JP2004075437A - 肥料 - Google Patents
肥料 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004075437A JP2004075437A JP2002236303A JP2002236303A JP2004075437A JP 2004075437 A JP2004075437 A JP 2004075437A JP 2002236303 A JP2002236303 A JP 2002236303A JP 2002236303 A JP2002236303 A JP 2002236303A JP 2004075437 A JP2004075437 A JP 2004075437A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- fertilizer
- cultivation
- sulfate
- persulfate
- potassium
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Fertilizers (AREA)
Abstract
【課題】本発明は、硫黄欠乏症状が認められるか又は硫黄欠乏症状の発生が予想される作物栽培場面、例えば隔離床栽培、連続不耕起栽培、ハウス栽培等に好適に使用できる肥料を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の肥料は、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等の過硫酸塩を含有する。本発明肥料は、水溶液の形態で使用することができ、カルシウムイオン共存下において実用上問題となる水不溶物の生成が殆ど起こらず、養液土耕栽培に好適に使用できる。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明の肥料は、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等の過硫酸塩を含有する。本発明肥料は、水溶液の形態で使用することができ、カルシウムイオン共存下において実用上問題となる水不溶物の生成が殆ど起こらず、養液土耕栽培に好適に使用できる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、肥料に関する。更に詳しくは、本発明は、養液土耕栽培に好適に使用される肥料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、土耕栽培では、作物の栽培開始前に、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム等の硫酸塩を含む複合肥料を基肥として使用し、土壌に硫黄源を供給してきた。
【0003】
硫黄は、作物にとって必要な成分ではあるが、大量に必要とするものではない。また、硫酸塩から生ずる硫酸イオンは、作物に吸収されにくい上、土壌に吸着しやすい性質を有しているため、土壌が酸性化するのを避け得ない。更に、当時社会問題となっていた酸性雨によって、雨水に含まれる硫酸イオンが土壌中に蓄積されるようになった。
【0004】
そのため、土耕栽培では、敢えて硫黄源の施肥を行う必要がなくなっていた。
【0005】
養液土耕栽培は、1991年から研究が開始され、1998年以降農家で定着してきた新しい栽培方法である。養液土耕栽培においても、土耕栽培と同様に、使用する肥料には硫酸塩を含有しないものを好ましく使用してきた。
【0006】
近年、養液土耕栽培において、隔離床栽培(土壌病害回避及び軽作業化を目的にプランター、発泡スチロール箱等を用いて少量の培地で栽培する方法)、連続不耕起栽培(作が終わっても土を耕さず、続けて次の作付けを行う栽培方法)等の新しい栽培方法が普及しつつある。また、ハウス内での養液土耕栽培も増加傾向にある。
【0007】
このような養液土耕栽培において、作物に硫黄欠乏症と認められる症状の発生が認められるようになってきた。これは、養液土耕栽培を行う土壌に雨水、地下水等の供給が殆どなく、土壌が必然的に硫黄源の供給が絶たれた状態、不耕起により作物の根圏域に硫黄源が存在しない状態等となったためと考えられる。
【0008】
また、最近では酸性雨の問題も解消されつつあり、土壌への硫黄源の供給が少なくなっているため、一般の栽培方法(土耕栽培法等)においても、土壌が硫黄欠乏の状態になることが今後予想される。
【0009】
土壌が硫黄欠乏の状態になった場合、硫黄成分を肥料成分として供給することにより解消できるから、硫黄成分として従来使用されていた硫酸カリウム、硫酸アンモニウム等の硫酸塩を用いればよいことになる。
【0010】
ところで、養液土耕栽培法は、基肥によらず、作物の生育ステージ及び生育状態に基づき、水及び肥料を過不足なく供給する方法であるが、肥料の供給(施肥)は、通常水溶液とした肥料(液肥)を、点滴潅水チューブを介して作物の根圏域に点滴潅水施肥することにより行われている。そのために、養液土耕栽培を行うに当たっては、通常、タンクに液肥の濃厚液を入れ、混入機により所定の濃度になるよう水で希釈して潅水施肥される。
【0011】
そこで、養液土耕栽培において、タンクに硫酸カリウム、硫酸アンモニウム等の硫酸塩を硫黄源として供給した場合、タンク内に肥料成分として必要なカルシウムイオンが存在すれば、硫酸カルシウム(石膏)を形成し、タンク内に水不溶物となって沈殿するのが避けられない。即ち、養液土耕栽培を実施するに当たり、タンクに液肥の濃厚液を供給した時点から硫酸カルシウムの生成が速やかに進行し、必要な肥料成分の供給が行えなくなる。しかも、生成する水不溶物(硫酸カルシウム)が、点滴潅水チューブの点滴孔を塞ぎ、混入機等のポンプ機器類に負荷を与える不都合が生ずる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、新しい硫黄源となる肥料成分を含有する肥料を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、新規な肥料を開発することに成功し、ここに本発明を完成するに至った。
【0014】
1.本発明は、過硫酸塩を含有する肥料である。
【0015】
