JP2004078097A - 画像形成方法及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は中間転写方式の一次転写及び二次転写で発生しやすい転写むらや中抜け、文字チリ等の画質劣化を防止し、鮮鋭性が改善された電子写真画像を提供する画像形成方法及び画像形成装置を提供することである。
【解決手段】潜像担持体が円筒度5〜40μmの有機感光体であり、トナーが少なくとも樹脂と着色剤とからなる着色粒子を含有するトナーであり、該トナーの50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15であり、且つ該トナーの大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20であり、さらに0.7×(Dp50)以下の粒径のトナーが10個数%以下である中間転写方式の画像形成方法。
【選択図】 図1
【解決手段】潜像担持体が円筒度5〜40μmの有機感光体であり、トナーが少なくとも樹脂と着色剤とからなる着色粒子を含有するトナーであり、該トナーの50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15であり、且つ該トナーの大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20であり、さらに0.7×(Dp50)以下の粒径のトナーが10個数%以下である中間転写方式の画像形成方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は複写機、プリンター、ファクシミリ等に用いられる画像形成方法、画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真感光体として有機感光体(以下、単に感光体とも云う)を用い、該有機感光体上のトナー像を最終画像の記録紙に転写する方式としては、有機感光体上に形成されたトナー像を記録紙に直接転写する方式が知られている。一方、中間転写体を用いた画像形成方式が知られており、この方式は有機感光体から記録紙にトナー像を転写する工程内に、もう一つの転写工程を入れ、有機感光体から中間転写体に一次転写した後、中間転写体の一次転写像を記録紙に二次転写することで最終画像を得る。このうち、上記中間転写体を用いた画像形成方式は、色分解された原稿画像をブラック、シアン、マゼンタ、イエロー等のトナーによる減色混合を用いて再現する、いわゆるフルカラー画像形成装置における各色トナー像の重ね転写方式として採用されることが多い。
【0003】
しかし、上記中間転写方式においては、中間転写体に関係した新たな課題を発生している。その1つが感光体と中間転写体との接触界面の押圧力の不均一さからくる中間転写体上へのトナーの転写のばらつきや部分的な転写不良による転写むらや文字画像の一部が欠落した、いわゆる「中抜け」等の画像欠陥の発生と、その結果としての鮮鋭性の劣化が挙げられる。
【0004】
一方、中間転写体から記録紙への二次転写性を改善する為には、中間転写体に固形の潤滑剤を供給し、中間転写体の表面エネルギーを低下させる技術が公開されている。例えば特開平6−337598号公報、特開平6−332324号公報、特開平7−271142号公報等に記載されるものがある。しかしながら、このような中間転写体の表面の表面エネルギーの低下は、反面感光体から中間転写体へのトナーの転写率を低下させる原因ともなり、2回の転写工程を有する中間転写体を用いた画像形成方式のトータルの転写性の改良には、尚不十分であり、特に高温高湿や長期のコピー画像の形成等に対しては尚一層の改善が必要であることが見出された。
【0005】
即ち、中間転写体を用いた画像形成方式では有機感光体及び中間転写体の両方の表面特性を改良し、一次転写と二次転写の両方トータルの転写性を改善する事が必要であることが見出された。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は中間転写方式の一次転写及び二次転写で発生しやすい転写むらや中抜け、文字チリ等の画質劣化を防止し、鮮鋭性が改善された電子写真画像を形成する画像形成方法及び画像形成装置を提供することであり、又カラートナーを中間転写体上に色重ねする際に発生しやすい転写むらや中抜け、文字チリ等の画質劣化を防止し、良好なカラー画像を形成する画像形成方法及び画像形成装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題について鋭意検討した結果、本発明の目的は、中間転写方式で発生しやすい転写むら等の画像劣化は、潜像担持体として用いる円筒状有機感光体の寸法精度を改善し、一次転写時の感光体と中間転写体間の面圧のばらつきを防止し、その結果転写率を一定に維持すると共に、トナーの粒度分布を小粒径成分の存在量を低減し、トナーの粒度分布の中央値である50%粒径の体積平均粒径と個数平均粒径の比の広がりと、大きな粒径側より累計した75%頻度の体積粒径と個数粒径の比の広がりを特定の値に構成することにより達成されることを見いだし、本発明を完成した。即ち、上記目的は以下の構成を取ることにより達成される。
【0008】
1.潜像担持体上に潜像を形成する工程、トナーを含む現像剤で当該潜像を現像する工程、前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写する工程、前記中間転写体に転写形成されたトナー像を記録紙に転写する工程を含む画像形成方法において、該潜像担持体が円筒度5〜40μmの有機感光体であり、該トナーが少なくとも樹脂と着色剤とからなる着色粒子を含有するトナーであり、該トナーの50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15であり、且つ該トナーの大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20であり、さらに0.7×(Dp50)以下の粒径のトナーが10個数%以下であることを特徴とする画像形成方法。
【0009】
2.潜像担持体上にイエロー画像に対応した潜像を形成する工程、イエロートナーを含む現像剤で当該潜像を現像する工程、前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写する工程、潜像担持体上にマゼンタ画像に対応した潜像を形成する工程、マゼンタトナーを含む現像剤で当該潜像を現像する工程、前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写する工程、潜像担持体上にシアン画像に対応した潜像を形成する工程、シアントナーを含む現像剤で当該潜像を現像する工程、前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写する工程、潜像担持体上にブラック画像に対応した潜像を形成する工程、ブラックトナーを含む現像剤で当該潜像を現像する工程、前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写する工程、前記中間転写体に転写形成された各色のトナー像を記録紙に転写する工程を含む画像形成方法において、該潜像担持体が円筒度5〜40μmの有機感光体であり、該各トナーが少なくとも樹脂と着色剤とからなる着色粒子を含有するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックトナーであり、該各トナーの50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15であり、且つ該各トナーの大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20であり、さらに0.7×(Dp50)以下の粒径のトナーが10個数%以下であることを特徴とする画像形成方法。
【0010】
3.前記有機感光体が表面層に数平均一次粒子径1nm以上、100nm未満の無機粒子を含有し、該有機感光体の表面に、表面エネルギー低下剤を供給しながら画像形成を行うことを特徴とする前記1又は2に記載の画像形成方法。
【0011】
4.前記表面エネルギー低下剤が脂肪酸金属塩であることを特徴とする前記3に記載の画像形成方法。
【0012】
5.前記脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛であることを特徴とする前記4に記載の画像形成方法。
【0013】
6.前記無機粒子が疎水性シリカであり、該疎水性シリカの疎水化度が50%以上であることを特徴とする前記3〜5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0014】
7.前記1〜6のいずれか1項に記載の画像形成方法を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【0015】
即ち、本発明の上記構造をとることにより、転写不良による転写むらや中抜け、文字チリの発生を防止し、中間転写体を用いた画像形成方法で良好な電子写真画像を形成することができる。
【0016】
以下、本発明について、詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【0017】
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y,10M,10C,10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21及び定着手段(定着工程でもある)24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0018】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程でもある)2Y、露光手段(露光工程でもある)3Y、現像手段(現像工程でもある)4Y、一次転写手段(一次転写工程でもある)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段(クリーニング工程でもある)6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Kは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1K、帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K、一次転写手段としての一次転写ローラ5K、クリーニング手段6Kを有する。
【0019】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0020】
画像形成部10Y,10M,10C,10Kより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y,5M,5C,5Kにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された記録媒体(記録紙ともいう)としての用紙Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A,22B,22C,22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段(二次転写工程でもある)としての二次転写ローラ5Aに搬送され、用紙P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された用紙Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0021】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5Aにより用紙Pにカラー画像を転写した後、用紙Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
【0022】
画像形成処理中、一次転写ローラ5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の一次転写ローラ5Y,5M,5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y,1M,1Cに圧接する。
【0023】
二次転写ローラ5Aは、ここを用紙Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に圧接する。
【0024】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L,82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0025】
筐体8は、画像形成部10Y,10M,10C,10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0026】
画像形成部10Y,10M,10C,10Kは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y,1M,1C,1Kの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71,72,73,74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y,5M,5C,5K、及びクリーニング手段6Aとから成る。
【0027】
図2は中間転写体のクリーニング手段の一例である。
中間転写体のクリーニング手段6Aは図2で示されるように支軸63の周りに回転可能に制御されるブラケット62に取り付けられたブレード61で構成され、バネ荷重或いは重り荷重を変えることにより、ローラ71へのブレード押圧力を調整することが出来るようにしてある。
【0028】
筐体8の引き出し操作により、画像形成部10Y,10M,10C,10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とは、一体となって、本体Aから引き出される。
【0029】
筐体8の図示左側の支持レール82Lは、無端ベルト状中間転写体70の左方で、定着手段24の上方空間部に配置されている。筐体8の図示右側の支持レール82Rは、最下部の現像手段4Kの下方付近に配置されている。支持レール82Rは、現像手段4Y,4M,4C,4Kを筐体8に着脱する動作に支障を来さない位置に配置されている。
【0030】
筐体8の感光体1Y,1M,1C,1Kの図示右方は、現像手段4Y,4M,4C,4Kにより囲まれ、図示下方は、帯電手段2Y,2M,2C,2K、及びクリーニング手段6Y,6M,6C,6K等により囲まれ、図示左方は、無端ベルト状中間転写体70により囲まれている。
【0031】
その中で感光体、クリーニング手段及び帯電手段等は一つの感光体ユニットを形成し、現像手段及びトナー補給装置等は一つの現像ユニットを形成している。
【0032】
図3は感光体と無端ベルト状中間転写体と一次転写ローラとの位置関係を示す配置図である。一次転写ローラ5Y,5M,5C,5Kを中間転写体としての無端ベルト状中間転写体70の背面から各感光体1Y,1M,1C,1Kへ押圧するが、図3の配置図にも示すように、押圧しない時の中間転写体としての無端ベルト状中間転写体70と各感光体1Y,1M,1C,1Kとの接触点よりも感光体回転方向下流側に一次転写ローラ5Y,5M,5C,5Kを配置し各感光体1Y,1M,1C,1Kへ押圧する。このとき中間転写体としての無端ベルト状中間転写体70は各感光体1Y,1M,1C,1Kの外周に沿うように曲げられ、感光体と無端ベルト状中間転写体70の接触領域の最も下流側に一次転写ローラ5Y,5M,5C,5Kが配置される構成となる。
【0033】
図4はバックアップローラと無端ベルト状中間転写体と二次転写ローラとの位置関係を示す配置図である。二次転写ローラ5Aは図4の配置図にも示すように、該二次転写ローラ5Aで押圧しない時の中間転写体としての無端ベルト状中間転写体70とバックアップローラ74との接触中央部よりもバックアップローラ74の回転方向上流側に配置されていることが望ましい。
【0034】
中間転写体は、ポリイミド、ポリカーボネート、PVdF等の高分子フィルムや、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の合成ゴムにカーボンブラック等の導電性フィラーを添加して導電化したもの等が用いられ、ドラム状、ベルト状どちらでもよいが、装置設計の自由度の観点からベルト状が好ましい。
【0035】
本発明は、又中間転写体の十点表面粗さRzを0.4〜2.0μmにすることが好ましい。中間転写体の表面粗さRzをこの範囲にすることで、感光体と中間転写体との界面の面圧が均一になりやすく、転写むらや中抜け、文字チリ等の画像欠陥が発生しにくい。又、中間転写体の表面粗さRzをこの範囲にすることで、中間転写体上のトナー付着力を低下させ、中間転写体から記録紙へのトナーの二次転写の転写率を向上させることが容易になる。中間転写体の表面粗さRzが0.4未満では、中間転写体から記録紙へのトナーの二次転写率が低下しやすく、反面中間転写体の表面粗さRzが2.0μmより大きいと、中間転写体の表面の荒れが大きくなりすぎ、記録紙上の画像に中抜け等の画像欠陥を発生しやすい。
【0036】
十点平均表面粗さRz
本発明の中間転写体の表面粗さRzは基準長2.5mmの距離間で上位から5つの山頂の平均高さと、下位から5つの谷底の平均低さとの差である。
【0037】
測定機は表面粗さ計(小坂研究所社製 Surfcorder SE−30H)で測定した。但し、誤差範囲内で同一の結果を生じる測定器であれば、他の測定器を用いても良い。
【0038】
表面粗さのRzの測定条件
測定速度(Drive speed:0.1mm/秒)
測定針直径(Stylus:2μm)
本発明の中間転写体のRzは0.4〜2.0μmであるが、好ましくは0.5〜1.8μmである。
【0039】
中間転写体の表面を荒らす方法としては、約0.2〜10μmの微粒子や導電性フィラーを高分子フィルムや、合成ゴムに添加して粗面化する方法、微細な粒子を支持体表面に衝突させることによる、サンドブラスト加工の方法等がある。しかし、中間転写体の表面を荒らす方法としてはこれらに限定されるものではない。
【0040】
有機感光体から中間転写体へのトナーの一次転写時の中間転写体の面圧(有機感光体への面圧)は、0.1〜0.5g/cm2が好ましい。0.1未満ではトナーの転写性が不十分となりやすく、0.5を超えると、感光体や中間転写体の表面を傷つけやすく、このことが原因となって、転写むらや中抜け等の画像欠陥を発生しやすい。
【0041】
本発明の画像形成装置は、剤付与手段を有し、該剤付与手段を介して有機感光体の表面に表面エネルギー低下剤を供給し、電子写真画像を形成することが好ましい。剤付与手段は有機感光体周辺の適当な位置に設置することができるが、設置空間を有効利用するには、図1記載の帯電手段、現像手段、クリーニング手段の一部を利用して、設置しても良い。以下、クリーニング手段に剤付与手段を併用した例を挙げる。
【0042】
図5は本発明の感光体に設置されるクリーニング手段の構成図である。
該クリーニング手段は図1の6Y,6M,6C,6K等のクリーニング手段として用いられる。図5のクリーニングブレード66Aが支持部材66Bに取り付けられている。該クリーニングブレードの材質としてはゴム弾性体が用いられ、その材料としてはウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、クロロピレンゴム、ブタジエンゴム等が知られているが、これらの内、ウレタンゴムは他のゴムに比して摩耗特性が優れている点で特に好ましい。
【0043】
本発明に用いられるクリーニングブレードの反発弾性は40〜75の範囲が好ましい。反発弾性が75を超えると本発明の感光体表面にクラックを発生させやすい。一方、40未満だとブレードが損傷しやすくクリーニング性能が低下する。ここで反発弾性とは衝突、或いは落下してきた物体を跳ね返す反発係数を示す指標であり、具体的にはJISK6301の加硫ゴム物理試験方法に基づき測定する。反発弾性の数値は%を示す。
【0044】
一方、支持部材66Bは板状の金属部材やプラスチック部材で構成される。金属部材としてはステンレス鋼板、アルミ板、或いは制震鋼板等が好ましい。
【0045】
本発明において、感光体表面に圧接するクリーニングブレードの先端部は、感光体の回転方向と反対方向(カウンター方向)に向けて負荷をかけた状態で圧接することが好ましい。図5に示すようにクリーニングブレードの先端部は感光体と圧接するときに、圧接面を形成することが好ましい。
【0046】
クリーニングブレードの感光体への当接荷重P、当接角θの好ましい値としては、P=5〜40N/m、θ=5〜35°である。
【0047】
当接荷重Pはクリーニングブレード66Aを感光体ドラム1に当接させたときの圧接力P′の法線方向ベクトル値である。
【0048】
又当接角θは感光体の当接点Aにおける接線Xと変形前のブレード(図面では点線で示した)とのなす角を表す。66Eは支持部材を回転可能にする回転軸であり、66Gは荷重バネを示す。
【0049】
又、前記クリーニングブレードの自由長Lは図5に示すように支持部材66Bの端部Bの位置から変形前のブレードの先端点の長さを表す。該自由長の好ましい値としてはL=6〜15mm、である。クリーニングブレードの厚さtは0.5〜10mmが好ましい。ここで、本発明のクリーニングブレードの厚さとは図5に示すように支持部材66Bの接着面に対して垂直な方向を示す。
【0050】
図5のクリーニング手段には剤付与手段を兼ねたブラシロール66Cが用いられている。該ブラシロールは感光体1に付着したトナーの除去、クリーニングブレード66Aで除去されたトナーの回収機能と共に、表面エネルギー低下剤を感光体に供給する剤付与手段としての機能を有する。即ち該ブラシロールは感光体1と接触し、その接触部においては感光体と進行方向が同方向に回転し、感光体上のトナーや紙粉を除去すると共に、クリーニングブレード66Aで除去されたトナーを搬送し、搬送スクリュー66Jに回収する。この間の経路はブラシロール66Cに除去手段としてのフリッカ66Iを当接させることにより、感光体1からブラシロール66Cに転移したトナー等の除去物を除去することが好ましい。更にこのフリッカに付着したトナーをスクレーパ66Dで除去し、トナーを搬送スクリュー66Jに回収する。回収されたトナーは廃棄物として外部に取り出されるか、或いはトナーリサイクル用のリサイクルパイプ(図示せず)を経由して現像器に搬送され再利用される。フリッカ66Iの材料としてはステンレス、アルミニウム等の金属管が好ましく用いられる。一方、スクレーパ66Dとしては、リン青銅板、ポリエチレンテレフタレート板、ポリカーボネート板等の弾性板が用いられ、先端がフリッカの回転方向に対し鋭角を形成するカウンター方式で当接させるのが好ましい。
【0051】
又、表面エネルギー低下剤(ステアリン酸亜鉛等の固形素材)66Kはブラシロールにバネ荷重66Sで押圧されて取り付けられており、ブラシは回転しながら、該表面エネルギー低下剤を擦過して、感光体の表面に表面エネルギー低下剤を供給する。
【0052】
ブラシロール66Cとしては導電性又は半導電性体のブラシロールが用いられる。
【0053】
本発明で用いられるブラシロールのブラシ構成素材は、任意のものを用いることができるが、疎水性で、かつ誘電率が高い繊維形成性高分子重合体を用いるのが好ましい。このような高分子重合体としては、例えばレーヨン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエステル、メタクリル酸樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリビニルアセタール(例えばポリビニルブチラール)等が挙げられる。これらのバインダ樹脂は単独であるいは2種以上の混合物として用いることができる。特に、好ましくはレーヨン、ナイロン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリプロピレンである。
【0054】
また、前記ブラシは、導電性又は反導電性のものが用いられ、構成素材にカーボン等の低抵抗物質を含有させ、任意の比抵抗に調整したものが使用できる。
【0055】
ブラシロールのブラシ毛の比抵抗は、常温常湿(温度26℃、相対湿度50%)で、長さ10cmの1本のブラシ毛の両端に500Vの電圧を印加した状態で測定して、101Ωcm〜106Ωcmの範囲内のものが好ましい。
【0056】
即ち、ブラシロールはステンレス等の芯材に101Ωcm〜106Ωcmの比抵抗を持つ導電性又は半導電性のブラシ毛を用いることが好ましい。101Ωcmよりも比抵抗が低いと、放電によるバンディング等が発生しやすくなる。また、106Ωcmよりも高いと、感光体との電位差が低くなって、クリーニング不良が発生しやすくなる。
【0057】
ブラシロールに用いるブラシ毛1本の太さは、5〜20デニールが好ましい。5デニールに満たないと、十分な擦過力が無いため表面付着物を除去できない。また、20デニールより大きいと、ブラシが剛直になるため感光体の表面を傷つける上に摩耗を進行させ、感光体の寿命を低下させる。
【0058】
ここでいう「デニール」とは、前記ブラシを構成するブラシ毛(繊維)の長さ9000mの質量をg(グラム)単位で測定した数値である。
【0059】
前記ブラシのブラシ毛密度は、4.5×102/cm2〜2.0×104/cm2(1平方センチあたりのブラシ毛数)である。4.5×102/cm2に満たないと、剛直度が低く擦過力が弱い上に、擦過にムラができ、付着物を均一に除去することができない。2.0×104/cm2より大きいと、剛直になって擦過力が強くなるために感光体を摩耗させ、感度低下によるカブリや傷による黒スジ等の不良画像が発生する。
【0060】
本発明で用いられるブラシロールの感光体に対する食い込み量は0.4〜1.5mmに設定されるのが好ましい。この食い込み量は、感光体ドラムとブラシロールの相対運動によって発生するブラシにかかる負荷を意味する。この負荷は、感光体ドラムから見れば、ブラシから受ける擦過力に相当し、その範囲を規定することは、感光体が適度な力で擦過されることが必要であることを意味する。
【0061】
この食い込み量とはブラシを感光体に当接したとき、ブラシ毛が感光体表面で曲がらずに、直線的に内部に進入したと仮定した時の内部への食い込み長さを云う。
