JP2004076112A - 靭性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法 - Google Patents

靭性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】圧延後に微細なオーステナイト組織となり、寒冷地に適した高靭性及び高延性のパーライト系レールを得る。
【解決手段】質量%で、 C:0.6〜1.2%, Si:0.1〜1.2%, Mn:0.4〜1.4%,N:0.005〜0.03%,Al:0.005〜0.05%,必要に応じ更にMo:0.015〜0.07%,Cr:0.1〜1.0%,V:0.005〜0.07%, Ni:0.01〜1.5%, Nb:0.004〜0.05%, Cu:0.01〜1.5%,Ti:0.0001〜0.01%, S:0.002〜0.050%, B:0.0001〜0.0050%, Mg:0.0004〜0.020%の1種又は2種以上を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる圧延用素材を用いて、熱間圧延を行うための再加熱工程において、900 ℃以上の加熱炉内滞在時間が40分間以上であり、かつ加熱炉内における最高温度が1000〜1200℃の範囲であるレールの製造方法。
【選択図】  なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レール鋼のパーライト組織を微細化して靭性および延性の向上を図ったパーライト系レールの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄道輸送は輸送効率向上のための重積載化、輸送迅速化のための高速化が進められており、レールの特性に対する要求が厳しくなっている。重積載化は急曲線区間におけるレール頭部の磨耗を促進し、レールGC(ゲージ・コーナー)内部の応力集中部からの疲労損傷を増加させることから、レール寿命が短くなる。
この重荷重鉄道でのレール短寿命化を改善するために、耐磨耗性、耐内部疲労損傷性の優れた高強度レール鋼の技術開発が活発に行われてきた。その結果、熱処理によりラメラー間隔を狭めた高強度レールが急曲線区間では広く使われつつある。
【0003】
一方、寒冷地の鉄道では冬季にレールクラック発生によるレール取替が集中しており、レール材の靭性改善がレール寿命の延伸に必要な課題になっている。また頭部の内部疲労損傷性の改善には、レール材の靭性および延性を向上させることが重要である。パーライト組織では組織を細粒にすることにより、靭性・延性を改善することができる。
【0004】
これまでに以下のような方法による、組織の細粒化、靭性および延性改善が図られてきた。
(1)熱間圧延後、一旦室温まで冷却したレールをオーステナイト温度域のなるべく低い温度域に再加熱した後、加速冷却する方法。
(2)制御圧延によりオーステナイト粒を微細化した後、レール頭部を加速冷却する方法。
(3)パーライト変態時にオーステナイト結晶粒界に加え、オーステナイト結晶粒内からも変態を促進し、微細なパーライト組織を得る方法。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記方法の(1)は、例えば特開昭63−128123号公報に記載されているように、レールをオーステナイト温度域では、低めである950℃以下の低温度に再加熱し、オーステナイト粒を細粒化することによって、パーライト変態後の組織を細粒化して、大幅に靭性および延性を改善しようとするものである。
しかし低温度かつレール頭部内部まで加熱を深めようとすると、投入熱量を下げて長時間加熱する必要があり、この加熱処理により生産性を阻害し、製造コストを悪化させる難点がある。
【0006】
また上記(2)の方法は、例えば特開昭52−138427号公報および特開昭52−138428号公報に記載されているように、Nbを含有する圧延素材を1220℃以上もしくは1100℃以下に加熱し、それに適する条件で温度制御圧延して、オーステナイト粒の細粒化で靭性・延性の向上を図ろうとするものである。Nbは加工後の微細再結晶粒が粒成長によって粗大化するのを防止する効果があり、微細なオーステナイト組織を得やすくするが、高炭素鋼では粗大なNb炭窒化物を生成しやすいため、その利用には困難が伴う。
【0007】
