は、急な下り坂での運動エネルギーによって走行用のモータを回転させて発電し、その電気エネルギーを電池に充電するという回生充電方式が用いられている。そして、この場合には回生時の充電電流値と充電時間とを乗算して充電量を計算する方式が用いられている。しかしながら、制御弁式鉛蓄電池を充電した直後に、長い下り坂を降りるような場合には、すでに制御弁式鉛蓄電池が満充電に近い状態にあるために上記した充電量を充電できないという問題点がある。
【0009】
例えば、山岳地に設置されやすいゴルフコースなどでは、クラブハウスは高い位置に建設されがちであり、充電直後のゴルフカートは、最初に長い下り坂を走行する場合が多い。したがって、このような場合において、この間はほとんど充電されておらず、放電量に一定の係数を乗じた電気量を充電した場合には、上記した理由と同様の理由で充電量が不足するという問題点が認められている。
【0010】
加えて、長期間にわたって高温多湿な場所に放置された場合には、自己放電等によって電池が充電されにくい状態となっており、放電量に一定の係数を乗じた充電量のみでは充電量が不足するという問題点もある。
【0011】
一方、放電量に比べて充電量を多くしすぎると、制御弁式鉛蓄電池は過充電状態となる。そして、この状態が連続すると、正極板が劣化して早期に寿命となるという問題点が認められている。
【0012】
加えて、従来の充電方式では、制御弁式鉛蓄電池の充電に時間がかかるという問題点も指摘されている。そして、短時間で充電をするには充電時の電流を増加させる必要がある。しかしながら、単に充電時の電流を増加させると正極板の分極が大になるために、正極で多量の酸素ガスが発生し、そのガスを負極により充分に還元できなくなるという問題がある。
【0013】
なお、正極で発生する酸素ガスは、充電末期や過充電時に発生しやすいことも知られている。したがって、放電をすることなく誤って続けて充電された場合や、前記したように大電流で満充電状態まで充電したような場合には、発生する酸素ガスによって制御弁式鉛蓄電池の内部圧力が上昇しする。そして、安全弁を通して酸素ガスが外部に放出され、その結果、電解液中の水分量が減少して、短時間に寿命に至ることも知られている。
【0014】
本発明は、短時間で充電できるとともに、制御弁式鉛蓄電池の寿命を向上させることができる充電方式を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために、電動車両の運転時における制御弁式鉛蓄電池の放電量の総和(以下において、総放電量(a)と呼ぶ。)に加えて、その間の平均放電電流(I)及び回生充電されているかどうかによって充電量を決定するようにしたものである。さらに、本発明では正極で酸素ガスが発生しにくい充電初期に大電流で充電し、正極で酸素ガスが発生しやす充電末期に小電流で充電するものである。
【0016】
すなわち、請求項1の発明は、電動車両に用いる制御弁式鉛蓄電池の充電方式であって、前記電動車両が運転中の制御弁式鉛蓄電池の総放電量(a)と平均放電電流(I)とを測定し、前記総放電量(a)に、前記平均放電電流(I)に応じて決定される一定の係数(%)を乗算して得られる規定充電量(Ah)を算出し、該規定充電量(Ah)まで充電することを特徴としている。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記総放電量(a)は、電動車両が運転中におけるそれぞれの時点での制御弁式鉛蓄電池の放電電流値とその放電時間とを測定し、前記放電電流値と前記放電時間とを乗算して得られた放電量の総和から、回生充電時における回生電流値とその回生充電時間とを乗算して得られた充電量の総和を減算したものであることを特徴としている。
