JP2004071274A - 表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】支持体の帯電の影響を適切かつ有効に低減する。
【解決手段】表示装置の構成として、複数の蛍光体4が配列されたアノード基板1と、複数の蛍光体4に対応する複数の電子放出部5が配列されたカソード基板2と、アノード基板1とカソード基板2との間に介装された支持体3とを備えるとともに、カソード基板2上で支持体3を間に挟んで隣り合う2つの電子放出部5の中心距離P2を、アノード基板1上で支持体3を間に挟んで隣り合う2つの蛍光体4の中心距離P1よりも長く設定することにより、支持体3と電子放出部5との間に十分な離間距離L2を確保する。
【選択図】 図1
【解決手段】表示装置の構成として、複数の蛍光体4が配列されたアノード基板1と、複数の蛍光体4に対応する複数の電子放出部5が配列されたカソード基板2と、アノード基板1とカソード基板2との間に介装された支持体3とを備えるとともに、カソード基板2上で支持体3を間に挟んで隣り合う2つの電子放出部5の中心距離P2を、アノード基板1上で支持体3を間に挟んで隣り合う2つの蛍光体4の中心距離P1よりも長く設定することにより、支持体3と電子放出部5との間に十分な離間距離L2を確保する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電界放出によって電子を放出する電子放出部を用いた表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
真空中におかれた金属等の導体あるいは半導体の表面に、ある閾値以上の電界を与えると、トンネル効果によって電子が障壁を通過し、常温時においても真空中に電子が放出される。この現象は電界放出(Field Emission)と呼ばれ、これによって電子を放出するカソードは電界放出型カソード(Field Emission Cathode)と呼ばれている。近年では、ミクロンサイズの電界放出型カソードを、半導体加工技術を駆使して基板上に多数形成したフラットディスプレイ装置(平面型表示装置)としてFED(Field Emission Display)が注目されている。FEDは、電気的に選択(アドレッシング)されたエミッタから電界の集中によって電子を放出させるとともに、この電子をアノード基板側の蛍光体に衝突させて、蛍光体の励起・発光により画像を表示するものである。
【0003】
FEDは、その構造上、カソード基板とアノード基板とを微小なギャップ(一般的には1〜2mm程度)を介して対向状態に配置し、その間のギャップ空間部を真空状態に封止している。そのため、カソード基板やアノード基板が大気圧に耐えられるよう、それらの基板の間にスペーサと呼ばれる支持体を介装し、この支持体で両基板を支持している。支持体は、FEDの画素の位置と干渉しないように、画素位置を避けた位置(通常はブラックマトリクス上)に配置されている。また一般に、支持体は絶縁材料によって構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、支持体を絶縁材料によって構成した場合は、電子ビームの衝突などによって生じた電荷が支持体の表面に帯電し、この影響で支持体の近傍を通過する電子が引っ張られたり反発し合ったりして電子ビームが曲げられ、表示画像に悪影響を与える恐れがある。
【0005】
この対策として、例えば、支持体の表面から電荷を逃がすために、支持体に導電処理を施したり、二次電子放出率を低下させる表面処理を施すなどの対策も考えられている。しかし、この対策では、支持体の部品コストや製造コストが大幅に上昇するとともに、温度変化によって特性上のばらつきが生じたり、支持体に微少電流が流れることで電流損失が生じるなどの難点があり、十分に満足のいく結果が得られない。
【0006】
また、他の対策として、支持体から十分に離れたところを電子ビームが移動(通過)するように、画素ピッチを現状よりも広く設定することが考えられる。しかし、単純に画素ピッチを広く設定すると、その分だけ単位面積当たりの画素数が減少するため、例えば同じ面積で同じ明るさ(輝度)の画像を表示する場合に、一つの蛍光体に対してより高い電流密度をもって電子ビームを衝突させる必要がある。そのため、蛍光面などの面積負荷の増大によって劣化が早まり、動作上のライフ短縮(短命化)につながる恐れがある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、支持体の帯電の影響を適切かつ有効に抑えることができる表示装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る表示装置は、複数の蛍光体が配列されたアノード基板と、複数の蛍光体に対応する複数の電子放出部が配列されたカソード基板と、アノード基板とカソード基板との間に介装された支持体とを備えるとともに、カソード基板上で支持体を間に挟んで隣り合う2つの電子放出部の中心距離を、アノード基板上で支持体を間に挟んで隣り合う2つの蛍光体の中心距離よりも長く設定した構成を採用している。
【0009】
上記構成の表示装置においては、カソード基板上で支持体を間に挟んで隣り合う2つの電子放出部の中心距離を、アノード基板上で支持体を間に挟んで隣り合う2つの蛍光体の中心距離よりも長く設定することにより、カソード基板上で支持体と電子放出部の間に十分な離間距離を確保することが可能となる。これにより、カソード基板の近傍では、支持体から十分に離れたところを電子ビームが移動するようになるため、帯電の影響を受けにくくなる。特にカソード基板の近傍では電子ビームの移動速度や残りの移動距離などの関係で帯電の影響度が増すため、この部分で帯電の影響を抑えることが有効となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の実施形態に係る表示装置(FED)の構成例を示す要部断面図である。図示した表示装置は、大きくは、アノード基板1、カソード基板2および支持体3を備えて構成されている。アノード基板1とカソード基板2は所定のギャップ(例えば、1〜2mm程度のギャップ)を介して対向状態に配置されている。アノード基板1とカソード基板2の間のギャップ空間部は真空状態に封止されている。また、アノード基板1とカソード基板2の間には耐圧用の支持体3が介装されている。
