次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態である表示パネルの一部を切り欠いた斜視図である。図1を参照すると、本実施形態の表示パネルは、第1の基板であるリアプレート1と、このリアプレート1と対向して配置された第2の基板であるフェースプレート2と、これらプレートの周縁部に沿って設けられた側壁4とからなる気密容器よりなり、その内部は真空雰囲気とされている。側壁4とリアプレート1およびフェースプレート2の周縁部との接合部は、それぞれフリットガラスなどによって封止されている。リアプレート1とフェースプレート2は、一定の間隔を維持するように板状のスペーサ3によって支持されている。
リアプレート1のフェースプレート2が面する側には、電子放出素子(冷陰極素子)8が形成された電子源基板9が固定されている。電子放出素子8は、電子放出部を有する導電性薄膜が一対の素子電極の間に接続された表面伝導型電子放出素子であって、N×M個配置されている。このN×M個の電子放出素子8をM本の行方向配線5とN本の列方向配線6でマトリクス配線することでマルチ電子ビーム源を構成している。
行方向配線5は列方向配線6より上に位置しており、行方向配線5と列方向配線6は後述の電極間絶縁層により絶縁されている。行方向配線5および列方向配線6には、銀ペーストや各種導電材料を用いることができる。これら行方向配線5および列方向配線6は、例えばスクリーン印刷法による塗布や、めっき法を用いて金属を析出させることで形成することができる。この他、フォトリソグラフィ法を用いて配線を形成することもできる。
各行方向配線5には、それぞれ引出端子Dx1〜Dxmを介して走査信号が印加される。各列方向配線6には、それぞれ引出端子Dy1〜Dynを介して変調信号(画像信号)が印加される。走査信号は、−4Vから−10V程度のパルス信号、変調信号は、+4Vから+10V程度のパルス信号である。
フェースプレート2の下面(リアプレート1と対向する面)には、電子放出素子8から放出された電子によって励起されて発光する蛍光膜10と導電性部材よりなるメタルバック(加速電極)11が設けられている。
本実施形態の表示パネルはカラー表示パネルであるので、蛍光膜10は、赤、緑、青の3原色の蛍光体で塗り分けられている。各色の蛍光体は、例えばストライプ状に塗り分けられており、各色の蛍光体の間には黒色の導電体(ブラックストライプ)が設けられている。
メタルバック11は、電子放出素子8から放出される電子を加速させるための電極であって、高圧端子Hvを介して高電圧が印加される。すなわち、メタルバック11は、リアプレート1側の行方向配線5に比して高電位に規定される。
スペーサ3は行方向配線5に沿って設けられており、その両端部が、電子源基板9に固定されたブロック12により支持されている。スペーサ3の長辺の一辺は行方向配線5に当接され、他辺はフェースプレート2のメタルバック11に当接されている。スペーサ3は、表示パネルに耐大気圧性を持たせるために、通常、等間隔で複数設けられる。
図2Aは、図1に示した表示パネルをスペーサ3の長手方向と直交する方向に切断した場合の断面図である。以下、図1および図2Aを参照してスペーサ3を詳細に説明する。
スペーサ3は、リアプレート1側の行方向配線5および列方向配線6とフェースプレート2側のメタルバック11との間に印加される高電圧に耐えるだけの絶縁性を有し、かつ、その表面への帯電を防止する程度の導電性を有する。具体的には、スペーサ3は、後述の図3Aに記載のように、絶縁性材料で構成された基体13と、その表面を被覆する高抵抗膜14とから構成されている。
基体13の構成材料としては、例えば石英ガラス、Naなどの不純物含有量を減少したガラス、ソーダライムガラス、アルミナに代表されるセラミックスなどが挙げられる。
高抵抗膜14には、高電位側となるメタルバック11に印加される加速電圧Vaを高抵抗膜14の抵抗値で除した電流が流れ、これによってスペーサ3表面への帯電が防止される。この高抵抗膜14の抵抗値の望ましい範囲は、帯電および消費電力から決定される。帯電防止の観点からすると、高抵抗膜14のシート抵抗は1014Ω/□以下であり、より好ましいシート抵抗は1012Ω/□以下、最も好ましいシート抵抗は1011Ω/□以下である。高抵抗膜14のシート抵抗の下限は、スペーサ3の形状およびスペーサ3間に印加される電圧により左右されるが、消費電力を抑制するためには、105Ω/□以上であることが好ましく、107Ω/□以上であることがより好ましい。
高抵抗膜14の構成材料としては、例えば金属酸化物を用いることができる。金属酸化物の中でも、クロム、ニッケル、銅の酸化物が好ましい。その理由は、これらの酸化物は二次電子放出効率が比較的に小さく、電子放出素子8から放出された電子がスペーサ3に当たっても帯電しにくいことにある。金属酸化物以外としては、二次電子放出効率が小さな炭素を高抵抗膜14の構成材料として用いることができる。特に、非晶質カーボンは高抵抗であるため、これを用いれば、適切なスペーサ3の表面抵抗を得やすくなる。
本実施形態では、スペーサに近接する電子放出素子8については、スペーサ3の表面電位の影響を考慮し、放出される電子ビームが正しい位置に到達するように素子電極が形成されている。図3Aは、電子放出素子8から放出される電子ビームの軌道を示す模式図、図3Bは、電子放出素子8を構成する素子電極の模式図である。
