JP2004072810A - シャフトレス機械の同期制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】シャフトレス機械の同期完了までの時間を短縮すること。
【解決手段】モータ2A、2b、2Cのスタートのタイミングをずらすことにより、複数の機械軸1A、1b、1Cの同期合わせを行う。スタートのタイミングのずれは、複数の機械軸の位置とモータの加速レート及び到達速度とに基づいて求めることができる。複数の機械軸の位置はアブソリュート・エンコーダで検出できる。
【選択図】 図5
【解決手段】モータ2A、2b、2Cのスタートのタイミングをずらすことにより、複数の機械軸1A、1b、1Cの同期合わせを行う。スタートのタイミングのずれは、複数の機械軸の位置とモータの加速レート及び到達速度とに基づいて求めることができる。複数の機械軸の位置はアブソリュート・エンコーダで検出できる。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はシャフトレスドライブシステムのうち、複数の機械軸の初期位置を短時間で合わせる技術に関し、例えば、新聞やグラビア、ちらし等を印刷するシャフトレス輪転機に代表されるシャフトレス印刷機に適用して有用なものである。機械軸の位置とは回転に関する位置であり、位相角度とも呼ばれる。
【0002】
【従来の技術】
図1は、シャフト連結式機械の模式図である。図1において、複数台(図では3台の)機械A、B、Cの各機械軸1A、1B、1Cがモータ2から1本のシャフト3を介してギア4A、4B、4Cでつながっている。このように、複数の機械A、B、Cを1本のシャフト3で連結してなる機械では、全ての機械軸1A、1B、1Cの位置(位相角度)が常に合い、常に同期している。矢印5A、5B、5Cは回転方向を示す。
【0003】
図2は、シャフトレス機械の模式図である。このシャフトレス機械は、図1からシャフト3を取り去り、複数の機械軸1A、1B、1C毎にモータ3A、3B、3Cを設置して回転駆動するようにしたものである。この場合、各機械軸1A、1B、1Cの位置は、図1のシャフト3に代えて、電気制御で同期される。
【0004】
一般に、シャフトレス機械では、各機械軸1A、1B、1Cの運転開始時点の位置(位相角度)は、図3に突起6A、6B、6Cで代表して示すようにバラバラである。これらの機械軸を同期させるには、電気制御により、各機械軸1A、1B、1Cをそれぞれの初期位置(初期位相角度)に着かせる必要がある。図3に示す例では、機械軸1Aの位置を基準にすると、機械軸1Bは機械軸1Aより角度θ1だけ遅れているので、破線で示すように角度θ1だけ進ませることで初期位置に着かされ、機械軸1Cは機械軸1Aより角度θ2だけ進んでいるので、破線で示すように角度θ2だけ遅らせることで初期位置に着かされる。
【0005】
従来は、「原点セット」と呼ばれる手法により、各機械軸1A、1B、1Cの位置を知るとともに機械軸1B、1Cをそれぞれθ1、θ2の角度分だけ動かし、その場で一旦停止させることで、運転開始前に機械軸1A、1B、1Cを初期位置に着かせている。以下、原点セットを説明する。
【0006】
原点セットでは、各機械軸1A、1B、1Cの位置(位相角度)検出器にインクリメンタリ方式のロータリエンコーダ(以下、インクリメンタリ・エンコーダ)を採用している。インクリメンタリ・エンコーダの出力パルスをカウンタで数えることで位置検出を行うが、その際、各機械軸の機械的原点の位置に近接スイッチ(NLS)を置き、近接スイッチの原点検出信号でカウンタのカウント値をリセットし、その後にパルスが入るに従ってカウント値を加算していく。カウント値は、原点ではゼロで、その後、機械軸の回転量に比例する。言い換えれば、カウント値は、対応する機械軸の原点からの位置を表す。従って、各機械軸1A、1B、1Cの位置は、実際に全てのモータ2A、2B、2Cを低速回転(以下、徐動)させて近接スイッチで原点を検出してからでないと分からない。
【0007】
そのため、運転前に、各機械軸の原点を予め探しておく動作が必要であり、モータの徐動を開始してから、原点を全て探し、機械軸相互間の初期位置を合わせておくまでが、シャフトレス機械を運転する前の準備動作である。単に機械軸間の速度差をゼロにすることだけが目的であれば、このような準備動作は不要である。
【0008】
ここで、図2のシャフトレス機械がシャフトレス輪転機である場合について、初期位置を説明する。便宜上、3台の機械のうち、機械Aは折機(フォルダ)であり、残りの機械B、Cは印刷機(プレス)であるとする。シャフトレス輪転機では、各印刷機B、Cで刷り上がった紙を折機Aで切って折り畳むので、折機と全ての印刷機との間で、機械軸1A、1B、1Cの位置を合わせることが重要である。折機の機械軸1Aと各印刷機の機械軸1B、1Cとの位置関係(位相角度の差)は、機械相互間の配置と紙が通るパス長によって決まる。シャフトレス輪転機の運転前の準備動作では、この所定の位置関係を満足する位置に全ての機械(折機及び印刷機)の機械軸1A、1B、1Cを着かせる必要がある。このように、初期位置とは、複数の機械軸間の所定の位置関係を満足させるのに必要な運転初期の位置である。
【0009】
全ての機械軸の原点をそれぞれの初期位置に合わせることができれば都合良いのだが、実際には、原点検出用の近接スイッチの設置場所に制約があるため、必ずしも原点=初期位置とすることができない。
【0010】
そこで原点セットでは、各機械軸それぞれについて、原点を探してから「レジスタ位置」と呼ばれる位置まで予め回転させ、一旦停止させている。「レジスタ位置」とは、各機械軸の初期位置をそれぞれの原点から数えた位相角度で表現したものであり、複数の機械軸を同期させて運転させる時に必要なスタートラインのようなものである。
【0011】
以上を要するに、原点セットは、次のようにして行われる。
(1) まず、全ての機械軸のモータを同時に徐動させ、近接スイッチに対して原点を通過させることで、各機械軸の原点を検出する。
(2) 原点検出後、各モータをそのまま徐動させ、インクリメンタリ・エンコーダによる位置検出を利用して、各機械軸をレジスタ位置まで進ませる。
(3) 機械軸がレジスタ位置まで進んだ時点で、該当するモータを停止する。
【0012】
