JP2004074986A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】保舵操作時の操舵負担を軽減することにより、操舵フィーリングを向上する。
【解決手段】操舵速度および操舵加速度に基づいて、保舵状態かどうかが判定される。保舵状態のときには、車速感応オフセット値に操舵トルク感応ゲインを乗じて求めた補正値が基本目標電流値に加算されることにより、目標電流値が求められる。この目標電流値に基づいて、モータドライバ15が制御され、電動モータMが駆動される。その結果、保舵状態のときには、電動モータMからステアリング機構3に与えられる操舵補助力は、保舵状態でないときよりも大きくなる。
【選択図】 図1
【解決手段】操舵速度および操舵加速度に基づいて、保舵状態かどうかが判定される。保舵状態のときには、車速感応オフセット値に操舵トルク感応ゲインを乗じて求めた補正値が基本目標電流値に加算されることにより、目標電流値が求められる。この目標電流値に基づいて、モータドライバ15が制御され、電動モータMが駆動される。その結果、保舵状態のときには、電動モータMからステアリング機構3に与えられる操舵補助力は、保舵状態でないときよりも大きくなる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ステアリングホイール等の操作部材の操作に応じて制御される電動モータからの駆動力をステアリング機構に与えて操舵補助する構成の電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動モータの駆動力をステアリング機構に機械的に伝達することによって操舵補助する電動パワーステアリング装置が従来から用いられている。電動モータは、ステアリングホイールに加えられる操舵トルクに応じて設定される目標電流値に基づいて制御され、これによって、操舵トルクに応じた操舵補助力がステアリング機構に与えられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
車両の走行中には、ステアリングホイールの操舵角をほぼ一定に維持するためにステアリングホイールを保持する保舵操作が行われることがある。たとえば、Uターン操舵時のように、保舵操作が継続すると、運転者は、一定の負荷に耐え続けなければならないから、操舵負担が大きくなり、快適性が損なわれる。
そこで、この発明の目的は、保舵操作時の操舵負担を軽減することにより、操舵フィーリングの向上を実現した電動パワーステアリング装置を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、車両の操向のための操作部材(1)の操作に応じて制御される電動モータ(M)が発生する駆動力をステアリング機構(3)に伝達して操舵補助する電動パワーステアリング装置であって、上記操作部材に加えられた操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段(5)と、この操舵トルク検出手段によって検出された操舵トルクに基づいて、上記電動モータの目標駆動値の基本値である基本目標駆動値を設定する基本目標駆動値設定手段(11)と、上記操作部材を保持して操舵角を維持している保舵状態かどうかを検出する保舵状態検出手段(21,22,23;21,31,33)と、保舵状態のときに上記基本目標駆動値を補正するために用いる補正値を、上記操舵トルク検出手段が検出する操舵トルクに基づいて演算する補正値演算手段(16,18,19)と、上記保舵状態検出手段が保舵状態を検出しているときに、上記基本目標駆動値設定手段によって設定された基本目標駆動値を、上記補正値演算手段によって演算される補正値によって補正して、上記電動モータの目標駆動値を設定する目標駆動値設定手段(12,13)と、この目標駆動値設定手段によって設定された目標駆動値に基づいて、上記電動モータを駆動するモータ駆動手段(15)とを含むことを特徴とする電動パワーステアリング装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0005】
上記の構成によれば、保舵状態が検出されると、操舵トルクに応じた補正値によって基本目標駆動値が補正されることにより、電動モータの制御のための目標駆動値が求められる。これにより、保舵時における操舵補助を良好に行えるので、運転者の操舵負担を軽減することができ、操舵フィーリングを向上できる。
請求項2記載の発明は、上記保舵状態検出手段は、上記操作部材の操作による操舵速度を検出する操舵速度検出手段(21)と、上記操作部材の操作による操舵加速度を検出する操舵加速度検出手段(22)と、上記操舵速度検出手段によって検出される操舵速度の絶対値が所定の操舵速度閾値未満であり、かつ、上記操舵加速度検出手段によって検出される操舵加速度の絶対値が所定の操舵加速度閾値未満であることを条件に、保舵状態であると判定する判定手段(23)とを含むものであることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置である。
この構成によれば、操舵速度および操舵加速度の各絶対値がいずれも小さな値をとるときに保舵状態と判定されるから、保舵状態の判定を速やかに行える。これにより、保舵状態に入ると、すみやかに基本目標駆動値が補正されて、操舵負担が軽減されるから、良好な操舵フィーリングが得られる。より具体的には、高速道路の出入り口のように一定曲率のカーブを走行している状態が長時間に渡って継続する場合だけでなく、Uターン操舵時のように、短時間の保舵を行う場合であっても、運転者の操舵負担を効果的に軽減できる。
【0006】
なお、操舵速度検出手段は、操作部材の操作角を検出する操作角検出手段(6)の出力信号を時間微分するものであってもよく、また、操舵加速度検出手段は、操舵速度検出手段の出力を時間微分するものであってもよい。
請求項3記載の発明は、上記保舵状態検出手段は、上記操舵トルク検出手段が検出する操舵トルクを時間微分して、操舵トルク微分値を求める操舵トルク微分値演算手段(31)と、上記操作部材の操作による操舵速度を検出する操舵速度検出手段(21)と、上記操舵トルク微分値演算手段によって求められる操舵トルク微分値の絶対値が所定の操舵トルク微分値閾値未満であり、かつ、上記操舵速度検出手段によって求められる操舵速度の絶対値が所定の操舵速度閾値未満であることを条件に、保舵状態であると判定する判定手段(33)とを含むものであることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置である。
