JP2004077667A - 湿式電子写真用記録シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シート状基材の少なくとも片面に1層以上の塗工層を設けた湿式電子写真用記録シートにおいて、該塗工層を形成する顔料として炭酸カルシウムを50質量%以上含有し、かつブリストー法(J.TAPPI No.51−87紙及び板紙の液体吸収性試験方法)による吸収時間0.19秒の時の石油系溶媒転移量が40ml/m2以上であることを特徴とする湿式電子写真用記録シート。好ましくは、炭酸カルシウムが、軽質炭酸カルシウムであることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、湿式電子写真方式を用いて印刷する湿式電子写真用記録シートに関するものである。さらに詳しくは、トナーを使った湿式電子写真方式を用いて印刷した際に、トナー定着性が良好な湿式電子写真用記録シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トナーを使った電子写真方式を用いて印刷する用途は、端末PC用プリンター、ファックス、または複写機に留まらず、多品種小ロット印刷、可変情報印刷などを可能とする、いわゆるオンデマンド印刷分野でも実用化が進み、技術的進展が目覚しい。特に、電子写真方式については、乾式電子写真方式と湿式電子写真方式共に、高画質化、高速化、省電力化、そして低コスト化へ向けた技術開発が今も進んでいる。
【0003】
印刷物の商品価値を高めるため、印刷物はより高精細で、色再現性の良さが求められているが、これは高速化、低コスト化とは相反する部分があり、トナーや印刷機械の性能はもちろんのこと、電子写真用記録シートに関してもトナー定着性、色再現性、走行性などさらに厳しい品質要望が集まっている。
【0004】
従来、トナー定着性を電子写真用記録シート側から向上させようという取組みは幾つか見られるが、湿式電子写真方式のトナー溶媒の吸収性に着目した有効的な技術は見当たらない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
高速化、省電力が進むにつれ、また印刷物の品質的要望が高まるにつれ、電子写真用記録シートに対してのトナーの定着性は強く求められる。また、印刷後の裁断・製本工程において紙同士の擦れ、印刷面にテープを貼ったりするなどの作業によって、印刷面から部分的にトナーが欠落する場合もある。そこで、本発明の目的は、特に絶縁体として石油系溶剤を用いた湿式トナーの定着性が良好で、印刷後の作業性に優れた湿式電子写真用記録シートを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、以下のような湿式電子写真用記録シートを発明するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の湿式電子写真用記録シートは、シート状基材の少なくとも片面に1層以上の塗工層を設けた湿式電子写真用記録シートにおいて、該塗工層を形成する顔料として炭酸カルシウムを50質量%以上含有し、かつブリストー法(J.TAPPI No.51−87 紙及び板紙の液体吸収性試験方法)による吸収時間0.19秒の時の石油系溶媒転移量が40ml/m2以上であることを特徴とする湿式電子写真用記録シートである。
【0008】
また、本発明において、好ましくは炭酸カルシウムが軽質炭酸カルシウムであることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の湿式電子写真用記録シートについて、詳細に説明する。
【0010】
まず、本発明者は、湿式電子写真方式におけるトナーの湿式電子写真用記録シートへの定着性について検討した。その結果、優れた細孔性、吸油性を発現する炭酸カルシウムを湿式電子写真用記録シートの塗工層に一定比率で配合し、その吸油性をある一定以上の能力に設定することにより、目的とする性能が著しく向上することを見出した。
【0011】
本発明の湿式電子写真用記録シートは、塗工層を形成する顔料として炭酸カルシウムを50質量%以上含有し、かつブリストー法(J.TAPPI No.51−87 紙及び板紙の液体吸収性試験方法)による吸収時間0.19秒の時の石油系溶媒転移量が40ml/m2以上であることを特徴とする。この条件を満たす時に限って、塗工層は湿式トナーを構成する成分である石油系の有機溶剤を吸収し、顔料および接着の働きをもつ樹脂製分の転写および定着を増進する。
【0012】
吸収時間0.19秒の時の石油系溶媒転移量が40ml/m2を下回る場合は、期待するトナー定着性を得られず、また該塗工層を炭酸カルシウムの代わりに、例えば、カオリンなどで設計し、吸収時間0.19秒の時の石油系溶媒転移量が40ml/m2以上とした場合でも、塗層強度が低下してしまい、印刷物同士などの摩擦によってトナーが塗工層と一緒に剥げてしまう場合がある。
【0013】
また、本発明の湿式電子写真用記録シートにおいて、塗工層中の炭酸カルシウムが軽質炭酸カルシウムである場合、塗工層中の細孔が増加し、トナーのアンカー効果は増進され、さらに優れたトナー定着性を発揮することができる。また、塗工層の吸油性が大きく向上し、前述した液体トナーの定着効果がさらに良くなる。
【0014】
本発明において、塗工層に用いられるその他の顔料は、特に限定されるものではなく、例えば、各種カオリン、タルクなどの精製した天然鉱物顔料、サチンホワイト、リトポンなどの複合合成顔料、酸化チタン、水酸化アルミナなどの半合成顔料、プラスチック顔料などの合成顔料が挙げられる。
【0015】