2.本発明は、過硫酸塩がペルオキソ二硫酸ナトリウム及びペルオキソ二硫酸カリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種である上記1記載の肥料である。
【0016】
3.本発明は、過硫酸塩がペルオキソ二硫酸カリウムである上記2記載の肥料である。
【0017】
4.本発明は、水溶液の形態で使用される上記1〜3のいずれかに記載の肥料である。
【0018】
5.本発明は、養液土耕栽培に使用される上記1〜4のいずれかに記載の肥料である。
【0019】
6.本発明は、過硫酸塩を含有する養液土耕栽培用肥料である。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の肥料は、過硫酸塩を含有する。
【0021】
過硫酸塩としては、例えば、ペルオキソ一硫酸塩、ペルオキソ二硫酸塩等を挙げることができるが、安定性の観点からペルオキソ二硫酸塩が好ましい。
【0022】
塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられるが、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましく、肥料の三大要素の一つであるカリウムの供給源として使用する観点からカリウム塩がより好ましい。
【0023】
好ましい過硫酸塩は、ペルオキソ二硫酸ナトリウム及びペルオキソ二硫酸カリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、より好ましい過硫酸塩は、ペルオキソ二硫酸カリウムである。
【0024】
本発明において、過硫酸塩は、一種単独で又は二種以上を混合して使用される。
【0025】
本発明の肥料中の過硫酸塩含有量は、制限がない。本発明肥料は、過硫酸塩からなっていてもよいし、過硫酸塩と共に他の肥料成分が含まれていてもよい。また、本発明肥料には、上記肥料成分の他に、公知の殺虫剤、殺菌剤、植物生長調整剤等の農薬、クエン酸、植物抽出物等の植物活力剤、排管洗浄材、界面活性剤、土壌浸透剤等の各種成分が含まれていてもよい。
【0026】
本発明において使用する過硫酸塩は、粉末、顆粒等の固体であってもよいし、これらを水に溶解して水溶液の形態で使用してもよい。
【0027】
過硫酸塩と共に配合される他の肥料成分としては、例えば、窒素質肥料、リン酸質肥料、カリ質肥料、石灰質肥料、苦土質肥料、マンガン質肥料、ホウ素質肥料等の公知の肥料成分が挙げられる。
【0028】
窒素質肥料としては、例えば、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸石灰、硝酸苦土等の硝酸態窒素含有肥料、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸アンモニウムナトリウム等のアンモニア態窒素含有肥料、尿素等の尿素態窒素含有肥料等を挙げることができる。
【0029】
リン酸質肥料としては、例えば、リン酸第一アンモニウム、リン酸第二アンモニウム、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔成リン肥、腐食酸リン肥、焼成リン肥、リン酸苦土、副産リン肥料等を挙げることができる。
【0030】
カリ質肥料としては、例えば、硫酸カリウム、硫酸カリウム苦土、重炭酸カリウム、腐食酸カリウム肥料、粗製カリウム塩、被覆カリウム肥料、液体珪酸カリウム肥料、副産カリウム肥料、混合カリウム肥料等を挙げることができる。
【0031】
石灰質肥料としては、例えば、生石灰、消石灰、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸カルシウム等を挙げることができる。
【0032】
苦土質肥料としては、例えば、硫酸苦土、水酸化苦土、腐食酸苦土、酢酸苦土、加工苦土肥料、リグニン苦土肥料、混合苦土肥料、硝酸苦土、苦土石灰等を挙げることができる。また、リン酸質肥料として挙げた熔成リン肥等は苦土質肥料としても使用できる。
【0033】
マンガン質肥料としては、例えば、硫酸マンガン等のマンガン化合物を主成分とするものを挙げることができる。
【0034】
ホウ素質肥料としては、例えば、ホウ酸肥料、ホウ酸塩肥料等の水溶性ホウ素を含有する肥料等を挙げることができる。
【0035】
これら各種肥料は、一種を単独で使用でき、又は二種以上を併用できる。
【0036】
更に、上記肥料成分の他に、市販の配合肥料、化成肥料、液体複合肥料、家庭園芸複合肥料、微量要素複合肥料等を使用することができる。
【0037】
本発明肥料を使用するに当たっては、過硫酸塩が土壌中に残留することのないように、作物の生育ステージ、生育状況等に基づき、必要量の過硫酸塩を過不足なく供給されるように、本発明肥料を使用するのが好ましい。例えば、従来から行われている土耕栽培法のように、基肥として栽培開始前に大量に施肥すると、従来使用されていた硫酸カリウム、硫酸アンモニウム等の硫酸塩と同様に、土壌酸性化の問題が危惧される。従って、本発明肥料を、施肥量を管理できる養液土耕栽培法に適用するのが好ましい。
【0038】
本発明肥料を養液土耕栽培に使用する場合には、通常、水溶液の形態で使用する。本発明肥料を濃厚水溶液の形態とする場合には、使用する過硫酸塩の溶解度以下であればよい。本発明肥料を水で希釈し、作物に施肥する場合には、本発明肥料の濃度は、作物の種類、その生育ステージ、生育状況等に応じて適宜設定することができる。大まかな目安としては、硫酸イオンに換算した量が、通常約5〜約100mg/株/日、好ましくは約10〜約50mg/株/日となるように、本発明肥料を使用するのがよい。特に、硫酸イオン換算量が約40mg/株/日以下になるように本発明肥料を使用すれば、硫酸イオンが土壌に蓄積される虞れが少ないので好ましい。
【0039】
本発明肥料中に含まれる過硫酸塩は、土壌に施肥後、速やかに硫酸イオンに変換されるため、肥料成分の硫黄源として植物体に供給することができる。
【0040】
本発明の過硫酸塩を含有してなる作物栽培用肥料は、肥料成分として過硫酸塩単独としてもよく、その他一般に使用される肥料成分と混合又は併用してもよい。例えば、過硫酸塩を窒素質肥料と混合又は併用する場合、窒素質肥料の使用量としては、使用する形態、栽培方法、作物の種類、その生育ステージ、生育状況等に応じて適宜選択されるが、例えば、養液土耕栽培法において、水溶液の形態で、窒素原子として約600mg/株/日以下、好ましくは約2〜約500mg/株/日、より好ましくは約10〜約350mg/株/日とすればよい。
