JP2004077659A - 重合性組成物及びそれを用いた平版印刷版原版 - Google Patents
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Abstract
【課題】高照度のレーザーを用いた場合に、高感度で画像形成が可能である重合性組成物、及び、その組成物を用いたネガ型記録層を有する平版印刷版原版を提供すること。
【解決手段】(A)800〜1300nmにおける相対発光強度が1.1以上であり、かつ、700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物と、(B)該化合物の発光に対する消光効率が、200mmol/lの濃度において10%以上である重合開始剤と、(C)重合性化合物と、を含有する重合性組成物、及び、その重合性組成物からなる記録層を備えてなる平版印刷版原版。
【選択図】 なし
【解決手段】(A)800〜1300nmにおける相対発光強度が1.1以上であり、かつ、700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物と、(B)該化合物の発光に対する消光効率が、200mmol/lの濃度において10%以上である重合開始剤と、(C)重合性化合物と、を含有する重合性組成物、及び、その重合性組成物からなる記録層を備えてなる平版印刷版原版。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合性組成物、及び該重合性組成物を記録層として用いた赤外線レーザによる高感度で書き込み可能な平版印刷版原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年におけるレーザーの発展は目ざましく、特に、近赤外線から赤外線領域に発光領域を持つ個体レーザーや半導体レーザーでは、高出力・小型化が進んでいる。したがって、コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザーは非常に有用である。
前述の赤外線領域に発光領域を持つ赤外線レーザーを露光光源として使用する赤外線レーザ用ネガ型平版印刷版原版は、光熱変換剤と、光又は熱によりラジカルを発生する重合開始剤と、重合性化合物とを含む記録層を有する。
【0003】
通常、このような記録層を構成するネガ型の画像記録材料は、光又は熱により発生したラジカルを開始剤として重合反応を生起させ、露光部を硬化させて画像部を形成する記録方式を利用している。また、このようなネガ型の画像形成材料において、感度を向上させるために用いられる色素には、励起された状態から失活する過程で、発光を伴うものと、発熱を伴うものがある。色素が発光を伴い失活する場合、発熱する失活は少なく、逆に、色素が発熱を伴い失活する場合、発光する失活は少ないと考えられる。
上記のように、発熱を伴い失活する、つまり発光強度が低いタイプの色素を含む画像形成材料を用いた平版印刷版原版の場合、主として熱による画像形成機構となることから、色素を励起するために70〜200mJ/cm2程度の非常に大きな露光量を必要とする。そのため、露光量が少ないと、画像形成反応、つまり硬化反応が進行し難く、画像部を形成するための感度が不充分であるという問題を有していた。
一方、感度を向上させるには、従来から用いられてきた1000W/cm2以下の照度(版面パワー密度)を有するものではなく、よりレーザー光の照度を上げることが好ましいが、照度の向上に伴って、上記で述べたように、発光強度が低いタイプの色素が多くの熱を発生することになり、光による画像形成反応の効率をかえって低下させてしまう問題を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点を考慮してなされたものであり、本発明の目的は、高照度のレーザーを用いた場合に、高感度で画像形成が可能である重合性組成物、及び、その組成物を用いたネガ型記録層を有する平版印刷版原版を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の発光強度の高い化合物を色素として用い、かつ、その化合物の発光を消光させる、つまりその発光による分解し易い特定の化合物を重合開始剤として組み合わせて用いることにより、高照度レーザー露光及び発光の光のエネルギーを効果的に画像形成に用いることを可能とし、結果として、フォトンモードによる高感度の記録が可能となる組成物となることを見出し、更に、このような組成物を含有する記録層を設けることにより、高感度の平版印刷版原版が得られることを見出し本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明の重合性組成物は、(A)800〜1300nmにおける相対発光強度が1.1以上であり、かつ、700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物と、(B)該化合物の発光に対する消光効率が、200mmol/lの濃度において10%以上である重合開始剤と、(C)重合性化合物と、を含有することを特徴とする。
【0007】
この本発明の重合性組成物は、前記(A)800〜1300nmにおける相対発光強度が1.1以上であり、かつ、700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物を、700〜1200nmにおける吸収極大波長の吸光度が0.5以上となるように調整した場合に、(B)の重合開始剤は、該化合物の発光に対する消光効率が、200mmol/lの濃度において10%以上であることが好ましい。また、前記(A)の化合物と(B)の重合開始剤とのモル比(B)/(A)が5以上である場合に、(B)の重合開始剤は、該化合物の発光に対する消光効率が、200mmol/lの濃度において10%以上であることが好ましい。
【0008】
また、請求項2に係る本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、(A)800〜1300nmにおける相対発光強度が1.1以上であり、かつ、700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物と、(B)該化合物の発光に対する消光効率が、200mmol/lの濃度において10%以上である重合開始剤と、(C)重合性化合物と、を含有する重合性組成物からなる記録層を備えてなることを特徴とする。
【0009】
本発明の作用は明確ではないが、以下のことが推測される。本発明の重合性組成物に含まれる(A)800〜1300nmにおける相対発光強度が1.1以上であり、かつ、700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物(以下、適宜、特定色素と称する。)は、露光により励起された後、発光を伴い失活するものである。また、(B)該化合物((A)特定色素)の発光に対する消光効率が、200mmol/lの濃度において10%以上である重合開始剤(以下、適宜、特定重合開始剤)は、より好ましくは、(A)特定色素と(B)特定重合開始剤とのモル比(B)/(A)が5以上である場合において、(A)特定色素の発光に対して消光効率が比較的高く、その発光により分解され易い。これらのことから、画像部は、露光による光エネルギーに加えて(A)特定色素の発光、更には、その発光により速やかに分解される(B)特定重合開始剤の存在により、効果的に光エネルギーを画像形成反応(硬化反応)に用いることができる。その結果、本発明の重合性組成物及びそれを用いた平版印刷版原版は、フォトンモードによる画像形成反応が可能となり、高感度化が達成できると推測される。
【0010】
なお、本発明において「フォトンモードによる画像形成(反応)」とは、フォトンモード露光による記録が可能であることを意味する。本発明におけるフォトンモード露光の定義について詳述する。Hans−Joachim Timpe,IS&Ts NIP 15:1999 International Conference on Digital Printing Technologies.P.209に記載されているように、感光体材料において光吸収物質(例えば、色素)を光励起させ、化学的或いは物理的変化を経て、画像を形成するその光吸収物質の光励起から化学的或いは物理的変化までのプロセスには大きく分けて二つのモードが存在することが知られている。1つは光励起された光吸収物質が感光材料中の他の反応物質と何らかの光化学的相互作用(例えば、エネルギー移動、電子移動)をすることで失活し、その結果として活性化した反応物質が上述の画像形成に必要な化学的或いは物理変化を引き起こすいわゆるフォトンモードであり、もう1つは光励起された光吸収物質が熱を発生し失活し、その熱を利用して反応物質が上述の画像形成に必要な化学的或いは物理変化を引き起こすいわゆるヒートモードである。その他、物質が局所的に集まった光のエネルギーにより爆発的に飛び散るアブレーションや1分子が多数の光子を一度に吸収する多光子吸収など特殊なモードもあるがここでは省略する。
上述の各モードを利用した露光プロセスをフォントモード露光及びヒートモード露光と呼ぶ。フォントモード露光とヒートモード露光の技術的な違いは、目的とする反応のエネルギー量に対し露光する数個の光子のエネルギー量を加算して使用できるかどうかで区別されるものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の重合性組成物及びそれを用いた平版印刷版原版について詳細に説明する。
〔重合性組成物〕
本発明の重合性組成物は、(A)800〜1300nmにおける相対発光強度が1.1以上であり、かつ、700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物と、(B)200mmol/lの濃度において前記蛍光に対する消光効率が10%以上である重合開始剤と、(C)重合性化合物と、を含有することを特徴とする。各構成要素について、以下に、詳細に記載する。
【0012】
[(A)800〜1300nmにおける相対発光強度が1.1以上であり、かつ、700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物(特定色素)]
本発明において、「相対発光強度」とは、下記構造を有する、日本シイベルヘグナー(株)社製、S 0094、2−[2−[2−Chloro−3−[2−(1,3−dihydro−1,1,3−trimethyl−2H−benzo[e]−indol−2−ylidene)−ethylidene]−1−cyclohexene−1−ly]−ethenyl]−1,1,3−trimethyl−1H−benzo[e]indolium 4−methylbenzenesulfonateの発光強度を1とし、それに対する相対強度を表す。
【0013】
【化1】
【0014】
また、ここで測定する発光は、蛍光及び燐光を指し、浜松ホトニクス社製、安定型ピコ秒ライトパルサ、ピコ秒蛍光寿命測定装置C4780を用いて、膜状態或いは溶液状態にて測定することが可能である。
色素の発光を溶液にて測定する際には、メタノール、エタノール、プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ブタノール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン等の一般的に用いられる溶媒を使用することができる。
【0015】
本発明における(A)特定色素としては、上述の発光強度及び吸収極大波長を有していれば、特に、限定されないが、好ましくは、シアニン色素、オキソノール色素、スクワリリウム色素、ピリリウム色素、チオピリリウム色素、ポリメチン色素、ジインモニウム色素等が挙げられる。その中でも、特に、下記一般式(a)で表されるシアニン色素が好ましい。
【0016】
【化2】
【0017】
上記一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−X2−L1、及び以下に示す2つの基のいずれかを表す。ここで、X2は、酸素原子、又は硫黄原子を表し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、又はヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。また、X3は、窒素原子を表し、L2及びL3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜12の炭化水素基、炭素原子数6〜14の芳香族基、ヘテロ原子を有する芳香族環、又はヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。L2及びL3は、互いに結合して、環構造を形成してもよい。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを表す。
【0018】
【化3】
【0019】
R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。感光層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0020】
Ar1、Ar2は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を表す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を表す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を表す。R3とR5、R4とR8は、互いに結合して、5員環又は6員環を形成していることが好ましい。また、Za−は、対アニオンを示す。ただし、R1〜R8のいずれかにスルホ基が置換されている場合は、Za−は必要ない。好ましいZa−は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0021】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特願平11−310623号明細書の段落番号[0017]〜[0019]、特願2000−224031号明細書の段落番号[0012]〜[0038]、特願2000−211147号明細書の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
【0022】
このような上記一般式(a)で示されるシアニン色素としては、特に、発光の観点から、X1は、−X2−L1、又は以下に示す基であることが好ましい。
【0023】
【化4】
【0024】
更に、L1、L2、及びL3が、脂環基、ヘテロ環基、ナフチル基、アントラニル基、又はハロゲン原子で置換されたフェニル基であることがより好ましい。加えて、R1とR2が互いに結合して、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
また、R3とR5、R4とR8が、それぞれ互いに結合して、5員環又は6員環を形成していることが好ましい。
以下に、本発明において、(A)特定色素として好適なシアニン色素の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
【化5】
【0026】
【化6】
【0027】
【化7】
【0028】
【化8】
【0029】
【化9】
【0030】
【化10】
【0031】
【化11】
【0032】
また、本発明において、(A)特定色素として好適に用いられる他の例としては、電荷を有さない色素や、インドレニン骨格上に電荷を有さない色素が挙げられる。その具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
【化12】
【0034】
更に、本発明において、(A)特定色素として好適に用いられる更に他の例としては、ピリリウム色素やチオピリリウム色素が挙げられ、その中でも、脂環構造を2つ以上、好ましくは3つ以上有するものが特に好適である。その具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
【化13】
【0036】
本発明の重合性組成物には、(A)特定色素は、組成物を構成する全固形分中、0.1〜20重量%含有されることが好ましく、1〜10重量%含有されることが更に好ましい。
【0037】
[(B)(A)特定色素の発光に対する消光効率が、200mmol/lの濃度において10%以上である重合開始剤(特定重合開始剤)]
本発明において、「(A)の化合物の発光に対する消光効率」とは、一定の吸光度を有する色素溶液中に、特定重合開始剤を200mmol/lの濃度になるように添加した色素溶液の発光強度と、特定重合開始剤を添加していない色素溶液の発光強度と、をそれぞれ測定し、その差から算出される。
【0038】
本発明における(B)特定重合開始剤は、消光効率が上記の範囲であれば、いずれのものも使用することができるが、その中でも好適に用いられるものとして、ボレート化合物、トリアジン化合物、ロフィンダイマーなどが挙げられるが、感度の面からボレート化合物、又はトリアジン化合物が好ましい。
【0039】
本発明において、特定重合開始剤として好適に用いられるボレート化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0040】
【化14】
【0041】
上記一般式(I)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立に有機基を表す。但し、R1、R2、R3、及びR4のうちの少なくとも1つは、アルキル基である。Zn+はn価のカチオンを表し、nは1〜6の整数を表す。
【0042】
以下、上記一般式(I)について詳しく説明する。
R1、R2、R3、及びR4の例としては、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基及び置換アルキニル基、ヘテロ環基が挙げられる。但し、R1、R2、R3、及びR4のうちの少なくとも1つは置換又は非置換のアルキル基である。
【0043】
アルキル基としては炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基等を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
【0044】
置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基及びその共役塩基基(以下、カルボキシラートと称す)、アルコキシカルボニル基、
【0045】
アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、N−アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルスルファモイル基(−SO2NHSO2(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルスルファモイル基(−SO2NHSO2(allyl))及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルカルバモイル基(−CONHSO2(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルカルバモイル基(−CONHSO2(allyl))及びその共役塩基基、アルコキシシリル基(−Si(O−alkyl)3)、アリーロキシシリル基(−Si(O−allyl)3)、ヒドロキシシリル基(−Si(OH)3)及びその共役塩基基、ホスホノ基(−PO3H2)及びその共役塩基基(以下、ホスホナト基と称す)、ジアルキルホスホノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−PO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナト基と称す)、モノアリールホスホノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナト基と称す)、ホスホノオキシ基(−OPO3H2)及びその共役塩基基(以後、ホスホナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナトオキシ基と称す)、モノアリールホスホノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0046】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基などを挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基、フェニルエチニル基等が挙げられる。
【0047】
上述のアシル基(R4CO−)としては、R4が水素原子及び上記のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基を挙げることができる。
【0048】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。
【0049】