【0062】
表面エネルギー低下剤が供給された感光体ではブラシによる感光体表面の擦過力が小さいため、食い込み量が、0.4mmより小さいと、トナーや紙粉などの感光体表面へのフィルミングを抑制することができず、画像上でむらなどの不良が発生する。一方、1.5mmより大きいと、ブラシによる感光体表面の擦過力が大きすぎるために、感光体の摩耗量が大きくなり、感度低下によるカブリが発生したり、感光体表面に傷が発生し、画像上にスジ故障が発生したりして問題である。
【0063】
本発明のブラシロールに用いられるロール部の芯材としては、主としてステンレス、アルミニウム等の金属、紙、プラスチック等が用いられるが、これらにより限定されるものではない。
【0064】
本発明で用いられるブラシロールは円柱状の芯材の表面に接着層を介してブラシを設置した構成であることが好ましい。
【0065】
ブラシロールは、その当接部分が感光体の表面と同方向に移動するように回転するのが好ましい。該当接部分が逆方向に移動すると、感光体の表面に過剰なトナーが存在した場合に、ブラシロールにより除去されたトナーがこぼれて記録紙や装置を汚す場合がある。
【0066】
感光体とブラシロールとが前記のように、同方向に移動する場合に、両者の表面速度比は1対1.1〜1対2の範囲内の値であることが好ましい。ブラシロールの回転速度が感光体よりも遅いとブラシロールのトナー除去能力が低下するためにクリーニング不良が発生しやすく、感光体よりも速いとトナー除去能力が過剰となってブレードバウンディングやめくれが発生しやすくなる。
【0067】
尚、前記表面エネルギー低下剤とは有機感光体の表面に付着し、有機感光体の表面エネルギーを低下させる物質を云い、具体的には表面に付着することにより、有機感光体の表面の接触角(純水に対する接触角)を1°以上増加させる材料を云う。
【0068】
表面接触角測定
感光体表面の接触角は純水に対する接触角を接触角計(CA−DT・A型:協和界面科学社製)を用いて30℃80%RHの環境下で測定する。
【0069】
ところで、表面エネルギー低下剤としては脂肪酸金属塩或いはフッ素系樹脂が挙げられるが、これらの素材は、該素材中の親水性基や不純物成分の為、高温高湿条件で、含水量が多くなりやすい。この含水量が多くなると、これら表面エネルギー低下剤が均一に感光体の表面に延展されず、前記した本発明の効果を十分に発揮させ得ない。本発明に用いられる表面エネルギー低下剤はこの高温高湿条件の30℃80%RHの環境下で、含水量が5.0質量%以下であることが好ましい。
【0070】
又、表面エネルギー低下剤としては、有機感光体の表面の接触角(純水に対する接触角)を1°以上増加させる材料であれば、脂肪酸金属塩或いはフッ素系樹脂等の材料に限定されない。
【0071】
本発明に用いられる表面エネルギー低下剤としては、感光体表面への延展性及び均一な膜形成性能を有する材料として脂肪酸金属塩が最も好ましい。該脂肪酸金属塩は、炭素数10以上の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩が好ましい。たとえばステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸インジウム、ステアリン酸ガリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、パルチミン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム等が挙げられ、より好ましくはステアリン酸金属塩である。
【0072】
上記脂肪酸金属塩の中でも特にフローテスターの流出速度が高い脂肪酸金属塩は劈開性が高く、本発明の前記感光体表面でより効果的に脂肪酸金属塩の層を形成することができる。流出速度の範囲としては1×10−7以上1×10−1以下が好ましく、5×10−4以上1×10−2以下であると最も好ましい。フローテスターの流出速度の測定は島津フローテスター「CFT−500」(島津製作所(株)製)を用いて測定した。
【0073】
又、上記固形材料の他の例としてはポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂粉末が好ましい。これらの固形材料は必要に応じて圧力をかけ、板状或いは棒状にして用いることが好ましい。
【0074】
一方、含水率の測定は、表面エネルギー低下剤の場合はこの素材をシャーレに入れ、30℃、80%RHに24時間放置後、カールフィッシャー水分率計(京都電子工業(株)製;MKA−3p)を用いて測定する。
【0075】
本発明の表面エネルギー低下剤は含水率を5.0質量%以下にする方法としては、材料中の親水成分や不純物の制御、例えば精製や疎水化処理により、高温高湿(30℃80%RH)下の水分量の低減の他に、水分調整剤の混入、高温乾燥処理等により達成できる。上記水分量の含水率は好ましくは0.01〜5.0質量%、更には0.05〜3.0質量%が良い。0.01質量%より小さいと却って複写中の温度上昇等による環境変動、特に像担持体の場所による湿度に左右され易かったり、また材料の選択や疎水性処理が難しい。5.0質量%より大きいと中抜けや文字チリが発生しやすい。
【0076】
以下、本発明に用いる有機感光体について説明する。
本発明の円筒度とは、JIS規格(B0621−1984)による。即ち、円筒基体を2つの同軸の幾何学的円筒で挟んだとき、同軸2円筒の間隔が最小となる位置の半径の差で表し、本発明では該半径の差をμmで表す。
【0077】
本発明の円筒状有機感光体(以下、感光体とも云う)の円筒度は5〜40μm、好ましくは7〜30μm、更には7〜27μmが良い。40μmより大きいと、感光体と中間転写体の接触界面の面圧が不均一となりやすく、転写むら、中抜け、文字チリ等の画像欠陥を生じやすい。但し、前記有機感光体の円筒度は、実質的に画像形成を行う領域の円筒度を意味し、画像形成を行わない両端の感光層膜厚の変動領域は除く。
【0078】
本発明の円筒度の測定方法は円筒状基体の両端10mmの2点、中心部、両端と中心部の間を3等分した点の4点、計7点の真円度を測定し求める。測定器は非接触万能ロール径測定機((株)ミツトヨ製)を用いた。
【0079】
以下に説明するインロー加工とは円筒状基体の内部を切削加工し、基体内面に段差(部材を取り付ける等のため)等の加工面を形成する加工を意味し、例えば、円筒状基体を回転させながら、切削バイトを当接し、送り移動し加工する。
【0080】
以下に説明するインロー加工は円筒状基体の両端にフランジを取り付ける段差を形成することを主たる目的にしているので、円筒状基体の両端に基体軸方向長さdmmの段差(インロー長さ)を形成する。本発明では円筒状基体長さ(軸方向)をLmm、保持部材の長さ(軸方向)をDmmとすると、保持部材の長さDは下記の範囲にあることが好ましい。
【0081】
1/2×L≦D<L−2d
Dが1/2×Lより小さいと、インロー加工の時に、基体両端が独楽状に振れやすく、加工精度が劣化しやすい。DがL−2d以上になると、インロー加工部の空間が十分でなく、加工作業が困難となる。
【0082】
以下に説明する保持部材とはインロー加工等の円筒状基体の加工時に、振動を抑制し、基体の形状変形を防止するために、円筒状基体内径に挿入圧接する部材を云う。
【0083】
以下に説明する外径基準とは円筒状基体の外表面円筒の中心軸を基準軸とすることを云う。
【0084】
以下に説明するインロー加工部の内径基準とはインロー加工で形成された円筒内径の中心軸を基準軸とすることを云う。
【0085】
以下、図面を用いて、本発明に用いる感光体を詳細に説明する。
図6は本発明に用いる有機感光体10の概略正面図で、円筒状基体11と、その両側開口部である端部12、13に設けられたフランジ14、15からなり、円筒状基体11の表面には感光層16が形成されている。また、有機感光体10の中心にはシャフト17が円筒状基体11の軸Cと一致するように配設され、有機感光体10を回転可能なものとしている。
【0086】
円筒状基体11は、アルミニウムもしくはアルミニウム系合金などの導電性金属で形成したものが用いられ、内部が中空の円筒状に加工されている。例えばアルミニウム系合金を用いた場合には、延伸加工および/または切削加工を施すことで円筒状とされる。
【0087】
フランジ14,15は、円筒状基体11の両端部内面に嵌合して円筒状基体11を円柱状のものにする円盤状とされ、その中心には孔18が形成されている。また、一方のフランジ14にはその外周に歯車14aが形成されており、有機感光体10の回転を制御し得るものとしている。
【0088】
シャフト17は、断面が正方形等の矩形形状、十字状、円状等とした金属、プラスチック等を用いた棒状のものとされ、湾曲等の変形が少ない材料が用いられる。また、シャフト17はフランジ14、15に形成された孔18を通って固定され、これにより有機感光体10の回転を支える軸となる。
【0089】
感光層16は、有機光導電体(OPC)感光層などの光電効果を有する光導電物質からなる。
【0090】
本発明の有機感光体を作製する為には、まず前記円筒状基体11の円筒度を5〜40μmに作製することが必要である。
【0091】
図7は、本発明にかかる円筒状基体の製造工程について説明するために(a)、(b)の工程順に示したものである。まず最初に図7(a)に示すような中空円筒状の円筒状基体11を準備する。円筒状基体11としては、例えば延伸加工により肉厚が2mmで外径が100mmφとしたアルミニウム合金を用いることができる。
【0092】
図7(a)は基体内部に保持部材3を挿入させ、インロー加工として切削バイトで加工している図である。端部には内側に段差を設けるようにインロー加工を施す。この箇所においては、外径は変わらないものの段差分だけ肉厚を薄くして内径を大きくした薄肉部(インロー加工部)12a、13aが形成される。
【0093】
本発明ではこのインロー加工に際して、円筒状基体を保持部材と圧力可変手段4により、内部より把持して、該保持部材を貫通する中心軸19の周りにモーター20、21により円筒状基体を回転駆動させて、旋削刃具22を基体内部に当接し、インロー加工を行う。即ち、円筒状基体を内部より把持することにより、該表面を傷つけないようにすることを特徴とする。
【0094】
次に、該インロー加工された円筒状基体を用いて該表面の切削加工を行う。即ち、図7(b)は前記インロー加工により形成された内径を持つ円筒状基体の両端のインロー部を握持用爪23の開閉に無摺動式開閉チャック(藤井精密工業株式会社製、エアーバルーンチャック、クラフトグラフィー、ダイナミックツール株式会社製ダイアフラムチャック)24、25を用いて握持し、インロー加工部の内径基準で基体表面を切削加工している図である。
【0095】
以上のような円筒状基体の加工方法を採用することにより、外径円筒度が5〜40μmの有機感光体用円筒状基体を作製することができる。26は切削刃具である。
【0096】
前記保持部材としては、インロー加工時の振動を抑制し、形状を保持するために、強度の強い剛性部材の場合が好ましい。該剛性部材としては、ステンレス、真鍮等の金属やセラミックス等が良い。又、該保持部材には接触圧力可変手段等が装備されているものが良い。以下、該剛性部材を円筒状基体の内径に挿入押圧する方法について説明する。
【0097】
図8(a)は保持部材3の斜視図である。図8(b)は保持部材の圧力可変手段4を示す断面図である。3−1〜3−8は各々断面が扇型をした保持部材の部品であり、各部品が図示されていない緩い連結、例えばバネで結合されて、保持部材全体を構成し、保持部材の外面は円筒状基体内面に接触するよう円筒状を形成している。保持部材の中心部は図8(b)に示すように圧力可変手段4として、テーバーの付いた中心棒4−1が出し入れ出来るような環を形成している。図8(b)に示すように中心棒4−1を挿入することにより、保持部材は外側に拡がり、円筒状基体を押圧しながら保持する事になる。押圧したときの圧力の調整はこの中心棒4−1の挿入深さで調整される。
【0098】
保持部材としては上記剛性部材の代わりに、硬質ウレタン、ゴム等の弾性部材を用いることも可能である。
【0099】
又、上記中心棒4−1は保持部材を貫通する中心軸19を有し、この中心軸の周りに円筒状基体を回転駆動させてインロー加工を行う。
【0100】
次に、基体を洗浄後、図9に示すように、円筒状基体11の外側表面に感光層16を塗布形成する。
【0101】
次に、感光層が形成された円筒状基体にはフランジ14,15が取り付けられる。フランジ14、15は円盤状とされ、円筒状基体11の外径と略等しい外径を有し、円筒状基体11に取り付けられて蓋となる外側部分と、それよりも外径の小さな内側部分とからなり、その中心には孔18が形成されている。外径の小さな内側部分は、その外径が前記インロー加工で形成された薄肉部12a,13aの内径と等しいか若しくは若干大きなものとされている。フランジ14、15の外径の小さな内側部分は円筒状基体11の薄肉部12a,13aに嵌合する。これにより円筒状基体11の端部にフランジ14,15が蓋をするように固定される。このとき、フランジ14,15を取り付けた状態において、円筒状基体11の軸Cを中心とした円筒度が5〜40μmであることが好ましい。なお、一方のフランジ14の外周部分には歯車14aが形成されている。また、フランジの中央部にはシャフトを固定するための孔18が設けてある。
【0102】
次に、本発明の有機感光体の感光体構成について記載する。
本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能のいずれか一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機電子写真感光体を全て含有する。
【0103】
有機感光体の層構成は、特に限定はないが、電荷発生層、電荷輸送層、或いは電荷発生・電荷輸送層(電荷発生と電荷輸送の機能を同一層に有する層)等の感光層とその上に保護層を塗設した構成をとるのが好ましい。
【0104】
円筒状基体
本発明の円筒状基体の材質としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラムが好ましい。円筒状基体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。
【0105】
中間層
本発明においては導電性円筒状基体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた中間層を設けることもできる。
【0106】
本発明においては導電性支持体と前記感光層のとの接着性改良、或いは該支持体からの電荷注入を防止するために、該支持体と前記感光層の間に中間層(下引層も含む)を設けることもできる。該中間層の材料としては、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂が挙げられる。これら下引き樹脂の中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さくできる樹脂としてはポリアミド樹脂が好ましい。又、これら樹脂を用いた中間層の膜厚は0.01〜0.5μmが好ましい。
【0107】
又本発明に最も好ましく用いられる中間層はシランカップリング剤、チタンカップリング剤等の有機金属化合物を熱硬化させた硬化性金属樹脂を用いた中間層が挙げられる。硬化性金属樹脂を用いた中間層の膜厚は、0.1〜2μmが好ましい。
【0108】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。正帯電用の感光体では前記層構成の順が負帯電用感光体の場合の逆となる。本発明の最も好ましい感光層構成は前記機能分離構造を有する負帯電感光体構成である。
【0109】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
電荷発生層
電荷発生層には電荷発生物質(CGM)を含有する。その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。
【0110】
電荷発生物質(CGM)としては公知の電荷発生物質(CGM)を用いることができる。例えばフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを用いることができる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCGMは複数の分子間で安定な凝集構造をとりうる立体、電位構造を有するものであり、具体的には特定の結晶構造を有するフタロシアニン顔料、ペリレン顔料のCGMが挙げられる。例えばCu−Kα線に対するブラッグ角2θが27.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン、同2θが12.4に最大ピークを有するベンズイミダゾールペリレン等のCGMは繰り返し使用に伴う劣化がほとんどなく、残留電位増加小さくすることができる。
【0111】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.01μm〜2μmが好ましい。
【0112】
電荷輸送層
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0113】
電荷輸送物質(CTM)としては公知の電荷輸送物質(CTM)を用いることができる。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCTMは高移動度で、且つ組み合わされるCGMとのイオン化ポテンシャル差が0.5(eV)以下の特性を有するものであり、好ましくは0.25(eV)以下である。
【0114】
CGM、CTMのイオン化ポテンシャルは表面分析装置AC−1(理研計器社製)で測定される。
【0115】
電荷輸送層(CTL)に用いられる樹脂としては、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。
【0116】
これらCTLのバインダーとして最も好ましいものはポリカーボネート樹脂である。ポリカーボネート樹脂はCTMの分散性、電子写真特性を良好にすることにおいて、最も好ましい。バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し10〜200質量部が好ましい。又、電荷輸送層の膜厚は10〜40μmが好ましい。
【0117】
又、本発明の感光体の表面層(例えば、電荷輸送層に)には、数平均一次粒径が10nm以上、100nm未満の疎水性無機粒子を混在させることがより好ましい。疎水性無機粒子のより好ましい数平均粒径は10nm以上、90nm以下、最も好ましくは10nm以上、50nm未満である。表面層にこのような無機粒子を含有させることにより、前記した表面エネルギー低下剤が感光体表面に均一に延展しやすく、転写むら、中抜け、文字チリ等の画像劣化を防止することができる。
【0118】
本発明に用いられる10nm以上、100nm未満の無機粒子としては、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ、酸化ジルコニウム等の微粒子を好ましく用いることができるが、これらの中でもコスト、粒径の調整や表面処理の容易さ等からシリカ、特に表面を疎水化した疎水性シリカが好ましい。
【0119】
本発明の無機粒子の数平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに300個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によりフェレ径の数平均径として測定値を算出する。
【0120】
上記疎水性シリカの疎水化度は、メタノールに対する濡れ性の尺度(メタノールウェッタビリティ)で示される疎水化度で50%以上のものが好ましい。疎水化度が50%未満であると前記吸熱エネルギー変化量ΔHが、10J/gより大きくなりやすく、その結果、環境メモリを発生しやすくなり、又ブレードを傷つけクリーニング不良も発生しやすくなる。より好ましい疎水化度は65%以上、最も好ましくは70%以上である。
【0121】
疎水化度を表すメタノールウェッタビリティとは、メタノールに対するシリカ微粉末の濡れ性を評価するものである。濡れ性の測定は以下の方法で行う。内容量250mlのビーカーに入れた蒸留水50mlに、測定対象のシリカ微粉末を0.2g添加して撹拌する。次にメタノールを先端が液体中に浸漬されているビュレットからゆっくり撹拌した状態でシリカ微粉末の全体が濡れるまでゆっくり滴下する。このシリカ微粉末を完全に濡らすために必要なメタノールの量をa(ml)とした時、下記式(1)により疎水化度を算出する。
【0122】
式(1) 疎水化度=a/(a+50)×100
上記疎水性シリカは、公知の湿式法もしくは乾式法で生成されたシリカ粉末をを疎水化することにより得られる。特に乾式法(ケイ素化ハロゲン化合物の蒸気相酸化)により生成されたいわゆるヒュームドシリカと称されるものを疎水化剤で処理したものが、水分吸着サイトが少なく好ましい。これは従来公知の技術によって製造されるものである。例えば四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のようなものである。
【0123】
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
又、この製造工程において例えば、塩化アルミニウム又は、塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能である。
【0124】
シリカ粉末の疎水化処理は、シリカ微粉末を撹拌等によりクラウド状に分散させたものに、アルコール等で溶解した疎水化処理剤溶液を噴霧するか或いは気化した疎水化処理剤を接触させて付着させる乾式処理、又は、シリカ粉末を溶液中に分散させ、その中に疎水化処理剤を滴下して付着させる湿式処理等の従来公知の方法で行うことが出来る。
【0125】
疎水化処理剤としては、公知の化合物を用いることが出来、具体例を下記に挙げる。又、これらの化合物は組み合わせて使用しても良い。
【0126】
チタンカップリング剤としてはテトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート及びビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等が挙げられる。
【0127】
シランカップリング剤としてはγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−ビニルベンジルアミノエチル−N−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン及びp−メチルフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0128】
シリコーンオイルとしてはジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル及びアミノ変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0129】
これらの疎水化処理剤は、シリカ粉末に対して1〜40質量%添加して被覆することが好ましく、3〜30質量%がより好ましい。
【0130】
又、上記表面疎水化剤としてハイドロジェンポリシロキサン化合物を用いてもよい。該ハイドロジェンポリシロキサン化合物の分子量は1000〜20000のものが一般に入手しやすく、又、黒ポチ発生防止機能も良好である。特にメチルハイドロジェンポリシロキサンを最後の表面処理に用いると良好な効果が得られる。
【0131】
本発明では上記疎水化処理された疎水性シリカを有機感光体の表面層にバインダーと共に含有させるが表面層のシリカ粒子の割合はバインダーに対して1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%、最も好ましくは2〜10質量%で使用されるのがよい。
【0132】
次に本発明の有機感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられる。特に円形量規制型塗布装置を用いると、下層の膜を極力溶解させないため、均一塗布加工を達成でき、円筒状基体の円筒度を維持した有機感光体を作製できる。前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0133】
次に、本発明に用いられるトナーについて説明する。
まず、本発明に用いられるトナーは、粒径分布としては単分散、あるいはそれに近いことが好ましく、50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15であることがその要件である。より好ましくは1.0〜1.13がよい。この比率が1.15を越えると粒径分布が広くなり本発明の課題を達成することができない。
【0134】
また、トナー粒子の大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20である必要がある。1.20を越える場合には小粒径成分の存在比率が増大し、弱帯電成分の増加や逆極性のトナーの発生、あるいは過帯電成分の発生などの原因となる。その結果、感光体から中間転写体へのトナーの転写が不十分となり、転写むらや中抜け等の画像不良が発生しやすい。
【0135】
さらに、0.7×(Dp50)以下の粒径のトナー粒子が10個数%以下である必要があり、10個数%を越えると小粒径成分の存在比率が増大し、前述と同様に、弱帯電成分の増加や逆極性のトナーの発生、あるいは過帯電成分の発生などの原因となる。その結果、感光体から中間転写体へのトナーの転写が不十分となり、転写むらや中抜け等の画像不良が発生しやすい。
【0136】
本発明では円筒度5〜40μmの円筒状有機感光体上の潜像を上記粒度分布特性を有するトナーを含有する現像剤により現像することにより、感光体から中間転写体への転写性が向上し、転写むら等の発生が防止された鮮鋭性の良好な電子写真画像が得られる。
【0137】
なお、上記50%体積粒径(Dv50)は2〜8μm、より好ましくは3〜7μmであることが望ましい。この範囲とすることにより、解像度を高くすることができる。さらに上記の本発明の範囲と組み合わせることにより、小粒径トナーでありながら、微細な粒径のトナーの存在量を少なくすることができ、長期に亘ってクリーニング性やトナーの転写率が改善され、鮮鋭性の良好な、安定した画像を形成することができる。