【0018】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記総放電量(a)は、前記回生充電時における制御弁式鉛蓄電池の電圧が規定値以上の場合には、制御弁式鉛蓄電池の放電電流値とその放電時間とを乗算して得られた放電量の総和から、前記回生充電時における充電量の総和を減算しないようにすることを特徴としている。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1、2又は3の発明において、前記一定の係数(%)は、平均放電電流(I)が大きいほど大きくすることを特徴としている。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1、2、3又は4の発明において、前記充電方式は、充電開始直後よりも充電末期に充電電流を少なくすることを特徴としている。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1、2、3又は4の発明において、前記充電方式は、大電流で充電する第1充電ステップと、該第1充電ステップよりも小さな電流で充電する第2充電ステップと、該第2充電ステップよりも小さな電流で充電する第3充電ステップと、該第3充電ステップよりもさらに小さな電流で充電する第4充電ステップとを有する制御弁式鉛蓄電池の充電方式であって、前記第1充電ステップで前記制御弁式鉛蓄電池の電圧が設定電圧に達するまで充電し、前記設定電圧に達するまでの充電時間が規定時間以内である場合には充電を終了し、前記設定電圧に達するまでの充電時間が規定時間を超えている場合には、前記設定電圧に達するまで前記第2充電ステップ、前記第3充電ステップ、前記第4充電ステップの順に電流値を減少させて充電した後に充電量を計算し、該充電量が規定放電量に一定の係数を乗じた規定充電量を超えている場合には前記制御弁式鉛蓄電池の充電を終了し、前記規定充電量を超えていない場合には、そのまま前記規定充電量を超えるまで充電を続けた後に充電を終了することを特徴としている。
【0022】
【実施例】
以下に、本発明に係わる電動車両の充電方式の一例として、バッテリー式ゴルフカートに用いる12V−100Ahの制御弁式鉛蓄電池に使用した場合の実施例を詳細に説明する(図1〜6)。なお、図1、2は、本発明に係わる電動車両用の充電方式を示すフローチャートであり、図3〜5は、本発明に係わる充電方式を用いた制御弁式鉛蓄電池の充電カーブであり、図6はバッテリー式ゴルフカートのブロック図である。
【0023】
1.バッテリー式ゴルフカートの概要
図6に示すように、バッテリー式ゴルフカート(以下において、単にゴルフカートと呼ぶ)は、搭載している制御弁式鉛蓄電池1を放電することによって、操作パネル4、ゴルフカート本体6及び電動機7等に電力を供給して運転をするものである。
【0024】
すなわち、ゴルフカートの運転時には継電器2をONとした状態で、操作パネル4からの信号によってリレー5を制御弁式鉛蓄電池1の放電側に接続して、電動機7を回転させてゴルフカート本体6を走行させる。ただし、ゴルフカートが下り勾配を走行したような場合には、電動機7が発電し、制御弁式鉛蓄電池1に回生電流が流れて充電する。なお、継電器2は、何らかの原因によって回路が短絡したような場合において、回路を遮断するための装置である。
【0025】
2.制御弁式鉛蓄電池の放電量の測定
制御弁式鉛蓄電池1から供給された放電電流値は、電流検出器3で電圧値に変換する。そして、この電圧値を充電器8に設置した増幅器9に入力して電圧増幅をした後にマイコン10に入力する。マイコン10では、制御弁式鉛蓄電池1から供給された放電電流値に再び換算し、該放電電流値と放電時間とを乗算して放電量に変換した後、該放電量を順次積算してEEPROM11に記憶する。すなわち、EEPROM11には、制御弁式鉛蓄電池1の放電量が記憶される。
【0026】
3.制御弁式鉛蓄電池の回生充電量の測定
上記した制御弁式鉛蓄電池の放電電流と同様に、制御弁式鉛蓄電池1への回生電流値は、電流検出器3で電圧値に変換する。そして、この電圧値を充電器8に設置した増幅器9に入力して電圧増幅した後にマイコン10に入力する。マイコン10では、制御弁式鉛蓄電池1に供給された回生電流値に換算し、該回生電流値と回生時間とを乗算して回生充電量に変換した後、該回生充電量を順次積算してEEPROM11に記憶する。すなわち、EEPROM11には、制御弁式鉛蓄電池1の回生充電量も記憶される。
【0027】
4.制御弁式鉛蓄電池の総放電量(a)及び平均放電電流値(I)の決定