【0007】
この構成によっても、請求項2の発明の場合と同様な効果を達成できる。
請求項4記載の発明は、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の車速を検出する車速検出手段(7)をさらに含み、上記補正値演算手段は、上記車速検出手段によって検出される車速に基づいて、車速感応オフセット値を設定する車速感応オフセット値設定手段(16)と、この車速感応オフセット値設定手段によって設定される車速感応オフセット値に乗ずるべき操舵トルク感応ゲインを、上記操舵トルク検出手段が検出する操舵トルクに応じて定める操舵トルク感応ゲイン設定手段(18)と、上記車速感応オフセット値設定手段によって設定される車速感応オフセット値に上記操舵トルク感応ゲイン設定手段によって設定される操舵トルク感応ゲインを乗じて上記補正値を求める乗算手段(19)とを含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置である。
【0008】
この発明によれば、車速感応オフセット値に操舵トルク感応ゲインを乗じて補正値を求める構成であるので、保舵状態のときに、車速および操舵トルクに応じた適切な操舵補助を実現できる。
たとえば、車速感応オフセット値は、低速走行時には比較的大きな第1所定値(UL1)とされ、車速が高くなるに従って、第2所定値(LL1)まで減少していくように定めることが好ましい。
【0009】
また、操舵トルク感応ゲインは、操舵トルクの絶対値が所定値(T2)以下の場合には零とし、操舵トルクの絶対値が上記所定値を超える場合には、操舵トルクの絶対値が大きくなるに従って、所定の上限値(UL2)以下の範囲で単調に増加するように定めることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を示すブロック図である。操作部材としてのステアリングホイール1に加えられた操舵トルクは、ステアリングシャフト2を介して、ステアリング機構3に伝達される。ステアリング機構3には、電動モータMから発生する駆動力が、操舵補助力として、ギヤ機構を介して、またはダイレクトドライブ方式によって、機械的に伝達されるようになっている。
【0011】
ステアリングシャフト2は、ステアリングホイール1側に結合された入力軸2Aと、ステアリング機構3側に結合された出力軸2Bとに分割されていて、これらの入力軸2Aおよび出力軸2Bは、トーションバー4によって互いに連結されている。トーションバー4は、操舵トルクTに応じてねじれを生じるものであり、このねじれの方向および量は、トルクセンサ5によって検出されるようになっている。このトルクセンサ5の出力信号は、コントローラ10(ECU)に入力されている。
【0012】
コントローラ10には、トルクセンサ5の出力信号のほかにも、ステアリングホイール1の回転角としての舵角θを検出する舵角センサ6と、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の車速Vを検出する車速センサ7との各出力信号も入力されている。
コントローラ10は、トルクセンサ5によって検出される操舵トルクTおよび車速センサ7によって検出される車速Vに応じた駆動電流を電動モータMに与え、操舵トルクTおよび車速Vに応じた操舵補助力がステアリング機構3に与えられるように、電動モータMを駆動制御する。
【0013】
コントローラ10は、内部に備えられたマイクロコンピュータによるプログラム処理によって実現される複数の機能処理部を実質的に有している。これらの機能処理部は、操舵トルクTおよび車速Vに応じた基本目標電流値を設定する基本目標電流値設定部11、この基本目標電流値設定部11が設定する基本目標電流値を補正することによって、保舵状態において適切な保舵状態用目標電流値を設定する補正部12、ならびに、基本目標電流値または保舵状態用目標電流値のいずれかを電動モータMの目標電流値として選択する切り換え部13を含む。切り換え部13が選択した目標電流値に基づいて、パワートランジスタなどを含むモータドライバ15が制御され、このモータドライバ15から電動モータMへの給電が行われるようになっている。
【0014】
コントローラ10は、さらに、マイクロコンピュータのプログラム処理によって、車速センサ7が検出する車速Vに対応したオフセット電流値である車速感応オフセット値OFを生成する車速感応オフセット値設定部16と、トルクセンサ5が検出する操舵トルクTに対応したゲインである操舵トルク感応ゲインGを生成する操舵トルク感応ゲイン設定部18と、車速感応オフセット値設定部16によって設定される車速感応オフセット値OFに操舵トルク感応ゲイン設定部18によって設定される操舵トルク感応ゲインGを乗じることによって、オフセット電流値OF×Gを求める乗算部19との各機能を実現するようになっている。乗算部19が出力するオフセット電流値OF×Gは、補正部12において、基本目標電流値に加算され、これによって、保舵状態において適切な目標電流値が得られる。このように、上記車速感応オフセット値設定部16、操舵トルク感応ゲイン設定部18および乗算部19は、基本目標電流値を補正するための補正値としてのオフセット電流値を求める補正値演算手段として機能することになる。
【0015】
さらに、コントローラ10は、マイクロコンピュータのプログラム処理によって、舵角センサ6が検出する舵角θを時間微分することよって操舵速度(操舵角速度)を求める操舵速度演算部21と、この操舵速度演算部21によって求められた操舵速度をさらに時間微分することによって操舵加速度(操舵角加速度)を求める操舵加速度演算部22と、操舵速度演算部21および操舵加速度演算部22によって演算された操舵速度および操舵加速度に基づいて、保舵状態かどうかを判定する判定部23との機能を実現する。すなわち、操舵速度演算部21、操舵加速度演算部22および判定部23は、保舵状態かどうかを検出する保舵状態検出手段として機能することになる。
【0016】
判定部23による判定結果に基づいて、切り換え部13における切り換えが行われる。すなわち、保舵状態であれば、補正部12によって求められた目標電流値に基づいて電動モータMが駆動制御され、保舵状態でなければ、基本目標電流値設定部11によって設定された基本目標電流値に基づいて、電動モータMの駆動制御が実行される。