【0012】
アノード基板1は、表示装置の前面パネル(表示パネル)を形成するために、光透過性を有するガラス等の絶縁基板(透明ガラス基板等)をベースに構成されるものである。カソード基板3は、ガラス等の絶縁基板をベースに構成されるものである。支持体3は、電気的な絶縁性を有するもので、例えば、アノード基板1とカソード基板2が対向するギャップ空間部に隔壁を形成するように、全体に薄板の帯状に形成される。この支持体3は、基板1,2の間に一定のギャップ(スペース)を確保する機能も有することからスペーサとも呼ばれる。支持体3の形状は種々の変形例(例えば、柱状など)が考えられるが、本発明は特定の形状・構造に限らず適用可能である。
【0013】
アノード基板1の一面(カソード基板2と対向する側の面)には、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極からなるアノード電極(不図示)とともに、複数の蛍光体4を配列した蛍光面が形成されている。各々の蛍光体4は、一つの画素と1:1の関係で対応するもので、アノード基板1の全体にわたってマトリクス状に配列されている。
【0014】
カソード基板2の一面(アノード基板1と対向する側の面)には、上述した複数の蛍光体4に対して複数の電子放出部5が配列されている。電子放出部5は、電界放出によって電子を放出するものである。この電子放出部5は、例えば、カソード基板2のベース基板上にライン状に形成されたカソード電極(不図示)と、このカソード電極上に積層された二酸化シリコン(SiO2)等の絶縁層51と、この絶縁層51上にライン状でかつカソードラインと交差するように形成されたゲート電極52と、カソードラインとゲートラインの交差部分で複数のゲートホール内に形成されたエミッタ53とによって構成されるもので、一つの画素に複数のエミッタ53が対応している。各々の電子放出部5は、上記蛍光体4と同様に一つの画素と1:1の関係で対応するもので、カソード基板2の全体にわたってマトリクス状に配列されている。
【0015】
ここで、アノード基板1上で隣り合う2つの蛍光体4の中心距離は、支持体3との位置関係によらず、アノード基板1の所定の方向(例えば、垂直方向あるいは水平方向)で常に同じ中心距離P1に設定されている。すなわち、アノード基板1上で支持体3を間に挟んで隣り合う2つの蛍光体4の中心距離と、アノード基板1上で支持体3を間に挟まずに隣り合う2つの蛍光体4の中心距離は、同じ距離(長さ)P1に設定されている。この理由は、アノード基板1においては、表示画像を構成する画素のピッチに合わせて蛍光体4を一定のピッチで配列する必要があるためである。
【0016】
これに対して、カソード基板2上で隣り合う2つの電子放出部5の中心距離は、支持体3との位置関係により、カソード基板2の所定の方向(例えば、垂直方向あるいは水平方向)で異なる距離P2,P3に設定されている。すなわち、カソード基板2上で支持体3を間に挟んで隣り合う2つの電子放出部5の中心距離は距離P2に設定され。カソード基板2上で支持体3を間に挟まずに隣り合う2つの電子放出部5の中心距離は距離P2もしくはそれよりも短い距離P3に設定されている。
【0017】
また、カソード基板2上で支持体3を間に挟んで隣り合う2つの電子放出部5の中心距離P2は、アノード基板1上で支持体3を間に挟んで隣り合う2つの蛍光体4の中心距離P1よりも長く設定されている。これにより、カソード基板1上で支持体3とその両側の蛍光体4との間に確保される離間距離L1に比較して、カソード基板2上で支持体3とその両側の電子放出部5との間に確保される離間距離L2が十分に長いものとなる(L1<L2)。つまり、アノード基板1側では画素ピッチに合わせて蛍光体4の中心距離P1を設定し、カソード基板2側ではそれよりも電子放出部5の中心距離P2を長く設定することで、支持体3から大きく離れた位置に電子放出部5を配置する。
【0018】
また、本実施形態に係る表示装置は、電子放出部5から放出される電子ビームを偏向する偏向手段を備えている。この偏向手段は、カソード基板2上の電子放出部5から放出された電子ビームを、狙いとする蛍光体4に照射するために設けられるものである。すなわち、上述のように蛍光体4と電子放出部5を配列すると、各々の中心位置(ピッチ)にずれが生じるため、両者(4,5)の位置関係に合わせて電子ビームの軌道を可変制御する必要がある。そこで本実施形態においては、偏向手段の一つとして、図2に示すような偏向電極6を備えた構成を採用している。この偏向電極6は、当該偏向電極6に所定の偏向電圧を印加することにより偏向作用を発生させ、ゲート電極52から引き出された電子ビーム7を電界によって偏向(静電偏向)するものである。
【0019】
ちなみに、図2においては、カソード電極8とアノード電極9との間の距離(基板間キャップ)を2mmとして、カソード電極8に0Vのカソード電圧、アノード電極9に8kVのアノード電圧、支持体3の下に位置する偏向電極6に700Vの偏向電圧をそれぞれ印加した場合の等電位線の分布とそこを通過する電子ビーム7の軌道をシミュレーションした結果を示している。このシミュレーション結果から、偏向電圧を印加した偏向電極6に近い領域で、電子ビームがより大きく偏向されることが分かる。したがって、電子放出部5と偏向電極6の位置関係や、偏向電極6に印加する偏向電圧などを調整することにより、電子ビームの偏向量を任意に制御することができる。また、偏向電極6に対して電子放出部5を左右どちら側に配置するかによって、電子ビームの偏向方向を任意に制御することができる。
【0020】
さらに本実施形態に係る表示装置では、カソード基板2上において上述のように配列された複数の電子放出部5を複数個ずつの単位(まとまり)でグループ化し、かつ、各々のグループ間で上記偏向手段(偏向電極6)による電子ビームの偏向量を同一条件で設定した構成を採用している。
【0021】