さらに上記(3)の方法は、例えば特開平6−279928号公報に記載されているように、MnS上に析出させたV炭窒化物、Ti炭窒化物を変態核として、パーライト変態の核生成を促進させて組織を微細化する方法である。この方法により、一定の靭性および延性の向上が得られた。しかし、これらの炭窒化物を利用する場合、変態核の生成が活発となる結果、変態が高温で完了してしまうため、強度が低下する難点がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
パーライト組織は、ラメラー構造と呼ばれるセメンタイト相とフェライト相の層状構造からなっている。フェライトの結晶方位が揃っている領域をパーライトブロックと呼び、パーライト組織における結晶粒単位といえる。パーライト鋼の衝撃値、延性値はパーライトブロックが細かいほど良い。パーライト鋼が破壊するとき、亀裂はパーライトブロック単位で屈曲して進むため、パーライトブロックが細かいほど新生界面の総面積が大きくなり、界面形成に要するエネルギーが大きいことが衝撃値を改善すると考えられる。また最終破断に到るまでの亀裂進行が細粒組織ほど遅いため、破断までの変形量が増大することにより延性も向上する。
【0009】
通常、レール鋼は高いC量を含有している。このレール鋼を高温のオーステナイト温度域から冷却すると、700℃程度からパーライト変態が起こり始める。パーライト変態核はほとんどがオーステナイト結晶粒界で生成する。このため変態前組織であるオーステナイト組織が細かいほど、パーライト変態核の数が増える。その結果、オーステナイト結晶粒が細粒であるほど変態完了後のパーライトブロックサイズは細かくなる。
【0010】
本発明は、寒冷地において要求される良好な延・靭性を有するレールを得るために、オーステナイト粒を細粒にして、その粒界から多数の変態核を生じさせてパーライト組織の微細化を図るものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1) 質量%で、
C :0.6〜1.2%、   Si:0.1〜1.2%、
Mn:0.4〜1.4%、   N :0.005〜0.030%、
Al:0.005〜0.050%
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるレール用圧延素材を用いて、熱間圧延を行うための再加熱工程において、900℃以上の加熱炉内滞在時間が40分間以上であり、かつ加熱炉内における最高温度が1000〜1200℃の範囲であることを特徴とする、靭性および延性に優れたレールの製造方法。
(2) 前記(1)に記載の成分に加え、質量%でさらに、
Mo:0.015〜0.070%、  Cr:0.1〜1.0%、
V :0.005〜0.070%、  Ni:0.01〜1.50%、
Nb:0.004〜0.050%、  Cu:0.01〜1.50%、
Ti:0.0001〜0.0100%、S :0.002〜0.050%、
B :0.0001〜0.0050%、Mg:0.0004〜0.020%、
の1種または2種以上を含有せしめることを特徴とする、靭性および延性に優れたレールの製造方法。
(3) 前記(1)または(2)に記載の成分を有する圧延素材を用いて、熱間圧延を行うための再加熱工程において、900℃以上の加熱炉内滞在時間が40分間以上であり、かつ最高加熱温度が1000〜1200℃の範囲であり、さらに加熱炉から材料抽出から仕上圧延を完了するまでの時間が7分間以内で熱間圧延によりレールに形成した後、熱延ままのオーステナイト域温度から、前記レールの少なくとも頭部の表層において700〜550℃の温度範囲を1〜10℃/secで加速冷却することを特徴とする、靭性および延性に優れた高強度パーライト系レールの製造方法。
(4) 前記(1)または(2)に記載の成分を有する圧延素材を、前記(1)に記載の再加熱条件により再加熱して熱間圧延でレールに形成し、一旦レールを500℃以下に冷却した後、改めて800℃以上1200℃未満のオーステナイト域温度に再加熱した後、前記レールの少なくとも頭部の表層が700〜550℃である温度範囲を1〜10℃/secで加速冷却することを特徴とする、靭性および延性に優れた高強度パーライト系レールの製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
レール鋼を製造するには、まず転炉、電気炉などで成分調整を行い、さらに必要に応じて脱ガス処理などの二次精錬を経て凝固させる。その後、再加熱炉で高温に加熱して複数の圧延機により、徐々にレール形状に成形し、最終的に800〜1100℃でレール形状に仕上げる。上記圧延段階における金属組織はオーステナイト組織である。