図2は、基本目標電流値設定部11の働きを説明するための図であり、操舵トルクTに対する基本目標電流値の関係の一例が示されている。操舵トルクTは、たとえば右方向への操舵のためのトルクが正の値にとられ、左方向への操舵のためのトルクが負の値にとられている。また、基本目標電流値は、電動モータMから右方向操舵のための操舵補助力を発生させるべきときには正の値とされ、電動モータMから左方向操舵のための操舵補助力を発生させるべきときには負の値とされる。
【0017】
基本目標電流値は、操舵トルクの正の値に対しては正の値をとり、操舵トルクの負の値に対しては負の値をとる。操舵トルクが−T1〜T1(たとえば、T1=0.4N・m)の範囲(トルク不感帯)の微小な値のときには、基本目標電流値は零とされる。また、基本目標電流値は、車速センサ7によって検出される車速Vが大きいほど、その絶対値が小さく設定されるようになっている。これにより、低速走行時には大きな操舵補助力を発生させることができ、高速走行時には操舵補助力を小さくすることができる。
【0018】
図3は、車速感応オフセット値設定部16による車速感応オフセット値OFの設定例を示す図である。車速感応オフセット値OF(OF≧0)は、たとえば、車速Vが低速域(たとえば、40km/h以下)の値のときには、所定の上限値UL1に保持され、中速域の値のときには、車速Vの増加に伴って所定の下限値LL1まで減少し、高速域(たとえば、120km/h以上)の値のときには上記下限値LL1に保持される。ただし、車速Vが零のときには、車速感応オフセット値OFは零とされる。
【0019】
このように車速感応オフセット値OFを設定することによって、低速走行時には、保舵状態のときに、大きな操舵補助力をステアリング機構3に与えて、運転者の操舵負担を効果的に軽減でき、中高速走行時には、保舵状態時に追加される操舵補助力を抑制して、安定した操舵状態を実現できる。
車速感応オフセット値設定部16は、図3に示すような特性に対応するテーブルを記憶したメモリを用いて構成することもできるし、図3に示すような特性を実現する関数演算をマイクロコンピュータに実行させることによって実現することもできる。
【0020】
図4は、操舵トルク感応ゲイン設定部18による操舵トルク感応ゲインGの設定例を示す図である。操舵トルク感応ゲインGは、操舵トルクの絶対値|T|が所定値T2(たとえば、T2>T1)以下の範囲では、操舵トルク感応ゲインGを零に保持する。そして、操舵トルク絶対値|T|が所定値T2を超える範囲では、操舵トルク絶対値|T|の増加に伴って上限値UL2(>0)まで単調に増加するように操舵トルク感応ゲインGを定める。
【0021】
操舵トルク感応ゲインGは、−T2≦T≦T2の不感帯範囲外において、操舵トルクTが正の値をとるときには正の値をとり、操舵トルクTが負の値をとるときには、負の値をとるように設定される。したがって、補正部12(図1参照)においては、オフセット電流値OF×Gの加算によって、基本目標電流値よりも絶対値が増加した目標電流値が求められることになる。
上記のように操舵トルク感応ゲインGを定めることにより、操舵トルク絶対値|T|が大きいほど、保舵状態のときに追加される操舵補助力が大きくなるので、良好な操舵フィーリングが得られる。また、直進時や操舵トルク絶対値|T|が十分小さい場合には、保舵状態時の運転者の操舵負担を軽減する必要がないので、操舵トルク感応ゲインGが零に保持されて、オフセット電流値が制限される。
【0022】
操舵トルク感応ゲイン設定部18は、図4に示すような特性に対応するテーブルを記憶したメモリを用いて構成することもできるし、図4に示すような特性を実現する関数演算をマイクロコンピュータに実行させることによって実現することもできる。
図5は、コントローラ10の動作を説明するためのフローチャートである。まず、車速センサ7が検出する車速V、トルクセンサ5が検出する操舵トルクT、および舵角センサ6が検出する舵角θが読み込まれる(ステップS1,S2,S3)。さらに、操舵速度演算部21の働きによって、舵角θを時間微分することにより、操舵速度が求められ(ステップS4)、さらに、操舵速度演算部21によって演算された操舵速度を時間微分することによって、操舵加速度演算部22により、操舵加速度が求められる(ステップS5)。
【0023】
一方、基本目標電流値設定部11では、車速センサ7が検出した車速Vおよびトルクセンサ5が検出した操舵トルクTに基づき、基本目標電流値が設定される(ステップS6)。また、判定部23において、操舵速度および操舵加速度に基づいて、ステアリングホイール1が一定の操舵角で保持されている保舵状態であるかどうかが判定される(ステップS7)。
保舵状態であると判定されると(ステップS7のYES)、車速感応オフセット値設定部16によって車速Vに応じて設定される車速感応オフセット値OF(ステップS8)に対して、操舵トルク感応ゲイン設定部18によって設定される操舵トルク感応ゲインG(ステップS9)を、乗算部19において乗じることによってオフセット電流値OF×Gが求められ(ステップS10)、このオフセット電流値OF×Gを基本目標電流値に加算することによって、目標電流値が求められる(ステップS12)。
【0024】
一方、保舵状態でないと判定されれば(ステップS7のNO)、オフセット電流値が0とされ(ステップS11)、これを基本目標電流値に加算して目標電流値が求められる(ステップS12)。この場合、目標電流値は、基本目標電流値に等しくなる。
こうして求められた目標電流値を達成するように、モータドライバ15が制御されることになる。より具体的には、モータドライバ15に与えられる指令電流値が目標電流値よりも小さければ(ステップS13のYES)、指令電流値に対して所定の漸増量Δ1(>0)が加算される(ステップS14)。これに対して、目標電流値が指令電流値よりも小さければ(ステップS15のYES)、指令電流値から所定の漸減量Δ2(Δ2>0。たとえば、Δ1=Δ2)が減じられることになる(ステップS16)。目標電流値と指令電流値とが等しければ(ステップS15のNO)、指令電流値は不変に保たれる。
【0025】
このようにして、モータドライバ15に与えられる指令電流値が、漸増量Δ1または漸減量Δ2ずつ変動させられることにより、指令電流値が目標電流値へと漸次的に導かれるようになっている。これにより、保舵状態であると判定されたときと、保舵状態でないと判定されたときとで、指令電流値が急変することがないので、ステアリング機構3に与えられる操舵補助力が急変することがなく、操舵フィーリングを損なうことがない。