好ましい置換アルキル基の具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルブチル基、エトキシカルボニルメチル基、ブトキシカルボニルメチル基、
【0050】
アリルオキシカルボニルメチル基、ベンジルオキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルフェニルメチル基、トリクロロメチルカルボニルメチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホプロピル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスホノブチル基、ホスホナトヘキシル基、ジエチルホスホノブチル基、ジフェニルホスホノプロピル基、メチルホスホノブチル基、メチルホスホナトブチル基、トリルホスホノヘキシル基、トリルホスホナトヘキシル基、ホスホノオキシプロピル基、ホスホナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基及び以下に示す基等を挙げることができる。
【0051】
【化15】
【0052】
アリール基としては1個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものをあげることができ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、、インデニル基、アセナブテニル基、フルオレニル基等を挙げることができ、これらのなかでは、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0053】
置換アリール基は、置換基がアリール基に結合したものであり、前述のアリール基の環形成炭素原子上に置換基として、水素を除く一価の非金属原子団を有するものが用いられる。好ましい置換基の例としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびに、先に置換アルキル基における置換基として示したものを挙げることができる。
【0054】
これらの置換アリール基の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシエトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−フェニルカルバモイルオキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アリルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプロピルカルバモイルフェニル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、スルファモイルフェニル基、N−エチルスルファモイルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基、ジエチルホスホノフェニル基、ジフェニルホスホノフェニル基、メチルホスホノフェニル基、メチルホスホナトフェニル基、トリルホスホノフェニル基、トリルホスホナトフェニル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メチルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル基、2−ブチニルフェニル基、3−ブチニルフェニル基等を挙げることができる。
【0055】
アルケニル基としては、前記導入可能な置換基において説明したアルケニル基と同様のものを挙げることができる。置換アルケニル基は、置換基がアルケニル基の水素原子と置き換わり結合したものであり、この置換基としては、上述の置換アルキル基における置換基が用いられ、一方、アルケニル基は上述のアルケニル基を用いることができる。好ましい置換アルケニル基の例としては、下記構造で示すもの等を挙げることができる。
【0056】
【化16】
【0057】
アルキニル基としては、前記導入可能な置換基において説明したアルキニル基と同様のものを挙げることができる。置換アルキニル基は、置換基がアルキニル基の水素原子と置き換わり、結合したものであり、この置換基としては、上述の置換アルキル基における置換基が用いられ、一方、アルキニル基は上述のアルキニル基を用いることができる。
【0058】
ヘテロ環基とは、ヘテロ環上の水素を1つ除した一価の基及びこの一価の基から更に水素を1つ除し、上述の置換アルキル基における置換基が結合してできた一価の基(置換ヘテロ環基)である。好ましいヘテロ環の例としては、下記構造で示すものが挙げられる。
【0059】
【化17】
【0060】
【化18】
【0061】
【化19】
【0062】
次に、R1とR2、R2とR3が互いに結合して環を形成する場合の例を示す。R1とR2、R2とR3が互いに結合して形成する脂肪族環としては、5員環、6員環、7員環及び8員環の脂肪族環を挙げることができ、より好ましくは、5員環、6員環の脂肪族環を挙げることができる。
これらは更に、これらを構成する炭素原子上に置換基を有していても良く、置換基の例としては、前述の置換アルキル基上の置換基を挙げることができる。また、環構成炭素の一部が、ヘテロ原子(例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等)で置換されていても良い。また更に、この脂肪族環の一部が芳香族環の一部を形成していても良い。
【0063】
また、n価のカチオンであるZn+の例としては、アルカリ金属イオン、第4級アンモニウム、ピリジニウム、キノリニウム、ジアゾニウム、モノホリニウム、テトラゾリウム、アクリジニウム、ホスホニウム、スルホニウム、オキソスルホニウム、硫黄、酸素、炭素ハロゲニウム、Cu、Ag、Hg、Pd、Fe、Co、Sn、Mo、Cr、Ni、As、Seなどが挙げられ、より好ましくは第4級アンモニウムである。
【0064】
以下に一般式(I)で表される化合物の好ましい具体例〔(I−1)〜(I−101)〕を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、下記化合物中、(I−38)で表される例示化合物は、化合物(I−34)、テトラメチルアンモニウメチル−トリス(トリメチルシリルメチル)−ボレート及びテトラメチルアンモニウムジメチルビス(トリメチルシリルメチル)ボレート及びテトラメチルアンモニウムジメチルビス(トリメチルシリルメチル)ボレートの3:10:1の混合物である。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
【表7】
【0072】
上記のボレート化合物のうち、m−位にフッ素置換されたフェニル基を少なくとも1つ含む化合物がより好ましい。
【0073】
また、本発明において、特定重合開始剤として好適なトリアジン化合物は下記一般式(II)で表される化合物である。
【0074】
【化20】
【0075】
上記一般式(II)中、X2はハロゲン原子を表す。Y2は−CX2、−NH2、−NHR32−NR32又は−OR32を表す。ここでR32はアルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基を表す。R31は−CX2、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基又は置換アルケニル基を表す。
【0076】
上記一般式(II)で表されるようなトリアジン化合物具体例としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、例えば、2−フェニル4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(2’,4’−ジクロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロルエチル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン等が挙げられる。
【0077】
その他、英国特許1,388,492号明細書記載の化合物、例えば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等、特開昭53−133428号記載の化合物、例えば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン)、2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン等、独国特許3,337,024号明細書記載の化合物、例えば、下記例示化合物(T−1)〜(T−8)等を挙げることができる。
【0078】
【化21】
【0079】
【化22】
【0080】
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、たとえば2−メチル−4,6−ビス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロムメチル)−S−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−トリブロムメチル−S−トリアジン、2−メトキシ−4−メチル−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等を挙げることができる。
更に特開昭62−58241号記載の化合物、例えば、例示化合物(T−9)〜(T−14)等を挙げることができる。
【0081】
【化23】
【0082】
更に、特開平5−281728号記載の化合物、例えば、例示化合物(T−15)〜(T−22)等を挙げることができる。
【0083】
【化24】
【0084】
本発明の重合性組成物には、(B)特定重合開始剤は、組成物を構成する全固形分中、1〜25重量%含有されることが好ましく、5〜15重量%含有されることが更に好ましい。
【0085】
この本発明の重合性組成物は、(A)800〜1300nmにおける相対発光強度が1.1以上であり、かつ、700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物(特定色素)を、700〜1200nmにおける吸収極大波長の吸光度が0.5以上となるように調整した場合に、(B)特定重合開始剤は、該(A)特定色素の発光に対する消光効率が、200mmol/lの濃度において10%以上であることが好ましい。ここで、700〜1200nmにおける吸収極大波長の吸光度が0.5以上となるように調整するのは、本発明の重合性組成物を平版印刷版原版の記録層等に用いる場合に、十分な感度で硬化反応を進行させるためである。前記吸光度は、0.5以上2.5以下に調整することがより好ましい。更に、(B)特定重合開始剤の濃度を特定の数値に規定しているのは、実際の重合性組成物に添加する際に適量となる(B)特定重合開始剤の濃度における消光効率を求めることがより好ましいことに起因する。そのため、この200mmol/lのという数値は、重合性組成物中における(B)特定重合開始剤の濃度にほぼ相当する値である。この濃度が低すぎる場合には、消光過程が測定しにくい問題が生じることがある。また、濃度が高すぎる場合には、(B)特定重合開始剤が溶剤に溶解しずらく、測定が困難になったり、会合が形成され易くなるという問題が生じることがある。
【0086】
また、本発明の重合性組成物は、(A)特定色素と(B)特定重合開始剤とのモル比(B)/(A)が5以上である場合に、(B)特定重合開始剤は、該化合物の発光に対する消光効率が、200mmol/lの濃度において10%以上であることが好ましい。これは、(B)特定重合開始剤の消光効果が、系内における(A)特定色素との相対量ではなく、絶対量で決まるものなので、実際の重合性組成物に添加する量によって消光効率を検討する必要があることに起因する。そのため、実用上、モル比(B)/(A)が5以上で用いられる場合が多いことから、(A)特定色素と(B)特定重合開始剤とのモル比がこのような数値範囲であることが好ましいことになる。
【0087】
本発明において、重合性組成物に対する露光光源としては、好ましくは1000〜10000W/cm2であり、より好ましくは2000〜10000W/cm2であり、最も好ましくは5000〜10000W/cm2の範囲の照度を有する800〜830nmの赤外線レーザーダイオードを用いることが好ましい。
また、本発明の重合性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いる場合、現像システムの面から、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどの酸素遮断層(保護層)が無い方が好ましいが、本発明の重合性組成物は、1000W/cm2以上の出力レーザーで露光すると、短時間での露光により画像形成に充分なエネルギーを得ることが可能であるため、重合反応の進行に対する酸素の影響を受けにくく、酸素遮断層を用いなくとも、高感度で画像形成ができるという優れた特性を有する。
【0088】
[(C)重合性化合物]
本発明で用いられる(C)重合性化合物は、重合性の不飽和基を有する化合物であればよく、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、好ましくは、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくはま2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつものを包含する。
【0089】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類があげられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能若しくは多官能イソシアナート類、エポキシ類との付加反応物、単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。
【0090】
また、イソシアナート基や、エポキシ基、等の親電子性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、ハロゲン基や、トシルオキシ基、等の脱離性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0091】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレー卜、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビト一ルペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0092】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p―(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0093】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
【0094】
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
【0095】
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0096】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0097】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものをあげることができる。
【0098】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(2)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0099】
【化25】
【0100】
上記一般式(2)中、R及びR’は、それぞれ独立にH原子或いはCH3を示す。
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
【0101】
更に、特開昭63−277653,特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に硬化反応速度に優れた重合性化合物を得ることができる。
【0102】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートをあげることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等もあげることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0103】
これらの、付加重合性化合物について、どのような構造を用いるか、単独で使用するか併用するか、添加量はどうかといった、使用方法の詳細は、最終的な感材の性能設計にあわせて、任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。感光スピードの点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感光性と、強度を両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や、疎水性の高い化合物は感光スピードや、膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましく無い場合がある。
【0104】
また、重合性組成物中の他の成分(例えば、バインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。
【0105】
〔平版印刷版原版〕
次に、前記の重合性組成物を用いた本発明の平版印刷版原版について説明する。本発明の平版印刷版原版では、記録層に前記重合性組成物を用いる。
(記録層)
まず、本発明の平版印刷版原版において画像形成機能を有する記録層について説明する。本発明の平版印刷版原版の記録層は、(A)特定色素と、(B)特定重合開始剤と、(C)重合性化合物と、を含有する重合性組成物が用いられ、更に(D)バインダーポリマーを含有することがより好ましい。この記録層は、赤外線レーザの照射により、(A)特定色素が発光及び発熱し、その発生した光等により(B)特定重合開始剤が分解してラジカルを発生し、(C)重合性化合物の硬化反応を促進し、露光部が硬化して画像部となるネガ型の画像を形成する。
【0106】
本発明の平版印刷版原版の記録層を形成するにあたって、(B)特定重合開始剤は、記録層を構成する全固形分中、0.5〜20重量%含有されることが好ましい。この(B)重合開始剤は、(A)特定色素と組み合わさることで、赤外線レーザを照射した際に、(A)特定色素から発生する光又は熱或いはその双方のエネルギーによりラジカルを発生し、(C)重合性化合物の重合を開始、促進させる機能を有する。
【0107】
平版印刷版用原版の記録層に用いる(C)重合性化合物は、該化合物の説明において詳述したとおりの化合物を用いるが、どのような化合物を用いるかは、前記した要件の他、後述の支持体、オーバーコート層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。重合性組成物中の(C)重合性化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましくない相分離が生じたり、重合性化合物の粘着性による製造工程上の問題(例えば、感材成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、平版印刷版原版とした場合、現像液からの析出が生じる等の問題を生じうる。これらの観点から、好ましい配合比は、多くの場合、記録層を構成する組成物全固形分に対して5〜80重量%、好ましくは25〜75重量%である。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、(C)重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
【0108】
なお、本発明の前記重合性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いる場合には、前記した(A)特定色素は、記録層に用いられる重合性組成物中に他の成分と同一の層に添加してもよいし、記録層以外の層を設けそこへ添加することもできる。
ネガ型の平版印刷版原版の記録層を作成(製膜)した際に、記録層の波長760nm〜1200nmの範囲における吸収極大波長での光学濃度が、0.1〜3.0の間にあることが好ましい。この範囲をはずれた場合、感度が低くなる傾向がある。光学濃度は前記(A)特定色素の添加量と記録層の厚みとにより決定されるため、所定の光学濃度は両者の条件を制御することにより得られる。記録層の光学濃度は常法により測定することができる。測定方法としては、例えば、透明、或いは白色の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの記録層を形成し、透過型の光学濃度計で測定する方法、アルミニウム等の反射性の支持体上に記録層を形成し、反射濃度を測定する方法等が挙げられる。
