JP2004074059A - 窒素酸化物用の還元剤とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】窒素酸化物用の固体の還元剤とその製造方法を提供する。
【解決手段】カーボンナノファイバを含む窒素酸化物用の還元剤と、触媒上で、炭化水素を分解してカーボンナノファイバを得る工程を含む、窒素酸化物用の還元剤の製造方法を提供する。
【選択図】 なし
【解決手段】カーボンナノファイバを含む窒素酸化物用の還元剤と、触媒上で、炭化水素を分解してカーボンナノファイバを得る工程を含む、窒素酸化物用の還元剤の製造方法を提供する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒素酸化物用の還元剤とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーとして水素が注目を集めており、近い将来、水素を燃料とする燃料電池で水素が多量に使用されることが予想される。現在、水素は、軽質炭化水素の水蒸気改質又は部分酸化により製造されているが、いずれの方法も、燃料電池の電極を被毒する一酸化炭素(CO)を副生するという問題がある。そこで、COを副生しない水素の製造方法として、シリカ担持ニッケル(Ni/SiO2)触媒やチタニア担持ニッケル(Ni/TiO2)触媒の存在下でメタンを分解(CH4→2H2+C)する方法が開発されている。(S.Takenaka,H.Ogihara,I.Yamanaka,K.Otsuka,Appl.Catal.A,217,101(2001)参照。)
この方法では、気相生成物として水素のみが得られるので、生成した水素を燃料電池に直接供給しても、電極を被毒することがない。しかし、繊維状の炭素(カーボンナノファイバ、以下、「CNF」と記す。)が多量に副生するため、この有効利用が課題となっている。
【0003】
一方、排気ガス中に含まれる一酸化窒素(NO)等の窒素酸化物(以下、「NOX」と記す。)は光化学スモッグ、酸性雨等の原因物質であり、その除去や無害化についての研究が行われている。NOXを除去する最も理想的な方法は、以下の式(1)に示されるような、還元剤を必要としないNOXの接触分解である。
2NO→N2+O2・・・(1)
このような反応の触媒として、Cu/ZSM−5などが提案されているが、このような触媒は、酸素および水蒸気が共存する雰囲気下では触媒のNOX分解活性が低下してしまい、いまだ実用化に至っていない。そこでアンモニア、炭化水素などの気体を還元剤に用い、NOXを還元的に除去する試みがなされている。しかし、これらの気体を還元剤として用いるには、気体を取り扱うための特別な装置が必要となっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情を鑑み、窒素酸化物用の固体の還元剤とその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、カーボンナノファイバを含む窒素酸化物用の還元剤を提供する。
本発明において用いられるカーボンナノファイバは、炭化水素を分解することにより製造することができるが、それに限定されるものではない。なお、「炭化水素の分解」とは、炭化水素を水素と炭素に直接分解することを含み、例えば、メタン分解(CH4→2H2+C)などを含む概念である。また、この「カーボンナノファイバ」は、炭化水素の分解で生成する繊維状の炭素であってもよく、一般にはフィッシュボーン構造を有しており、その直径は、一般にナノメートルのオーダである。
【0006】
なお、前記カーボンナノファイバの比表面積が高いほどNOXの還元活性が高く、比表面積が、好ましくは、70m2/g以上であり、より好ましくは、70m2/g以上180m2/g以下であり、更により好ましくは、130m2/g以上180m2/g以下である。
また、前記カーボンナノファイバが細いほど還元活性が高く、直径が、好ましくは、100nm以下であり、より好ましくは、10nm以上100nm以下であり、更により好ましくは、10nm以上60nm以下である。
また、前記カーボンナノファイバの、ラマンスペクトルでのグラファイト構造に由来するDバンド(1350cm−1)とGバンド(1580cm−1)のエリア面積比(D/G)が高いほど還元活性が高く、特に、エリア面積比(D/G)が、好ましくは、1.2以上であり、より好ましくは、1.2以上2.0以下であり、更により好ましくは、1.5以上2.0以下である。
これらについては以下で詳細に説明する。
【0007】
なお、ラマンスペクトルのDバンド(1350cm−1)とGバンド(1580cm−1)のエリア面積は以下のように計算することができる。すなわち、ラマンスペクトルのD’バンドとGバンドをローレンツ(Lorents)関数によりピーク分離して、Gバンドの半値幅とピーク強度を掛け合わせることでエリア面積を算出することができる。
【0008】
また、本発明は、別の側面として、触媒上で、炭化水素を分解してカーボンナノファイバを得る工程を含む、窒素酸化物用の還元剤の製造方法を提供する。なお、前記触媒は、担体に触媒金属としてニッケル(Ni)を担持してなる触媒であると好ましく、前記触媒が、触媒金属として、銅(Cu)と、パラジウム(Pd)と、白金(Pt)と、コバルト(Co)とからなる群から選ばれた少なくとも1つをさらに担持してなるとさらに好ましい。また、前記担体が、チタニアと、ジルコニアと、シリカと、アルミナと、マグネシアとからなる群から選ばれた少なくとも1つを含むと好ましい。
【0009】