さらに詳述すると、電子放出部5のグループ化は、例えば2つの支持体3の間に100個の電子放出部5が介在するものとすると、2つの支持体3の間で4つの電子放出部5を一つのまとまりとして計25個のグループを形成することにより行われる。このとき、上記図1に示すように、一つのグループを構成する4つの電子放出部5は、当該4つの電子放出部5に対応する4つの蛍光体4と共通の中心軸Kを有するものとする。そして、この中心軸Kの基準とした線対称な位置に各々の電子放出部5が配置されるものとする。また、一つのグループ内で隣り合う2つの電子放出部5の中心距離は上記P1よりも短い上記P3に設定し、異なるグループ間で隣り合う2つの電子放出部5の中心距離は上記P3よりも長い上記P2に設定するものとする。このとき、グループ間で隣り合う2つの電子放出部5の間(中間位置)に、必要に応じて支持体(3)を配置することも可能である(図1参照)。
【0022】
このように複数の電子放出部5を4つずつの単位でグループ化すると、図3に示すように、各々のグループ内で中心軸Kを間に挟んで隣り合う2つの電子放出部5A,5Bから放出される電子ビームは、偏向電極6に偏向電圧を印加した際に形成される電界により、それぞれビーム径を徐々に拡大しつつ中心軸Kから離れる方向に偏向される。このとき、狙いとする蛍光体4A,4Bは基準軸Kから等距離の位置に存在するため、上記2つの電子放出部5A,5Bから放出された電子ビームの偏向量は互いに等しくなる。
【0023】
また、各々のグループ内で両端に位置する2つの電子放出部5C,5Dから放出される電子ビームについても、偏向電極6に偏向電圧を印加した際に形成される電界により、それぞれビーム径を徐々に拡大しつつ中心軸Kから離れる方向に偏向されるともに、狙いとする蛍光体4C,4Dが基準軸Kから等距離の位置に存在するため、偏向量は互いに等しくなる。このとき、カソード基板2側で1つのグループを構成する4つの電子放出部5A〜5Bの配列ピッチ(図1における距離P3)に比較してアノード基板4での蛍光体の配列ピッチ(図1における距離P1)が広くなっているため、内側2つの電子放出部5A,5Bから放出された電子ビームの偏向量に比較して、外側2つの電子放出部5C,5Dから放出された電子ビームの偏向量が多くなる。また、各々のグループ間では、4つの電子放出部5A〜5Dとこれに対応する4つの蛍光体4A〜4Dの位置関係が等しくなっているため、電子ビームの偏向量が同じになる。よって、各々のグループ間で電子ビームの偏向量が同一条件で設定されることになる。
【0024】
上記構成からなる表示装置においては、カソード基板2上で支持体3を間に挟んで隣り合う2つの電子放出部5の中心距離P2を、アノード基板1上で支持体3を間に挟んで隣り合う2つの蛍光体4の中心距離P1よりも長く設定したことにより、カソード基板2上において支持体3とその両側の電子放出部5との間に長い離間距離L2を確保することができる。これにより、支持体3から十分に離れた位置で電子放出部5により電子の放出が行われる。そのため、カソード基板2側(特に、カソード基板2の近傍)では、支持体3から離れたところを電子ビームが移動するようになる。
【0025】
一方、アノード基板1側では画素のピッチに合わせて蛍光体4を一定のピッチで配列しているため、支持体3とその両側の蛍光体4との間の離間距離L1が、カソード基板1側での離間距離L2に比較して短いものとなる。したがって、アノード基板1側においては、支持体3の両側の蛍光体4を狙って偏向された電子ビームが支持体3の近傍を移動することになる。
【0026】
ここで、表示装置の厚み方向(図1の上下方向)で電子ビームの移動速度を比較すると、アノード基板1の近傍はカソード基板2の近傍よりも電子ビームの移動速度が速くなる。そのため、支持体3の表面に帯電した電荷が電子ビームに作用する時間的な長さは、カソード基板2の近傍がアノード基板1の近傍よりも長くなる。また、表示装置の厚み方向で電子ビームの残りの移動距離を比較すると、カソード基板2の近傍がアノード基板1の近傍よりも電子ビームの残りの移動距離が長くなる。そのため、支持体3の表面に帯電した電荷との電気的な吸引または反発作用により、移動中の電子ビームが同じ量だけ曲げられたとしても、その曲がりの影響(アノード基板1上での電子ビームの位置ずれ)は、カソード基板2の近傍で曲げられた方がアノード基板1の近傍で曲げられるよりも大きく現れる。
【0027】
以上のことから、支持体3の表面に帯電した電荷の影響(電子ビームの曲がり)を抑えるには、カソード基板2上で支持体3から電子放出部5を離して配置することが有効となる。そして、支持体3と電子放出部5との間に十分な離間距離L2を確保するためには、上述のようにカソード基板2上で支持体3を間に挟んで隣り合う2つの電子放出部5の中心距離P2を、アノード基板1上で支持体3を間に挟んで隣り合う2つの蛍光体4の中心距離P1よりも長く設定することが有効な手段となる。
【0028】
このように支持体3と電子放出部5の間に十分な離間距離L2を確保することにより、仮に支持体3の表面が帯電していたとしても、カソード基板2の近傍では電子ビームが帯電の影響を受けにくくなる。そのため、カソード基板2の近傍で、支持体3の帯電に伴う電子ビームの曲がりを有効に抑えることができる。一方、アノード基板1側においては、支持体3の近傍を電子ビームが移動するものの、上述した電子ビームの移動速度と残りの飛行距離の関係で、電子ビームの曲がりやこれによる影響が小さく抑えられる。その結果、支持体3の帯電による電子ビームの曲がりを大幅に低減することが可能となる。また、アノード基板1側で蛍光体4のピッチ(中心距離P1)を広げる必要がないため、蛍光体4の面積負荷が増大することもない。
【0029】
図4は支持体の帯電による電子ビームの曲がりの影響を実験的に調べた結果をグラフ化した図である。図4においては、カソード基板2のカソード電極からアノード基板1のアノード電極までの高さ位置を横軸に示すとともに、電子ビームの偏向量に対する帯電の影響比を左側の縦軸に、帯電の影響で電子ビームが曲げられたときの偏向量を正規化した値を縦軸にそれぞれ示している。
【0030】
