JP2004076070A - 電気伝導性と機械的強度に優れた電気部品用鋼材および鋼製電気部品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電気部品用鋼材および鋼製電気部品における化学成分を、質量%で、C:0.005〜0.05%、Si:0.1%以下(0%を含まない)、Mn:0.1〜0.5%とし、Nb、Ti、Crの少なくとも1種を下記式(1)および(2)を満たすように添加し、かつ金属組織が実質的にフェライト単層組織となるようにする。
[C]+2.85×[Nb]+0.18× [Ti]+0.014×[Cr] ≧ 0.095 …(1)
[C]+0.125×[Nb]+0.046× [Ti]+0.057×[Cr] ≦ 0.050 …(2)
{式中の[C]、[Nb]、[Ti]および[Cr]はそれぞれ、C、Nb、Ti、Crの質量%を示す}
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気部品用鋼材および鋼製電気部品に関するものであり、特に、優れた電気伝導性と高い機械的強度を併せ持つ鋼製電気部品、およびこの様な鋼製電気部品を得るのに有用な、優れた電気伝導性と高い機械的強度を有する電気部品用鋼材に関するものである。
【0002】
尚、本発明の電気部品用鋼材および鋼製電気部品は、例えば自動車分野、半導体分野、産業機械分野、電力・エネルギー分野等で使用される電極端子、ブスバー等の様々な鋼製電気部品に適用できるが、以下では、電気自動車やハイブリッドカー等に用いられる自動車用電気部品に適用する場合を中心に説明する。
【0003】
【従来の技術】
電気部品用金属材料には、製品の省電力化・小型化を図るべく、電気特性として、通電時のエネルギー損失が小さく、ジュール発熱の小さいこと、即ち、電気抵抗が低く電気伝導性に優れていることが求められる。これまで使用されてきた電気伝導性を確保できる金属材料として、例えば銅、ニッケル等が挙げられ、特に優れた電気伝導性が求められる場合には銅が使用され、電気伝導性とともに耐食性が要求される場合にはニッケルが使用されるなど、用途に応じて材料が選択されてきた。
【0004】
ところで近年では、電気部品の小型化やコスト削減を目的に、電気部品の構造を簡素化する傾向が強まり、電気部品用材料には電気伝導性とともに機械的強度を有することが要求されつつある。この様な要求に応じて電気伝導性と機械的強度の両特性を満たすには、銅を用いる場合、他の構造材料との複合が必要となるので、製品を十分に小型化することができず、また加工が複雑になるため製造コストも高くなる。他方、ニッケルを使用すると、両特性は確保し易くなるもののコストが高くなるといった問題が解消されない。この様な状況から、低コスト素材である低炭素鋼材を電気部品用材料として用いることに注目が集まりつつある。
【0005】
特に最近では、鋼材に対する防食処理技術の進歩により、防食被膜−基材間の密着性や、該被膜の基材熱伸縮への追従性などが著しく改善され、鋼材に被覆された被膜のクラックやボイド等も抑制されて優れた防錆効果が得られるようになったことから、耐食性の要求される分野においても、電気伝導性に優れた低炭素鋼材の要望が高まっている。
【0006】
低炭素鋼材の改質技術として、例えば特開2000−8139号には、合金成分や圧延条件を調整することによって、鋼中の固溶窒素を析出物として固定するときの、該析出物の析出状態を制御し、動的ひずみ時効に起因する変形抵抗の増加を抑える技術が開示されている。しかしこの技術は、機械的強度と冷間鍛造性の両特性に主眼を置いてなされたものであり、結晶粒の大きさや析出物の存在に大きく影響を受ける電気伝導性についての検討はなされていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この様な状況の下、本発明者らは、かねてから電気伝導性に優れた鋼材の研究を進めており、電気抵抗の増減に影響を及ぼす合金成分の含有量や熱間圧延等の製造条件を制御することで、優れた冷間鍛造性と電気伝導性の両特性を兼ね備えた電気部品用鋼材、および優れた電気伝導性を発揮し得る電気部品を先に提案した(特願2002−030081号、但し未公開)。しかしこの鋼材は、優れた冷間鍛造性と電気伝導性の両特性確保に主眼を置いてなされたものであり、電気部品についても、電気特性以外の特性についての検討は不十分と言わざるを得ない。そこで本発明者らは、優れた電気伝導性に加えて、自動車用電気部品等として必要な機械的強度も十分に満足せしめ得る様な鋼材の実現を期して研究を進めてきた。