【0109】
(D)バインダーポリマー
本発明の平版印刷版原版においては、上述のように、記録層に更にバインダーポリマーを添加することが好ましい。バインダーポリマーとしては、線状有機高分子重合体を含有させることが好ましい。このような「線状有機高分子重合体」としては、どのようなものを使用しても構わない。好ましくは水現像或いは弱アルカリ水現像を可能とする水或いは弱アルカリ水可溶性又は膨潤性である線状有機高分子重合体が選択される。線状有機高分子重合体は、組成物の皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水或いは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機高分子重合体を用いると水現像が可能になる。このような線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0110】
特に、これらの中で〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体及び〔アリル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体は、膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、好適である。
【0111】
また、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特願平10−116232号等に記載される、酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーは、非常に、強度に優れるので、耐刷性・低露光適性の点で有利である。
また、特開平11−171907記載のアミド基を有するバインダーは優れた現像性と膜強度をあわせもち、好適である。
【0112】
更に、この他に水溶性線状有機高分子として、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)―プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。これらの線状有機高分子重合体は全組成物中に任意な量を混和させることができる。しかし、90重量%を超える場合には形成される画像強度等の点で好ましい結果を与えない。好ましくは30〜85重量%である。またエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と線状有機高分子重合体は、重量比で1/9〜7/3の範囲とするのが好ましい。
【0113】
本発明に係るバインダーポリマーとして、実質的に水に不溶でアルカリ水溶液に可溶なものを用いてもよい。これにより、現像液として、環境上好ましくない有機溶剤を用いることがないか若しくは非常に少ない使用量に制限できる。このようなバインダーポリマーの酸価(ポリマーlgあたりの酸含率を化学等量数で表したもの)と分子量は、画像強度と現像性の観点から適宜選択される。好ましい酸価は、0.4〜3.0meq/gであり、好ましい分子量は3000から50万の範囲で、より好ましくは、酸価が0.6〜2.0、分子量が1万から30万の範囲である。
【0114】
(E)その他の成分
本発明の平版印刷版の記録層を構成する組成物中には、更に、その用途、製造方法等に適したその他の成分を適宜添加することができる。以下、好ましい添加剤に関し例示する。
(E−1)共増感剤
ある種の添加剤(以後、共増感剤という)を用いることで、感度を更に向上させることができる。これらの作用機構は、明確ではないが、多くは次のような化学プロセスに基づくものと考えられる。即ち、熱重合開始剤により開始される光反応、と、それに引き続く付加重合反応の過程で生じる様々な中間活性種(ラジカル、カチオン)と、共増感剤が反応し、新たな活性ラジカルを生成するものと推定される。これらは、大きくは、(a)還元されて活性ラジカルを生成しうるもの、(b)酸化されて活性ラジカルを生成しうるもの、(C)活性の低いラジカルと反応し、より活性の高いラジカルに変換するか、若しくは連鎖移動剤として作用するもの、に分類できるが、個々の化合物がこれらのどれに属するかに関しては、通説がない場合も多い。
【0115】
(a)還元されて活性ラジカルを生成する化合物
炭素−ハロゲン結合結合を有する化合物:還元的に炭素−ハロゲン結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、トリハロメチル−s−トリアジン類や、トリハロメチルオキサジアゾール類等が好適に使用できる。
窒素−窒素結合を有する化合物:還元的に窒素−窒素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的にはヘキサアリールビイミダゾール類等が好適に使用される。
酸素一酸素結合を有する化合物:還元的に酸素−酸素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、有機過酸化物類等が好適に使用される。
オニウム化合物:還元的に炭素−ヘテロ結合や、酸素−窒素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、ジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、N−アルコキシピリジニウム(アジニウム)塩類等が好適に使用される。
フエロセン、鉄アレーン錯体類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。
【0116】
(b)酸化されて活性ラジカルを生成する化合物
アルキルアート錯体:酸化的に炭素−ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には、例えば、トリアリールアルキルボレート類が好適に使用される。
アルキルアミン化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC−X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシル基、トリメチルシリル基、ベンジル基等が好適である。具体的には、例えば、エタノールアミン類、N−フェニルグリシン類、N−トリメチルシリルメチルアニリン類等があげられる。
含硫黄、含錫化合物:上述のアミン類の窒素原子を硫黄原子、錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成しうる。また、S−S結合を有する化合物もS−S解裂による増感が知られている。
【0117】
α−置換メチルカルボニル化合物:酸化により、カルボニル−α炭素間の結合解裂により、活性ラジカルを生成しうる。また、カルボニルをオキシムエーテルに変換したものも同様の作用を示す。具体的には、2−アルキル−1−[4−(アルキルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロノン−1類、並びに、これらと、ヒドロキシアミン類とを反応したのち、N−OHをエーテル化したオキシムエーテル類をあげることができる。
スルフィン酸塩類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。具体的は、アリールスルフィン駿ナトリウム等をあげることができる。
【0118】
(c)ラジカルと反応し高活性ラジカルに変換、若しくは連鎖移動剤として作用する化合物:例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、若しくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。具体的には、例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類等があげられる。
【0119】
これらの共増感剤のより具体的な例は、例えば、特開昭9−236913号公報中に、感度向上を目的とした添加剤として、多く記載されており、それらを本発明においても適用することができる。
これらの共増感剤は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。使用量はエチレン性不飽和二重結合を有する化合物100重量部に対し0.05〜100重量部、好ましくは1〜80重量部、更に好ましくは3〜50重量部の範囲が適当である。
【0120】
(E−2)重合禁止剤
また、本発明においては以上の基本成分の他に重合性組成物の製造中或いは保存中において重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t―ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t―ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の重量に対して約0.01重量%〜約5重量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、平版印刷版用原版とする場合、支持体等への塗布後の乾燥の過程でその記録層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5重量%〜約10重量%が好ましい。
【0121】
(E−3)着色剤等
更に、本発明の重合性組成物を平版印刷版用原版に用いる場合、その記録層の着色を目的として染料若しくは顔料を添加してもよい。これにより、印刷版としての、製版後の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させることができる。着色剤としては、多くの染料は光重合系記録層の感度の低下を生じるので、着色剤としては、特に顔料の使用が好ましい。具体例としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料がある。染料及び顔料の添加量は全組成物の約0.5重量%〜約5重量%が好ましい。
【0122】
(E−4)その他の添加剤
更に、本発明の重合性組成物を平版印刷版用原版に用いる場合、硬化皮膜の物性を改良するために無機充填剤や、その他可塑剤、記録層表面のインク着肉性を向上させうる感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
【0123】
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、結合剤を使用した場合、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と結合剤との合計重量に対し10重量%以下添加することができる。
【0124】
また、後述する膜強度(耐刷性)向上を目的とした、現像後の加熱・露光の効果を強化するための、UV開始剤や、熟架橋剤等の添加もできる。
その他、記録層と支持体との密着性向上や、未露光記録層の現像除去性を高めるための添加剤、中間層を設けることを可能である。例えば、ジアゾニウム構造を有する化合物や、ホスホン化合物、等、基板と比較的強い相互作用を有する化合物の添加や下塗りにより、密着性が向上し、耐刷性を高めることが可能であり、一方ポリアクリル酸や、ポリスルホン酸のような親水性ポリマーの添加や下塗りにより、非画像部の現像性が向上し、汚れ性の向上が可能となる。
【0125】
平版印刷版を提供するために、本発明の重合性組成物を支持体上に塗布する際には、種々の有機溶剤に溶かして使用に供される。ここで使用する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N―ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ―ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして、塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50重量%が適当である。
【0126】
前記記録層の支持体への塗布量は、記録層の感度、現像性、露光膜の強度・耐刷性等の影響を考慮し、用途に応じ適宜選択することが望ましい。塗布量が少なすぎる場合には、耐刷性が十分でなくなる。一方多すぎる場合には、感度が下がり、露光に時間がかかる上、現像処理にもより長い時間を要するため好ましくない。本発明の平版印刷版原版における塗布量は、一般的には、乾燥後の重量で約0.lg/m2〜約10g/m2の範囲が適当である。より好ましくは0.5〜5g/m2である。
【0127】
(保護層)
本発明の平版印刷版原版では、重合性化合物を含む記録層の上に、必要に応じて保護層を設けることができる。このような平版印刷版原版は、通常、露光を大気中で行うが、保護層は、記録層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や塩基性物質等の低分子化合物の記録層への混入を防止し、大気中での露光による画像形成反応の阻害を防止する。従って、このような保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低いことであり、更に、露光に用いる光の透過性が良好で、記録層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。
【0128】
このような、保護層に関する工夫が従来よりなされており、米国特許第3、458、311号、特開昭55−49729号に詳しく記載されている。保護層に使用できる材料としては、例えば、比較的、結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることがよく、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような水溶性ポリマーが知られていが、これらのうち、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていても良い。また、同様に一部が他の共重合成分を有していても良い。
【0129】
ポリビニルアルコールの具体例としては71〜100%加水分解され、分子量が300から2400の範囲のものをあげることができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。
【0130】
保護層の成分(PVAの選択、添加剤の使用)、塗布量等は、酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。一般には使用するPVAの加水分解率が高い程(保護層中の未置換ビニルアルコール単位含率が高い程)、膜厚が厚い程酸素遮断性が高くなり、感度の点で有利である。しかしながら、極端に酸素遮断性を高めると、製造時・生保存時に不要な重合反応が生じたり、また画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生じたりという問題を生じる。また、画像部との密着性や、耐傷性も版の取り扱い上極めて重要である。即ち、水溶性ポリマーからなる親水性の層を新油性の重合層に積層すると、接着力不足による膜剥離が発生しやすく、剥離部分が酸素の重合阻害により膜硬化不良などの欠陥を引き起こす。
【0131】
これに対し、これら2層間の接着性を改すべく種々の提案がなされている。例えば、特開昭49−70702号、英国公開第1,303,578号には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルジヨン又は水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体などを20〜60重量%混合し、重合層の上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。本発明における保護層に対しては、これらの公知の技術をいずれも適用することができる。このような保護層の塗布方法については、例えば、米国特許第3,458,311号、特開昭55−49729号に詳しく記載されている。
【0132】
更に、保護層に他の機能を付与することもできる。例えば、露光に使う光(例えば、赤外線レーザならば波長760〜1200nm)の透過性に優れ、かつ露光に係わらない波長の光を効率良く吸収しうる、着色剤(水溶性染料等)の添加により、感度低下を起こすことなく、セーフライト適性を更に高めることができる。
【0133】
(樹脂中間層)
本発明の平版印刷版原版においては、必要に応じて、記録層と支持体の間にアルカリ可溶性高分子からなる樹脂中間層を設けることができる。露光によりアルカリ現像液への溶解性が低下する赤外線感応層である光重合性の化合物を含む記録層が、露光面或いはその近傍に設けられることで赤外線レーザに対する感度が良好であるとともに、支持体と該赤外線感応性の記録層との間にこの樹脂中間層が存在し、断熱層として機能することで、赤外線レーザの露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率良く使用されることからの高感度化が図れる。また、露光部においては、アルカリ現像液に対して非浸透性となった感光層がこの樹脂中間層の保護層として機能するために、現像安定性が良好になるとともにディスクリミネーションに優れた画像が形成され、且つ、経時的な安定性も確保されるものと考えられ、未露光部においては、未硬化のバインダー成分が速やかに現像液に溶解、分散し、更には、支持体に隣接して存在するこの樹脂中間層がアルカリ可溶性高分子からなるものであるため、現像液に対する溶解性が良好で、例えば、活性の低下した現像液などを用いた場合でも、残膜などが発生することなく速やかに溶解するため、現像性に優れるものと考えられる。
【0134】
(支持体)
本発明の平版印刷版原版に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)等が挙げられる。これらは、樹脂フィルムや金属板などの単一成分のシートであっても、2以上の材料の積層体であってもよく、例えば、上記のごとき金属がラミネート、若しくは蒸着された紙やプラスチックフィルム、異種のプラスチックフィルム同志の積層シート等が含まれる。
【0135】
前記支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は高々10重量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。
前記アルミニウム板の厚みは、およそ0.1〜0.6mm程度、好ましくは0.15〜0.4mm、特に好ましくは0.2〜0.3mmである。
【0136】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための、例えば、界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ水溶液等による脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
この様に粗面化されたアルミニウム板は、所望により、アルカリエッチング処理、中和処理を経て、表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施すことができる。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸或いはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0137】
陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。
陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2以上が好適であるが、より好ましくは2.0〜6.0g/m2の範囲である。陽極酸化被膜が1.0g/m2未満であると耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
尚、このような陽極酸化処理は平板印刷版の支持体の印刷に用いる面に施されるが、電気力線の裏回りにより、裏面にも0.01〜3g/m2の陽極酸化被膜が形成されるのが一般的である。
【0138】
支持体表面の親水化処理は、上記陽極酸化処理の後に施されるものであり、従来より知られている処理法が用いられる。このような親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号公報に開示されているようなアルカリ金属珪酸塩(例えば、珪酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体が珪酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか、又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号公報に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が用いられる。
