JP3692192B2 - 電池残容量検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、リチウムイオン二次電池を、例えば、動力源とする電気自動車に適用して好適な電池残容量検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、リチウムイオン二次電池は、その小型、高容量性が注目されて、電子機器を始めとして、種々の分野で使用されており、電池を動力源とする電気自動車においても、その使用が考えられている。例えば、車輪の回転駆動源としてモータ、すなわち走行用モータが採用される電気自動車においては、前記電池により前記走行用モータが回転するように構成される。
【0003】
このような電気自動車においては、従来のガソリン自動車等の燃料計に相当する残容量表示計がダッシュボード上に配置され、その表示指針の位置に応じて、運転者に再充電を促すように構成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、リチウムイオン二次電池は、ニッケル水素二次電池またはニッケルカドミウム二次電池等の他の二次電池とは異なり、充電時または充電後の放置時において、正負電極間の電圧が、定格電圧(公称電圧ともいい、通常、室温において、3.6V)よりも高電位状態になっている場合には、満充電容量が基準容量(標準容量または定格容量ともいい、通常、いわゆる新品時における容量)よりも小さくなってしまうことが確認された。なお、一般に、満充電容量は可逆容量とも称される。
【0005】
このリチウムイオン二次電池における可逆容量の低下現象は、いわゆる自己放電現象による容量低下とは異なり、リチウムイオン二次電池の性能劣化となり、一般的には、回復不可能である。
【0006】
なお、この劣化現象は、負極(炭素)の表面に炭酸リチウム(LiCO3 )等のリチウム化合物の被膜ができるためと考えられている。リチウムイオン二次電池には、例えば、コバルト酸リチウムイオン二次電池、マンガン酸リチウムイオン二次電池等複数の種類があり、種類に応じて劣化の程度も異なるのであるが、上述の不可逆的劣化は、全てのリチウムイオン二次電池に共通する現象であり、特に高分子電解質を用いたポリマー型二次電池で顕著である。
【0007】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、リチウムイオン二次電池における不可逆劣化量を予測して電池の残容量を正確に検出する電池残容量検出装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明は、充放電のない放置時にリチウムイオン二次電池の電圧を検出する電圧検出手段と、検出した電圧と前記リチウムイオン二次電池の定格電圧よりも高い所定電圧とを比較して比較結果信号を出力する比較手段と、前記比較結果信号が、放置時であって前記検出電圧が前記所定電圧を超える高電圧状態であることを表す状態であることを検出したときに、時間の計時を行う計時手段と、前記計時手段による高電圧状態にある時間の計時時間に基づき前記リチウムイオン二次電池の容量劣化量を計算する容量劣化計算手段と、前記リチウムイオン二次電池の満充電容量を基に少なくとも充電容量及び放電容量から前記リチウムイオン二次電池の残容量を求める残容量計算手段と、前記容量劣化量に基づいて前記満充電容量を再計算し、該満充電容量により前記残容量を補正する残容量補正手段とを有することを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、高精度に容量劣化量を計算することができ、したがって、リチウムイオン二次電池の残容量を正確に求めることができる。
【0011】
この場合、前記容量劣化の計算は、前記電池の容量劣化量を、前記高電圧状態計時時間と前記検出電圧値に基づき計算することで、より高精度に容量劣化量を計算することができる。
【0012】
また、前記容量劣化の計算は、前記電池の容量劣化量を、前記高電圧状態計時時間と前記電池の温度に基づき計算することで、同様に、より高精度に容量劣化量を計算することができる。
【0013】
さらに、前記容量劣化の計算は、前記電池の容量劣化量を、前記高電圧状態計時時間と前記検出電圧値と前記電池の温度に基づき計算することで、一層高精度に容量劣化量を計算することができる。
【0014】
