JP2004074211A - レーザ加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】穴径が小さくなっても、穴の底面に残った残渣を容易に除去することが可能なレーザ加工方法を提供する。
【解決手段】下地部材の表面の一部の領域に金属膜が形成され、該金属膜を覆うように、該下地部材の上に絶縁膜が配置された加工対象物の該絶縁膜にレーザビームを入射させて、金属膜と部分的に重なる位置に穴を形成する。穴の底面に、波長850nm以下、パルス幅100ps以下のパルスレーザビームを、穴の底面における1パルスあたりのフルエンスが0.5J/cm2以上になる条件で入射させて、該穴の底面に残っている絶縁膜を除去する。
【選択図】 図2
【解決手段】下地部材の表面の一部の領域に金属膜が形成され、該金属膜を覆うように、該下地部材の上に絶縁膜が配置された加工対象物の該絶縁膜にレーザビームを入射させて、金属膜と部分的に重なる位置に穴を形成する。穴の底面に、波長850nm以下、パルス幅100ps以下のパルスレーザビームを、穴の底面における1パルスあたりのフルエンスが0.5J/cm2以上になる条件で入射させて、該穴の底面に残っている絶縁膜を除去する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ加工方法に関し、特にレーザ照射によって金属膜上の絶縁膜に穴を形成するレーザ加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリント基板の樹脂層にレーザビームを入射させることによって、樹脂層に穴を開け、下地の導電膜(例えば銅膜)を露出させることができる。この露出した導電膜の表面には、樹脂に由来する成分の残渣(スミア)が残存する。特に、導電膜の表面には、樹脂層との密着性を高めるためにアンカー処理(粗面化処理)が施されている。このため、導電膜の表面の微小な凹部に残渣が残りやすい。
【0003】
導電膜の表面に残渣が残ると、樹脂層の上に形成される配線と、穴の底面に露出している導電膜との間の導電性が悪くなる。穴を形成したプリント基板を過マンガン酸液等の薬液に浸漬させることにより、穴の底面に残った残渣を除去することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
プリント基板に形成される穴の径が小さくなると、薬液が穴の底面まで十分侵入せず、残渣の除去が困難になる。特に穴の直径が50μm以下になると、薬液による残渣の除去が困難である。
【0005】
本発明の目的は、穴径が小さくなっても、穴の底面に残った残渣を容易に除去することが可能なレーザ加工方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の一観点によると、下地部材の表面の一部の領域に金属膜が形成され、該金属膜を覆うように、該下地部材の上に絶縁膜が配置された加工対象物の該絶縁膜にレーザビームを入射させて、前記金属膜と部分的に重なる位置に穴を形成する工程と、前記穴の底面に、パルス幅100ps以下のパルスレーザビームを、前記穴の底面における1パルスあたりのフルエンスが0.5J/cm2以上になる条件で入射させて、該穴の底面に残っている前記絶縁膜を除去する工程とを有するレーザ加工方法が提供される。
【0007】
上述の条件でパルスレーザビームを照射することにより、薬液を使用することなく残渣を除去することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明の実施例によるレーザ加工方法に用いられるレーザ加工装置の概略図を示す。図1に示したレーザ加工装置は、残渣除去用レーザ光学系10、穴あけ用レーザ光学系20、XYステージ30、及び制御装置40を含んで構成される。XYステージ30に加工対象のプリント基板50が保持される。
【0009】
残渣除去用レーザ光学系10の構成について説明する。レーザ光源11が、残渣除去用のパルスレーザビームを出射する。レーザ光源1は、Nd:YLFレーザ発振器と波長変換素子とを含んで構成され、Nd:YLFレーザの第2高調波(波長523nm)を出射する。そのパルス幅は100ps以下である。
【0010】
レーザ光源11から出射されたパルスレーザビームが、折り返しミラー12、凸レンズ13及び14、折り返しミラー15、ピンホールマスク16、及び凸レンズ17を経由して、XYステージ30に保持されたプリント基板50に入射する。凸レンズ13及び14の焦点距離は、それぞれ100mm及び200mmであり、凸レンズ13及び14が、テレセントリック光学系を構成する。