【0026】
図6は、図5のステップS7における保舵状態の判定処理を説明するためのフローチャートである。操舵速度の絶対値が所定の操舵速度閾値(たとえば60度/秒)未満であり(ステップS21のYES)、かつ、操舵加速度の絶対値が所定の操舵加速度閾値(たとえば4.4度/秒2)未満であるとき(ステップS22のYES)、保舵状態と判定される(ステップS23)。操舵速度が上記操舵速度閾値以上であるか(ステップS21のNO)、または操舵加速度の絶対値が上記操舵加速度閾値以上であれば(ステップS22のNO)、操舵状態と判定される(ステップS24)。
【0027】
操舵速度の絶対値が操舵速度閾値未満であればステアリングホイール1の操舵速度が極めて遅いことを意味するから、一般的には保舵状態であるといえる。しかし、ステアリングホイール1の操作方向を反転させる切り返し操舵時においても操舵速度の絶対値が操舵速度閾値未満となる。このような場合に保舵状態であると判定するのは適切ではない。そこで、この実施形態では、操舵加速度の絶対値が操舵加速度閾値未満であることを保舵状態判定の条件とすることにより、切り返し操舵時には操舵状態と判定できるようにしている。
【0028】
このような保舵状態判定処理は、保舵状態か操舵状態かの判定に長時間を要することがなく、いわばリアルタイムで保舵状態か操舵状態かの区別を行うことができる。これによって、保舵状態のときには、良好な応答性で運転者の操舵負担を軽減するためのオフセット電流値を目標電流値に加算することができる。これにより、高速道路の出入り口のように一定曲率のカーブが長時間継続する場合だけでなく、一般道路上でUターン操舵を行う場合のようにごく短時間にのみ保舵状態が生じる場合であっても、運転者の操舵負担を効果的に軽減できる。
【0029】
図7は、この発明の第2の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を示すブロック図である。この図7において、上述の図1に示された各部に対応する部分には、図1の場合と同一の参照符号を付して示す。
具体的には、コントローラ10aには、操舵トルクTの時間微分値を演算するトルク微分値演算部31と、舵角センサ6が検出する舵角θを時間微分することによって、操舵速度を演算する操舵速度演算部21と、トルク微分値演算部31によって求められるトルク微分値と操舵速度演算部21によって求められる操舵速度とに基づいて、保舵状態であるかどうかを判定する判定部33とが設けられており、この判定部33による判定結果に応じて、切り換え部13が補正部12からの目標電流値または基本目標電流値設定部11が設定する基本目標電流値を、モータドライバ15の制御のための目標電流値として選択するようになっている。
【0030】
図8は、判定部33による保舵状態の判定処理を説明するためのフローチャートである。判定部33は、トルク微分値の絶対値が所定のトルク微分値閾値(たとえば0.6Nm/秒)未満であり(ステップS31のYES)、かつ、操舵速度の絶対値が、所定の操舵速度閾値(たとえば、60度/秒)未満(ステップS32のYES)である場合に、保舵状態であると判定する(ステップS33)。一方、トルク微分値が上記トルク微分値閾値以上であるか(ステップS31のNO)、または操舵速度の絶対値が上記操舵速度閾値以上(ステップS32のNO)であれば、操舵状態であると判定する(ステップS34)。
【0031】
以上、この発明の2つの実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。たとえば、上記の実施形態では、電動モータMを制御するための目標駆動値として目標電流値を用いているが、目標電圧値や操舵補助力の目標値であるアシストトルク目標値を目標駆動値として用いてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】基本目標電流値設定部の働きを説明するための図であり、操舵トルクに対する基本目標電流値の関係の一例が示されている。
【図3】車速感応オフセット値設定部による車速感応オフセット値の設定例を示す図である。
【図4】操舵トルク感応ゲイン設定部による操舵トルク感応ゲインの設定例を示す図である。
【図5】コントローラの動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】保舵状態の判定処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】この発明の第2の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図8】上記第2の実施形態における保舵状態の判定処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1 ステアリングホイール
2 ステアリングシャフト
2A 入力軸
2B 出力軸
3 ステアリング機構
4 トーションバー
5 トルクセンサ
6 舵角センサ
7 車速センサ
10 コントローラ
11 基本目標電流値設定部
12 補正部
13 切り換え部
15 モータドライバ
16 車速感応オフセット値設定部
18 操舵トルク感応ゲイン設定部
19 乗算部
21 操舵速度演算部
22 操舵加速度演算部
23 判定部
31 トルク微分値演算部
32 操舵速度演算部
33 判定部
M 電動モータ
【発明の属する技術分野】
この発明は、ステアリングホイール等の操作部材の操作に応じて制御される電動モータからの駆動力をステアリング機構に与えて操舵補助する構成の電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動モータの駆動力をステアリング機構に機械的に伝達することによって操舵補助する電動パワーステアリング装置が従来から用いられている。電動モータは、ステアリングホイールに加えられる操舵トルクに応じて設定される目標電流値に基づいて制御され、これによって、操舵トルクに応じた操舵補助力がステアリング機構に与えられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
車両の走行中には、ステアリングホイールの操舵角をほぼ一定に維持するためにステアリングホイールを保持する保舵操作が行われることがある。たとえば、Uターン操舵時のように、保舵操作が継続すると、運転者は、一定の負荷に耐え続けなければならないから、操舵負担が大きくなり、快適性が損なわれる。