図4から明らかなように、カソード基板2の近傍はアノード基板1の近傍よりも帯電の影響が非常に強く現れている。特に、電子ビームの最大偏向量のほぼ8割程度は、カソード電極をゼロ基準とした全高さ寸法(図例では1.2mm)の1/3(0.4mm)以下の領域、すなわちカソード基板1の近傍の領域に起因し、上記最大偏向量のほぼ9割程度は、全高さ寸法の1/2(0.6mm)以下の領域、すなわちカソード基板1寄りの領域に起因している。このことから、アノード基板1上で蛍光体4の配列を変えなくても、カソード基板2上で電子放出部5の配列を変えるだけで、帯電の影響を十分に低減できることが容易に理解できる。
【0031】
また、偏向電極6を用いて電子ビームを偏向する場合に、例えば電子ビームの偏向量に応じて蛍光体4の輝度に差が生じるものとすると、電子ビームの偏向量の差が蛍光体4の輝度のばらつきとなって現れる。そのため、電子ビームの偏向量が幾通りもあると、その分だけ蛍光体4の輝度のばらつきが顕著化し、画面上での画質劣化につながる。これに対して本実施形態においては、カソード基板2上に配列された複数の電子放出部5を4つずつの単位でグループ化し、かつ、各々のグループ間で電子ビームの偏向量を同一条件に設定しているため、電子ビームの偏向量としては、表示装置全体で2通りしか存在しない。すなわち、一つのグループ内に存在する2通りのビーム偏向量がそのまま表示装置全体のビーム偏向量の組み合わせ数となる。さらに、4つの電子放出部5からなる各々のグループはカソード基板2全体に細かく分散して配置されるため、一つのグループ内で電子ビームの偏向量が2通り存在するとしても、これによる蛍光体の輝度差は表示装置全体で平均化(平滑化)される。そのため、電子ビームの偏向量の差が、画面上での蛍光体4の輝度差となって認識されることはない。したがって、電子ビームの偏向量の違いによる、画面上での輝度のばらつきを有効に回避することができる。
【0032】
なお、上記実施形態においては、複数の電子放出部5を4つずつの単位でグループ化するとしたが、このグループ化に際しては、一つのグループを2つまたは3つの電子放出部5で構成してもよいし、5つ以上の電子放出部5で構成してもよい。ただし、一つのグループを構成する電子放出部5の個数が増えると、それにつれて電子ビームの偏向量の組み合わせ数が増えるとともに、カソード基板2上で一つのグループの占める領域が拡大するため、この点を考慮して電子放出部5をグループ化する際の個数を設定することが望ましい。
【0033】
また、上記実施形態においては、電子放出部5から放出された電子ビームを偏向する偏向手段として偏向電極6を例示し、この偏向電極6の電界によって偏向するとしたが、これ以外にも、磁界によって電子ビームを偏向(電磁偏向)するものであってもよい。また、カソード基板2上でカソード電極面を適宜傾けて形成し、このカソード電極面の傾きを利用して、狙いとする蛍光体に向けて電子放出部5から電子ビームを放出させる構成としてもよい。
【0034】
さらに、電子放出部5から放出された電子ビームを偏向する偏向手段の構成としては、図5に示すように、カソード基板2の表面上に絶縁層51、ゲート電極52及びエミッタ53によって凹凸を設け、この凹凸による電界歪みにより偏向作用を発生させるものであってもよい。この場合、カソード基板2表面上の凹凸は、電子放出部5の配列方向(図の左右方向)で絶縁層51とエミッタ53の厚み寸法を段階的に変化させることにより形成される。このような凹凸を形成することにより、各々の電子放出部5でゲート電極52の電界に歪みが生じ、この歪みによって電子ビームが偏向されるようになる。したがって、各々の電子放出部5とこれに対応する蛍光体4との位置関係に合わせてカソード基板2の表面上に凹凸を形成することにより、電子放出部5から放出された電子ビームを凹凸によるゲート電極52の電界歪みによって偏向させ、狙いとする蛍光体に照射させることが可能となる。
【0035】
また、図5に示す偏向手段の構成では、カソード基板2上に配列された複数の電子放出部5を複数個(図例では4つ)ずつの単位でグループ化し、各グループ内で一つの凸部を形成する一方、各グループ間で一つの凹部を形成するように、カソード基板1の表面上に上記凹凸を周期的に設けることにより、各々のグループ間で偏向手段による電子ビームの偏向量を同一条件で設定することも可能である。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、カソード基板上で支持体を間に挟んで隣り合う2つの電子放出部の中心距離を、アノード基板上で支持体を間に挟んで隣り合う2つの蛍光体の中心距離よりも長く設定することにより、蛍光体などの面積負荷を増大させることなく、カソード基板上で支持体と電子放出部の間に十分な離間距離を確保することができる。これにより、帯電の影響度の高いカソード基板の近傍で支持体と電子ビームの間に十分な距離を確保し、帯電の影響を抑えることができる。その結果、支持体の帯電の影響を適切かつ有効に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る表示装置の構成例を示す要部断面図である。
【図2】本発明の実施形態で採用した偏向手段の構成例を示す図である。
【図3】蛍光体と電子放出部の位置関係を示す概略断面図である。
【図4】支持体の帯電による電子ビームの曲がりの影響を実験的に調べた結果をグラフ化した図である。
【図5】偏向手段の他の例を説明する図である。
【符号の説明】
1…アノード基板、2…カソード基板、3…支持体、4…蛍光体、5…電子放出部、6…偏向電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、電界放出によって電子を放出する電子放出部を用いた表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