【0041】
本発明肥料は、上記したその他の肥料成分等と混合又は併用して複合肥料として使用することができるが、複合肥料とした際の過硫酸塩の配合割合は、広い範囲内から適宜選択することができる。例えば、過硫酸塩の硫酸イオン量として、必要とする窒素量の1/10〜6/10程度とするのが好ましく、3/20〜3/10程度とするのがより好ましい。
【0042】
上記したその他肥料成分等の内、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸カリウム苦土、硫酸カルシウム、硫酸苦土、硫酸マンガン等の硫酸塩は、大量に使用すると硫酸イオンの土壌中の残留、蓄積が懸念されるので、斯かる硫酸塩を使用するに当たっては、過硫酸塩に起因する硫酸イオン量を含め、硫酸イオン量の総和が作物の生育に必要最小限の量となるように、硫酸塩の使用量を調整するのが好ましい。また、斯かる硫酸塩と、水溶液とした場合にカルシウムイオンを生じる肥料成分(石灰質肥料等)とが存在する場合、水溶液の形態では水不溶物が生成する。従って、本発明肥料を水溶液の形態とする場合には、上記硫酸塩は、あくまでも補助的に使用する程度に少量とするのが好ましく、具体的には、肥料水溶液全量に対して硫酸イオンとして0.2重量%以下、好ましくは0.01〜0.05重量%程度となるように硫酸塩を使用するのがよい。
【0043】
本発明肥料は、水溶液での使用に際しカルシウムイオンが共存しても水不溶物を殆ど生成しない。これは使用する過硫酸塩、特にペルオキソ二硫酸塩は水溶液の状態で安定であり、カルシウムイオンとは反応しないためである。もっとも、長期間に亙り水溶液の状態で保存した場合には、過硫酸塩は徐々に分解し、硫酸イオンを生じ、カルシウムとの不溶物を形成する場合がある。しかし、肥料として使用する場合には、通常、水溶液とした直後、又は長くとも3週間程度以内に使用するので、実用場面において問題となる水不溶物の生成は実質的に起こらない。
【0044】
本発明において、過硫酸塩は、水溶液の状態で殺菌効果を有し、防腐剤としても使用することができる。通常、養液土耕栽培法においては、タンクに肥料の濃厚液を蓄えておき、混入機により所定の濃度になるよう水で希釈して施肥する。このタンク中の濃厚液は通常2週間程度で使い切るように設定されており、その間濃厚液の防腐(殺菌)効果を十分に発揮することができる。
【0045】
本発明肥料は、流通、保管等の便宜及び保存安定性の観点から、粉体等の固体とするのが好ましい。使用時において、栽培方法に適した形態として使用すればよく、例えば、従来の土耕栽培法においては、粉体をそのまま栽培土壌に施肥し、養液土耕栽培法においては粉体を水に溶かして水溶液の形態で使用すればよい。
【0046】
本発明において、作物とは、従来から栽培されている農園芸用植物を全て包含し、具体的には、例えば、野菜、果樹、花卉、観葉植物等を挙げることができる。
【0047】
【発明の効果】
本発明肥料は、肥料成分としての硫黄源を作物に供給することができる。特に硫黄欠乏症状が認められるか又は硫黄欠乏症状の発生が予想される作物栽培場面、例えば隔離床栽培、連続不耕起栽培、ハウス栽培等に、本発明肥料を好ましく使用できる。
【0048】
本発明肥料は、水溶液の形態で使用することができ、カルシウムイオン共存下において実用上問題となる水不溶物の生成が殆ど起こらず、養液土耕栽培に好適に使用することができる。
【0049】
更に、本発明肥料は、防腐効果を有しており、一般に使用されている防腐剤を新たに添加する必要がないか、又は添加する場合にはその添加量を少なくすることができる。
【0050】
【実施例】
以下に製造例及び試験例を掲げて、本発明をより一層明らかにする。以下において、単に「部」とあるのは「重量部」を意味する。
【0051】
製造例1
表1に示す配合割合で各成分を混合し、ペルオキソ二硫酸カリウムを含有する肥料(以下「肥料1」という)を製造した。
【0052】
ペルオキソ二硫酸カリウムの代わりに硫酸カリウムを配合した肥料(以下「比較肥料1」という)を製造した。
【0053】
ペルオキソ二硫酸カリウム及び硫酸カリウムのいずれをも配合していない肥料(以下「比較肥料2」という)を製造した。
【0054】
尚、これら肥料中の硫酸イオン換算量(ペルオキソ二硫酸カリウム分子中のSO4量及び水溶性微量要素中の硫酸イオン(硫酸亜鉛、硫酸マンガン由来の硫酸イオン)相当分を含む)は、肥料1で2.9部、比較肥料1で2.4部、比較肥料2で0.2部である。
【0055】
【表1】
【0056】
試験例1
製造例1で製造した肥料1及び比較肥料1の各100gを500mlのビーカーにとり、水道水400ml加え、30分間撹拌後、静置した。ビーカー内の状態を目視観察した。尚、試験中の水温は24±2℃とした。
【0057】
その結果、肥料1では、撹拌を終了した時点で肥料1が水に完全に溶解した。更に、2週間後においても肥料1の水溶液から沈殿物の析出は認められず、1ヶ月後に少量の沈殿物が析出した。
【0058】
一方、比較肥料1では、撹拌開始から終了時において懸濁状態が続き、静置後多量の懸濁物が沈殿し、その状態は2週間後及び1ヶ月後においても継続した。
【0059】
試験例2
製造例1で製造した肥料1の100g又は比較肥料2の96gを、それぞれ500mlのビーカーに入れ、水道水を加えて500mlの水溶液とした。これらビーカーを、蓋をせず開放したまま温室内(27±2℃)に57日間静置し、水溶液の状態を目視観察した。
【0060】
肥料1の水溶液には、カビは認められなかった。一方、比較肥料2の水溶液には、カビの発生が認められた。
【0061】
試験例3
徳島県鳴門市に所在の大塚化学(株)栽培研究センター内のガラス温室内で試験を行った。
【0062】
供試作物として、播種後2ヶ月を経過したトマト接木苗(品種:桃太郎J(タキイ種苗株式会社)、台木:がんばる根(愛三種苗株式会社))を用いた。
【0063】
上記トマト接木苗を、ヤシ殻チップ4000mlを入れた7寸ポリポット(日本ポリ鉢販売株式会社)に定植した。
【0064】