そこで、この発明の目的は、保舵操作時の操舵負担を軽減することにより、操舵フィーリングの向上を実現した電動パワーステアリング装置を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、車両の操向のための操作部材(1)の操作に応じて制御される電動モータ(M)が発生する駆動力をステアリング機構(3)に伝達して操舵補助する電動パワーステアリング装置であって、上記操作部材に加えられた操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段(5)と、この操舵トルク検出手段によって検出された操舵トルクに基づいて、上記電動モータの目標駆動値の基本値である基本目標駆動値を設定する基本目標駆動値設定手段(11)と、上記操作部材を保持して操舵角を維持している保舵状態かどうかを検出する保舵状態検出手段(21,22,23;21,31,33)と、保舵状態のときに上記基本目標駆動値を補正するために用いる補正値を、上記操舵トルク検出手段が検出する操舵トルクに基づいて演算する補正値演算手段(16,18,19)と、上記保舵状態検出手段が保舵状態を検出しているときに、上記基本目標駆動値設定手段によって設定された基本目標駆動値を、上記補正値演算手段によって演算される補正値によって補正して、上記電動モータの目標駆動値を設定する目標駆動値設定手段(12,13)と、この目標駆動値設定手段によって設定された目標駆動値に基づいて、上記電動モータを駆動するモータ駆動手段(15)とを含むことを特徴とする電動パワーステアリング装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0005】
上記の構成によれば、保舵状態が検出されると、操舵トルクに応じた補正値によって基本目標駆動値が補正されることにより、電動モータの制御のための目標駆動値が求められる。これにより、保舵時における操舵補助を良好に行えるので、運転者の操舵負担を軽減することができ、操舵フィーリングを向上できる。
請求項2記載の発明は、上記保舵状態検出手段は、上記操作部材の操作による操舵速度を検出する操舵速度検出手段(21)と、上記操作部材の操作による操舵加速度を検出する操舵加速度検出手段(22)と、上記操舵速度検出手段によって検出される操舵速度の絶対値が所定の操舵速度閾値未満であり、かつ、上記操舵加速度検出手段によって検出される操舵加速度の絶対値が所定の操舵加速度閾値未満であることを条件に、保舵状態であると判定する判定手段(23)とを含むものであることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置である。
この構成によれば、操舵速度および操舵加速度の各絶対値がいずれも小さな値をとるときに保舵状態と判定されるから、保舵状態の判定を速やかに行える。これにより、保舵状態に入ると、すみやかに基本目標駆動値が補正されて、操舵負担が軽減されるから、良好な操舵フィーリングが得られる。より具体的には、高速道路の出入り口のように一定曲率のカーブを走行している状態が長時間に渡って継続する場合だけでなく、Uターン操舵時のように、短時間の保舵を行う場合であっても、運転者の操舵負担を効果的に軽減できる。
【0006】
なお、操舵速度検出手段は、操作部材の操作角を検出する操作角検出手段(6)の出力信号を時間微分するものであってもよく、また、操舵加速度検出手段は、操舵速度検出手段の出力を時間微分するものであってもよい。
請求項3記載の発明は、上記保舵状態検出手段は、上記操舵トルク検出手段が検出する操舵トルクを時間微分して、操舵トルク微分値を求める操舵トルク微分値演算手段(31)と、上記操作部材の操作による操舵速度を検出する操舵速度検出手段(21)と、上記操舵トルク微分値演算手段によって求められる操舵トルク微分値の絶対値が所定の操舵トルク微分値閾値未満であり、かつ、上記操舵速度検出手段によって求められる操舵速度の絶対値が所定の操舵速度閾値未満であることを条件に、保舵状態であると判定する判定手段(33)とを含むものであることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置である。
【0007】
この構成によっても、請求項2の発明の場合と同様な効果を達成できる。
請求項4記載の発明は、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の車速を検出する車速検出手段(7)をさらに含み、上記補正値演算手段は、上記車速検出手段によって検出される車速に基づいて、車速感応オフセット値を設定する車速感応オフセット値設定手段(16)と、この車速感応オフセット値設定手段によって設定される車速感応オフセット値に乗ずるべき操舵トルク感応ゲインを、上記操舵トルク検出手段が検出する操舵トルクに応じて定める操舵トルク感応ゲイン設定手段(18)と、上記車速感応オフセット値設定手段によって設定される車速感応オフセット値に上記操舵トルク感応ゲイン設定手段によって設定される操舵トルク感応ゲインを乗じて上記補正値を求める乗算手段(19)とを含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置である。
【0008】
この発明によれば、車速感応オフセット値に操舵トルク感応ゲインを乗じて補正値を求める構成であるので、保舵状態のときに、車速および操舵トルクに応じた適切な操舵補助を実現できる。
たとえば、車速感応オフセット値は、低速走行時には比較的大きな第1所定値(UL1)とされ、車速が高くなるに従って、第2所定値(LL1)まで減少していくように定めることが好ましい。
【0009】
また、操舵トルク感応ゲインは、操舵トルクの絶対値が所定値(T2)以下の場合には零とし、操舵トルクの絶対値が上記所定値を超える場合には、操舵トルクの絶対値が大きくなるに従って、所定の上限値(UL2)以下の範囲で単調に増加するように定めることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を示すブロック図である。操作部材としてのステアリングホイール1に加えられた操舵トルクは、ステアリングシャフト2を介して、ステアリング機構3に伝達される。ステアリング機構3には、電動モータMから発生する駆動力が、操舵補助力として、ギヤ機構を介して、またはダイレクトドライブ方式によって、機械的に伝達されるようになっている。
【0011】