真空中におかれた金属等の導体あるいは半導体の表面に、ある閾値以上の電界を与えると、トンネル効果によって電子が障壁を通過し、常温時においても真空中に電子が放出される。この現象は電界放出(Field Emission)と呼ばれ、これによって電子を放出するカソードは電界放出型カソード(Field Emission Cathode)と呼ばれている。近年では、ミクロンサイズの電界放出型カソードを、半導体加工技術を駆使して基板上に多数形成したフラットディスプレイ装置(平面型表示装置)としてFED(Field Emission Display)が注目されている。FEDは、電気的に選択(アドレッシング)されたエミッタから電界の集中によって電子を放出させるとともに、この電子をアノード基板側の蛍光体に衝突させて、蛍光体の励起・発光により画像を表示するものである。
【0003】
FEDは、その構造上、カソード基板とアノード基板とを微小なギャップ(一般的には1〜2mm程度)を介して対向状態に配置し、その間のギャップ空間部を真空状態に封止している。そのため、カソード基板やアノード基板が大気圧に耐えられるよう、それらの基板の間にスペーサと呼ばれる支持体を介装し、この支持体で両基板を支持している。支持体は、FEDの画素の位置と干渉しないように、画素位置を避けた位置(通常はブラックマトリクス上)に配置されている。また一般に、支持体は絶縁材料によって構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、支持体を絶縁材料によって構成した場合は、電子ビームの衝突などによって生じた電荷が支持体の表面に帯電し、この影響で支持体の近傍を通過する電子が引っ張られたり反発し合ったりして電子ビームが曲げられ、表示画像に悪影響を与える恐れがある。
【0005】
この対策として、例えば、支持体の表面から電荷を逃がすために、支持体に導電処理を施したり、二次電子放出率を低下させる表面処理を施すなどの対策も考えられている。しかし、この対策では、支持体の部品コストや製造コストが大幅に上昇するとともに、温度変化によって特性上のばらつきが生じたり、支持体に微少電流が流れることで電流損失が生じるなどの難点があり、十分に満足のいく結果が得られない。
【0006】
また、他の対策として、支持体から十分に離れたところを電子ビームが移動(通過)するように、画素ピッチを現状よりも広く設定することが考えられる。しかし、単純に画素ピッチを広く設定すると、その分だけ単位面積当たりの画素数が減少するため、例えば同じ面積で同じ明るさ(輝度)の画像を表示する場合に、一つの蛍光体に対してより高い電流密度をもって電子ビームを衝突させる必要がある。そのため、蛍光面などの面積負荷の増大によって劣化が早まり、動作上のライフ短縮(短命化)につながる恐れがある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、支持体の帯電の影響を適切かつ有効に抑えることができる表示装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る表示装置は、複数の蛍光体が配列されたアノード基板と、複数の蛍光体に対応する複数の電子放出部が配列されたカソード基板と、アノード基板とカソード基板との間に介装された支持体とを備えるとともに、カソード基板上で支持体を間に挟んで隣り合う2つの電子放出部の中心距離を、アノード基板上で支持体を間に挟んで隣り合う2つの蛍光体の中心距離よりも長く設定した構成を採用している。
【0009】
上記構成の表示装置においては、カソード基板上で支持体を間に挟んで隣り合う2つの電子放出部の中心距離を、アノード基板上で支持体を間に挟んで隣り合う2つの蛍光体の中心距離よりも長く設定することにより、カソード基板上で支持体と電子放出部の間に十分な離間距離を確保することが可能となる。これにより、カソード基板の近傍では、支持体から十分に離れたところを電子ビームが移動するようになるため、帯電の影響を受けにくくなる。特にカソード基板の近傍では電子ビームの移動速度や残りの移動距離などの関係で帯電の影響度が増すため、この部分で帯電の影響を抑えることが有効となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の実施形態に係る表示装置(FED)の構成例を示す要部断面図である。図示した表示装置は、大きくは、アノード基板1、カソード基板2および支持体3を備えて構成されている。アノード基板1とカソード基板2は所定のギャップ(例えば、1〜2mm程度のギャップ)を介して対向状態に配置されている。アノード基板1とカソード基板2の間のギャップ空間部は真空状態に封止されている。また、アノード基板1とカソード基板2の間には耐圧用の支持体3が介装されている。
【0012】
アノード基板1は、表示装置の前面パネル(表示パネル)を形成するために、光透過性を有するガラス等の絶縁基板(透明ガラス基板等)をベースに構成されるものである。カソード基板3は、ガラス等の絶縁基板をベースに構成されるものである。支持体3は、電気的な絶縁性を有するもので、例えば、アノード基板1とカソード基板2が対向するギャップ空間部に隔壁を形成するように、全体に薄板の帯状に形成される。この支持体3は、基板1,2の間に一定のギャップ(スペース)を確保する機能も有することからスペーサとも呼ばれる。支持体3の形状は種々の変形例(例えば、柱状など)が考えられるが、本発明は特定の形状・構造に限らず適用可能である。
【0013】
アノード基板1の一面(カソード基板2と対向する側の面)には、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極からなるアノード電極(不図示)とともに、複数の蛍光体4を配列した蛍光面が形成されている。各々の蛍光体4は、一つの画素と1:1の関係で対応するもので、アノード基板1の全体にわたってマトリクス状に配列されている。
【0014】
カソード基板2の一面(アノード基板1と対向する側の面)には、上述した複数の蛍光体4に対して複数の電子放出部5が配列されている。電子放出部5は、電界放出によって電子を放出するものである。この電子放出部5は、例えば、カソード基板2のベース基板上にライン状に形成されたカソード電極(不図示)と、このカソード電極上に積層された二酸化シリコン(SiO2)等の絶縁層51と、この絶縁層51上にライン状でかつカソードラインと交差するように形成されたゲート電極52と、カソードラインとゲートラインの交差部分で複数のゲートホール内に形成されたエミッタ53とによって構成されるもので、一つの画素に複数のエミッタ53が対応している。各々の電子放出部5は、上記蛍光体4と同様に一つの画素と1:1の関係で対応するもので、カソード基板2の全体にわたってマトリクス状に配列されている。