養液土耕栽培法に従い、上記トマト接木苗を100日間栽培した。この間、比較肥料2の1100倍希釈水溶液を通常1000ml/株/日で与えた。その結果、トマト接木苗の葉部が黄変し、茎部が細くなる硫黄欠乏症状が発生した。
【0065】
比較肥料2での栽培を継続し、その後の栽培期間中ペルオキソ二硫酸カリウムの1481.5ppm(SO4換算 1000ppm)水溶液を100ml/株/日で供給した。対照区には、ペルオキソ二硫酸カリウムの水溶液に代えて水100ml/株/日を供給した。
【0066】
尚、本試験において使用した水は、硫酸イオンを含まないイオン交換水とした。
栽培状況を肉眼観察し、また、土壌中の硫酸イオン濃度の測定を行った。
【0067】
その結果、ペルオキソ二硫酸カリウムを供給した試験区では、供給開始から1週間で葉色の回復が認められ、29日後には完全に硫黄欠乏症が改善され、健全な生育が行われていることを確認した。一方、対照区では、萎縮症状が見られ、硫黄欠乏症が更に進行した。
【0068】
土壌中の硫酸イオン濃度は、ペルオキソ二硫酸カリウム供給開始から1週間で23.5ppm、29日で326.7ppmであった。対照区では、硫酸イオンは認められなかった。
【0069】
以上の結果から、ペルオキソ二硫酸カリウムを供給することで、土壌中で作物が吸収可能な硫酸イオンに速やかに分解され、硫黄欠乏症を改善できることが明らかである。
【0070】
試験例4
上記試験例3と同様に比較肥料2を用いてトマト接木苗を養液土耕栽培法に従い120日間栽培した。その後、硫黄欠乏症状が進んだトマト接木苗に、比較肥料2に代えて肥料1を養液土耕栽培法で供給して栽培を継続した。
【0071】
供給方法は、まず10kgの肥料1に水を加えて全容積100リットルの肥料水溶液(濃厚原液)を調製し、この濃厚原液を更に150倍に希釈するよう設定し、この希釈液を2000ml/株/日を数回に分けて給液した。
【0072】
その結果、肥料1を供給して46日目にはトマト接木苗の硫黄欠乏症状が回復し、試験期間中、トマト接木苗に植害は認められなかった。また、養液土耕栽培法で用いられる液肥混入機、流路配管及び点滴チューブに劣化、詰まり等は認められなかった。
【0073】
肥料1の供給開始から34日後の土壌溶液の硫酸イオン濃度は12.4ppm、55日後のそれは15.1ppmであった。
【0074】
以上の結果から、今回使用した肥料1(硫酸イオン2.9重量%)の1500倍液を毎日トマト接木苗に与え続けても、培地に硫酸イオンの過剰な蓄積は認められないことが明らかである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、肥料に関する。更に詳しくは、本発明は、養液土耕栽培に好適に使用される肥料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、土耕栽培では、作物の栽培開始前に、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム等の硫酸塩を含む複合肥料を基肥として使用し、土壌に硫黄源を供給してきた。
【0003】
硫黄は、作物にとって必要な成分ではあるが、大量に必要とするものではない。また、硫酸塩から生ずる硫酸イオンは、作物に吸収されにくい上、土壌に吸着しやすい性質を有しているため、土壌が酸性化するのを避け得ない。更に、当時社会問題となっていた酸性雨によって、雨水に含まれる硫酸イオンが土壌中に蓄積されるようになった。
【0004】
そのため、土耕栽培では、敢えて硫黄源の施肥を行う必要がなくなっていた。
【0005】
養液土耕栽培は、1991年から研究が開始され、1998年以降農家で定着してきた新しい栽培方法である。養液土耕栽培においても、土耕栽培と同様に、使用する肥料には硫酸塩を含有しないものを好ましく使用してきた。
【0006】
近年、養液土耕栽培において、隔離床栽培(土壌病害回避及び軽作業化を目的にプランター、発泡スチロール箱等を用いて少量の培地で栽培する方法)、連続不耕起栽培(作が終わっても土を耕さず、続けて次の作付けを行う栽培方法)等の新しい栽培方法が普及しつつある。また、ハウス内での養液土耕栽培も増加傾向にある。
【0007】
このような養液土耕栽培において、作物に硫黄欠乏症と認められる症状の発生が認められるようになってきた。これは、養液土耕栽培を行う土壌に雨水、地下水等の供給が殆どなく、土壌が必然的に硫黄源の供給が絶たれた状態、不耕起により作物の根圏域に硫黄源が存在しない状態等となったためと考えられる。
【0008】
また、最近では酸性雨の問題も解消されつつあり、土壌への硫黄源の供給が少なくなっているため、一般の栽培方法(土耕栽培法等)においても、土壌が硫黄欠乏の状態になることが今後予想される。
【0009】
土壌が硫黄欠乏の状態になった場合、硫黄成分を肥料成分として供給することにより解消できるから、硫黄成分として従来使用されていた硫酸カリウム、硫酸アンモニウム等の硫酸塩を用いればよいことになる。
【0010】
ところで、養液土耕栽培法は、基肥によらず、作物の生育ステージ及び生育状態に基づき、水及び肥料を過不足なく供給する方法であるが、肥料の供給(施肥)は、通常水溶液とした肥料(液肥)を、点滴潅水チューブを介して作物の根圏域に点滴潅水施肥することにより行われている。そのために、養液土耕栽培を行うに当たっては、通常、タンクに液肥の濃厚液を入れ、混入機により所定の濃度になるよう水で希釈して潅水施肥される。
【0011】
そこで、養液土耕栽培において、タンクに硫酸カリウム、硫酸アンモニウム等の硫酸塩を硫黄源として供給した場合、タンク内に肥料成分として必要なカルシウムイオンが存在すれば、硫酸カルシウム(石膏)を形成し、タンク内に水不溶物となって沈殿するのが避けられない。即ち、養液土耕栽培を実施するに当たり、タンクに液肥の濃厚液を供給した時点から硫酸カルシウムの生成が速やかに進行し、必要な肥料成分の供給が行えなくなる。しかも、生成する水不溶物(硫酸カルシウム)が、点滴潅水チューブの点滴孔を塞ぎ、混入機等のポンプ機器類に負荷を与える不都合が生ずる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、新しい硫黄源となる肥料成分を含有する肥料を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、新規な肥料を開発することに成功し、ここに本発明を完成するに至った。