鋼材を熱間圧延すると鋼中に導入された歪エネルギーが駆動力になり、オーステナイト組織が微細に再結晶する。再結晶直後の細粒組織は粒界エネルギーが高いため、結晶粒が互いに食い合って、粒径が増大していく粒成長現象が起こる。
【0012】
再結晶現象は加工中もしくは加工直後に短時間で起こるが、粒成長現象は安定値に達するには時間を要する。このため加工を短時間で繰り返すことによってオーステナイト結晶粒は次第に細粒化していく。また組織中に粒界の移動を妨げる微細な異物粒子が存在すると、粒界移動が妨げられるため結晶粒の潰しあいが起こり難くなり粒成長が抑制される。鋼中の異物粒子によって結晶粒界の移動が抑制される現象をピン止め効果、ピンニング効果と呼ぶ。
本発明者らはAlNが鋼中に微細に析出する性質があることから、レール鋼の圧延後の結晶粒成長を抑制するピンニング粒子として利用する方法について研究を行い、以下のような知見を得た。
【0013】
Al,Nを含む鋼材は、1000℃〜1200℃付近の温度域において数nmから数10nmという微細なサイズのAlNが緻密に析出する性質がある。本発明者らの実験によると、鋼材が高温の状態から自然冷却する過程ではAlNの析出量は少ない。AlNを微細かつ多量に析出させるためには、1000℃以上1200℃未満の温度域に再加熱することが必要である。再加熱の温度が1000℃未満では析出に長時間を要するため実用的ではなく、また再加熱温度が1200℃を超えると、一旦生じたAlNが再固溶するため、AlNのピンニング効果は得られなくなる。
【0014】
またAlNが析出するためには、Al,Nが拡散して互いに隣接位置に移動し、結合する必要があるため、高温の状態で一定の時間以上加熱炉内に滞在する必要がある。本発明者らの実験によると、十分なAlNの析出を得るためには、最高加熱温度が1000〜1200℃であることに加えて、900℃以上の温度域における加熱炉内滞在時間が40分間以上必要である。
【0015】
本発明者らは、Al,Nを含む鋼材に対してこのような条件で再加熱を行うと、AlNが微細に析出することを確認した。AlNが微細に析出した鋼材を圧延すると、圧延直後の微細な再結晶粒が粒成長することが妨げられて、細粒のオーステナイト組織が得られる。圧延完了後、鋼材温度が700℃以下になると、パーライト変態が始まる。パーライト変態はオーステナイト組織の結晶粒界にパーライト変態核が生成して開始する。このときAlNのピンニング効果によって細粒になったオーステナイト組織から微細なパーライト組織が得られる。
【0016】
一方、高速軌道、重荷重軌道の急曲線部においては延靭性と共に、1000MPa以上の高強度が要求される。このような高強度を得るためには、圧延終了後のオーステナイト状態から、パーライト変態温度域である700〜550℃間を加速冷却することが望ましい。加速冷却を行うと放冷の際の変態温度より、さらに低温までオーステナイトが維持された状態からパーライト変態が起こる。より低温で変態が始まる状態は過冷度が高い状態と呼ばれる。
【0017】
過冷度が高まるとパーライト変態時にラメラー間隔が狭まり、強度が増大するとともに、変態核の生成速度が増加するため、パーライトブロックサイズを微細にする効果があわせて得られ、一層の延・靭性向上を達成することができる。ただし加速冷却時の冷却速度が1℃/sec未満のときは高強度レールとして必要な強度を得ることができず、10℃/secを超える場合はベイナイト、マルテンサイトが生成し易くなるため好ましくない。
【0018】
また加速冷却の際に、水スプレイ、液体浸漬による冷却法を採用すると、鋼材表層に膜沸騰現象を生じ、冷却むらを招き易いため、冷却媒体は空気、あるいは空気−水ミストが望ましい。また、加速冷却の初期温度はパーライト変態が開始しないオーステナイト温度域である必要があり、720℃以上であることが必要である。本発明者らによると、最高加熱温度として1000〜1200℃という限定を加えた場合、加速冷却開始温度を720℃以上にするためには、材料を加熱炉から抽出した後、少なくとも7分間以内に圧延を完了することが必要である。
【0019】
また、高強度を得るための方法として、圧延後のレールを一度室温付近まで自然冷却してパーライト変態させた後に、改めてオーステナイト域温度まで再加熱し、その後の冷却過程で加速冷却を行い、過冷状態からパーライト変態を起こさせて、硬度上昇とともに組織の細粒化を行う方法もある。その場合、オーステナイト温度域のうち、より低温に再加熱するほど細粒のオーステナイト組織を得ることができ、変態後のパーライト組織が細かくなる。