これらの中で、本発明において特に好ましい親水化処理は珪酸塩処理である。珪酸塩処理について、以下に説明する。
【0139】
上述の如き処理を施したアルミニウム板の陽極酸化皮膜を、アルカリ金属珪酸塩が0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜10重量%であり、25℃でのpHが10〜13である水溶液に、例えば、15〜80℃で0.5〜120秒浸漬する。アルカリ金属珪酸塩水溶液のpHが10より低いと液はゲル化し13.0より高いと酸化皮膜が溶解されてしまう。本発明に用いられるアルカリ金属珪酸塩としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムなどが使用される。アルカリ金属珪酸塩水溶液のpHを高くするために使用される水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがある。なお、上記の処理液にアルカリ土類金属塩若しくは第IVB族金属塩を配合してもよい。アルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、燐酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、ホウ酸塩などの水溶性の塩が挙げられる。第IVB族金属塩として、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、蓚酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムなどを挙げることができる。アルカリ土類金属塩若しくは、第IVB族金属塩は単独又は2以上組み合わせて使用することができる。これらの金属塩の好ましい範囲は0.01〜10重量%であり、更に好ましい範囲は0.05〜5.0重量%である。
珪酸塩処理により、アルミニウム板表面上の親水性が一層改善されるため、印刷の際、インクが非画像部に付着しにくくなり、汚れ性能が向上する。
【0140】
支持体の裏面には、必要に応じて、バックコートが設けられてもよい。かかるバックコートとしては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。
これらの被覆層のうち、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、Si(OC4H9)4などの珪素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから与られる金属酸化物の被覆層が耐現像性に優れており特に好ましい。
【0141】
(露光)
以上のようにして、本発明の平版印刷版原版を作成することができる。この平版印刷版原版は、波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザにより画像露光される。本発明においては、レーザ照射後すぐに現像処理を行っても良いが、レーザ照射工程と現像工程の間に加熱処理を行ってもよい。加熱処理の条件は、80℃〜150℃の範囲内で10秒〜5分間行うことが好ましい。この加熱処理により、レーザ照射時、記録に必要なレーザエネルギーを減少させることができる。
【0142】
(現像)
本発明の平版印刷版原版は、通常、赤外線レーザにより画像露光したのち、好ましくは、水又はアルカリ性水溶液にて現像される。
本発明においては、レーザー照射後直ちに現像処理を行ってもよいが、レーザー照射工程と現像工程との間に加熱処理工程を設けることもできる。加熱処理条件は、80℃〜150℃の範囲で、10秒〜5分間行うことが好ましい。この加熱処理により、レーザー照射時、記録に必要なレーザーエネルギーを減少させることができる。
現像液としては、アルカリ性水溶液が好ましく、好ましいpH領域としては、pH10.5〜12.5の範囲が挙げられ、pHll.0〜12.5の範囲のアルカリ性水溶液により現像処理することが更に好ましい。アルカリ性水溶液としてpH10.5未満のものを用いると非画像部に汚れが生じやすくなる傾向があり、pH12.5を超える水溶液により現像処理すると画像部の強度が低下するおそれがある。
【0143】
現像液として、アルカリ性水溶液を用いる場合、本発明の画像記録材料の現像液及び補充液としては、従来公知のアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウム等の無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も用いられる。
これらのアルカリ剤は単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0144】
更に、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液と同じもの又は、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換することなく、多量の平版印刷版原版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。
【0145】
現像液及び補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤等を添加できる。
現像液中には界面活性剤を1〜20重量%加えることが好ましく、より好ましくは、3〜10重量%の範囲である。界面活性剤の添加量が1重量%未満であると現像性向上効果が充分に得られず、20重量%を超えて添加すると画像の耐摩耗性など強度が低下するなどの弊害が出やすくなる。
好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。具体的には、例えば、ラウリルアルコールサルフェートのナトリウム塩、ラウリルアルコールサルフェートのアンモニウム塩、オクチルアルコールサルフェートのナトリウム塩、例えば、イソプロピルナフタレンスルホン酸のナトリウム塩、イソブチルナフタレンスルホン酸のナトリウム塩、ポリオキシエチレングリコールモノナフチルエチル硫酸エステルのナトリウム塩、ドデンルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、メタニトロベンゼンスルホン酸のナトリウム塩などのようなアルキルアリールスルホン酸塩、第2ナトリウムアルキルサルフェートなどの炭素数8〜22の高級アルコール硫酸エステル類、セチルアルコールリン酸エステルのナトリウム塩などのような脂肪族アルコールリン酸エステル塩類、例えば、C17H33CON(CH3)CH2CH2SO3Naなどのようなアルキルアミドのスルホン酸塩類、例えば、ナトリウムスルホコハク酸ジオクチルエステル、ナトリウムスルホコハク酸ジヘキシルエステルなどの二塩基性脂肪族エステルのスルホン酸塩類、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムメトサルフェートなどのアンモニウム塩類、例えば、ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩などのアミン塩、例えば、グリセロールの脂肪酸モノエステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸モノエステルなどの多価アルコール類、例えば、ポリエチレングリコールモノナフチルエチル、ポリエチレングリコールモノ(ノエルフェノール)エチルなどのポリエチレングリコールエチル類などが含まれる。
【0146】
好ましい有機溶剤としては、水に対する溶解度が約10重量%以下のものが挙げられ、更に好ましくは水に対する溶解度が5重量%以下のものから選ばれる。例えば、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニルプロパノール、1,4−フェニルブタノール、2,2−フェニルブタノール、1,2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキシベンジルアルコール、m―メトキシベンジルアルコール、p―メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール及び3−メチルシクロヘキサノール等を挙げることができる。有機溶媒の含有量は、使用時の現像液の総重量に対して1〜5重量%が好適である。その使用量は界面活性剤の使用量と密接な関係があり、有機溶媒の量が増すにつれ、界面活性剤の量は増加させることが好ましい。これは界面活性剤の量が少ない状態で、有機溶媒の量を多く用いると有機溶媒が溶解せず、従って良好な現像性の確保が期待できなくなるからである。
【0147】
更に、現像液及び補充液には必要に応じて、消泡剤、硬水軟化剤のような添加剤を含有させることもできる。硬水軟化剤としては、例えば、Na2P2O7、Na5P3O3、Na3P3O9、Na2O4P(NaO3P)ΡO3Na2、カルゴン(ポリメタリン酸ナトリウム)などのポリリン酸塩、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、ナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなアミノポリカルボン酸類の他、2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2−ホスホノブタノントリカルボン酸−2,3,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2,2、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類を挙げることができる。このような硬水軟化剤の最適量は、使用される硬水の硬度及びその使用量に応じて変化するが、一般的には、使用時の現像液中に0.01〜5重量%、より好ましくは0.01〜0.5重量%の範囲で含有させうる。
【0148】
更に、自動現像機を用いて、該平版印刷版を現像する場合には、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。この場合、米国特許第4,882,246号に記載されている方法で補充することが好ましい。
【0149】
このような界面活性剤、有機溶剤及び還元剤等を含有する現像液としては、例えば、特開昭51−77401号に記載されている、ベンジルアルコール、アニオン性界面活性剤、アルカリ剤及び水からなる現像液組成物、特開昭53−44202号に記載されている、ベンジルアルコール、アニオン性界面活性剤、及び水溶性亜硫酸塩を含む水性溶液からなる現像液組成物、特開昭55−155355号に記載されている、水に対する溶解度が常温において10重量%以下である有機溶剤、アルカリ剤、及び水を含有する現像液組成物等が挙げられ、本発明においても好適に使用される。
【0150】
以上記述した現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の画像記録材料を印刷版原版として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0151】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷用版材用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷用版材を搬送する装置と各処理液槽とスプレー装置とからなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロール等によって印刷版原版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、電気伝導度をセンサーにて感知し、自動的に補充することもできる。
また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0152】
以上のようにして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。
平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスクィージ、或いは、スクィージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
【0153】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行なわれている処理を施こすことができるが、水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。
このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0154】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0155】
(実施例1〜10)
[基板の作製]
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレンで洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミス−水懸濁液を用いこの表面を砂目立て表面のエッチングを行い、水洗後、更に20%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
次に、この板を7%硫酸を電解液として電流密度15A/dm2で3g/m2の直流電極酸化被膜を設けた後、水洗し、乾燥して基板[A]を作成した。
基板[A]を珪酸ナトリウム2重量%水溶液で25℃で15秒処理し、水洗して基板[B]を作成した。
【0156】
[中間層の形成]
次に下記の手順によりSG法の液状組成物(ゾル液)を調整した。
(ゾル液組成)
・メタノール 130g
・水 20g
・85重量%リン酸 16g
・テトラエトキシシラン 50g
・3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 60g
【0157】
上記の各化合物を混合し、撹拌した。約5分で発熱が認められた。60分間反応させた後、内容物を別の容器へ移し、メタノール3000gを加えることにより、ゾル液を得た。
このゾル液をメタノール/エチレングリコール=9/1(重量比)で希釈して、上述の様に作製された基板[A]上に、基板上のSiの量が3mg/m2となるように塗布し、100℃にて1分間乾燥させ、基板[C]を得た。
【0158】
[平版印刷版原版の形成]
上述の様に作成された基板[A]乃至基板[C]のいずれかを支持体とし、その表面に下記組成の記録層塗布液を塗布し、120℃で1分乾燥し、1.3g/m2の記録層を形成し、実施例1〜10の平版印刷版原版を得た。使用する基板、(A)特定色素、(B)特定重合開始剤、(C)重合性化合物、及び(D)バインダーは下記表8に示す通りである。なお、(A)特定色素及び(B)特定重合開始剤は、それぞれ、上記の具体例として挙げられたものを用いており、表中にはその具体例を示す数字又は数字とアルファベットの組み合わせが記載されている。
【0159】
【0160】
【表8】
【0161】
〔(A)特定色素の相対発光強度〕
820nmにおける吸光度を0.5となるようにエタノールにて希釈した(A)特定色素溶液に、浜松ホトニクス社製安定型ピコ秒ライトパルサ、及び、レーザーダイオードSLDH078を用い、繰り返し周波数2MHz、パルス幅50ps、ピークパワー70mWで発振した820±20nmのレーザ光を照射し、浜松ホトニクス社製ピコ秒蛍光寿命測定装置C4780を用いて発光強度を測定した。そして、日本シイベルヘグナー(株)製、S 0094、2−[2−[2−Chloro−3−[2−(1,3−dihydro−1,1,3−trimethyl−2H−benzo[e]−indol−2−ylidene)−ethylidene]−1−cyclohexene−1−ly]−ethenyl]−1,1,3−trimethyl−1H−benzo[e]indolium 4−methylbenzenesulfonateについても上記と同条件にて発光強度を測定し、その発光強度を1とし、それに対する相対強度を求めた。得られた相対発光強度を表8に記載した。
【0162】
〔(B)特定重合開始剤の消光効率〕
820nmにおける吸光度を0.5となるようにエタノールにて希釈した(A)特定色素溶液中に、(B)特定重合開始剤を200mmol/lの濃度になるように添加した色素溶液の発光強度と、(B)特定重合開始剤を添加していない色素溶液の発光強度と、をそれぞれ測定し、その差から(B)特定重合開始剤の消光効率の算出した。得られた消光効率を表8に記載した。
【0163】
〔表8中の重合性化合物〕
(M−1)
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(SR−355、サートマー社製)
(M−2)
イソシアヌレートジアクリレート/トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート モル比:1/1
【0164】
〔表8中のバインダー〕
(B−1)
アリルメタクリレート/エチルメタクリレート/メタクリル酸
(共重合モル比:60/20/20)
重量平均分子量(Mw)=100,000〜150,000
(B−2)
下記ジイソシアネートとジオールの縮合物であるポリウレタン樹脂
(a)4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
(b)ヘキサメチレンジイソシアネート
(c)ポリプロピレングルコール(重量平均分子量:500)
(d)2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸
((a)/(b)/(c)/(d)、共重合モル比:35/15/18/32)
重量平均分子量(Mw)=50,000
【0165】
(比較例1〜3)
比較のため、基板[A]上に、前記記録層塗布液において(A)特定色素又は(B)特定重合開始剤を、下記の構造を有する表1に記載の化合物に代えて、表8に示す組成の記録層塗布液を用いて記録層を形成し、平版印刷版原版を得た(比較例1〜3)。
【0166】
【化26】
【0167】
[感度の評価]
得られた平版印刷版原版を、Creo社製TrendSetter3244VXを用いて、10Wの出力で、回転数を変化させて全面露光を行い、下記の条件で現像した後、明瞭な画像が形成された際の回転数(rpm)を求めた。この結果を表8に示す。
なお、回転数が高いほど、短時間の露光により記録可能であり、高感度であると判断する。
【0168】
(現像)
上記の条件による露光後、富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900Nを用い現像処理した。現像液は、仕込み液、補充液ともに、下記D−1現像液の1:6水希釈液、富士写真フイルム(株)製DN−3Cの1:1水希釈液、又は、富士写真フイルム(株)製DP−4の1:8水希釈液を用いた。現像浴の温度は30℃とした。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液を用いた。
【0169】
(D−1現像液)
・水酸化カリウム 3g
・炭酸水素ナトリウム 1g
・炭酸カリウム 2g
・亜硫酸ナトリウム 1g
・ポリエチレングリコールモノナフチルエーテル 150g
・ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩 50g
・エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩 8g
・水 785g
【0170】
表8の結果より、本発明の平版印刷版原版(実施例1〜10)は全体的に回転数が高く、高感度化を達成していることが分かる。一方、発光強度が低い色素を用い、かつ、該色素に対する消光効率に低い重合開始剤を用いた比較例1及び2の平版印刷版原版、また、発光強度が高い特定色素を用い、かつ、該特定色素に対する消光効率に低い重合開始剤を用いた比較例3の平版印刷版原版は、いずれも回転数が低く、各実施例と比較して、感度が低いということがわかった。
【0171】
(実施例11、比較例4)
前記実施例1、比較例1で得られた平版印刷版原版の記録層上に、ポリビニルアルコール(ケン化度:98モル%、重合度:550)の3重量%水溶液を乾燥後の塗布量が2g/m2となるように塗布し、100℃で2分間乾燥して記録層上に保護層を設けた平版印刷版原版を得て、それぞれ実施例11、比較例4とした。
得られた平版印刷版原版を、露光時の出力を6Wに代えた他は、上記実施例1〜10、比較例1〜3と同様の条件で、露光、現像して平版印刷版を製版し、同様に感度を評価した。その結果、実施例11の回転数は190rpm、比較例4の回転数は170rpmであった。
以上の結果より、感光層の上に保護層を設けた場合においても、保護層を有しない実施例1及び比較例1と同様の傾向が見られ、本発明の平版印刷版原版(実施例11)は感度に優れていたが、比較例4は実施例11と比べて感度が劣っていた。