【0014】
1.本発明は、過硫酸塩を含有する肥料である。
【0015】
2.本発明は、過硫酸塩がペルオキソ二硫酸ナトリウム及びペルオキソ二硫酸カリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種である上記1記載の肥料である。
【0016】
3.本発明は、過硫酸塩がペルオキソ二硫酸カリウムである上記2記載の肥料である。
【0017】
4.本発明は、水溶液の形態で使用される上記1〜3のいずれかに記載の肥料である。
【0018】
5.本発明は、養液土耕栽培に使用される上記1〜4のいずれかに記載の肥料である。
【0019】
6.本発明は、過硫酸塩を含有する養液土耕栽培用肥料である。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の肥料は、過硫酸塩を含有する。
【0021】
過硫酸塩としては、例えば、ペルオキソ一硫酸塩、ペルオキソ二硫酸塩等を挙げることができるが、安定性の観点からペルオキソ二硫酸塩が好ましい。
【0022】
塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられるが、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましく、肥料の三大要素の一つであるカリウムの供給源として使用する観点からカリウム塩がより好ましい。
【0023】
好ましい過硫酸塩は、ペルオキソ二硫酸ナトリウム及びペルオキソ二硫酸カリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、より好ましい過硫酸塩は、ペルオキソ二硫酸カリウムである。
【0024】
本発明において、過硫酸塩は、一種単独で又は二種以上を混合して使用される。
【0025】
本発明の肥料中の過硫酸塩含有量は、制限がない。本発明肥料は、過硫酸塩からなっていてもよいし、過硫酸塩と共に他の肥料成分が含まれていてもよい。また、本発明肥料には、上記肥料成分の他に、公知の殺虫剤、殺菌剤、植物生長調整剤等の農薬、クエン酸、植物抽出物等の植物活力剤、排管洗浄材、界面活性剤、土壌浸透剤等の各種成分が含まれていてもよい。
【0026】
本発明において使用する過硫酸塩は、粉末、顆粒等の固体であってもよいし、これらを水に溶解して水溶液の形態で使用してもよい。
【0027】
過硫酸塩と共に配合される他の肥料成分としては、例えば、窒素質肥料、リン酸質肥料、カリ質肥料、石灰質肥料、苦土質肥料、マンガン質肥料、ホウ素質肥料等の公知の肥料成分が挙げられる。
【0028】
窒素質肥料としては、例えば、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸石灰、硝酸苦土等の硝酸態窒素含有肥料、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸アンモニウムナトリウム等のアンモニア態窒素含有肥料、尿素等の尿素態窒素含有肥料等を挙げることができる。
【0029】
リン酸質肥料としては、例えば、リン酸第一アンモニウム、リン酸第二アンモニウム、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔成リン肥、腐食酸リン肥、焼成リン肥、リン酸苦土、副産リン肥料等を挙げることができる。
【0030】
カリ質肥料としては、例えば、硫酸カリウム、硫酸カリウム苦土、重炭酸カリウム、腐食酸カリウム肥料、粗製カリウム塩、被覆カリウム肥料、液体珪酸カリウム肥料、副産カリウム肥料、混合カリウム肥料等を挙げることができる。
【0031】
石灰質肥料としては、例えば、生石灰、消石灰、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸カルシウム等を挙げることができる。
【0032】
苦土質肥料としては、例えば、硫酸苦土、水酸化苦土、腐食酸苦土、酢酸苦土、加工苦土肥料、リグニン苦土肥料、混合苦土肥料、硝酸苦土、苦土石灰等を挙げることができる。また、リン酸質肥料として挙げた熔成リン肥等は苦土質肥料としても使用できる。
【0033】
マンガン質肥料としては、例えば、硫酸マンガン等のマンガン化合物を主成分とするものを挙げることができる。
【0034】
ホウ素質肥料としては、例えば、ホウ酸肥料、ホウ酸塩肥料等の水溶性ホウ素を含有する肥料等を挙げることができる。
【0035】
これら各種肥料は、一種を単独で使用でき、又は二種以上を併用できる。
【0036】
更に、上記肥料成分の他に、市販の配合肥料、化成肥料、液体複合肥料、家庭園芸複合肥料、微量要素複合肥料等を使用することができる。
【0037】
本発明肥料を使用するに当たっては、過硫酸塩が土壌中に残留することのないように、作物の生育ステージ、生育状況等に基づき、必要量の過硫酸塩を過不足なく供給されるように、本発明肥料を使用するのが好ましい。例えば、従来から行われている土耕栽培法のように、基肥として栽培開始前に大量に施肥すると、従来使用されていた硫酸カリウム、硫酸アンモニウム等の硫酸塩と同様に、土壌酸性化の問題が危惧される。従って、本発明肥料を、施肥量を管理できる養液土耕栽培法に適用するのが好ましい。
【0038】
本発明肥料を養液土耕栽培に使用する場合には、通常、水溶液の形態で使用する。本発明肥料を濃厚水溶液の形態とする場合には、使用する過硫酸塩の溶解度以下であればよい。本発明肥料を水で希釈し、作物に施肥する場合には、本発明肥料の濃度は、作物の種類、その生育ステージ、生育状況等に応じて適宜設定することができる。大まかな目安としては、硫酸イオンに換算した量が、通常約5〜約100mg/株/日、好ましくは約10〜約50mg/株/日となるように、本発明肥料を使用するのがよい。特に、硫酸イオン換算量が約40mg/株/日以下になるように本発明肥料を使用すれば、硫酸イオンが土壌に蓄積される虞れが少ないので好ましい。
【0039】
本発明肥料中に含まれる過硫酸塩は、土壌に施肥後、速やかに硫酸イオンに変換されるため、肥料成分の硫黄源として植物体に供給することができる。
【0040】