【0138】
本発明において、大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)或いは累積75%個数粒径(Dp75)とは、粒径の大きな方からの頻度を累積し、全体積の和或いは個数の和に対して、それぞれが75%を示す粒径分布部位の体積粒径或いは個数粒径で表す。
【0139】
本発明において、50%体積粒径(Dv50)、50%個数粒径(Dp50)、累積75%体積粒径(Dv75)、累積75%個数粒径(Dp75)等は、コールターカウンターTAII型或いはコールターマルチサイザー(コールター社製)で測定することが出来る。
【0140】
さらに、本発明のトナーとしては、0.7×(Dp50)以下の粒径のトナー粒子が10個数%であるが、この微粉トナー量は大塚電子社製〜電気泳動光散乱光度計ELS−800を用いて測定することができる。
【0141】
尚、本発明の属する静電潜像を乾式現像で顕像化する技術分野においては、少なくとも着色剤と樹脂よりなる着色粒子(トナー粒子の原型)に、外添剤等を加えたものをトナーとして用いている。しかし、特に問題がない限り着色粒子とトナーとをあまり区別せず、記載しているのが一般的である。本発明におけるその粒径および粒径分布においても、着色粒子とトナー粒子の何れを測定してもその測定値に変化はない。
【0142】
また、外添剤等の径粒はnmオーダーであり(数平均1次粒子)、光散乱電気泳動粒径測定装置「ELS−800」(大塚電子工業株式会社製)で測定することが出来る。
【0143】
以下、前記した粒度分布を示す本発明に用いられるトナーの構成及び製造方法について詳細に説明する。
【0144】
〈トナー〉
本発明では、トナーとして離型剤を含有する樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させて得られた会合型トナーを使用することが好ましい。
【0145】
この理由としては前記のような粒度分布を示すトナーを製造出来ることに加え会合型トナーはトナー粒子間の表面性が均質なものとなっており、転写性を損なうことなく、本発明の効果を発揮することができたものと推定される。
【0146】
上記の「塩析/融着」とは、塩析(粒子の凝集)と融着(粒子間の界面消失)とが同時に起こること、または、塩析と融着とを同時に起こさせる行為をいう。塩析と融着とを同時に行わせるためには、樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度条件下において粒子(樹脂粒子、着色剤粒子)を凝集させる必要がある。
【0147】
〈離型剤〉
本発明のトナーを構成する離型剤としては、特に限定されるものではないが、下記一般式(1)で示される結晶性のエステル化合物(以下、「特定のエステル化合物」という。)からなるものであることが好ましい。
【0148】
一般式(1):R1−(OCO−R2)n
(式中、R1およびR2は、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素数が1〜40の炭化水素基を示し、nは1〜4の整数である。)
〈特定のエステル化合物〉
特定のエステル化合物を示す一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれ、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。
【0149】
炭化水素基R1の炭素数は1〜40とされ、好ましくは1〜20、更に好ましくは2〜5とされる。
【0150】
炭化水素基R2の炭素数は1〜40とされ、好ましくは16〜30、更に好ましくは18〜26とされる。
【0151】
また、一般式(1)において、nは1〜4の整数とされ、好ましくは2〜4、さらに好ましくは3〜4、特に好ましくは4とされる。
【0152】
特定のエステル化合物は、アルコールとカルボン酸との脱水縮合反応により好適に合成することができる。
【0153】
最も好適な特定のエステル化合物としては、ペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステルを挙げることができる。
【0154】
特定のエステル化合物の具体例としては、下記式1)〜26)に示す化合物を例示することができる。
【0155】
【化1】
【0156】
【化2】
【0157】
〈離型剤の含有割合〉
本発明のトナーにおける離型剤の含有割合としては、通常1〜30質量%とされ、好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは3〜15質量%とされる。
【0158】
〈離型剤を含有する樹脂粒子〉
本発明において「離型剤を含有する樹脂粒子」は、結着樹脂を得るための単量体中に離型剤を溶解させ、得られる単量体溶液を水系媒体中に分散させ、この系を重合処理することにより、ラテックス粒子として得ることができる。
【0159】
かかる樹脂粒子の重量平均粒径は50〜2000nmであることが好ましい。
結着樹脂中に離型剤を含有する樹脂粒子を得るための重合法としては、乳化重合法、懸濁重合法、シード重合法などの造粒重合法を挙げることができる。
【0160】
離型剤を含有する樹脂粒子を得るための好ましい重合法としては、臨界ミセル濃度以下の濃度の界面活性剤を溶解してなる水系媒体中に、単量体中に離型剤を溶解してなる単量体溶液を、機械的エネルギーを利用して油滴分散させて分散液を調製し、得られた分散液に水溶性重合開始剤を添加して、ラジカル重合させる方法(以下、この明細書において「ミニエマルジョン法」という。)を挙げることができる。なお、水溶性重合開始剤を添加することに代えて、または、当該水溶性重合開始剤を添加するとともに、油溶性の重合開始剤を前記単量体溶液中に添加してもよい。
【0161】
ここに、機械的エネルギーによる油滴分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではないが、例えば、高速回転するローターを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム−テクニック(株)社製)、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリンおよび圧力式ホモジナイザーなどを挙げることができる。また、分散粒子径としては、10〜1000nmとされ、好ましくは30〜300nmとされる。
【0162】
〈結着樹脂〉
本発明のトナーを構成する結着樹脂は、GPCにより測定される分子量分布で100,000〜1,000,000の領域にピークまたは肩を有する高分子量成分と、1,000〜20,000の領域にピークまたは肩を有する低分子量成分とを含有する樹脂であることが好ましい。
【0163】
ここに、GPCによる樹脂の分子量の測定方法としては、測定試料0.5〜5.0mg(具体的には1mg)に対してTHFを1ml加え、マグネチックスターラーなどを用いて室温にて撹拌を行って十分に溶解させる。次いで、ポアサイズ0.45〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後にGPCへ注入する。
【0164】
GPCの測定条件としては、40℃にてカラムを安定化させ、THFを毎分1mlの流速で流し、1mg/mlの濃度の試料を約100μl注入して測定する。カラムは、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807の組合せや、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H,G3000H,G4000H,G5000H,G6000H,G7000H,TSK guard columnの組合せなどを挙げることができる。また、検出器としては、屈折率検出器(IR検出器)またはUV検出器を用いるとよい。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いるとよい。
【0165】
以下、樹脂粒子の構成材料および調製方法(重合方法)について説明する。
〔単量体〕
樹脂粒子を得るために使用する重合性単量体としては、ラジカル重合性単量体を必須の構成成分とし、必要に応じて架橋剤を使用することができる。また、以下の酸性基を有するラジカル重合性単量体または塩基性基を有するラジカル重合性単量体を少なくとも1種類含有させることが好ましい。
(1)ラジカル重合性単量体:
ラジカル重合性単量体としては、特に限定されるものではなく従来公知のラジカル重合性単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
【0166】
具体的には、芳香族系ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等を用いることができる。
【0167】
芳香族系ビニル単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体およびその誘導体が挙げられる。
【0168】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0169】
ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
【0170】
ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0171】
モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
【0172】
ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0173】
ハロゲン化オレフィン系単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等が挙げられる。
【0174】
(2)架橋剤:
架橋剤としては、トナーの特性を改良するためにラジカル重合性架橋剤を添加しても良い。ラジカル重合性架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
【0175】
(3)酸性基または塩基性基を有するラジカル重合性単量体:
酸性基を有するラジカル重合性単量体または塩基性基を有するラジカル重合性単量体としては、例えば、カルボキシル基含有単量体、スルホン酸基含有単量体、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等のアミン系の化合物を用いることができる。
【0176】
酸性基を有するラジカル重合性単量体としては、カルボン酸基含有単量体として、アクリル酸、メタクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステル等が挙げられる。
【0177】
スルホン酸基含有単量体としては、スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸、アリルスルホコハク酸オクチル等が挙げられる。
【0178】
これらは、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩あるいはカルシウムなどのアルカリ土類金属塩の構造であってもよい。
【0179】
塩基性基を有するラジカル重合性単量体としては、アミン系の化合物が挙げられ、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、および上記4化合物の4級アンモニウム塩、3−ジメチルアミノフェニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩、アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、ピペリジルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド;ビニルピリジン、ビニルピロリドン;ビニルN−メチルピリジニウムクロリド、ビニルN−エチルピリジニウムクロリド、N,N−ジアリルメチルアンモニウムクロリド、N,N−ジアリルエチルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。
【0180】
本発明に用いられるラジカル重合性単量体としては、酸性基を有するラジカル重合性単量体または塩基性基を有するラジカル重合性単量体が単量体全体の0.1〜15質量%使用することが好ましく、ラジカル重合性架橋剤はその特性にもよるが、全ラジカル重合性単量体に対して0.1〜10質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0181】
〔連鎖移動剤〕
樹脂粒子の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることが可能である。
【0182】
連鎖移動剤としては、特に限定されるものではなく例えばオクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル等のメルカプトプロピオン酸エステル類、四臭化炭素およびスチレンダイマー等が使用される。
【0183】
〔重合開始剤〕
本発明に用いられるラジカル重合開始剤は水溶性であれば適宜使用が可能である。例えば過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(4,4′−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、パーオキシド化合物等が挙げられる。
【0184】
更に上記ラジカル性重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合わせレドックス系開始剤とする事が可能である。レドックス系開始剤を用いる事で、重合活性が上昇し重合温度の低下が図れ、更に重合時間の短縮が期待できる。
【0185】
重合温度は、重合開始剤の最低ラジカル生成温度以上であればどの温度を選択しても良いが例えば50℃から90℃の範囲が用いられる。但し、常温開始の重合開始剤、例えば過酸化水素−還元剤(アスコルビン酸等)の組み合わせを用いる事で、室温またはそれ以上の温度で重合する事も可能である。
【0186】
〔界面活性剤〕
前述のラジカル重合性単量体を使用して重合を行うためには、界面活性剤を使用して水系媒体中に油滴分散を行う必要がある。この際に使用することのできる界面活性剤としては特に限定されるものでは無いが、下記のイオン性界面活性剤を好適なものの例として挙げることができる。
【0187】
イオン性界面活性剤としては、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
【0188】
また、ノニオン性界面活性剤も使用することができる。具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等を挙げることができる。
【0189】
〈着色剤〉
本発明のトナーを構成する着色剤としては無機顔料、有機顔料、染料を挙げることができる。
【0190】
無機顔料としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な無機顔料を以下に例示する。
【0191】
黒色の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0192】
これらの無機顔料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0193】
磁性トナーとして使用する際には、前述のマグネタイトを添加することができる。この場合には所定の磁気特性を付与する観点から、トナー中に20〜60質量%添加することが好ましい。
【0194】
有機顔料及び染料としても従来公知のものを用いることができる。具体的な有機顔料及び染料を以下に例示する。
【0195】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0196】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156等が挙げられる。
【0197】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0198】
また、染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等を用いる事ができ、またこれらの混合物も用いる事ができる。
【0199】
これらの有機顔料及び染料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0200】
着色剤は表面改質して使用することもできる。その表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等が好ましく用いることができる。
【0201】
〈外添剤〉
本発明のトナーには、流動性、帯電性の改良およびクリーニング性の向上などの目的で、いわゆる外添剤を添加して使用することができる。これら外添剤としては特に限定されるものでは無く、種々の無機微粒子、有機微粒子及び滑剤を使用することができる。
【0202】
無機微粒子としては、従来公知のものを使用することができる。具体的には、シリカ、チタン、アルミナ微粒子等が好ましく用いることができる。これら無機微粒子としては疎水性のものが好ましい。具体的には、シリカ微粒子として、例えば日本アエロジル社製の市販品R805、R976、R974、R972、R812、R809、ヘキスト社製のHVK2150、H200、キャボット社製の市販品TS720、TS530、TS610、H5、MS5等が挙げられる。
【0203】
チタン微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品T−805、T−604、テイカ社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
【0204】
アルミナ微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業社製の市販品TTO−55等が挙げられる。
【0205】
また、有機微粒子としては数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。このものとしては、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体を使用することができる。
【0206】
滑剤には、例えばステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩等の高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。
【0207】
これら外添剤の添加量は、トナーに対して0.1〜5質量%が好ましい。
本発明のトナーは、離型剤を含有する樹脂粒子と、着色剤粒子とを水系媒体中で塩析/融着させて得られる会合型のトナーであることが好ましい。このように、離型剤を含有する樹脂粒子を塩析/融着させることで、離型剤が微細に分散されたトナーを得ることができ、且つ、粒径分布の効果に加えて帯電性の安定化等の効果を発揮することができる。
【0208】
そして、本発明のトナーは、その製造時から表面に凹凸がある形状を有しており、さらに、樹脂粒子と着色剤粒子とを水系媒体中で融着して得られる会合型のトナーであるために、トナー粒子間における形状および表面性の差がきわめて小さく、結果として表面性が均一となりやすい。このためにトナー間での転写性、帯電性に差異を生じにくく、画像を良好に保つことができるものである。
【0209】
〈トナーの製造工程〉
本発明のトナーを製造する方法の一例としては、
(1)単量体に離型剤を溶解して単量体溶液を調製する溶解工程、
(2)得られる単量体溶液を水系媒体中に分散する分散工程、
(3)得られる単量体溶液の水系分散系を重合処理することにより、離型剤を含有する樹脂粒子の分散液(ラテックス)を調製する重合工程、
(4)得られる樹脂粒子と、前記着色剤粒子とを水系媒体中で塩析/融着させて会合粒子(トナー粒子)を得る塩析/融着工程、
(5)得られる会合粒子を水系媒体中より濾別し、当該会合粒子から界面活性剤などを洗浄除去する濾過・洗浄工程、
(6)洗浄処理された会合粒子の乾燥工程から構成され、
(7)乾燥処理された会合粒子に外添剤を添加する外添剤添加工程が含まれていてもよい。
【0210】
〔溶解工程〕
単量体に離型剤を溶解する方法としては特に限定されるものではない。
【0211】
単量体への離型剤の溶解量としては、最終的に得られるトナーにおける離型剤の含有割合が1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは3〜15質量%となる量とされる。
【0212】
なお、この単量体溶液中に、油溶性重合開始剤および他の油溶性の成分を添加することもできる。
【0213】
〔分散工程〕
単量体溶液を水系媒体中に分散させる方法としては、特に限定されるものではないが、機械的エネルギーにより分散させる方法が好ましく、特に、臨界ミセル濃度以下の濃度の界面活性剤を溶解してなる水系媒体中に、機械的エネルギーを利用して単量体溶液を油滴分散させること(ミニエマルジョン法における必須の態様)が好ましい。
【0214】
ここに、機械的エネルギーによる油滴分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではないが、例えば「クレアミックス」、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリンおよび圧力式ホモジナイザーなどを挙げることができる。また、分散粒子径としては、10〜1000nmとされ、好ましくは30〜300nmとされる。
【0215】
〔重合工程〕
重合工程においては、基本的には従来公知の重合法(乳化重合法、懸濁重合法、シード重合法などの造粒重合法)を採用することができる。
【0216】
好ましい重合法の一例としては、ミニエマルジョン法、すなわち、臨界ミセル濃度以下の濃度の界面活性剤を溶解してなる水系媒体中に、機械的エネルギーを利用して単量体溶液を油滴分散させて得られる分散液に水溶性重合開始剤を添加して、ラジカル重合させる方法を挙げることができる。
【0217】
〔塩析/融着工程〕
塩析/融着工程においては、上記の重合工程により得られる樹脂粒子の分散液に着色剤粒子の分散液を添加し、前記樹脂粒子と、前記着色剤粒子とを水系媒体中で塩析/融着させる。
【0218】
また、当該塩析/融着工程においては、樹脂粒子および着色剤粒子とともに、荷電制御剤などの内添剤粒子なども融着させることもできる。
【0219】
塩析/融着工程における「水系媒体」とは、主成分(50質量%以上)が水からなるものをいう。ここに、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶媒を挙げることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶媒であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶媒が特に好ましい。
【0220】
塩析/融着工程に使用される着色剤粒子は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理は、水中で界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われる。
【0221】
着色剤の分散処理に使用する分散機は特に限定されないが、好ましくは「クレアミックス」、超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリンや圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、サンドグラインダー、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。また、使用される界面活性剤としては、前述の界面活性剤と同様のものを挙げることができる。
【0222】
なお、着色剤(粒子)は表面改質されていてもよい。着色剤の表面改質法は、溶媒中に着色剤を分散させ、その分散液中に表面改質剤を添加し、この系を昇温することにより反応させる。反応終了後、着色剤を濾別し、同一の溶媒で洗浄濾過を繰り返した後、乾燥することにより、表面改質剤で処理された着色剤(顔料)が得られる。
【0223】
塩析/融着法は、樹脂粒子と着色剤粒子とが存在している水中に、アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩等からなる塩析剤を臨界凝集濃度以上の凝集剤として添加し、次いで、前記樹脂粒子のガラス転移点以上に加熱することで塩析を進行させると同時に融着を行う工程である。この工程では、水に無限溶解する有機溶媒を添加してもよい。
【0224】
ここで、塩析剤であるアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、アルカリ金属として、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられ、好ましくはカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムが挙げられる。また塩を構成するものとしては、塩素塩、臭素塩、沃素塩、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
【0225】
さらに、前記水に無限溶解する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、アセトン等があげられるが、炭素数が3以下のメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールのアルコールが好ましく、特に、2−プロパノールが好ましい。
【0226】
塩析/融着工程においては、塩析剤を添加した後に放置する時間(加熱を開始するまでの時間)をできるだけ短くすることが好ましい。すなわち、塩析剤を添加した後、樹脂粒子および着色剤粒子の分散液の加熱をできるだけ速やかに開始し、樹脂粒子のガラス転移温度以上とすることが好ましい。
【0227】