【0011】
ピンホールマスク16に、直径1.65mmのピンホールが形成されており、ピンホールにより、パルスレーザビームのビーム断面が整形される。凸レンズ17は、焦点距離100mmのレンズであり、マスク16に形成されたピンホールをプリント基板50の表面に結像させる。
【0012】
穴あけ用レーザ光学系20の基本構成は、残渣除去用レーザ光学系10の構成と同様である。ただし、穴あけ用レーザ光学系20のレーザ光源として、例えば赤外波長域の炭酸ガスレーザ、紫外波長域のエキシマレーザを使用することができる。また、Ti:サファイアレーザの基本波や2倍高調波、Nd:YAGレーザ等の固体レーザの2倍〜5倍高調波を用いることも可能である。
【0013】
XYステージ30は、プリント基板50を2次元方向に移動させることができる。プリント基板50を移動させることにより、プリント基板50の表面の所望の位置に、残渣除去用レーザビーム及び穴あけ用レーザビームを入射させることができる。なお、ガルバノスキャナ等により、レーザビームを走査して、プリント基板50の所望の位置にレーザビームを入射させてもよい。
【0014】
制御装置40が、残渣除去用レーザ光学系10のレーザ光源11、及び穴あけ用レーザ光学系20のレーザ光源に発振の契機信号を与える。また、制御装置40は、穴あけすべき位置情報に基づいて、XYステージ30に位置指令信号を与える。
【0015】
次に、図2を参照して、プリント基板50の樹脂層に穴あけを行う方法について説明する。
【0016】
図2(A)に示すように、プリント基板50は、ガラスエポキシ基板51、その表面上に形成された金属配線52、金属配線52を覆うようにガラスエポキシ基板51の上に形成された樹脂層53を有する。金属配線52は、例えば銅、アルミニウム、金、銀、パラジウム、ニッケル、チタニウム、タングステン、プラチナ、モリブデン、またはこれらの金属の合金で形成される。樹脂層53は、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、BTレジン、ベンゾシクロブテン等で形成される。
【0017】
金属配線52が配置された領域の樹脂層53に、穴あけ用レーザビーム55を入射させる。これにより、樹脂層53に穴58が形成される。紫外波長域のレーザビームで加工する場合には、穴58の底面の金属配線52の表面に、アブレーションされずに一旦溶融してそのまま残って固化した樹脂が付着する。炭酸ガスレーザで加工する場合には、穴58の底面に樹脂の皮膜が残る。いずれの場合でも、穴58の底面に残渣59が残る。
【0018】
図2(B)に示すように、穴58の底面に、残渣除去用レーザビーム56を入射させる。残渣除去用レーザビーム56のパルス幅、穴56の底面における1パルスあたりのフルエンスを、後述する条件に適合するように設定すると、穴58の底面の金属配線52の表層部が、その上に付着している残渣59とともに除去される。これにより、金属配線52の表面を露出させることができる。
【0019】
以下、残渣除去用レーザビームの好適な条件について説明する。
【0020】
図3に、プリント基板の表面における残渣除去用レーザビームの1パルスあたりのフルエンスと、銅膜のエッチング速度との関係を示す。図の横軸は、プリント基板の表面におけるレーザビームの1パルス当たりのフルエンスを単位「J/cm2」で表し、縦軸は、エッチング速度を単位「nm/パルス」で表す。なお、照射したレーザビームは、Nd:YLFレーザの2倍高調波(波長523nm)であり、パルス幅は10psである。
【0021】
フルエンスが0.5J/cm2よりも小さい場合には、銅膜のエッチングが殆ど進まない。フルエンスが0.5J/cm2以上の領域では、フルエンスが大きくなるに従って、エッチング速度が徐々に速くなる。穴の底に現れた銅配線の表層部を、残渣除去用レーザビームで除去するためには、プリント基板表面における1パルス当たりのフルエンスを0.5J/cm2以上にすることが好ましい。
【0022】
次に、残渣除去用レーザビームの好適なパルス幅について説明する。パルスレーザビームの1パルスの持続時間τの間に熱拡散距離δは、
【0023】
【数1】
δ=(12aτ)1/2