本発明の過硫酸塩を含有してなる作物栽培用肥料は、肥料成分として過硫酸塩単独としてもよく、その他一般に使用される肥料成分と混合又は併用してもよい。例えば、過硫酸塩を窒素質肥料と混合又は併用する場合、窒素質肥料の使用量としては、使用する形態、栽培方法、作物の種類、その生育ステージ、生育状況等に応じて適宜選択されるが、例えば、養液土耕栽培法において、水溶液の形態で、窒素原子として約600mg/株/日以下、好ましくは約2〜約500mg/株/日、より好ましくは約10〜約350mg/株/日とすればよい。
【0041】
本発明肥料は、上記したその他の肥料成分等と混合又は併用して複合肥料として使用することができるが、複合肥料とした際の過硫酸塩の配合割合は、広い範囲内から適宜選択することができる。例えば、過硫酸塩の硫酸イオン量として、必要とする窒素量の1/10〜6/10程度とするのが好ましく、3/20〜3/10程度とするのがより好ましい。
【0042】
上記したその他肥料成分等の内、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸カリウム苦土、硫酸カルシウム、硫酸苦土、硫酸マンガン等の硫酸塩は、大量に使用すると硫酸イオンの土壌中の残留、蓄積が懸念されるので、斯かる硫酸塩を使用するに当たっては、過硫酸塩に起因する硫酸イオン量を含め、硫酸イオン量の総和が作物の生育に必要最小限の量となるように、硫酸塩の使用量を調整するのが好ましい。また、斯かる硫酸塩と、水溶液とした場合にカルシウムイオンを生じる肥料成分(石灰質肥料等)とが存在する場合、水溶液の形態では水不溶物が生成する。従って、本発明肥料を水溶液の形態とする場合には、上記硫酸塩は、あくまでも補助的に使用する程度に少量とするのが好ましく、具体的には、肥料水溶液全量に対して硫酸イオンとして0.2重量%以下、好ましくは0.01〜0.05重量%程度となるように硫酸塩を使用するのがよい。
【0043】
本発明肥料は、水溶液での使用に際しカルシウムイオンが共存しても水不溶物を殆ど生成しない。これは使用する過硫酸塩、特にペルオキソ二硫酸塩は水溶液の状態で安定であり、カルシウムイオンとは反応しないためである。もっとも、長期間に亙り水溶液の状態で保存した場合には、過硫酸塩は徐々に分解し、硫酸イオンを生じ、カルシウムとの不溶物を形成する場合がある。しかし、肥料として使用する場合には、通常、水溶液とした直後、又は長くとも3週間程度以内に使用するので、実用場面において問題となる水不溶物の生成は実質的に起こらない。
【0044】
本発明において、過硫酸塩は、水溶液の状態で殺菌効果を有し、防腐剤としても使用することができる。通常、養液土耕栽培法においては、タンクに肥料の濃厚液を蓄えておき、混入機により所定の濃度になるよう水で希釈して施肥する。このタンク中の濃厚液は通常2週間程度で使い切るように設定されており、その間濃厚液の防腐(殺菌)効果を十分に発揮することができる。
【0045】
本発明肥料は、流通、保管等の便宜及び保存安定性の観点から、粉体等の固体とするのが好ましい。使用時において、栽培方法に適した形態として使用すればよく、例えば、従来の土耕栽培法においては、粉体をそのまま栽培土壌に施肥し、養液土耕栽培法においては粉体を水に溶かして水溶液の形態で使用すればよい。
【0046】
本発明において、作物とは、従来から栽培されている農園芸用植物を全て包含し、具体的には、例えば、野菜、果樹、花卉、観葉植物等を挙げることができる。
【0047】
【発明の効果】
本発明肥料は、肥料成分としての硫黄源を作物に供給することができる。特に硫黄欠乏症状が認められるか又は硫黄欠乏症状の発生が予想される作物栽培場面、例えば隔離床栽培、連続不耕起栽培、ハウス栽培等に、本発明肥料を好ましく使用できる。
【0048】
本発明肥料は、水溶液の形態で使用することができ、カルシウムイオン共存下において実用上問題となる水不溶物の生成が殆ど起こらず、養液土耕栽培に好適に使用することができる。
【0049】
更に、本発明肥料は、防腐効果を有しており、一般に使用されている防腐剤を新たに添加する必要がないか、又は添加する場合にはその添加量を少なくすることができる。
【0050】
【実施例】
以下に製造例及び試験例を掲げて、本発明をより一層明らかにする。以下において、単に「部」とあるのは「重量部」を意味する。
【0051】
製造例1
表1に示す配合割合で各成分を混合し、ペルオキソ二硫酸カリウムを含有する肥料(以下「肥料1」という)を製造した。
【0052】
ペルオキソ二硫酸カリウムの代わりに硫酸カリウムを配合した肥料(以下「比較肥料1」という)を製造した。
【0053】
ペルオキソ二硫酸カリウム及び硫酸カリウムのいずれをも配合していない肥料(以下「比較肥料2」という)を製造した。
【0054】
尚、これら肥料中の硫酸イオン換算量(ペルオキソ二硫酸カリウム分子中のSO4量及び水溶性微量要素中の硫酸イオン(硫酸亜鉛、硫酸マンガン由来の硫酸イオン)相当分を含む)は、肥料1で2.9部、比較肥料1で2.4部、比較肥料2で0.2部である。
【0055】
【表1】
【0056】
試験例1
製造例1で製造した肥料1及び比較肥料1の各100gを500mlのビーカーにとり、水道水400ml加え、30分間撹拌後、静置した。ビーカー内の状態を目視観察した。尚、試験中の水温は24±2℃とした。
【0057】
その結果、肥料1では、撹拌を終了した時点で肥料1が水に完全に溶解した。更に、2週間後においても肥料1の水溶液から沈殿物の析出は認められず、1ヶ月後に少量の沈殿物が析出した。
【0058】
一方、比較肥料1では、撹拌開始から終了時において懸濁状態が続き、静置後多量の懸濁物が沈殿し、その状態は2週間後及び1ヶ月後においても継続した。
【0059】
試験例2
製造例1で製造した肥料1の100g又は比較肥料2の96gを、それぞれ500mlのビーカーに入れ、水道水を加えて500mlの水溶液とした。これらビーカーを、蓋をせず開放したまま温室内(27±2℃)に57日間静置し、水溶液の状態を目視観察した。
【0060】
肥料1の水溶液には、カビは認められなかった。一方、比較肥料2の水溶液には、カビの発生が認められた。
【0061】
試験例3
徳島県鳴門市に所在の大塚化学(株)栽培研究センター内のガラス温室内で試験を行った。
【0062】
供試作物として、播種後2ヶ月を経過したトマト接木苗(品種:桃太郎J(タキイ種苗株式会社)、台木:がんばる根(愛三種苗株式会社))を用いた。
【0063】
上記トマト接木苗を、ヤシ殻チップ4000mlを入れた7寸ポリポット(日本ポリ鉢販売株式会社)に定植した。