ここで、図1に示すように、原則として制御弁式鉛蓄電池の総放電量(a)は、上記した放電量に回生充電量を減算することによって計算するようにした。すなわち、深夜電力等を利用して満充電状態まで充電した制御弁式鉛蓄電池は、ステップ10のイニシャライズ処理によって、総放電量(a)と、総放電時間(b)を0(ゼロ)の状態にする。
【0028】
ステップ20では、制御弁式鉛蓄電池が放電されているか又は、回生充電がされているかを放電電流の正負によって判断する。ここで、放電電流の正の場合とは、制御弁式鉛蓄電池が放電されている場合をいい、放電電流の負の場合とは、制御弁式鉛蓄電池が回生充電されている場合をいう。
【0029】
制御弁式鉛蓄電池が放電されている場合には、ステップ30で放電電流値(I1)と放電時間(t1)とを測定する。今回は、放電時間として、2秒間ごとに放電電流値(I1)を測定するようにし、放電電流値(I1)は2秒間の平均値とした。ここで放電電流値(I1)の測定を2秒間の平均値とすることによって、走行速度等の変化に応じた測定が可能となる。そして、ステップ40で総放電量(a=a+I1×t1)と総放電時間(b=b+t1)とを計算する。
【0030】
一方、下り勾配を走行した際には、電動機7が発電機としての役割をして、制御弁式鉛蓄電池1に回生電流が流れて充電することになる。ここで、制御弁式鉛蓄電池に回生充電がされている場合には、ステップ50で制御弁式鉛蓄電池の充電電圧が規定値(V回生)、例えば2.45V/セル以上であるか否かを判断する。ここで、制御弁式鉛蓄電池の充電電圧が2.45V/セル以上の場合には、制御弁式鉛蓄電池は満充電状態にあると考えられ、回生電流が流れてもほとんど充電されない状態にあると考えられる。
【0031】
そこで、本発明に係わる充電方式では、このような制御弁式鉛蓄電池が満充電状態にある場合には、総放電量(a)や総放電時間(b)の計算には影響を与えない処理をしている。したがって、制御弁式鉛蓄電池を満充電状態した直後に、長い下り坂を降りたような場合の問題点を解決することができる。
【0032】
なお、制御弁式鉛蓄電池に回生充電がされている場合で、ステップ50で制御弁式鉛蓄電池の充電電圧が2.45V/セル以下の場合には、ステップ60で回生電流値(I2)と充電時間(t2)とを測定する。今回は、回生充電時間として、2秒間ごとに回生電流値(I2)を測定するようにし、この回生電流値(I2)は2秒間の平均値とした。
【0033】
そして、ステップ70で総放電量(a=a−I2×t2)と総放電時間(b=b−t2)とを計算する。すなわち、回生充電がされている場合には、その間は制御弁式鉛蓄電池が充電されているために、総放電量(a)と総放電時間(b)は回生充電の分を少なく計算されるようにした。
【0034】
次に、ステップ80でゴルフカートが走行終了か否かを判断し、走行終了していない場合にはステップ20へ戻る。一方、走行終了の場合には、ステップ90で総放電量(a)と平均放電電流(I=(総放電量(a))÷(総放電時間(b)))とをEEPROM11に記憶して、後述する図2に示すような夜間電力を利用した充電ルーチンへ進む。
【0035】
ここで、本発明では、総放電量(a)に加えて平均放電電流(I)もEEPROM11に記憶していることを特徴としている。上述したように、制御弁式鉛蓄電池などの電池は、一般的に平均放電電流値が大きいと平均放電電流値が小さい場合に比べて放電可能な容量が少なくなるという傾向がある。そこで、本発明では後述するように、平均放電電流値(I)に応じて総放電量(a)に異なる係数を乗じて得た規定電気量(Ah)まで充電するようにしている。
【0036】
5.制御弁式鉛蓄電池の充電装置
次に、本発明を用いた制御弁式鉛蓄電池の充電装置について、図6を用いて説明する。図6に示すように、商用電源12の交流電力を充電器8に供給して直流電力に変換し、該直流電力を用いて制御弁式鉛蓄電池1を充電するものである。
【0037】
すなわち、継電器2をONとした状態で、操作パネル4からの信号によりリレー5を充電側に接続して、充電器8からの直流電力を制御弁式鉛蓄電池1に供給して充電する。なお、リレー5の切替によって、ゴルフカート本体6や電動機7には、充電器8又は制御弁式鉛蓄電池1からの電力は供給されないために、ゴルフカート本体6が動きだすことはない。