と表される。ここで、aは、レーザビームが照射されている材料の熱拡散率である。銅の熱拡散率aは、1.12×10−4m2/sである。
【0024】
パルス幅τが1ps、10ps、100ps、1ns、及び10nmの時の熱拡散距離δは、それぞれ37nm、116nm、367nm、1.16μm、及び3.67μmになる。残渣除去時には、穴の底面の銅配線の表層部のみを薄く除去することが好ましい。除去される表層部を薄くするために、熱拡散距離δがミクロンオーダになることは好ましくない。このため、残渣除去用レーザビームのパルス幅を100ps以下にすることが好ましい。フルエンスを0.5J/cm2以上にするためには、プリント基板表面におけるパワー密度を5×109W/cm2以上にすればよい。
【0025】
このように、パルス幅を短くすると、レーザ照射により供給された熱が熱伝導によって拡散する前に、レーザ照射が終了する。すなわち、熱伝導による熱の損失が生じる前に、すべてのレーザエネルギが銅膜に投入されると考えられる。このため、銅膜の表層部を効率的に除去することができる。
【0026】
図4に、銅膜にパルスレーザビームを照射した直後の、深さ方向の上昇温度の分布を示す。横軸は、銅膜の表面からの深さを単位「nm」で表し、縦軸は上昇温度を絶対温度で表す。図中の曲線a、b、c、d、及びeは、それぞれパルス幅が1ps、20ps、100ps、1ns、及び10nmのパルスレーザビームを入射したときの上昇温度を示す。なお、深さ20nmにおける上昇温度が、銅の沸点2840Kよりも高い3000Kになるように、パルスレーザビームのパワー密度を選択した。
【0027】
パルス幅が10ps以下になると、深さ方向の上昇温度分布が大きく変化し始める。パルス幅を10ps以下にすると、温度上昇する範囲を極浅い部分に局在化させることができる。このため、パルス幅を10ps以下にすることがより好ましい。フルエンスを0.5J/cm2以上にするためには、プリント基板表面におけるパワー密度を5×1010W/cm2以上にすればよい。
【0028】
実際に、銅配線を覆う樹脂層に、紫外波長域のレーザビームを照射して穴を形成し、その底の残渣を除去する評価試験を行った。波長523nm、フルエンス1.4J/cm2、パルス幅10psのパルスレーザビームを2ショット照射したところ、残渣を除去することができた。また、炭酸ガスレーザを照射して形成した穴の底の残渣は、上述のパルスレーザビームを4ショット照射することにより除去することができた。
【0029】
なお、パルス幅100ps、1パルス当たりのフルエンス0.5J/cm2以上の条件を満たすことができるレーザ光源として、基本波〜4倍高調波を出射することが可能なTi:サファイアレーザ、基本波〜5倍高調波を出射することが可能なNd:YLFレーザやNd:YAGレーザ、紫外光を出射することが可能なエキシマレーザ等が挙げられる。
【0030】
以上、銅配線の上に残った残渣を除去する場合について説明した。上記考察は、銅配線に限らず、銅を主成分とする合金で形成された配線の上に残った残渣を除去する場合にも適用される。また、金、銀、及びアルミニウムの熱拡散距離δが、それぞれ376nm、453nm、及び317nmであり、銅の熱拡散距離と同程度であることを考慮すると、金、銀、アルミニウム等の金属配線の上に残った残渣を除去する場合にも、上記実施例による残渣除去方法が適用可能であろう。
【0031】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、レーザ照射によって形成された穴の底に残った残渣を、薬液による処理をすることなく、効率的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例によるレーザ加工方法で使用されるレーザ加工装置の概略図である。
【図2】実施例によるレーザ加工方法で加工されるプリント基板の加工部位の断面図である。
【図3】銅膜の表面における1パルス当たりのフルエンスと、銅膜のエッチング速度との関係を示すグラフである。
【図4】銅膜にパルスレーザビームを入射させたときの上昇温度の厚さ方向の分布を示すグラフである。
【符号の説明】
10 残渣除去用レーザ光学系
11 レーザ光源
12、15 折り返しミラー
13、14、17 凸レンズ
16 ピンホールマスク
20 穴あけ用レーザ光学系
30 XYステージ
40 制御装置
50 プリント基板
51 ガラスエポキシ基板
52 金属配線
53 樹脂層
55 穴あけ用レーザビーム