また、本発明は、別の側面として、窒素酸化物をカーボンナノファイバに接触させることによる窒素酸化物の還元方法を提供する。本発明によれば、カーボンナノファイバを用いて窒素酸化物を還元し除去することができる。このとき、反応を行う温度は450〜700℃とすると好ましく、500〜600℃とするとさらに好ましい。また、反応を行う圧力は通常1気圧とすると好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態の1例を説明する。もっとも、以下の本発明に係る実施の形態は本発明を限定するものではない。本発明に係る窒素酸化物用の還元剤に含まれるカーボンナノファイバは、以下のように、製造することができる。
【0011】
まず、担体を触媒金属の溶液に含浸することで、触媒金属を担体に担持させる。担体としては、特に限定するものではないが、チタニア(TiO2)と、ジルコニア(ZrO2)と、シリカ(SiO2)と、アルミナ(Al2O3)と、マグネシア(MgO)とからなる群から選ばれた少なくとも1つの担体が、好ましい。また、触媒金属としては、ニッケル(Ni)が好ましく、触媒金属として、銅(Cu)と、パラジウム(Pd)と、白金(Pt)と、コバルト(Co)とからなる群から選ばれた少なくとも1つをさらに担持してなると、さらに好ましい。
【0012】
上記溶液としては、例えば、硝酸ニッケル水溶液、硝酸銅水溶液、塩化パラジウム酸水溶液、塩化白金酸水溶液、硝酸コバルト水溶液などを使用することができる。
【0013】
担体を触媒金属の溶液に含浸させた後、これを約80℃〜約100℃に加熱、攪拌しながら溶媒を蒸発させて乾燥する。このようにして、担体上に触媒金属の粒子が存在する炭化水素分解用触媒を製造することができる。
【0014】
本発明に係る窒素酸化物還元用のカーボンナノファイバの製造方法としては、上記方法によって得られた炭化水素分解用触媒の存在下で炭化水素を約400℃〜約600℃に加熱し、炭化水素を分解する。これにより水素とともに炭素が生成し、炭素はカーボンナノファイバとして析出する。炭化水素としては、特に限定されないが、メタンやブタンなどの炭素数1〜10の脂肪族炭化水素が好ましい。また、脂環式炭化水素や芳香族炭化水素も使用することができる。なお、残留する金属触媒は、必要により、酸洗浄又は磁気選鉱法などにより除去することができる。
【0015】
【実施例】
以下に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
まず、触媒担体であるSiO2(商品名Cab−O−Sil)を硝酸ニッケル水溶液に含浸した。この試料溶液を100℃程度で撹拝することで、溶液を蒸発乾固した。試料を80℃で終夜乾燥した後、120℃で3時間、600℃で5時間空気焼成することでシリカ担持ニッケル触媒を調製した。なお、Niの担持量は5重量%とした。以下、シリカ担持ニッケル触媒を、「Ni/SiO2」と記す。
【0016】
メタン分解は、常圧固定床流通式反応装置で行った。823Kで1時間、Ni/SiO2触媒に水素還元処理を施した後に、823Kで系内にメタンを導入し、メタンの分解を行った。炭素が金属Niあたり750〜1000(mol比)析出した時点でメタン分解を中止した。以下、Ni/SiO2触媒上でのメタン分解から合成したカーボンナノファイバ(CNF)を「CNF(Ni)」と記す。なお、このカーボンナノファイバを実施例1とした。
【0017】
[実施例2〜5]
シリカ担持ニッケル触媒の代わりに、金属(M)を添加したシリカ担持ニッケル触媒(以下、「Ni−M/SiO2」と記す。)を用いてメタン分解を行ったことを除き、実施例1と同様にカーボンナノファイバを調製した。金属(M)としてCo、Pt、Pd、Cuを用い、これらの金属の塩として、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、塩化白金酸、塩化パラジウム酸、硝酸銅を用いた。なお、炭素が金属Niあたり750〜1000(mol比)析出した時点でメタン分解を中止した。以下、Ni−M/SiO2触媒によるメタン分解から合成したカーボンナノファイバ(CNF)を「CNF(Ni−M)」と記す。なお、CNF(Ni−M)(M=Co、Pt、Pd、Cu)をそれぞれ実施例2〜5とした。
【0018】
なお、Ni−M/SiO2は、硝酸ニッケル水溶液の代わりに、金属(M)の塩を溶解させた硝酸ニッケル水溶液に担体SiO2を含浸したことを除き、Ni/SiO2と同様に調製した。このとき、Niの担持量は5重量%とし、金属(M)はモル比でM/Ni=0.1となるように添加した。
【0019】
[実施例6]
実施例1のCNF(Ni)にさらに熱硝酸処理を施して、Niを除去したカーボンナノファイバを調製した。このカーボンナノファイバを実施例6とした。なお、熱硝酸処理は、実施例1のCNF(Ni)を2Nの硝酸に入れ、80℃で240分間撹拌することで行った。
【0020】
[実施例7]
炭素析出量を変えたことを除き、実施例5と同様にカーボンナノファイバを調製した。このカーボンナノファイバを実施例7とした。なお、実施例5、実施例7のカーボンナノファイバのC/Niは、それぞれ900、440であった。
【0021】
[実施例8〜11]
メタンの代わりにエチレン、n−ブタン、1−ブテン、ベンゼンを用いたことを除き、実施例1と同様にカーボンナノファイバを調製した。ベンゼンの分解のみ773Kで行った。エチレン、n−ブタン、1−ブテン、ベンゼンを用いて調製したカーボンナノファイバをそれぞれ実施例8〜11とした。なお、それぞれ、「CNF(メタン)」、「CNF(エチレン)」、「CNF(n−ブタン)」、「CNF(1−ブテン)」、「CNF(ベンゼン)」と記す。
【0022】
[実施例12、13]