【0008】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、目安として、代表的な低炭素鋼材であるSWRCH10(JIS G 3507)[以下、単に「SWRCH10」という]の機械的強度(ビッカース硬さ:最高でHv約120)と同程度またはそれ以上の機械的強度を有し、かつ電気抵抗が該SWRCH10よりも2割以上小さく電気伝導性に優れた鋼製電気部品、およびこの様な鋼製電気部品を得るのに有用な電気部品用鋼材を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる電気部品用鋼材とは、質量%で(以下同じ)、C:0.005〜0.05%、Si:0.1%以下(0%を含まない)、Mn:0.1〜0.5%であり、Nb、Ti、Crの少なくとも1種が下記式(1)および(2)を満たすように含まれており、金属組織が実質的にフェライト単層組織であるところに特徴を有するものである。
【0010】
[C]+2.85×[Nb]+0.18× [Ti]+0.014×[Cr] ≧ 0.095 …(1)
[C]+0.125×[Nb]+0.046× [Ti]+0.057×[Cr] ≦ 0.050 …(2)
{式中の[C]、[Nb]、[Ti]および[Cr]はそれぞれ、C、Nb、Ti、Crの質量%を示す}
更に上記Nb、Ti、Crの各含有量は、電気部品の冷間加工性向上の観点から、Nb:0.1%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.3%以下であることが好ましい。
【0011】
本発明は、この様な鋼材を用いて得られる鋼製電気部品も規定するものであり、該鋼製電気部品は、C:0.005〜0.05%、Si:0.1%以下(0%を含まない)、Mn:0.1〜0.5%であり、Nb、Ti、Crの少なくとも1種が上記式(1)および(2)を満たすように添加されており、金属組織が実質的にフェライト単層組織であるところに特徴を有し、上記Nb、Ti、Crの各含有量は、電気部品の冷間加工性向上の観点から、Nb:0.1%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.3%以下であることを好ましい形態とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前述した様な状況の下で、電気伝導性と機械的強度に優れた電気部品用鋼材(以下、単に「鋼材」ということがある)および鋼製電気部品(以下、単に「鋼部品」ということがある)を得るべく様々な角度から検討を行った。その結果、鋼の主要成分であるC、Si、Mn等とともに、Nb、Ti、Crの含有量を制御し、かつ金属組織を実質的にフェライト単層組織とすれば、上記両特性を兼備した鋼材が得られることを見出し、上記本発明に想到した。以下、本発明で鋼材および鋼部品の化学成分および金属組織を規定した理由について詳述する。
【0013】
まず本発明では、鋼材および鋼部品の機械的強度を確保するため、Nb、Ti、Crの少なくとも1種を添加し、フェライト組織中にこれらの析出物を生成させて析出硬化を図ることとし、その添加量について、優れた電気伝導性の確保とのバランスから検討を行った。
【0014】
図1は、後述する実施例の実験データを基に、C、Nb、TiおよびCr量とHv硬さとの相関関係から、指数X([C]+2.85×[Nb]+0.18× [Ti]+0.014×[Cr])とHv硬さとの関係を調べた結果である。この図1より、前記SWRCH10と同程度またはそれ以上の機械的強度、即ちHv硬さ120以上を達成するには、前記指数Xを0.095以上にすべきであることが分かる。
【0015】
即ち、鋼材および鋼部品として発明で意図するレベルの機械的強度を確保するには、下記式(1)を満たすようにC、Nb、TiおよびCr量を制御する必要がある。
【0016】
[C]+2.85×[Nb]+0.18× [Ti]+0.014×[Cr] ≧ 0.095 …(1)
{式中の[C]、[Nb]、[Ti]および[Cr]はそれぞれ、C、Nb、Ti、Crの質量%を示す}
尚、析出硬化に寄与するNb、Ti、Crの析出物としては、例えば、これらの元素の炭化物、窒化物、炭窒化物(TiC、TiN、Nb(C,N))等が挙げられる。また、析出物を形成する元素は、Nb、Ti、Crの少なくとも1種であればよいが、電気抵抗の増大を抑制するの観点からは、Nbを単独で添加したり、NbとTiを組み合わせて添加してもよい。
【0017】