上記より判るように、原点セットでは、全ての機械軸1A、1B、1Cがシャフトレス機械の運転開始前にそれぞれのレジスタ位置で静止する。言い換えれば、全てのモータ2A、2B、2Cが各機械軸のレジスタ位置に相当する位置で待機して初めて、シャフトレス機械全体の同期運転ができる準備が整ったことになる。
【0013】
運転が始まると、各機械軸相互の相対的な位置関係(位相角度の差)を速度や負荷が変化しても最初のレジスタ位置の時の位置関係と同じに保ちながら、各機械軸1A、1B、1Cを互いに同じ速度で回転させるように、各モータ2A、2B、2Cを制御する。
【0014】
ここで、「速度や負荷が変化しても機械軸相互間の相対的な位置関係を最初のレジスタ位置に保つ」ことを「同期」していると呼ぶ。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、原点セットでは、全ての機械軸1A、1B、1Cがそれぞれのレジスタ位置で一旦静止することから、シャフトレス機械の運転前の準備動作に時間がかかる。特に、新聞用のシャフトレス輪転機では、最新の記事を少しでも早く報道するために、同期完了までの時間を僅かでも減らしたいという要望がある。
【0016】
本発明は、係る要望に応え、シャフトレス機械の同期完了までの時間を短縮することが可能な同期制御方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
第1発明は上記課題を解決するシャフトレス機械の同期制御方法であり、複数の機械軸の位置とモータの加速レート及び到達速度とに基づいて、各機械軸に配置されたモータのスタートのタイミングをずらすことにより、前記複数の機械軸の同期合わせを行うことを特徴とする。各機械軸の位置はアブソリュート・エンコーダを用いて検出することができる。
【0018】
第2発明は上記課題を解決する別のシャフトレス機械の同期制御方法であり、1つの機械を基準機としてそのモータを余分に加減速をしてレジスタ位置に進ませることなく、また、モータのスタートタイミングをずらすことなく運転すること、他の全ての機械については、その基準位置を前記基準機の機械軸位置からスタートさせ、モータのスタートタイミングをずらすか、あるいは、運転開始後にモータを余分に加減速することにより、前記複数の機械軸の同期合わせを行うことを特徴とする。各機械軸の位置はアブソリュート・エンコーダを用いて検出することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図4〜図6中で、図1〜図3と同じ機能の部分には同じ符号を付している。
【0020】
[関連技術]
本発明の関連技術として、図2に示したシャフトレス機械について、運転前の準備時間を短縮する技術の例を2つ説明する。
【0021】
第1の関連技術は、各モータ2A、2B、2Cを同時にスタートさせ、運転開始後の徐動速度にある中で各機械軸1A、1B、1Cの原点を検出し、かつ、原点検出後に各々のモータ2A、2B、2Cを加減速させて初期位置(初期位相角度)に着かせることで同期を合わせ、全ての機械軸1A、1B、1Cの同期が合ったことを確認してから、各モータ2A、2B、2Cを停止させることなく所定の速度まで増速させるものである。
【0022】
上記第1の関連技術では、徐動運転を初めてから、原点検出を行い、同期合わせ合わせのための加減速を完了するまでが準備時間になる。従って、原点セットのようなモータの一旦停止が不要なので、従来に比べて準備時間が短縮する。しかし、原点検出と加減速とによる同期合わせ動作が必要なため、準備時間があることには変わりない。
【0023】
第2の関連技術は、各機械軸の位置(位相角度)検出器にアブソリュート・エンコーダ(アブソリュート式のロータリエンコーダ)を用いることで、原点検出を不要としたものである。
【0024】
アブソリュート・エンコーダを用いれば、モータを回転させなくても機械軸の位置(位相角度)を検出できる。そこで、第2の関連技術では、運転開始の瞬間に存在している各機械軸1A、1B、1Cの位置をアブソリュート・エンコーダを用いて検出し、検出した位置からレジスタ位置への移動量を予め計算しておく。その後、全てのモータ2A、2B、2Cを同時にスタートさせ、運転開始直後の徐動運転期間(図4(a)の符号7参照)の中で、あるいは運転開始直後の加速運転期間(図4(b)の符号10参照)の中で、先に計算した移動量だけ余分に各モータ2A、2B、2Cを加減速させることで同期を合わせる。全ての機械軸1A、1B、1Cの同期が合ったことを確認してから、各モータ2A、2B、2Cを停止させることなく所定速度まで増速させる。
【0025】
図4(a)(b)はモータ速度と時間の関係を示しており、以下のことが判る。
(1) 図4(a)(b)いずれの例でも、機械軸1Aを基準にして機械軸1B、1Cの各移動量(図3の角度θ1、θ2)を予め計算しておくことで、モータ2Aに余分な加減速をさせることなく、図3に示した動作を実現している。
(2) 図4(a)の例では、運転開始直後の徐動運転期間7中に、モータ2Bを斜線を付した部分7のように余分に加速することで、機械軸1Bを機械軸1Aの位置を基準に角度θ1だけ進ませて初期位置に着かせている。また、モータ2Cを斜線を付した部分9ように余分に減速することで、機械軸1Cを機械軸1Aの位置を基準に角度θ2だけ遅らせて初期位置に着かせている。
(3) 図4(b)の例では、運転開始直後の加速運転期間10中に、モータ2Bを斜線を付した部分11のように余分に加速することで、機械軸1Bを機械軸1Aの位置を基準に角度θ1だけ進ませて初期位置に着かせている。また、モータ2Cを斜線を付した部分12のように余分に減速することで、機械軸1Cを機械軸1Aの位置を基準に角度θ2だけ遅らせて初期位置に着かせている。
(4) 図4(a)(b)中、S1はモータ2Bが余分に加速した部分7、11の面積であり、予め計算した機械軸1Bの移動量(図3の角度θ1)に相当し、S2はモータ2Cが余分に減速した部分9、12の面積であり、予め計算した機械軸1Cの移動量(図3の角度θ2)に相当する。
【0026】
上記第2の関連技術では、原点検出を行わないので、第1の関連技術と比べて運転を始めてから原点検出まで待つ必要がなく、準備時間が更に短縮する。しかし、運転開始直後の徐動運転期間7中あるいは加速運転期間10中に余分な加減速動作が必要なため、準備時間があることには変わりない。