【0020】
またAlNのピンニング効果を利用するためには、圧延に先立って加熱炉で析出させたAlNが再固溶しない、1200℃未満に再加熱する必要がある。一方、加熱温度が800℃未満であると、断面内の温度むらが生じ易くなり、均一なオーステナイト組織にすることは難しく、安定した硬度が得られないため好ましくない。冷却速度については、圧延後に直接加速する場合と同様の理由から、1℃/s以上、10℃/s以下であることが望ましい。
【0021】
上記の製造方法により変態後のパーライトブロックサイズが微細になり、優れた靭性および延性を有するレール鋼を得ることができる。このような微細なパーライト組織は、車輪からの衝撃的な負荷の加わり易いレールの頭部に少なくとも形成されている必要がある。
【0022】
以下にレール鋼の成分を限定した理由について述べる。成分の含有量は質量%である。
C:Cは、レール鋼における高強度化およびパーライト組織生成のための必須元素である。0.6%未満では必要とする高強度のパーライト組織が得がたく、また1.20%を超えるとオーステナイト粒界を脆化させる有害な初析セメンタイトを生成させるため、0.6〜1.2%に限定した。
【0023】
Si:Siはパーライト組織中のフェライト相への固溶強化による高強度化への寄与のみでなく、若干の靭性および延性改善効果がある。0.1%未満ではそれらの効果は少なく、1.2%を超えると脆化をもたらし溶接性も低下するので、0.1〜1.2%に限定した。
【0024】
Mn:Mnはパーライト変態温度を低下させ、焼入れ性を高めることによって高強度化に寄与する。しかし0.4%未満では効果が小さく、1.4%を超えると偏析部にマルテンサイト組織を生成させ易くするため好ましくない。
【0025】
N:Nはオーステナイト粒成長をピンニングによって抑制するAlNを析出させるために必要であり、その効果を得るためには0.0005%以上が必要である。一方、Nが0.030%を超えると高温度域で脆化現象が起き、鋳造における鋼材内部割れが起きるため好ましくない。
【0026】
Al:Alはオーステナイト粒成長をピンニングによって抑制するAlNを析出させるために必要であり、その効果を得るためには0.005%以上が必要である。一方、Alが0.050%を超えるとAl酸化物が粗大化し、靭性の低下をもたらすこと、および重荷重鉄道で使用された際に内部疲労起点となる危険性がある好ましくない。
【0027】
さらに本発明においては、上記成分の他に必要に応じて1種または2種以上のMo,Cr,V,Ni,Nb,Cu,Ti.S,Ca,B,Mgの添加によって、フェライト地の靭性改善、レール圧延素材の加熱時におけるオーステナイト粒の、あるいは圧延時におけるオーステナイト粒の細粒化によって高靭性を得ることができ、さらに冷却過程における加速冷却によって、より高強度と同時に高靭性を得ることができる。
これらの化学成分を限定した理由を以下に説明する。
【0028】
Mo:Moはパーライトの変態速度を抑制し、パーライトブロックサイズを微細化する効果がある。しかし0.015%未満ではこの効果は少なく、一方、0.07%を超えるMo量では偏析部において、パーライト変態速度が過剰に低下し、パーライト組織中にベイナイトやマルテンサイトを生成させるため好ましくない。
【0029】
Cr:Crはパーライト変態温度を低下させることによって高強度化に寄与するとともに、溶接継ぎ手部軟化防止の観点で0.1%以上の含有が有効である。一方1.0%を超えて含有すると強制冷却時に元素偏析部のみでなく、過冷却傾向の強いレールの肩部にベイナイトやマルテンサイトが生成し、靭性の低下をもたらすため好ましくない。
【0030】
V:Vはパーライト変態核となるV炭窒化物を析出し、オーステナイト粒界および、粒内からの変態核生成の促進によりパーライト組織を微細化する元素である。しかしVが0.005%未満ではこの効果は弱く、0.070%以上ではV炭窒化物が粗大になって破壊起点となるため好ましくない。
【0031】
Ni:Niはフェライト中に固溶し、フェライトの靭性を向上させるのに有効な元素である。ただし、Niが0.01%未満の場合にはその効果が少なく、また1.5%を超えて含有してもその効果は飽和する。
【0032】
Nb:Nbは熱間圧延時に低温加熱することによって、Nb炭窒化物がオーステナイト粒成長を抑制し細粒化に寄与する。また、高温加熱・低温仕上げ圧延によって熱間圧延後のオーステナイト粒を細粒化し、加速冷却後に得られるパーライトブロックを微細にする。この効果を得るためには0.004%以上のNbが必要であるが、0.050%を超えると粗大なNb炭窒化物の生成によって靭性が低下するため好ましくない。