この発明の装置は、ディスクリート部品により構成することが可能であり、CPU等を利用したソフトウエアにより実現することも可能である。これらを併用して実施することも可能である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、この発明の一実施の形態が適用された電気自動車10が、充電コネクタ11の端子11a、11b、11cを介して車外の充電器12の出力側に接続された構成を示している。充電器12の入力側には、例えば、交流200V電源13が接続されている。
【0017】
電気自動車10には、リチウムイオン二次電池を直列接続して、例えば、288Vにした高電圧のバッテリ15が搭載されている。バッテリ15には、その端子間電圧(電圧信号ともいう。)Vbを測定(検出)する電圧センサ(電圧計、電圧検出器、電圧測定手段、電圧検出手段)16が接続されている。バッテリ15には、コネクタ11a、11bを介して直流の充電電圧が供給され、その充電器12の出力電流(電流信号または電流値ともいう。)I1が電流センサ(電流計、電流検出器、電流測定手段、電流検出手段)21で測定(検出)される。
【0018】
バッテリ15の出力側には、出力電流(電流信号または電流値ともいう。)I2を測定(検出)する電流センサ(電流計、電流検出器、電流測定手段、電流検出手段)22を介して、負荷である3相のモータ24をPWM(パルス幅変調)制御により駆動するモータ駆動ユニット(Power Drive Unit、以下、PDUともいう。)23が接続されている。
【0019】
また、電気自動車10には、各々、制御、判断、計算、計時手段等として動作し、かつ必要に応じて、相互にデータのやりとりを行う管理用ECU(Electric Control Unit)31とモータ用ECU32が搭載されている。なお、管理用ECU31とモータ用ECU32は、各々、中央処理装置としてのCPUと、システムプログラム等が記憶される記憶手段であるROMと、ワーク用等として使用される記憶手段であるRAMと、計時用のタイマ(計時手段)、A/D変換器、D/A変換器等の入出力インタフェース等が含まれるマイクロコンピュータにより構成されている。計時用のタイマは、各種含まれているが、そのうち、後に詳細に説明する、バッテリ15が高電位状態で放置されている時間を計時するタイマを放置タイマ18という。
【0020】
モータ用ECU32には、モータ24の回転数信号(単に、回転数ともいう。)Nm、アクセルペダル34からのアクセル開度信号(単に、開度ともいう。)θp、電流センサ22からの電流信号I2、電圧センサ16からの電圧信号Vbが供給され、さらにイグニッションスイッチ41が接続され、これらの信号に基づいてモータ駆動ユニット23を制御する。
【0021】
管理用ECU31には、電流センサ21からの電流信号(の値)I1、電流センサ22からの電流信号(の値)I2、電圧センサ16からの電圧信号(の値)Vb、バッテリ15に取り付けられた温度センサ(温度計、温度検出器、温度検出手段)44からの温度信号(温度)Tbが供給され、さらに、充電スイッチ43が接続され、これらの信号に基づいて充電器12を制御するとともに、表示器45上の残容量表示を制御する。なお、図1中、符号Ichgは、バッテリ15に供給される充電電流(値または信号)を表し、この充電電流Ichgは、Ichg=I1−I2により管理用ECU31で計算することができる。
【0022】
次に、上述の実施の形態の動作について説明する。なお、この発明の要旨は、管理用ECU31によるバッテリ15の残容量検出処理にあるので、これについて詳しく説明し、モータ用ECU32によるモータ駆動ユニット23の制御については、簡潔に説明する。以下の順序で動作を説明する。
【0023】
A.モータ用ECU32による制御動作の説明
B.残容量検出処理のための可逆容量(満充電容量)の低下現象の説明と管理用ECU31による制御動作の総括的な説明
C.管理用ECU31による制御動作の説明
まず、A.モータ用ECU32による制御動作について、図2に示すフローチャートをも参照して説明する。
【0024】
モータ用ECU32は、充電器12が切り離されていて、かつイグニッションスイッチ41が閉状態(オン状態)にされていることを条件に、モータ24の回転制御処理(図2に示すフローチャートによる処理)を行う。
【0025】
この場合、まず、モータ24の回転数Nmを取り込む(ステップS1)とともに、アクセルペダル34の踏力に応じたアクセル開度θpを取り込む(ステップS2)。
【0026】
次に、回転数Nmとアクセル開度θpとに基づいて要求トルクTRQをルックアップテーブルまたは関数、例えば、TRQ=f(θp,Nm)として求める(ステップS3)。
【0027】
次に要求電力Pcを求める(ステップS4)。要求電力Pcは、要求トルクTRQと回転数Nmの積、すなわち、Pc=TRQ×Nmにより計算することができる。