【0027】
なお、シャフトレス印刷機において運転開始直後の徐動運転期間7中あるいは加速運転期間10中に余分な加減速を行うことは、次の理由により、望ましいことではない。即ち、運転開始直後の低速時には印刷胴に紙を挟んでいないためギアも十分にかみ合っておらずバックラッシュが大きく、この状態で加減速を行うと、トルクの向きが変わる度にギアの歯の当たる面が変わりガタガタいう。従って、ギアにとって、歯な十分にかみ合っていないままで加減速させることは望ましいことではない。また、急激な加減速ができないことから、同期合わせのための加速や減速の速度差を十分とれない。更に、加減速に移る傾きもユックリさせる必要があり、モータの速度パターンも大きな丸みを付けたS字クッションにならざるを得ない。
【0028】
原点検出や加減速が必要なのは、下記(1) 〜(4) に示す理由のためである。
(1) 運転開始前に機械軸の位置を知ることができない。
(2) 各機械軸のスタート位置がバラバラである。
(3) 各機械軸のスタートのタイミングが同時である。
(4) 加速レートがどのモータも同じである。
【0029】
機械軸の位置については、アブソリュート・エンコーダを用いることで運転開始前に知ることができる。機械軸のスタート位置については、例えばシャフトレス輪転機では印刷前に版替え操作などで各機械軸を単独で動かす、などの理由により、一般に、シャフトレス機械では運転開始時に機械軸の位置がどこにあるかを予め決めておくことは困難である。
【0030】
機械軸のスタートのタイミングに着目し、モータ毎にスタートのタイミングを変えることで、図4に示したような同期合わせのための余分な加減速を不要にすることができる。つまり、運転開始前の機械軸の位置(位相角度)とモータの加速レート及び到達速度とが予め与えられていれば、スタートのタイミングをモータ毎にずらすことで全ての機械軸が一定速度に達した瞬間に同期が合うようにさせることが可能である。なお、モータ毎に加速クレーを変えることでも余分な加減速動作による位置合わせ動作を不要にできるが、モータ毎にスタートのタイミングを変える方が制御が簡単である。
【0031】
[第1実施例]
図5により、本発明の第1実施例に係るシャフトレス機械の同期制御方法を説明する。
【0032】
本第1実施例では、(1) 機械軸の現在位置の計測、(2) 機械軸間の相対的な位置の計算、(3) スタート時間差の計算、(4) タイミングをずらしたモータのスタートという手順で、シャフトレス機械の同期を合わせる。なお、同期制御対象を図2に示したシャフトレス機械として説明する。また、図3に示したように、機械軸1Aを基準にすると、機械軸1Bをθ1の角度だけ進め、機械軸1Cをθ2の角度だけ遅らせることで、同期が合うものとする。更に、各モータ2A、2B、2Cの加速レートと到達速度は既知で予め与えられているものとして説明する。以下に、個々の手順を示す。
【0033】
(1) 機械軸の現在位置の計測:
インクリメンタリ・エンコーダに代えてアブソリュート・エンコーダを用い、シャフトレス機械の運転開始前に、まず、全ての機械軸1A、1B、1Cの現在位置をアブソリュート・エンコーダで検出する。
【0034】
(2) 機械軸間の相対的な現在位置の計算:
計測した各機械軸1A、1B、1Cの現在位置から、ある機械軸1Aの現在位置を基準(角度:0)にした他の機械軸1B、1Cの相対的な現在位置を計算する。本例では、図3より、機械軸1Bの相対的な現在位置は−θ1なる遅れ角度であり、機械軸1Cの相対的な現在位置は+θ2なる進み角度である。
【0035】
(3) スタート時間差の計算:
次に、計算で得た機械軸間の相対的な現在位置(角度:0、−θ1、+θ2)とモータの既知の加速レート及び到達速度とから、図5に示すように、ある機械軸1Aのモータ2Aのスタート時刻を基準(時刻:0)とし、機械軸1Aに対する他の機械軸1B、1Cの相対的な位置をゼロにすることができる各モータ2B、2Cのスタート時間差−t1、+t2を計算する。
【0036】
図5は各機械A、B、Cのモータ2A、2B、2Cについて、モータ速度と時間の関係を示しており、次のことが判る。
▲1▼モータ2Bのスタート時間差として、斜線を付した部分13の面積S1が遅れ角度θ1に相当するするような時間−t1を計算する。この斜線を付した部分13は、モータ2Bとモータ2Aとの速度パターンの差の積分に相当する。これにより、モータ2Bをモータ2Aより時間差−t1だけ早くスタートさせると、モータ2Aが一定速度に達した瞬間t3に2つの機械軸1A、1B間で同期が合う。
▲2▼同様に、モータ2Cのスタート時間差として、斜線を付した部分14の4積S2が進み角度θ2に相当するするような時間+t2を計算する。この斜線を付した部分14は、モータ2Aとモータ2Cとの速度パターンの差の積分に相当する。これにより、モータ2Cをモータ2Aより時間差+t2だけ遅くスタートさせると、モータ2Cが一定速度に達した瞬間t4に2つの機械軸1A、1C間で同期が合う。
【0037】
(4) タイミングをずらしたモータのスタート:
計算で得た機械軸間のスタート時間差(時間:0、−t1、+t2)から、スタート順番はモータ2B、モータ2A、モータ2Cの順であることが判り、まず、モータ2Bをスタートさせ、その後t1時間後にモータ2Aをスタートさせ、更に、そのt2時間後にモータ2Cをスタートさせる。
【0038】
以上により、最後のモータ2Cを含めて全てのモータが一定速度に達した瞬間に、全ての機械軸1A、1B、1Cの同期が合う。結果として、同期完了までの時間が短縮する。また、モータ2A、2B、2C間でスタートのタイミングをずらすだけで、運転開始直後に余分な加減速を行う必要がないので、ギアがガタガタいうこともなく、モータの速度パターンを大きな丸みを付けたS字クッションにする必要もない。
【0039】
[第1実施例の変形]
図6により、上述した第1実施例に係るシャフトレス機械の同期制御方法の変形例を説明する。
【0040】
本例は、第1実施例(図5)と比べると、機械軸1Bが機械軸1Aに対してθ1の角度遅れていると考える代わりに、機械軸1Bが機械軸1Aに対して360°−θ1の角度進んでいると考える点が異なり、他は同じである。
【0041】