【0015】
ここで、アノード基板1上で隣り合う2つの蛍光体4の中心距離は、支持体3との位置関係によらず、アノード基板1の所定の方向(例えば、垂直方向あるいは水平方向)で常に同じ中心距離P1に設定されている。すなわち、アノード基板1上で支持体3を間に挟んで隣り合う2つの蛍光体4の中心距離と、アノード基板1上で支持体3を間に挟まずに隣り合う2つの蛍光体4の中心距離は、同じ距離(長さ)P1に設定されている。この理由は、アノード基板1においては、表示画像を構成する画素のピッチに合わせて蛍光体4を一定のピッチで配列する必要があるためである。
【0016】
これに対して、カソード基板2上で隣り合う2つの電子放出部5の中心距離は、支持体3との位置関係により、カソード基板2の所定の方向(例えば、垂直方向あるいは水平方向)で異なる距離P2,P3に設定されている。すなわち、カソード基板2上で支持体3を間に挟んで隣り合う2つの電子放出部5の中心距離は距離P2に設定され。カソード基板2上で支持体3を間に挟まずに隣り合う2つの電子放出部5の中心距離は距離P2もしくはそれよりも短い距離P3に設定されている。
【0017】
また、カソード基板2上で支持体3を間に挟んで隣り合う2つの電子放出部5の中心距離P2は、アノード基板1上で支持体3を間に挟んで隣り合う2つの蛍光体4の中心距離P1よりも長く設定されている。これにより、カソード基板1上で支持体3とその両側の蛍光体4との間に確保される離間距離L1に比較して、カソード基板2上で支持体3とその両側の電子放出部5との間に確保される離間距離L2が十分に長いものとなる(L1<L2)。つまり、アノード基板1側では画素ピッチに合わせて蛍光体4の中心距離P1を設定し、カソード基板2側ではそれよりも電子放出部5の中心距離P2を長く設定することで、支持体3から大きく離れた位置に電子放出部5を配置する。
【0018】
また、本実施形態に係る表示装置は、電子放出部5から放出される電子ビームを偏向する偏向手段を備えている。この偏向手段は、カソード基板2上の電子放出部5から放出された電子ビームを、狙いとする蛍光体4に照射するために設けられるものである。すなわち、上述のように蛍光体4と電子放出部5を配列すると、各々の中心位置(ピッチ)にずれが生じるため、両者(4,5)の位置関係に合わせて電子ビームの軌道を可変制御する必要がある。そこで本実施形態においては、偏向手段の一つとして、図2に示すような偏向電極6を備えた構成を採用している。この偏向電極6は、当該偏向電極6に所定の偏向電圧を印加することにより偏向作用を発生させ、ゲート電極52から引き出された電子ビーム7を電界によって偏向(静電偏向)するものである。
【0019】
ちなみに、図2においては、カソード電極8とアノード電極9との間の距離(基板間キャップ)を2mmとして、カソード電極8に0Vのカソード電圧、アノード電極9に8kVのアノード電圧、支持体3の下に位置する偏向電極6に700Vの偏向電圧をそれぞれ印加した場合の等電位線の分布とそこを通過する電子ビーム7の軌道をシミュレーションした結果を示している。このシミュレーション結果から、偏向電圧を印加した偏向電極6に近い領域で、電子ビームがより大きく偏向されることが分かる。したがって、電子放出部5と偏向電極6の位置関係や、偏向電極6に印加する偏向電圧などを調整することにより、電子ビームの偏向量を任意に制御することができる。また、偏向電極6に対して電子放出部5を左右どちら側に配置するかによって、電子ビームの偏向方向を任意に制御することができる。
【0020】
さらに本実施形態に係る表示装置では、カソード基板2上において上述のように配列された複数の電子放出部5を複数個ずつの単位(まとまり)でグループ化し、かつ、各々のグループ間で上記偏向手段(偏向電極6)による電子ビームの偏向量を同一条件で設定した構成を採用している。
【0021】
さらに詳述すると、電子放出部5のグループ化は、例えば2つの支持体3の間に100個の電子放出部5が介在するものとすると、2つの支持体3の間で4つの電子放出部5を一つのまとまりとして計25個のグループを形成することにより行われる。このとき、上記図1に示すように、一つのグループを構成する4つの電子放出部5は、当該4つの電子放出部5に対応する4つの蛍光体4と共通の中心軸Kを有するものとする。そして、この中心軸Kの基準とした線対称な位置に各々の電子放出部5が配置されるものとする。また、一つのグループ内で隣り合う2つの電子放出部5の中心距離は上記P1よりも短い上記P3に設定し、異なるグループ間で隣り合う2つの電子放出部5の中心距離は上記P3よりも長い上記P2に設定するものとする。このとき、グループ間で隣り合う2つの電子放出部5の間(中間位置)に、必要に応じて支持体(3)を配置することも可能である(図1参照)。
【0022】
このように複数の電子放出部5を4つずつの単位でグループ化すると、図3に示すように、各々のグループ内で中心軸Kを間に挟んで隣り合う2つの電子放出部5A,5Bから放出される電子ビームは、偏向電極6に偏向電圧を印加した際に形成される電界により、それぞれビーム径を徐々に拡大しつつ中心軸Kから離れる方向に偏向される。このとき、狙いとする蛍光体4A,4Bは基準軸Kから等距離の位置に存在するため、上記2つの電子放出部5A,5Bから放出された電子ビームの偏向量は互いに等しくなる。
【0023】
また、各々のグループ内で両端に位置する2つの電子放出部5C,5Dから放出される電子ビームについても、偏向電極6に偏向電圧を印加した際に形成される電界により、それぞれビーム径を徐々に拡大しつつ中心軸Kから離れる方向に偏向されるともに、狙いとする蛍光体4C,4Dが基準軸Kから等距離の位置に存在するため、偏向量は互いに等しくなる。このとき、カソード基板2側で1つのグループを構成する4つの電子放出部5A〜5Bの配列ピッチ(図1における距離P3)に比較してアノード基板4での蛍光体の配列ピッチ(図1における距離P1)が広くなっているため、内側2つの電子放出部5A,5Bから放出された電子ビームの偏向量に比較して、外側2つの電子放出部5C,5Dから放出された電子ビームの偏向量が多くなる。また、各々のグループ間では、4つの電子放出部5A〜5Dとこれに対応する4つの蛍光体4A〜4Dの位置関係が等しくなっているため、電子ビームの偏向量が同じになる。よって、各々のグループ間で電子ビームの偏向量が同一条件で設定されることになる。