【0028】
さらに、PDU23に供給される電圧、すなわち端子間電圧Vbと供給される電流I2を取り込む(ステップS5、S6)。電流I2は、バッテリ15から見れば、放電電流である。
【0029】
次いで、実電力Peを計算する(ステップS7)。この実電力Peは、PDU23に供給される電圧Vbと電流I2の積に効率ηを掛けた値、Pe=Vb×I2×ηで得られる。
【0030】
次に、ステップS4で求めた要求電力PcとステップS7で求めた実電力Peの値の大きさを比較する(ステップS8)。
【0031】
実電力Peの値が要求電力Pcの値より大きい場合には、実電力Peを低下させる必要があるので、モータ用ECU32からPDU23へ供給されるPWM信号のデューティを小さくする(ステップS9)。
【0032】
反対に、実電力Peの値が要求電力Pcの値より小さい場合には、実電力Peを増加させる必要があるので、モータ用ECU32からPDU23に供給されるPWM信号のデューティを大きくする(ステップS10)。
【0033】
実電力Peの値と要求電力Pcとの値が同一である場合には、デューティを変化させない。
【0034】
ステップS8〜S10の判定処理が終了した場合には、ステップS1にもどり、ルーチンを繰り返す。
【0035】
以上の説明が、A.モータ用ECU32による制御動作についての説明であり、次に、B.残容量検出処理のための可逆容量(満充電容量)の低下現象についての説明と、管理用ECU31による制御動作についての総括的な説明を行う。
【0036】
まず、管理用ECU31による制御動作について総括的に説明する。
【0037】
バッテリ15を構成するセルである単電池としてのリチウムイオン二次電池の定格電圧VrはVr=3.6Vである。
【0038】
これに対して、従来の技術の項で述べたように、正負電極端子間の端子間電圧Vb(なお、単電池の端子間電圧は、正確には、バッテリ15の端子間電圧を直列個数で割った値として得られるが、繁雑であるので、リチウムイオン二次電池1個の端子間電圧も符号Vbで表し、以下、バッテリ15は、単電池であるものとして説明する。)が、定格電圧Vrより高い高電圧状態になっている場合には、換言すれば、高電位にさらされている場合には、満充電容量(可逆容量)が低下するという劣化が起こる。そこで、この実施の形態では、この劣化が起こり始まる閾値電圧(所定電圧、所定高電圧または高電圧放置判断電圧ともいう。)Vthを、仮に、Vth=3.9Vに設定している。
【0039】
バッテリ15の充電時には、バッテリ15を満充電まで充電するため、定格電圧Vrよりかなり高い電圧(例えば、4.2V)で充電する場合が多い。充電電圧が低い場合には、この充電により蓄えられる電力が少なくなってしまうからである。したがって、そのような電圧、例えば、Vb=4.2Vで充電して満充電状態にあるとしても、端子間電圧VbがVb=4.2Vの状態になったまま、充電器12を外した状態で長時間放置した場合には、劣化量(容量劣化量または劣化容量ともいう。)が大きくなる。
【0040】
そこで、バッテリ15の劣化を防止するためには、閾値電圧Vthより低い電圧で充電すればよいが、完全な満充電状態とならず、換言すれば、残容量が最大値とならないので、結果として、完全な満充電状態に比較して、1回の充電で走行させた場合の電気自動車10の走行距離が短くなってしまう。なお、上述の高電圧Vb=4.2Vで充電した場合には、長時間放置せずに放電(走行)して端子間電圧Vbを、例えば、Vb=3.9V以下まで低下させれば劣化を防止できるが、走行する必要のない場合等においては、そのような訳にはいかない。
【0041】
劣化量のその他の特徴について検討した結果、以下の特徴事項を見出した。
(1) 劣化量は、高電圧放置に伴い、最大定格容量の20%程度まで進行する。換言すれば、定格容量が初期値の80%になってしまう。
(2) 劣化は、高電圧放置であっても、1〜2日程度では発生しないが、30日を超えると最大定格の15%程度まで進行する。
(3) 図3に示すように、劣化の進行速度(単位時間当たりの劣化量)ΔAh(アンペアアワー)/h(アワー)は、バッテリ電圧(放置電位、放置電圧)Vbに比例して速くなる。すなわち、高電圧ほど早く劣化する。
(4) 同様に、図3に示すように、劣化の進行速度ΔAh/hは、バッテリ温度Tbにも比例する。例えば、バッテリ温度TbがTb=25℃に比較して、Tb=45℃の高温度であるほど早く劣化する。
(5) また、劣化現象は高電位放置時にかぎらず、充電中であっても放電中であっても、バッテリ電圧Vbが高電位であれば発生する。
【0042】