従って、計算で得た機械軸間の相対的な現在位置(角度:0、−θ1、+θ2)とモータの既知の加速レート及び到達速度とから、図6に示すように、ある機械軸1Aのモータ2Aのスタート時刻を基準(時刻:0)とし、機械軸1Aに対する他の機械軸1B、1Cの相対的な位置をゼロにすることができる各モータ2B、2Cのスタート時間差+t1’、+t2を次のように計算する。
▲1▼モータ2Bのスタート時間差として、斜線を付した部分15の面積S1’が進み角度360°−θ1に相当するするような時間+t1’を計算する。斜線を付した部分14は、モータ2Aとモータ2Bとの速度パターンの差の積分に相当する。これにより、モータ2Bをモータ2Aより時間差+t1’だけ遅くスタートさせると、モータ2Aが一定速度に達した瞬間t3’に2つの機械軸1A、1B間で同期が合う。
▲2▼モータ2Cのスタート時間差は実施例1と同じであり、斜線を付した部分14の4積S2が進み角度θ2に相当するするような時間+t2を計算する。この斜線を付した部分14は、モータ2Aとモータ2Cとの速度パターンの差の積分に相当する。これにより、モータ2Cをモータ2Aより時間差+t2だけ遅くスタートさせると、モータ2Cが一定速度に達した瞬間t4に2つの機械軸1A、1C間で同期が合う。
【0042】
計算で得た機械軸間のスタート時間差(時間:0、360°−t1、+t2)から、本例ではスタート順番はモータ2A、モータ2C、モータ2Bの順であることが判り、まず、モータ2Aをスタートさせ、その後t2時間後にモータ2Aをスタートさせ、更に、そのt1’時間後にモータ2Bをスタートさせる。
【0043】
以上により、最後のモータ2Bを含めて全てのモータが一定速度に達した瞬間に、全ての機械軸1A、1B、1Cの同期が合う。結果として、同期完了までの時間が短縮する。また、また、モータ2A、2B、2C間でスタートのタイミングをずらすだけで、運転開始直後に余分な加減速を行う必要がない。
【0044】
ここで、シャフトレス機械には、それを構成する複数の機械のうち、どれか1台を基準機に定め、他の機械の位置(位相角度)は基準機に合わせれば良いものがある。例えば、シャフトレス輪転機では、折機(フォルダ)の初期位置はどこにあってもよく、全ての印刷機(プレス)の位置を折機の位置に合わせることが重要である。また、シャフトレス輪転機では折機を動かすと紙が送られるので、折機の無駄な動きを無くせば紙損が減ることから、印刷前の準備段階で折機をいかに動かさないでおくかが、紙損を減らすポイントである。
【0045】
このようなシャフトレス機械では、各機械軸の位置検出をアブソリュート・エンコーダで行い、運転開始前に折機(基準機)の機械軸の位置を読み取り、印刷機(他の機械)の機械軸の基準位相を折機の機械軸位置からスタートさせると良い。つまり、上述した図5(実施例)や図6(実施例の変形)の機械Aように、折機だけはモータのスタートタイミングをずらすことなく運転する。その際、折機のモータを余分に加減速をしてレジスタ位置に進ませる必要はない。他の印刷機については、上述した図5(実施例)や図6(実施例の変形)の機械B、Cように、モータのスタートタイミングをずらして折機の機械軸位置に合わせる。
【0046】
このように折機だけは、モータのスタートタイミングをずらすことなく、また、モータを余分に加減速をしてレジスタ位置に進ませることなく運転することにより、折機に無駄な動きが生じない。特に、折機はシフトレス輪転機の中心になる機械であり、操作員の作業も折機周辺での作業が一番多い。そのため、折機を無闇に動かさないでおくことは、輪転機システムの信頼性、操作性及び安全性の面でメリットが多い。
【0047】
上述したどれか1台を基準機に定め、基準機についてはモータを余分に加減速をしてレジスタ位置に進ませることなく、また、モータのスタートタイミングをずらすことなくスタートさせ、他の全ての機械についてはモータのスタートタイミングをずらしてスタートさせることで、複数の機械軸の同期合わせを行うという方法は、全ての機械軸を原点検出後にレジスタ位置分だけ移動しなくても良いという利点がある。
【0048】
基準機に他の機械の位置(位相角度)を合わせる上記方法では、他の全ての機械については、それらの基準位置を基準機の機械軸位置からスタートさせれば良く、他の全ての機械のモータのスタートタイミングをずらす他に、運転開始後にモータを余分に加減速することによっても基準機の機械軸位置に合わせることができる。
【0049】
【発明の効果】
第1発明によれば、シャフトレス機械の同期完了までの時間が短くなる。第2発明によれば、基準の機械を無闇に動かさずに同期合わせを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シャフト連結式機械の模式図。
【図2】シャフトレス機械の模式図。
【図3】シャフトレス機械における機械軸の位置合わせを模式的に示す図。
【図4】余分な加減速による機械軸の位置合わせ(第2の関連技術)を示す図。
【図5】本発明の第1実施例に係るシャフトレス機械の同期制御方法を示す模式図。
【図6】第1実施例に係るシャフトレス機械の同期制御方法の変形例を示す模式図。
【符号の説明】
A、B、C 機械
θ1、θ2 機械軸間の相対的な位置(位相角度)差
S1、S2 相対的な位置(位相角度)差に相当する面積
−t1、+t1’ モータ2Aを基準にしたモータ2Bのスタート時間差
+t2 モータ2Aを基準にしたモータ2Cのスタート時間差
1A、1B、1C 機械軸
2、2A、2B、2C モータ
3 シャフト
4A、4B、4C ギア
5A、5B、5C 回転方向
6A、6B、6C 突起
7 運転開始直後の徐動運転期間
8 余分に加速した部分
9 余分に減速した部分
10 運転開始直後の加速運転期間
11 余分に加速した部分
12 余分に減速した部分
13 モータ2Bとモータ2A間の速度差の部分
14 モータ2Aとモータ2C間の速度差の部分
15 モータ2Aとモータ2B間の速度差の部分
【発明の属する技術分野】
本発明はシャフトレスドライブシステムのうち、複数の機械軸の初期位置を短時間で合わせる技術に関し、例えば、新聞やグラビア、ちらし等を印刷するシャフトレス輪転機に代表されるシャフトレス印刷機に適用して有用なものである。機械軸の位置とは回転に関する位置であり、位相角度とも呼ばれる。
【0002】
【従来の技術】