塗工液に用いられる澱粉としては、通常の澱紛、酸化澱紛、エーテル化澱紛、りん酸エステル化澱粉、酵素変性澱紛やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉などが挙げられる。
【0016】
また、塗工液に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸無水共重合体などの合成重合体、珪酸塩などの無機重合体などが挙げられる。
【0017】
塗工液に用いられる澱粉以外のバインダーとしては、スチレン−ブタジエン系、アクリル系、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニルなどの各種共重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物、ワックス、カゼイン、大豆蛋白などの天然物およびこれらをカチオン化したものなどが挙げられる。
【0018】
また、必要に応じて、分散剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤などの通常使用されている各種助剤、およびこれらの各種助剤をカチオン化したものが好適に用いられる。
【0019】
本発明において、塗工層を塗工する方法は、特に限定されるものではなく、サイズプレス、ゲートロール、シムサイザーなどの各種メタードフィルムトランスファー、エアーナイフ、ロッド、ブレード、ダイレクトファウンテンなどの各方式を適宜使用する。
【0020】
本発明において、塗工量としては片面当り2〜30g/m2が好ましい。
【0021】
本発明に用いられる湿式電子写真用記録シートの基材としては、木材パルプ、綿、麻、竹、サトウキビ、トウモロコシ、ケナフなどの植物繊維、羊毛、絹などの動物繊維、レーヨン、キュプラ、リヨセルなどのセルロース再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニールアルコール系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリウレタン系繊維などの化学繊維、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維などの無機繊維をシート状にしたものが使用される。
【0022】
各繊維をシート状にする製法としては、一般的な抄紙工程、湿式法、乾式法、ケミカルボンド、サーマルボンド、スパンボンド、スパンレース、ウォータージェット、メルトブロー、ニードルパンチ、ステッチブロー、フラッシュ紡糸、トウ開維などの各工程から一つ以上が適宜選ばれる。
【0023】
また、これらの繊維には、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン、水酸化アルミ、プラスチック顔料などの各種填料、接着剤、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤などの各種配合剤を各工程、各素材に合わせて好適に配合する。
【0024】
また、その他の基材としては、上質紙、中質紙、色上質、書籍用紙、キャスト用紙、微塗工紙、軽量コート紙、コート紙、アート紙、中質コート紙、グラビア用紙、インディア紙、コートアイボリー、ノーコートアイボリー、アートポスト、コートポスト、ノーコートカード、特板、コートボール、トレーシングペーパー、タイプ紙、PPC用紙、NIP用紙、連続伝票用紙、フォーム用紙、複写紙、ノーカーボン紙、感熱紙、インクジェット用紙、熱転写用紙、合成紙などの紙や板紙、または各種樹脂をフィルム状に成形したものも含まれる。
【0025】
塗工する前の基材は、必要とする密度、平滑度、透気度を得るために各種カレンダー処理を施す場合もある。
【0026】
また、さらに一連の操業で、塗工、乾燥された塗工紙は、密度、平滑度、透気度、外観を得るために、必要に応じて各種カレンダー処理が施される場合がある。
【0027】
本発明における湿式電子写真用記録シートは、湿式電子写真用記録シートとしての使用に留まらず、乾式電子写真用記録シート、オフセット印刷用シート、インクジェット用シート、熱転写用シートなどとして使用することもできる。
【0028】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す「部」および「%」は、特に明示しない限り、質量部および質量%を示す。
【0029】
実施例1〜13および比較例1〜5
下記の配合にて、実施例1〜13および比較例1〜5の湿式電子写真用記録シートを作製した。
<原紙配合>
LBKP(濾水度330〜440mlcsf) 65部
NBKP(濾水度390〜490mlcsf) 35部
【0030】
<内添薬品>
軽質炭酸カルシウム(*原紙中灰分で表示) *9部
市販カチオン化澱粉 1.0部
市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.03部
パルプ、内添薬品を上記の配合で調整し、坪量70g/m2の原紙を抄造した。
【0031】
この原紙に対して、サイズプレスにより両面0.70g/m2の酸化澱粉を付着させ、塗工用原紙を得た。
【0032】
<塗工液の配合>
カオリンクレー *種類と配合部数は表1に示した
重質炭酸カルシウム *種類と配合部数は表1に示した
軽質炭酸カルシウム *種類と配合部数は表1に示した
市販ポリアクリル酸系分散剤 0.1部
スチレンブタジエン系ラテックスバインダー
(平均粒子径120nm、ゲル含有量43%、Tg3℃) 12部
市販燐酸エステル化澱粉 2部
市販カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.1部
