JP2015147961A - 高強度薄鋼板およびその製造方法 - Google Patents

高強度薄鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】打ち抜き性、靱性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.036%以上0.250%以下、Si:0.30%以下、Mn:0.1%以上3.0%以下、P:0.10%以下、S:0.030%以下、Al:0.10%以下、N:0.010%以下を含有し、Ti:0.01%以上1.00%以下、Nb:0.01%以上1.00%以下、V:0.01%以上1.00%以下のうちから選択される1種または2種以上を、C*=(Ti/48+Nb/93+V/51)?12が0.9≰C/C*≰1.5およびC*≧0.04を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とし、フェライト相の面積率が95%以上であり、所定量のTi、Nb、Vが粒子径20nm未満の微細な析出物として析出した組織とし、−196℃での比抵抗を12μΩ・cm以下にすることで、打ち抜き性、靱性に優れた高強度薄鋼板とする。【選択図】図2

Description

本発明は、自動車のロアアームなどの足回り部材、ピラーやメンバーなどの骨格部材およびそれらの補強部材、ドアインパクトビーム、シート部材等の各種自動車部材、或いは自販機、デスク、家電・OA機器、建材などに使用される構造用部材等に最適な、打ち抜き性および靭性に優れた高強度薄鋼板とその製造方法に関する。
近年、地球環境に対する関心の高まりを受けて、製造の際にCO2排出量の大きい鋼板の使用量を削減したいという要望が増加している。また、自動車分野などでは車体を軽くすることで、燃費を向上させるとともに排ガスを減らしたいとのニーズも益々大きくなっている。そのため、高強度鋼板の製造およびその自動車部品への適用が積極的に進められている。高強度鋼板によると、所望の剛性を確保しつつ鋼板を薄肉化することが可能となる。そして、所望の剛性を確保しつつ鋼板の薄肉化が可能となる結果、鋼板使用量の大幅な削減が可能となる。また、自動車用部品に薄肉化した高強度鋼板を適用することにより、所望の強度を維持しつつ自動車車体を軽量化することが可能となり、燃費向上と排ガス量低減が実現する。
しかしながら、鋼板の高強度化に伴い鋼板の打ち抜き性や靭性が低下するため、特に端面部に大きな衝撃が加わるような自動車部品には、高強度鋼板の適用が困難となっている。
このような問題に対し、高強度鋼板の打ち抜き性や靱性を高める技術が、現在までに数多く提案されている。
例えば、特許文献1には、鋼板組成を、C=0.04〜0.15重量%、Si≧1.0重量%、Mn≧1.0重量%、Nb≧0.005重量%、Al=0.005〜0.10重量%、S≦0.01重量%およびFeを主成分とした組成とし、鋼板組織を、主にフェライト、マルテンサイトで構成され、フェライト占積率>50%かつフェライト平均粒径≦5μmかつマルテンサイト平均粒径≦5μmである組織とする技術が提案されている。そして、特許文献1には、組成および組織を上記の如く規定することにより、引張強さ>590MPa、降伏比≦70%、強度−延性バランス(引張強さ×全伸び)≧18000MPa・%、穴拡げ比≧1.2、疲労限度比≧0.40、破面遷移温度≦−40℃を具備する加工性、疲労特性および低温靱性に優れた高強度熱延薄鋼板が得られると記載されている。
また、特許文献2には、鋼板組成を、質量%でC:0.08〜0.25%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.8〜2.1%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成とし、鋼板組織を、ベイナイト相または焼戻マルテンサイト相を主相とし、旧オーステナイト粒の平均粒径が、圧延方向に平行な断面で20μm以下で、かつ圧延方向に直交する断面で15μm以下である組織とする技術が提案されている。そして、特許文献2には、組成と組織を上記の如く規定することにより、降伏強さYS:960MPa以上の高強度を有しているにも拘らず、優れた靱性、更には優れた曲げ特性を備えた高強度熱延鋼板が得られると記載されている。
更に、特許文献3には、鋼板組成を、質量%でC:0.06%以上0.13%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.5%未満、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下、Ti:0.14%以上0.25%以下、V:0.01%以上0.5%以下を、[Ti]/48+[V]/51+[W]/184+[Mo]/96+[Nb]/93≧0.0043([Ti]、[V]、[W]、[Mo]、[Nb]:各元素の含有量(質量%))を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とし、鋼板組織を、フェライト相の面積率が95%以上、該フェライト相の平均結晶粒径が10μm以下であり、前記フェライト相の結晶粒内の炭化物平均粒子径が10nm未満である組織とする技術が提案されている。そして、特許文献3には、組成および組織を上記の如く規定することにより、引張強さが850MPa以上であり且つ打ち抜き性に優れた高強度熱延鋼板が得られると記載されている。
特開平7−150294号公報 特開2013−117068号公報 特開2013−124395号公報
しかし、特許文献1に提案された技術では、鋼板に含まれるSi量が多いことから、化成処理性、めっき性などの表面性状が良くないという問題があった。自動車部品の多くは耐食性を付与する目的でめっき処理や化成処理が施されるため、表面性状に問題のある鋼板は、自動車部品の素材に適さない。また、特許文献1で提案された技術では、鋼板の打ち抜き性について検討されていない。
特許文献2に提案された技術では、鋼板組織をベイナイト相または焼戻マルテンサイト相を主相とし、フェライトを含まない組織としている。このように、加工性に優れるフェライトを含まない組織では、鋼板の成形性に劣り、打ち抜き性に優れた鋼板が得られない。一方、特許文献3に提案された技術では、打ち抜き性に優れた高強度鋼板が得られるものの、靱性について十分に検討されておらず、改善の余地があった。
以上のように、従来技術では、所望の鋼板強度を確保しつつ、鋼板の打ち抜き性と靱性の両立を図ることが困難であった。
本発明は、従来技術が抱える問題を解決し、打ち抜き性と靭性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
鋼板の強度と加工性の両立を図る技術としては、鋼板組織を加工性が良好なフェライト単相組織とし、フェライト中にTi炭化物などの微細な析出物を析出させる技術が知られている。そこで、本発明者らは、このような析出強化を図ったフェライト単相組織の鋼板に着目し、その強度、打ち抜き性および靱性に影響を及ぼす各種要因について鋭意検討した。その結果、鋼板に炭化物形成元素であるTi、Nb、Vのいずれか1種以上を添加し、これらの元素の添加量を最適化して微細な炭化物を析出させることで、鋼板の高強度化に寄与する粒子径20nm未満の微細析出物の析出量を十分に確保し、例えば引張強さTS:780MPa以上の高強度薄鋼板が得られるという知見を得た。
また、本発明者らは、鋼板の打ち抜き性および靱性と、鋼板の比抵抗との間には、強い相関が見られるというこれまでにない新たな知見を得た。そして、更に検討を進めた結果、鋼板の−196℃での比抵抗を所定値以下に抑制することで、鋼板の強度を維持しつつ、打ち抜き性と靱性に優れた高強度薄鋼板が得られることが明らかになった。