メタン分解の温度を変えたことを除き、実施例5と同様にカーボンナノファイバを調製した。773Kおよび873Kでメタン分解を行うことで得たカーボンナノファイバをそれぞれ実施例12、13とした。
【0023】
以上の実施例1〜13をまとめたものを表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
[メタン分解反応]
図1に、実施例1〜5を生成する際のNi−M/SiO2触媒上でのメタン分解におけるメタン転化率の経時変化を示す。反応初期のメタン転化率はいずれの触媒上でも10〜14%と高く、その後メタン流通時間の経過に伴いメタン転化率は減少した。このように、Ni−M/SiO2は、メタン分解に関して、良好な触媒活性を示した。
【0026】
なお、メタン転化率はCH4→C+2H2が選択的に進行していると仮定し、メタン流通速度および水素生成速度から求めた。メタン流通速度および水素生成速度は次に示す方法により算出した。すなわち、反応ガスの一部をサンプリングしてオンラインガスクロマトグラフにより分析し、反応ガス中のメタンと水素の組成を求めた。このメタンと水素の組成および反応ガスの流量を基に、それぞれの流通速度を求めた。
【0027】
[NO還元]
常圧固定床流通式反応装置を用いて、実施例1〜5のCNF(Ni)およびCNF(Ni−M)について、NO還元反応を行った。各カーボンナノファイバを50mg反応器にはかり取り、反応装置に取り付けた。ヘリウム(He)を流通させ反応器内を十分に置換した後に、Heを流通させながらNO還元温度まで昇温して、所定の温度に達してから30分間保持した。その後、NOを反応器内に導入することにより、NO還元反応を開始した。
酸素非共存下でのNO還元反応は、NO=0.5%、He=残り、100mL/minで行った。酸素共存下でのNO還元反応は、NO=0.5%、O2=2%、He=残り、100mL/minで行った。酸素共存下のNO還元反応では、比較例として活性炭素に対しても同様のNO還元反応を行った。なお、NOとして、He+NO(1.03%)(日本酸素株式会社製)を使用した。
【0028】
図2に、各カーボンナノファイバによる酸素非共存下でのNO還元反応における窒素収率と反応温度の関係を示す。図3に、各カーボンナノファイバおよび活性炭による酸素共存下でのNO還元反応における窒素収率と反応温度の関係を示す。いずれのカーボンナノファイバにおいてもNO還元反応は673K以上で進行し、反応温度の上昇と共に窒素収率は増加した。特に、酸素共存下において、実施例5であるCNF(Ni−Cu)は773Kで実施例1であるCNF(Ni)の6倍以上、比較例1である活性炭の3倍以上の窒素収率を示した。
【0029】
[CNF中に含まれる金属種の触媒作用についての検討]
実施例6の熱硝酸処理を施してNi種を除去したCNF(Ni)を用いて、NO還元反応を行った。この結果、図4に示すように、窒素収率は熱硝酸処理の有無に影響されなかった。ここから、担体上にあるNiはNO還元触媒としては作用していないことが分かった。
【0030】
また、実施例7の炭素析出量を減らしたCNF(Ni−M)を用いて、NO還元反応を行った。この結果、図5に示すように、炭素析出量を変化させても、すなわち相対的にCNF中のCuの量を変化させても、窒素収率には大きな変化は見られなかった。ここから、NiのみならずCuもNO還元反応の触媒としては作用していないことが分かった。
【0031】
これらの結果から、カーボンナノファイバのNO還元反応は、カーボンナノファイバ上の金属が触媒として作用するのではなく、カーボンナノファイバ自身がNOと直接反応していることが分かった。
【0032】
[CNF(Ni−M)のキャラクタリゼ−ション]
実施例1〜5のCNF(Ni)およびCNF(Ni−M)のBET表面積を表2に示す。表2および図3から分かるように、NO還元活性が高いCNFほど比表面積が大きいことが分かった。
【0033】
【表2】
【0034】
また、実施例1〜5のCNF(Ni)およびCNF(Ni−M)の走査電子顕微鏡による写真を図6〜10に示す。図6に示すように、実施例1のCNF(Ni)の走査電子顕微鏡写真からは40〜100nmのカーボンナノファイバが多数確認された。図7に示すように、実施例2のCNF(Ni−Co)の走査電子顕微鏡写真はCNF(Ni)と類似しているが、CNF(Ni)よりも細いカーボンナノファイバが多い。図8に示すように、実施例3のCNF(Ni−Pt)を観察すると、さらに細いファイバ−のみが確認された。図9に示すように、実施例4のCNF(Ni−Pd)の走査電子顕微鏡写真では明確なファイバ−を形成しておらず、短く捩れたファイバ−のみが見られた。図10に示すように、実施例5のCNF(Ni−Cu)では非常に細いファイバ−とファイバ−を形成していない炭素が確認された。
このようにNi−M/SiO2上に生成したCNF(Ni−M)の形状は添加金属の種類に強く依存し、NO還元活性の高いCNF(Ni−M)では細いあるいは乱れた形状のファイバ−が確認される傾向が示された。
【0035】
また、実施例1〜5のCNF(Ni)およびCNF(Ni−M)のラマンスペクトルを図11に示す。図11に示すように、各CNF(Ni−M)のラマンスペクトルにおいてグラファイト構造に由来するGバンド(1580cm−1)と乱れたグラファイト構造に由来するDバンド(1350cm−1)が確認された。表3に炭素の結晶性を評価する指標であるDバンドとGバンドのエリア面積比(D/G)を示す。D/Gが小さいほど炭素の結晶性が高いことを意味する。比表面積ほど明瞭なNO還元活性との対応は見られないが、全体的な傾向として結晶性の低いCNF(Ni−M)のNO還元活性が高かった。
【0036】
【表3】
【0037】