水酸化ナトリウムにてpH9.6に調製
【0033】
さらに、上記の割合の塗工液を調製し、ジェットファウンテンアプリケーション/ブレード方式の塗工機を用いて、塗工速度1600m/分で塗工液を片面15g/m2塗工し、乾燥して塗工シートを得た。
【0034】
得られた塗工シートに対し、オフラインでスーパーカレンダー仕上げ装置(段数:10段、剛性ロール:外径400mmのチルドロール、弾性ロール:外径400mmのコットンロール)を用いてカレンダリング処理を施し、湿式電子写真用記録シートを製造した。尚、線圧は記録シートのブリストー吸収量を調整するために、実施例1〜9、および比較例1と4は180kg/cm、実施例10〜13、および比較例2と5は150kg/cm、比較例3は200kg/cmとした。
【0035】
ブリストー法(J.TAPPI No.51−87 紙及び板紙の液体吸収性試験方法)に準じ、吸収時間0.19秒の時(スリット幅0.5mm、紙の移動速度0.1613m/分、軌跡幅1.5mm)の石油系溶媒の転移量を測定した。石油系溶媒としてエクソンモービル化学社のアイソパーGを一回の測定につき30μリットル使用した。
【0036】
上記の湿式電子写真用記録シートのトナー定着性については、以下の方法にて評価を行った。その結果は、表1に示した。
【0037】
1.印刷
印刷機としては、乾式電子写真用転写機としてミノルタ社製「Magicolor2200」、湿式電子写真用転写機としてIndigo社製「E−print1000」を使って印刷を行った。評価に使用するための印刷画像としては、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各4色についてベタ印字部があるような画像を出力するようにした。ベタ印字部の印刷面積としては、最低でも一辺が3cm以上の四角形になるようにした。
【0038】
上記で述べたように「Magicolor2200」および「E−print1000」によって印刷したブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色のベタ印刷部について以下のような定着評価を行った。
【0039】
2.テープ剥離評価
幅18mmのニチバン社製セロハン粘着テープ「セロテープ(R) No.405」を各色の印刷部に貼りむらが無いように貼りつけ、180度剥離で約5mm/秒の速さでゆっくりとテープを剥がした。剥離後のトナーの紙への定着度合いを目視により判定し、以下の基準で4段階評価を行った。「○」以上を発明の対称とした。
【0040】
「◎」:各色共にトナーが紙の上に大部分残っている。
「○」:各色共にトナーが残っているが、テープ剥離後の印刷部の印刷濃度が下がるのがわかる。
「△」:一部の色でトナーが紙から剥がれ、印刷部に白く抜けた部分がある。
「×」:各色共にトナーが紙から剥がれ、印刷部に白く抜けた部分がある。
【0041】
3.こすれ評価
こすれ評価は、JIS P8147「紙および板紙の摩擦係数試験方法」の水平法を応用した。各実施例および比較例について、水平板には、白紙の湿式電子写真用記録シートを取り付け、おもりには、上記の印刷機で印刷された印刷部がある該記録シートを取り付けた。
【0042】
そして、印刷部がある湿式電子写真用記録シートをおもりに貼りつける場合、印刷部の印刷された面が、水平板に取り付けられた白紙の該記録シートと擦りあうようにした。
【0043】
以上のように、試験片を水平板、おもりに貼りつけた後は、JIS P8147に記載されている条件でおもりを水平板の上で滑らせる。「摩擦試験」においては、一つの試験片の組み合わせで一度だけ、水平板上でおもりを滑らせるが、本評価においては、一つの試験片の組み合わせで50回、おもりを水平板の上で滑らせた。
【0044】
その後、おもりに取り付けられた印刷部を観察し、紙同士の擦れによるトナーの脱落度合いを観察した。印刷部のトナーの残り具合いを目視により判定し、以下の基準で4段階評価を行った。「○」以上を発明の対称とした。
【0045】
「◎」:各色共に印刷部の濃度低下がほどんと認められない。
「○」:各色共にわずかながら印刷濃度が下がるのがわかる。
「△」:各色共に印刷濃度が下がるのがわかる。
「×」:各色共に印刷濃度が下がるのがわかり、部分的に白く抜けた部分がある。
【0046】
【表1】
【0047】
表1で明らかなように、本発明のとおり設計した湿式電子写真用記録シートは、非常に優れたトナー定着性を示した。
【0048】
【発明の効果】
以上の結果より、本発明の湿式電子写真用記録シートは、シート状基材の少なくとも片面に1層以上の塗工層を設けた湿式電子写真用記録シートにおいて、該塗工層を形成する顔料として炭酸カルシウムを50質量%以上含有し、かつブリストー法(J.TAPPI No.51−87 紙及び板紙の液体吸収性試験方法)による吸収時間0.16秒の時の石油系溶媒転移量が40ml/m2以上であるように設計したことで、印刷後のトナーの定着性が良好であることを特徴とする。
Claims (2)
- シート状基材の少なくとも片面に1層以上の塗工層を設けた湿式電子写真用記録シートにおいて、該塗工層を形成する顔料として炭酸カルシウムを50質量%以上含有し、かつブリストー法(J.TAPPI No.51−87 紙及び板紙の液体吸収性試験方法)による吸収時間0.19秒の時の石油系溶媒転移量が40ml/m2以上であることを特徴とする湿式電子写真記録シート。
- 炭酸カルシウムが、軽質炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1記載の湿式電子写真用記録シート。
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