上記検討結果を踏まえ、本発明者らは、高強度薄鋼板の−196℃での比抵抗を低減する手段を模索した。そして、その製造工程において、Ti等の析出などに起因して鋼板に蓄積された歪を十分に解放することにより、−196℃での比抵抗が抑制された鋼板が得られるという知見を得た。具体的には、高強度薄鋼板を製造するに際し、鋼素材に熱間圧延を施すことにより得られた熱延板に、所定の条件で焼鈍処理を施すことにより、鋼板に蓄積された歪が大幅に解放され、−196℃での比抵抗が十分に低減された高強度薄鋼板が得られるという知見を得た。
本発明は上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は次のとおりである。
[1] 質量%で、C:0.036%以上0.250%以下、Si:0.30%以下、Mn:0.1%以上3.0%以下、P:0.10%以下、S:0.030%以下、Al:0.10%以下、N:0.010%以下を含有し、Ti:0.01%以上1.00%以下、Nb:0.01%以上1.00%以下、V:0.01%以上1.00%以下のうちから選択される1種または2種以上を、以下の(1)式で表されるC*が以下の(2)式および(3)式を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、フェライト相の面積率が95%以上であり、析出物が析出し、該析出物のうち粒子径が20nm未満である析出物中のTi、NbおよびV量が下記(1)式で表されるC*に対して下記(4)式を満足する組織を有し、−196℃での比抵抗が12μΩ・cm以下であることを特徴とする高強度薄鋼板。
C*=(Ti/48+Nb/93+V/51)×12 … (1)
(Ti、Nb、Vは、各元素の含有量(質量%))
0.9≦C/C*≦1.5 … (2)
(Cは、Cの含有量(質量%))
C*≧0.04… (3)
([Ti]20/48+[Nb]20/93+[V]20/51)×12≧C*×0.60 … (4)
([Ti]20、[Nb]20、[V]20は、粒子径が20nm未満である析出物中のTi、Nb、V量(質量%))
[2] 質量%で、C:0.036%以上0.250%以下、Si:0.30%以下、Mn:0.1%以上3.0%以下、P:0.10%以下、S:0.030%以下、Al:0.10%以下、N:0.010%以下を含有し、Ti:0.01%以上1.00%以下、Nb:0.01%以上1.00%以下、V:0.01%以上1.00%以下のうちから選択される1種または2種以上、およびMo:0.005%以上0.500%以下、Ta:0.005%以上0.500%以下、W:0.005%以上0.500%以下のうちから選択される1種または2種以上を、以下の(5)式で表されるC**が以下の(6)式および(7)式を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、フェライト相の面積率が95%以上であり、析出物が析出し、該析出物のうち粒子径が20nm未満である析出物中のTi、Nb、V、Mo、TaおよびW量が以下の(5)式で表されるC**に対して以下の(8)式を満足し、前記析出物のうち粒子径が100nm以上である析出物中のTi、Nb、V、Mo、TaおよびW量が以下の(5)式で表されるC**に対して以下の(9)式を満足する組織を有し、−196℃での比抵抗が12μΩ・cm以下であることを特徴とする高強度薄鋼板。
C**=(Ti/48+Nb/93+V/51+Mo/96+Ta/181+W/184)×12 … (5)
(Ti、Nb、V、Mo、Ta、Wは、各元素の含有量(質量%))
0.9≦C/C**≦1.5 … (6)
(Cは、Cの含有量(質量%))
C**≧0.04… (7)
([Ti]20/48+[Nb]20/93+[V]20/51+[Mo]20/96+[Ta]20/181+[W]20/184)×12≧C**×0.60 … (8)
([Ti]20、[Nb]20、[V]20、[Mo]20、[Ta]20、[W]20は、粒子径が20nm未満である析出物中のTi、Nb、V、Mo、Ta、W量(質量%))
([Ti]100/48+[Nb]100/93+[V]100/51+[Mo]100/96+[Ta]100/181+[W]100/184)×12≦C**×0.10 …(9)
([Ti]100、[Nb]100、[V]100、[Mo]100、[Ta]100、[W]100は、粒子径が100nm以上である析出物中のTi、Nb、V、Mo、Ta、W量(質量%))
[3] 前記[1]または[2]において、前記組成に加えて更に、質量%で、B:0.0003%以上0.0050%以下を含有することを特徴とする高強度薄鋼板。
[4] 前記[1]ないし[3]のいずれかにおいて、前記組成に加えて更に、質量%で、Cr:0.01%以上1.00%以下、Ni:0.01%以上1.00%以下、Cu:0.01%以上1.00%以下のうちから選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする高強度薄鋼板。
[5] 前記[1]ないし[4]のいずれかにおいて、前記組成に加えて更に、質量%で、Sb:0.005%以上0.050%以下を含有することを特徴とする高強度薄鋼板。
[6] 前記[1]ないし[5]のいずれかにおいて、前記組成に加えて更に、質量%で、Ca:0.0005%以上0.0100%以下、REM:0.0005%以上0.0100%以下のうちから選択される1種または2種を含有することを特徴とする高強度薄鋼板。
[7] 前記[1]ないし[6]のいずれかにおいて、鋼板表面にめっき層を有することを特徴とする高強度薄鋼板。
[8] 前記[1]ないし[6]のいずれかに記載の組成からなる鋼素材に、仕上げ圧延出側温度を800℃以上1000℃以下とする熱間圧延を施したのち、前記仕上げ圧延出側温度から700℃までの温度域の平均冷却速度を30℃/s以上で冷却し、500℃以上700℃以下の巻取り温度で巻き取り後、室温まで冷却し、次いで、200℃/h以下の平均加熱速度で550℃以上700℃以下の均熱温度に加熱し、該均熱温度に100h以下滞留させたのち、200℃/h以下の平均冷却速度で室温まで冷却する焼鈍処理を施すことを特徴とする高強度薄鋼板の製造方法。
[9] 前記[8]において、前記焼鈍処理に続き、500℃以上700℃以下の温度域に再加熱し、再加熱後の冷却過程において420℃以上500℃以下の亜鉛めっき浴に浸漬するめっき処理を施すことを特徴とする高強度薄鋼板の製造方法。
[10] 前記[9]において、前記めっき処理に続き、460℃以上600℃以下の温度域に再加熱し、該温度域に1s以上滞留させる合金化処理を施すことを特徴とする高強度薄鋼板の製造方法。
[11] 前記[8]において、前記焼鈍処理後、0.1%以上3.0%以下の板厚減少率で加工を付与することを特徴とする高強度薄鋼板の製造方法。
[12] 前記[9]において、前記めっき処理後、0.1%以上3.0%以下の板厚減少率で加工を付与することを特徴とする高強度薄鋼板の製造方法。
[13] 前記[10]において、前記合金化処理後、0.1%以上3.0%以下の板厚減少率で加工を付与することを特徴とする高強度薄鋼板の製造方法。
本発明によると、自動車をはじめとする輸送機械類の部品、建築用鋼材などの構造用鋼材等に最適な、例えば引張強さTS:780MPa以上の高強度と優れた打ち抜き性、更には優れた靭性を有する高強度薄鋼板が得られる。また、上記の如く優れた鋼板特性が得られることから、本発明は、高強度薄鋼板の更なる用途展開を可能とし、産業上格段の効果を奏する。
鋼板の焼鈍処理工程での平均加熱速度と、鋼板の−196℃での比抵抗との関係を示す図である。 鋼板の−196℃での比抵抗と、鋼板の打ち抜き性、延性−脆性遷移温度(靱性)との関係を示す図である。
以下、本発明について具体的に説明する。
まず、本発明高強度薄鋼板の成分組成の限定理由について説明する。なお、以下の成分組成を表す%は、特に断らない限り質量%(mass%)を意味するものとする。