【0038】
ここで、制御弁式鉛蓄電池1に流れた充電電流値は、電流検出器3で電圧値に変換する。そして、この電圧値を充電器8の内部に設置した増幅器9に入力して電圧増幅をした後、マイコン10に入力する。マイコン10では、前記電圧値を充電電流値に換算した後、充電時間と乗算して充電量とし、後述するそれぞれの充電電流ごとの充電量を積算した総充電量をEEPROM11に書き込んで記憶していく。
【0039】
6.制御弁式鉛蓄電池の充電方式
次に、本発明を用いた制御弁式鉛蓄電池の充電方式について、図2のフローチャート及び図3〜5の充電カーブを用いて詳細に説明する。
(1)制御弁式鉛蓄電池が満充電状態か否かに判断及び補充電
図2において、充電器がスタートすると、ステップ110で上述した総放電量(a)及び平均放電電流(I)を読み込んで、図6のマイコン10によって充電制御をする。
【0040】
ステップ120で、前回充電後の制御弁式鉛蓄電池1の総放電量(a)が公称容量の1%以下かどうかを判断する。総放電量(a)が公称容量の1%以上の場合には、すでに一定の放電がされていると判断して後述するステップ170(15A充電モード)で充電する。
【0041】
一方、総放電量(a)が制御弁式鉛蓄電池1の公称容量の1%以下の場合には、ステップ130で制御弁式鉛蓄電池1の電圧を測定する。
【0042】
ステップ140で、制御弁式鉛蓄電池1の電圧が一定電圧(V1)以上であるかどうかを判断する。なお、前記一定電圧(V1)を、以下の(1)式に示すように設定した。
【0043】
V1 = Va − ts×(t−25℃) (1)
ただし、Va=2.22ボルト/セル、ts=5mV/(セル・℃)、
t:制御弁式鉛蓄電池1の温度(ただし、制御弁式鉛蓄電池1の温度が−5℃以下の場合には、全て−5℃と固定した)。なお、制御弁式鉛蓄電池1にサーミスタを取りつけてその温度(t)を測定した。
【0044】
すなわち、一定電圧(V1)は、Va(2.22ボルト/セル)を周囲温度で補正したものであり、(1)式より周囲温度が高くなるほど、一定電圧(V1)の値は低くなるように制御される。
【0045】
ステップ140で、制御弁式鉛蓄電池1の電圧が一定電圧(V1)以下の場合には、自己放電等によって、すでにある程度の放電がされていると判断して後述するステップ170(15A充電モード)で充電する。
【0046】
一方、ステップ140で、制御弁式鉛蓄電池1の電圧が一定電圧(V1)以上の場合には、ステップ150、160で4Aで制御弁式鉛蓄電池1の公称容量の1%を補充電して終了する。
【0047】
本実施例では、公称容量が100Ahの制御弁式鉛蓄電池1を使用しているために、4A程度の充電電流で充電しても負極で十分にガス吸収をすることができ、安全弁から酸素ガスが放出されることはない。上記したステップをとることによって、満充電状態の制御弁式鉛蓄電池1を誤って充電することを防止できるため、制御弁式鉛蓄電池1の寿命を長くすることができる。
(2)制御弁式鉛蓄電池の充電
上記したような充電終了とならない場合には、ステップ170で第1充電ステップとして15A充電モードに入り、比較的大きな定電流で制御弁式鉛蓄電池1を充電する(図2)。そして、ステップ180、190より、制御弁式鉛蓄電池1の電圧が設定電圧(V2)を超えるまで充電する。
【0048】
なお、前記設定電圧(V2)を、以下の(2)式に示すように設定した。
【0049】
V2 = Vb − ts×(t−25℃) (2)
ただし、Vb=2.45ボルト/セル、ts=5mV/(セル・℃)、
t:制御弁式鉛蓄電池1の温度(ただし、制御弁式鉛蓄電池1の温度が−5℃以下の場合には、全て−5℃と固定した)。なお、制御弁式鉛蓄電池1にサーミスタを取りつけてその温度(t)を測定した。
【0050】
すなわち、設定電圧(V2)は、Vb(2.45ボルト/セル)を周囲温度で補正したものであり、(2)式より周囲温度が高くなるほど、設定電圧(V2)は低くなるように制御される。なお、充電の進行とともに制御弁式鉛蓄電池1の温度は次第に上昇することを考慮して、設定電圧(V2)の変更を常時行うことができるようにしている(図2)。