なお、充電時間および放電時間そのものは、劣化が発生する時間オーダーでの放置時間に比較すればはるかに短い時間であるので、以下に説明する実施の形態では、充電中と放電中以外の劣化予測処理、すなわち放置中の劣化量のみを推定(予測)することとする。以上の知見に基づいて、管理用ECU31で制御動作を行う。
【0043】
C.管理用ECU31による制御動作の説明
管理用ECU31による電池残容量検出制御処理について図4に示すフローチャートをも参照して説明する。この場合、予め、実際に電気自動車10に搭載するバッテリ15の種類に応じて、積算された放置時間Taの所定時間毎に、図3に示した放置電位(V)対単位時間当たりの劣化量(ΔAh/h)の特性を測定しておき、管理用ECU31内にルックアップテーブルまたは関数として格納しておく。この実施の形態では、所定温度毎に、例えば、0℃から5℃きざみで40℃まで測定した、図3のテーブルを劣化速度テーブル51として格納する。同様に、図5に示すように、前記バッテリ15の種類に応じて、高電位下の最大劣化量Cdmaxを測定して、記憶手段に格納しておく。さらに、前記バッテリ15の種類に応じて、バッテリ15が、いわゆる新品である場合の基準容量(定格容量、標準容量ともいう。)を測定しておき基準容量Crとして記憶手段に記憶しておく。
【0044】
このような準備のもとに、まず、バッテリ15の動作モード(動作状態)について判定する(ステップS11)。イグニッションスイッチ41が閉じられた状態(オン状態)であれば、放電モードの制御を行い、充電スイッチ43が閉じられた状態(オン状態)であれば、充電モードの制御を行い、イグニッションスイッチ41および充電スイッチ43がともに開かれた状態(オフ状態)であれば、放置モードの制御を行う。なお、イグニッションスイッチ41と充電スイッチ43がともに閉じられる状態はない。
【0045】
充電モードにおいては、充電コネクタ11が接続されていることを確認した後、充電器12をオン状態にする(ステップS21)。
【0046】
次に、充電容量Cchgを検出する(ステップS22)。充電容量Cchgは、電流センサ21および電流センサ22により検出した充電電流Ichg(I1−I2)に充電時間Tchgを掛けた値として計算できる。
【0047】
次に、残容量Ccを計算する(ステップS23)。残容量Ccは、次の(1)式に示すように、前回計算時の残容量Cc′に、ステップS22で計算した充電容量Cchgに充電効率ηchgを掛けた値を加えた値に等しい。
【0048】
なお、図4に示すフローチャートにおいては繁雑になるので省略しているが、残容量Ccを計算した場合には、表示器45上の残容量Ccの表示を更新する処理を行うようにしている。
【0049】
次いで、この残容量Ccが満充電容量Cfになったかどうかを確認し(ステップS24)、そうでない場合には、ステップS11、S21〜S24までの処理を繰り返す。
【0050】
ステップS24の判断が肯定的となったときには、充電器12をオフ状態とし(ステップS25)、残容量Ccを満充電容量Cf(Cc=Cf)とする(ステップS26)。この場合、表示器45上の残容量表示が更新される。
【0051】
次に、放電モードにおいては、放電容量(放電量)Cdisを検出する(ステップS31)。放電容量Cdisは、電流センサ22により検出した電流を放電電流I2として、この値に放電時間Tdisを掛けた値として得られる。
【0052】
このとき、残容量Ccは、次の(2)式に示すように、前回の残容量Cc′から、計算した放電容量Cdisを引いた値として計算すればよい(ステップS32)。なお、前回の残容量Cc′が、ステップS26の処理後の満充電容量Cfであった場合には、この満充電容量Cfから、計算した放電容量Cdisを引いた値として計算すればよいことはもちろんである。
【0053】
Cc=Cc′−Cdis …(2)
次に、放置モードにおいては、バッテリ15の端子間電圧Vbが、劣化の発生する所定高電圧Vth(Vth=3.9V)を超えているかどうかを判断する(ステップS41)。超えていない場合には、劣化が進行しないのでステップS11にもどる。
【0054】
一方、端子間電圧Vbが所定電圧Vthを超えていた場合には(Vb>Vth)、放置タイマ18によりその状態が所定時間(例:30分)継続したかどうかを判断する(ステップS42)。該所定時間が継続した時は、放置タイマ18をいったんリセットし(ステップS43)、劣化速度テーブル51を検索する(ステップS44)。劣化速度テーブル51は、図3の劣化特性を考慮して、バッテリ15の状態(温度、電圧)がステップS42で設定した所定時間(30分)継続した時のバッテリの劣化速度(ΔAh/h)として記憶されている。