図1は、シャフト連結式機械の模式図である。図1において、複数台(図では3台の)機械A、B、Cの各機械軸1A、1B、1Cがモータ2から1本のシャフト3を介してギア4A、4B、4Cでつながっている。このように、複数の機械A、B、Cを1本のシャフト3で連結してなる機械では、全ての機械軸1A、1B、1Cの位置(位相角度)が常に合い、常に同期している。矢印5A、5B、5Cは回転方向を示す。
【0003】
図2は、シャフトレス機械の模式図である。このシャフトレス機械は、図1からシャフト3を取り去り、複数の機械軸1A、1B、1C毎にモータ3A、3B、3Cを設置して回転駆動するようにしたものである。この場合、各機械軸1A、1B、1Cの位置は、図1のシャフト3に代えて、電気制御で同期される。
【0004】
一般に、シャフトレス機械では、各機械軸1A、1B、1Cの運転開始時点の位置(位相角度)は、図3に突起6A、6B、6Cで代表して示すようにバラバラである。これらの機械軸を同期させるには、電気制御により、各機械軸1A、1B、1Cをそれぞれの初期位置(初期位相角度)に着かせる必要がある。図3に示す例では、機械軸1Aの位置を基準にすると、機械軸1Bは機械軸1Aより角度θ1だけ遅れているので、破線で示すように角度θ1だけ進ませることで初期位置に着かされ、機械軸1Cは機械軸1Aより角度θ2だけ進んでいるので、破線で示すように角度θ2だけ遅らせることで初期位置に着かされる。
【0005】
従来は、「原点セット」と呼ばれる手法により、各機械軸1A、1B、1Cの位置を知るとともに機械軸1B、1Cをそれぞれθ1、θ2の角度分だけ動かし、その場で一旦停止させることで、運転開始前に機械軸1A、1B、1Cを初期位置に着かせている。以下、原点セットを説明する。
【0006】
原点セットでは、各機械軸1A、1B、1Cの位置(位相角度)検出器にインクリメンタリ方式のロータリエンコーダ(以下、インクリメンタリ・エンコーダ)を採用している。インクリメンタリ・エンコーダの出力パルスをカウンタで数えることで位置検出を行うが、その際、各機械軸の機械的原点の位置に近接スイッチ(NLS)を置き、近接スイッチの原点検出信号でカウンタのカウント値をリセットし、その後にパルスが入るに従ってカウント値を加算していく。カウント値は、原点ではゼロで、その後、機械軸の回転量に比例する。言い換えれば、カウント値は、対応する機械軸の原点からの位置を表す。従って、各機械軸1A、1B、1Cの位置は、実際に全てのモータ2A、2B、2Cを低速回転(以下、徐動)させて近接スイッチで原点を検出してからでないと分からない。
【0007】
そのため、運転前に、各機械軸の原点を予め探しておく動作が必要であり、モータの徐動を開始してから、原点を全て探し、機械軸相互間の初期位置を合わせておくまでが、シャフトレス機械を運転する前の準備動作である。単に機械軸間の速度差をゼロにすることだけが目的であれば、このような準備動作は不要である。
【0008】
ここで、図2のシャフトレス機械がシャフトレス輪転機である場合について、初期位置を説明する。便宜上、3台の機械のうち、機械Aは折機(フォルダ)であり、残りの機械B、Cは印刷機(プレス)であるとする。シャフトレス輪転機では、各印刷機B、Cで刷り上がった紙を折機Aで切って折り畳むので、折機と全ての印刷機との間で、機械軸1A、1B、1Cの位置を合わせることが重要である。折機の機械軸1Aと各印刷機の機械軸1B、1Cとの位置関係(位相角度の差)は、機械相互間の配置と紙が通るパス長によって決まる。シャフトレス輪転機の運転前の準備動作では、この所定の位置関係を満足する位置に全ての機械(折機及び印刷機)の機械軸1A、1B、1Cを着かせる必要がある。このように、初期位置とは、複数の機械軸間の所定の位置関係を満足させるのに必要な運転初期の位置である。
【0009】
全ての機械軸の原点をそれぞれの初期位置に合わせることができれば都合良いのだが、実際には、原点検出用の近接スイッチの設置場所に制約があるため、必ずしも原点=初期位置とすることができない。
【0010】
そこで原点セットでは、各機械軸それぞれについて、原点を探してから「レジスタ位置」と呼ばれる位置まで予め回転させ、一旦停止させている。「レジスタ位置」とは、各機械軸の初期位置をそれぞれの原点から数えた位相角度で表現したものであり、複数の機械軸を同期させて運転させる時に必要なスタートラインのようなものである。
【0011】
以上を要するに、原点セットは、次のようにして行われる。
(1) まず、全ての機械軸のモータを同時に徐動させ、近接スイッチに対して原点を通過させることで、各機械軸の原点を検出する。
(2) 原点検出後、各モータをそのまま徐動させ、インクリメンタリ・エンコーダによる位置検出を利用して、各機械軸をレジスタ位置まで進ませる。
(3) 機械軸がレジスタ位置まで進んだ時点で、該当するモータを停止する。
【0012】
上記より判るように、原点セットでは、全ての機械軸1A、1B、1Cがシャフトレス機械の運転開始前にそれぞれのレジスタ位置で静止する。言い換えれば、全てのモータ2A、2B、2Cが各機械軸のレジスタ位置に相当する位置で待機して初めて、シャフトレス機械全体の同期運転ができる準備が整ったことになる。
【0013】
運転が始まると、各機械軸相互の相対的な位置関係(位相角度の差)を速度や負荷が変化しても最初のレジスタ位置の時の位置関係と同じに保ちながら、各機械軸1A、1B、1Cを互いに同じ速度で回転させるように、各モータ2A、2B、2Cを制御する。
【0014】
ここで、「速度や負荷が変化しても機械軸相互間の相対的な位置関係を最初のレジスタ位置に保つ」ことを「同期」していると呼ぶ。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、原点セットでは、全ての機械軸1A、1B、1Cがそれぞれのレジスタ位置で一旦静止することから、シャフトレス機械の運転前の準備動作に時間がかかる。特に、新聞用のシャフトレス輪転機では、最新の記事を少しでも早く報道するために、同期完了までの時間を僅かでも減らしたいという要望がある。
【0016】
本発明は、係る要望に応え、シャフトレス機械の同期完了までの時間を短縮することが可能な同期制御方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