C :0.036%以上0.250%以下
Cは、Ti、Nb、Vと炭化物を形成し、微細析出物として鋼板中に析出することで、鋼板の高強度化に寄与する元素である。また、Cは、上記炭化物の微細化にも寄与する元素である。鋼板の高強度化に寄与するTi等の炭化物は、主に鋼板製造工程における熱間圧延後の冷却、巻き取り過程でγ→α変態と同時に析出する。ここで、γ→α変態点が高温になると、Ti等の炭化物が高温域で析出することになるため、炭化物が粗大化してしまう。このような問題に対し、Cは、前記冷却過程でフェライト変態が開始する温度を低下させることで、炭化物の析出温度を下げ、炭化物の粗大化を抑制する効果を有する。更に、Cは、固溶Cが粒界に偏析することで粒界強度を高めるとともに、細粒化により鋼板の打ち抜き性、靭性向上にも寄与する。
上記の効果を十分に発現させるためには、C含有量を0.036%以上とする必要がある。好ましくは0.05%以上である。一方、C含有量が過剰に高くなると、鋼のフェライト変態を抑制し、ベイナイトやマルテンサイトへの変態を促進して鋼板の成形性低下を招く。更に、Ti、Nb、Vと炭化物を形成しない過剰なCがセメンタイトとなり、鋼板の成形性や靭性が低下する。これらの問題を回避するためには、C含有量を0.250%以下とする必要がある。好ましくは、0.200%以下である。
Si:0.30%以下
Siが多量に添加されると、鋼板製造工程における熱間圧延後の冷却過程でフェライト変態が促進され、炭化物の析出温度が上昇する結果、炭化物が粗大に析出してしまう。また、表面にSiの酸化物が生成し易くなるため、熱延板では化成処理不良が生じ易くなり、めっき板では不めっきなどの不良が生じ易くなる。したがって、Si含有量は0.30%以下とする必要がある。好ましくは0.10%以下、より好ましくは0.05%以下、より一層好ましくは0.03%以下である。
Mn:0.1%以上3.0%以下
Mnは、鋼板製造工程の熱間圧延後冷却過程において、フェライト変態が開始する温度を低下させることで、炭化物の析出温度を下げて炭化物を微細化する効果を有する。また、Mnは、フェライトを細粒化することで、鋼板の打ち抜き性、靭性を向上させる効果を有する。更に、Mnは、固溶強化により鋼板の高強度化に寄与するとともに、有害な鋼中SをMnSとして無害化する作用も有する。このような効果を得るためには、Mn含有量を0.1%以上とする必要がある。好ましくは0.5%以上、より好ましくは1.0%以上、より一層好ましくは1.3%以上である。一方、Mn含有量が過剰に高くなると、熱間圧延後の冷却過程において、フェライト変態が抑制され、ベイナイト変態やマルテンサイト変態が促進される結果、Ti、Nb、Vの微細な炭化物形成が抑制されてしまう。したがって、Mn含有量は3.0%以下とする必要がある。好ましくは2.5%以下、より好ましくは2.0%以下である。
P :0.10%以下
Pは粒界に偏析して、鋼板の延性や靭性を劣化させる元素である。また、Pは、鋼板製造工程の熱間圧延後冷却過程において、フェライト変態を促進し、炭化物の析出温度を高め、炭化物を粗大に析出させる元素でもある。これらの問題を回避するためには、P含有量を0.10%以下とする必要がある。好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.03%以下、より一層好ましくは0.01%以下である。
S :0.030%以下
Sは、熱間での延性を著しく低下させることで、熱間割れを誘発し、鋼板の表面性状を著しく劣化させる。また、Sは、鋼の強度に殆ど寄与しないばかりか、不純物元素として粗大な硫化物を形成することにより、鋼板の延性、伸びフランジ性を低下させる。これらの問題は、S含有量が0.030%を超えると顕著となる。したがって、S含有量は0.030%以下とする。好ましくは0.010%以下、より好ましくは0.003%以下、より一層好ましくは0.001%以下である。
Al:0.10%以下
Alは、鋼板製造工程の熱間圧延後冷却過程において、フェライト変態を促進し、炭化物の析出温度を高め、炭化物を粗大に析出させる元素である。また、Alの多量添加は、鋼中アルミ酸化物の増加を招き、鋼板の延性低下の要因となる。これらの問題を回避するためには、Al含有量を0.10%以下とする必要がある。好ましくは0.06%以下である。なお、Al含有量の下限は特に規定しないが、Alキルド鋼として0.01%以上含まれても問題ない。
N :0.010%以下
Nは、Ti、Nb、Vと高温で粗大な窒化物を形成するが、これらの窒化物は鋼板強度にあまり寄与しない。そのため、Nは、Ti、Nb、Vによる鋼板の高強度化の効果を小さくする要因となる。またNを多量に含有すると、熱間圧延中にスラブ割れを伴い、鋼板に表面疵が発生する恐れがある。したがって、N含有量は0.010%以下とする必要がある。好ましくは0.005%以下、より好ましくは0.003%以下、より一層好ましくは0.002%以下である。
Ti:0.01%以上1.00%以下、Nb:0.01%以上1.00%以下、V:0.01%以上1.00%以下のうちから選択される1種または2種以上
Ti、NbおよびVは、Cと微細な炭化物を形成し、微細析出物として鋼板中に析出することで、鋼板の高強度化に寄与する。所望の鋼板強度(好ましくはTS:780MPa以上)を得るためには、Ti、NbおよびVのうちから選択される1種または2種以上を含有させる必要があり、これらの含有量はいずれも0.01%以上とする必要がある。好ましくは0.03%以上である。一方、Ti、NbおよびVを、それぞれ1.00%を超えて多量に含有させても、鋼板の高強度化の効果はあまり得られない反面、製造コストの上昇を招いてしまう。したがって、Ti、VおよびNbの含有量は、いずれも1.00%以下とする。好ましくは0.9%以下である。
また、本発明においては、Ti、NbおよびVのうちから選択される1種または2種以上を、以下の(1)式で表されるC*が以下の(2)式および(3)式を満足するように含有させる必要がある。(1)式右辺のTi、NbおよびVは、鋼板中の各元素の含有量(質量%)である。なお、鋼板がTiを含有しない場合には、(1)式の右辺のTiを0(ゼロ)としてC*を算出するものとする。鋼板がNbを含有しない場合やVを含有しない場合も、同様とする。また、(2)式中辺のCは、鋼板中のCの含有量(質量%)である。
C*=(Ti/48+Nb/93+V/51)×12 … (1)
(Ti、Nb、Vは、各元素の含有量(質量%))
0.9≦C/C*≦1.5 … (2)
(Cは、Cの含有量(質量%))
C*≧0.04… (3)
0.9≦C/C*≦1.5
Ti、Nb、Vの添加量に対して添加C量が少なくなるにつれて、Ti、Nb、Vが炭化物として析出する量が減り、固溶して残る量が増えてしまう。固溶Ti、Nb、Vは、鋼板の高強度化に寄与しない。そのため、C/C*は0.9以上とする必要がある。好ましくは1.0以上、より好ましくは1.1以上である。一方、Ti、Nb、Vの添加量に対して添加C量が多くなりすぎると、Ti、Nb、Vの炭化物として析出しない余剰Cが増加し、セメンタイトの増加を招くことになり、鋼板の成形性が低下してしまう。そのため、C/C*は1.5以下とする必要がある。好ましくは1.3以下である。
C*≧0.04
炭化物の形成に寄与するTi、Nb、Vの合計添加量が少ないと、炭化物の量が減り、鋼板の高強度化が困難となってしまう。したがって、C*は0.04以上とする必要がある。好ましくは0.07以上である。但し、C*の値が過剰に高くなると、鋼板の強度が極端に上昇し、打ち抜き性、靭性が低下してしまうおそれがあるため、C*は0.30以下とすることが好ましい。
本発明の高強度薄鋼板は、強度、靱性等を向上させる目的で以上の元素に加えて更に、次の元素を含有させることができる。
Mo:0.005%以上0.500%以下、Ta:0.005%以上0.500%以下、W:0.005%以上0.500%以下のうちから選択される1種または2種以上