【0055】
次に、バッテリ15の劣化量(高電圧劣化補正量)Cdを計算する(ステップS45)。この劣化量Cdは前回の劣化量Cd′に新たな劣化分、すなわち、劣化速度Δ×放置時間Tnで表される劣化分を加えることで計算される。よって、劣化量Cdは次の(3)式で求められる。
【0056】
Cd=Cd′+Δ×Tn …(3)
図4のフローチャートでは、劣化量はステップS42で設定した所定時間(30分)毎に計算されるので、放置時間Tnは該所定時間(30分)になる。
【0057】
次に、この劣化量Cdと高電位最大劣化量(リミット量、リミット値)Cdmax(図5参照)とを比較する(ステップS46)。
【0058】
劣化量Cdが高電位最大劣化量Cdmaxよりも大きい場合には、劣化量Cdの値をその高電位最大劣化量Cdmaxとし(ステップS47)、そうでない場合には、ステップS46で計算した劣化量Cdを劣化量Cdの値として、満充電容量Cfを次の(4)式により計算する(ステップS48)。
【0059】
Cf=Cr−Cd …(4)
この(4)式において、符号Crは、上述したように、バッテリ15が新品である場合の基準容量であり、したがって、(4)式は満充電容量Cfが劣化量Cd分だけ小さくなったことを意味している。もし、次に、充電モードに入った場合に、前記ステップS26における満充電容量Cfの値は、このステップS48で計算した値が用いられる。
【0060】
この場合、現在の残容量CcがステップS48で計算した満充電容量Cfを超える値であった場合には(ステップS49:YES)、そのようなことはあり得ないので、現在の残容量Ccの値を、計算した満充電容量Cfの値とする(ステップS50)。換言すれば、計算された満充電容量Cfの値が、計算される残容量Ccの値を超えないようにする。すなわち、放置モードでは、基本的にはバッテリ15は放電しないので残容量Ccは低下しない。しかし、高電圧放置を長時間続けて劣化量Cdが増加した場合は満充電容量Cfが低下しているので、計算上、残容量>満充電容量(ステップS49:YES)になることがある。しかし物理的には残容量Ccは満充電容量Cfを超えないのでステップS49、S50の処理が必要になる。
【0061】
なお、表示器45上に表示する残容量を表示残容量Cc(%)として、次の(5)式で得られる値に対応する表示を行う。
【0062】
Cc(%)=(残容量Cc/基準容量Cr)×100 …(5)
図6は、この(5)式に基づく表示器45上の棒グラフ表示例を示している。この棒グラフ表示は、例えば、発光ダイオードを利用して、バッテリ15が新品時には、残容量CcがCc=Crとされ、基準容量Cr分の、例えば、緑色発光表示の棒グラフ61とされ、劣化時の満充電時には、残容量CcがCc=Cfとされて、満充電容量Cf分の緑色発光表示の棒グラフ62とされる。また、この劣化時において、走行して放電させた場合には、残容量Cc部分を緑色発光表示とし、放電量Cdisの部分を、例えば、黄色発光表示として棒グラフ63を表示する。なお、バッテリ15の高電位放置劣化後の棒グラフ62、63において、点線で示す劣化量部分は表示しない。
【0063】
上述した動作について、図7に示すタイムチャートにより概略的に説明する。
【0064】
すなわち、時点t11〜t12の走行期間においては、バッテリ電圧Vbが降下するとともに、積算された放電量(負の傾斜で表された部分)分だけ、表示残容量Cc(%)が低下する。そして、時点t12〜時点t13の放置時間の後に、時点t13〜t14の間で充電を行う。この期間では、充電量(正の傾斜で表された部分)が積算され、かつバッテリ電圧Vbが高電位劣化が始まる閾値電圧Vthを超える。時点t14において、充電器12が切り放されて、その時点t14以降時点t15まで高電位状態で放置されたものとする。
【0065】
時点t15〜t16において、再び走行が開始され、放電量が積算される。また、時点t16〜t17において、走行が停止され、その状態で放置される。時点t17において、再び充電が開始されるが、時点t18において充電が停止され、時点t18〜t19の間放置されたものとする。時点t19では、放置電圧Vbが補正が必要となる高電圧放置判断電圧Vthに達していないので、標準容量Crに対する劣化補正を行わない。
【0066】
このように、上述の実施の形態によれば、リチウムイオン二次電池からなるバッテリ15の電圧Vbを検出し、検出電圧Vbが高電圧状態(Vb>Vth)である場合には、劣化補正量Cdを計算し、満充電容量Cfを低減することで、正確な残容量Ccを算出することができるという効果が達成される。
【0067】