この理由としては明確ではないが、塩析した後の放置時間によって、粒子の凝集状態が変動し、粒径分布が不安定になったり、融着させたトナーの表面性が変動したりする問題が発生する。
【0228】
加熱を開始するまでの時間(放置時間)は、通常30分以内とされ、好ましくは10分以内である。
【0229】
塩析剤を添加する温度は特に限定されないが、樹脂粒子のガラス転移温度以下であることが好ましい。
【0230】
また、塩析/融着工程においては、加熱により速やかに昇温させる必要があり、昇温速度としては、1℃/分以上とすることが好ましい。昇温速度の上限は、特に限定されないが、急速な塩析/融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から15℃/分以下とすることが好ましい。
【0231】
さらに、樹脂粒子および着色剤粒子の分散液が前記ガラス転移温度以上の温度に到達した後、当該分散液の温度を一定時間保持することにより、塩析/融着を継続させることが肝要である。これにより、トナー粒子の成長(樹脂粒子および着色剤粒子の凝集)と、融着(粒子間の界面消失)とを効果的に進行させることができ、最終的に得られるトナーの耐久性を向上することができる。
【0232】
また、会合粒子の成長を停止させた後に、加熱による融着を継続させてもよい。
【0233】
〔濾過・洗浄工程〕
この濾過・洗浄工程では、上記の工程で得られたトナー粒子の分散液から当該トナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。
【0234】
ここに、濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法など特に限定されるものではない。
【0235】
〔乾燥工程〕
この工程は、洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理する工程である。
【0236】
この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0237】
乾燥処理されたトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。
【0238】
なお、乾燥処理されたトナー粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
【0239】
〔外添剤の添加工程〕
この工程は、乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程である。
【0240】
外添剤を添加するために使用される装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシエルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を挙げることができる。
【0241】
さらに、本発明のトナーは、0.7×(Dp50)以下の粒径のトナーが10個数%以下である。この範囲に粒径分布を調整するためには、塩析/融着段階での温度制御を狭くすることがよい。具体的にはできるだけすばやく昇温する、すなわち、昇温を速くすることである。この条件としては、前述の条件に示したものであり、昇温までの時間としては30分未満、好ましくは10分未満、さらに、昇温速度としては、1〜15℃/分が好ましい。
【0242】
本発明のトナーは、着色剤、離型剤以外にトナー用材料として種々の機能を付与することのできる材料を加えてもよい。具体的には荷電制御剤等が挙げられる。これらの成分は前述の塩析/融着段階で樹脂粒子と着色剤粒子と同時に添加し、トナー中に包含する方法、樹脂粒子自体に添加する方法等種々の方法で添加することができる。
【0243】
荷電制御剤も同様に種々の公知のもので、且つ水中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体等が挙げられる。
【0244】
〈現像剤〉
本発明のトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよい。
【0245】
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものがあげられ、いずれも使用することができる。
【0246】
又、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
【0247】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0248】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0249】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を記載するが、以下の実施例に限定されるものではない。
【0250】
実施例1
円筒状基体の作製
1.基体加工方法
a.円筒状基体A−1の加工
引き抜き加工で形成された厚さ2.00mmのアルミニウム合金からなる円筒状基体(長さL=344mm、直径φ(外径=100mm)に図8の接触圧力可変手段3−8を使用し、長さD=300mm(0.84×L))のステンレスの保持部材を円筒状基体内径に押圧保持し、外径基準で直径φ=98.40mm、長さd=8mmのインロー加工を行った(インロー加工はエグロ社製、精密CNC両端加工機BSを使用)。
【0251】
その後、上記円筒状基体の両端を前記無摺動式開閉チャックを用いて把持して、インロー加工部の内径基準で基体表面を切削加工した(切削加工機は昌運工作所製SPA−5を使用)。加工後の円筒状基体A−1の円筒度は8μmであった。
【0252】
b.円筒状基体A−2の加工
円筒状基体A−1の加工において、D=214mm(0.60×L)以外は同様にしてインロー加工、及び切削加工を行った。加工後の円筒状基体A−2の円筒度は25μmであった。
【0253】
c.円筒状基体A−3の加工
円筒状基体A−1の加工において、D=143mm(0.40×L)以外は同様にしてインロー加工、及び切削加工を行った。加工後の円筒状基体A−3の円筒度は35μmであった。
【0254】
d.円筒状基体A−4の加工
円筒状基体A−1の加工において、D=332mm(0.93×L)以外は同様にしてインロー加工、及び切削加工を行った。加工後の円筒状基体A−4の円筒度は28μmであった。
【0255】
e.円筒状基体B−1の加工(外部把持(本発明外))
円筒状基体の内部に保持部材を挿入せず、外部より把持手段、即ち、図10(基体外部把持のインロー加工の例)に示す、固定V受け台30にセット後、押えV受け台31で、円筒状基体11外径を固定後、左右の回転駆動旋削刃具32にてインロー加工(例えばエグロ社製、精密CNC両端加工機UB−600を使用)を施した以外は円筒状基体A−1の加工と同様にしてインロー加工、及び切削加工を行った。加工後の円筒状基体B−1の円筒度は45μmであった。
【0256】
2.感光体の作製
下記記載の内「部」とは質量部を示す。
【0257】
感光体1の作製
円筒状基体A−1を用いて下記のように感光体1を作製した。
【0258】
〈中間層〉
円筒状基体A−1を洗浄後、下記中間層組成液を浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚2μmの中間層を形成した。
【0259】
下記中間層分散液を同じ混合溶媒にて二倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュフィルター公称濾過精度:5ミクロン、圧力;5×104Pa)し、中間層組成液を作製した。
【0260】
中間層分散液
ポリアミド樹脂CM8000(東レ社製) 1部
酸化チタンSMT500SAS(テイカ社製;表面処理は、シリカ処理、アルミナ処理、及びメチルハイドロジェンポリシロキサン処理) 3.0部
メタノール 10部
分散機としてサンドミルで分散時間を10時間、バッチ式にて分散して、中間層分散液を作製した。該中間層分散液を同じ混合溶媒にて二倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュフィルター公称濾過精度:5ミクロン、圧力;5×104Pa)し、中間層組成液を作製した。円筒状基体A−1を洗浄後、この中間層組成液を浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚2μmの中間層を形成した。
【0261】
〈電荷発生層〉
電荷発生物質:チタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線回折スペクトル測定で、ブラッグ角2θ(±0.2)の27.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料) 20部
ポリビニルブチラール樹脂(#6000−C:電気化学工業社製) 10部
酢酸t−ブチル 700部
4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン 300部
を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0262】
〈第一電荷輸送層〉
電荷輸送物質(T−1) 200部
ポリカーボネート(PC−1:粘度平均分子量27000) 300部
酸化防止剤(Irganox1010:日本チバガイギー社製) 6部
ジクロロメタン 2000部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で乾燥膜厚15μmの第一電荷輸送層を形成した。
【0263】
〈第二電荷輸送層:表面層〉
電荷輸送物質(T−1) 20部
ポリカーボネート(PC−1:三菱ガス化学社製) 30部
疎水性シリカ(平均一次粒径:40nm、ヘキシルメチルジシラザン、疎水化度:76%) 3.0部
酸化防止剤(LS2626:三共社製) 0.6部
1,3−ジオキソラン 600部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 0.1部
を混合し、超音波を照射できる循環分散装置にて循環分散を行い、表面層塗布液を調製した。この塗布液を前記第一電荷輸送層の上に円型量規制型塗布法により乾燥膜厚5μmになるように第二電荷輸送層を塗布し、110℃で70分間の乾燥を行い、感光体1を作製した。感光体1の円筒度は8μmであった。
【0264】
【化3】
【0265】
感光体2〜4の作製
感光体1の作製において、円筒状基体A−1をA−2〜A−4に代えた以外は感光体1と同様にして感光体2〜4を作製した。これらの感光体の円筒度は、それぞれ26μm、35μm、29μmであった。
【0266】
感光体5の作製(比較例用感光体)
感光体1の作製において、円筒状基体A−1をB−1に代えた以外は感光体1と同様にして感光体5を作製した。感光体5の円筒度は、それぞれ44μmであった。
【0267】
トナー及び現像剤の作製
(ラテックス調製例1)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を付けた5000mlのセパラブルフラスコに予めアニオン系活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム:SDS)7.08gをイオン交換水(2760g)に溶解させた溶液を添加する。窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しつつ、内温を80℃に昇温させた。一方で例示化合物19)72.0gをスチレン115.1g、n−ブチルアクリレート42.0g、メタクリル酸10.9gからなる単量体に加え、80℃に加温し溶解させ、単量体溶液を作製した。
【0268】
ここで循環経路を有する機械式分散機により上記の加熱溶液を混合分散させ、均一な分散粒子径を有する乳化粒子を作製した。ついで、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)0.84gをイオン交換水200gに溶解させた溶液を添加し80℃にて3時間加熱、撹拌することでラテックス粒子を作製した。
【0269】
引き続いて更に重合開始剤(KPS)7.73gをイオン交換水240mlに溶解させた溶液を添加し、15分後、80℃でスチレン383.6g、n−ブチルアクリレート140.0g、メタクリル酸36.4g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル14.0gの混合液を120分かけて滴下した。滴下終了後60分加熱撹拌させた後40℃まで冷却しラテックス粒子を得た。このラテックス粒子をラテックス1とする。
【0270】
(トナー調製例)
着色粒子1Bkの製造
n−ドデシル硫酸ナトリウム9.2gをイオン交換水160mlに撹拌溶解する。この液に、撹拌下、リーガル330R(キャボット社製カーボンブラック)20gを徐々に加え、ついで、クレアミックスを用いて分散した。大塚電子社製の電気泳動光散乱光度計ELS−800を用いて、上記分散液の粒径を測定した結果、重量平均径で112nmであった。この分散液を「着色剤分散液1」とする。
【0271】
前述の「ラテックス1」1250gとイオン交換水2000ml及び「着色剤分散液1」を、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、撹拌装置を付けた5リットルの四つ口フラスコに入れ撹拌する。30℃に調整した後、この溶液に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを10.0に調整した。
【0272】
ついで、塩化マグネシウム6水和物52.6gをイオン交換水72mlに溶解した水溶液を撹拌下、30℃にて5分間で添加した。その後、2分間放置した後に、昇温を開始し、液温度90℃まで5分で昇温する(昇温速度:12℃/分)。その状態で粒径をコールターカウンターTA−IIにて測定し、体積平均粒径が4.3μmになった時点で塩化ナトリウム115gをイオン交換水700mlに溶解した水溶液を添加し粒子成長を停止させ、さらに継続して液温度85℃±2℃にて、8時間加熱撹拌し、塩析/融着させる。
【0273】
その後、6℃/minの条件で30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを2.0に調整し撹拌を停止した。生成した着色粒子を下記条件で濾過/洗浄し、その後、40℃の温風で乾燥し、着色粒子を得た。このものを「着色粒子1Bk」とする。
【0274】
着色粒子2Bk〜11Bkの製造
着色粒子1Bkの製造において、塩析/融着に係わる製造条件を表1のように変更して、着色粒子2Bk〜11Bkを製造した。
【0275】
【表1】
【0276】
ついで上記「着色粒子1Bk」〜「着色粒子11Bk」にそれぞれ疎水性シリカ(数平均一次粒子径:12nm、疎水化度:68)を1質量%及び疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径:20nm、疎水化度:63)1質量%添加し、ヘンシェルミキサーにより混合してトナーを得た。これらを「トナー1Bk」〜「トナー11Bk」とする。これらのトナーの平均粒径、粒度分布等を測定し表2に示す。これらの各トナーを平均粒径45μmのフェライト粒子のコアに絶縁性樹脂を被覆したキャリアと混合して二成分現像剤として使用し、各トナーに対応した現像剤番号を付した。即ちトナー1Bkに対応した現像剤番号としては現像剤1Bkの番号を与え、以下同様とした。
【0277】
尚、平均粒径、粒度分布等の物性に関しては、トナーの原型である着色粒子及びトナー(通常、着色粒子に外添剤等が添加されている)のいずれを測定してもその値に実質的な差異は無い。
【0278】
【表2】
【0279】
中間転写体の作製
カーボンブラックを混入したシリコーンゴムの無端ベルト(体積抵抗率が1×108Ω・cm)を用い、その表面粗さをサンドブラスト加工により、Rz(μm)0.5、1.0、1.8に変化させた6種類の中間転写体を作製した。
【0280】
評価
上記感光体1〜5と現像剤1Bk〜11Bkを表3のように組み合わせ、評価機として、図5に示したクリーニング手段を図1の中間転写体を有するデジタルカラープリンターの感光体のクリーニング手段(含水率1%のステアリン酸亜鉛棒をクリーニングブラシに押圧し、感光体表面にステアリン酸亜鉛を供給できるようにした)として搭載し、該デジタルカラープリンターに感光体、中間転写体及びクリーニングブラシの食い込み量を表3のように組み合わせ、高温高湿(30℃80%RH)下で、画素率8%の文字及びハーフトーンの混在した画像を連続してA4紙2万枚プリントを行い評価した。評価項目、評価基準を下記に示す。又評価結果を表3に示す。
【0281】
評価項目と評価基準
中間転写体のRzは前記に記した方法で評価した。
【0282】
「クリーニング性」
感光体とクリーニングブレードの摩耗によるトナーのすり抜けの発生の有無を評価した。
【0283】
◎:2万枚のプリント終了までトナーのすり抜け発生なし
○:1万枚のプリント終了までトナーのすり抜け発生なし
×:1万枚未満のプリントでトナーのすり抜け発生あり(実用上問題のレベル)
「画像むら」
反射濃度0.3の均一濃度のハーフトーン画像で、濃度むらの発生(主に転写むら)を評価した。
【0284】
◎:2万枚のプリント終了まで、ハーフトーン画像に濃度むらの発生なし
○:2万枚のプリント終了まで、ハーフトーン画像に、濃度差0.03未満の薄い濃度むらが発生
×:2万枚未満のプリントでハーフトーン画像に、濃度差0.03以上のはっきりした濃度むらが発生(実用上問題のレベル)
「中抜け」
文字を拡大観察し、中抜けの発生の有無を目視にて観察した。
【0285】
評価基準は
◎:2万枚のプリント終了まで、顕著な中抜けの発生なし
○:1万枚のプリント終了まで、顕著な中抜けの発生なし
×:1万枚未満のプリントで、顕著な中抜け発生あり(実用上問題のレベル)
「文字チリ」
文字を構成するドット画像に代わり、画像全面に10%網点画像を形成し、ルーペにてドット周辺のトナー散りを観察した。
【0286】
ランク◎:10万枚のプリント終了まで、トナー散りが少ない。
ランク○:5万枚のプリント終了まで、トナー散りが少ない。
【0287】
ランク×:5万枚未満のプリントでトナー散りが増加している。(実用上問題のレベル)
「画像評価」
2万枚のプリント終了後、文字画像、ハーフトーン画像を目視にて観察した。
【0288】
目視判定結果を表3に示す
その他の評価条件
画像形成のライン速度L/S:180mm/s
感光体の帯電条件:非画像部の電位は、電位センサで検知し、フィードバック制御できるようにし、その制御可能範囲は−500V〜−900Vであり、全露光した場合の感光体の表面電位は−50〜0Vの範囲にした。
【0289】
像露光光:半導体レーザ(波長:780nm)
現像条件:現像方式は反転現像で行った。
【0290】
中間転写体:前記したシームレスの無端ベルト状中間転写体を用いた。
一次転写条件
一次転写ローラ(図1の5Y、5M、5C、5K(各6.05mmφ)):芯金に弾性ゴムを付した構成:表面比抵抗1×106Ω、転写面圧は表3のように変更した。又、転写電圧も印加した。
【0291】
二次転写条件
中間転写体としての無端ベルト状中間転写体70とそれを挟み込むようにバックアップローラ74と二次転写ローラ5Aが配置され、バックアップローラ74の抵抗値が1×106Ωであり、二次転写手段としての二次転写ローラの抵抗値が1×106Ωであり定電流制御(約80μA)をするようにしてある。
【0292】
定着はローラ内部にヒータを配置した定着ローラによる熱定着方式である。
中間転写体と感光体との最初の接触点から次色感光体との最初の接触点までの中間転写体上での距離Yは95mmにした。
【0293】
駆動ローラ71、ガイドローラ72,73及び二次転写のためのバックアップローラ74の外周長さ(円周長さ)を31.67mm(=95mm/3)にし、テンションローラ76の外周長さを23.75mm(=95mm/4)にした。
【0294】
そして、一次転写ローラの外周長さを19mm(=95mm/5)にした。
感光体のクリーニング手段
クリーニングブレード:反発弾性55%のゴム弾性体
クリーニングブラシ:導電性アクリル樹脂、ブラシ毛密度(3×103/cm2)、食い込み量0.6、1.0、1.3mmの3種類を用いた。
【0295】
二次転写ローラ(図1の5A):芯金に弾性ゴムを付した構成:転写電圧印加
中間転写体のクリーニング手段
クリーニングブレード:反発弾性40%のゴム弾性体
クリーニングローラあり
【0296】
【表3】
【0297】
表3から明らかなように、中間転写体を用いた画像形成装置で、本発明の円筒度5〜40μmの円筒状電子写真感光体上の潜像を下記の▲1▼〜▲3▼の全ての特性を有するトナーを用いた現像剤で現像した組み合わせNo.1〜3、5、6、8、9及びNo.11〜14はクリーニング性、画像むら、中抜け、文字チリ等の特性が改良され、文字画像、ハーフトーン画像共良好な鮮鋭性を示している。これに対し、この条件を満たさない組み合わせNo.4(トナーが条件外)はクリーニング性、中抜け、文字チリが劣り、No.7、10(トナーが条件外)では、クリーニング性、中抜けが劣化し、その結果、文字画像やハーフトーン画像の鮮鋭性が低下している。又、トナーは下記の▲1▼〜▲3▼の全ての特性を満たしていても、円筒度が44μmの感光体5を用いた組み合わせNo.15もクリーニング性、画像むら、中抜けが劣化しており、その結果、鮮鋭性が劣化している。
▲1▼トナーの50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15である。
▲2▼トナーの体積粒径の大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と、前記トナーの前記個数粒径の大きい方からの累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20である。
▲3▼全トナー中において、粒径が0.7×(Dp50)以下のトナーの個数が10個数%以下である。
【0298】
実施例2
実施例1で用いたトナーの作製において、着色分散液中のリーガル330R(キャボット社製カーボンブラック)の代わりにC.I.ピグメントイエロー185(Yトナー)、C.I.ピグメントレッド122(Mトナー)、C.I.ピグメントブルー15:3(Cトナー)を用いた他は同様にして、トナー1Bk、トナー4Bkと同じような形状係数等を有する表4のトナー1Y、1M、1C、4Y、4M、4C6種を作製した。
【0299】
【表4】
【0300】
〔現像剤の製造〕
上記トナー1Y、1M、1C、4Y、4M、4Cの各々10質量部と、平均粒径45μmのフェライト粒子のコアに絶縁性樹脂を被覆したキャリア100質量部とを混合することにより、評価用の現像剤1Y、1M、1C、4Y、4M、4Cを製造した。
【0301】
これらの現像剤1Bk、1Y、1M、1Cの現像剤1群、及び現像剤4Bk、4Y、4M、4Cの現像剤4群を用い、実施例1と同様の画像評価を行った。但し感光体は2(円筒度26μm)、一次転写ローラの転写面圧は0.15g/cm2、中間転写体のRzは1.0、クリーニングの食い込み量は1.0mmに統一し、その他の条件は実施例1と同じにして、中間転写方式のカラー画像を1万枚プリントした。その結果現像剤1群を用いたカラー画像は中抜けや文字チリの画像欠陥の発生もなく、鮮鋭性が良好な画像が得られたが、現像剤4群を用いたカラー画像は、1千枚を過ぎた頃から中抜けが目立ち始め、3千枚を過ぎた頃から文字チリの発生が増加し、鮮鋭性の劣化が進行した。
【0302】
【発明の効果】
本発明を用いることにより、中間転写体を用いた電子写真方式のトナー転写特性の改善を達成でき、トナー転写の低下から発生する中抜けや文字チリ等の画像欠陥を防止でき、且つクリーニング性の良好な電子写真方式の画像形成方法及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【図2】中間転写体のクリーニング手段の一例である。
【図3】感光体と無端ベルト状中間転写体と一次転写ローラとの位置関係を示す配置図である。
【図4】バックアップローラと無端ベルト状中間転写体と二次転写ローラとの位置関係を示す配置図である。
【図5】本発明の感光体に設置されるクリーニング手段の構成図である。
【図6】本発明による電子写真感光体の概略正面図である。
【図7】本発明にかかる円筒状基体の製造工程について説明するために(a)、(b)の工程順に示したものである。
【図8】(a)は保持部材の斜図である。(b)は保持部材の圧力可変手段を示す断面図である。
【図9】円筒状基体の外側表面に感光層を塗布形成した図である。
【図10】基体外部把持のインロー加工の例である。
【符号の説明】
1Y,1M,1C,1K 感光体
2Y,2M,2C,2K 帯電手段
3Y,3M,3C,3K 露光手段
4Y,4M,4C,4K 現像手段
5A 二次転写ローラ(二次転写手段)
5Y,5M,5C,5K 一次転写ローラ(一次転写手段)
6A,6Y,6M,6C,6K クリーニング手段
7 無端ベルト状中間転写体ユニット
10Y,10M,10C,10K 画像形成部
61 ブレード
62 ブラケット
63 支軸
70 無端ベルト状中間転写体
【発明の属する技術分野】
本発明は複写機、プリンター、ファクシミリ等に用いられる画像形成方法、画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真感光体として有機感光体(以下、単に感光体とも云う)を用い、該有機感光体上のトナー像を最終画像の記録紙に転写する方式としては、有機感光体上に形成されたトナー像を記録紙に直接転写する方式が知られている。一方、中間転写体を用いた画像形成方式が知られており、この方式は有機感光体から記録紙にトナー像を転写する工程内に、もう一つの転写工程を入れ、有機感光体から中間転写体に一次転写した後、中間転写体の一次転写像を記録紙に二次転写することで最終画像を得る。このうち、上記中間転写体を用いた画像形成方式は、色分解された原稿画像をブラック、シアン、マゼンタ、イエロー等のトナーによる減色混合を用いて再現する、いわゆるフルカラー画像形成装置における各色トナー像の重ね転写方式として採用されることが多い。
【0003】