【0033】
Cu:CuはNiと同様にフェライト中に固溶し、フェライトの靭性を向上させるのに有効な元素である。ただし、Cuが0.01%未満の場合にはその効果は少なく、また1.5%を超えて含有してもその効果は飽和する。
【0034】
Ti:TiはVと同様、パーライト変態核となるTi窒化物を析出し、オーステナイト粒界および、粒内からの変態核生成の促進によりパーライト組織を微細化する元素である。Tiが0.0001%未満の場合にはその効果が少なく、Tiが0.010%を超えると粗大なTi窒化物を生成し靭性が低下するため好ましくない。
【0035】
S:Sは一般に有害元素として知られているが、MnS,MgSを形成し、これら硫化物はV炭窒化物、Ti窒化物の析出サイトとなる。これらの介在物はオーステナイト粒内に存在すると、粒界に加えて粒内からの変態を促進し、パーライト変態後のパーライトブロックサイズをさらに微細化させる。しかし、Sが0.002%未満では十分な数のMgS,MnSを得ることができず、また0.05%を超えると粗大なMnSが生成し、靭性および延性を著しく低下させるため好ましくない。
【0036】
Bは微量添加においてもオーステナイト粒界に偏析し、変態を遅らせることにより焼入れ性を著しく改善する元素である。この効果を得るためには、Bは0.0001%以上必要であり、0.0050%を超えるとBの炭窒化物が生成し、靭性が低下するため好ましくない。
【0037】
MgはMg酸化物、Mg−Al酸化物、Mg硫化物を析出し、さらにこれらを核としてMnS,V炭窒化物の析出核となる。これらの介在物は粒内変態の促進効果によりパーライト変態後のパーライトブロックを微細にする。しかし、0.0004%未満ではパーライトブロックサイズ微細化がほとんど無く、0.02%を超えると粗大な介在物が生成し、靭性が著しく低下するため好ましくない。
【0038】
またPは鋼中に不可避的に含有される元素である。Pはフェライト層を脆化させて衝撃特性を低下するため、低いことが好ましく、望ましくは0.015%以下である。同様にOは、溶鋼中に不可避的に存在するが、Oが0.02%以上になると粗大な介在物が生じて靭性の低下をもたらすため好ましくない。
【0039】
【実施例】
次に、本発明により製造した高靭性を有する高強度レールの製造実施例について述べる。
表1に示す種々の成分を含有する矩形断面の鋳片を連続鋳造により製造した。熱間圧延のために鋳片を加熱炉内で再加熱する際に、鋳片温度が900℃以上となる加熱炉内の滞在時間を60分間となるようにし、加熱炉内で鋳片の温度が最高となる温度は1120℃とした。加熱炉から鋳片を取り出した後、6分間でレール形状まで圧延した。
圧延したレールの一部はそのまま大気中で放冷した。また、一部はレール頭部表面の温度が750℃となった時点から空気送風により、表面温度が700〜550℃の範囲を冷却速度1〜10℃/sで加速冷却し、頭頂面から2mm下の断面硬度をHv350以上になるようにした。
【0040】
表2は表1に示した成分、再加熱条件から製造したレール鋼の引張試験結果、および試験温度20℃の2mmUノッチシャルピー衝撃試験結果を示す。
シャルピー試験片はレール頭頂面下3mmから長手方向に採取し、ノッチ位置は頭頂面側とした。ノッチ深さは2mmであるので、ノッチ底の位置はレール頭頂面下5mmに相当する。
引張試験片はレール頭部断面から採取した、平行部直径6mm、平行部長さ30mmの丸棒引張試験片で行った。採取位置は引張試験片の中心がレール頭部ゲージコーナーの、表面下10mm位置となるようにした。
表2に示すように、本発明鋼は比較鋼に比べてパーライト組織の微細化により高い衝撃値、延性が得られた。また圧延後の高温域から直接加速冷却熱処理を行うことにより、硬度、強度が上昇するとともに、延性、靭性の向上が得られている。
【0041】
表3は表1に示した実施例のB鋼種について、種々の加熱条件、圧延時間でレールを圧延製造した結果を示す。圧延したレールは送風冷却により、表面温度が700〜550℃の範囲を冷却速度1〜10℃/sで加速冷却し、頭頂面から2mm下の断面硬度をHv350以上になるようにした。送風冷却の開始温度は、比較例b4を除き、頭部表面の温度が750℃以上としたが、比較例b4については圧延時間が長いために加速冷却の開始温度が低下した。
【0042】