Mo、Ta、Wは、Cと微細な炭化物を形成し、微細析出物として鋼板中に析出することで、鋼板の高強度化に寄与する元素である。このような効果を得るためにMo、Ta、Wを含有させる場合には、1種または2種以上をそれぞれ0.005%以上含有させることが好ましい。より好ましくは、0.03%以上である。一方、これらの元素を多量に添加すると、上記の効果が飽和するだけでなく、コストの上昇を招く。したがって、Mo、Ta、Wを含有させる場合には、1種あるいは2種以上を、それぞれ0.50%以下で含有させることが好ましい。より好ましくは、0.40%以下である。
Mo、TaおよびWのいずれか1種または2種以上を含有する組成とする場合には、前記(1)〜(3)式に代えて、以下の(5)式で表されるC**が以下の(6)式および(7)式を満足する必要がある。(5)式右辺のTi、Nb、V、Mo、TaおよびWは、鋼板中の各元素の含有量(質量%)である。なお、鋼板がTiを含有しない場合には、(5)式の右辺のTiを0(ゼロ)としてC**を算出するものとする。その他の元素(Nb、V、Mo、TaおよびW)を含有しない場合も同様とする。また、(6)式中辺のCは、鋼板中のCの含有量(質量%)である。
C**=(Ti/48+Nb/93+V/51+Mo/96+Ta/181+W/184)×12 … (5)
(Ti、Nb、V、Mo、Ta、Wは、各元素の含有量(質量%))
0.9≦C/C**≦1.5 … (6)
(Cは、Cの含有量(質量%))
C**≧0.04… (7)
0.9≦C/C**≦1.5
Ti、Nb、V、Mo、Ta、Wの添加量に対して添加C量が少なくなるにつれて、これらの元素が炭化物として析出する量が減り、固溶して残る量が増えてしまう。固溶Ti、Nb、V、Mo、Ta、Wは、鋼板の高強度化に寄与しない。そのため、C/C**は0.9以上とする必要がある。好ましくは1.0以上、より好ましくは1.1以上である。一方、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Wの添加量に対して添加C量が多くなりすぎると、炭化物として析出しない余剰Cが増加し、セメンタイトの増加を招くことになり、鋼板の成形性が低下してしまう。そのため、C/C**は1.5以下とする必要がある。好ましくは1.4以下である。
C**≧0.04
炭化物の形成に寄与するTi、Nb、V、Mo、Ta、Wの合計添加量が少ないと、炭化物の量が減り、鋼板の高強度化が困難となってしまう。したがって、C**は0.04以上とする必要がある。好ましくは0.07以上である。但し、C**の値が過剰に高くなると、鋼板の強度が極端に上昇し、打ち抜き性、靭性が低下してしまうおそれがあるため、C**は0.30以下とすることが好ましい。
B:0.0003%以上0.0050%以下
Bは、鋼板製造工程の熱間圧延後冷却過程において、フェライト変態が開始する温度を低下させることで、炭化物の析出温度を下げて、炭化物を微細に析出させる元素である。また、Bは、粒界に偏析して粒界強度を上げることで、鋼板の靭性向上にも寄与する元素である。このような効果を得るためには、B含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.0005%以上、より一層好ましくは0.0010%以上である。一方、多量のBは熱間での鋼の変形抵抗値を上げて圧延を困難にしてしまう。したがって、Bを添加する場合には、その含有量を0.0050%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.0030%以下、より一層好ましくは0.0020%以下である。
Cr:0.01%以上1.00%以下、Ni:0.01%以上1.00%以下、Cu:0.01%以上1.00%以下のうちから選択される1種または2種以上
Cr、Ni、Cuは、組織を細粒化することで鋼板の高強度化に寄与する元素である。このような効果を得るためにCr、Ni、Cuを添加する場合には、1種あるいは2種以上をそれぞれ0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは、0.02%以上である。一方、Cr、Ni、Cuを多量に添加すると、上記の効果が飽和するだけでなく、コストの上昇を招く。したがって、Cr、Ni、Cuを添加する場合には、1種あるいは2種以上をそれぞれ1.00%以下で含有させることが好ましい。より好ましくは、0.50%以下である。
Sb:0.005%以上0.050%以下
Sbは、熱間圧延時に表面に偏析することから、スラブ等の鋼素材が窒化するのを防止して粗大な窒化物の形成を抑制する効果を有する。このような効果を得るためにSbを添加する場合には、その含有量を0.005%以上とすることが好ましい。一方、多量にSbを添加するとコストが上昇することから、Sbを添加する場合はその含有量を0.050%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.008%以上0.030%以下である。
Ca:0.0005%以上0.0100%以下、REM:0.0005%以上0.0100%以下のうちから選択される1種または2種
Ca、REMは、鋼中の硫化物の形態を制御することで鋼板の延性、伸びフランジ性を向上させる効果を有する。このような効果を得るためにCa、REMを添加する場合には、1種あるいは2種以上をそれぞれ0.0005%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.0010%以上である。一方、Ca、REMを多量に添加しても、上記の効果が飽和するだけでなくコストが上昇する。したがって、Ca、REMを添加する場合には、1種あるいは2種以上をそれぞれ0.0100%以下で含有させることが好ましい。より好ましくは0.0070%以下である。
残部はFeおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、Sn、Mg、Co、As、Pb、Znなどが挙げられ、これらの元素の含有量が合計で0.5%以下であれば、鋼板特性に影響を及ぼさない。また、O(酸素)は、その含有量が0.01%以下であれば鋼板特性に影響を及ぼさない。
次に、本発明高強度薄鋼板の組織および比抵抗値の限定理由について説明する。
本発明の高強度薄鋼板は、フェライト相の面積率が95%以上であり、析出物が析出した組織を有する。
フェライト相の面積率:95%以上
鋼板の組織にベイナイトやマルテンサイトなどの低温変態相が存在すると、成形性が低下してしまう。したがって、本発明の高強度薄鋼板においては、微細析出物で強化したフェライト相を主相とし、その組織分率を金属組織全体に対し面積率で95%以上とする必要がある。好ましくは98%以上、より好ましくは100%である。
なお、本発明の高強度薄鋼板において、鋼板の組織に含有され得るフェライト相以外の組織としては、セメンタイト、パーライト、ベイナイト相、マルテンサイト相、残留オーステナイト相等が挙げられる。これらの組織は、鋼板の成形性に悪影響を及ぼすため、可能な限り低減することが好ましいが、金属組織全体に対する合計面積率が5%以下であれば許容される。好ましくは2%以下、より好ましくは0(ゼロ)%である。
析出物
本発明の高強度薄鋼板に析出する析出物は、主にTi、NbおよびVのうちから選択される1種または2種以上を含む炭化物であり、具体的にはTi炭化物、Nb炭化物、V炭化物、Ti-Nb系複合炭化物、Ti-V系複合炭化物、Nb-V系複合炭化物、Ti-Nb-V系複合炭化物のいずれか1種または2種以上である。また、鋼板がMo、TaおよびWのいずれか1種または2種以上を含有する場合、本発明の高強度薄鋼板に析出する析出物は、主にTi、Nb、V、Mo、TaおよびWのうちから選択される1種または2種以上を含む炭化物である。本発明においては、このような析出物のうち、粒子径が20nm未満である析出物の析出量を十分に確保することで、鋼板の高強度化を図っている。