第1発明は上記課題を解決するシャフトレス機械の同期制御方法であり、複数の機械軸の位置とモータの加速レート及び到達速度とに基づいて、各機械軸に配置されたモータのスタートのタイミングをずらすことにより、前記複数の機械軸の同期合わせを行うことを特徴とする。各機械軸の位置はアブソリュート・エンコーダを用いて検出することができる。
【0018】
第2発明は上記課題を解決する別のシャフトレス機械の同期制御方法であり、1つの機械を基準機としてそのモータを余分に加減速をしてレジスタ位置に進ませることなく、また、モータのスタートタイミングをずらすことなく運転すること、他の全ての機械については、その基準位置を前記基準機の機械軸位置からスタートさせ、モータのスタートタイミングをずらすか、あるいは、運転開始後にモータを余分に加減速することにより、前記複数の機械軸の同期合わせを行うことを特徴とする。各機械軸の位置はアブソリュート・エンコーダを用いて検出することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図4〜図6中で、図1〜図3と同じ機能の部分には同じ符号を付している。
【0020】
[関連技術]
本発明の関連技術として、図2に示したシャフトレス機械について、運転前の準備時間を短縮する技術の例を2つ説明する。
【0021】
第1の関連技術は、各モータ2A、2B、2Cを同時にスタートさせ、運転開始後の徐動速度にある中で各機械軸1A、1B、1Cの原点を検出し、かつ、原点検出後に各々のモータ2A、2B、2Cを加減速させて初期位置(初期位相角度)に着かせることで同期を合わせ、全ての機械軸1A、1B、1Cの同期が合ったことを確認してから、各モータ2A、2B、2Cを停止させることなく所定の速度まで増速させるものである。
【0022】
上記第1の関連技術では、徐動運転を初めてから、原点検出を行い、同期合わせ合わせのための加減速を完了するまでが準備時間になる。従って、原点セットのようなモータの一旦停止が不要なので、従来に比べて準備時間が短縮する。しかし、原点検出と加減速とによる同期合わせ動作が必要なため、準備時間があることには変わりない。
【0023】
第2の関連技術は、各機械軸の位置(位相角度)検出器にアブソリュート・エンコーダ(アブソリュート式のロータリエンコーダ)を用いることで、原点検出を不要としたものである。
【0024】
アブソリュート・エンコーダを用いれば、モータを回転させなくても機械軸の位置(位相角度)を検出できる。そこで、第2の関連技術では、運転開始の瞬間に存在している各機械軸1A、1B、1Cの位置をアブソリュート・エンコーダを用いて検出し、検出した位置からレジスタ位置への移動量を予め計算しておく。その後、全てのモータ2A、2B、2Cを同時にスタートさせ、運転開始直後の徐動運転期間(図4(a)の符号7参照)の中で、あるいは運転開始直後の加速運転期間(図4(b)の符号10参照)の中で、先に計算した移動量だけ余分に各モータ2A、2B、2Cを加減速させることで同期を合わせる。全ての機械軸1A、1B、1Cの同期が合ったことを確認してから、各モータ2A、2B、2Cを停止させることなく所定速度まで増速させる。
【0025】
図4(a)(b)はモータ速度と時間の関係を示しており、以下のことが判る。
(1) 図4(a)(b)いずれの例でも、機械軸1Aを基準にして機械軸1B、1Cの各移動量(図3の角度θ1、θ2)を予め計算しておくことで、モータ2Aに余分な加減速をさせることなく、図3に示した動作を実現している。
(2) 図4(a)の例では、運転開始直後の徐動運転期間7中に、モータ2Bを斜線を付した部分7のように余分に加速することで、機械軸1Bを機械軸1Aの位置を基準に角度θ1だけ進ませて初期位置に着かせている。また、モータ2Cを斜線を付した部分9ように余分に減速することで、機械軸1Cを機械軸1Aの位置を基準に角度θ2だけ遅らせて初期位置に着かせている。
(3) 図4(b)の例では、運転開始直後の加速運転期間10中に、モータ2Bを斜線を付した部分11のように余分に加速することで、機械軸1Bを機械軸1Aの位置を基準に角度θ1だけ進ませて初期位置に着かせている。また、モータ2Cを斜線を付した部分12のように余分に減速することで、機械軸1Cを機械軸1Aの位置を基準に角度θ2だけ遅らせて初期位置に着かせている。
(4) 図4(a)(b)中、S1はモータ2Bが余分に加速した部分7、11の面積であり、予め計算した機械軸1Bの移動量(図3の角度θ1)に相当し、S2はモータ2Cが余分に減速した部分9、12の面積であり、予め計算した機械軸1Cの移動量(図3の角度θ2)に相当する。
【0026】
上記第2の関連技術では、原点検出を行わないので、第1の関連技術と比べて運転を始めてから原点検出まで待つ必要がなく、準備時間が更に短縮する。しかし、運転開始直後の徐動運転期間7中あるいは加速運転期間10中に余分な加減速動作が必要なため、準備時間があることには変わりない。
【0027】
なお、シャフトレス印刷機において運転開始直後の徐動運転期間7中あるいは加速運転期間10中に余分な加減速を行うことは、次の理由により、望ましいことではない。即ち、運転開始直後の低速時には印刷胴に紙を挟んでいないためギアも十分にかみ合っておらずバックラッシュが大きく、この状態で加減速を行うと、トルクの向きが変わる度にギアの歯の当たる面が変わりガタガタいう。従って、ギアにとって、歯な十分にかみ合っていないままで加減速させることは望ましいことではない。また、急激な加減速ができないことから、同期合わせのための加速や減速の速度差を十分とれない。更に、加減速に移る傾きもユックリさせる必要があり、モータの速度パターンも大きな丸みを付けたS字クッションにならざるを得ない。
【0028】
原点検出や加減速が必要なのは、下記(1) 〜(4) に示す理由のためである。
(1) 運転開始前に機械軸の位置を知ることができない。
(2) 各機械軸のスタート位置がバラバラである。
(3) 各機械軸のスタートのタイミングが同時である。
(4) 加速レートがどのモータも同じである。
【0029】
機械軸の位置については、アブソリュート・エンコーダを用いることで運転開始前に知ることができる。機械軸のスタート位置については、例えばシャフトレス輪転機では印刷前に版替え操作などで各機械軸を単独で動かす、などの理由により、一般に、シャフトレス機械では運転開始時に機械軸の位置がどこにあるかを予め決めておくことは困難である。