【0024】
上記構成からなる表示装置においては、カソード基板2上で支持体3を間に挟んで隣り合う2つの電子放出部5の中心距離P2を、アノード基板1上で支持体3を間に挟んで隣り合う2つの蛍光体4の中心距離P1よりも長く設定したことにより、カソード基板2上において支持体3とその両側の電子放出部5との間に長い離間距離L2を確保することができる。これにより、支持体3から十分に離れた位置で電子放出部5により電子の放出が行われる。そのため、カソード基板2側(特に、カソード基板2の近傍)では、支持体3から離れたところを電子ビームが移動するようになる。
【0025】
一方、アノード基板1側では画素のピッチに合わせて蛍光体4を一定のピッチで配列しているため、支持体3とその両側の蛍光体4との間の離間距離L1が、カソード基板1側での離間距離L2に比較して短いものとなる。したがって、アノード基板1側においては、支持体3の両側の蛍光体4を狙って偏向された電子ビームが支持体3の近傍を移動することになる。
【0026】
ここで、表示装置の厚み方向(図1の上下方向)で電子ビームの移動速度を比較すると、アノード基板1の近傍はカソード基板2の近傍よりも電子ビームの移動速度が速くなる。そのため、支持体3の表面に帯電した電荷が電子ビームに作用する時間的な長さは、カソード基板2の近傍がアノード基板1の近傍よりも長くなる。また、表示装置の厚み方向で電子ビームの残りの移動距離を比較すると、カソード基板2の近傍がアノード基板1の近傍よりも電子ビームの残りの移動距離が長くなる。そのため、支持体3の表面に帯電した電荷との電気的な吸引または反発作用により、移動中の電子ビームが同じ量だけ曲げられたとしても、その曲がりの影響(アノード基板1上での電子ビームの位置ずれ)は、カソード基板2の近傍で曲げられた方がアノード基板1の近傍で曲げられるよりも大きく現れる。
【0027】
以上のことから、支持体3の表面に帯電した電荷の影響(電子ビームの曲がり)を抑えるには、カソード基板2上で支持体3から電子放出部5を離して配置することが有効となる。そして、支持体3と電子放出部5との間に十分な離間距離L2を確保するためには、上述のようにカソード基板2上で支持体3を間に挟んで隣り合う2つの電子放出部5の中心距離P2を、アノード基板1上で支持体3を間に挟んで隣り合う2つの蛍光体4の中心距離P1よりも長く設定することが有効な手段となる。
【0028】
このように支持体3と電子放出部5の間に十分な離間距離L2を確保することにより、仮に支持体3の表面が帯電していたとしても、カソード基板2の近傍では電子ビームが帯電の影響を受けにくくなる。そのため、カソード基板2の近傍で、支持体3の帯電に伴う電子ビームの曲がりを有効に抑えることができる。一方、アノード基板1側においては、支持体3の近傍を電子ビームが移動するものの、上述した電子ビームの移動速度と残りの飛行距離の関係で、電子ビームの曲がりやこれによる影響が小さく抑えられる。その結果、支持体3の帯電による電子ビームの曲がりを大幅に低減することが可能となる。また、アノード基板1側で蛍光体4のピッチ(中心距離P1)を広げる必要がないため、蛍光体4の面積負荷が増大することもない。
【0029】
図4は支持体の帯電による電子ビームの曲がりの影響を実験的に調べた結果をグラフ化した図である。図4においては、カソード基板2のカソード電極からアノード基板1のアノード電極までの高さ位置を横軸に示すとともに、電子ビームの偏向量に対する帯電の影響比を左側の縦軸に、帯電の影響で電子ビームが曲げられたときの偏向量を正規化した値を縦軸にそれぞれ示している。
【0030】
図4から明らかなように、カソード基板2の近傍はアノード基板1の近傍よりも帯電の影響が非常に強く現れている。特に、電子ビームの最大偏向量のほぼ8割程度は、カソード電極をゼロ基準とした全高さ寸法(図例では1.2mm)の1/3(0.4mm)以下の領域、すなわちカソード基板1の近傍の領域に起因し、上記最大偏向量のほぼ9割程度は、全高さ寸法の1/2(0.6mm)以下の領域、すなわちカソード基板1寄りの領域に起因している。このことから、アノード基板1上で蛍光体4の配列を変えなくても、カソード基板2上で電子放出部5の配列を変えるだけで、帯電の影響を十分に低減できることが容易に理解できる。
【0031】
また、偏向電極6を用いて電子ビームを偏向する場合に、例えば電子ビームの偏向量に応じて蛍光体4の輝度に差が生じるものとすると、電子ビームの偏向量の差が蛍光体4の輝度のばらつきとなって現れる。そのため、電子ビームの偏向量が幾通りもあると、その分だけ蛍光体4の輝度のばらつきが顕著化し、画面上での画質劣化につながる。これに対して本実施形態においては、カソード基板2上に配列された複数の電子放出部5を4つずつの単位でグループ化し、かつ、各々のグループ間で電子ビームの偏向量を同一条件に設定しているため、電子ビームの偏向量としては、表示装置全体で2通りしか存在しない。すなわち、一つのグループ内に存在する2通りのビーム偏向量がそのまま表示装置全体のビーム偏向量の組み合わせ数となる。さらに、4つの電子放出部5からなる各々のグループはカソード基板2全体に細かく分散して配置されるため、一つのグループ内で電子ビームの偏向量が2通り存在するとしても、これによる蛍光体の輝度差は表示装置全体で平均化(平滑化)される。そのため、電子ビームの偏向量の差が、画面上での蛍光体4の輝度差となって認識されることはない。したがって、電子ビームの偏向量の違いによる、画面上での輝度のばらつきを有効に回避することができる。
【0032】