ステアリングシャフト2は、ステアリングホイール1側に結合された入力軸2Aと、ステアリング機構3側に結合された出力軸2Bとに分割されていて、これらの入力軸2Aおよび出力軸2Bは、トーションバー4によって互いに連結されている。トーションバー4は、操舵トルクTに応じてねじれを生じるものであり、このねじれの方向および量は、トルクセンサ5によって検出されるようになっている。このトルクセンサ5の出力信号は、コントローラ10(ECU)に入力されている。
【0012】
コントローラ10には、トルクセンサ5の出力信号のほかにも、ステアリングホイール1の回転角としての舵角θを検出する舵角センサ6と、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の車速Vを検出する車速センサ7との各出力信号も入力されている。
コントローラ10は、トルクセンサ5によって検出される操舵トルクTおよび車速センサ7によって検出される車速Vに応じた駆動電流を電動モータMに与え、操舵トルクTおよび車速Vに応じた操舵補助力がステアリング機構3に与えられるように、電動モータMを駆動制御する。
【0013】
コントローラ10は、内部に備えられたマイクロコンピュータによるプログラム処理によって実現される複数の機能処理部を実質的に有している。これらの機能処理部は、操舵トルクTおよび車速Vに応じた基本目標電流値を設定する基本目標電流値設定部11、この基本目標電流値設定部11が設定する基本目標電流値を補正することによって、保舵状態において適切な保舵状態用目標電流値を設定する補正部12、ならびに、基本目標電流値または保舵状態用目標電流値のいずれかを電動モータMの目標電流値として選択する切り換え部13を含む。切り換え部13が選択した目標電流値に基づいて、パワートランジスタなどを含むモータドライバ15が制御され、このモータドライバ15から電動モータMへの給電が行われるようになっている。
【0014】
コントローラ10は、さらに、マイクロコンピュータのプログラム処理によって、車速センサ7が検出する車速Vに対応したオフセット電流値である車速感応オフセット値OFを生成する車速感応オフセット値設定部16と、トルクセンサ5が検出する操舵トルクTに対応したゲインである操舵トルク感応ゲインGを生成する操舵トルク感応ゲイン設定部18と、車速感応オフセット値設定部16によって設定される車速感応オフセット値OFに操舵トルク感応ゲイン設定部18によって設定される操舵トルク感応ゲインGを乗じることによって、オフセット電流値OF×Gを求める乗算部19との各機能を実現するようになっている。乗算部19が出力するオフセット電流値OF×Gは、補正部12において、基本目標電流値に加算され、これによって、保舵状態において適切な目標電流値が得られる。このように、上記車速感応オフセット値設定部16、操舵トルク感応ゲイン設定部18および乗算部19は、基本目標電流値を補正するための補正値としてのオフセット電流値を求める補正値演算手段として機能することになる。
【0015】
さらに、コントローラ10は、マイクロコンピュータのプログラム処理によって、舵角センサ6が検出する舵角θを時間微分することよって操舵速度(操舵角速度)を求める操舵速度演算部21と、この操舵速度演算部21によって求められた操舵速度をさらに時間微分することによって操舵加速度(操舵角加速度)を求める操舵加速度演算部22と、操舵速度演算部21および操舵加速度演算部22によって演算された操舵速度および操舵加速度に基づいて、保舵状態かどうかを判定する判定部23との機能を実現する。すなわち、操舵速度演算部21、操舵加速度演算部22および判定部23は、保舵状態かどうかを検出する保舵状態検出手段として機能することになる。
【0016】
判定部23による判定結果に基づいて、切り換え部13における切り換えが行われる。すなわち、保舵状態であれば、補正部12によって求められた目標電流値に基づいて電動モータMが駆動制御され、保舵状態でなければ、基本目標電流値設定部11によって設定された基本目標電流値に基づいて、電動モータMの駆動制御が実行される。
図2は、基本目標電流値設定部11の働きを説明するための図であり、操舵トルクTに対する基本目標電流値の関係の一例が示されている。操舵トルクTは、たとえば右方向への操舵のためのトルクが正の値にとられ、左方向への操舵のためのトルクが負の値にとられている。また、基本目標電流値は、電動モータMから右方向操舵のための操舵補助力を発生させるべきときには正の値とされ、電動モータMから左方向操舵のための操舵補助力を発生させるべきときには負の値とされる。
【0017】
基本目標電流値は、操舵トルクの正の値に対しては正の値をとり、操舵トルクの負の値に対しては負の値をとる。操舵トルクが−T1〜T1(たとえば、T1=0.4N・m)の範囲(トルク不感帯)の微小な値のときには、基本目標電流値は零とされる。また、基本目標電流値は、車速センサ7によって検出される車速Vが大きいほど、その絶対値が小さく設定されるようになっている。これにより、低速走行時には大きな操舵補助力を発生させることができ、高速走行時には操舵補助力を小さくすることができる。
【0018】
図3は、車速感応オフセット値設定部16による車速感応オフセット値OFの設定例を示す図である。車速感応オフセット値OF(OF≧0)は、たとえば、車速Vが低速域(たとえば、40km/h以下)の値のときには、所定の上限値UL1に保持され、中速域の値のときには、車速Vの増加に伴って所定の下限値LL1まで減少し、高速域(たとえば、120km/h以上)の値のときには上記下限値LL1に保持される。ただし、車速Vが零のときには、車速感応オフセット値OFは零とされる。
【0019】
このように車速感応オフセット値OFを設定することによって、低速走行時には、保舵状態のときに、大きな操舵補助力をステアリング機構3に与えて、運転者の操舵負担を効果的に軽減でき、中高速走行時には、保舵状態時に追加される操舵補助力を抑制して、安定した操舵状態を実現できる。
車速感応オフセット値設定部16は、図3に示すような特性に対応するテーブルを記憶したメモリを用いて構成することもできるし、図3に示すような特性を実現する関数演算をマイクロコンピュータに実行させることによって実現することもできる。
【0020】
図4は、操舵トルク感応ゲイン設定部18による操舵トルク感応ゲインGの設定例を示す図である。操舵トルク感応ゲインGは、操舵トルクの絶対値|T|が所定値T2(たとえば、T2>T1)以下の範囲では、操舵トルク感応ゲインGを零に保持する。そして、操舵トルク絶対値|T|が所定値T2を超える範囲では、操舵トルク絶対値|T|の増加に伴って上限値UL2(>0)まで単調に増加するように操舵トルク感応ゲインGを定める。