さらに具体的に説明すれば、検出したバッテリ電圧Vbが、バッテリ15の定格電圧(リチウムイオン二次電池のセル換算では、3.6V)よりも高い所定電圧Vth(例えば、同3.9V)を超える値で放置されていた場合、例えば、満充電後の放置状態にある場合には、その高電圧状態である時間を放置タイマ18により計時し、この計時時間(放置時間)Tnに基づきバッテリの容量劣化量Cdを計算する。図6に示すように、計算した容量劣化量Cdを基準容量(新品時の容量)Crから引いた値を、以降の満充電容量Cfとする。この満充電容量Cfから放電量Cdisを引いた値を残容量Ccとする。
【0068】
この場合、前記劣化補正量Cdを計算する際に、バッテリ温度Tbと高電位の検出電圧値と放置時間Tnに基づいて、劣化速度ΔAh/hの最も正確な値を選択するようにしているので、きわめて、高精度に劣化容量Cdを計算することができる。
【0069】
なお、上述の実施の形態では、管理用ECU31とこれにインストールされたソフトウエアを利用してこの発明を実現しているが、この発明は、そのソフトウエアによる処理の一部または全部をディスクリート部品、例えば、電圧検出手段としての電圧計、比較手段としての比較器、計時手段としてのタイマ、容量劣化計算手段(または残容量補正手段)としてのコンデンサ(記憶手段)を含む加減乗除器とにより構成することも可能である。
【0070】
また、この発明は上述の実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、リチウムイオン二次電池の端子間電圧を検出し、検出した電圧が、電池の定格電圧よりも高い予め決定した所定電圧を超える高電圧状態であった場合には、高電圧状態にある計時時間に基づく容量劣化量を計算し、電池の残容量を補正するようにしている。
【0072】
このため、リチウムイオン二次電池における高電圧下における不可逆劣化量による電池の容量減を精度良く予測計算することが可能となり、結果として、電池の残容量を正確に検出することができるという効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施の形態が適用された電気自動車に充電器が接続された構成を示すブロック図である。
【図2】図1例中、モータによる走行制御の説明に供されるフローチャートである。
【図3】温度と高電位放置電位に対する単位時間劣化量の関係を示す特性図である。
【図4】図1例中、電池残容量検出制御の説明に供されるフローチャートである。
【図5】高電位放置時間と劣化量(容量減)との関係を示す特性図である。
【図6】残容量の棒グラフ表示の説明に供されるグラフである。
【図7】図1例中、電池残容量検出制御の説明に供されるタイムチャートである。
【符号の説明】
10…電気自動車 15…バッテリ
18…(高電位)放置タイマ 31…管理用ECU
41…イグニッションスイッチ 43…充電スイッチ
44…温度センサ
Vb…端子間電圧 Tb…バッテリ温度
Cc…計算される現在の残容量 Cc′…前回計算時の残容量
Cd…高電位劣化量 Cdis…放電容量
Cr…基準容量
Claims (3)
- 充放電のない放置時にリチウムイオン二次電池の電圧を検出する電圧検出手段と、
検出した電圧と前記リチウムイオン二次電池の定格電圧よりも高い所定電圧とを比較して比較結果信号を出力する比較手段と、
前記比較結果信号が、放置時であって前記検出電圧が前記所定電圧を超える高電圧状態であることを表す状態であることを検出したときに、時間の計時を行う計時手段と、
前記計時手段による高電圧状態にある時間の計時時間に基づき前記リチウムイオン二次電池の容量劣化量を計算する容量劣化計算手段と、
前記リチウムイオン二次電池の満充電容量を基に少なくとも充電容量及び放電容量から前記リチウムイオン二次電池の残容量を求める残容量計算手段と、
前記容量劣化量に基づいて前記満充電容量を再計算し、該満充電容量により前記残容量を補正する残容量補正手段と、
を有することを特徴とする電池残容量検出装置。 - 請求項1記載の装置において、
前記容量劣化計算手段は、前記リチウムイオン二次電池の容量劣化量を、前記高電圧状態計時時間と前記検出電圧値に基づき計算することを特徴とする電池残容量検出装置。 - 請求項1記載の装置において、
前記容量劣化計算手段は、前記リチウムイオン二次電池の容量劣化量を、前記高電圧状態計時時間と前記リチウムイオン二次電池の温度に基づき計算することを特徴とする電池残容量検出装置。
Priority Applications (1)
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