本発明においては、上記析出物のうち、粒子径が20nm未満である析出物中のTi、NbおよびV量が、前記(1)式で表されるC*に対して以下の(4)式を満足することとする。(4)式左辺の[Ti]20、[Nb]20、[V]20は、鋼板中に析出している析出物のうち粒子径が20nm未満である析出物として析出しているTi量(質量%)、Nb量(質量%)、V量(質量%)である。なお、(4)式の左辺は、粒子径が20nm未満である析出物中のTi、Nb、Vの合計量の炭素量換算値を表している。
([Ti]20/48+[Nb]20/93+[V]20/51)×12≧C*×0.60 … (4)
鋼板に析出する析出物のうち、粗大な析出物は鋼板の高強度化に寄与しない。鋼板の高強度化には、粗大な析出物を抑制し、粒子径が20nm未満の析出物を多量に析出させる必要がある。鋼板のTi、Nb、V添加量に対し、粒子径20nm未満の析出物として析出するTi量、Nb量、V量の割合が少ないと、高強度化の効率が悪く製造コストの上昇を招いてしまう。また、鋼板の高強度化に寄与する微細析出物の析出量を十分に確保することができず、所望の鋼板強度、例えば引張強さTS:780MPa以上の鋼板強度が得られなくなる。ここで、本発明の高強度薄鋼板に析出する析出物は、主にTi、NbおよびVのうちから選択される1種または2種以上を含む炭化物であることから、本発明においては、粒子径が20nm未満である析出物中のTi、Nb、V合計量の炭素量換算値を、(1)式で表されるC*の0.60倍以上とする。好ましくはC*の0.70倍以上、より好ましくはC*の0.80倍以上、より一層好ましくはC*の0.90倍以上である。
また、鋼板がMo、TaおよびWのいずれか1種または2種以上を含有する場合には、粒子径が20nm未満である析出物中のTi、Nb、V、Mo、TaおよびW量を、前記(4)式に代えて、前記(5)式で表されるC**に対して以下の(8)式を満足することとする。(8)式左辺の[Ti]20、[Nb]20、[V]20、[Mo]20、[Ta]20、[W]20は、鋼板中に析出している析出物のうち、粒子径が20nm未満である析出物として析出するTi量(質量%)、Nb量(質量%)、V量(質量%)、Mo量(質量%)、Ta量(質量%)、W量(質量%)である。なお、(8)式の左辺は、粒子径が20nm未満である析出物中のTi、Nb、V、Mo、Ta、W合計量の炭素量換算値を表している。
([Ti]20/48+[Nb]20/93+[V]20/51+[Mo]20/96+[Ta]20/181+[W]20/184)×12≧C**×0.60 …(8)
鋼板のTi、Nb、V 、Mo、Ta、W添加量に対し、粒子径20nm未満の析出物として析出するTi量、Nb量、V量、Mo量、Ta量、W量の割合が少ないと、高強度化の効率が悪く製造コストの上昇を招いてしまう。また、鋼板の高強度化に寄与する微細析出物の析出量を十分に確保することができず、所望の鋼板強度が得られなくなる。したがって、本発明においては、粒子径が20nm未満である析出物中のTi、Nb、V、Mo、Ta、W合計量の炭素量換算値を、(5)式で表されるC**の0.60倍以上とする。好ましくはC**の0.70倍以上、より好ましくはC**の0.80倍以上、より一層好ましくはC**の0.90倍以上である。
また、鋼板がMo、TaおよびWのいずれか1種または2種以上を含有する場合には、粒子径が100nm以上である析出物中のTi、Nb、V、Mo、TaおよびW量を、前記(5)式で表されるC**に対して以下の(9)式を満足することとする。(9)式左辺の[Ti]100、[Nb]100、[V]100、[Mo]100、[Ta]100、[W]100は、鋼板中に析出している析出物のうち粒子径が100nm以上である析出物として析出するTi量(質量%)、Nb量(質量%)、V量(質量%)、Mo量(質量%)、Ta量(質量%)、W量(質量%)である。なお、(9)式の左辺は、粒子径が100nm以上である析出物中のTi、Nb、V、Mo、Ta、W合計量の炭素量換算値を表している。
([Ti]100/48+[Nb]100/93+[V]100/51+[Mo]100/96+[Ta]100/181+[W]100/184)×12≦C**×0.10 …(9)
鋼板のTi、Nb、V、Mo、Ta、W添加量に対し、粒子径100nm以上の析出物として析出するTi量、Nb量、V量、Mo量、Ta量、W量の割合が高くなるにつれて、粒子径が100nm以上の析出物が多くなる。そして、このような粗大な析出物は鋼板の打ち抜き時に亀裂の起点となるため、打ち抜き性および靭性が大きく低下する。したがって、本発明においては、粒子径が100nm以上である析出物中のTi、Nb、V、Mo、Ta、W合計量の炭素量換算値を、(5)式で表されるC**の0.10倍以下とする。好ましくはC**の0.02倍以下である。
−196℃での比抵抗:12μΩ・cm以下
比抵抗が大きくなると、鋼板内部の歪が大きくなり、打ち抜き性、靭性が低下する。したがって、−196℃での比抵抗は12μΩ・cm以下とする。好ましくは10μΩ・cm以下である。なお、比抵抗の低下に伴い鋼板の打ち抜き性と靭性が向上するメカニズムは未だ不明な点が多いが、炭化物がフェライト域で微細析出する際の整合析出により鋼板内部に発生した応力を、長時間の熱処理を行うことで低減し、比抵抗を低下させることで、打ち抜き性と靭性が向上しているものと推測される。
以上のように組成、組織および比抵抗を規定することで、所望の強度を有し、打ち抜き性と靱性に優れた高強度薄鋼板が得られる。本発明高強度薄鋼板の強度は特に規定しないが、引張強さTS:780MPa以上が好ましく、980MPa以上がより好ましい。また、本発明高強度薄鋼板の板厚も特に規定しないが、板厚は4.0mm以下が好ましく、0.8mm以上3.0mm以下がより好ましい。
また、鋼板に耐食性を付与する目的で、本発明高強度薄鋼板の表面にめっき層を設けても、また、めっき層の上層に化成処理などにより皮膜を設けても、上記した本発明の効果を損なうことはない。
本発明において鋼板表面に設けるめっき層の種類は特に限定されず、電気めっき層、溶融めっき層のいずれも適用可能である。めっき層の合金成分も特に問わず、溶融亜鉛めっき層、合金化溶融亜鉛めっき層などが好適な例として挙げられるが、勿論、これらに限定されない。亜鉛以外にも、亜鉛とAlの複合めっき、亜鉛とNiの複合めっき、Alめっき、AlとSiの複合めっきなどを施してもよい。表面にめっき層を形成することにより、高強度薄鋼板の耐食性が向上し、厳しい腐食環境下で使用される自動車部品などへの適用が可能になる。
次に、本発明の高強度薄鋼板の製造方法について説明する。
本発明においては、前記組成の鋼素材に、仕上げ圧延出側温度を800℃以上1000℃以下とする熱間圧延を施したのち、前記仕上げ圧延出側温度から700℃までの温度域の平均冷却速度を30℃/s以上で冷却し、500℃以上700℃以下の巻取り温度で巻き取り後、室温まで冷却し、次いで、200℃/h以下の平均加熱速度で550℃以上700℃以下の均熱温度に加熱し、該均熱温度に100h以下滞留させたのち、200℃/h以下の平均冷却速度で室温まで冷却する焼鈍処理を施すことを特徴とする。
本発明において、鋼の溶製方法は特に限定されず、転炉、電気炉等、公知の溶製方法を採用することができる。また、真空脱ガス炉にて2次精錬を行ってもよい。その後、溶鋼からスラブ(鋼素材)を鋳造するが、生産性等の問題から連続鋳造法によりスラブ(鋼素材)とするのが好ましい。但し、造塊−分塊圧延法、薄スラブ連鋳法等、公知の鋳造方法でスラブとしてもよい。
上記の如く得られた鋼素材に、熱間圧延を施す。温片や冷片となった鋼素材に熱間圧延を施すに際しては、熱間圧延に先立ち、鋼素材をオーステナイト単相域に再加熱する。熱間圧延前の鋼素材がオーステナイト単相域に加熱されていないと、鋼素材中に存在する析出物の再溶解が進行せず、圧延後に析出物(主にTi、Nb、V等を含む炭化物)の微細析出が達成されない。