56 残渣除去用レーザビーム
58 穴
59 残渣
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ加工方法に関し、特にレーザ照射によって金属膜上の絶縁膜に穴を形成するレーザ加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリント基板の樹脂層にレーザビームを入射させることによって、樹脂層に穴を開け、下地の導電膜(例えば銅膜)を露出させることができる。この露出した導電膜の表面には、樹脂に由来する成分の残渣(スミア)が残存する。特に、導電膜の表面には、樹脂層との密着性を高めるためにアンカー処理(粗面化処理)が施されている。このため、導電膜の表面の微小な凹部に残渣が残りやすい。
【0003】
導電膜の表面に残渣が残ると、樹脂層の上に形成される配線と、穴の底面に露出している導電膜との間の導電性が悪くなる。穴を形成したプリント基板を過マンガン酸液等の薬液に浸漬させることにより、穴の底面に残った残渣を除去することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
プリント基板に形成される穴の径が小さくなると、薬液が穴の底面まで十分侵入せず、残渣の除去が困難になる。特に穴の直径が50μm以下になると、薬液による残渣の除去が困難である。
【0005】
本発明の目的は、穴径が小さくなっても、穴の底面に残った残渣を容易に除去することが可能なレーザ加工方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の一観点によると、下地部材の表面の一部の領域に金属膜が形成され、該金属膜を覆うように、該下地部材の上に絶縁膜が配置された加工対象物の該絶縁膜にレーザビームを入射させて、前記金属膜と部分的に重なる位置に穴を形成する工程と、前記穴の底面に、パルス幅100ps以下のパルスレーザビームを、前記穴の底面における1パルスあたりのフルエンスが0.5J/cm2以上になる条件で入射させて、該穴の底面に残っている前記絶縁膜を除去する工程とを有するレーザ加工方法が提供される。
【0007】
上述の条件でパルスレーザビームを照射することにより、薬液を使用することなく残渣を除去することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明の実施例によるレーザ加工方法に用いられるレーザ加工装置の概略図を示す。図1に示したレーザ加工装置は、残渣除去用レーザ光学系10、穴あけ用レーザ光学系20、XYステージ30、及び制御装置40を含んで構成される。XYステージ30に加工対象のプリント基板50が保持される。
【0009】
残渣除去用レーザ光学系10の構成について説明する。レーザ光源11が、残渣除去用のパルスレーザビームを出射する。レーザ光源1は、Nd:YLFレーザ発振器と波長変換素子とを含んで構成され、Nd:YLFレーザの第2高調波(波長523nm)を出射する。そのパルス幅は100ps以下である。
【0010】
レーザ光源11から出射されたパルスレーザビームが、折り返しミラー12、凸レンズ13及び14、折り返しミラー15、ピンホールマスク16、及び凸レンズ17を経由して、XYステージ30に保持されたプリント基板50に入射する。凸レンズ13及び14の焦点距離は、それぞれ100mm及び200mmであり、凸レンズ13及び14が、テレセントリック光学系を構成する。
【0011】
ピンホールマスク16に、直径1.65mmのピンホールが形成されており、ピンホールにより、パルスレーザビームのビーム断面が整形される。凸レンズ17は、焦点距離100mmのレンズであり、マスク16に形成されたピンホールをプリント基板50の表面に結像させる。
【0012】
穴あけ用レーザ光学系20の基本構成は、残渣除去用レーザ光学系10の構成と同様である。ただし、穴あけ用レーザ光学系20のレーザ光源として、例えば赤外波長域の炭酸ガスレーザ、紫外波長域のエキシマレーザを使用することができる。また、Ti:サファイアレーザの基本波や2倍高調波、Nd:YAGレーザ等の固体レーザの2倍〜5倍高調波を用いることも可能である。
【0013】
XYステージ30は、プリント基板50を2次元方向に移動させることができる。プリント基板50を移動させることにより、プリント基板50の表面の所望の位置に、残渣除去用レーザビーム及び穴あけ用レーザビームを入射させることができる。なお、ガルバノスキャナ等により、レーザビームを走査して、プリント基板50の所望の位置にレーザビームを入射させてもよい。