【0172】
【発明の効果】
本発明の重合性組成物は、高感度で画像形成が可能である。また、この重合性組成物を記録層として用いた平版印刷版原版も、感度が優れるという効果を奏する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合性組成物、及び該重合性組成物を記録層として用いた赤外線レーザによる高感度で書き込み可能な平版印刷版原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年におけるレーザーの発展は目ざましく、特に、近赤外線から赤外線領域に発光領域を持つ個体レーザーや半導体レーザーでは、高出力・小型化が進んでいる。したがって、コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザーは非常に有用である。
前述の赤外線領域に発光領域を持つ赤外線レーザーを露光光源として使用する赤外線レーザ用ネガ型平版印刷版原版は、光熱変換剤と、光又は熱によりラジカルを発生する重合開始剤と、重合性化合物とを含む記録層を有する。
【0003】
通常、このような記録層を構成するネガ型の画像記録材料は、光又は熱により発生したラジカルを開始剤として重合反応を生起させ、露光部を硬化させて画像部を形成する記録方式を利用している。また、このようなネガ型の画像形成材料において、感度を向上させるために用いられる色素には、励起された状態から失活する過程で、発光を伴うものと、発熱を伴うものがある。色素が発光を伴い失活する場合、発熱する失活は少なく、逆に、色素が発熱を伴い失活する場合、発光する失活は少ないと考えられる。
上記のように、発熱を伴い失活する、つまり発光強度が低いタイプの色素を含む画像形成材料を用いた平版印刷版原版の場合、主として熱による画像形成機構となることから、色素を励起するために70〜200mJ/cm2程度の非常に大きな露光量を必要とする。そのため、露光量が少ないと、画像形成反応、つまり硬化反応が進行し難く、画像部を形成するための感度が不充分であるという問題を有していた。
一方、感度を向上させるには、従来から用いられてきた1000W/cm2以下の照度(版面パワー密度)を有するものではなく、よりレーザー光の照度を上げることが好ましいが、照度の向上に伴って、上記で述べたように、発光強度が低いタイプの色素が多くの熱を発生することになり、光による画像形成反応の効率をかえって低下させてしまう問題を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点を考慮してなされたものであり、本発明の目的は、高照度のレーザーを用いた場合に、高感度で画像形成が可能である重合性組成物、及び、その組成物を用いたネガ型記録層を有する平版印刷版原版を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の発光強度の高い化合物を色素として用い、かつ、その化合物の発光を消光させる、つまりその発光による分解し易い特定の化合物を重合開始剤として組み合わせて用いることにより、高照度レーザー露光及び発光の光のエネルギーを効果的に画像形成に用いることを可能とし、結果として、フォトンモードによる高感度の記録が可能となる組成物となることを見出し、更に、このような組成物を含有する記録層を設けることにより、高感度の平版印刷版原版が得られることを見出し本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明の重合性組成物は、(A)800〜1300nmにおける相対発光強度が1.1以上であり、かつ、700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物と、(B)該化合物の発光に対する消光効率が、200mmol/lの濃度において10%以上である重合開始剤と、(C)重合性化合物と、を含有することを特徴とする。
【0007】
この本発明の重合性組成物は、前記(A)800〜1300nmにおける相対発光強度が1.1以上であり、かつ、700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物を、700〜1200nmにおける吸収極大波長の吸光度が0.5以上となるように調整した場合に、(B)の重合開始剤は、該化合物の発光に対する消光効率が、200mmol/lの濃度において10%以上であることが好ましい。また、前記(A)の化合物と(B)の重合開始剤とのモル比(B)/(A)が5以上である場合に、(B)の重合開始剤は、該化合物の発光に対する消光効率が、200mmol/lの濃度において10%以上であることが好ましい。
【0008】
また、請求項2に係る本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、(A)800〜1300nmにおける相対発光強度が1.1以上であり、かつ、700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物と、(B)該化合物の発光に対する消光効率が、200mmol/lの濃度において10%以上である重合開始剤と、(C)重合性化合物と、を含有する重合性組成物からなる記録層を備えてなることを特徴とする。
【0009】
本発明の作用は明確ではないが、以下のことが推測される。本発明の重合性組成物に含まれる(A)800〜1300nmにおける相対発光強度が1.1以上であり、かつ、700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物(以下、適宜、特定色素と称する。)は、露光により励起された後、発光を伴い失活するものである。また、(B)該化合物((A)特定色素)の発光に対する消光効率が、200mmol/lの濃度において10%以上である重合開始剤(以下、適宜、特定重合開始剤)は、より好ましくは、(A)特定色素と(B)特定重合開始剤とのモル比(B)/(A)が5以上である場合において、(A)特定色素の発光に対して消光効率が比較的高く、その発光により分解され易い。これらのことから、画像部は、露光による光エネルギーに加えて(A)特定色素の発光、更には、その発光により速やかに分解される(B)特定重合開始剤の存在により、効果的に光エネルギーを画像形成反応(硬化反応)に用いることができる。その結果、本発明の重合性組成物及びそれを用いた平版印刷版原版は、フォトンモードによる画像形成反応が可能となり、高感度化が達成できると推測される。
【0010】
なお、本発明において「フォトンモードによる画像形成(反応)」とは、フォトンモード露光による記録が可能であることを意味する。本発明におけるフォトンモード露光の定義について詳述する。Hans−Joachim Timpe,IS&Ts NIP 15:1999 International Conference on Digital Printing Technologies.P.209に記載されているように、感光体材料において光吸収物質(例えば、色素)を光励起させ、化学的或いは物理的変化を経て、画像を形成するその光吸収物質の光励起から化学的或いは物理的変化までのプロセスには大きく分けて二つのモードが存在することが知られている。1つは光励起された光吸収物質が感光材料中の他の反応物質と何らかの光化学的相互作用(例えば、エネルギー移動、電子移動)をすることで失活し、その結果として活性化した反応物質が上述の画像形成に必要な化学的或いは物理変化を引き起こすいわゆるフォトンモードであり、もう1つは光励起された光吸収物質が熱を発生し失活し、その熱を利用して反応物質が上述の画像形成に必要な化学的或いは物理変化を引き起こすいわゆるヒートモードである。その他、物質が局所的に集まった光のエネルギーにより爆発的に飛び散るアブレーションや1分子が多数の光子を一度に吸収する多光子吸収など特殊なモードもあるがここでは省略する。
上述の各モードを利用した露光プロセスをフォントモード露光及びヒートモード露光と呼ぶ。フォントモード露光とヒートモード露光の技術的な違いは、目的とする反応のエネルギー量に対し露光する数個の光子のエネルギー量を加算して使用できるかどうかで区別されるものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の重合性組成物及びそれを用いた平版印刷版原版について詳細に説明する。
〔重合性組成物〕
本発明の重合性組成物は、(A)800〜1300nmにおける相対発光強度が1.1以上であり、かつ、700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物と、(B)200mmol/lの濃度において前記蛍光に対する消光効率が10%以上である重合開始剤と、(C)重合性化合物と、を含有することを特徴とする。各構成要素について、以下に、詳細に記載する。
【0012】
[(A)800〜1300nmにおける相対発光強度が1.1以上であり、かつ、700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物(特定色素)]
本発明において、「相対発光強度」とは、下記構造を有する、日本シイベルヘグナー(株)社製、S 0094、2−[2−[2−Chloro−3−[2−(1,3−dihydro−1,1,3−trimethyl−2H−benzo[e]−indol−2−ylidene)−ethylidene]−1−cyclohexene−1−ly]−ethenyl]−1,1,3−trimethyl−1H−benzo[e]indolium 4−methylbenzenesulfonateの発光強度を1とし、それに対する相対強度を表す。
【0013】
【化1】
【0014】
また、ここで測定する発光は、蛍光及び燐光を指し、浜松ホトニクス社製、安定型ピコ秒ライトパルサ、ピコ秒蛍光寿命測定装置C4780を用いて、膜状態或いは溶液状態にて測定することが可能である。
色素の発光を溶液にて測定する際には、メタノール、エタノール、プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ブタノール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン等の一般的に用いられる溶媒を使用することができる。
【0015】
本発明における(A)特定色素としては、上述の発光強度及び吸収極大波長を有していれば、特に、限定されないが、好ましくは、シアニン色素、オキソノール色素、スクワリリウム色素、ピリリウム色素、チオピリリウム色素、ポリメチン色素、ジインモニウム色素等が挙げられる。その中でも、特に、下記一般式(a)で表されるシアニン色素が好ましい。
【0016】
【化2】
【0017】
上記一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−X2−L1、及び以下に示す2つの基のいずれかを表す。ここで、X2は、酸素原子、又は硫黄原子を表し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、又はヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。また、X3は、窒素原子を表し、L2及びL3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜12の炭化水素基、炭素原子数6〜14の芳香族基、ヘテロ原子を有する芳香族環、又はヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。L2及びL3は、互いに結合して、環構造を形成してもよい。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを表す。
【0018】
【化3】
【0019】
R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。感光層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0020】
Ar1、Ar2は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を表す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を表す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を表す。R3とR5、R4とR8は、互いに結合して、5員環又は6員環を形成していることが好ましい。また、Za−は、対アニオンを示す。ただし、R1〜R8のいずれかにスルホ基が置換されている場合は、Za−は必要ない。好ましいZa−は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0021】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特願平11−310623号明細書の段落番号[0017]〜[0019]、特願2000−224031号明細書の段落番号[0012]〜[0038]、特願2000−211147号明細書の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
【0022】
このような上記一般式(a)で示されるシアニン色素としては、特に、発光の観点から、X1は、−X2−L1、又は以下に示す基であることが好ましい。
【0023】
【化4】
【0024】
更に、L1、L2、及びL3が、脂環基、ヘテロ環基、ナフチル基、アントラニル基、又はハロゲン原子で置換されたフェニル基であることがより好ましい。加えて、R1とR2が互いに結合して、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
また、R3とR5、R4とR8が、それぞれ互いに結合して、5員環又は6員環を形成していることが好ましい。
以下に、本発明において、(A)特定色素として好適なシアニン色素の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
【化5】
【0026】
【化6】
【0027】
【化7】
【0028】
【化8】
【0029】
【化9】
【0030】
【化10】
【0031】
【化11】
【0032】
また、本発明において、(A)特定色素として好適に用いられる他の例としては、電荷を有さない色素や、インドレニン骨格上に電荷を有さない色素が挙げられる。その具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
【化12】
【0034】
更に、本発明において、(A)特定色素として好適に用いられる更に他の例としては、ピリリウム色素やチオピリリウム色素が挙げられ、その中でも、脂環構造を2つ以上、好ましくは3つ以上有するものが特に好適である。その具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
【化13】
【0036】
本発明の重合性組成物には、(A)特定色素は、組成物を構成する全固形分中、0.1〜20重量%含有されることが好ましく、1〜10重量%含有されることが更に好ましい。
【0037】
[(B)(A)特定色素の発光に対する消光効率が、200mmol/lの濃度において10%以上である重合開始剤(特定重合開始剤)]
本発明において、「(A)の化合物の発光に対する消光効率」とは、一定の吸光度を有する色素溶液中に、特定重合開始剤を200mmol/lの濃度になるように添加した色素溶液の発光強度と、特定重合開始剤を添加していない色素溶液の発光強度と、をそれぞれ測定し、その差から算出される。
【0038】
本発明における(B)特定重合開始剤は、消光効率が上記の範囲であれば、いずれのものも使用することができるが、その中でも好適に用いられるものとして、ボレート化合物、トリアジン化合物、ロフィンダイマーなどが挙げられるが、感度の面からボレート化合物、又はトリアジン化合物が好ましい。
【0039】
本発明において、特定重合開始剤として好適に用いられるボレート化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0040】
【化14】
【0041】
上記一般式(I)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立に有機基を表す。但し、R1、R2、R3、及びR4のうちの少なくとも1つは、アルキル基である。Zn+はn価のカチオンを表し、nは1〜6の整数を表す。
【0042】
以下、上記一般式(I)について詳しく説明する。
R1、R2、R3、及びR4の例としては、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基及び置換アルキニル基、ヘテロ環基が挙げられる。但し、R1、R2、R3、及びR4のうちの少なくとも1つは置換又は非置換のアルキル基である。
【0043】
アルキル基としては炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基等を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
【0044】
置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基及びその共役塩基基(以下、カルボキシラートと称す)、アルコキシカルボニル基、
【0045】
アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、N−アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルスルファモイル基(−SO2NHSO2(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルスルファモイル基(−SO2NHSO2(allyl))及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルカルバモイル基(−CONHSO2(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルカルバモイル基(−CONHSO2(allyl))及びその共役塩基基、アルコキシシリル基(−Si(O−alkyl)3)、アリーロキシシリル基(−Si(O−allyl)3)、ヒドロキシシリル基(−Si(OH)3)及びその共役塩基基、ホスホノ基(−PO3H2)及びその共役塩基基(以下、ホスホナト基と称す)、ジアルキルホスホノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−PO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナト基と称す)、モノアリールホスホノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナト基と称す)、ホスホノオキシ基(−OPO3H2)及びその共役塩基基(以後、ホスホナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナトオキシ基と称す)、モノアリールホスホノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0046】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基などを挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基、フェニルエチニル基等が挙げられる。
【0047】
上述のアシル基(R4CO−)としては、R4が水素原子及び上記のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基を挙げることができる。
【0048】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。
【0049】
好ましい置換アルキル基の具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルブチル基、エトキシカルボニルメチル基、ブトキシカルボニルメチル基、
【0050】
アリルオキシカルボニルメチル基、ベンジルオキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルフェニルメチル基、トリクロロメチルカルボニルメチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホプロピル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスホノブチル基、ホスホナトヘキシル基、ジエチルホスホノブチル基、ジフェニルホスホノプロピル基、メチルホスホノブチル基、メチルホスホナトブチル基、トリルホスホノヘキシル基、トリルホスホナトヘキシル基、ホスホノオキシプロピル基、ホスホナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基及び以下に示す基等を挙げることができる。
【0051】
【化15】
【0052】