一方、Nb、Ti、Cr等の析出物がフェライト組織中に過剰に存在すると電気抵抗が増大し、所望の電気伝導性が得られなくなる。図2は、後述する実施例の実験データを基に、C、Nb、TiおよびCr量と比抵抗との相関関係から、指数Y([C]+0.125×[Nb]+0.046× [Ti]+0.057×[Cr])と比抵抗との関係を調べた結果である。この図2から、上述のSWRCH10よりも比抵抗が20%以上小さく、電気伝導性に優れたものを得るには、前記指数Yを0.050以下とすればよいことが分かる。
【0018】
即ち、高い機械的強度と優れた電気伝導性を両立させるには、上記式(1)に加えて下記式(2)を満たすように、C、Nb、TiおよびCr量を制御する必要がある。
【0019】
[C]+0.125×[Nb]+0.046× [Ti]+0.057×[Cr] ≦ 0.050 …(2)
{式中の[C]、[Nb]、[Ti]および[Cr]はそれぞれ、C、Nb、Ti、Crの質量%を示す}
また、前記Nb、Ti、Crの含有量は、以下に示す観点から、Nb:0.1%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.3%以下の範囲内に抑えることが好ましい。
【0020】
Nb:0.1%以下
Nbは、上述の通り、析出物を生成させて析出硬化を図るのに有効な元素であり、Nb量が過剰になると、冷間鍛造性が低下するので、その上限を0.1%とすることが好ましい。より好ましくは0.04%以下である。
【0021】
Ti:0.1%以下
TiもNbと同様に、析出物を生成させて析出硬化を図るのに有効な元素であるが、Ti量が過剰になると、冷間鍛造性が低下するので、その上限を0.1%とすることが好ましい。より好ましくは0.02%以下である。
【0022】
Cr:0.3%以下
Crも、NbやTiと同様に、析出物を生成させて析出硬化を図るのに有効な元素であり、また冷間鍛造時におけるCの時効抑制にも寄与する元素でもある。しかしCr量が過剰になると、冷間鍛造性が低下するので、その上限を0.3%とすることが好ましい。より好ましくは0.2%以下である。
【0023】
また、本発明にかかる鋼材および鋼部品の主要な成分を規定した理由は以下の通りである。
【0024】
C:0.005〜0.05%
C(炭素)は、鋼材の機械的強度を確保するのに必要な元素であり、C量が少なすぎると、上述のようにCr、Nb、Tiを添加したり、圧延等の製造条件を制御したとしても、所望の強度を確保できなくなる。従って、C量は0.005%以上とする必要があり、好ましくは0.01%以上とする。しかし、Cは鋼中に固溶してFe結晶格子を歪ませ、電気抵抗を高める原因にもなるので、電気伝導性に優れた鋼材とするには、C量を少なめに抑えることが望ましい。本発明では、前述した如くSWRCH10を基準にして電気抵抗率(比抵抗)を20%以上小さくして電気伝導性に優れたものを得るため、C量の上限を0.05%とした。好ましくは0.03%以下に抑える。
【0025】
Si:0.1%以下(0%を含まない)
Siは脱酸剤として有効に作用する元素であるが、多過ぎると、電気伝導性を低下させる他、冷間鍛造性にも悪影響を及ぼすので好ましくない。従ってSi量は0.1%以下に抑える必要がある。好ましくは0.05%以下である。
【0026】
Mn:0.1〜0.5%
Mnも脱酸剤として作用する元素であり、また、鋼中のS(硫黄)を捕捉してSによる脆化を抑制する効果も有するので、0.1%以上、好ましくは0.2%以上含有させる。一方、過剰に含有させると、電気伝導性の低下を招くため、その上限を0.5%とする。好ましくは0.3%以下に抑える。
【0027】
本発明にかかる鋼材の代表的な化学成分は上記の通りであり、残部成分は実質的にFeであるが、該鋼材中に、上述したものの他、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれることのあるPやS等の不可避的不純物が含まれる場合も、本発明で用いる鋼材または鋼部品に包含される。
【0028】
尚、本発明で意図するレベルの特性、殊に電気伝導性を確保するには、Feおよび上記元素(C、Si、Mn、およびNb、Ti、Crの少なくとも1種)を除く不可避不純物元素(Al、N、P、S、原料としてスクラップを使用する場合には、Ni、Cr等も不可避不純物元素として残存する場合がある)を、合計で0.6%以下に抑えるのがよく、特にAl、N、P、Sの各含有量は、下記範囲内とすることが推奨される。
【0029】
Al:0.05%以下(0%を含まない)