しかし、上記中間転写方式においては、中間転写体に関係した新たな課題を発生している。その1つが感光体と中間転写体との接触界面の押圧力の不均一さからくる中間転写体上へのトナーの転写のばらつきや部分的な転写不良による転写むらや文字画像の一部が欠落した、いわゆる「中抜け」等の画像欠陥の発生と、その結果としての鮮鋭性の劣化が挙げられる。
【0004】
一方、中間転写体から記録紙への二次転写性を改善する為には、中間転写体に固形の潤滑剤を供給し、中間転写体の表面エネルギーを低下させる技術が公開されている。例えば特開平6−337598号公報、特開平6−332324号公報、特開平7−271142号公報等に記載されるものがある。しかしながら、このような中間転写体の表面の表面エネルギーの低下は、反面感光体から中間転写体へのトナーの転写率を低下させる原因ともなり、2回の転写工程を有する中間転写体を用いた画像形成方式のトータルの転写性の改良には、尚不十分であり、特に高温高湿や長期のコピー画像の形成等に対しては尚一層の改善が必要であることが見出された。
【0005】
即ち、中間転写体を用いた画像形成方式では有機感光体及び中間転写体の両方の表面特性を改良し、一次転写と二次転写の両方トータルの転写性を改善する事が必要であることが見出された。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は中間転写方式の一次転写及び二次転写で発生しやすい転写むらや中抜け、文字チリ等の画質劣化を防止し、鮮鋭性が改善された電子写真画像を形成する画像形成方法及び画像形成装置を提供することであり、又カラートナーを中間転写体上に色重ねする際に発生しやすい転写むらや中抜け、文字チリ等の画質劣化を防止し、良好なカラー画像を形成する画像形成方法及び画像形成装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題について鋭意検討した結果、本発明の目的は、中間転写方式で発生しやすい転写むら等の画像劣化は、潜像担持体として用いる円筒状有機感光体の寸法精度を改善し、一次転写時の感光体と中間転写体間の面圧のばらつきを防止し、その結果転写率を一定に維持すると共に、トナーの粒度分布を小粒径成分の存在量を低減し、トナーの粒度分布の中央値である50%粒径の体積平均粒径と個数平均粒径の比の広がりと、大きな粒径側より累計した75%頻度の体積粒径と個数粒径の比の広がりを特定の値に構成することにより達成されることを見いだし、本発明を完成した。即ち、上記目的は以下の構成を取ることにより達成される。
【0008】
1.潜像担持体上に潜像を形成する工程、トナーを含む現像剤で当該潜像を現像する工程、前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写する工程、前記中間転写体に転写形成されたトナー像を記録紙に転写する工程を含む画像形成方法において、該潜像担持体が円筒度5〜40μmの有機感光体であり、該トナーが少なくとも樹脂と着色剤とからなる着色粒子を含有するトナーであり、該トナーの50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15であり、且つ該トナーの大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20であり、さらに0.7×(Dp50)以下の粒径のトナーが10個数%以下であることを特徴とする画像形成方法。
【0009】
2.潜像担持体上にイエロー画像に対応した潜像を形成する工程、イエロートナーを含む現像剤で当該潜像を現像する工程、前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写する工程、潜像担持体上にマゼンタ画像に対応した潜像を形成する工程、マゼンタトナーを含む現像剤で当該潜像を現像する工程、前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写する工程、潜像担持体上にシアン画像に対応した潜像を形成する工程、シアントナーを含む現像剤で当該潜像を現像する工程、前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写する工程、潜像担持体上にブラック画像に対応した潜像を形成する工程、ブラックトナーを含む現像剤で当該潜像を現像する工程、前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写する工程、前記中間転写体に転写形成された各色のトナー像を記録紙に転写する工程を含む画像形成方法において、該潜像担持体が円筒度5〜40μmの有機感光体であり、該各トナーが少なくとも樹脂と着色剤とからなる着色粒子を含有するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックトナーであり、該各トナーの50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15であり、且つ該各トナーの大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20であり、さらに0.7×(Dp50)以下の粒径のトナーが10個数%以下であることを特徴とする画像形成方法。
【0010】
3.前記有機感光体が表面層に数平均一次粒子径1nm以上、100nm未満の無機粒子を含有し、該有機感光体の表面に、表面エネルギー低下剤を供給しながら画像形成を行うことを特徴とする前記1又は2に記載の画像形成方法。
【0011】
4.前記表面エネルギー低下剤が脂肪酸金属塩であることを特徴とする前記3に記載の画像形成方法。
【0012】
5.前記脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛であることを特徴とする前記4に記載の画像形成方法。
【0013】
6.前記無機粒子が疎水性シリカであり、該疎水性シリカの疎水化度が50%以上であることを特徴とする前記3〜5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0014】
7.前記1〜6のいずれか1項に記載の画像形成方法を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【0015】
即ち、本発明の上記構造をとることにより、転写不良による転写むらや中抜け、文字チリの発生を防止し、中間転写体を用いた画像形成方法で良好な電子写真画像を形成することができる。
【0016】
以下、本発明について、詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【0017】
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y,10M,10C,10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21及び定着手段(定着工程でもある)24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0018】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程でもある)2Y、露光手段(露光工程でもある)3Y、現像手段(現像工程でもある)4Y、一次転写手段(一次転写工程でもある)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段(クリーニング工程でもある)6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Kは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1K、帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K、一次転写手段としての一次転写ローラ5K、クリーニング手段6Kを有する。
【0019】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0020】
画像形成部10Y,10M,10C,10Kより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y,5M,5C,5Kにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された記録媒体(記録紙ともいう)としての用紙Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A,22B,22C,22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段(二次転写工程でもある)としての二次転写ローラ5Aに搬送され、用紙P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された用紙Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0021】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5Aにより用紙Pにカラー画像を転写した後、用紙Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
【0022】
画像形成処理中、一次転写ローラ5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の一次転写ローラ5Y,5M,5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y,1M,1Cに圧接する。
【0023】
二次転写ローラ5Aは、ここを用紙Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に圧接する。
【0024】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L,82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0025】
筐体8は、画像形成部10Y,10M,10C,10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0026】
画像形成部10Y,10M,10C,10Kは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y,1M,1C,1Kの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71,72,73,74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y,5M,5C,5K、及びクリーニング手段6Aとから成る。
【0027】
図2は中間転写体のクリーニング手段の一例である。
中間転写体のクリーニング手段6Aは図2で示されるように支軸63の周りに回転可能に制御されるブラケット62に取り付けられたブレード61で構成され、バネ荷重或いは重り荷重を変えることにより、ローラ71へのブレード押圧力を調整することが出来るようにしてある。
【0028】
筐体8の引き出し操作により、画像形成部10Y,10M,10C,10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とは、一体となって、本体Aから引き出される。
【0029】
筐体8の図示左側の支持レール82Lは、無端ベルト状中間転写体70の左方で、定着手段24の上方空間部に配置されている。筐体8の図示右側の支持レール82Rは、最下部の現像手段4Kの下方付近に配置されている。支持レール82Rは、現像手段4Y,4M,4C,4Kを筐体8に着脱する動作に支障を来さない位置に配置されている。
【0030】
筐体8の感光体1Y,1M,1C,1Kの図示右方は、現像手段4Y,4M,4C,4Kにより囲まれ、図示下方は、帯電手段2Y,2M,2C,2K、及びクリーニング手段6Y,6M,6C,6K等により囲まれ、図示左方は、無端ベルト状中間転写体70により囲まれている。
【0031】
その中で感光体、クリーニング手段及び帯電手段等は一つの感光体ユニットを形成し、現像手段及びトナー補給装置等は一つの現像ユニットを形成している。
【0032】
図3は感光体と無端ベルト状中間転写体と一次転写ローラとの位置関係を示す配置図である。一次転写ローラ5Y,5M,5C,5Kを中間転写体としての無端ベルト状中間転写体70の背面から各感光体1Y,1M,1C,1Kへ押圧するが、図3の配置図にも示すように、押圧しない時の中間転写体としての無端ベルト状中間転写体70と各感光体1Y,1M,1C,1Kとの接触点よりも感光体回転方向下流側に一次転写ローラ5Y,5M,5C,5Kを配置し各感光体1Y,1M,1C,1Kへ押圧する。このとき中間転写体としての無端ベルト状中間転写体70は各感光体1Y,1M,1C,1Kの外周に沿うように曲げられ、感光体と無端ベルト状中間転写体70の接触領域の最も下流側に一次転写ローラ5Y,5M,5C,5Kが配置される構成となる。
【0033】
図4はバックアップローラと無端ベルト状中間転写体と二次転写ローラとの位置関係を示す配置図である。二次転写ローラ5Aは図4の配置図にも示すように、該二次転写ローラ5Aで押圧しない時の中間転写体としての無端ベルト状中間転写体70とバックアップローラ74との接触中央部よりもバックアップローラ74の回転方向上流側に配置されていることが望ましい。
【0034】
中間転写体は、ポリイミド、ポリカーボネート、PVdF等の高分子フィルムや、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の合成ゴムにカーボンブラック等の導電性フィラーを添加して導電化したもの等が用いられ、ドラム状、ベルト状どちらでもよいが、装置設計の自由度の観点からベルト状が好ましい。
【0035】
本発明は、又中間転写体の十点表面粗さRzを0.4〜2.0μmにすることが好ましい。中間転写体の表面粗さRzをこの範囲にすることで、感光体と中間転写体との界面の面圧が均一になりやすく、転写むらや中抜け、文字チリ等の画像欠陥が発生しにくい。又、中間転写体の表面粗さRzをこの範囲にすることで、中間転写体上のトナー付着力を低下させ、中間転写体から記録紙へのトナーの二次転写の転写率を向上させることが容易になる。中間転写体の表面粗さRzが0.4未満では、中間転写体から記録紙へのトナーの二次転写率が低下しやすく、反面中間転写体の表面粗さRzが2.0μmより大きいと、中間転写体の表面の荒れが大きくなりすぎ、記録紙上の画像に中抜け等の画像欠陥を発生しやすい。
【0036】
十点平均表面粗さRz
本発明の中間転写体の表面粗さRzは基準長2.5mmの距離間で上位から5つの山頂の平均高さと、下位から5つの谷底の平均低さとの差である。
【0037】
測定機は表面粗さ計(小坂研究所社製 Surfcorder SE−30H)で測定した。但し、誤差範囲内で同一の結果を生じる測定器であれば、他の測定器を用いても良い。
【0038】
表面粗さのRzの測定条件
測定速度(Drive speed:0.1mm/秒)
測定針直径(Stylus:2μm)
本発明の中間転写体のRzは0.4〜2.0μmであるが、好ましくは0.5〜1.8μmである。
【0039】
中間転写体の表面を荒らす方法としては、約0.2〜10μmの微粒子や導電性フィラーを高分子フィルムや、合成ゴムに添加して粗面化する方法、微細な粒子を支持体表面に衝突させることによる、サンドブラスト加工の方法等がある。しかし、中間転写体の表面を荒らす方法としてはこれらに限定されるものではない。
【0040】
有機感光体から中間転写体へのトナーの一次転写時の中間転写体の面圧(有機感光体への面圧)は、0.1〜0.5g/cm2が好ましい。0.1未満ではトナーの転写性が不十分となりやすく、0.5を超えると、感光体や中間転写体の表面を傷つけやすく、このことが原因となって、転写むらや中抜け等の画像欠陥を発生しやすい。
【0041】
本発明の画像形成装置は、剤付与手段を有し、該剤付与手段を介して有機感光体の表面に表面エネルギー低下剤を供給し、電子写真画像を形成することが好ましい。剤付与手段は有機感光体周辺の適当な位置に設置することができるが、設置空間を有効利用するには、図1記載の帯電手段、現像手段、クリーニング手段の一部を利用して、設置しても良い。以下、クリーニング手段に剤付与手段を併用した例を挙げる。
【0042】
図5は本発明の感光体に設置されるクリーニング手段の構成図である。
該クリーニング手段は図1の6Y,6M,6C,6K等のクリーニング手段として用いられる。図5のクリーニングブレード66Aが支持部材66Bに取り付けられている。該クリーニングブレードの材質としてはゴム弾性体が用いられ、その材料としてはウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、クロロピレンゴム、ブタジエンゴム等が知られているが、これらの内、ウレタンゴムは他のゴムに比して摩耗特性が優れている点で特に好ましい。
【0043】
本発明に用いられるクリーニングブレードの反発弾性は40〜75の範囲が好ましい。反発弾性が75を超えると本発明の感光体表面にクラックを発生させやすい。一方、40未満だとブレードが損傷しやすくクリーニング性能が低下する。ここで反発弾性とは衝突、或いは落下してきた物体を跳ね返す反発係数を示す指標であり、具体的にはJISK6301の加硫ゴム物理試験方法に基づき測定する。反発弾性の数値は%を示す。
【0044】
一方、支持部材66Bは板状の金属部材やプラスチック部材で構成される。金属部材としてはステンレス鋼板、アルミ板、或いは制震鋼板等が好ましい。
【0045】
本発明において、感光体表面に圧接するクリーニングブレードの先端部は、感光体の回転方向と反対方向(カウンター方向)に向けて負荷をかけた状態で圧接することが好ましい。図5に示すようにクリーニングブレードの先端部は感光体と圧接するときに、圧接面を形成することが好ましい。
【0046】
クリーニングブレードの感光体への当接荷重P、当接角θの好ましい値としては、P=5〜40N/m、θ=5〜35°である。
【0047】
当接荷重Pはクリーニングブレード66Aを感光体ドラム1に当接させたときの圧接力P′の法線方向ベクトル値である。
【0048】
又当接角θは感光体の当接点Aにおける接線Xと変形前のブレード(図面では点線で示した)とのなす角を表す。66Eは支持部材を回転可能にする回転軸であり、66Gは荷重バネを示す。
【0049】
又、前記クリーニングブレードの自由長Lは図5に示すように支持部材66Bの端部Bの位置から変形前のブレードの先端点の長さを表す。該自由長の好ましい値としてはL=6〜15mm、である。クリーニングブレードの厚さtは0.5〜10mmが好ましい。ここで、本発明のクリーニングブレードの厚さとは図5に示すように支持部材66Bの接着面に対して垂直な方向を示す。
【0050】
図5のクリーニング手段には剤付与手段を兼ねたブラシロール66Cが用いられている。該ブラシロールは感光体1に付着したトナーの除去、クリーニングブレード66Aで除去されたトナーの回収機能と共に、表面エネルギー低下剤を感光体に供給する剤付与手段としての機能を有する。即ち該ブラシロールは感光体1と接触し、その接触部においては感光体と進行方向が同方向に回転し、感光体上のトナーや紙粉を除去すると共に、クリーニングブレード66Aで除去されたトナーを搬送し、搬送スクリュー66Jに回収する。この間の経路はブラシロール66Cに除去手段としてのフリッカ66Iを当接させることにより、感光体1からブラシロール66Cに転移したトナー等の除去物を除去することが好ましい。更にこのフリッカに付着したトナーをスクレーパ66Dで除去し、トナーを搬送スクリュー66Jに回収する。回収されたトナーは廃棄物として外部に取り出されるか、或いはトナーリサイクル用のリサイクルパイプ(図示せず)を経由して現像器に搬送され再利用される。フリッカ66Iの材料としてはステンレス、アルミニウム等の金属管が好ましく用いられる。一方、スクレーパ66Dとしては、リン青銅板、ポリエチレンテレフタレート板、ポリカーボネート板等の弾性板が用いられ、先端がフリッカの回転方向に対し鋭角を形成するカウンター方式で当接させるのが好ましい。
【0051】
又、表面エネルギー低下剤(ステアリン酸亜鉛等の固形素材)66Kはブラシロールにバネ荷重66Sで押圧されて取り付けられており、ブラシは回転しながら、該表面エネルギー低下剤を擦過して、感光体の表面に表面エネルギー低下剤を供給する。
【0052】
ブラシロール66Cとしては導電性又は半導電性体のブラシロールが用いられる。
【0053】
本発明で用いられるブラシロールのブラシ構成素材は、任意のものを用いることができるが、疎水性で、かつ誘電率が高い繊維形成性高分子重合体を用いるのが好ましい。このような高分子重合体としては、例えばレーヨン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエステル、メタクリル酸樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリビニルアセタール(例えばポリビニルブチラール)等が挙げられる。これらのバインダ樹脂は単独であるいは2種以上の混合物として用いることができる。特に、好ましくはレーヨン、ナイロン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリプロピレンである。
【0054】
また、前記ブラシは、導電性又は反導電性のものが用いられ、構成素材にカーボン等の低抵抗物質を含有させ、任意の比抵抗に調整したものが使用できる。
【0055】
ブラシロールのブラシ毛の比抵抗は、常温常湿(温度26℃、相対湿度50%)で、長さ10cmの1本のブラシ毛の両端に500Vの電圧を印加した状態で測定して、101Ωcm〜106Ωcmの範囲内のものが好ましい。
【0056】
即ち、ブラシロールはステンレス等の芯材に101Ωcm〜106Ωcmの比抵抗を持つ導電性又は半導電性のブラシ毛を用いることが好ましい。101Ωcmよりも比抵抗が低いと、放電によるバンディング等が発生しやすくなる。また、106Ωcmよりも高いと、感光体との電位差が低くなって、クリーニング不良が発生しやすくなる。
【0057】
ブラシロールに用いるブラシ毛1本の太さは、5〜20デニールが好ましい。5デニールに満たないと、十分な擦過力が無いため表面付着物を除去できない。また、20デニールより大きいと、ブラシが剛直になるため感光体の表面を傷つける上に摩耗を進行させ、感光体の寿命を低下させる。
【0058】
ここでいう「デニール」とは、前記ブラシを構成するブラシ毛(繊維)の長さ9000mの質量をg(グラム)単位で測定した数値である。
【0059】
前記ブラシのブラシ毛密度は、4.5×102/cm2〜2.0×104/cm2(1平方センチあたりのブラシ毛数)である。4.5×102/cm2に満たないと、剛直度が低く擦過力が弱い上に、擦過にムラができ、付着物を均一に除去することができない。2.0×104/cm2より大きいと、剛直になって擦過力が強くなるために感光体を摩耗させ、感度低下によるカブリや傷による黒スジ等の不良画像が発生する。
【0060】
本発明で用いられるブラシロールの感光体に対する食い込み量は0.4〜1.5mmに設定されるのが好ましい。この食い込み量は、感光体ドラムとブラシロールの相対運動によって発生するブラシにかかる負荷を意味する。この負荷は、感光体ドラムから見れば、ブラシから受ける擦過力に相当し、その範囲を規定することは、感光体が適度な力で擦過されることが必要であることを意味する。
【0061】
この食い込み量とはブラシを感光体に当接したとき、ブラシ毛が感光体表面で曲がらずに、直線的に内部に進入したと仮定した時の内部への食い込み長さを云う。
【0062】
表面エネルギー低下剤が供給された感光体ではブラシによる感光体表面の擦過力が小さいため、食い込み量が、0.4mmより小さいと、トナーや紙粉などの感光体表面へのフィルミングを抑制することができず、画像上でむらなどの不良が発生する。一方、1.5mmより大きいと、ブラシによる感光体表面の擦過力が大きすぎるために、感光体の摩耗量が大きくなり、感度低下によるカブリが発生したり、感光体表面に傷が発生し、画像上にスジ故障が発生したりして問題である。
【0063】
本発明のブラシロールに用いられるロール部の芯材としては、主としてステンレス、アルミニウム等の金属、紙、プラスチック等が用いられるが、これらにより限定されるものではない。
【0064】
本発明で用いられるブラシロールは円柱状の芯材の表面に接着層を介してブラシを設置した構成であることが好ましい。
【0065】
ブラシロールは、その当接部分が感光体の表面と同方向に移動するように回転するのが好ましい。該当接部分が逆方向に移動すると、感光体の表面に過剰なトナーが存在した場合に、ブラシロールにより除去されたトナーがこぼれて記録紙や装置を汚す場合がある。
【0066】
感光体とブラシロールとが前記のように、同方向に移動する場合に、両者の表面速度比は1対1.1〜1対2の範囲内の値であることが好ましい。ブラシロールの回転速度が感光体よりも遅いとブラシロールのトナー除去能力が低下するためにクリーニング不良が発生しやすく、感光体よりも速いとトナー除去能力が過剰となってブレードバウンディングやめくれが発生しやすくなる。
【0067】
尚、前記表面エネルギー低下剤とは有機感光体の表面に付着し、有機感光体の表面エネルギーを低下させる物質を云い、具体的には表面に付着することにより、有機感光体の表面の接触角(純水に対する接触角)を1°以上増加させる材料を云う。
【0068】
表面接触角測定
感光体表面の接触角は純水に対する接触角を接触角計(CA−DT・A型:協和界面科学社製)を用いて30℃80%RHの環境下で測定する。
【0069】
ところで、表面エネルギー低下剤としては脂肪酸金属塩或いはフッ素系樹脂が挙げられるが、これらの素材は、該素材中の親水性基や不純物成分の為、高温高湿条件で、含水量が多くなりやすい。この含水量が多くなると、これら表面エネルギー低下剤が均一に感光体の表面に延展されず、前記した本発明の効果を十分に発揮させ得ない。本発明に用いられる表面エネルギー低下剤はこの高温高湿条件の30℃80%RHの環境下で、含水量が5.0質量%以下であることが好ましい。
【0070】
又、表面エネルギー低下剤としては、有機感光体の表面の接触角(純水に対する接触角)を1°以上増加させる材料であれば、脂肪酸金属塩或いはフッ素系樹脂等の材料に限定されない。
【0071】