【0064】
養液土耕栽培法に従い、上記トマト接木苗を100日間栽培した。この間、比較肥料2の1100倍希釈水溶液を通常1000ml/株/日で与えた。その結果、トマト接木苗の葉部が黄変し、茎部が細くなる硫黄欠乏症状が発生した。
【0065】
比較肥料2での栽培を継続し、その後の栽培期間中ペルオキソ二硫酸カリウムの1481.5ppm(SO4換算 1000ppm)水溶液を100ml/株/日で供給した。対照区には、ペルオキソ二硫酸カリウムの水溶液に代えて水100ml/株/日を供給した。
【0066】
尚、本試験において使用した水は、硫酸イオンを含まないイオン交換水とした。
栽培状況を肉眼観察し、また、土壌中の硫酸イオン濃度の測定を行った。
【0067】
その結果、ペルオキソ二硫酸カリウムを供給した試験区では、供給開始から1週間で葉色の回復が認められ、29日後には完全に硫黄欠乏症が改善され、健全な生育が行われていることを確認した。一方、対照区では、萎縮症状が見られ、硫黄欠乏症が更に進行した。
【0068】
土壌中の硫酸イオン濃度は、ペルオキソ二硫酸カリウム供給開始から1週間で23.5ppm、29日で326.7ppmであった。対照区では、硫酸イオンは認められなかった。
【0069】
以上の結果から、ペルオキソ二硫酸カリウムを供給することで、土壌中で作物が吸収可能な硫酸イオンに速やかに分解され、硫黄欠乏症を改善できることが明らかである。
【0070】
試験例4
上記試験例3と同様に比較肥料2を用いてトマト接木苗を養液土耕栽培法に従い120日間栽培した。その後、硫黄欠乏症状が進んだトマト接木苗に、比較肥料2に代えて肥料1を養液土耕栽培法で供給して栽培を継続した。
【0071】
供給方法は、まず10kgの肥料1に水を加えて全容積100リットルの肥料水溶液(濃厚原液)を調製し、この濃厚原液を更に150倍に希釈するよう設定し、この希釈液を2000ml/株/日を数回に分けて給液した。
【0072】
その結果、肥料1を供給して46日目にはトマト接木苗の硫黄欠乏症状が回復し、試験期間中、トマト接木苗に植害は認められなかった。また、養液土耕栽培法で用いられる液肥混入機、流路配管及び点滴チューブに劣化、詰まり等は認められなかった。
【0073】
肥料1の供給開始から34日後の土壌溶液の硫酸イオン濃度は12.4ppm、55日後のそれは15.1ppmであった。
【0074】
以上の結果から、今回使用した肥料1(硫酸イオン2.9重量%)の1500倍液を毎日トマト接木苗に与え続けても、培地に硫酸イオンの過剰な蓄積は認められないことが明らかである。
Claims (5)
- 過硫酸塩を含有する肥料。
- 過硫酸塩がペルオキソ二硫酸ナトリウム及びペルオキソ二硫酸カリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の肥料。
- 過硫酸塩がペルオキソ二硫酸カリウムである請求項2記載の肥料。
- 水溶液の形態で使用される請求項1〜3のいずれかに記載の肥料。
- 養液土耕栽培に使用される請求項1〜4のいずれかに記載の肥料。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002236303A JP2004075437A (ja) | 2002-08-14 | 2002-08-14 | 肥料 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002236303A JP2004075437A (ja) | 2002-08-14 | 2002-08-14 | 肥料 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004075437A true JP2004075437A (ja) | 2004-03-11 |
Family
ID=32020513
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002236303A Pending JP2004075437A (ja) | 2002-08-14 | 2002-08-14 | 肥料 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004075437A (ja) |
Citations (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS5381497A (en) * | 1976-12-27 | 1978-07-18 | Mitsubishi Gas Chem Co Inc | Stabilized sodium persulfate composition |
JPS5392254A (en) * | 1977-01-21 | 1978-08-12 | Kyowa Kagaku Kougiyou Kk | Culture solution for hydroponics |
JPS5415867A (en) * | 1977-05-26 | 1979-02-06 | Degussa | Removing of harmful gas by deodorizing aqueous fertilizer |
JPS5571689A (en) * | 1978-11-16 | 1980-05-29 | Allied Chem | Liquid foliar fertilizer composition containing waterrsoluble ureaaformaldehyde product |
JPH08256549A (ja) * | 1995-03-28 | 1996-10-08 | Otsuka Chem Co Ltd | 土耕栽培法 |
JPH09227265A (ja) * | 1996-02-20 | 1997-09-02 | Sumitomo Forestry Co Ltd | 抗菌資材を利用した肥料及び/又は土壌改良材 |
JP2001069856A (ja) * | 1999-09-06 | 2001-03-21 | Otsuka Chem Co Ltd | 養液土耕栽培法 |
JP2001181074A (ja) * | 1999-12-21 | 2001-07-03 | Sato Masako | 家畜糞肥料の製造方法、家畜糞肥料及び家畜糞処理剤 |