【0030】
機械軸のスタートのタイミングに着目し、モータ毎にスタートのタイミングを変えることで、図4に示したような同期合わせのための余分な加減速を不要にすることができる。つまり、運転開始前の機械軸の位置(位相角度)とモータの加速レート及び到達速度とが予め与えられていれば、スタートのタイミングをモータ毎にずらすことで全ての機械軸が一定速度に達した瞬間に同期が合うようにさせることが可能である。なお、モータ毎に加速クレーを変えることでも余分な加減速動作による位置合わせ動作を不要にできるが、モータ毎にスタートのタイミングを変える方が制御が簡単である。
【0031】
[第1実施例]
図5により、本発明の第1実施例に係るシャフトレス機械の同期制御方法を説明する。
【0032】
本第1実施例では、(1) 機械軸の現在位置の計測、(2) 機械軸間の相対的な位置の計算、(3) スタート時間差の計算、(4) タイミングをずらしたモータのスタートという手順で、シャフトレス機械の同期を合わせる。なお、同期制御対象を図2に示したシャフトレス機械として説明する。また、図3に示したように、機械軸1Aを基準にすると、機械軸1Bをθ1の角度だけ進め、機械軸1Cをθ2の角度だけ遅らせることで、同期が合うものとする。更に、各モータ2A、2B、2Cの加速レートと到達速度は既知で予め与えられているものとして説明する。以下に、個々の手順を示す。
【0033】
(1) 機械軸の現在位置の計測:
インクリメンタリ・エンコーダに代えてアブソリュート・エンコーダを用い、シャフトレス機械の運転開始前に、まず、全ての機械軸1A、1B、1Cの現在位置をアブソリュート・エンコーダで検出する。
【0034】
(2) 機械軸間の相対的な現在位置の計算:
計測した各機械軸1A、1B、1Cの現在位置から、ある機械軸1Aの現在位置を基準(角度:0)にした他の機械軸1B、1Cの相対的な現在位置を計算する。本例では、図3より、機械軸1Bの相対的な現在位置は−θ1なる遅れ角度であり、機械軸1Cの相対的な現在位置は+θ2なる進み角度である。
【0035】
(3) スタート時間差の計算:
次に、計算で得た機械軸間の相対的な現在位置(角度:0、−θ1、+θ2)とモータの既知の加速レート及び到達速度とから、図5に示すように、ある機械軸1Aのモータ2Aのスタート時刻を基準(時刻:0)とし、機械軸1Aに対する他の機械軸1B、1Cの相対的な位置をゼロにすることができる各モータ2B、2Cのスタート時間差−t1、+t2を計算する。
【0036】
図5は各機械A、B、Cのモータ2A、2B、2Cについて、モータ速度と時間の関係を示しており、次のことが判る。
▲1▼モータ2Bのスタート時間差として、斜線を付した部分13の面積S1が遅れ角度θ1に相当するするような時間−t1を計算する。この斜線を付した部分13は、モータ2Bとモータ2Aとの速度パターンの差の積分に相当する。これにより、モータ2Bをモータ2Aより時間差−t1だけ早くスタートさせると、モータ2Aが一定速度に達した瞬間t3に2つの機械軸1A、1B間で同期が合う。
▲2▼同様に、モータ2Cのスタート時間差として、斜線を付した部分14の4積S2が進み角度θ2に相当するするような時間+t2を計算する。この斜線を付した部分14は、モータ2Aとモータ2Cとの速度パターンの差の積分に相当する。これにより、モータ2Cをモータ2Aより時間差+t2だけ遅くスタートさせると、モータ2Cが一定速度に達した瞬間t4に2つの機械軸1A、1C間で同期が合う。
【0037】
(4) タイミングをずらしたモータのスタート:
計算で得た機械軸間のスタート時間差(時間:0、−t1、+t2)から、スタート順番はモータ2B、モータ2A、モータ2Cの順であることが判り、まず、モータ2Bをスタートさせ、その後t1時間後にモータ2Aをスタートさせ、更に、そのt2時間後にモータ2Cをスタートさせる。
【0038】
以上により、最後のモータ2Cを含めて全てのモータが一定速度に達した瞬間に、全ての機械軸1A、1B、1Cの同期が合う。結果として、同期完了までの時間が短縮する。また、モータ2A、2B、2C間でスタートのタイミングをずらすだけで、運転開始直後に余分な加減速を行う必要がないので、ギアがガタガタいうこともなく、モータの速度パターンを大きな丸みを付けたS字クッションにする必要もない。
【0039】
[第1実施例の変形]
図6により、上述した第1実施例に係るシャフトレス機械の同期制御方法の変形例を説明する。
【0040】
本例は、第1実施例(図5)と比べると、機械軸1Bが機械軸1Aに対してθ1の角度遅れていると考える代わりに、機械軸1Bが機械軸1Aに対して360°−θ1の角度進んでいると考える点が異なり、他は同じである。
【0041】
従って、計算で得た機械軸間の相対的な現在位置(角度:0、−θ1、+θ2)とモータの既知の加速レート及び到達速度とから、図6に示すように、ある機械軸1Aのモータ2Aのスタート時刻を基準(時刻:0)とし、機械軸1Aに対する他の機械軸1B、1Cの相対的な位置をゼロにすることができる各モータ2B、2Cのスタート時間差+t1’、+t2を次のように計算する。
▲1▼モータ2Bのスタート時間差として、斜線を付した部分15の面積S1’が進み角度360°−θ1に相当するするような時間+t1’を計算する。斜線を付した部分14は、モータ2Aとモータ2Bとの速度パターンの差の積分に相当する。これにより、モータ2Bをモータ2Aより時間差+t1’だけ遅くスタートさせると、モータ2Aが一定速度に達した瞬間t3’に2つの機械軸1A、1B間で同期が合う。
▲2▼モータ2Cのスタート時間差は実施例1と同じであり、斜線を付した部分14の4積S2が進み角度θ2に相当するするような時間+t2を計算する。この斜線を付した部分14は、モータ2Aとモータ2Cとの速度パターンの差の積分に相当する。これにより、モータ2Cをモータ2Aより時間差+t2だけ遅くスタートさせると、モータ2Cが一定速度に達した瞬間t4に2つの機械軸1A、1C間で同期が合う。
【0042】
計算で得た機械軸間のスタート時間差(時間:0、360°−t1、+t2)から、本例ではスタート順番はモータ2A、モータ2C、モータ2Bの順であることが判り、まず、モータ2Aをスタートさせ、その後t2時間後にモータ2Aをスタートさせ、更に、そのt1’時間後にモータ2Bをスタートさせる。