以上の理由により、本発明では熱間圧延に先立ち、鋼素材をオーステナイト単相域、好ましくは1200℃以上に再加熱する。但し、鋼素材の再加熱温度が過剰に高くなると、酸化量が増加して歩留まり低下等が懸念されるため、上記再加熱温度は1300℃以下とすることが好ましい。なお、鋼素材に熱間圧延を施すに際し、鋳造後の鋼素材(スラブ)がオーステナイト単相域の温度となっている場合には、鋼素材を加熱することなく、直送圧延してもよい。
熱間圧延は、通常、粗圧延と仕上げ圧延からなるが、本発明において粗圧延の条件は特に限定されない。また、特に薄スラブ鋳造法を採用した場合には、粗圧延を省略してもよい。仕上げ圧延は、以下の条件で行う。
仕上げ圧延出側温度:800℃以上1000℃以下
仕上げ圧延の出側温度が低くなると、圧延後の冷却においてフェライト変態が促進され、炭化物が大きく析出してしまう。また、仕上げ圧延の出側温度がフェライト域になると、歪誘起析出により粗大な炭化物が析出してしまう。そのため、仕上げ圧延出側温度、すなわち仕上げ最終圧延出側の温度は800℃以上とする必要がある、好ましくは850℃以上である。一方、仕上げ圧延出側温度が過剰に高くなると、変態後のフェライト粒が大きくなり、鋼板の打ち抜き性や靭性が低下する。したがって、仕上げ圧延出側温度は1000℃以下とする必要がある。好ましくは950℃以下である。
熱間圧延終了後、以下の条件で加速冷却し、鋼板中に炭化物を微細に析出させる。
仕上げ圧延出側温度から700℃までの温度域の平均冷却速度:30℃/s以上
仕上げ圧延終了から700℃までの冷却速度が小さいと、フェライト変態が促進され、炭化物が大きく析出してしまう。したがって、仕上げ圧延出側温度から700℃までの温度域の平均冷却速度は30℃/s以上とする必要がある。好ましくは50℃/s以上、より好ましくは80℃/s以上、より一層好ましくは100℃/s以上である。但し、上記温度域の平均冷却速度が過剰に大きくなると、巻取り温度の制御が困難となり安定した鋼板強度が得られ難くなるおそれがあるため、300℃/s以下とすることが好ましい。
巻取り温度:500℃以上700℃以下
巻取り温度が高くなりすぎると、炭化物が粗大になってしまう。そのため巻取り温度は700℃以下とする必要がある。好ましくは650℃以下である。一方、巻取り温度が低くなりすぎると、ベイナイトやマルテンサイトなどの低温変態相が生成してしまう。したがって、巻取り温度は500℃以上とする必要がある。好ましくは550℃以上である。
引き続き、室温まで冷却した巻き取り後の熱延板(熱延コイル)に、次の条件で均熱温度まで加熱し、該均熱温度に所定時間滞留させたのち、室温まで冷却する焼鈍処理を施す。なお、室温とは、通常、20±5℃の温度を意味するが、実際の熱間圧延ラインでは、巻き取り後のコイル(熱延コイル)の周囲の温度環境が概ね0℃以上100℃以下の範囲で変動する場合もある。
室温から均熱温度までの平均加熱速度:200℃/h以下
室温から均熱温度までの加熱速度が大きいと、前記加速冷却または巻き取り工程での炭化物の析出により生じた歪を解放することができず、鋼板の打ち抜き性、靭性が低下してしまう。したがって、室温から均熱温度までの平均加熱速度は200℃/h以下とする必要がある。好ましくは150℃/h以下、より好ましくは100℃/h以下である。上記平均加熱速度の下限は特に設けないが、生産性の観点からは10℃/h以上とすれば十分である。
均熱温度:550℃以上700℃以下
均熱温度が低すぎると、炭化物の析出により生じた歪を解放することができない。したがって、均熱温度は550℃以上とする必要がある。好ましくは600℃以上である。一方、均熱温度が過剰に高くなると、析出物が粗大化し、鋼板強度が低下する。したがって、均熱温度は700℃以下とする必要がある。好ましくは650℃以下である。
均熱温度での滞留時間(均熱時間):100h以下
均熱時間が長すぎると、析出物が粗大化し、鋼板強度が低下する。したがって、均熱時間は100時間以下とする必要がある。好ましくは70時間以下、より好ましくは50時間以下である。均熱時間の下限は特に指定しないが、歪を十分に解放させる観点からは、均熱時間を1.0時間以上とすることが好ましく、10時間以上とすることがより好ましい。
均熱温度から室温までの平均冷却速度:200℃/h以下
均熱温度から室温までの冷却速度が大きすぎると、炭化物等の析出により生じた歪を解放することができない。したがって、均熱温度から室温までの平均冷却速度は200℃/h以下とする必要がある。好ましくは150℃/h以下、より好ましくは100℃/h以下である。均熱温度から室温までの平均冷却速度の下限は特に設けないが、生産性を上げる観点からは、10℃/h以上とすれば十分である。
なお、焼鈍処理を施すに際しては、熱延コイルを巻き取ったまま加熱する、いわゆるバッチ焼鈍を行えばよい。また、焼鈍処理前に酸洗を行ってもよいし、焼鈍処理後の酸洗を行ってもよい。
以上により、所望の組織と比抵抗を有し、高強度(例えばTS:780MPa以上)であり且つ打ち抜き性と靱性に優れた高強度薄鋼板が得られる。
また、本発明においては、以上のようにして製造された高強度薄鋼板に対し、めっき処理を施して鋼板表面にめっき層を形成してもよい。めっき処理は、電気めっき、溶融めっきのいずれも適用可能である。また、めっき層の合金成分も特に問わず、溶融亜鉛めっき層、合金化溶融亜鉛めっき層などが好適な例として挙げられるが、勿論、これらに限定されない。亜鉛以外にも、亜鉛とAlの複合めっき、亜鉛とNiの複合めっき、Alめっき、AlとSiの複合めっきなどを施してもよい。
溶融亜鉛めっき層を形成する場合には、焼鈍処理に続き、以下の温度に再加熱する熱処理を行ったのち、再加熱温度からの冷却過程でめっき浴に浸漬するめっき処理を施してもよい。
再加熱温度:500℃以上700℃以下
めっき処理時の再加熱温度が高くなりすぎると、析出物が粗大化して鋼板強度が低下するおそれがある。したがって、再加熱温度は700℃以下とすることが好ましい。より好ましくは680℃以下である。再加熱温度の下限は特に設けないが、めっき表面を美麗にする観点から、500℃以上にすることが好ましい。再加熱温度に加熱し、該再加熱温度に所定時間(例えば30s以上200s以下)滞留させたのち、冷却する。そして、その冷却過程で420℃以上500℃以下の亜鉛めっき浴に浸漬し、溶融亜鉛めっき層を形成する。鋼板を亜鉛めっき浴に浸漬するに際しては、鋼板温度が380℃以上550℃以下の温度域に冷却された段階で、めっき浴に浸漬することが好ましい。
合金化溶融亜鉛めっき層を形成する場合には、上記めっき処理に続き、460℃以上600℃以下の温度域に再加熱し、該温度域に1s以上滞留させる合金化処理を施すことが好ましい。ZnとFeの合金化処理を行う際の再加熱温度が高くなりすぎると、合金化が進行しすぎてしまい、めっき層が脆くなる。したがって、合金化処理時の再加熱温度は600℃以下とすることが好ましい。より好ましくは570℃以下である。一方、合金化処理時の再加熱温度が低くなりすぎると合金化が進まないため、460℃以上とすることが好ましい。より好ましくは480℃以上である。460℃以上600℃以下の温度域での滞留時間の上限は特に設けないが、滞留時間が長期化すると鋼板中の析出物が粗大化するため、10s以下とすることが好ましい。より好ましくは5s以下である。