以上のように、CNF(Ni−M)のNO還元活性の違いは、CNF(Ni−M)の物性(比表面積、結晶性等)に由来することが分かった。
【0038】
[各種炭化水素分解で生成したカーボンナノファイバ上でのNO還元反応]
また、実施例1および実施例8〜11の各種炭化水素分解で生成したCNF(Ni)を用いてNO還元反応を行った。図12に、各CNF(Ni)上でのNO還元における窒素収率と温度の関係を示す。図12に示すように、いずれの炭化水素により生じたCNF(Ni)もNO還元活性を示した。
【0039】
また、実施例1および実施例8〜11の各CNF(Ni)のBET表面積を表4に示す。表4に示すように、NO還元活性が高いCNFほど比表面積が大きい傾向を示した。
【0040】
【表4】
【0041】
また、実施例1および実施例8〜10の各CNF(Ni)のラマンスペクトルを図13に示す。いずれのCNFのラマンスペクトルでもDバンドとGバンドのピ−クが確認された。表5には、実施例1のCNF(メタン)と実施例10のCNF(1−ブテン)のD/G値を示す。ここからも、結晶性の低いCNFのNO還元活性が高いことが再度示唆された。
【0042】
【表5】
【0043】
これらの結果から、メタン以外の炭化水素の分解により生じたいずれのカーボンナノファイバもNO還元活性を有することが分かった。また、カーボンナノファイバのNO還元活性は、カーボンナノファイバの比表面積と結晶性と相関を持つことが分かった。
【0044】
[異なるメタン分解温度で合成したCNF上でのNO還元反応]
また、実施例5および実施例12、13の、異なるメタン分解温度で生成したCNF(Ni−Cu)を用いてNO還元反応を行った。図14に、これらのメタン分解で得られたCNF(Ni−Cu)上でのNO還元反応における窒素収率と反応温度の関係を示す。図14に示すように、低い温度でのメタン分解で合成したCNF(Ni−Cu)のNO還元活性が高かった。
【0045】
また、実施例5および実施例12、13の、各CNF(Ni−Cu)のラマンスペクトルを図15に示す。また、表6に、各CNF(Ni−Cu)のD/G値を示す。表6から、メタン分解の温度が高くなるに従って、CNF(Ni−Cu)の結晶性が高くなることが分かる。
【0046】
【表6】
【0047】
また、実施例5および実施例12、13の、各CNF(Ni−Cu)の比表面積を表7に示した。いずれのメタン分解温度でも比表面積は170m2/g前後であり、比表面積はメタン分解温度に依存しないことが示唆された。
【0048】
【表7】
【0049】
これらの結果から異なる温度で行ったメタン分解により生じたCNFもNO還元活性を有することが分かった。また、これらのCNF(Ni−Cu)は比表面積が等しいにもかかわらずNO還元活性が異なるのは、CNF(Ni−Cu)の結晶性が異なっていたためであると考えられる。
【発明の効果】
上記したところから明らかなように、本発明は、固体の窒素酸化物用の還元剤とその製造方法を提供する。固体であるカーボンナノファイバの窒素酸化物用の還元剤としての利用は、気体の還元剤の場合のようなガスの取り扱いのための特別な装置が必要なく、非常に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】Ni−M/SiO2触媒上でのメタン分解におけるメタン転化率の経時変化を表すグラフである。
【図2】CNF(Ni−M)上での酸素非共存下でのNO還元反応における窒素収率と温度の関係を表すグラフである。
【図3】CNF(Ni−M)上での酸素共存下でのNO還元反応における窒素収率と温度の関係を表すグラフである。
【図4】熱硝酸処理を施したCNF(Ni)によるNO還元反応における窒素収率と温度の関係を表すグラフである。
【図5】炭素析出量の異なるCNF(Ni−Cu)によるNO還元反応における窒素主率と温度の関係を表すグラフである。
【図6】走査電子顕微鏡によるCNF(Ni)の写真である。
【図7】走査電子顕微鏡によるCNF(Ni−Co)の写真である。
【図8】走査電子顕微鏡によるCNF(Ni−Pt)の写真である。
【図9】走査電子顕微鏡によるCNF(Ni−Pd)の写真である。
【図10】走査電子顕微鏡によるCNF(Ni−Cu)の写真である。
【図11】CNF(Ni−M)のラマンスペクトルを表すグラフである。
【図12】各種炭化水素の分解で生成したCNF(Ni)によるNO還元反応における窒素収率と温度の関係を表すグラフである。
【図13】各種炭化水素の分解で生成したCNF(Ni)のラマンスペクトルを表すグラフである。
【図14】異なるメタン分解温度から合成したCNF(Ni−Cu)によるNO還元反応における窒素収率と反応温度の関係を表すグラフである。
【図15】異なるメタン分解温度から合成したCNF(Ni−Cu)のラマンスペクトルを表すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒素酸化物用の還元剤とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーとして水素が注目を集めており、近い将来、水素を燃料とする燃料電池で水素が多量に使用されることが予想される。現在、水素は、軽質炭化水素の水蒸気改質又は部分酸化により製造されているが、いずれの方法も、燃料電池の電極を被毒する一酸化炭素(CO)を副生するという問題がある。そこで、COを副生しない水素の製造方法として、シリカ担持ニッケル(Ni/SiO2)触媒やチタニア担持ニッケル(Ni/TiO2)触媒の存在下でメタンを分解(CH4→2H2+C)する方法が開発されている。(S.Takenaka,H.Ogihara,I.Yamanaka,K.Otsuka,Appl.Catal.A,217,101(2001)参照。)