なお、上記実施形態においては、複数の電子放出部5を4つずつの単位でグループ化するとしたが、このグループ化に際しては、一つのグループを2つまたは3つの電子放出部5で構成してもよいし、5つ以上の電子放出部5で構成してもよい。ただし、一つのグループを構成する電子放出部5の個数が増えると、それにつれて電子ビームの偏向量の組み合わせ数が増えるとともに、カソード基板2上で一つのグループの占める領域が拡大するため、この点を考慮して電子放出部5をグループ化する際の個数を設定することが望ましい。
【0033】
また、上記実施形態においては、電子放出部5から放出された電子ビームを偏向する偏向手段として偏向電極6を例示し、この偏向電極6の電界によって偏向するとしたが、これ以外にも、磁界によって電子ビームを偏向(電磁偏向)するものであってもよい。また、カソード基板2上でカソード電極面を適宜傾けて形成し、このカソード電極面の傾きを利用して、狙いとする蛍光体に向けて電子放出部5から電子ビームを放出させる構成としてもよい。
【0034】
さらに、電子放出部5から放出された電子ビームを偏向する偏向手段の構成としては、図5に示すように、カソード基板2の表面上に絶縁層51、ゲート電極52及びエミッタ53によって凹凸を設け、この凹凸による電界歪みにより偏向作用を発生させるものであってもよい。この場合、カソード基板2表面上の凹凸は、電子放出部5の配列方向(図の左右方向)で絶縁層51とエミッタ53の厚み寸法を段階的に変化させることにより形成される。このような凹凸を形成することにより、各々の電子放出部5でゲート電極52の電界に歪みが生じ、この歪みによって電子ビームが偏向されるようになる。したがって、各々の電子放出部5とこれに対応する蛍光体4との位置関係に合わせてカソード基板2の表面上に凹凸を形成することにより、電子放出部5から放出された電子ビームを凹凸によるゲート電極52の電界歪みによって偏向させ、狙いとする蛍光体に照射させることが可能となる。
【0035】
また、図5に示す偏向手段の構成では、カソード基板2上に配列された複数の電子放出部5を複数個(図例では4つ)ずつの単位でグループ化し、各グループ内で一つの凸部を形成する一方、各グループ間で一つの凹部を形成するように、カソード基板1の表面上に上記凹凸を周期的に設けることにより、各々のグループ間で偏向手段による電子ビームの偏向量を同一条件で設定することも可能である。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、カソード基板上で支持体を間に挟んで隣り合う2つの電子放出部の中心距離を、アノード基板上で支持体を間に挟んで隣り合う2つの蛍光体の中心距離よりも長く設定することにより、蛍光体などの面積負荷を増大させることなく、カソード基板上で支持体と電子放出部の間に十分な離間距離を確保することができる。これにより、帯電の影響度の高いカソード基板の近傍で支持体と電子ビームの間に十分な距離を確保し、帯電の影響を抑えることができる。その結果、支持体の帯電の影響を適切かつ有効に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る表示装置の構成例を示す要部断面図である。
【図2】本発明の実施形態で採用した偏向手段の構成例を示す図である。
【図3】蛍光体と電子放出部の位置関係を示す概略断面図である。
【図4】支持体の帯電による電子ビームの曲がりの影響を実験的に調べた結果をグラフ化した図である。
【図5】偏向手段の他の例を説明する図である。
【符号の説明】
1…アノード基板、2…カソード基板、3…支持体、4…蛍光体、5…電子放出部、6…偏向電極
Claims (7)
- 複数の蛍光体が配列されたアノード基板と、
前記複数の蛍光体に対応する複数の電子放出部が配列されたカソード基板と、
前記アノード基板と前記カソード基板との間に介装された支持体と
を備えるとともに、
前記カソード基板上で前記支持体を間に挟んで隣り合う2つの電子放出部の中心距離を、前記アノード基板上で前記支持体を間に挟んで隣り合う2つの蛍光体の中心距離よりも長く設定してなる
ことを特徴とする表示装置。 - 前記電子放出部から放出される電子ビームを偏向する偏向手段を有することを特徴とする請求項1記載の表示装置。
- 前記電子放出部から放出される電子ビームを偏向する偏向手段として、静電的な偏向電極を設け、前記偏向電極に偏向電圧を印加することにより偏向作用を発生させることを特徴とする請求項2記載の表示装置。
- 前記電子放出部から放出される電子ビームを偏向する偏向手段として、前記カソード基板表面上に凹凸を設け、前記凹凸による電界歪により偏向作用を発生させることを特徴とする請求項2記載の表示装置。
- 前記カソード基板上において、前記複数の電子放出部を複数個ずつの単位でグループ化し、かつ、各々のグループ間で前記偏向手段による電子ビームの偏向量を同一条件で設定してなることを特徴とする請求項2記載の表示装置。
- 前記カソード基板上において、前記複数の電子放出部を複数個ずつの単位でグループ化し、かつ、各々のグループ間で前記偏向手段による電子ビームの偏向量を同一条件で設定してなることを特徴とする請求項3記載の表示装置。
- 前記カソード基板上において、前記複数の電子放出部を複数個ずつの単位でグループ化し、かつ、各々のグループ間で前記偏向手段による電子ビームの偏向量を同一条件で設定してなることを特徴とする請求項4記載の表示装置。
Priority Applications (1)
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JP2002226980A JP2004071274A (ja) | 2002-08-05 | 2002-08-05 | 表示装置 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006127781A (ja) * | 2004-10-26 | 2006-05-18 | Canon Inc | 画像形成装置 |
-
2002
- 2002-08-05 JP JP2002226980A patent/JP2004071274A/ja not_active Withdrawn
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