アリール基としては1個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものをあげることができ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、、インデニル基、アセナブテニル基、フルオレニル基等を挙げることができ、これらのなかでは、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0053】
置換アリール基は、置換基がアリール基に結合したものであり、前述のアリール基の環形成炭素原子上に置換基として、水素を除く一価の非金属原子団を有するものが用いられる。好ましい置換基の例としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびに、先に置換アルキル基における置換基として示したものを挙げることができる。
【0054】
これらの置換アリール基の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシエトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−フェニルカルバモイルオキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アリルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプロピルカルバモイルフェニル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、スルファモイルフェニル基、N−エチルスルファモイルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基、ジエチルホスホノフェニル基、ジフェニルホスホノフェニル基、メチルホスホノフェニル基、メチルホスホナトフェニル基、トリルホスホノフェニル基、トリルホスホナトフェニル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メチルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル基、2−ブチニルフェニル基、3−ブチニルフェニル基等を挙げることができる。
【0055】
アルケニル基としては、前記導入可能な置換基において説明したアルケニル基と同様のものを挙げることができる。置換アルケニル基は、置換基がアルケニル基の水素原子と置き換わり結合したものであり、この置換基としては、上述の置換アルキル基における置換基が用いられ、一方、アルケニル基は上述のアルケニル基を用いることができる。好ましい置換アルケニル基の例としては、下記構造で示すもの等を挙げることができる。
【0056】
【化16】
【0057】
アルキニル基としては、前記導入可能な置換基において説明したアルキニル基と同様のものを挙げることができる。置換アルキニル基は、置換基がアルキニル基の水素原子と置き換わり、結合したものであり、この置換基としては、上述の置換アルキル基における置換基が用いられ、一方、アルキニル基は上述のアルキニル基を用いることができる。
【0058】
ヘテロ環基とは、ヘテロ環上の水素を1つ除した一価の基及びこの一価の基から更に水素を1つ除し、上述の置換アルキル基における置換基が結合してできた一価の基(置換ヘテロ環基)である。好ましいヘテロ環の例としては、下記構造で示すものが挙げられる。
【0059】
【化17】
【0060】
【化18】
【0061】
【化19】
【0062】
次に、R1とR2、R2とR3が互いに結合して環を形成する場合の例を示す。R1とR2、R2とR3が互いに結合して形成する脂肪族環としては、5員環、6員環、7員環及び8員環の脂肪族環を挙げることができ、より好ましくは、5員環、6員環の脂肪族環を挙げることができる。
これらは更に、これらを構成する炭素原子上に置換基を有していても良く、置換基の例としては、前述の置換アルキル基上の置換基を挙げることができる。また、環構成炭素の一部が、ヘテロ原子(例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等)で置換されていても良い。また更に、この脂肪族環の一部が芳香族環の一部を形成していても良い。
【0063】
また、n価のカチオンであるZn+の例としては、アルカリ金属イオン、第4級アンモニウム、ピリジニウム、キノリニウム、ジアゾニウム、モノホリニウム、テトラゾリウム、アクリジニウム、ホスホニウム、スルホニウム、オキソスルホニウム、硫黄、酸素、炭素ハロゲニウム、Cu、Ag、Hg、Pd、Fe、Co、Sn、Mo、Cr、Ni、As、Seなどが挙げられ、より好ましくは第4級アンモニウムである。
【0064】
以下に一般式(I)で表される化合物の好ましい具体例〔(I−1)〜(I−101)〕を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、下記化合物中、(I−38)で表される例示化合物は、化合物(I−34)、テトラメチルアンモニウメチル−トリス(トリメチルシリルメチル)−ボレート及びテトラメチルアンモニウムジメチルビス(トリメチルシリルメチル)ボレート及びテトラメチルアンモニウムジメチルビス(トリメチルシリルメチル)ボレートの3:10:1の混合物である。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
【表7】
【0072】
上記のボレート化合物のうち、m−位にフッ素置換されたフェニル基を少なくとも1つ含む化合物がより好ましい。
【0073】
また、本発明において、特定重合開始剤として好適なトリアジン化合物は下記一般式(II)で表される化合物である。
【0074】
【化20】
【0075】
上記一般式(II)中、X2はハロゲン原子を表す。Y2は−CX2、−NH2、−NHR32−NR32又は−OR32を表す。ここでR32はアルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基を表す。R31は−CX2、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基又は置換アルケニル基を表す。
【0076】
上記一般式(II)で表されるようなトリアジン化合物具体例としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、例えば、2−フェニル4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(2’,4’−ジクロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロルエチル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン等が挙げられる。
【0077】
その他、英国特許1,388,492号明細書記載の化合物、例えば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等、特開昭53−133428号記載の化合物、例えば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン)、2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン等、独国特許3,337,024号明細書記載の化合物、例えば、下記例示化合物(T−1)〜(T−8)等を挙げることができる。
【0078】
【化21】
【0079】
【化22】
【0080】
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、たとえば2−メチル−4,6−ビス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロムメチル)−S−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−トリブロムメチル−S−トリアジン、2−メトキシ−4−メチル−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等を挙げることができる。
更に特開昭62−58241号記載の化合物、例えば、例示化合物(T−9)〜(T−14)等を挙げることができる。
【0081】
【化23】
【0082】
更に、特開平5−281728号記載の化合物、例えば、例示化合物(T−15)〜(T−22)等を挙げることができる。
【0083】
【化24】
【0084】
本発明の重合性組成物には、(B)特定重合開始剤は、組成物を構成する全固形分中、1〜25重量%含有されることが好ましく、5〜15重量%含有されることが更に好ましい。
【0085】
この本発明の重合性組成物は、(A)800〜1300nmにおける相対発光強度が1.1以上であり、かつ、700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物(特定色素)を、700〜1200nmにおける吸収極大波長の吸光度が0.5以上となるように調整した場合に、(B)特定重合開始剤は、該(A)特定色素の発光に対する消光効率が、200mmol/lの濃度において10%以上であることが好ましい。ここで、700〜1200nmにおける吸収極大波長の吸光度が0.5以上となるように調整するのは、本発明の重合性組成物を平版印刷版原版の記録層等に用いる場合に、十分な感度で硬化反応を進行させるためである。前記吸光度は、0.5以上2.5以下に調整することがより好ましい。更に、(B)特定重合開始剤の濃度を特定の数値に規定しているのは、実際の重合性組成物に添加する際に適量となる(B)特定重合開始剤の濃度における消光効率を求めることがより好ましいことに起因する。そのため、この200mmol/lのという数値は、重合性組成物中における(B)特定重合開始剤の濃度にほぼ相当する値である。この濃度が低すぎる場合には、消光過程が測定しにくい問題が生じることがある。また、濃度が高すぎる場合には、(B)特定重合開始剤が溶剤に溶解しずらく、測定が困難になったり、会合が形成され易くなるという問題が生じることがある。
【0086】
また、本発明の重合性組成物は、(A)特定色素と(B)特定重合開始剤とのモル比(B)/(A)が5以上である場合に、(B)特定重合開始剤は、該化合物の発光に対する消光効率が、200mmol/lの濃度において10%以上であることが好ましい。これは、(B)特定重合開始剤の消光効果が、系内における(A)特定色素との相対量ではなく、絶対量で決まるものなので、実際の重合性組成物に添加する量によって消光効率を検討する必要があることに起因する。そのため、実用上、モル比(B)/(A)が5以上で用いられる場合が多いことから、(A)特定色素と(B)特定重合開始剤とのモル比がこのような数値範囲であることが好ましいことになる。
【0087】
本発明において、重合性組成物に対する露光光源としては、好ましくは1000〜10000W/cm2であり、より好ましくは2000〜10000W/cm2であり、最も好ましくは5000〜10000W/cm2の範囲の照度を有する800〜830nmの赤外線レーザーダイオードを用いることが好ましい。
また、本発明の重合性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いる場合、現像システムの面から、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどの酸素遮断層(保護層)が無い方が好ましいが、本発明の重合性組成物は、1000W/cm2以上の出力レーザーで露光すると、短時間での露光により画像形成に充分なエネルギーを得ることが可能であるため、重合反応の進行に対する酸素の影響を受けにくく、酸素遮断層を用いなくとも、高感度で画像形成ができるという優れた特性を有する。
【0088】
[(C)重合性化合物]
本発明で用いられる(C)重合性化合物は、重合性の不飽和基を有する化合物であればよく、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、好ましくは、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくはま2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつものを包含する。
【0089】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類があげられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能若しくは多官能イソシアナート類、エポキシ類との付加反応物、単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。
【0090】
また、イソシアナート基や、エポキシ基、等の親電子性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、ハロゲン基や、トシルオキシ基、等の脱離性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0091】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレー卜、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビト一ルペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0092】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p―(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0093】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
【0094】
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
【0095】
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0096】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0097】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものをあげることができる。
【0098】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(2)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0099】
【化25】
【0100】
上記一般式(2)中、R及びR’は、それぞれ独立にH原子或いはCH3を示す。
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
【0101】
更に、特開昭63−277653,特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に硬化反応速度に優れた重合性化合物を得ることができる。
【0102】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートをあげることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等もあげることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0103】
これらの、付加重合性化合物について、どのような構造を用いるか、単独で使用するか併用するか、添加量はどうかといった、使用方法の詳細は、最終的な感材の性能設計にあわせて、任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。感光スピードの点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感光性と、強度を両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や、疎水性の高い化合物は感光スピードや、膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましく無い場合がある。
【0104】
また、重合性組成物中の他の成分(例えば、バインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。
【0105】
〔平版印刷版原版〕
次に、前記の重合性組成物を用いた本発明の平版印刷版原版について説明する。本発明の平版印刷版原版では、記録層に前記重合性組成物を用いる。
(記録層)
まず、本発明の平版印刷版原版において画像形成機能を有する記録層について説明する。本発明の平版印刷版原版の記録層は、(A)特定色素と、(B)特定重合開始剤と、(C)重合性化合物と、を含有する重合性組成物が用いられ、更に(D)バインダーポリマーを含有することがより好ましい。この記録層は、赤外線レーザの照射により、(A)特定色素が発光及び発熱し、その発生した光等により(B)特定重合開始剤が分解してラジカルを発生し、(C)重合性化合物の硬化反応を促進し、露光部が硬化して画像部となるネガ型の画像を形成する。
【0106】
本発明の平版印刷版原版の記録層を形成するにあたって、(B)特定重合開始剤は、記録層を構成する全固形分中、0.5〜20重量%含有されることが好ましい。この(B)重合開始剤は、(A)特定色素と組み合わさることで、赤外線レーザを照射した際に、(A)特定色素から発生する光又は熱或いはその双方のエネルギーによりラジカルを発生し、(C)重合性化合物の重合を開始、促進させる機能を有する。
【0107】
平版印刷版用原版の記録層に用いる(C)重合性化合物は、該化合物の説明において詳述したとおりの化合物を用いるが、どのような化合物を用いるかは、前記した要件の他、後述の支持体、オーバーコート層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。重合性組成物中の(C)重合性化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましくない相分離が生じたり、重合性化合物の粘着性による製造工程上の問題(例えば、感材成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、平版印刷版原版とした場合、現像液からの析出が生じる等の問題を生じうる。これらの観点から、好ましい配合比は、多くの場合、記録層を構成する組成物全固形分に対して5〜80重量%、好ましくは25〜75重量%である。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、(C)重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
【0108】
なお、本発明の前記重合性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いる場合には、前記した(A)特定色素は、記録層に用いられる重合性組成物中に他の成分と同一の層に添加してもよいし、記録層以外の層を設けそこへ添加することもできる。
ネガ型の平版印刷版原版の記録層を作成(製膜)した際に、記録層の波長760nm〜1200nmの範囲における吸収極大波長での光学濃度が、0.1〜3.0の間にあることが好ましい。この範囲をはずれた場合、感度が低くなる傾向がある。光学濃度は前記(A)特定色素の添加量と記録層の厚みとにより決定されるため、所定の光学濃度は両者の条件を制御することにより得られる。記録層の光学濃度は常法により測定することができる。測定方法としては、例えば、透明、或いは白色の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの記録層を形成し、透過型の光学濃度計で測定する方法、アルミニウム等の反射性の支持体上に記録層を形成し、反射濃度を測定する方法等が挙げられる。
【0109】
(D)バインダーポリマー
本発明の平版印刷版原版においては、上述のように、記録層に更にバインダーポリマーを添加することが好ましい。バインダーポリマーとしては、線状有機高分子重合体を含有させることが好ましい。このような「線状有機高分子重合体」としては、どのようなものを使用しても構わない。好ましくは水現像或いは弱アルカリ水現像を可能とする水或いは弱アルカリ水可溶性又は膨潤性である線状有機高分子重合体が選択される。線状有機高分子重合体は、組成物の皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水或いは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機高分子重合体を用いると水現像が可能になる。このような線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0110】