JP2001198559A (ja) * | 2000-01-18 | 2001-07-24 | Sato Masako | 食品廃棄物組成物 |
-
2002
- 2002-08-14 JP JP2002236303A patent/JP2004075437A/ja active Pending
Patent Citations (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS5381497A (en) * | 1976-12-27 | 1978-07-18 | Mitsubishi Gas Chem Co Inc | Stabilized sodium persulfate composition |
JPS5392254A (en) * | 1977-01-21 | 1978-08-12 | Kyowa Kagaku Kougiyou Kk | Culture solution for hydroponics |
JPS5415867A (en) * | 1977-05-26 | 1979-02-06 | Degussa | Removing of harmful gas by deodorizing aqueous fertilizer |
JPS5571689A (en) * | 1978-11-16 | 1980-05-29 | Allied Chem | Liquid foliar fertilizer composition containing waterrsoluble ureaaformaldehyde product |
JPH08256549A (ja) * | 1995-03-28 | 1996-10-08 | Otsuka Chem Co Ltd | 土耕栽培法 |
JPH09227265A (ja) * | 1996-02-20 | 1997-09-02 | Sumitomo Forestry Co Ltd | 抗菌資材を利用した肥料及び/又は土壌改良材 |
JP2001069856A (ja) * | 1999-09-06 | 2001-03-21 | Otsuka Chem Co Ltd | 養液土耕栽培法 |
JP2001181074A (ja) * | 1999-12-21 | 2001-07-03 | Sato Masako | 家畜糞肥料の製造方法、家畜糞肥料及び家畜糞処理剤 |
JP2001198559A (ja) * | 2000-01-18 | 2001-07-24 | Sato Masako | 食品廃棄物組成物 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US20170144940A1 (en) | High calcium fertilizer composition | |
JP5957076B2 (ja) | 農業におけるアミノカルボキシレートの使用 | |
JP5085844B2 (ja) | 農業用組成物 | |
MXPA03006029A (es) | Riego fertilizante de sustratos para uso en agricultura u horticultura. | |
CN106922469A (zh) | 一种苗木的抗旱种植方法 | |
JP2011184207A (ja) | 珪素含有液体肥料 | |
CN110698259A (zh) | 一种矿源黄腐酸与无机盐肥料的复合肥及其制备方法和应用 | |
CN106613856A (zh) | 一种黄瓜基质栽培营养液 | |
KR101093587B1 (ko) | 비료 조성물, 그 제조 방법 및 사용 방법 | |
US20220194873A1 (en) | Concentrated composition for plant nutrition | |
EP0949221B1 (en) | Composition suitable as liquid fertilizer containing sulphur as potassium tetrathionate | |
KR20180000214A (ko) | 상용 다액형 양액 비료 대체형 비침전 1액형 양액 비료 조성물의 제조방법 | |
JP2004075437A (ja) | 肥料 | |
JP5539709B2 (ja) | 液体肥料 | |
JP3326492B2 (ja) | 養液土耕栽培法 | |
JP3297428B2 (ja) | 肥料組成物 | |
CN112824354B (zh) | 一种金钻小苹果无土栽培用营养液及其配制方法和应用 | |
US5563116A (en) | Method and composition for supplying sulphur to a plant | |
AU719278B2 (en) | Neutral metal alkanoate micronutrient solutions and method of manufacturing same | |
JPH11335189A (ja) | 環境保全型のリン酸肥料とその施肥方法 | |
JPH08256549A (ja) | 土耕栽培法 | |
JP2001247393A (ja) | 養液栽培用液状肥料 | |
JPH0280386A (ja) | 養液栽培用微量要素 | |
Sivanesan et al. | Growth of chrysanthemum cultivars as affected by silicon source and application method | |
Imas | INTERNATIONAL POTASH INSTITUTE |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20050204 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050216 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20050615 |
|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711 Effective date: 20070402 |