前記焼鈍処理、めっき処理、合金化処理後の鋼板は、軽加工を加えることで可動転位を増やし、打ち抜き性、靭性を高めることができる。軽加工を加える場合には、0.1%以上の板厚減少率で加工を付与することが好ましく、0.3%以上の板厚減少率で加工を付与することがより好ましい。一方、板厚減少率が大きくなりすぎると、加工硬化により鋼板の延性が低下することから、加工を付与する場合には板厚減少率を3.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは2.0%以下、より一層好ましくは1.0%以下である。上記軽加工を付与するに際しては、圧延ロールによる圧下で軽加工を付与してもよいし、鋼板にテンションを加える引張りにより軽加工を付与してもよい。更に、上記圧延ロールによる圧下と引張りの複合により軽加工を付与してもよい。
溶鋼を通常公知の手法により溶製、連続鋳造して、表1に示す組成を有する肉厚250mmのスラブ(鋼素材)とした。これらのスラブを、1250℃に加熱し、粗圧延し、表2の条件で仕上げ圧延を施し、加速冷却し、巻き取り、板厚:1.6〜3.6mmの熱延板(熱延コイル)とした。次いで、室温まで冷却した熱延コイルに、表2の条件で焼鈍処理を施し、薄鋼板とした。また、一部の熱延コイルについては、表2の条件で焼鈍処理を施したのち、再加熱し、再加熱温度に30〜200s滞留させた後、鋼板が380〜550℃に冷却された時点で460℃のめっき浴(めっき組成:0.20 mass%Al-Zn)に浸漬するめっき処理を施し、片面当たり付着量45g/m2の溶融亜鉛めっき層を鋼板の表面に形成した薄鋼板(GI材)とした。更に、一部の熱延コイルについては、表2の条件での焼鈍処理に続き、上記と同じ条件でめっき処理を施し、片面当たり付着量45g/m2の溶融亜鉛めっき層を鋼板の表面に形成したのち、表2に示す条件で再加熱して再加熱温度に滞留させる合金化処理を施して薄鋼板(GA材)とした。更に一部の薄鋼板については、焼鈍処理後または合金化処理後、表2に示す板厚減少率で加工を付与した。
Figure 2015147961
Figure 2015147961
上記により得られた薄鋼板(めっき無しの薄鋼板、GI材、GA材)から試験片を採取し、組織観察、電解抽出、引張試験、打ち抜き試験、シャルピー衝撃試験および比抵抗の測定を行った。組織観察方法、電解抽出方法、各種試験方法および比抵抗の測定方法は、次のとおりとした。
(i)組織観察
得られた薄鋼板から試験片を採取し、樹脂に埋め込み、圧延方向断面をナイタール腐食後、光学顕微鏡(倍率:500倍)で板厚中央部の300×300μm2領域について組織観察を行った。観察した全領域(300×300μm2領域)に対しフェライト相が占める面積の割合を求めることにより、フェライト相の面積率を測定した。
(ii)電解抽出
電解抽出法により、粒子径が20nm未満である析出物中のTi、Nb、V、Mo、Ta、W量(すなわち、前記(4)式または(8)式の[Ti]20、[Nb]20、[V]20、[Mo]20、[Ta]20、[W]20)を求め、これらの合計量の炭素量換算値を算出した。
得られた薄鋼板(GI材、GA材の場合は、めっき層以外の部分)から試験片を採取し、10%AA系電解液(10vol%アセチルアセトン-1mass%塩化テトラメチルアンモニウム・メタノール)中、電流密度:20mA/cm2で定電流電解した。電解後の試験片を電解液から取出して、分散性を有する溶液中に浸漬し、試験片の表面に付着している析出物を溶液中に分散させた。次いで、溶液を、孔径20nmフィルターを用いてろ過し、ろ液(ろ過後の溶液)を、ICP-MSを用いて分析し、ろ液中に含まれるTi、Nb、V、Mo、Ta、Wの質量を測定した。粒子径が20nm未満である析出物中のTi量、すなわち[Ti]20は、ろ液中に含まれるTiの質量M20と、定電流電解によって電解した試験片の質量Msを用い、[Ti]20=M20/Ms×100(質量%)により求めた。[Nb]20、[V]20、[Mo]20、[Ta]20、[W]20についても同様にして求めた。このようにして得られた[Ti]20、[Nb]20、[V]20、[Mo]20、[Ta]20、[W]20を用い、粒子径が20nm未満である析出物中のTi、Nb、V、Mo、Ta、W合計量の炭素量換算値、すなわち前記(4)式の左辺(([Ti]20/48+[Nb]20/93+[V]20/51)×12)または前記(8)式の左辺(([Ti]100/48+[Nb]100/93+[V]100/51+[Mo]100/96+[Ta]100/181+[W]100/184)×12)の値を算出した。
また、電解抽出法により、粒子径が100nm以上である析出物中のTi、Nb、V、Mo、Ta、W量(すなわち、前記(9)式の[Ti]100、[Nb]100、[V]100、[Mo]100、[Ta]100、[W]100)を求め、これらの合計量の炭素量換算値を算出した。
得られた薄鋼板(GI材、GA材の場合は、めっき層以外の部分)から試験片を採取し、10%AA系電解液(10vol%アセチルアセトン-1mass%塩化テトラメチルアンモニウム・メタノール)中、電流密度:20mA/cm2で定電流電解した。電解後の試験片を電解液から取出して、分散性を有する溶液中に浸漬し、試験片の表面に付着している析出物を溶液中に分散させた。次いで、溶液を、孔径100nmフィルターを用いてろ過し、100nmフィルターに残った抽出残渣を、ICP-MSを用いて分析し、抽出残渣中のTi、Nb、V、Mo、Ta、Wの質量を測定した。
粒子径が100nm以上である析出物中のTi、すなわち[Ti]100は、抽出残渣中のTiの質量M100と、定電流電解によって電解した試験片の質量Msを用い、[Ti]100=M100/Ms×100(質量%)により求めた。[Nb]100、[V]100、[Mo]100、[Ta]100、[W]100についても同様にして求めた。このようにして得られた[Ti]100、[Nb]100、[V]100、[Mo]100、[Ta]100、[W]100を用い、粒子径が100nm以上である析出物中のTi、Nb、V、Mo、Ta、W合計量の炭素量換算値、すなわち前記(9)式の左辺(([Ti]100/48+[Nb]100/93+[V]100/51+[Mo]100/96+[Ta]100/181+[W]100/184)×12)の値を算出した。
(iii)引張試験
得られた薄鋼板から、圧延直角方向を引張方向とするJIS5号引張り試験片を切り出し、JIS Z 2241に準拠して引張り試験を行い、降伏強さ(降伏点YP)、引張強さ(TS)、全伸び(El)を測定した。
(iv)打ち抜き試験
得られた薄鋼板に、20mmφの孔を片側20%のクリアランスで打ち抜き、打ち抜き端面の外観を目視で観察した。端面荒れおよび端面割れが観察されなかった場合を「打ち抜き性:良好(○)」、端面荒れは観察されたが端面割れは観察されなかった場合を「打ち抜き性:やや不良(△)」、端面荒れおよび端面割れが観察された場合を「打ち抜き性:不良(×)」と評価した。
(v)シャルピー衝撃試験(靱性の評価)
得られた薄鋼板から、試験片を採取してシャルピー衝撃試験を実施し、破面遷移温度を測定した。試験片は、板厚を元厚ままとした以外はJIS Z 2242に準拠したVノッチ試験片とし、長手方向が圧延方向となるように作成した。JIS Z 2242に準拠したシャルピー衝撃試験を、10℃ピッチで各温度につき3回実施して脆性破面率を求め、延性−脆性遷移温度(脆性破面率が50%となる温度)を求めた。延性−脆性遷移温度が−40℃以下である場合を、靱性が良好であると評価した。
(vi)比抵抗の測定
得られた薄鋼板から、4mm×80mmの試験片を採取し、4端子法により−196℃での比抵抗値を測定した。なお、GI材およびGA材に関しては、表面に形成されためっき層を除去したのち、比抵抗を測定した。
以上により得られた結果を、表3に示す。また、表3の供試体No.8〜12について、焼鈍処理の平均加熱速度と上記(vi)により得られた比抵抗との関係を図1に示す。更に、表3の供試体No.8〜12について、上記(vi)により得られた比抵抗と上記(iv)、(v)により得られた打ち抜き性、靱性との関係を図2に示す。図2中、打ち抜き性が良好である場合を○、打ち抜き性がやや不良である場合を△、打ち抜き性が不良である場合を×で示す。