【0043】
以上により、最後のモータ2Bを含めて全てのモータが一定速度に達した瞬間に、全ての機械軸1A、1B、1Cの同期が合う。結果として、同期完了までの時間が短縮する。また、また、モータ2A、2B、2C間でスタートのタイミングをずらすだけで、運転開始直後に余分な加減速を行う必要がない。
【0044】
ここで、シャフトレス機械には、それを構成する複数の機械のうち、どれか1台を基準機に定め、他の機械の位置(位相角度)は基準機に合わせれば良いものがある。例えば、シャフトレス輪転機では、折機(フォルダ)の初期位置はどこにあってもよく、全ての印刷機(プレス)の位置を折機の位置に合わせることが重要である。また、シャフトレス輪転機では折機を動かすと紙が送られるので、折機の無駄な動きを無くせば紙損が減ることから、印刷前の準備段階で折機をいかに動かさないでおくかが、紙損を減らすポイントである。
【0045】
このようなシャフトレス機械では、各機械軸の位置検出をアブソリュート・エンコーダで行い、運転開始前に折機(基準機)の機械軸の位置を読み取り、印刷機(他の機械)の機械軸の基準位相を折機の機械軸位置からスタートさせると良い。つまり、上述した図5(実施例)や図6(実施例の変形)の機械Aように、折機だけはモータのスタートタイミングをずらすことなく運転する。その際、折機のモータを余分に加減速をしてレジスタ位置に進ませる必要はない。他の印刷機については、上述した図5(実施例)や図6(実施例の変形)の機械B、Cように、モータのスタートタイミングをずらして折機の機械軸位置に合わせる。
【0046】
このように折機だけは、モータのスタートタイミングをずらすことなく、また、モータを余分に加減速をしてレジスタ位置に進ませることなく運転することにより、折機に無駄な動きが生じない。特に、折機はシフトレス輪転機の中心になる機械であり、操作員の作業も折機周辺での作業が一番多い。そのため、折機を無闇に動かさないでおくことは、輪転機システムの信頼性、操作性及び安全性の面でメリットが多い。
【0047】
上述したどれか1台を基準機に定め、基準機についてはモータを余分に加減速をしてレジスタ位置に進ませることなく、また、モータのスタートタイミングをずらすことなくスタートさせ、他の全ての機械についてはモータのスタートタイミングをずらしてスタートさせることで、複数の機械軸の同期合わせを行うという方法は、全ての機械軸を原点検出後にレジスタ位置分だけ移動しなくても良いという利点がある。
【0048】
基準機に他の機械の位置(位相角度)を合わせる上記方法では、他の全ての機械については、それらの基準位置を基準機の機械軸位置からスタートさせれば良く、他の全ての機械のモータのスタートタイミングをずらす他に、運転開始後にモータを余分に加減速することによっても基準機の機械軸位置に合わせることができる。
【0049】
【発明の効果】
第1発明によれば、シャフトレス機械の同期完了までの時間が短くなる。第2発明によれば、基準の機械を無闇に動かさずに同期合わせを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シャフト連結式機械の模式図。
【図2】シャフトレス機械の模式図。
【図3】シャフトレス機械における機械軸の位置合わせを模式的に示す図。
【図4】余分な加減速による機械軸の位置合わせ(第2の関連技術)を示す図。
【図5】本発明の第1実施例に係るシャフトレス機械の同期制御方法を示す模式図。
【図6】第1実施例に係るシャフトレス機械の同期制御方法の変形例を示す模式図。
【符号の説明】
A、B、C 機械
θ1、θ2 機械軸間の相対的な位置(位相角度)差
S1、S2 相対的な位置(位相角度)差に相当する面積
−t1、+t1’ モータ2Aを基準にしたモータ2Bのスタート時間差
+t2 モータ2Aを基準にしたモータ2Cのスタート時間差
1A、1B、1C 機械軸
2、2A、2B、2C モータ
3 シャフト
4A、4B、4C ギア
5A、5B、5C 回転方向
6A、6B、6C 突起
7 運転開始直後の徐動運転期間
8 余分に加速した部分
9 余分に減速した部分
10 運転開始直後の加速運転期間
11 余分に加速した部分
12 余分に減速した部分
13 モータ2Bとモータ2A間の速度差の部分
14 モータ2Aとモータ2C間の速度差の部分
15 モータ2Aとモータ2B間の速度差の部分
Claims (2)
- 複数の機械軸の位置とモータの加速レート及び到達速度とに基づいて、各機械軸に配置されたモータのスタートのタイミングをずらすことにより、前記複数の機械軸の同期合わせを行うことを特徴とするシャフトレス機械の同期制御方法。
- 1つの機械を基準機としてそのモータを余分に加減速をしてレジスタ位置に進ませることなく、また、モータのスタートタイミングをずらすことなく運転すること、他の全ての機械については、その基準位置を前記基準機の機械軸位置からスタートさせ、モータのスタートタイミングをずらすか、あるいは、運転開始後にモータを余分に加減速することにより、前記複数の機械軸の同期合わせを行うことを特徴とするシャフトレス機械の同期制御方法。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2010170408A (ja) * | 2009-01-23 | 2010-08-05 | Fanuc Ltd | 同期制御装置 |
JP2011508312A (ja) * | 2007-12-20 | 2011-03-10 | ジーイー・インテリジェント・プラットフォームズ・インコーポレイテッド | スレーブフォロワの制御信号をマスタソースと同期させる方法およびシステム |
CN104290470A (zh) * | 2014-10-24 | 2015-01-21 | 山东福贞金属包装有限公司 | 彩印机与烘干炉无轴同步装置 |
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2002
- 2002-08-01 JP JP2002224446A patent/JP2004072810A/ja active Pending
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20080805 |