Alは脱酸剤として有効に作用するが多量の添加は好ましくない。その理由は次の通りである。即ち、固溶窒素と結合して生成するAlNは結晶粒を微細化し、結晶粒が微細化すると、その分、伝導電子の散乱箇所となる結晶粒界が増加し、電気伝導性の低下を招くからである。従ってAl量は0.05%以下、好ましくは0.03%以下に抑えるのがよい。
【0030】
N:0.005%以下(0%を含まない)
N(窒素)は、上述した通りNb、Ti、Crと窒化物、炭窒化物を形成し、析出硬化による強度向上に寄与する元素であるが、反面、固溶窒素はAlと結合して電気抵抗増大の原因となる結晶粒界を増加させ、また固溶窒素自身も電気伝導性を劣化させる原因となる。固溶窒素量を低減するには、鋼中の全窒素量を低減することが有効であるので、その上限を0.005%とした。好ましくは、0.001%以下である。
【0031】
P:0.02%以下(0%を含む)
P(リン)は、鋼中で粒界偏析を起こして冷間鍛造性や電気特性の劣化を引き起こす有害元素である。従って、Pの含有量は0.02%以下に抑えるのがよく、好ましくは0.01%以下である。
【0032】
S:0.02%以下(0%を含む)
S(硫黄)は、上述の通りMnと結合してMnSを形成するが、S量が過剰になると形成されるMnSも過剰となり、冷間鍛造性や電気伝導性を著しく劣化させる。よってS量は0.02%以下に抑えるのがよく、好ましくは0.01%以下である。
【0033】
<金属組織>
本発明の電気部品用鋼材や鋼製電気部品の金属組織は、実質的にフェライト単層組織であることを要件とする、セメンタイト等のような炭化物が存在せず、伝導電子が散乱されにくいからである。
【0034】
この様に実質的にフェライト単層組織とするには、パーライト組織の生成を抑制するため、鋼材中の炭素量を極力抑えるのが有効である。
【0035】
尚、電気伝導性を向上すべく粒界を減少させるといった観点からは、フェライトの平均結晶粒径を100μm以上とするのが望ましい。該フェライトの平均結晶粒径は、好ましくは130μm以上である。この様にフェライトの結晶粒径を粗大化させるには、製造において、所定の部品形状に成形加工後、850〜950℃で2時間以上焼鈍することが大変有効である。尚、熱処理時間(製造コスト)を費やして前記フェライトの平均結晶粒径が大きくしすぎても電気伝導性向上の効果は飽和するので、約250μm以下に留めるようにする。
【0036】
上述した要件を満たす鋼材は、自動車、船舶、半導体、産業機械等の分野で使用される電極端子、ブスバー等の鋼製電気部品を得るのに有用であり、例えば、自動車用鋼製電気部品を製造するには、上記成分組成の鋼材を溶製し、連続鋳造後、熱間圧延に際しての加熱温度を約1150℃とし、仕上げ温度を約870℃として熱間圧延を行ったのち、酸洗、潤滑皮膜処理、伸線、冷間鍛造等の工程を経て、電極端子等の自動車用鋼製電気部品を得ることが挙げられる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0038】
表1に示す成分組成の供試材を溶製後、熱間圧延(圧延に際して行う加熱の温度:1150℃、仕上げ温度:870℃)を行い直径10mmの圧延材を得た。得られた圧延材を直径9.5mmにまで伸線(伸線減面率:10%)した鋼線用い、金属組織を確認した後、鋼線の断面硬さと電気抵抗(比抵抗)を調べた。
【0039】
金属組織は、鋼線の横断面を観察できるよう樹脂に埋め込んで研磨した後、5%のピクリン酸アルコール液に15〜30秒間浸漬して腐食させ、鋼線横断面のD/4(Dは線材直径)部位を光学顕微鏡で観察した。
【0040】
その結果、いずれの実施例についても、金属組織は、実質的にフェライト単相組織であった。またいずれの実施例についても、該フェライト組織の平均結晶粒径は100μm以上であることを確認した。
【0041】
断面硬さは、ビッカース硬さ試験を行い(試験荷重:1kgf)、ビッカース硬さ(Hv)を測定した。本発明では、硬さがHv120以上の場合を、前記SWRCHと同程度またはそれ以上の高い機械的強度を有するものと評価し、硬さがHv120未満の場合を機械的強度が不足していると評価した。
【0042】
また、電気伝導性は次の様にして評価した。即ち、通電法で通電電流と発生電圧を測定した後、通電電流と発生電圧の比から比抵抗を求めた。尚、通電試験に際しては、電極の接続長さを線径の10倍、電圧端子間距離を線径の20倍とし、通電方向を正逆の2通りで実施することによって、接触抵抗や偏流、熱起電力などの影響を除去した。そして本発明では、比抵抗が13.5μΩcm以下の場合を電気伝導性が良好であるとし、比抵抗が13.5μΩcmを超える場合を電気伝導性が好ましくないと評価した。これらの結果を併せて表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から次の様に考察できる。即ち、No.1〜5は本発明の要件を満足しているので、いずれも前記SWRCH10(Hv硬さ:〜120)と同程度以上の機械的強度を有し、かつ該SWRCH10(比抵抗:〜17μΩcm)よりも比抵抗が20%以上小さく、電気伝導性にも優れていることがわかる。