Figure 2015147961
表3に示すように、本発明例の供試体は、TS:780MPa以上の強度を備えるとともに、−196℃での比抵抗が12μΩ・cm以下であり、打ち抜き性が良好(○)であるとともに延性−脆性遷移温度が−40℃以下と靱性にも優れた高強度薄鋼板となっている。一方、比較例の供試体は、打ち抜き性、靱性のいずれか一方または両方が不十分な高強度薄鋼板となっている。また、図1から、焼鈍処理の平均加熱速度が遅いほど、すなわち鋼板に蓄積された歪が少ないほど、鋼板の比抵抗が低くなることが理解できる。更に、図2から、鋼板の比抵抗が低くなるにつれて、鋼板の打ち抜き性と靱性が向上することが理解できる。

Claims (13)

  1. 質量%で、
    C :0.036%以上0.250%以下、 Si:0.30%以下、
    Mn:0.1%以上3.0%以下、 P :0.10%以下、
    S :0.030%以下、 Al:0.10%以下、
    N :0.010%以下
    を含有し、
    Ti:0.01%以上1.00%以下、 Nb:0.01%以上1.00%以下、
    V :0.01%以上1.00%以下
    のうちから選択される1種または2種以上を、下記(1)式で表されるC*が下記(2)式および(3)式を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、
    フェライト相の面積率が95%以上であり、析出物が析出し、該析出物のうち粒子径が20nm未満である析出物中のTi、NbおよびV量が下記(1)式で表されるC*に対して下記(4)式を満足する組織を有し、
    −196℃での比抵抗が12μΩ・cm以下であることを特徴とする高強度薄鋼板。

    C*=(Ti/48+Nb/93+V/51)×12 … (1)
    (Ti、Nb、Vは、各元素の含有量(質量%))
    0.9≦C/C*≦1.5 … (2)
    (Cは、Cの含有量(質量%))
    C*≧0.04… (3)
    ([Ti]20/48+[Nb]20/93+[V]20/51)×12≧C*×0.60 … (4)
    ([Ti]20、[Nb]20、[V]20は、粒子径が20nm未満である析出物中のTi、Nb、V量(質量%))
  2. 質量%で、
    C :0.036%以上0.250%以下、 Si:0.30%以下、
    Mn:0.1%以上3.0%以下、 P :0.10%以下、
    S :0.030%以下、 Al:0.10%以下、
    N :0.010%以下
    を含有し、
    Ti:0.01%以上1.00%以下、 Nb:0.01%以上1.00%以下、
    V :0.01%以上1.00%以下
    のうちから選択される1種または2種以上、および
    Mo:0.005%以上0.500%以下、 Ta:0.005%以上0.500%以下、
    W :0.005%以上0.500%以下
    のうちから選択される1種または2種以上を、下記(5)式で表されるC**が下記(6)式および(7)式を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、
    フェライト相の面積率が95%以上であり、析出物が析出し、該析出物のうち粒子径が20nm未満である析出物中のTi、Nb、V、Mo、TaおよびW量が下記(5)式で表されるC**に対して下記(8)式を満足し、前記析出物のうち粒子径が100nm以上である析出物中のTi、Nb、V、Mo、TaおよびW量が下記(5)式で表されるC**に対して下記(9)式を満足する組織を有し、
    −196℃での比抵抗が12μΩ・cm以下であることを特徴とする高強度薄鋼板。

    C**=(Ti/48+Nb/93+V/51+Mo/96+Ta/181+W/184)×12 … (5)
    (Ti、Nb、V、Mo、Ta、Wは、各元素の含有量(質量%))
    0.9≦C/C**≦1.5 … (6)
    (Cは、Cの含有量(質量%))
    C**≧0.04… (7)
    ([Ti]20/48+[Nb]20/93+[V]20/51+[Mo]20/96+[Ta]20/181+[W]20/184)×12≧C**×0.60 …(8)
    ([Ti]20、[Nb]20、[V]20、[Mo]20、[Ta]20、[W]20は、粒子径が20nm未満である析出物中のTi、Nb、V、Mo、Ta、W量(質量%))
    ([Ti]100/48+[Nb]100/93+[V]100/51+[Mo]100/96+[Ta]100/181+[W]100/184)×12≦C**×0.10 …(9)
    ([Ti]100、[Nb]100、[V]100、[Mo]100、[Ta]100、[W]100は、粒子径が100nm以上である析出物中のTi、Nb、V、Mo、Ta、W量(質量%))
  3. 前記組成に加えて更に、質量%で、B:0.0003%以上0.0050%以下を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度薄鋼板。
  4. 前記組成に加えて更に、質量%で、Cr:0.01%以上1.00%以下、Ni:0.01%以上1.00%以下、Cu:0.01%以上1.00%以下のうちから選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の高強度薄鋼板。
  5. 前記組成に加えて更に、質量%で、Sb:0.005%以上0.050%以下を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の高強度薄鋼板。
  6. 前記組成に加えて更に、質量%で、Ca:0.0005%以上0.0100%以下、REM:0.0005%以上0.0100%以下のうちから選択される1種または2種を含有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の高強度薄鋼板。
  7. 鋼板表面にめっき層を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の高強度薄鋼板。
  8. 請求項1ないし6のいずれかに記載の組成からなる鋼素材に、仕上げ圧延出側温度を800℃以上1000℃以下とする熱間圧延を施したのち、前記仕上げ圧延出側温度から700℃までの温度域の平均冷却速度を30℃/s以上で冷却し、500℃以上700℃以下の巻取り温度で巻き取り後、室温まで冷却し、次いで、200℃/h以下の平均加熱速度で550℃以上700℃以下の均熱温度に加熱し、該均熱温度に100h以下滞留させたのち、200℃/h以下の平均冷却速度で室温まで冷却する焼鈍処理を施すことを特徴とする高強度薄鋼板の製造方法。
  9. 前記焼鈍処理に続き、500℃以上700℃以下の温度域に再加熱し、再加熱後の冷却過程において420℃以上500℃以下の亜鉛めっき浴に浸漬するめっき処理を施すことを特徴とする請求項8に記載の高強度薄鋼板の製造方法。
  10. 前記めっき処理に続き、460℃以上600℃以下の温度域に再加熱し、該温度域に1s以上滞留させる合金化処理を施すことを特徴とする請求項9に記載の高強度薄鋼板の製造方法。
  11. 前記焼鈍処理後、0.1%以上3.0%以下の板厚減少率で加工を付与することを特徴とする請求項8に記載の高強度薄鋼板の製造方法。
  12. 前記めっき処理後、0.1%以上3.0%以下の板厚減少率で加工を付与することを特徴とする請求項9に記載の高強度薄鋼板の製造方法。
  13. 前記合金化処理後、0.1%以上3.0%以下の板厚減少率で加工を付与することを特徴とする請求項10に記載の高強度薄鋼板の製造方法。
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