この方法では、気相生成物として水素のみが得られるので、生成した水素を燃料電池に直接供給しても、電極を被毒することがない。しかし、繊維状の炭素(カーボンナノファイバ、以下、「CNF」と記す。)が多量に副生するため、この有効利用が課題となっている。
【0003】
一方、排気ガス中に含まれる一酸化窒素(NO)等の窒素酸化物(以下、「NOX」と記す。)は光化学スモッグ、酸性雨等の原因物質であり、その除去や無害化についての研究が行われている。NOXを除去する最も理想的な方法は、以下の式(1)に示されるような、還元剤を必要としないNOXの接触分解である。
2NO→N2+O2・・・(1)
このような反応の触媒として、Cu/ZSM−5などが提案されているが、このような触媒は、酸素および水蒸気が共存する雰囲気下では触媒のNOX分解活性が低下してしまい、いまだ実用化に至っていない。そこでアンモニア、炭化水素などの気体を還元剤に用い、NOXを還元的に除去する試みがなされている。しかし、これらの気体を還元剤として用いるには、気体を取り扱うための特別な装置が必要となっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情を鑑み、窒素酸化物用の固体の還元剤とその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、カーボンナノファイバを含む窒素酸化物用の還元剤を提供する。
本発明において用いられるカーボンナノファイバは、炭化水素を分解することにより製造することができるが、それに限定されるものではない。なお、「炭化水素の分解」とは、炭化水素を水素と炭素に直接分解することを含み、例えば、メタン分解(CH4→2H2+C)などを含む概念である。また、この「カーボンナノファイバ」は、炭化水素の分解で生成する繊維状の炭素であってもよく、一般にはフィッシュボーン構造を有しており、その直径は、一般にナノメートルのオーダである。
【0006】
なお、前記カーボンナノファイバの比表面積が高いほどNOXの還元活性が高く、比表面積が、好ましくは、70m2/g以上であり、より好ましくは、70m2/g以上180m2/g以下であり、更により好ましくは、130m2/g以上180m2/g以下である。
また、前記カーボンナノファイバが細いほど還元活性が高く、直径が、好ましくは、100nm以下であり、より好ましくは、10nm以上100nm以下であり、更により好ましくは、10nm以上60nm以下である。
また、前記カーボンナノファイバの、ラマンスペクトルでのグラファイト構造に由来するDバンド(1350cm−1)とGバンド(1580cm−1)のエリア面積比(D/G)が高いほど還元活性が高く、特に、エリア面積比(D/G)が、好ましくは、1.2以上であり、より好ましくは、1.2以上2.0以下であり、更により好ましくは、1.5以上2.0以下である。
これらについては以下で詳細に説明する。
【0007】
なお、ラマンスペクトルのDバンド(1350cm−1)とGバンド(1580cm−1)のエリア面積は以下のように計算することができる。すなわち、ラマンスペクトルのD’バンドとGバンドをローレンツ(Lorents)関数によりピーク分離して、Gバンドの半値幅とピーク強度を掛け合わせることでエリア面積を算出することができる。
【0008】
また、本発明は、別の側面として、触媒上で、炭化水素を分解してカーボンナノファイバを得る工程を含む、窒素酸化物用の還元剤の製造方法を提供する。なお、前記触媒は、担体に触媒金属としてニッケル(Ni)を担持してなる触媒であると好ましく、前記触媒が、触媒金属として、銅(Cu)と、パラジウム(Pd)と、白金(Pt)と、コバルト(Co)とからなる群から選ばれた少なくとも1つをさらに担持してなるとさらに好ましい。また、前記担体が、チタニアと、ジルコニアと、シリカと、アルミナと、マグネシアとからなる群から選ばれた少なくとも1つを含むと好ましい。
【0009】
また、本発明は、別の側面として、窒素酸化物をカーボンナノファイバに接触させることによる窒素酸化物の還元方法を提供する。本発明によれば、カーボンナノファイバを用いて窒素酸化物を還元し除去することができる。このとき、反応を行う温度は450〜700℃とすると好ましく、500〜600℃とするとさらに好ましい。また、反応を行う圧力は通常1気圧とすると好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態の1例を説明する。もっとも、以下の本発明に係る実施の形態は本発明を限定するものではない。本発明に係る窒素酸化物用の還元剤に含まれるカーボンナノファイバは、以下のように、製造することができる。
【0011】
まず、担体を触媒金属の溶液に含浸することで、触媒金属を担体に担持させる。担体としては、特に限定するものではないが、チタニア(TiO2)と、ジルコニア(ZrO2)と、シリカ(SiO2)と、アルミナ(Al2O3)と、マグネシア(MgO)とからなる群から選ばれた少なくとも1つの担体が、好ましい。また、触媒金属としては、ニッケル(Ni)が好ましく、触媒金属として、銅(Cu)と、パラジウム(Pd)と、白金(Pt)と、コバルト(Co)とからなる群から選ばれた少なくとも1つをさらに担持してなると、さらに好ましい。
【0012】
上記溶液としては、例えば、硝酸ニッケル水溶液、硝酸銅水溶液、塩化パラジウム酸水溶液、塩化白金酸水溶液、硝酸コバルト水溶液などを使用することができる。
【0013】
担体を触媒金属の溶液に含浸させた後、これを約80℃〜約100℃に加熱、攪拌しながら溶媒を蒸発させて乾燥する。このようにして、担体上に触媒金属の粒子が存在する炭化水素分解用触媒を製造することができる。