表4は表3に示した成分、再加熱条件から製造したレール鋼の引張試験結果、および試験温度20℃の2mmUノッチシャルピー衝撃試験結果を示す。試験片の形状、採取位置は表2で行ったものと同じとした。
この結果が示すように、本発明の条件範囲で製造したレール鋼は、比較鋼レールに比べてパーライト組織の微細化が得られ、高い衝撃値、延性が得られた。
それに対して比較例b4は、本発明例Bと同等の衝撃値、伸びが得られているが、加速冷却の開始温度が低下して、十分な硬度、強度が得られなかった。
【0043】
表5は表1に示した実施例Cと同様の加熱、圧延工程で製造したレールを、一旦室温まで自然冷却した後、種々の温度に再加熱し、頭部表面の温度が700〜550℃の範囲にある間を冷却速度1〜10℃/sで加速冷却し、頭頂面から2mm下の断面硬度をHv350以上になるようにした試験結果を示す。
【0044】
表6は表4に示した成分、再加熱条件から冷却したレール鋼の引張試験、および試験温度20℃の2mmUノッチシャルピー衝撃試験結果を示す。試験片の形状、採取位置は表2で行ったものと同じとした。
この結果が示すように、本発明の温度範囲にレールを再加熱して製造したレール鋼は、それ以外の温度範囲に加熱したレールに比べてパーライト組織の微細化により高い衝撃値、延性が得られた。
【0045】
【表1】
Figure 2004076112
【0046】
【表2】
Figure 2004076112
【0047】
【表3】
Figure 2004076112
【0048】
【表4】
Figure 2004076112
【0049】
【表5】
Figure 2004076112
【0050】
【表6】
Figure 2004076112
【0051】
【発明の効果】
本発明により、圧延後に微細なオーステナイト組織が得られる。これから変態するパーライト組織も微細となり、靭性および延性に優れたパーライト系レールを提供できる。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C :0.6〜1.2%、
    Si:0.1〜1.2%、
    Mn:0.4〜1.4%、
    N :0.005〜0.030%、
    Al:0.005〜0.050%
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるレール用圧延素材を用いて、熱間圧延を行うための再加熱工程において、900℃以上の加熱炉内滞在時間が40分間以上であり、かつ加熱炉内における最高温度が1000〜1200℃の範囲であることを特徴とする、靭性および延性に優れたレールの製造方法。
  2. 請求項1に記載の成分に加え、質量%でさらに、
    Mo:0.015〜0.070%、
    Cr:0.1〜1.0%、
    V :0.005〜0.070%、
    Ni:0.01〜1.50%、
    Nb:0.004〜0.050%、
    Cu:0.01〜1.50%、
    Ti:0.0001〜0.0100%、
    S :0.002〜0.050%、
    B :0.0001〜0.0050%、
    Mg:0.0004〜0.020%、
    の1種または2種以上を含有せしめることを特徴とする、靭性および延性に優れたレールの製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の成分を有する圧延素材を用いて、熱間圧延を行うための再加熱工程において、900℃以上の加熱炉内滞在時間が40分間以上であり、かつ最高加熱温度が1000〜1200℃の範囲であり、さらに加熱炉から材料抽出から仕上圧延を完了するまでの時間が7分間以内で熱間圧延によりレールに形成した後、熱延ままのオーステナイト域温度から、前記レールの少なくとも頭部の表層において700〜550℃の温度範囲を1〜10℃/secで加速冷却することを特徴とする、靭性および延性に優れた高強度パーライト系レールの製造方法。
  4. 請求項1または2に記載の成分を有する圧延素材を、請求項1に記載の再加熱条件により再加熱して熱間圧延でレールに形成し、一旦レールを500℃以下に冷却した後、改めて800℃以上1200℃未満のオーステナイト域温度に再加熱した後、前記レールの少なくとも頭部の表層が700〜550℃である温度範囲を1〜10℃/secで加速冷却することを特徴とする、靭性および延性に優れた高強度パーライト系レールの製造方法。
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