【0021】
操舵トルク感応ゲインGは、−T2≦T≦T2の不感帯範囲外において、操舵トルクTが正の値をとるときには正の値をとり、操舵トルクTが負の値をとるときには、負の値をとるように設定される。したがって、補正部12(図1参照)においては、オフセット電流値OF×Gの加算によって、基本目標電流値よりも絶対値が増加した目標電流値が求められることになる。
上記のように操舵トルク感応ゲインGを定めることにより、操舵トルク絶対値|T|が大きいほど、保舵状態のときに追加される操舵補助力が大きくなるので、良好な操舵フィーリングが得られる。また、直進時や操舵トルク絶対値|T|が十分小さい場合には、保舵状態時の運転者の操舵負担を軽減する必要がないので、操舵トルク感応ゲインGが零に保持されて、オフセット電流値が制限される。
【0022】
操舵トルク感応ゲイン設定部18は、図4に示すような特性に対応するテーブルを記憶したメモリを用いて構成することもできるし、図4に示すような特性を実現する関数演算をマイクロコンピュータに実行させることによって実現することもできる。
図5は、コントローラ10の動作を説明するためのフローチャートである。まず、車速センサ7が検出する車速V、トルクセンサ5が検出する操舵トルクT、および舵角センサ6が検出する舵角θが読み込まれる(ステップS1,S2,S3)。さらに、操舵速度演算部21の働きによって、舵角θを時間微分することにより、操舵速度が求められ(ステップS4)、さらに、操舵速度演算部21によって演算された操舵速度を時間微分することによって、操舵加速度演算部22により、操舵加速度が求められる(ステップS5)。
【0023】
一方、基本目標電流値設定部11では、車速センサ7が検出した車速Vおよびトルクセンサ5が検出した操舵トルクTに基づき、基本目標電流値が設定される(ステップS6)。また、判定部23において、操舵速度および操舵加速度に基づいて、ステアリングホイール1が一定の操舵角で保持されている保舵状態であるかどうかが判定される(ステップS7)。
保舵状態であると判定されると(ステップS7のYES)、車速感応オフセット値設定部16によって車速Vに応じて設定される車速感応オフセット値OF(ステップS8)に対して、操舵トルク感応ゲイン設定部18によって設定される操舵トルク感応ゲインG(ステップS9)を、乗算部19において乗じることによってオフセット電流値OF×Gが求められ(ステップS10)、このオフセット電流値OF×Gを基本目標電流値に加算することによって、目標電流値が求められる(ステップS12)。
【0024】
一方、保舵状態でないと判定されれば(ステップS7のNO)、オフセット電流値が0とされ(ステップS11)、これを基本目標電流値に加算して目標電流値が求められる(ステップS12)。この場合、目標電流値は、基本目標電流値に等しくなる。
こうして求められた目標電流値を達成するように、モータドライバ15が制御されることになる。より具体的には、モータドライバ15に与えられる指令電流値が目標電流値よりも小さければ(ステップS13のYES)、指令電流値に対して所定の漸増量Δ1(>0)が加算される(ステップS14)。これに対して、目標電流値が指令電流値よりも小さければ(ステップS15のYES)、指令電流値から所定の漸減量Δ2(Δ2>0。たとえば、Δ1=Δ2)が減じられることになる(ステップS16)。目標電流値と指令電流値とが等しければ(ステップS15のNO)、指令電流値は不変に保たれる。
【0025】
このようにして、モータドライバ15に与えられる指令電流値が、漸増量Δ1または漸減量Δ2ずつ変動させられることにより、指令電流値が目標電流値へと漸次的に導かれるようになっている。これにより、保舵状態であると判定されたときと、保舵状態でないと判定されたときとで、指令電流値が急変することがないので、ステアリング機構3に与えられる操舵補助力が急変することがなく、操舵フィーリングを損なうことがない。
【0026】
図6は、図5のステップS7における保舵状態の判定処理を説明するためのフローチャートである。操舵速度の絶対値が所定の操舵速度閾値(たとえば60度/秒)未満であり(ステップS21のYES)、かつ、操舵加速度の絶対値が所定の操舵加速度閾値(たとえば4.4度/秒2)未満であるとき(ステップS22のYES)、保舵状態と判定される(ステップS23)。操舵速度が上記操舵速度閾値以上であるか(ステップS21のNO)、または操舵加速度の絶対値が上記操舵加速度閾値以上であれば(ステップS22のNO)、操舵状態と判定される(ステップS24)。
【0027】
操舵速度の絶対値が操舵速度閾値未満であればステアリングホイール1の操舵速度が極めて遅いことを意味するから、一般的には保舵状態であるといえる。しかし、ステアリングホイール1の操作方向を反転させる切り返し操舵時においても操舵速度の絶対値が操舵速度閾値未満となる。このような場合に保舵状態であると判定するのは適切ではない。そこで、この実施形態では、操舵加速度の絶対値が操舵加速度閾値未満であることを保舵状態判定の条件とすることにより、切り返し操舵時には操舵状態と判定できるようにしている。
【0028】
このような保舵状態判定処理は、保舵状態か操舵状態かの判定に長時間を要することがなく、いわばリアルタイムで保舵状態か操舵状態かの区別を行うことができる。これによって、保舵状態のときには、良好な応答性で運転者の操舵負担を軽減するためのオフセット電流値を目標電流値に加算することができる。これにより、高速道路の出入り口のように一定曲率のカーブが長時間継続する場合だけでなく、一般道路上でUターン操舵を行う場合のようにごく短時間にのみ保舵状態が生じる場合であっても、運転者の操舵負担を効果的に軽減できる。
【0029】
図7は、この発明の第2の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を示すブロック図である。この図7において、上述の図1に示された各部に対応する部分には、図1の場合と同一の参照符号を付して示す。
具体的には、コントローラ10aには、操舵トルクTの時間微分値を演算するトルク微分値演算部31と、舵角センサ6が検出する舵角θを時間微分することによって、操舵速度を演算する操舵速度演算部21と、トルク微分値演算部31によって求められるトルク微分値と操舵速度演算部21によって求められる操舵速度とに基づいて、保舵状態であるかどうかを判定する判定部33とが設けられており、この判定部33による判定結果に応じて、切り換え部13が補正部12からの目標電流値または基本目標電流値設定部11が設定する基本目標電流値を、モータドライバ15の制御のための目標電流値として選択するようになっている。