特に、これらの中で〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体及び〔アリル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体は、膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、好適である。
【0111】
また、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特願平10−116232号等に記載される、酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーは、非常に、強度に優れるので、耐刷性・低露光適性の点で有利である。
また、特開平11−171907記載のアミド基を有するバインダーは優れた現像性と膜強度をあわせもち、好適である。
【0112】
更に、この他に水溶性線状有機高分子として、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)―プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。これらの線状有機高分子重合体は全組成物中に任意な量を混和させることができる。しかし、90重量%を超える場合には形成される画像強度等の点で好ましい結果を与えない。好ましくは30〜85重量%である。またエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と線状有機高分子重合体は、重量比で1/9〜7/3の範囲とするのが好ましい。
【0113】
本発明に係るバインダーポリマーとして、実質的に水に不溶でアルカリ水溶液に可溶なものを用いてもよい。これにより、現像液として、環境上好ましくない有機溶剤を用いることがないか若しくは非常に少ない使用量に制限できる。このようなバインダーポリマーの酸価(ポリマーlgあたりの酸含率を化学等量数で表したもの)と分子量は、画像強度と現像性の観点から適宜選択される。好ましい酸価は、0.4〜3.0meq/gであり、好ましい分子量は3000から50万の範囲で、より好ましくは、酸価が0.6〜2.0、分子量が1万から30万の範囲である。
【0114】
(E)その他の成分
本発明の平版印刷版の記録層を構成する組成物中には、更に、その用途、製造方法等に適したその他の成分を適宜添加することができる。以下、好ましい添加剤に関し例示する。
(E−1)共増感剤
ある種の添加剤(以後、共増感剤という)を用いることで、感度を更に向上させることができる。これらの作用機構は、明確ではないが、多くは次のような化学プロセスに基づくものと考えられる。即ち、熱重合開始剤により開始される光反応、と、それに引き続く付加重合反応の過程で生じる様々な中間活性種(ラジカル、カチオン)と、共増感剤が反応し、新たな活性ラジカルを生成するものと推定される。これらは、大きくは、(a)還元されて活性ラジカルを生成しうるもの、(b)酸化されて活性ラジカルを生成しうるもの、(C)活性の低いラジカルと反応し、より活性の高いラジカルに変換するか、若しくは連鎖移動剤として作用するもの、に分類できるが、個々の化合物がこれらのどれに属するかに関しては、通説がない場合も多い。
【0115】
(a)還元されて活性ラジカルを生成する化合物
炭素−ハロゲン結合結合を有する化合物:還元的に炭素−ハロゲン結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、トリハロメチル−s−トリアジン類や、トリハロメチルオキサジアゾール類等が好適に使用できる。
窒素−窒素結合を有する化合物:還元的に窒素−窒素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的にはヘキサアリールビイミダゾール類等が好適に使用される。
酸素一酸素結合を有する化合物:還元的に酸素−酸素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、有機過酸化物類等が好適に使用される。
オニウム化合物:還元的に炭素−ヘテロ結合や、酸素−窒素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、ジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、N−アルコキシピリジニウム(アジニウム)塩類等が好適に使用される。
フエロセン、鉄アレーン錯体類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。
【0116】
(b)酸化されて活性ラジカルを生成する化合物
アルキルアート錯体:酸化的に炭素−ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には、例えば、トリアリールアルキルボレート類が好適に使用される。
アルキルアミン化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC−X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシル基、トリメチルシリル基、ベンジル基等が好適である。具体的には、例えば、エタノールアミン類、N−フェニルグリシン類、N−トリメチルシリルメチルアニリン類等があげられる。
含硫黄、含錫化合物:上述のアミン類の窒素原子を硫黄原子、錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成しうる。また、S−S結合を有する化合物もS−S解裂による増感が知られている。
【0117】
α−置換メチルカルボニル化合物:酸化により、カルボニル−α炭素間の結合解裂により、活性ラジカルを生成しうる。また、カルボニルをオキシムエーテルに変換したものも同様の作用を示す。具体的には、2−アルキル−1−[4−(アルキルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロノン−1類、並びに、これらと、ヒドロキシアミン類とを反応したのち、N−OHをエーテル化したオキシムエーテル類をあげることができる。
スルフィン酸塩類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。具体的は、アリールスルフィン駿ナトリウム等をあげることができる。
【0118】
(c)ラジカルと反応し高活性ラジカルに変換、若しくは連鎖移動剤として作用する化合物:例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、若しくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。具体的には、例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類等があげられる。
【0119】
これらの共増感剤のより具体的な例は、例えば、特開昭9−236913号公報中に、感度向上を目的とした添加剤として、多く記載されており、それらを本発明においても適用することができる。
これらの共増感剤は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。使用量はエチレン性不飽和二重結合を有する化合物100重量部に対し0.05〜100重量部、好ましくは1〜80重量部、更に好ましくは3〜50重量部の範囲が適当である。
【0120】
(E−2)重合禁止剤
また、本発明においては以上の基本成分の他に重合性組成物の製造中或いは保存中において重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t―ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t―ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の重量に対して約0.01重量%〜約5重量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、平版印刷版用原版とする場合、支持体等への塗布後の乾燥の過程でその記録層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5重量%〜約10重量%が好ましい。
【0121】
(E−3)着色剤等
更に、本発明の重合性組成物を平版印刷版用原版に用いる場合、その記録層の着色を目的として染料若しくは顔料を添加してもよい。これにより、印刷版としての、製版後の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させることができる。着色剤としては、多くの染料は光重合系記録層の感度の低下を生じるので、着色剤としては、特に顔料の使用が好ましい。具体例としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料がある。染料及び顔料の添加量は全組成物の約0.5重量%〜約5重量%が好ましい。
【0122】
(E−4)その他の添加剤
更に、本発明の重合性組成物を平版印刷版用原版に用いる場合、硬化皮膜の物性を改良するために無機充填剤や、その他可塑剤、記録層表面のインク着肉性を向上させうる感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
【0123】
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、結合剤を使用した場合、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と結合剤との合計重量に対し10重量%以下添加することができる。
【0124】
また、後述する膜強度(耐刷性)向上を目的とした、現像後の加熱・露光の効果を強化するための、UV開始剤や、熟架橋剤等の添加もできる。
その他、記録層と支持体との密着性向上や、未露光記録層の現像除去性を高めるための添加剤、中間層を設けることを可能である。例えば、ジアゾニウム構造を有する化合物や、ホスホン化合物、等、基板と比較的強い相互作用を有する化合物の添加や下塗りにより、密着性が向上し、耐刷性を高めることが可能であり、一方ポリアクリル酸や、ポリスルホン酸のような親水性ポリマーの添加や下塗りにより、非画像部の現像性が向上し、汚れ性の向上が可能となる。
【0125】
平版印刷版を提供するために、本発明の重合性組成物を支持体上に塗布する際には、種々の有機溶剤に溶かして使用に供される。ここで使用する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N―ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ―ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして、塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50重量%が適当である。
【0126】
前記記録層の支持体への塗布量は、記録層の感度、現像性、露光膜の強度・耐刷性等の影響を考慮し、用途に応じ適宜選択することが望ましい。塗布量が少なすぎる場合には、耐刷性が十分でなくなる。一方多すぎる場合には、感度が下がり、露光に時間がかかる上、現像処理にもより長い時間を要するため好ましくない。本発明の平版印刷版原版における塗布量は、一般的には、乾燥後の重量で約0.lg/m2〜約10g/m2の範囲が適当である。より好ましくは0.5〜5g/m2である。
【0127】
(保護層)
本発明の平版印刷版原版では、重合性化合物を含む記録層の上に、必要に応じて保護層を設けることができる。このような平版印刷版原版は、通常、露光を大気中で行うが、保護層は、記録層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や塩基性物質等の低分子化合物の記録層への混入を防止し、大気中での露光による画像形成反応の阻害を防止する。従って、このような保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低いことであり、更に、露光に用いる光の透過性が良好で、記録層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。
【0128】
このような、保護層に関する工夫が従来よりなされており、米国特許第3、458、311号、特開昭55−49729号に詳しく記載されている。保護層に使用できる材料としては、例えば、比較的、結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることがよく、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような水溶性ポリマーが知られていが、これらのうち、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていても良い。また、同様に一部が他の共重合成分を有していても良い。
【0129】
ポリビニルアルコールの具体例としては71〜100%加水分解され、分子量が300から2400の範囲のものをあげることができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。
【0130】
保護層の成分(PVAの選択、添加剤の使用)、塗布量等は、酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。一般には使用するPVAの加水分解率が高い程(保護層中の未置換ビニルアルコール単位含率が高い程)、膜厚が厚い程酸素遮断性が高くなり、感度の点で有利である。しかしながら、極端に酸素遮断性を高めると、製造時・生保存時に不要な重合反応が生じたり、また画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生じたりという問題を生じる。また、画像部との密着性や、耐傷性も版の取り扱い上極めて重要である。即ち、水溶性ポリマーからなる親水性の層を新油性の重合層に積層すると、接着力不足による膜剥離が発生しやすく、剥離部分が酸素の重合阻害により膜硬化不良などの欠陥を引き起こす。
【0131】
これに対し、これら2層間の接着性を改すべく種々の提案がなされている。例えば、特開昭49−70702号、英国公開第1,303,578号には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルジヨン又は水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体などを20〜60重量%混合し、重合層の上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。本発明における保護層に対しては、これらの公知の技術をいずれも適用することができる。このような保護層の塗布方法については、例えば、米国特許第3,458,311号、特開昭55−49729号に詳しく記載されている。
【0132】
更に、保護層に他の機能を付与することもできる。例えば、露光に使う光(例えば、赤外線レーザならば波長760〜1200nm)の透過性に優れ、かつ露光に係わらない波長の光を効率良く吸収しうる、着色剤(水溶性染料等)の添加により、感度低下を起こすことなく、セーフライト適性を更に高めることができる。
【0133】
(樹脂中間層)
本発明の平版印刷版原版においては、必要に応じて、記録層と支持体の間にアルカリ可溶性高分子からなる樹脂中間層を設けることができる。露光によりアルカリ現像液への溶解性が低下する赤外線感応層である光重合性の化合物を含む記録層が、露光面或いはその近傍に設けられることで赤外線レーザに対する感度が良好であるとともに、支持体と該赤外線感応性の記録層との間にこの樹脂中間層が存在し、断熱層として機能することで、赤外線レーザの露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率良く使用されることからの高感度化が図れる。また、露光部においては、アルカリ現像液に対して非浸透性となった感光層がこの樹脂中間層の保護層として機能するために、現像安定性が良好になるとともにディスクリミネーションに優れた画像が形成され、且つ、経時的な安定性も確保されるものと考えられ、未露光部においては、未硬化のバインダー成分が速やかに現像液に溶解、分散し、更には、支持体に隣接して存在するこの樹脂中間層がアルカリ可溶性高分子からなるものであるため、現像液に対する溶解性が良好で、例えば、活性の低下した現像液などを用いた場合でも、残膜などが発生することなく速やかに溶解するため、現像性に優れるものと考えられる。
【0134】
(支持体)
本発明の平版印刷版原版に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)等が挙げられる。これらは、樹脂フィルムや金属板などの単一成分のシートであっても、2以上の材料の積層体であってもよく、例えば、上記のごとき金属がラミネート、若しくは蒸着された紙やプラスチックフィルム、異種のプラスチックフィルム同志の積層シート等が含まれる。
【0135】
前記支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は高々10重量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。
前記アルミニウム板の厚みは、およそ0.1〜0.6mm程度、好ましくは0.15〜0.4mm、特に好ましくは0.2〜0.3mmである。
【0136】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための、例えば、界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ水溶液等による脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
この様に粗面化されたアルミニウム板は、所望により、アルカリエッチング処理、中和処理を経て、表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施すことができる。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸或いはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0137】
陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。
陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2以上が好適であるが、より好ましくは2.0〜6.0g/m2の範囲である。陽極酸化被膜が1.0g/m2未満であると耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
尚、このような陽極酸化処理は平板印刷版の支持体の印刷に用いる面に施されるが、電気力線の裏回りにより、裏面にも0.01〜3g/m2の陽極酸化被膜が形成されるのが一般的である。
【0138】
支持体表面の親水化処理は、上記陽極酸化処理の後に施されるものであり、従来より知られている処理法が用いられる。このような親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号公報に開示されているようなアルカリ金属珪酸塩(例えば、珪酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体が珪酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか、又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号公報に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が用いられる。
これらの中で、本発明において特に好ましい親水化処理は珪酸塩処理である。珪酸塩処理について、以下に説明する。
【0139】
上述の如き処理を施したアルミニウム板の陽極酸化皮膜を、アルカリ金属珪酸塩が0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜10重量%であり、25℃でのpHが10〜13である水溶液に、例えば、15〜80℃で0.5〜120秒浸漬する。アルカリ金属珪酸塩水溶液のpHが10より低いと液はゲル化し13.0より高いと酸化皮膜が溶解されてしまう。本発明に用いられるアルカリ金属珪酸塩としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムなどが使用される。アルカリ金属珪酸塩水溶液のpHを高くするために使用される水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがある。なお、上記の処理液にアルカリ土類金属塩若しくは第IVB族金属塩を配合してもよい。アルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、燐酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、ホウ酸塩などの水溶性の塩が挙げられる。第IVB族金属塩として、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、蓚酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムなどを挙げることができる。アルカリ土類金属塩若しくは、第IVB族金属塩は単独又は2以上組み合わせて使用することができる。これらの金属塩の好ましい範囲は0.01〜10重量%であり、更に好ましい範囲は0.05〜5.0重量%である。