【0014】
本発明に係る窒素酸化物還元用のカーボンナノファイバの製造方法としては、上記方法によって得られた炭化水素分解用触媒の存在下で炭化水素を約400℃〜約600℃に加熱し、炭化水素を分解する。これにより水素とともに炭素が生成し、炭素はカーボンナノファイバとして析出する。炭化水素としては、特に限定されないが、メタンやブタンなどの炭素数1〜10の脂肪族炭化水素が好ましい。また、脂環式炭化水素や芳香族炭化水素も使用することができる。なお、残留する金属触媒は、必要により、酸洗浄又は磁気選鉱法などにより除去することができる。
【0015】
【実施例】
以下に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
まず、触媒担体であるSiO2(商品名Cab−O−Sil)を硝酸ニッケル水溶液に含浸した。この試料溶液を100℃程度で撹拝することで、溶液を蒸発乾固した。試料を80℃で終夜乾燥した後、120℃で3時間、600℃で5時間空気焼成することでシリカ担持ニッケル触媒を調製した。なお、Niの担持量は5重量%とした。以下、シリカ担持ニッケル触媒を、「Ni/SiO2」と記す。
【0016】
メタン分解は、常圧固定床流通式反応装置で行った。823Kで1時間、Ni/SiO2触媒に水素還元処理を施した後に、823Kで系内にメタンを導入し、メタンの分解を行った。炭素が金属Niあたり750〜1000(mol比)析出した時点でメタン分解を中止した。以下、Ni/SiO2触媒上でのメタン分解から合成したカーボンナノファイバ(CNF)を「CNF(Ni)」と記す。なお、このカーボンナノファイバを実施例1とした。
【0017】
[実施例2〜5]
シリカ担持ニッケル触媒の代わりに、金属(M)を添加したシリカ担持ニッケル触媒(以下、「Ni−M/SiO2」と記す。)を用いてメタン分解を行ったことを除き、実施例1と同様にカーボンナノファイバを調製した。金属(M)としてCo、Pt、Pd、Cuを用い、これらの金属の塩として、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、塩化白金酸、塩化パラジウム酸、硝酸銅を用いた。なお、炭素が金属Niあたり750〜1000(mol比)析出した時点でメタン分解を中止した。以下、Ni−M/SiO2触媒によるメタン分解から合成したカーボンナノファイバ(CNF)を「CNF(Ni−M)」と記す。なお、CNF(Ni−M)(M=Co、Pt、Pd、Cu)をそれぞれ実施例2〜5とした。
【0018】
なお、Ni−M/SiO2は、硝酸ニッケル水溶液の代わりに、金属(M)の塩を溶解させた硝酸ニッケル水溶液に担体SiO2を含浸したことを除き、Ni/SiO2と同様に調製した。このとき、Niの担持量は5重量%とし、金属(M)はモル比でM/Ni=0.1となるように添加した。
【0019】
[実施例6]
実施例1のCNF(Ni)にさらに熱硝酸処理を施して、Niを除去したカーボンナノファイバを調製した。このカーボンナノファイバを実施例6とした。なお、熱硝酸処理は、実施例1のCNF(Ni)を2Nの硝酸に入れ、80℃で240分間撹拌することで行った。
【0020】
[実施例7]
炭素析出量を変えたことを除き、実施例5と同様にカーボンナノファイバを調製した。このカーボンナノファイバを実施例7とした。なお、実施例5、実施例7のカーボンナノファイバのC/Niは、それぞれ900、440であった。
【0021】
[実施例8〜11]
メタンの代わりにエチレン、n−ブタン、1−ブテン、ベンゼンを用いたことを除き、実施例1と同様にカーボンナノファイバを調製した。ベンゼンの分解のみ773Kで行った。エチレン、n−ブタン、1−ブテン、ベンゼンを用いて調製したカーボンナノファイバをそれぞれ実施例8〜11とした。なお、それぞれ、「CNF(メタン)」、「CNF(エチレン)」、「CNF(n−ブタン)」、「CNF(1−ブテン)」、「CNF(ベンゼン)」と記す。
【0022】
[実施例12、13]
メタン分解の温度を変えたことを除き、実施例5と同様にカーボンナノファイバを調製した。773Kおよび873Kでメタン分解を行うことで得たカーボンナノファイバをそれぞれ実施例12、13とした。
【0023】
以上の実施例1〜13をまとめたものを表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
[メタン分解反応]
図1に、実施例1〜5を生成する際のNi−M/SiO2触媒上でのメタン分解におけるメタン転化率の経時変化を示す。反応初期のメタン転化率はいずれの触媒上でも10〜14%と高く、その後メタン流通時間の経過に伴いメタン転化率は減少した。このように、Ni−M/SiO2は、メタン分解に関して、良好な触媒活性を示した。
【0026】
なお、メタン転化率はCH4→C+2H2が選択的に進行していると仮定し、メタン流通速度および水素生成速度から求めた。メタン流通速度および水素生成速度は次に示す方法により算出した。すなわち、反応ガスの一部をサンプリングしてオンラインガスクロマトグラフにより分析し、反応ガス中のメタンと水素の組成を求めた。このメタンと水素の組成および反応ガスの流量を基に、それぞれの流通速度を求めた。
【0027】
[NO還元]
常圧固定床流通式反応装置を用いて、実施例1〜5のCNF(Ni)およびCNF(Ni−M)について、NO還元反応を行った。各カーボンナノファイバを50mg反応器にはかり取り、反応装置に取り付けた。ヘリウム(He)を流通させ反応器内を十分に置換した後に、Heを流通させながらNO還元温度まで昇温して、所定の温度に達してから30分間保持した。その後、NOを反応器内に導入することにより、NO還元反応を開始した。