【0045】
これに対し、No.6〜13は、いずれも金属組織は実質的にフェライト単層組織であるが、表1に示すとおり、本発明で規定する化学成分や析出物量が本発明で規定する要件を外れているため、機械的強度および/または電気伝導性に劣る結果となった。
【0046】
特にNo.6,9,13は、指数Xおよび指数Yのどちらも本発明の規定範囲を外れているため、機械的強度および電気伝導性のどちらも目標値に達していない。
【0047】
No.7および11は、Cまたは析出強化元素(Nb)の過剰含有に起因して指数Yが規定の上限値を超えているため、比抵抗が高く、電気伝導性に劣る結果となった。特にNo.7は、C、SiおよびMnがいずれも本発明で規定する範囲を超えて過剰に添加されているため、指数Yが上限を大幅に上回っており、電気伝導性が著しく劣化している。
【0048】
また、No.8,10および12は、指数Xが下限値を下回っているため、電気伝導性には優れるが、所望の機械的強度を有しないものとなった。特にNo.8は、指数Xが下限値を大幅に下回っているため、硬さが非常に小さく、所望の機械的強度(Hv120以上)に及ばない。
【0049】
尚、No.9、11、および13は、析出強化元素であるCr、Nb、Tiが相対的に多く含まれていることに起因して指数Yが上限を超えており、伝導電子を散乱させる析出物が多く存在する組織となっているため、電気伝導性が低下しているものと考えられる。
【0050】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、優れた電気伝導性と機械的強度を併せ持つ本発明の鋼製電気部品の実現により、優れた電気伝導性とともに機械的強度の要求される、自動車、電車、船舶、産業機械等の分野で使用される各種金属製電気部品の構造を簡略化して製品の小型化を図ることができ、かつ、Ni製の電気部品よりも格段に低いコストで該電気部品を提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】指数X[式(1)の左辺]とHv硬さの関係において、本発明の規定範囲を示したグラフである。
【図2】指数Y[式(2)の左辺]と比抵抗の関係において、本発明の規定範囲を示したグラフである。
Claims (4)
- 質量%で(以下同じ)、
C :0.005〜0.05%、
Si:0.1%以下(0%を含まない)、
Mn:0.1〜0.5%を満たし、
Nb、Ti、Crの少なくとも1種が下記式(1)および(2)を満たすように含まれており、金属組織が実質的にフェライト単層組織であることを特徴とする電気伝導性と機械的強度に優れた電気部品用鋼材。
[C]+2.85×[Nb]+0.18× [Ti]+0.014×[Cr] ≧ 0.095 …(1)
[C]+0.125×[Nb]+0.046× [Ti]+0.057×[Cr] ≦ 0.050 …(2)
{式中の[C]、[Nb]、[Ti]および[Cr]はそれぞれ、C、Nb、Ti、Crの質量%を示す} - 前記Nb、Ti、Crの少なくとも1種は、
Nb:0.1%以下、
Ti:0.1%以下、
Cr:0.3%以下
を満たしている請求項1に記載の電気部品用鋼材。 - C:0.005〜0.05%、
Si:0.1%以下(0%を含まない)、
Mn:0.1〜0.5%を満たし、
Nb、Ti、Crの少なくとも1種が下記式(1)および(2)を満たすように含まれており、金属組織が実質的にフェライト単層組織であることを特徴とする電気伝導性と機械的強度に優れた鋼製電気部品。
[C]+2.85×[Nb]+0.18× [Ti]+0.014×[Cr] ≧ 0.095 …(1)
[C]+0.125×[Nb]+0.046× [Ti]+0.057×[Cr] ≦ 0.050 …(2)
{式中の[C]、[Nb]、[Ti]および[Cr]はそれぞれ、C、Nb、Ti、Crの質量%を示す} - 前記Nb、Ti、Crの少なくとも1種は、
Nb:0.1%以下、
Ti:0.1%以下、
Cr:0.3%以下
を満たしている請求項3に記載の鋼製電気部品。
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