本発明に用いられる表面エネルギー低下剤としては、感光体表面への延展性及び均一な膜形成性能を有する材料として脂肪酸金属塩が最も好ましい。該脂肪酸金属塩は、炭素数10以上の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩が好ましい。たとえばステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸インジウム、ステアリン酸ガリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、パルチミン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム等が挙げられ、より好ましくはステアリン酸金属塩である。
【0072】
上記脂肪酸金属塩の中でも特にフローテスターの流出速度が高い脂肪酸金属塩は劈開性が高く、本発明の前記感光体表面でより効果的に脂肪酸金属塩の層を形成することができる。流出速度の範囲としては1×10−7以上1×10−1以下が好ましく、5×10−4以上1×10−2以下であると最も好ましい。フローテスターの流出速度の測定は島津フローテスター「CFT−500」(島津製作所(株)製)を用いて測定した。
【0073】
又、上記固形材料の他の例としてはポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂粉末が好ましい。これらの固形材料は必要に応じて圧力をかけ、板状或いは棒状にして用いることが好ましい。
【0074】
一方、含水率の測定は、表面エネルギー低下剤の場合はこの素材をシャーレに入れ、30℃、80%RHに24時間放置後、カールフィッシャー水分率計(京都電子工業(株)製;MKA−3p)を用いて測定する。
【0075】
本発明の表面エネルギー低下剤は含水率を5.0質量%以下にする方法としては、材料中の親水成分や不純物の制御、例えば精製や疎水化処理により、高温高湿(30℃80%RH)下の水分量の低減の他に、水分調整剤の混入、高温乾燥処理等により達成できる。上記水分量の含水率は好ましくは0.01〜5.0質量%、更には0.05〜3.0質量%が良い。0.01質量%より小さいと却って複写中の温度上昇等による環境変動、特に像担持体の場所による湿度に左右され易かったり、また材料の選択や疎水性処理が難しい。5.0質量%より大きいと中抜けや文字チリが発生しやすい。
【0076】
以下、本発明に用いる有機感光体について説明する。
本発明の円筒度とは、JIS規格(B0621−1984)による。即ち、円筒基体を2つの同軸の幾何学的円筒で挟んだとき、同軸2円筒の間隔が最小となる位置の半径の差で表し、本発明では該半径の差をμmで表す。
【0077】
本発明の円筒状有機感光体(以下、感光体とも云う)の円筒度は5〜40μm、好ましくは7〜30μm、更には7〜27μmが良い。40μmより大きいと、感光体と中間転写体の接触界面の面圧が不均一となりやすく、転写むら、中抜け、文字チリ等の画像欠陥を生じやすい。但し、前記有機感光体の円筒度は、実質的に画像形成を行う領域の円筒度を意味し、画像形成を行わない両端の感光層膜厚の変動領域は除く。
【0078】
本発明の円筒度の測定方法は円筒状基体の両端10mmの2点、中心部、両端と中心部の間を3等分した点の4点、計7点の真円度を測定し求める。測定器は非接触万能ロール径測定機((株)ミツトヨ製)を用いた。
【0079】
以下に説明するインロー加工とは円筒状基体の内部を切削加工し、基体内面に段差(部材を取り付ける等のため)等の加工面を形成する加工を意味し、例えば、円筒状基体を回転させながら、切削バイトを当接し、送り移動し加工する。
【0080】
以下に説明するインロー加工は円筒状基体の両端にフランジを取り付ける段差を形成することを主たる目的にしているので、円筒状基体の両端に基体軸方向長さdmmの段差(インロー長さ)を形成する。本発明では円筒状基体長さ(軸方向)をLmm、保持部材の長さ(軸方向)をDmmとすると、保持部材の長さDは下記の範囲にあることが好ましい。
【0081】
1/2×L≦D<L−2d
Dが1/2×Lより小さいと、インロー加工の時に、基体両端が独楽状に振れやすく、加工精度が劣化しやすい。DがL−2d以上になると、インロー加工部の空間が十分でなく、加工作業が困難となる。
【0082】
以下に説明する保持部材とはインロー加工等の円筒状基体の加工時に、振動を抑制し、基体の形状変形を防止するために、円筒状基体内径に挿入圧接する部材を云う。
【0083】
以下に説明する外径基準とは円筒状基体の外表面円筒の中心軸を基準軸とすることを云う。
【0084】
以下に説明するインロー加工部の内径基準とはインロー加工で形成された円筒内径の中心軸を基準軸とすることを云う。
【0085】
以下、図面を用いて、本発明に用いる感光体を詳細に説明する。
図6は本発明に用いる有機感光体10の概略正面図で、円筒状基体11と、その両側開口部である端部12、13に設けられたフランジ14、15からなり、円筒状基体11の表面には感光層16が形成されている。また、有機感光体10の中心にはシャフト17が円筒状基体11の軸Cと一致するように配設され、有機感光体10を回転可能なものとしている。
【0086】
円筒状基体11は、アルミニウムもしくはアルミニウム系合金などの導電性金属で形成したものが用いられ、内部が中空の円筒状に加工されている。例えばアルミニウム系合金を用いた場合には、延伸加工および/または切削加工を施すことで円筒状とされる。
【0087】
フランジ14,15は、円筒状基体11の両端部内面に嵌合して円筒状基体11を円柱状のものにする円盤状とされ、その中心には孔18が形成されている。また、一方のフランジ14にはその外周に歯車14aが形成されており、有機感光体10の回転を制御し得るものとしている。
【0088】
シャフト17は、断面が正方形等の矩形形状、十字状、円状等とした金属、プラスチック等を用いた棒状のものとされ、湾曲等の変形が少ない材料が用いられる。また、シャフト17はフランジ14、15に形成された孔18を通って固定され、これにより有機感光体10の回転を支える軸となる。
【0089】
感光層16は、有機光導電体(OPC)感光層などの光電効果を有する光導電物質からなる。
【0090】
本発明の有機感光体を作製する為には、まず前記円筒状基体11の円筒度を5〜40μmに作製することが必要である。
【0091】
図7は、本発明にかかる円筒状基体の製造工程について説明するために(a)、(b)の工程順に示したものである。まず最初に図7(a)に示すような中空円筒状の円筒状基体11を準備する。円筒状基体11としては、例えば延伸加工により肉厚が2mmで外径が100mmφとしたアルミニウム合金を用いることができる。
【0092】
図7(a)は基体内部に保持部材3を挿入させ、インロー加工として切削バイトで加工している図である。端部には内側に段差を設けるようにインロー加工を施す。この箇所においては、外径は変わらないものの段差分だけ肉厚を薄くして内径を大きくした薄肉部(インロー加工部)12a、13aが形成される。
【0093】
本発明ではこのインロー加工に際して、円筒状基体を保持部材と圧力可変手段4により、内部より把持して、該保持部材を貫通する中心軸19の周りにモーター20、21により円筒状基体を回転駆動させて、旋削刃具22を基体内部に当接し、インロー加工を行う。即ち、円筒状基体を内部より把持することにより、該表面を傷つけないようにすることを特徴とする。
【0094】
次に、該インロー加工された円筒状基体を用いて該表面の切削加工を行う。即ち、図7(b)は前記インロー加工により形成された内径を持つ円筒状基体の両端のインロー部を握持用爪23の開閉に無摺動式開閉チャック(藤井精密工業株式会社製、エアーバルーンチャック、クラフトグラフィー、ダイナミックツール株式会社製ダイアフラムチャック)24、25を用いて握持し、インロー加工部の内径基準で基体表面を切削加工している図である。
【0095】
以上のような円筒状基体の加工方法を採用することにより、外径円筒度が5〜40μmの有機感光体用円筒状基体を作製することができる。26は切削刃具である。
【0096】
前記保持部材としては、インロー加工時の振動を抑制し、形状を保持するために、強度の強い剛性部材の場合が好ましい。該剛性部材としては、ステンレス、真鍮等の金属やセラミックス等が良い。又、該保持部材には接触圧力可変手段等が装備されているものが良い。以下、該剛性部材を円筒状基体の内径に挿入押圧する方法について説明する。
【0097】
図8(a)は保持部材3の斜視図である。図8(b)は保持部材の圧力可変手段4を示す断面図である。3−1〜3−8は各々断面が扇型をした保持部材の部品であり、各部品が図示されていない緩い連結、例えばバネで結合されて、保持部材全体を構成し、保持部材の外面は円筒状基体内面に接触するよう円筒状を形成している。保持部材の中心部は図8(b)に示すように圧力可変手段4として、テーバーの付いた中心棒4−1が出し入れ出来るような環を形成している。図8(b)に示すように中心棒4−1を挿入することにより、保持部材は外側に拡がり、円筒状基体を押圧しながら保持する事になる。押圧したときの圧力の調整はこの中心棒4−1の挿入深さで調整される。
【0098】
保持部材としては上記剛性部材の代わりに、硬質ウレタン、ゴム等の弾性部材を用いることも可能である。
【0099】
又、上記中心棒4−1は保持部材を貫通する中心軸19を有し、この中心軸の周りに円筒状基体を回転駆動させてインロー加工を行う。
【0100】
次に、基体を洗浄後、図9に示すように、円筒状基体11の外側表面に感光層16を塗布形成する。
【0101】
次に、感光層が形成された円筒状基体にはフランジ14,15が取り付けられる。フランジ14、15は円盤状とされ、円筒状基体11の外径と略等しい外径を有し、円筒状基体11に取り付けられて蓋となる外側部分と、それよりも外径の小さな内側部分とからなり、その中心には孔18が形成されている。外径の小さな内側部分は、その外径が前記インロー加工で形成された薄肉部12a,13aの内径と等しいか若しくは若干大きなものとされている。フランジ14、15の外径の小さな内側部分は円筒状基体11の薄肉部12a,13aに嵌合する。これにより円筒状基体11の端部にフランジ14,15が蓋をするように固定される。このとき、フランジ14,15を取り付けた状態において、円筒状基体11の軸Cを中心とした円筒度が5〜40μmであることが好ましい。なお、一方のフランジ14の外周部分には歯車14aが形成されている。また、フランジの中央部にはシャフトを固定するための孔18が設けてある。
【0102】
次に、本発明の有機感光体の感光体構成について記載する。
本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能のいずれか一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機電子写真感光体を全て含有する。
【0103】
有機感光体の層構成は、特に限定はないが、電荷発生層、電荷輸送層、或いは電荷発生・電荷輸送層(電荷発生と電荷輸送の機能を同一層に有する層)等の感光層とその上に保護層を塗設した構成をとるのが好ましい。
【0104】
円筒状基体
本発明の円筒状基体の材質としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラムが好ましい。円筒状基体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。
【0105】
中間層
本発明においては導電性円筒状基体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた中間層を設けることもできる。
【0106】
本発明においては導電性支持体と前記感光層のとの接着性改良、或いは該支持体からの電荷注入を防止するために、該支持体と前記感光層の間に中間層(下引層も含む)を設けることもできる。該中間層の材料としては、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂が挙げられる。これら下引き樹脂の中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さくできる樹脂としてはポリアミド樹脂が好ましい。又、これら樹脂を用いた中間層の膜厚は0.01〜0.5μmが好ましい。
【0107】
又本発明に最も好ましく用いられる中間層はシランカップリング剤、チタンカップリング剤等の有機金属化合物を熱硬化させた硬化性金属樹脂を用いた中間層が挙げられる。硬化性金属樹脂を用いた中間層の膜厚は、0.1〜2μmが好ましい。
【0108】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。正帯電用の感光体では前記層構成の順が負帯電用感光体の場合の逆となる。本発明の最も好ましい感光層構成は前記機能分離構造を有する負帯電感光体構成である。
【0109】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
電荷発生層
電荷発生層には電荷発生物質(CGM)を含有する。その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。
【0110】
電荷発生物質(CGM)としては公知の電荷発生物質(CGM)を用いることができる。例えばフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを用いることができる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCGMは複数の分子間で安定な凝集構造をとりうる立体、電位構造を有するものであり、具体的には特定の結晶構造を有するフタロシアニン顔料、ペリレン顔料のCGMが挙げられる。例えばCu−Kα線に対するブラッグ角2θが27.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン、同2θが12.4に最大ピークを有するベンズイミダゾールペリレン等のCGMは繰り返し使用に伴う劣化がほとんどなく、残留電位増加小さくすることができる。
【0111】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.01μm〜2μmが好ましい。
【0112】
電荷輸送層
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0113】
電荷輸送物質(CTM)としては公知の電荷輸送物質(CTM)を用いることができる。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCTMは高移動度で、且つ組み合わされるCGMとのイオン化ポテンシャル差が0.5(eV)以下の特性を有するものであり、好ましくは0.25(eV)以下である。
【0114】
CGM、CTMのイオン化ポテンシャルは表面分析装置AC−1(理研計器社製)で測定される。
【0115】
電荷輸送層(CTL)に用いられる樹脂としては、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。
【0116】
これらCTLのバインダーとして最も好ましいものはポリカーボネート樹脂である。ポリカーボネート樹脂はCTMの分散性、電子写真特性を良好にすることにおいて、最も好ましい。バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し10〜200質量部が好ましい。又、電荷輸送層の膜厚は10〜40μmが好ましい。
【0117】
又、本発明の感光体の表面層(例えば、電荷輸送層に)には、数平均一次粒径が10nm以上、100nm未満の疎水性無機粒子を混在させることがより好ましい。疎水性無機粒子のより好ましい数平均粒径は10nm以上、90nm以下、最も好ましくは10nm以上、50nm未満である。表面層にこのような無機粒子を含有させることにより、前記した表面エネルギー低下剤が感光体表面に均一に延展しやすく、転写むら、中抜け、文字チリ等の画像劣化を防止することができる。
【0118】
本発明に用いられる10nm以上、100nm未満の無機粒子としては、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ、酸化ジルコニウム等の微粒子を好ましく用いることができるが、これらの中でもコスト、粒径の調整や表面処理の容易さ等からシリカ、特に表面を疎水化した疎水性シリカが好ましい。
【0119】
本発明の無機粒子の数平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに300個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によりフェレ径の数平均径として測定値を算出する。
【0120】
上記疎水性シリカの疎水化度は、メタノールに対する濡れ性の尺度(メタノールウェッタビリティ)で示される疎水化度で50%以上のものが好ましい。疎水化度が50%未満であると前記吸熱エネルギー変化量ΔHが、10J/gより大きくなりやすく、その結果、環境メモリを発生しやすくなり、又ブレードを傷つけクリーニング不良も発生しやすくなる。より好ましい疎水化度は65%以上、最も好ましくは70%以上である。
【0121】
疎水化度を表すメタノールウェッタビリティとは、メタノールに対するシリカ微粉末の濡れ性を評価するものである。濡れ性の測定は以下の方法で行う。内容量250mlのビーカーに入れた蒸留水50mlに、測定対象のシリカ微粉末を0.2g添加して撹拌する。次にメタノールを先端が液体中に浸漬されているビュレットからゆっくり撹拌した状態でシリカ微粉末の全体が濡れるまでゆっくり滴下する。このシリカ微粉末を完全に濡らすために必要なメタノールの量をa(ml)とした時、下記式(1)により疎水化度を算出する。
【0122】
式(1) 疎水化度=a/(a+50)×100
上記疎水性シリカは、公知の湿式法もしくは乾式法で生成されたシリカ粉末をを疎水化することにより得られる。特に乾式法(ケイ素化ハロゲン化合物の蒸気相酸化)により生成されたいわゆるヒュームドシリカと称されるものを疎水化剤で処理したものが、水分吸着サイトが少なく好ましい。これは従来公知の技術によって製造されるものである。例えば四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のようなものである。
【0123】
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
又、この製造工程において例えば、塩化アルミニウム又は、塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能である。
【0124】
シリカ粉末の疎水化処理は、シリカ微粉末を撹拌等によりクラウド状に分散させたものに、アルコール等で溶解した疎水化処理剤溶液を噴霧するか或いは気化した疎水化処理剤を接触させて付着させる乾式処理、又は、シリカ粉末を溶液中に分散させ、その中に疎水化処理剤を滴下して付着させる湿式処理等の従来公知の方法で行うことが出来る。
【0125】
疎水化処理剤としては、公知の化合物を用いることが出来、具体例を下記に挙げる。又、これらの化合物は組み合わせて使用しても良い。
【0126】
チタンカップリング剤としてはテトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート及びビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等が挙げられる。
【0127】
シランカップリング剤としてはγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−ビニルベンジルアミノエチル−N−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン及びp−メチルフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0128】
シリコーンオイルとしてはジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル及びアミノ変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0129】
これらの疎水化処理剤は、シリカ粉末に対して1〜40質量%添加して被覆することが好ましく、3〜30質量%がより好ましい。
【0130】
又、上記表面疎水化剤としてハイドロジェンポリシロキサン化合物を用いてもよい。該ハイドロジェンポリシロキサン化合物の分子量は1000〜20000のものが一般に入手しやすく、又、黒ポチ発生防止機能も良好である。特にメチルハイドロジェンポリシロキサンを最後の表面処理に用いると良好な効果が得られる。
【0131】
本発明では上記疎水化処理された疎水性シリカを有機感光体の表面層にバインダーと共に含有させるが表面層のシリカ粒子の割合はバインダーに対して1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%、最も好ましくは2〜10質量%で使用されるのがよい。
【0132】
次に本発明の有機感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられる。特に円形量規制型塗布装置を用いると、下層の膜を極力溶解させないため、均一塗布加工を達成でき、円筒状基体の円筒度を維持した有機感光体を作製できる。前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0133】
次に、本発明に用いられるトナーについて説明する。
まず、本発明に用いられるトナーは、粒径分布としては単分散、あるいはそれに近いことが好ましく、50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15であることがその要件である。より好ましくは1.0〜1.13がよい。この比率が1.15を越えると粒径分布が広くなり本発明の課題を達成することができない。
【0134】
また、トナー粒子の大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20である必要がある。1.20を越える場合には小粒径成分の存在比率が増大し、弱帯電成分の増加や逆極性のトナーの発生、あるいは過帯電成分の発生などの原因となる。その結果、感光体から中間転写体へのトナーの転写が不十分となり、転写むらや中抜け等の画像不良が発生しやすい。
【0135】
さらに、0.7×(Dp50)以下の粒径のトナー粒子が10個数%以下である必要があり、10個数%を越えると小粒径成分の存在比率が増大し、前述と同様に、弱帯電成分の増加や逆極性のトナーの発生、あるいは過帯電成分の発生などの原因となる。その結果、感光体から中間転写体へのトナーの転写が不十分となり、転写むらや中抜け等の画像不良が発生しやすい。
【0136】
本発明では円筒度5〜40μmの円筒状有機感光体上の潜像を上記粒度分布特性を有するトナーを含有する現像剤により現像することにより、感光体から中間転写体への転写性が向上し、転写むら等の発生が防止された鮮鋭性の良好な電子写真画像が得られる。
【0137】
なお、上記50%体積粒径(Dv50)は2〜8μm、より好ましくは3〜7μmであることが望ましい。この範囲とすることにより、解像度を高くすることができる。さらに上記の本発明の範囲と組み合わせることにより、小粒径トナーでありながら、微細な粒径のトナーの存在量を少なくすることができ、長期に亘ってクリーニング性やトナーの転写率が改善され、鮮鋭性の良好な、安定した画像を形成することができる。
【0138】
本発明において、大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)或いは累積75%個数粒径(Dp75)とは、粒径の大きな方からの頻度を累積し、全体積の和或いは個数の和に対して、それぞれが75%を示す粒径分布部位の体積粒径或いは個数粒径で表す。
【0139】
本発明において、50%体積粒径(Dv50)、50%個数粒径(Dp50)、累積75%体積粒径(Dv75)、累積75%個数粒径(Dp75)等は、コールターカウンターTAII型或いはコールターマルチサイザー(コールター社製)で測定することが出来る。
【0140】
さらに、本発明のトナーとしては、0.7×(Dp50)以下の粒径のトナー粒子が10個数%であるが、この微粉トナー量は大塚電子社製〜電気泳動光散乱光度計ELS−800を用いて測定することができる。
【0141】
尚、本発明の属する静電潜像を乾式現像で顕像化する技術分野においては、少なくとも着色剤と樹脂よりなる着色粒子(トナー粒子の原型)に、外添剤等を加えたものをトナーとして用いている。しかし、特に問題がない限り着色粒子とトナーとをあまり区別せず、記載しているのが一般的である。本発明におけるその粒径および粒径分布においても、着色粒子とトナー粒子の何れを測定してもその測定値に変化はない。
【0142】
また、外添剤等の径粒はnmオーダーであり(数平均1次粒子)、光散乱電気泳動粒径測定装置「ELS−800」(大塚電子工業株式会社製)で測定することが出来る。
【0143】
以下、前記した粒度分布を示す本発明に用いられるトナーの構成及び製造方法について詳細に説明する。
【0144】
〈トナー〉
本発明では、トナーとして離型剤を含有する樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させて得られた会合型トナーを使用することが好ましい。
【0145】
この理由としては前記のような粒度分布を示すトナーを製造出来ることに加え会合型トナーはトナー粒子間の表面性が均質なものとなっており、転写性を損なうことなく、本発明の効果を発揮することができたものと推定される。
【0146】
上記の「塩析/融着」とは、塩析(粒子の凝集)と融着(粒子間の界面消失)とが同時に起こること、または、塩析と融着とを同時に起こさせる行為をいう。塩析と融着とを同時に行わせるためには、樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度条件下において粒子(樹脂粒子、着色剤粒子)を凝集させる必要がある。
【0147】
〈離型剤〉
本発明のトナーを構成する離型剤としては、特に限定されるものではないが、下記一般式(1)で示される結晶性のエステル化合物(以下、「特定のエステル化合物」という。)からなるものであることが好ましい。