酸素非共存下でのNO還元反応は、NO=0.5%、He=残り、100mL/minで行った。酸素共存下でのNO還元反応は、NO=0.5%、O2=2%、He=残り、100mL/minで行った。酸素共存下のNO還元反応では、比較例として活性炭素に対しても同様のNO還元反応を行った。なお、NOとして、He+NO(1.03%)(日本酸素株式会社製)を使用した。
【0028】
図2に、各カーボンナノファイバによる酸素非共存下でのNO還元反応における窒素収率と反応温度の関係を示す。図3に、各カーボンナノファイバおよび活性炭による酸素共存下でのNO還元反応における窒素収率と反応温度の関係を示す。いずれのカーボンナノファイバにおいてもNO還元反応は673K以上で進行し、反応温度の上昇と共に窒素収率は増加した。特に、酸素共存下において、実施例5であるCNF(Ni−Cu)は773Kで実施例1であるCNF(Ni)の6倍以上、比較例1である活性炭の3倍以上の窒素収率を示した。
【0029】
[CNF中に含まれる金属種の触媒作用についての検討]
実施例6の熱硝酸処理を施してNi種を除去したCNF(Ni)を用いて、NO還元反応を行った。この結果、図4に示すように、窒素収率は熱硝酸処理の有無に影響されなかった。ここから、担体上にあるNiはNO還元触媒としては作用していないことが分かった。
【0030】
また、実施例7の炭素析出量を減らしたCNF(Ni−M)を用いて、NO還元反応を行った。この結果、図5に示すように、炭素析出量を変化させても、すなわち相対的にCNF中のCuの量を変化させても、窒素収率には大きな変化は見られなかった。ここから、NiのみならずCuもNO還元反応の触媒としては作用していないことが分かった。
【0031】
これらの結果から、カーボンナノファイバのNO還元反応は、カーボンナノファイバ上の金属が触媒として作用するのではなく、カーボンナノファイバ自身がNOと直接反応していることが分かった。
【0032】
[CNF(Ni−M)のキャラクタリゼ−ション]
実施例1〜5のCNF(Ni)およびCNF(Ni−M)のBET表面積を表2に示す。表2および図3から分かるように、NO還元活性が高いCNFほど比表面積が大きいことが分かった。
【0033】
【表2】
【0034】
また、実施例1〜5のCNF(Ni)およびCNF(Ni−M)の走査電子顕微鏡による写真を図6〜10に示す。図6に示すように、実施例1のCNF(Ni)の走査電子顕微鏡写真からは40〜100nmのカーボンナノファイバが多数確認された。図7に示すように、実施例2のCNF(Ni−Co)の走査電子顕微鏡写真はCNF(Ni)と類似しているが、CNF(Ni)よりも細いカーボンナノファイバが多い。図8に示すように、実施例3のCNF(Ni−Pt)を観察すると、さらに細いファイバ−のみが確認された。図9に示すように、実施例4のCNF(Ni−Pd)の走査電子顕微鏡写真では明確なファイバ−を形成しておらず、短く捩れたファイバ−のみが見られた。図10に示すように、実施例5のCNF(Ni−Cu)では非常に細いファイバ−とファイバ−を形成していない炭素が確認された。
このようにNi−M/SiO2上に生成したCNF(Ni−M)の形状は添加金属の種類に強く依存し、NO還元活性の高いCNF(Ni−M)では細いあるいは乱れた形状のファイバ−が確認される傾向が示された。
【0035】
また、実施例1〜5のCNF(Ni)およびCNF(Ni−M)のラマンスペクトルを図11に示す。図11に示すように、各CNF(Ni−M)のラマンスペクトルにおいてグラファイト構造に由来するGバンド(1580cm−1)と乱れたグラファイト構造に由来するDバンド(1350cm−1)が確認された。表3に炭素の結晶性を評価する指標であるDバンドとGバンドのエリア面積比(D/G)を示す。D/Gが小さいほど炭素の結晶性が高いことを意味する。比表面積ほど明瞭なNO還元活性との対応は見られないが、全体的な傾向として結晶性の低いCNF(Ni−M)のNO還元活性が高かった。
【0036】
【表3】
【0037】
以上のように、CNF(Ni−M)のNO還元活性の違いは、CNF(Ni−M)の物性(比表面積、結晶性等)に由来することが分かった。
【0038】
[各種炭化水素分解で生成したカーボンナノファイバ上でのNO還元反応]
また、実施例1および実施例8〜11の各種炭化水素分解で生成したCNF(Ni)を用いてNO還元反応を行った。図12に、各CNF(Ni)上でのNO還元における窒素収率と温度の関係を示す。図12に示すように、いずれの炭化水素により生じたCNF(Ni)もNO還元活性を示した。
【0039】
また、実施例1および実施例8〜11の各CNF(Ni)のBET表面積を表4に示す。表4に示すように、NO還元活性が高いCNFほど比表面積が大きい傾向を示した。
【0040】
【表4】
【0041】
また、実施例1および実施例8〜10の各CNF(Ni)のラマンスペクトルを図13に示す。いずれのCNFのラマンスペクトルでもDバンドとGバンドのピ−クが確認された。表5には、実施例1のCNF(メタン)と実施例10のCNF(1−ブテン)のD/G値を示す。ここからも、結晶性の低いCNFのNO還元活性が高いことが再度示唆された。
【0042】
【表5】
【0043】
これらの結果から、メタン以外の炭化水素の分解により生じたいずれのカーボンナノファイバもNO還元活性を有することが分かった。また、カーボンナノファイバのNO還元活性は、カーボンナノファイバの比表面積と結晶性と相関を持つことが分かった。
【0044】
[異なるメタン分解温度で合成したCNF上でのNO還元反応]