【0051】
そして、充電の進行によって、制御弁式鉛蓄電池1の電圧は徐々に上昇する(図3〜5)。ステップ200で、制御弁式鉛蓄電池1の電圧が設定電圧(V2)に達するまでの時間が、規定時間未満の場合(図3では、1分と規定した。)には、制御弁式鉛蓄電池1はすでに満充電状態にあると判断して充電を終了するようにした(図3)。この方式を用いることによって、制御弁式鉛蓄電池1が満充電状態にあることを見逃されて繰り返して充電された場合でも、15Aでの充電開始後に短時間で充電を終了できるために、過充電を防止することができる。
【0052】
図4、5に示すように、制御弁式鉛蓄電池1の電圧は充電の進行とともに徐々に上昇して、前記した設定電圧(V2)に達した場合にはステップ210の第2充電ステップでの充電モードに移る。なお、第1充電ステップとして、比較的大きな電流(15A)で充電しているため、多くの充電量を短時間で充電することができる。
【0053】
ステップ210(10A充電モード)では、10Aの定電流で制御弁式鉛蓄電池1を充電する。そして、この10A充電においても、制御弁式鉛蓄電池1の電圧は充電量の増加とともに徐々に上昇し、その電圧が前記設定電圧(V2)に達した場合には(図4、5)、後述するステップ240の第3充電ステップでの充電モードに移る(ステップ230)。
【0054】
ステップ240(5A充電モード)では、5Aの定電流で制御弁式鉛蓄電池1を充電する。そして、5A充電においても、制御弁式鉛蓄電池1の電圧は充電とともに徐々に上昇し、制御弁式鉛蓄電池1の電圧が前記設定電圧(V2)に達した場合には(図4、5)、後述するステップ270の第4充電ステップでの充電モードに移る(ステップ250、260)。
【0055】
ステップ270(4A充電モード)では、さらに少ない4Aの定電流で制御弁式鉛蓄電池1を充電する。そして、4A充電においても制御弁式鉛蓄電池1の電圧は充電とともに徐々に上昇し、制御弁式鉛蓄電池1の電圧が前記設定電圧(V2)に達した場合には(ステップ290)、ステップ300で規定充電量(Ah)まで充電されたか否かを判断する。そして、規定充電量(Ah)まで充電されている場合には充電を終了する(図4)。
【0056】
ここで、規定充電量(Ah)は、以下の(3)、(4)式に示すように設定した。
【0057】
規定充電量(Ah)=総放電量(a)×一定の係数(%) (3)
一定の係数(%)=105+0.1×(平均放電電流(I)−20) (4)
すなわち、ゴルフカートの平均放電電流(I)が20Aの場合には、一定の係数(%)を105%とし、平均放電電流(I)が20Aを超えるような大電流で放電がされた場合には、一定の係数(%)を105%よりも大きな値になるようにした。一方、平均放電電流(I)が20Aよりも少ない電流値で放電された場合には、一定の係数(%)を105%よりも小さな値になるようにした。このようにすることによって、制御弁式鉛蓄電池1が充電不足となる場合や、逆に過充電状態になることを防止できる。ここで、基準とした20Aとは、前記したゴルフカートが通常の速度で平地を走行する場合の電流値である。
【0058】
ここで、本発明に係わる充電方式では、充電を終了するか否かは充電カーブも考慮するようにした(図5)。すなわち、何らかの原因で総放電量(a)の測定にエラーが乗じたような場合でも充電不足とならないように、図5に示すように、規定充電量(Ah)を超えていてもステップ270〜290(4A充電モード)までの充電がされるようにした。なお、制御弁式鉛蓄電池1が満充電に近い状態であれば、短時間で前記設定電圧(V2)に達するために、このような低い電流値(図5では、5A、4A)で充電しても過充電状態となることはない。
【0059】
なお、本実施例では上述したように一定の係数(%)の基準として、平均放電電流(I)が20Aの場合に、放電量の105%を充電する方式を用いた。ここで、前記一定の係数の基準として103〜108%の範囲に設定した場合でも、ほぼ同様の良好な結果が得られた。
【0060】