【0030】
図8は、判定部33による保舵状態の判定処理を説明するためのフローチャートである。判定部33は、トルク微分値の絶対値が所定のトルク微分値閾値(たとえば0.6Nm/秒)未満であり(ステップS31のYES)、かつ、操舵速度の絶対値が、所定の操舵速度閾値(たとえば、60度/秒)未満(ステップS32のYES)である場合に、保舵状態であると判定する(ステップS33)。一方、トルク微分値が上記トルク微分値閾値以上であるか(ステップS31のNO)、または操舵速度の絶対値が上記操舵速度閾値以上(ステップS32のNO)であれば、操舵状態であると判定する(ステップS34)。
【0031】
以上、この発明の2つの実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。たとえば、上記の実施形態では、電動モータMを制御するための目標駆動値として目標電流値を用いているが、目標電圧値や操舵補助力の目標値であるアシストトルク目標値を目標駆動値として用いてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】基本目標電流値設定部の働きを説明するための図であり、操舵トルクに対する基本目標電流値の関係の一例が示されている。
【図3】車速感応オフセット値設定部による車速感応オフセット値の設定例を示す図である。
【図4】操舵トルク感応ゲイン設定部による操舵トルク感応ゲインの設定例を示す図である。
【図5】コントローラの動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】保舵状態の判定処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】この発明の第2の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図8】上記第2の実施形態における保舵状態の判定処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1 ステアリングホイール
2 ステアリングシャフト
2A 入力軸
2B 出力軸
3 ステアリング機構
4 トーションバー
5 トルクセンサ
6 舵角センサ
7 車速センサ
10 コントローラ
11 基本目標電流値設定部
12 補正部
13 切り換え部
15 モータドライバ
16 車速感応オフセット値設定部
18 操舵トルク感応ゲイン設定部
19 乗算部
21 操舵速度演算部
22 操舵加速度演算部
23 判定部
31 トルク微分値演算部
32 操舵速度演算部
33 判定部
M 電動モータ
Claims (4)
- 車両の操向のための操作部材の操作に応じて制御される電動モータが発生する駆動力をステアリング機構に伝達して操舵補助する電動パワーステアリング装置であって、
上記操作部材に加えられた操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
この操舵トルク検出手段によって検出された操舵トルクに基づいて、上記電動モータの目標駆動値の基本値である基本目標駆動値を設定する基本目標駆動値設定手段と、
上記操作部材を保持して操舵角を維持している保舵状態かどうかを検出する保舵状態検出手段と、
保舵状態のときに上記基本目標駆動値を補正するために用いる補正値を、上記操舵トルク検出手段が検出する操舵トルクに基づいて演算する補正値演算手段と、
上記保舵状態検出手段が保舵状態を検出しているときに、上記基本目標駆動値設定手段によって設定された基本目標駆動値を、上記補正値演算手段によって演算される補正値によって補正して、上記電動モータの目標駆動値を設定する目標駆動値設定手段と、
この目標駆動値設定手段によって設定された目標駆動値に基づいて、上記電動モータを駆動するモータ駆動手段とを含むことを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 上記保舵状態検出手段は、
上記操作部材の操作による操舵速度を検出する操舵速度検出手段と、
上記操作部材の操作による操舵加速度を検出する操舵加速度検出手段と、
上記操舵速度検出手段によって検出される操舵速度の絶対値が所定の操舵速度閾値未満であり、かつ、上記操舵加速度検出手段によって検出される操舵加速度の絶対値が所定の操舵加速度閾値未満であることを条件に、保舵状態であると判定する判定手段とを含むものであることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。 - 上記保舵状態検出手段は、
上記操舵トルク検出手段が検出する操舵トルクを時間微分して、操舵トルク微分値を求める操舵トルク微分値演算手段と、
上記操作部材の操作による操舵速度を検出する操舵速度検出手段と、
上記操舵トルク微分値演算手段によって求められる操舵トルク微分値の絶対値が所定の操舵トルク微分値閾値未満であり、かつ、上記操舵速度検出手段によって求められる操舵速度の絶対値が所定の操舵速度閾値未満であることを条件に、保舵状態であると判定する判定手段とを含むものであることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。 - 当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の車速を検出する車速検出手段をさらに含み、
上記補正値演算手段は、
上記車速検出手段によって検出される車速に基づいて、車速感応オフセット値を設定する車速感応オフセット値設定手段と、
この車速感応オフセット値設定手段によって設定される車速感応オフセット値に乗ずるべき操舵トルク感応ゲインを、上記操舵トルク検出手段が検出する操舵トルクに応じて定める操舵トルク感応ゲイン設定手段と、
上記車速感応オフセット値設定手段によって設定される車速感応オフセット値に上記操舵トルク感応ゲイン設定手段によって設定される操舵トルク感応ゲインを乗じて上記補正値を求める乗算手段とを含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。
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