【0148】
一般式(1):R1−(OCO−R2)n
(式中、R1およびR2は、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素数が1〜40の炭化水素基を示し、nは1〜4の整数である。)
〈特定のエステル化合物〉
特定のエステル化合物を示す一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれ、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。
【0149】
炭化水素基R1の炭素数は1〜40とされ、好ましくは1〜20、更に好ましくは2〜5とされる。
【0150】
炭化水素基R2の炭素数は1〜40とされ、好ましくは16〜30、更に好ましくは18〜26とされる。
【0151】
また、一般式(1)において、nは1〜4の整数とされ、好ましくは2〜4、さらに好ましくは3〜4、特に好ましくは4とされる。
【0152】
特定のエステル化合物は、アルコールとカルボン酸との脱水縮合反応により好適に合成することができる。
【0153】
最も好適な特定のエステル化合物としては、ペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステルを挙げることができる。
【0154】
特定のエステル化合物の具体例としては、下記式1)〜26)に示す化合物を例示することができる。
【0155】
【化1】
【0156】
【化2】
【0157】
〈離型剤の含有割合〉
本発明のトナーにおける離型剤の含有割合としては、通常1〜30質量%とされ、好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは3〜15質量%とされる。
【0158】
〈離型剤を含有する樹脂粒子〉
本発明において「離型剤を含有する樹脂粒子」は、結着樹脂を得るための単量体中に離型剤を溶解させ、得られる単量体溶液を水系媒体中に分散させ、この系を重合処理することにより、ラテックス粒子として得ることができる。
【0159】
かかる樹脂粒子の重量平均粒径は50〜2000nmであることが好ましい。
結着樹脂中に離型剤を含有する樹脂粒子を得るための重合法としては、乳化重合法、懸濁重合法、シード重合法などの造粒重合法を挙げることができる。
【0160】
離型剤を含有する樹脂粒子を得るための好ましい重合法としては、臨界ミセル濃度以下の濃度の界面活性剤を溶解してなる水系媒体中に、単量体中に離型剤を溶解してなる単量体溶液を、機械的エネルギーを利用して油滴分散させて分散液を調製し、得られた分散液に水溶性重合開始剤を添加して、ラジカル重合させる方法(以下、この明細書において「ミニエマルジョン法」という。)を挙げることができる。なお、水溶性重合開始剤を添加することに代えて、または、当該水溶性重合開始剤を添加するとともに、油溶性の重合開始剤を前記単量体溶液中に添加してもよい。
【0161】
ここに、機械的エネルギーによる油滴分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではないが、例えば、高速回転するローターを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム−テクニック(株)社製)、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリンおよび圧力式ホモジナイザーなどを挙げることができる。また、分散粒子径としては、10〜1000nmとされ、好ましくは30〜300nmとされる。
【0162】
〈結着樹脂〉
本発明のトナーを構成する結着樹脂は、GPCにより測定される分子量分布で100,000〜1,000,000の領域にピークまたは肩を有する高分子量成分と、1,000〜20,000の領域にピークまたは肩を有する低分子量成分とを含有する樹脂であることが好ましい。
【0163】
ここに、GPCによる樹脂の分子量の測定方法としては、測定試料0.5〜5.0mg(具体的には1mg)に対してTHFを1ml加え、マグネチックスターラーなどを用いて室温にて撹拌を行って十分に溶解させる。次いで、ポアサイズ0.45〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後にGPCへ注入する。
【0164】
GPCの測定条件としては、40℃にてカラムを安定化させ、THFを毎分1mlの流速で流し、1mg/mlの濃度の試料を約100μl注入して測定する。カラムは、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807の組合せや、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H,G3000H,G4000H,G5000H,G6000H,G7000H,TSK guard columnの組合せなどを挙げることができる。また、検出器としては、屈折率検出器(IR検出器)またはUV検出器を用いるとよい。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いるとよい。
【0165】
以下、樹脂粒子の構成材料および調製方法(重合方法)について説明する。
〔単量体〕
樹脂粒子を得るために使用する重合性単量体としては、ラジカル重合性単量体を必須の構成成分とし、必要に応じて架橋剤を使用することができる。また、以下の酸性基を有するラジカル重合性単量体または塩基性基を有するラジカル重合性単量体を少なくとも1種類含有させることが好ましい。
(1)ラジカル重合性単量体:
ラジカル重合性単量体としては、特に限定されるものではなく従来公知のラジカル重合性単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
【0166】
具体的には、芳香族系ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等を用いることができる。
【0167】
芳香族系ビニル単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体およびその誘導体が挙げられる。
【0168】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0169】
ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
【0170】
ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0171】
モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
【0172】
ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0173】
ハロゲン化オレフィン系単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等が挙げられる。
【0174】
(2)架橋剤:
架橋剤としては、トナーの特性を改良するためにラジカル重合性架橋剤を添加しても良い。ラジカル重合性架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
【0175】
(3)酸性基または塩基性基を有するラジカル重合性単量体:
酸性基を有するラジカル重合性単量体または塩基性基を有するラジカル重合性単量体としては、例えば、カルボキシル基含有単量体、スルホン酸基含有単量体、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等のアミン系の化合物を用いることができる。
【0176】
酸性基を有するラジカル重合性単量体としては、カルボン酸基含有単量体として、アクリル酸、メタクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステル等が挙げられる。
【0177】
スルホン酸基含有単量体としては、スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸、アリルスルホコハク酸オクチル等が挙げられる。
【0178】
これらは、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩あるいはカルシウムなどのアルカリ土類金属塩の構造であってもよい。
【0179】
塩基性基を有するラジカル重合性単量体としては、アミン系の化合物が挙げられ、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、および上記4化合物の4級アンモニウム塩、3−ジメチルアミノフェニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩、アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、ピペリジルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド;ビニルピリジン、ビニルピロリドン;ビニルN−メチルピリジニウムクロリド、ビニルN−エチルピリジニウムクロリド、N,N−ジアリルメチルアンモニウムクロリド、N,N−ジアリルエチルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。
【0180】
本発明に用いられるラジカル重合性単量体としては、酸性基を有するラジカル重合性単量体または塩基性基を有するラジカル重合性単量体が単量体全体の0.1〜15質量%使用することが好ましく、ラジカル重合性架橋剤はその特性にもよるが、全ラジカル重合性単量体に対して0.1〜10質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0181】
〔連鎖移動剤〕
樹脂粒子の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることが可能である。
【0182】
連鎖移動剤としては、特に限定されるものではなく例えばオクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル等のメルカプトプロピオン酸エステル類、四臭化炭素およびスチレンダイマー等が使用される。
【0183】
〔重合開始剤〕
本発明に用いられるラジカル重合開始剤は水溶性であれば適宜使用が可能である。例えば過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(4,4′−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、パーオキシド化合物等が挙げられる。
【0184】
更に上記ラジカル性重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合わせレドックス系開始剤とする事が可能である。レドックス系開始剤を用いる事で、重合活性が上昇し重合温度の低下が図れ、更に重合時間の短縮が期待できる。
【0185】
重合温度は、重合開始剤の最低ラジカル生成温度以上であればどの温度を選択しても良いが例えば50℃から90℃の範囲が用いられる。但し、常温開始の重合開始剤、例えば過酸化水素−還元剤(アスコルビン酸等)の組み合わせを用いる事で、室温またはそれ以上の温度で重合する事も可能である。
【0186】
〔界面活性剤〕
前述のラジカル重合性単量体を使用して重合を行うためには、界面活性剤を使用して水系媒体中に油滴分散を行う必要がある。この際に使用することのできる界面活性剤としては特に限定されるものでは無いが、下記のイオン性界面活性剤を好適なものの例として挙げることができる。
【0187】
イオン性界面活性剤としては、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
【0188】
また、ノニオン性界面活性剤も使用することができる。具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等を挙げることができる。
【0189】
〈着色剤〉
本発明のトナーを構成する着色剤としては無機顔料、有機顔料、染料を挙げることができる。
【0190】
無機顔料としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な無機顔料を以下に例示する。
【0191】
黒色の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0192】
これらの無機顔料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0193】
磁性トナーとして使用する際には、前述のマグネタイトを添加することができる。この場合には所定の磁気特性を付与する観点から、トナー中に20〜60質量%添加することが好ましい。
【0194】
有機顔料及び染料としても従来公知のものを用いることができる。具体的な有機顔料及び染料を以下に例示する。
【0195】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0196】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156等が挙げられる。
【0197】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0198】
また、染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等を用いる事ができ、またこれらの混合物も用いる事ができる。
【0199】
これらの有機顔料及び染料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0200】
着色剤は表面改質して使用することもできる。その表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等が好ましく用いることができる。
【0201】
〈外添剤〉
本発明のトナーには、流動性、帯電性の改良およびクリーニング性の向上などの目的で、いわゆる外添剤を添加して使用することができる。これら外添剤としては特に限定されるものでは無く、種々の無機微粒子、有機微粒子及び滑剤を使用することができる。
【0202】
無機微粒子としては、従来公知のものを使用することができる。具体的には、シリカ、チタン、アルミナ微粒子等が好ましく用いることができる。これら無機微粒子としては疎水性のものが好ましい。具体的には、シリカ微粒子として、例えば日本アエロジル社製の市販品R805、R976、R974、R972、R812、R809、ヘキスト社製のHVK2150、H200、キャボット社製の市販品TS720、TS530、TS610、H5、MS5等が挙げられる。
【0203】
チタン微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品T−805、T−604、テイカ社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
【0204】
アルミナ微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業社製の市販品TTO−55等が挙げられる。
【0205】
また、有機微粒子としては数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。このものとしては、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体を使用することができる。
【0206】
滑剤には、例えばステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩等の高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。
【0207】
これら外添剤の添加量は、トナーに対して0.1〜5質量%が好ましい。
本発明のトナーは、離型剤を含有する樹脂粒子と、着色剤粒子とを水系媒体中で塩析/融着させて得られる会合型のトナーであることが好ましい。このように、離型剤を含有する樹脂粒子を塩析/融着させることで、離型剤が微細に分散されたトナーを得ることができ、且つ、粒径分布の効果に加えて帯電性の安定化等の効果を発揮することができる。
【0208】
そして、本発明のトナーは、その製造時から表面に凹凸がある形状を有しており、さらに、樹脂粒子と着色剤粒子とを水系媒体中で融着して得られる会合型のトナーであるために、トナー粒子間における形状および表面性の差がきわめて小さく、結果として表面性が均一となりやすい。このためにトナー間での転写性、帯電性に差異を生じにくく、画像を良好に保つことができるものである。
【0209】
〈トナーの製造工程〉
本発明のトナーを製造する方法の一例としては、
(1)単量体に離型剤を溶解して単量体溶液を調製する溶解工程、
(2)得られる単量体溶液を水系媒体中に分散する分散工程、
(3)得られる単量体溶液の水系分散系を重合処理することにより、離型剤を含有する樹脂粒子の分散液(ラテックス)を調製する重合工程、
(4)得られる樹脂粒子と、前記着色剤粒子とを水系媒体中で塩析/融着させて会合粒子(トナー粒子)を得る塩析/融着工程、
(5)得られる会合粒子を水系媒体中より濾別し、当該会合粒子から界面活性剤などを洗浄除去する濾過・洗浄工程、
(6)洗浄処理された会合粒子の乾燥工程から構成され、
(7)乾燥処理された会合粒子に外添剤を添加する外添剤添加工程が含まれていてもよい。
【0210】
〔溶解工程〕
単量体に離型剤を溶解する方法としては特に限定されるものではない。
【0211】
単量体への離型剤の溶解量としては、最終的に得られるトナーにおける離型剤の含有割合が1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは3〜15質量%となる量とされる。
【0212】
なお、この単量体溶液中に、油溶性重合開始剤および他の油溶性の成分を添加することもできる。
【0213】
〔分散工程〕
単量体溶液を水系媒体中に分散させる方法としては、特に限定されるものではないが、機械的エネルギーにより分散させる方法が好ましく、特に、臨界ミセル濃度以下の濃度の界面活性剤を溶解してなる水系媒体中に、機械的エネルギーを利用して単量体溶液を油滴分散させること(ミニエマルジョン法における必須の態様)が好ましい。
【0214】
ここに、機械的エネルギーによる油滴分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではないが、例えば「クレアミックス」、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリンおよび圧力式ホモジナイザーなどを挙げることができる。また、分散粒子径としては、10〜1000nmとされ、好ましくは30〜300nmとされる。
【0215】
〔重合工程〕
重合工程においては、基本的には従来公知の重合法(乳化重合法、懸濁重合法、シード重合法などの造粒重合法)を採用することができる。
【0216】
好ましい重合法の一例としては、ミニエマルジョン法、すなわち、臨界ミセル濃度以下の濃度の界面活性剤を溶解してなる水系媒体中に、機械的エネルギーを利用して単量体溶液を油滴分散させて得られる分散液に水溶性重合開始剤を添加して、ラジカル重合させる方法を挙げることができる。
【0217】
〔塩析/融着工程〕
塩析/融着工程においては、上記の重合工程により得られる樹脂粒子の分散液に着色剤粒子の分散液を添加し、前記樹脂粒子と、前記着色剤粒子とを水系媒体中で塩析/融着させる。
【0218】
また、当該塩析/融着工程においては、樹脂粒子および着色剤粒子とともに、荷電制御剤などの内添剤粒子なども融着させることもできる。
【0219】
塩析/融着工程における「水系媒体」とは、主成分(50質量%以上)が水からなるものをいう。ここに、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶媒を挙げることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶媒であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶媒が特に好ましい。
【0220】
塩析/融着工程に使用される着色剤粒子は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理は、水中で界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われる。
【0221】
着色剤の分散処理に使用する分散機は特に限定されないが、好ましくは「クレアミックス」、超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリンや圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、サンドグラインダー、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。また、使用される界面活性剤としては、前述の界面活性剤と同様のものを挙げることができる。
【0222】
なお、着色剤(粒子)は表面改質されていてもよい。着色剤の表面改質法は、溶媒中に着色剤を分散させ、その分散液中に表面改質剤を添加し、この系を昇温することにより反応させる。反応終了後、着色剤を濾別し、同一の溶媒で洗浄濾過を繰り返した後、乾燥することにより、表面改質剤で処理された着色剤(顔料)が得られる。
【0223】
塩析/融着法は、樹脂粒子と着色剤粒子とが存在している水中に、アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩等からなる塩析剤を臨界凝集濃度以上の凝集剤として添加し、次いで、前記樹脂粒子のガラス転移点以上に加熱することで塩析を進行させると同時に融着を行う工程である。この工程では、水に無限溶解する有機溶媒を添加してもよい。
【0224】
ここで、塩析剤であるアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、アルカリ金属として、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられ、好ましくはカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムが挙げられる。また塩を構成するものとしては、塩素塩、臭素塩、沃素塩、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
【0225】
さらに、前記水に無限溶解する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、アセトン等があげられるが、炭素数が3以下のメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールのアルコールが好ましく、特に、2−プロパノールが好ましい。
【0226】
塩析/融着工程においては、塩析剤を添加した後に放置する時間(加熱を開始するまでの時間)をできるだけ短くすることが好ましい。すなわち、塩析剤を添加した後、樹脂粒子および着色剤粒子の分散液の加熱をできるだけ速やかに開始し、樹脂粒子のガラス転移温度以上とすることが好ましい。
【0227】
この理由としては明確ではないが、塩析した後の放置時間によって、粒子の凝集状態が変動し、粒径分布が不安定になったり、融着させたトナーの表面性が変動したりする問題が発生する。
【0228】
加熱を開始するまでの時間(放置時間)は、通常30分以内とされ、好ましくは10分以内である。
【0229】
塩析剤を添加する温度は特に限定されないが、樹脂粒子のガラス転移温度以下であることが好ましい。
【0230】
また、塩析/融着工程においては、加熱により速やかに昇温させる必要があり、昇温速度としては、1℃/分以上とすることが好ましい。昇温速度の上限は、特に限定されないが、急速な塩析/融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から15℃/分以下とすることが好ましい。
【0231】
さらに、樹脂粒子および着色剤粒子の分散液が前記ガラス転移温度以上の温度に到達した後、当該分散液の温度を一定時間保持することにより、塩析/融着を継続させることが肝要である。これにより、トナー粒子の成長(樹脂粒子および着色剤粒子の凝集)と、融着(粒子間の界面消失)とを効果的に進行させることができ、最終的に得られるトナーの耐久性を向上することができる。
【0232】
また、会合粒子の成長を停止させた後に、加熱による融着を継続させてもよい。
【0233】
〔濾過・洗浄工程〕
この濾過・洗浄工程では、上記の工程で得られたトナー粒子の分散液から当該トナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。
【0234】
ここに、濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法など特に限定されるものではない。
【0235】
〔乾燥工程〕
この工程は、洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理する工程である。
【0236】
この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0237】
乾燥処理されたトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。
【0238】
なお、乾燥処理されたトナー粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
【0239】
〔外添剤の添加工程〕
この工程は、乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程である。
【0240】
外添剤を添加するために使用される装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシエルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を挙げることができる。