珪酸塩処理により、アルミニウム板表面上の親水性が一層改善されるため、印刷の際、インクが非画像部に付着しにくくなり、汚れ性能が向上する。
【0140】
支持体の裏面には、必要に応じて、バックコートが設けられてもよい。かかるバックコートとしては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。
これらの被覆層のうち、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、Si(OC4H9)4などの珪素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから与られる金属酸化物の被覆層が耐現像性に優れており特に好ましい。
【0141】
(露光)
以上のようにして、本発明の平版印刷版原版を作成することができる。この平版印刷版原版は、波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザにより画像露光される。本発明においては、レーザ照射後すぐに現像処理を行っても良いが、レーザ照射工程と現像工程の間に加熱処理を行ってもよい。加熱処理の条件は、80℃〜150℃の範囲内で10秒〜5分間行うことが好ましい。この加熱処理により、レーザ照射時、記録に必要なレーザエネルギーを減少させることができる。
【0142】
(現像)
本発明の平版印刷版原版は、通常、赤外線レーザにより画像露光したのち、好ましくは、水又はアルカリ性水溶液にて現像される。
本発明においては、レーザー照射後直ちに現像処理を行ってもよいが、レーザー照射工程と現像工程との間に加熱処理工程を設けることもできる。加熱処理条件は、80℃〜150℃の範囲で、10秒〜5分間行うことが好ましい。この加熱処理により、レーザー照射時、記録に必要なレーザーエネルギーを減少させることができる。
現像液としては、アルカリ性水溶液が好ましく、好ましいpH領域としては、pH10.5〜12.5の範囲が挙げられ、pHll.0〜12.5の範囲のアルカリ性水溶液により現像処理することが更に好ましい。アルカリ性水溶液としてpH10.5未満のものを用いると非画像部に汚れが生じやすくなる傾向があり、pH12.5を超える水溶液により現像処理すると画像部の強度が低下するおそれがある。
【0143】
現像液として、アルカリ性水溶液を用いる場合、本発明の画像記録材料の現像液及び補充液としては、従来公知のアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウム等の無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も用いられる。
これらのアルカリ剤は単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0144】
更に、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液と同じもの又は、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換することなく、多量の平版印刷版原版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。
【0145】
現像液及び補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤等を添加できる。
現像液中には界面活性剤を1〜20重量%加えることが好ましく、より好ましくは、3〜10重量%の範囲である。界面活性剤の添加量が1重量%未満であると現像性向上効果が充分に得られず、20重量%を超えて添加すると画像の耐摩耗性など強度が低下するなどの弊害が出やすくなる。
好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。具体的には、例えば、ラウリルアルコールサルフェートのナトリウム塩、ラウリルアルコールサルフェートのアンモニウム塩、オクチルアルコールサルフェートのナトリウム塩、例えば、イソプロピルナフタレンスルホン酸のナトリウム塩、イソブチルナフタレンスルホン酸のナトリウム塩、ポリオキシエチレングリコールモノナフチルエチル硫酸エステルのナトリウム塩、ドデンルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、メタニトロベンゼンスルホン酸のナトリウム塩などのようなアルキルアリールスルホン酸塩、第2ナトリウムアルキルサルフェートなどの炭素数8〜22の高級アルコール硫酸エステル類、セチルアルコールリン酸エステルのナトリウム塩などのような脂肪族アルコールリン酸エステル塩類、例えば、C17H33CON(CH3)CH2CH2SO3Naなどのようなアルキルアミドのスルホン酸塩類、例えば、ナトリウムスルホコハク酸ジオクチルエステル、ナトリウムスルホコハク酸ジヘキシルエステルなどの二塩基性脂肪族エステルのスルホン酸塩類、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムメトサルフェートなどのアンモニウム塩類、例えば、ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩などのアミン塩、例えば、グリセロールの脂肪酸モノエステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸モノエステルなどの多価アルコール類、例えば、ポリエチレングリコールモノナフチルエチル、ポリエチレングリコールモノ(ノエルフェノール)エチルなどのポリエチレングリコールエチル類などが含まれる。
【0146】
好ましい有機溶剤としては、水に対する溶解度が約10重量%以下のものが挙げられ、更に好ましくは水に対する溶解度が5重量%以下のものから選ばれる。例えば、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニルプロパノール、1,4−フェニルブタノール、2,2−フェニルブタノール、1,2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキシベンジルアルコール、m―メトキシベンジルアルコール、p―メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール及び3−メチルシクロヘキサノール等を挙げることができる。有機溶媒の含有量は、使用時の現像液の総重量に対して1〜5重量%が好適である。その使用量は界面活性剤の使用量と密接な関係があり、有機溶媒の量が増すにつれ、界面活性剤の量は増加させることが好ましい。これは界面活性剤の量が少ない状態で、有機溶媒の量を多く用いると有機溶媒が溶解せず、従って良好な現像性の確保が期待できなくなるからである。
【0147】
更に、現像液及び補充液には必要に応じて、消泡剤、硬水軟化剤のような添加剤を含有させることもできる。硬水軟化剤としては、例えば、Na2P2O7、Na5P3O3、Na3P3O9、Na2O4P(NaO3P)ΡO3Na2、カルゴン(ポリメタリン酸ナトリウム)などのポリリン酸塩、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、ナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなアミノポリカルボン酸類の他、2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2−ホスホノブタノントリカルボン酸−2,3,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2,2、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類を挙げることができる。このような硬水軟化剤の最適量は、使用される硬水の硬度及びその使用量に応じて変化するが、一般的には、使用時の現像液中に0.01〜5重量%、より好ましくは0.01〜0.5重量%の範囲で含有させうる。
【0148】
更に、自動現像機を用いて、該平版印刷版を現像する場合には、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。この場合、米国特許第4,882,246号に記載されている方法で補充することが好ましい。
【0149】
このような界面活性剤、有機溶剤及び還元剤等を含有する現像液としては、例えば、特開昭51−77401号に記載されている、ベンジルアルコール、アニオン性界面活性剤、アルカリ剤及び水からなる現像液組成物、特開昭53−44202号に記載されている、ベンジルアルコール、アニオン性界面活性剤、及び水溶性亜硫酸塩を含む水性溶液からなる現像液組成物、特開昭55−155355号に記載されている、水に対する溶解度が常温において10重量%以下である有機溶剤、アルカリ剤、及び水を含有する現像液組成物等が挙げられ、本発明においても好適に使用される。
【0150】
以上記述した現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の画像記録材料を印刷版原版として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0151】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷用版材用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷用版材を搬送する装置と各処理液槽とスプレー装置とからなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロール等によって印刷版原版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、電気伝導度をセンサーにて感知し、自動的に補充することもできる。
また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0152】
以上のようにして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。
平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスクィージ、或いは、スクィージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
【0153】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行なわれている処理を施こすことができるが、水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。
このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0154】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0155】
(実施例1〜10)
[基板の作製]
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレンで洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミス−水懸濁液を用いこの表面を砂目立て表面のエッチングを行い、水洗後、更に20%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
次に、この板を7%硫酸を電解液として電流密度15A/dm2で3g/m2の直流電極酸化被膜を設けた後、水洗し、乾燥して基板[A]を作成した。
基板[A]を珪酸ナトリウム2重量%水溶液で25℃で15秒処理し、水洗して基板[B]を作成した。
【0156】
[中間層の形成]
次に下記の手順によりSG法の液状組成物(ゾル液)を調整した。
(ゾル液組成)
・メタノール 130g
・水 20g
・85重量%リン酸 16g
・テトラエトキシシラン 50g
・3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 60g
【0157】
上記の各化合物を混合し、撹拌した。約5分で発熱が認められた。60分間反応させた後、内容物を別の容器へ移し、メタノール3000gを加えることにより、ゾル液を得た。
このゾル液をメタノール/エチレングリコール=9/1(重量比)で希釈して、上述の様に作製された基板[A]上に、基板上のSiの量が3mg/m2となるように塗布し、100℃にて1分間乾燥させ、基板[C]を得た。
【0158】
[平版印刷版原版の形成]
上述の様に作成された基板[A]乃至基板[C]のいずれかを支持体とし、その表面に下記組成の記録層塗布液を塗布し、120℃で1分乾燥し、1.3g/m2の記録層を形成し、実施例1〜10の平版印刷版原版を得た。使用する基板、(A)特定色素、(B)特定重合開始剤、(C)重合性化合物、及び(D)バインダーは下記表8に示す通りである。なお、(A)特定色素及び(B)特定重合開始剤は、それぞれ、上記の具体例として挙げられたものを用いており、表中にはその具体例を示す数字又は数字とアルファベットの組み合わせが記載されている。
【0159】
【0160】
【表8】
【0161】
〔(A)特定色素の相対発光強度〕
820nmにおける吸光度を0.5となるようにエタノールにて希釈した(A)特定色素溶液に、浜松ホトニクス社製安定型ピコ秒ライトパルサ、及び、レーザーダイオードSLDH078を用い、繰り返し周波数2MHz、パルス幅50ps、ピークパワー70mWで発振した820±20nmのレーザ光を照射し、浜松ホトニクス社製ピコ秒蛍光寿命測定装置C4780を用いて発光強度を測定した。そして、日本シイベルヘグナー(株)製、S 0094、2−[2−[2−Chloro−3−[2−(1,3−dihydro−1,1,3−trimethyl−2H−benzo[e]−indol−2−ylidene)−ethylidene]−1−cyclohexene−1−ly]−ethenyl]−1,1,3−trimethyl−1H−benzo[e]indolium 4−methylbenzenesulfonateについても上記と同条件にて発光強度を測定し、その発光強度を1とし、それに対する相対強度を求めた。得られた相対発光強度を表8に記載した。
【0162】
〔(B)特定重合開始剤の消光効率〕
820nmにおける吸光度を0.5となるようにエタノールにて希釈した(A)特定色素溶液中に、(B)特定重合開始剤を200mmol/lの濃度になるように添加した色素溶液の発光強度と、(B)特定重合開始剤を添加していない色素溶液の発光強度と、をそれぞれ測定し、その差から(B)特定重合開始剤の消光効率の算出した。得られた消光効率を表8に記載した。
【0163】
〔表8中の重合性化合物〕
(M−1)
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(SR−355、サートマー社製)
(M−2)
イソシアヌレートジアクリレート/トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート モル比:1/1
【0164】
〔表8中のバインダー〕
(B−1)
アリルメタクリレート/エチルメタクリレート/メタクリル酸
(共重合モル比:60/20/20)
重量平均分子量(Mw)=100,000〜150,000
(B−2)
下記ジイソシアネートとジオールの縮合物であるポリウレタン樹脂
(a)4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
(b)ヘキサメチレンジイソシアネート
(c)ポリプロピレングルコール(重量平均分子量:500)
(d)2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸
((a)/(b)/(c)/(d)、共重合モル比:35/15/18/32)
重量平均分子量(Mw)=50,000
【0165】
(比較例1〜3)
比較のため、基板[A]上に、前記記録層塗布液において(A)特定色素又は(B)特定重合開始剤を、下記の構造を有する表1に記載の化合物に代えて、表8に示す組成の記録層塗布液を用いて記録層を形成し、平版印刷版原版を得た(比較例1〜3)。
【0166】
【化26】
【0167】
[感度の評価]
得られた平版印刷版原版を、Creo社製TrendSetter3244VXを用いて、10Wの出力で、回転数を変化させて全面露光を行い、下記の条件で現像した後、明瞭な画像が形成された際の回転数(rpm)を求めた。この結果を表8に示す。
なお、回転数が高いほど、短時間の露光により記録可能であり、高感度であると判断する。
【0168】
(現像)
上記の条件による露光後、富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900Nを用い現像処理した。現像液は、仕込み液、補充液ともに、下記D−1現像液の1:6水希釈液、富士写真フイルム(株)製DN−3Cの1:1水希釈液、又は、富士写真フイルム(株)製DP−4の1:8水希釈液を用いた。現像浴の温度は30℃とした。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液を用いた。
【0169】
(D−1現像液)
・水酸化カリウム 3g
・炭酸水素ナトリウム 1g
・炭酸カリウム 2g
・亜硫酸ナトリウム 1g
・ポリエチレングリコールモノナフチルエーテル 150g
・ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩 50g
・エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩 8g
・水 785g
【0170】
表8の結果より、本発明の平版印刷版原版(実施例1〜10)は全体的に回転数が高く、高感度化を達成していることが分かる。一方、発光強度が低い色素を用い、かつ、該色素に対する消光効率に低い重合開始剤を用いた比較例1及び2の平版印刷版原版、また、発光強度が高い特定色素を用い、かつ、該特定色素に対する消光効率に低い重合開始剤を用いた比較例3の平版印刷版原版は、いずれも回転数が低く、各実施例と比較して、感度が低いということがわかった。
【0171】
(実施例11、比較例4)
前記実施例1、比較例1で得られた平版印刷版原版の記録層上に、ポリビニルアルコール(ケン化度:98モル%、重合度:550)の3重量%水溶液を乾燥後の塗布量が2g/m2となるように塗布し、100℃で2分間乾燥して記録層上に保護層を設けた平版印刷版原版を得て、それぞれ実施例11、比較例4とした。
得られた平版印刷版原版を、露光時の出力を6Wに代えた他は、上記実施例1〜10、比較例1〜3と同様の条件で、露光、現像して平版印刷版を製版し、同様に感度を評価した。その結果、実施例11の回転数は190rpm、比較例4の回転数は170rpmであった。
以上の結果より、感光層の上に保護層を設けた場合においても、保護層を有しない実施例1及び比較例1と同様の傾向が見られ、本発明の平版印刷版原版(実施例11)は感度に優れていたが、比較例4は実施例11と比べて感度が劣っていた。
【0172】
【発明の効果】
本発明の重合性組成物は、高感度で画像形成が可能である。また、この重合性組成物を記録層として用いた平版印刷版原版も、感度が優れるという効果を奏する。
Claims (2)
- (A)800〜1300nmにおける相対発光強度が1.1以上であり、かつ、700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物と、(B)該化合物の発光に対する消光効率が、200mmol/lの濃度において10%以上である重合開始剤と、(C)重合性化合物と、を含有する重合性組成物。
- 支持体上に、(A)800〜1300nmにおける相対発光強度が1.1以上であり、かつ、700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物と、(B)該化合物の発光に対する消光効率が、200mmol/lの濃度において10%以上である重合開始剤と、(C)重合性化合物と、を含有する重合性組成物からなる記録層を備えてなる平版印刷版原版。
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