【0014】
制御装置40が、残渣除去用レーザ光学系10のレーザ光源11、及び穴あけ用レーザ光学系20のレーザ光源に発振の契機信号を与える。また、制御装置40は、穴あけすべき位置情報に基づいて、XYステージ30に位置指令信号を与える。
【0015】
次に、図2を参照して、プリント基板50の樹脂層に穴あけを行う方法について説明する。
【0016】
図2(A)に示すように、プリント基板50は、ガラスエポキシ基板51、その表面上に形成された金属配線52、金属配線52を覆うようにガラスエポキシ基板51の上に形成された樹脂層53を有する。金属配線52は、例えば銅、アルミニウム、金、銀、パラジウム、ニッケル、チタニウム、タングステン、プラチナ、モリブデン、またはこれらの金属の合金で形成される。樹脂層53は、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、BTレジン、ベンゾシクロブテン等で形成される。
【0017】
金属配線52が配置された領域の樹脂層53に、穴あけ用レーザビーム55を入射させる。これにより、樹脂層53に穴58が形成される。紫外波長域のレーザビームで加工する場合には、穴58の底面の金属配線52の表面に、アブレーションされずに一旦溶融してそのまま残って固化した樹脂が付着する。炭酸ガスレーザで加工する場合には、穴58の底面に樹脂の皮膜が残る。いずれの場合でも、穴58の底面に残渣59が残る。
【0018】
図2(B)に示すように、穴58の底面に、残渣除去用レーザビーム56を入射させる。残渣除去用レーザビーム56のパルス幅、穴56の底面における1パルスあたりのフルエンスを、後述する条件に適合するように設定すると、穴58の底面の金属配線52の表層部が、その上に付着している残渣59とともに除去される。これにより、金属配線52の表面を露出させることができる。
【0019】
以下、残渣除去用レーザビームの好適な条件について説明する。
【0020】
図3に、プリント基板の表面における残渣除去用レーザビームの1パルスあたりのフルエンスと、銅膜のエッチング速度との関係を示す。図の横軸は、プリント基板の表面におけるレーザビームの1パルス当たりのフルエンスを単位「J/cm2」で表し、縦軸は、エッチング速度を単位「nm/パルス」で表す。なお、照射したレーザビームは、Nd:YLFレーザの2倍高調波(波長523nm)であり、パルス幅は10psである。
【0021】
フルエンスが0.5J/cm2よりも小さい場合には、銅膜のエッチングが殆ど進まない。フルエンスが0.5J/cm2以上の領域では、フルエンスが大きくなるに従って、エッチング速度が徐々に速くなる。穴の底に現れた銅配線の表層部を、残渣除去用レーザビームで除去するためには、プリント基板表面における1パルス当たりのフルエンスを0.5J/cm2以上にすることが好ましい。
【0022】
次に、残渣除去用レーザビームの好適なパルス幅について説明する。パルスレーザビームの1パルスの持続時間τの間に熱拡散距離δは、
【0023】
【数1】
δ=(12aτ)1/2
と表される。ここで、aは、レーザビームが照射されている材料の熱拡散率である。銅の熱拡散率aは、1.12×10−4m2/sである。
【0024】
パルス幅τが1ps、10ps、100ps、1ns、及び10nmの時の熱拡散距離δは、それぞれ37nm、116nm、367nm、1.16μm、及び3.67μmになる。残渣除去時には、穴の底面の銅配線の表層部のみを薄く除去することが好ましい。除去される表層部を薄くするために、熱拡散距離δがミクロンオーダになることは好ましくない。このため、残渣除去用レーザビームのパルス幅を100ps以下にすることが好ましい。フルエンスを0.5J/cm2以上にするためには、プリント基板表面におけるパワー密度を5×109W/cm2以上にすればよい。
【0025】
このように、パルス幅を短くすると、レーザ照射により供給された熱が熱伝導によって拡散する前に、レーザ照射が終了する。すなわち、熱伝導による熱の損失が生じる前に、すべてのレーザエネルギが銅膜に投入されると考えられる。このため、銅膜の表層部を効率的に除去することができる。
【0026】