【発明の効果】
上述したように本発明を用いると、電動車両の走行路に急な上り坂や下り坂がある場合や、走行速度などに応じて制御弁式鉛蓄電池に適切な充電量を確保することができる。したがって、充電量が不足したり、逆に過充電となることもなく、制御弁式鉛蓄電池の寿命を向上させることができるために優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる制御弁式鉛蓄電池の総放電量及び平均放電電流を記憶するフローチャートである。
【図2】本発明に係わる制御弁式鉛蓄電池の充電方式を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係わる充電方式を用いた制御弁式鉛蓄電池の充電カーブの一例である。
【図4】本発明に係わる充電方式を用いた制御弁式鉛蓄電池の充電カーブの一例である。
【図5】本発明に係わる充電方式を用いた制御弁式鉛蓄電池の充電カーブの一例である。
【図6】本発明に係わるゴルフカートのブロック図である。
【符号の説明】
1:制御弁式鉛蓄電池、2:継電器、3:電流検出器、4:操作パネル、
5:リレー、6:ゴルフカート本体、7:電動機、8:充電器、9:増幅器、
10:マイコン、11:EEPROM、12:商用電源
Claims (6)
- 電動車両に用いる制御弁式鉛蓄電池の充電方式であって、前記電動車両が運転中の制御弁式鉛蓄電池の総放電量(a)と平均放電電流(I)とを測定し、前記総放電量(a)に、前記平均放電電流(I)に応じて決定される一定の係数(%)を乗算して得られる規定充電量(Ah)を算出し、該規定充電量(Ah)まで充電することを特徴とする電動車両用の制御弁式鉛蓄電池の充電方式。
- 前記総放電量(a)は、電動車両が運転中におけるそれぞれの時点での制御弁式鉛蓄電池の放電電流値とその放電時間とを測定し、前記放電電流値と前記放電時間とを乗算して得られた放電量の総和から、回生充電時における回生電流値とその回生充電時間とを乗算して得られた充電量の総和を減算したものであることを特徴とする請求項1記載の電動車両用の制御弁式鉛蓄電池の充電方式。
- 前記総放電量(a)は、前記回生充電時における制御弁式鉛蓄電池の電圧が規定値以上の場合には、制御弁式鉛蓄電池の放電電流値とその放電時間とを乗算して得られた放電量の総和から、前記回生充電時における充電量の総和を減算しないようにすることを特徴とする請求項2記載の電動車両用の制御弁式鉛蓄電池の充電方式。
- 前記一定の係数(%)は、前記平均放電電流(I)が大きいほど大きくすることを特徴とする請求項1、2又は3記載の電動車両用の制御弁式鉛蓄電池の充電方式。
- 前記充電方式は、充電開始直後よりも充電末期に充電電流値を少なくすることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の電動車両用の制御弁式鉛蓄電池の充電方式。
- 前記充電方式は、大電流で充電する第1充電ステップと、該第1充電ステップよりも小さな電流で充電する第2充電ステップと、該第2充電ステップよりも小さな電流で充電する第3充電ステップと、該第3充電ステップよりもさらに小さな電流で充電する第4充電ステップとを有する制御弁式鉛蓄電池の充電方式であって、前記第1充電ステップで前記制御弁式鉛蓄電池の電圧が設定電圧に達するまで充電し、前記設定電圧に達するまでの充電時間が規定時間以内である場合には充電を終了し、前記設定電圧に達するまでの充電時間が規定時間を超えている場合には、前記設定電圧に達するまで前記第2充電ステップ、前記第3充電ステップ、前記第4充電ステップの順に電流値を減少させて充電した後に充電量を計算し、該充電量が前記規定充電量を超えている場合には前記制御弁式鉛蓄電池の充電を終了し、前記規定充電量を超えていない場合には、そのまま前記規定充電量を超えるまで充電を続けた後に充電を終了することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の電動車両用の制御弁式鉛蓄電池の充電方式。
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