【0241】
さらに、本発明のトナーは、0.7×(Dp50)以下の粒径のトナーが10個数%以下である。この範囲に粒径分布を調整するためには、塩析/融着段階での温度制御を狭くすることがよい。具体的にはできるだけすばやく昇温する、すなわち、昇温を速くすることである。この条件としては、前述の条件に示したものであり、昇温までの時間としては30分未満、好ましくは10分未満、さらに、昇温速度としては、1〜15℃/分が好ましい。
【0242】
本発明のトナーは、着色剤、離型剤以外にトナー用材料として種々の機能を付与することのできる材料を加えてもよい。具体的には荷電制御剤等が挙げられる。これらの成分は前述の塩析/融着段階で樹脂粒子と着色剤粒子と同時に添加し、トナー中に包含する方法、樹脂粒子自体に添加する方法等種々の方法で添加することができる。
【0243】
荷電制御剤も同様に種々の公知のもので、且つ水中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体等が挙げられる。
【0244】
〈現像剤〉
本発明のトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよい。
【0245】
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものがあげられ、いずれも使用することができる。
【0246】
又、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
【0247】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0248】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0249】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を記載するが、以下の実施例に限定されるものではない。
【0250】
実施例1
円筒状基体の作製
1.基体加工方法
a.円筒状基体A−1の加工
引き抜き加工で形成された厚さ2.00mmのアルミニウム合金からなる円筒状基体(長さL=344mm、直径φ(外径=100mm)に図8の接触圧力可変手段3−8を使用し、長さD=300mm(0.84×L))のステンレスの保持部材を円筒状基体内径に押圧保持し、外径基準で直径φ=98.40mm、長さd=8mmのインロー加工を行った(インロー加工はエグロ社製、精密CNC両端加工機BSを使用)。
【0251】
その後、上記円筒状基体の両端を前記無摺動式開閉チャックを用いて把持して、インロー加工部の内径基準で基体表面を切削加工した(切削加工機は昌運工作所製SPA−5を使用)。加工後の円筒状基体A−1の円筒度は8μmであった。
【0252】
b.円筒状基体A−2の加工
円筒状基体A−1の加工において、D=214mm(0.60×L)以外は同様にしてインロー加工、及び切削加工を行った。加工後の円筒状基体A−2の円筒度は25μmであった。
【0253】
c.円筒状基体A−3の加工
円筒状基体A−1の加工において、D=143mm(0.40×L)以外は同様にしてインロー加工、及び切削加工を行った。加工後の円筒状基体A−3の円筒度は35μmであった。
【0254】
d.円筒状基体A−4の加工
円筒状基体A−1の加工において、D=332mm(0.93×L)以外は同様にしてインロー加工、及び切削加工を行った。加工後の円筒状基体A−4の円筒度は28μmであった。
【0255】
e.円筒状基体B−1の加工(外部把持(本発明外))
円筒状基体の内部に保持部材を挿入せず、外部より把持手段、即ち、図10(基体外部把持のインロー加工の例)に示す、固定V受け台30にセット後、押えV受け台31で、円筒状基体11外径を固定後、左右の回転駆動旋削刃具32にてインロー加工(例えばエグロ社製、精密CNC両端加工機UB−600を使用)を施した以外は円筒状基体A−1の加工と同様にしてインロー加工、及び切削加工を行った。加工後の円筒状基体B−1の円筒度は45μmであった。
【0256】
2.感光体の作製
下記記載の内「部」とは質量部を示す。
【0257】
感光体1の作製
円筒状基体A−1を用いて下記のように感光体1を作製した。
【0258】
〈中間層〉
円筒状基体A−1を洗浄後、下記中間層組成液を浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚2μmの中間層を形成した。
【0259】
下記中間層分散液を同じ混合溶媒にて二倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュフィルター公称濾過精度:5ミクロン、圧力;5×104Pa)し、中間層組成液を作製した。
【0260】
中間層分散液
ポリアミド樹脂CM8000(東レ社製) 1部
酸化チタンSMT500SAS(テイカ社製;表面処理は、シリカ処理、アルミナ処理、及びメチルハイドロジェンポリシロキサン処理) 3.0部
メタノール 10部
分散機としてサンドミルで分散時間を10時間、バッチ式にて分散して、中間層分散液を作製した。該中間層分散液を同じ混合溶媒にて二倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュフィルター公称濾過精度:5ミクロン、圧力;5×104Pa)し、中間層組成液を作製した。円筒状基体A−1を洗浄後、この中間層組成液を浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚2μmの中間層を形成した。
【0261】
〈電荷発生層〉
電荷発生物質:チタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線回折スペクトル測定で、ブラッグ角2θ(±0.2)の27.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料) 20部
ポリビニルブチラール樹脂(#6000−C:電気化学工業社製) 10部
酢酸t−ブチル 700部
4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン 300部
を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0262】
〈第一電荷輸送層〉
電荷輸送物質(T−1) 200部
ポリカーボネート(PC−1:粘度平均分子量27000) 300部
酸化防止剤(Irganox1010:日本チバガイギー社製) 6部
ジクロロメタン 2000部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で乾燥膜厚15μmの第一電荷輸送層を形成した。
【0263】
〈第二電荷輸送層:表面層〉
電荷輸送物質(T−1) 20部
ポリカーボネート(PC−1:三菱ガス化学社製) 30部
疎水性シリカ(平均一次粒径:40nm、ヘキシルメチルジシラザン、疎水化度:76%) 3.0部
酸化防止剤(LS2626:三共社製) 0.6部
1,3−ジオキソラン 600部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 0.1部
を混合し、超音波を照射できる循環分散装置にて循環分散を行い、表面層塗布液を調製した。この塗布液を前記第一電荷輸送層の上に円型量規制型塗布法により乾燥膜厚5μmになるように第二電荷輸送層を塗布し、110℃で70分間の乾燥を行い、感光体1を作製した。感光体1の円筒度は8μmであった。
【0264】
【化3】
【0265】
感光体2〜4の作製
感光体1の作製において、円筒状基体A−1をA−2〜A−4に代えた以外は感光体1と同様にして感光体2〜4を作製した。これらの感光体の円筒度は、それぞれ26μm、35μm、29μmであった。
【0266】
感光体5の作製(比較例用感光体)
感光体1の作製において、円筒状基体A−1をB−1に代えた以外は感光体1と同様にして感光体5を作製した。感光体5の円筒度は、それぞれ44μmであった。
【0267】
トナー及び現像剤の作製
(ラテックス調製例1)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を付けた5000mlのセパラブルフラスコに予めアニオン系活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム:SDS)7.08gをイオン交換水(2760g)に溶解させた溶液を添加する。窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しつつ、内温を80℃に昇温させた。一方で例示化合物19)72.0gをスチレン115.1g、n−ブチルアクリレート42.0g、メタクリル酸10.9gからなる単量体に加え、80℃に加温し溶解させ、単量体溶液を作製した。
【0268】
ここで循環経路を有する機械式分散機により上記の加熱溶液を混合分散させ、均一な分散粒子径を有する乳化粒子を作製した。ついで、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)0.84gをイオン交換水200gに溶解させた溶液を添加し80℃にて3時間加熱、撹拌することでラテックス粒子を作製した。
【0269】
引き続いて更に重合開始剤(KPS)7.73gをイオン交換水240mlに溶解させた溶液を添加し、15分後、80℃でスチレン383.6g、n−ブチルアクリレート140.0g、メタクリル酸36.4g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル14.0gの混合液を120分かけて滴下した。滴下終了後60分加熱撹拌させた後40℃まで冷却しラテックス粒子を得た。このラテックス粒子をラテックス1とする。
【0270】
(トナー調製例)
着色粒子1Bkの製造
n−ドデシル硫酸ナトリウム9.2gをイオン交換水160mlに撹拌溶解する。この液に、撹拌下、リーガル330R(キャボット社製カーボンブラック)20gを徐々に加え、ついで、クレアミックスを用いて分散した。大塚電子社製の電気泳動光散乱光度計ELS−800を用いて、上記分散液の粒径を測定した結果、重量平均径で112nmであった。この分散液を「着色剤分散液1」とする。
【0271】
前述の「ラテックス1」1250gとイオン交換水2000ml及び「着色剤分散液1」を、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、撹拌装置を付けた5リットルの四つ口フラスコに入れ撹拌する。30℃に調整した後、この溶液に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを10.0に調整した。
【0272】
ついで、塩化マグネシウム6水和物52.6gをイオン交換水72mlに溶解した水溶液を撹拌下、30℃にて5分間で添加した。その後、2分間放置した後に、昇温を開始し、液温度90℃まで5分で昇温する(昇温速度:12℃/分)。その状態で粒径をコールターカウンターTA−IIにて測定し、体積平均粒径が4.3μmになった時点で塩化ナトリウム115gをイオン交換水700mlに溶解した水溶液を添加し粒子成長を停止させ、さらに継続して液温度85℃±2℃にて、8時間加熱撹拌し、塩析/融着させる。
【0273】
その後、6℃/minの条件で30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを2.0に調整し撹拌を停止した。生成した着色粒子を下記条件で濾過/洗浄し、その後、40℃の温風で乾燥し、着色粒子を得た。このものを「着色粒子1Bk」とする。
【0274】
着色粒子2Bk〜11Bkの製造
着色粒子1Bkの製造において、塩析/融着に係わる製造条件を表1のように変更して、着色粒子2Bk〜11Bkを製造した。
【0275】
【表1】
【0276】
ついで上記「着色粒子1Bk」〜「着色粒子11Bk」にそれぞれ疎水性シリカ(数平均一次粒子径:12nm、疎水化度:68)を1質量%及び疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径:20nm、疎水化度:63)1質量%添加し、ヘンシェルミキサーにより混合してトナーを得た。これらを「トナー1Bk」〜「トナー11Bk」とする。これらのトナーの平均粒径、粒度分布等を測定し表2に示す。これらの各トナーを平均粒径45μmのフェライト粒子のコアに絶縁性樹脂を被覆したキャリアと混合して二成分現像剤として使用し、各トナーに対応した現像剤番号を付した。即ちトナー1Bkに対応した現像剤番号としては現像剤1Bkの番号を与え、以下同様とした。
【0277】
尚、平均粒径、粒度分布等の物性に関しては、トナーの原型である着色粒子及びトナー(通常、着色粒子に外添剤等が添加されている)のいずれを測定してもその値に実質的な差異は無い。
【0278】
【表2】
【0279】
中間転写体の作製
カーボンブラックを混入したシリコーンゴムの無端ベルト(体積抵抗率が1×108Ω・cm)を用い、その表面粗さをサンドブラスト加工により、Rz(μm)0.5、1.0、1.8に変化させた6種類の中間転写体を作製した。
【0280】
評価
上記感光体1〜5と現像剤1Bk〜11Bkを表3のように組み合わせ、評価機として、図5に示したクリーニング手段を図1の中間転写体を有するデジタルカラープリンターの感光体のクリーニング手段(含水率1%のステアリン酸亜鉛棒をクリーニングブラシに押圧し、感光体表面にステアリン酸亜鉛を供給できるようにした)として搭載し、該デジタルカラープリンターに感光体、中間転写体及びクリーニングブラシの食い込み量を表3のように組み合わせ、高温高湿(30℃80%RH)下で、画素率8%の文字及びハーフトーンの混在した画像を連続してA4紙2万枚プリントを行い評価した。評価項目、評価基準を下記に示す。又評価結果を表3に示す。
【0281】
評価項目と評価基準
中間転写体のRzは前記に記した方法で評価した。
【0282】
「クリーニング性」
感光体とクリーニングブレードの摩耗によるトナーのすり抜けの発生の有無を評価した。
【0283】
◎:2万枚のプリント終了までトナーのすり抜け発生なし
○:1万枚のプリント終了までトナーのすり抜け発生なし
×:1万枚未満のプリントでトナーのすり抜け発生あり(実用上問題のレベル)
「画像むら」
反射濃度0.3の均一濃度のハーフトーン画像で、濃度むらの発生(主に転写むら)を評価した。
【0284】
◎:2万枚のプリント終了まで、ハーフトーン画像に濃度むらの発生なし
○:2万枚のプリント終了まで、ハーフトーン画像に、濃度差0.03未満の薄い濃度むらが発生
×:2万枚未満のプリントでハーフトーン画像に、濃度差0.03以上のはっきりした濃度むらが発生(実用上問題のレベル)
「中抜け」
文字を拡大観察し、中抜けの発生の有無を目視にて観察した。
【0285】
評価基準は
◎:2万枚のプリント終了まで、顕著な中抜けの発生なし
○:1万枚のプリント終了まで、顕著な中抜けの発生なし
×:1万枚未満のプリントで、顕著な中抜け発生あり(実用上問題のレベル)
「文字チリ」
文字を構成するドット画像に代わり、画像全面に10%網点画像を形成し、ルーペにてドット周辺のトナー散りを観察した。
【0286】
ランク◎:10万枚のプリント終了まで、トナー散りが少ない。
ランク○:5万枚のプリント終了まで、トナー散りが少ない。
【0287】
ランク×:5万枚未満のプリントでトナー散りが増加している。(実用上問題のレベル)
「画像評価」
2万枚のプリント終了後、文字画像、ハーフトーン画像を目視にて観察した。
【0288】
目視判定結果を表3に示す
その他の評価条件
画像形成のライン速度L/S:180mm/s
感光体の帯電条件:非画像部の電位は、電位センサで検知し、フィードバック制御できるようにし、その制御可能範囲は−500V〜−900Vであり、全露光した場合の感光体の表面電位は−50〜0Vの範囲にした。
【0289】
像露光光:半導体レーザ(波長:780nm)
現像条件:現像方式は反転現像で行った。
【0290】
中間転写体:前記したシームレスの無端ベルト状中間転写体を用いた。
一次転写条件
一次転写ローラ(図1の5Y、5M、5C、5K(各6.05mmφ)):芯金に弾性ゴムを付した構成:表面比抵抗1×106Ω、転写面圧は表3のように変更した。又、転写電圧も印加した。
【0291】
二次転写条件
中間転写体としての無端ベルト状中間転写体70とそれを挟み込むようにバックアップローラ74と二次転写ローラ5Aが配置され、バックアップローラ74の抵抗値が1×106Ωであり、二次転写手段としての二次転写ローラの抵抗値が1×106Ωであり定電流制御(約80μA)をするようにしてある。
【0292】
定着はローラ内部にヒータを配置した定着ローラによる熱定着方式である。
中間転写体と感光体との最初の接触点から次色感光体との最初の接触点までの中間転写体上での距離Yは95mmにした。
【0293】
駆動ローラ71、ガイドローラ72,73及び二次転写のためのバックアップローラ74の外周長さ(円周長さ)を31.67mm(=95mm/3)にし、テンションローラ76の外周長さを23.75mm(=95mm/4)にした。
【0294】
そして、一次転写ローラの外周長さを19mm(=95mm/5)にした。
感光体のクリーニング手段
クリーニングブレード:反発弾性55%のゴム弾性体
クリーニングブラシ:導電性アクリル樹脂、ブラシ毛密度(3×103/cm2)、食い込み量0.6、1.0、1.3mmの3種類を用いた。
【0295】
二次転写ローラ(図1の5A):芯金に弾性ゴムを付した構成:転写電圧印加
中間転写体のクリーニング手段
クリーニングブレード:反発弾性40%のゴム弾性体
クリーニングローラあり
【0296】
【表3】
【0297】
表3から明らかなように、中間転写体を用いた画像形成装置で、本発明の円筒度5〜40μmの円筒状電子写真感光体上の潜像を下記の▲1▼〜▲3▼の全ての特性を有するトナーを用いた現像剤で現像した組み合わせNo.1〜3、5、6、8、9及びNo.11〜14はクリーニング性、画像むら、中抜け、文字チリ等の特性が改良され、文字画像、ハーフトーン画像共良好な鮮鋭性を示している。これに対し、この条件を満たさない組み合わせNo.4(トナーが条件外)はクリーニング性、中抜け、文字チリが劣り、No.7、10(トナーが条件外)では、クリーニング性、中抜けが劣化し、その結果、文字画像やハーフトーン画像の鮮鋭性が低下している。又、トナーは下記の▲1▼〜▲3▼の全ての特性を満たしていても、円筒度が44μmの感光体5を用いた組み合わせNo.15もクリーニング性、画像むら、中抜けが劣化しており、その結果、鮮鋭性が劣化している。
▲1▼トナーの50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15である。
▲2▼トナーの体積粒径の大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と、前記トナーの前記個数粒径の大きい方からの累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20である。
▲3▼全トナー中において、粒径が0.7×(Dp50)以下のトナーの個数が10個数%以下である。
【0298】
実施例2
実施例1で用いたトナーの作製において、着色分散液中のリーガル330R(キャボット社製カーボンブラック)の代わりにC.I.ピグメントイエロー185(Yトナー)、C.I.ピグメントレッド122(Mトナー)、C.I.ピグメントブルー15:3(Cトナー)を用いた他は同様にして、トナー1Bk、トナー4Bkと同じような形状係数等を有する表4のトナー1Y、1M、1C、4Y、4M、4C6種を作製した。
【0299】
【表4】
【0300】
〔現像剤の製造〕
上記トナー1Y、1M、1C、4Y、4M、4Cの各々10質量部と、平均粒径45μmのフェライト粒子のコアに絶縁性樹脂を被覆したキャリア100質量部とを混合することにより、評価用の現像剤1Y、1M、1C、4Y、4M、4Cを製造した。
【0301】
これらの現像剤1Bk、1Y、1M、1Cの現像剤1群、及び現像剤4Bk、4Y、4M、4Cの現像剤4群を用い、実施例1と同様の画像評価を行った。但し感光体は2(円筒度26μm)、一次転写ローラの転写面圧は0.15g/cm2、中間転写体のRzは1.0、クリーニングの食い込み量は1.0mmに統一し、その他の条件は実施例1と同じにして、中間転写方式のカラー画像を1万枚プリントした。その結果現像剤1群を用いたカラー画像は中抜けや文字チリの画像欠陥の発生もなく、鮮鋭性が良好な画像が得られたが、現像剤4群を用いたカラー画像は、1千枚を過ぎた頃から中抜けが目立ち始め、3千枚を過ぎた頃から文字チリの発生が増加し、鮮鋭性の劣化が進行した。
【0302】
【発明の効果】
本発明を用いることにより、中間転写体を用いた電子写真方式のトナー転写特性の改善を達成でき、トナー転写の低下から発生する中抜けや文字チリ等の画像欠陥を防止でき、且つクリーニング性の良好な電子写真方式の画像形成方法及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【図2】中間転写体のクリーニング手段の一例である。
【図3】感光体と無端ベルト状中間転写体と一次転写ローラとの位置関係を示す配置図である。
【図4】バックアップローラと無端ベルト状中間転写体と二次転写ローラとの位置関係を示す配置図である。
【図5】本発明の感光体に設置されるクリーニング手段の構成図である。
【図6】本発明による電子写真感光体の概略正面図である。
【図7】本発明にかかる円筒状基体の製造工程について説明するために(a)、(b)の工程順に示したものである。
【図8】(a)は保持部材の斜図である。(b)は保持部材の圧力可変手段を示す断面図である。
【図9】円筒状基体の外側表面に感光層を塗布形成した図である。
【図10】基体外部把持のインロー加工の例である。
【符号の説明】
1Y,1M,1C,1K 感光体
2Y,2M,2C,2K 帯電手段
3Y,3M,3C,3K 露光手段
4Y,4M,4C,4K 現像手段
5A 二次転写ローラ(二次転写手段)
5Y,5M,5C,5K 一次転写ローラ(一次転写手段)
6A,6Y,6M,6C,6K クリーニング手段
7 無端ベルト状中間転写体ユニット
10Y,10M,10C,10K 画像形成部
61 ブレード
62 ブラケット
63 支軸
70 無端ベルト状中間転写体
Claims (7)
- 潜像担持体上に潜像を形成する工程、トナーを含む現像剤で当該潜像を現像する工程、前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写する工程、前記中間転写体に転写形成されたトナー像を記録紙に転写する工程を含む画像形成方法において、該潜像担持体が円筒度5〜40μmの有機感光体であり、該トナーが少なくとも樹脂と着色剤とからなる着色粒子を含有するトナーであり、該トナーの50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15であり、且つ該トナーの大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20であり、さらに0.7×(Dp50)以下の粒径のトナーが10個数%以下であることを特徴とする画像形成方法。
- 潜像担持体上にイエロー画像に対応した潜像を形成する工程、イエロートナーを含む現像剤で当該潜像を現像する工程、前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写する工程、潜像担持体上にマゼンタ画像に対応した潜像を形成する工程、マゼンタトナーを含む現像剤で当該潜像を現像する工程、前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写する工程、潜像担持体上にシアン画像に対応した潜像を形成する工程、シアントナーを含む現像剤で当該潜像を現像する工程、前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写する工程、潜像担持体上にブラック画像に対応した潜像を形成する工程、ブラックトナーを含む現像剤で当該潜像を現像する工程、前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写する工程、前記中間転写体に転写形成された各色のトナー像を記録紙に転写する工程を含む画像形成方法において、該潜像担持体が円筒度5〜40μmの有機感光体であり、該各トナーが少なくとも樹脂と着色剤とからなる着色粒子を含有するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックトナーであり、該各トナーの50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15であり、且つ該各トナーの大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20であり、さらに0.7×(Dp50)以下の粒径のトナーが10個数%以下であることを特徴とする画像形成方法。
- 前記有機感光体が表面層に数平均一次粒子径1nm以上、100nm未満の無機粒子を含有し、該有機感光体の表面に、表面エネルギー低下剤を供給しながら画像形成を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成方法。
- 前記表面エネルギー低下剤が脂肪酸金属塩であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成方法。
- 前記脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛であることを特徴とする請求項4に記載の画像形成方法。
- 前記無機粒子が疎水性シリカであり、該疎水性シリカの疎水化度が50%以上であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成方法を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
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2002
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