図4に、銅膜にパルスレーザビームを照射した直後の、深さ方向の上昇温度の分布を示す。横軸は、銅膜の表面からの深さを単位「nm」で表し、縦軸は上昇温度を絶対温度で表す。図中の曲線a、b、c、d、及びeは、それぞれパルス幅が1ps、20ps、100ps、1ns、及び10nmのパルスレーザビームを入射したときの上昇温度を示す。なお、深さ20nmにおける上昇温度が、銅の沸点2840Kよりも高い3000Kになるように、パルスレーザビームのパワー密度を選択した。
【0027】
パルス幅が10ps以下になると、深さ方向の上昇温度分布が大きく変化し始める。パルス幅を10ps以下にすると、温度上昇する範囲を極浅い部分に局在化させることができる。このため、パルス幅を10ps以下にすることがより好ましい。フルエンスを0.5J/cm2以上にするためには、プリント基板表面におけるパワー密度を5×1010W/cm2以上にすればよい。
【0028】
実際に、銅配線を覆う樹脂層に、紫外波長域のレーザビームを照射して穴を形成し、その底の残渣を除去する評価試験を行った。波長523nm、フルエンス1.4J/cm2、パルス幅10psのパルスレーザビームを2ショット照射したところ、残渣を除去することができた。また、炭酸ガスレーザを照射して形成した穴の底の残渣は、上述のパルスレーザビームを4ショット照射することにより除去することができた。
【0029】
なお、パルス幅100ps、1パルス当たりのフルエンス0.5J/cm2以上の条件を満たすことができるレーザ光源として、基本波〜4倍高調波を出射することが可能なTi:サファイアレーザ、基本波〜5倍高調波を出射することが可能なNd:YLFレーザやNd:YAGレーザ、紫外光を出射することが可能なエキシマレーザ等が挙げられる。
【0030】
以上、銅配線の上に残った残渣を除去する場合について説明した。上記考察は、銅配線に限らず、銅を主成分とする合金で形成された配線の上に残った残渣を除去する場合にも適用される。また、金、銀、及びアルミニウムの熱拡散距離δが、それぞれ376nm、453nm、及び317nmであり、銅の熱拡散距離と同程度であることを考慮すると、金、銀、アルミニウム等の金属配線の上に残った残渣を除去する場合にも、上記実施例による残渣除去方法が適用可能であろう。
【0031】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、レーザ照射によって形成された穴の底に残った残渣を、薬液による処理をすることなく、効率的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例によるレーザ加工方法で使用されるレーザ加工装置の概略図である。
【図2】実施例によるレーザ加工方法で加工されるプリント基板の加工部位の断面図である。
【図3】銅膜の表面における1パルス当たりのフルエンスと、銅膜のエッチング速度との関係を示すグラフである。
【図4】銅膜にパルスレーザビームを入射させたときの上昇温度の厚さ方向の分布を示すグラフである。
【符号の説明】
10 残渣除去用レーザ光学系
11 レーザ光源
12、15 折り返しミラー
13、14、17 凸レンズ
16 ピンホールマスク
20 穴あけ用レーザ光学系
30 XYステージ
40 制御装置
50 プリント基板
51 ガラスエポキシ基板
52 金属配線
53 樹脂層
55 穴あけ用レーザビーム
56 残渣除去用レーザビーム
58 穴
59 残渣
Claims (4)
- 下地部材の表面の一部の領域に金属膜が形成され、該金属膜を覆うように、該下地部材の上に絶縁膜が配置された加工対象物の該絶縁膜にレーザビームを入射させて、前記金属膜と部分的に重なる位置に穴を形成する工程と、
前記穴の底面に、パルス幅100ps以下のパルスレーザビームを、前記穴の底面における1パルスあたりのフルエンスが0.5J/cm2以上になる条件で入射させて、該穴の底面に残っている前記絶縁膜を除去する工程と
を有するレーザ加工方法。 - 前記穴の底に残っている絶縁膜を除去する工程で入射されるパルスレーザビームのパルス幅が10ps以下である請求項1に記載のレーザ加工方法。
- 前記絶縁膜を除去する工程において、前記穴の底面に位置する前記金属膜の表層部とともに、前記穴の底面に残っている前記絶縁膜材料の残渣を除去する請求項1または2に記載のレーザ加工方法。
- 前記金属膜が、銅または銅を主成分とする合金で形成されている請求項1〜3のいずれかに記載のレーザ加工方法。
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