また、実施例5および実施例12、13の、異なるメタン分解温度で生成したCNF(Ni−Cu)を用いてNO還元反応を行った。図14に、これらのメタン分解で得られたCNF(Ni−Cu)上でのNO還元反応における窒素収率と反応温度の関係を示す。図14に示すように、低い温度でのメタン分解で合成したCNF(Ni−Cu)のNO還元活性が高かった。
【0045】
また、実施例5および実施例12、13の、各CNF(Ni−Cu)のラマンスペクトルを図15に示す。また、表6に、各CNF(Ni−Cu)のD/G値を示す。表6から、メタン分解の温度が高くなるに従って、CNF(Ni−Cu)の結晶性が高くなることが分かる。
【0046】
【表6】
【0047】
また、実施例5および実施例12、13の、各CNF(Ni−Cu)の比表面積を表7に示した。いずれのメタン分解温度でも比表面積は170m2/g前後であり、比表面積はメタン分解温度に依存しないことが示唆された。
【0048】
【表7】
【0049】
これらの結果から異なる温度で行ったメタン分解により生じたCNFもNO還元活性を有することが分かった。また、これらのCNF(Ni−Cu)は比表面積が等しいにもかかわらずNO還元活性が異なるのは、CNF(Ni−Cu)の結晶性が異なっていたためであると考えられる。
【発明の効果】
上記したところから明らかなように、本発明は、固体の窒素酸化物用の還元剤とその製造方法を提供する。固体であるカーボンナノファイバの窒素酸化物用の還元剤としての利用は、気体の還元剤の場合のようなガスの取り扱いのための特別な装置が必要なく、非常に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】Ni−M/SiO2触媒上でのメタン分解におけるメタン転化率の経時変化を表すグラフである。
【図2】CNF(Ni−M)上での酸素非共存下でのNO還元反応における窒素収率と温度の関係を表すグラフである。
【図3】CNF(Ni−M)上での酸素共存下でのNO還元反応における窒素収率と温度の関係を表すグラフである。
【図4】熱硝酸処理を施したCNF(Ni)によるNO還元反応における窒素収率と温度の関係を表すグラフである。
【図5】炭素析出量の異なるCNF(Ni−Cu)によるNO還元反応における窒素主率と温度の関係を表すグラフである。
【図6】走査電子顕微鏡によるCNF(Ni)の写真である。
【図7】走査電子顕微鏡によるCNF(Ni−Co)の写真である。
【図8】走査電子顕微鏡によるCNF(Ni−Pt)の写真である。
【図9】走査電子顕微鏡によるCNF(Ni−Pd)の写真である。
【図10】走査電子顕微鏡によるCNF(Ni−Cu)の写真である。
【図11】CNF(Ni−M)のラマンスペクトルを表すグラフである。
【図12】各種炭化水素の分解で生成したCNF(Ni)によるNO還元反応における窒素収率と温度の関係を表すグラフである。
【図13】各種炭化水素の分解で生成したCNF(Ni)のラマンスペクトルを表すグラフである。
【図14】異なるメタン分解温度から合成したCNF(Ni−Cu)によるNO還元反応における窒素収率と反応温度の関係を表すグラフである。
【図15】異なるメタン分解温度から合成したCNF(Ni−Cu)のラマンスペクトルを表すグラフである。
Claims (9)
- カーボンナノファイバを含む窒素酸化物用の還元剤。
- 前記カーボンナノファイバの比表面積が70m2/g以上である、請求項1に記載の還元剤。
- 前記カーボンナノファイバの直径が100nm以下である、請求項1または2に記載の還元剤。
- 前記カーボンナノファイバの、ラマンスペクトルでのグラファイト構造に由来するDバンドとGバンドのエリア面積比が1.2以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の還元剤。
- 触媒上で、炭化水素を分解してカーボンナノファイバを得る工程を含む、窒素酸化物用の還元剤の製造方法。
- 前記触媒が、担体に触媒金属としてニッケルを担持してなる触媒である、請求項5に記載の製造方法。
- 前記触媒が、触媒金属として、銅と、パラジウムと、白金と、コバルトとからなる群から選ばれた少なくとも1つをさらに担持してなる、請求項6に記載の製造方法。
- 前記担体が、チタニアと、ジルコニアと、シリカと、アルミナと、マグネシアとからなる群から選ばれた少なくとも1つを含む、請求項6または7に記載の製造方法。
- 窒素酸化物をカーボンナノファイバに接触させることによる窒素酸化物の還元方法。
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JP2002239670A JP2004074059A (ja) | 2002-08-20 | 2002-08-20 | 窒素酸化物用の還元剤とその製造方法 |
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KR101558040B1 (ko) * | 2013-05-29 | 2015-10-08 | 한국기술교육대학교 산학협력단 | 질산성질소 환원제의 제조방법 |
-
2002
- 2002-08-20 JP JP2002239670A patent/JP2004074059A/ja active Pending
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KR101558040B1 (ko) * | 2013-05-29 | 2015-10-08 | 한국기술교육대학교 산학협력단 | 질산성질소 환원제의 제조방법 |
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