図3Bに示すように、電子放出素子8は、一対の素子電極81a、81bと、これら素子電極81a、81b間に接続された、電子放出部82を有する導電性薄膜とからなる。素子電極81aは、行方向配線5と接続され、マイナス電位とされる。素子電極81bは、列方向配線6と接続され、プラス電位とされる。
電子放出素子8のうち、スペーサ3に近接する電子放出素子8aの素子電極81a、81bは、列方向配線6に平行な線L1に対して傾きを有する。具体的には、素子電極81a、81b間のギャップの長さ方向と線L1とのなす角度θが所定の角度となるように形成されている。このように構成することで、スペーサ3に近接する電子放出素子8から放出された電子ビームの軌道は、図3Aの破線で示した電子ビーム軌道18aのようになる。すなわち、スペーサ3に近接する電子放出素子8においては、電子放出部82から放出された電子は、放出直後はスペーサ3から遠ざかるように飛翔し、その後、フェースプレート2に近付くに連れてスペーサ3に近付くように飛翔し、最終的に所定の照射位置19に到達する。
一方、スペーサ3から離れた位置にある電子放出素子8bの素子電極81a、81bは、その電極間のギャップの長さ方向が線L1と平行になるように形成されている。このように構成した電子放出素子8bから放出された電子ビームは、図3Aの破線で示した電子ビーム軌道18bのようにスペーサ3とほぼ平行な軌道を描き、最終的に所定の照射位置19に到達する。
以下、本実施形態の表示パネルの特徴である、スペーサ3に近接する電子放出素子の素子電極の構成と放出される電子ビームの軌道との関係について詳細に説明する。
(1)初速度ベクトルと電子ビームの軌道の関係:
電子放出素子では、図3Bに示されるように、電子はマイナス電位の素子電極81aからプラス電位の素子電極81bに向かってある初速度をもって放出される。スペーサ3に近接する電子放出素子8aでは、一対の素子電極81a、81bは、列方向配線6に平行な線L1に対して角度θの傾きを持つように形成されている。よって、電子は、スペーサ3から遠ざかる成分(Y方向成分)を持った初速度ベクトルV1で電子放出素子8aから放出される。このため、電子放出部82近傍では、電子ビームはスペーサ3から遠ざかるような軌道をとる。なお、スペーサ3から離れた位置にある電子放出素子8bから放出される電子の初速度ベクトルV2は、スペーサ3から遠ざかる成分を含まないので、スペーサ3と平行な軌道をとる。
ここで、角度θを持つ素子電極による電子ビームの軌道補正について説明する。
第1の状態(以下、状態A)として、全ての電子放出素子8を、角度θを持たないような構成とした場合、すなわち全ての電子放出素子から放出される電子の初速度ベクトルを等しくした場合の電子ビーム軌道を図4Aに、その初速度ベクトルを図4Bにそれぞれ示す。この状態Aでは、図4Bに示すように、スペーサ3からの距離に関係なく、全ての電子放出素子8から放出される電子の初速度ベクトルはV2とされる。このため、図4Aに示すように、スペーサ3が作り出す電位分布20の影響によって、スペーサ3に近接する電子放出素子から放出された電子ビームの最終到達位置が所定の照射位置19からΔSだけスペーサ3寄りにずれることになる。
第2の状態(以下、状態B)として、図3Aおよび図3Bに示した構成(一部の電子放出素子の一対の素子電極間のギャップの長手方向が、列配線に対して角度θ傾く構成)からスペーサ3を取り除いた場合の電子ビーム軌道を図5Aに、その初速度ベクトルを図5Bにそれぞれ示す。この状態Bでは、図5Bに示すように、電子放出素子8aの素子電極81a、81bは、列方向配線6に対して角度θの傾きを持つように形成されているので、電子放出素子8aから放出された電子は、Y方向成分(図3Aおよび図3Bに示したスペーサ3から遠ざかる成分)を持った初速度ベクトルV1で放出される。このため、電子放出素子8aから放出された電子ビームは、図5Aに示すように、電位分布20がフラットであるにもかかわらず、その最終到達位置は所定の照射位置19からΔYだけずれる。
図6に、角度θと電子の到達点との関係を模式的に示す。図6において、矢印Aは、素子電極が列方向配線6に対して角度θの傾きを持つ電子放出素子8a(一対の素子電極間のギャップの長手方向が、列配線に対して角度θ傾く電子放出素子)から放出された電子の軌道を示し、矢印Bは、素子電極ギャップの長さ方向が列方向配線6と平行である電子放出素子8bから放出された電子の軌道を示す。矢印A、Bの始点が電子の放出点、終点が電子の到達点である。図6は、ちょうどフェースプレート2の上方からリアプレート1の電子基板9上に形成された電子放出素子を透かして見た図に相当する。Lは曲進量と呼ばれるものであって、その値は初速度ベクトルの大きさに依存する。各電子放出素子の初速度ベクトルの大きさが等しい場合は、曲進量Lもほぼ等しくなる。すなわち、素子間の印加電圧が等しければ、曲進量Lもほぼ等しいことになる。したがって、矢印A、Bの長さは同じである。このとき、電子の到達点の所望の位置からのY方向におけるずれΔYは、
ΔY=L×sinθ
で与えられる。また、電子の到達点の所望の位置からのX方向におけるずれΔXは、
ΔX=L×(1-cosθ)
で与えられる。θが十分小さければ、ΔYに対してΔXは十分小さい。例えば、θ=10°である場合は、ΔX/ΔYは、0.09以下である。
電子の初速度のスペーサ3から遠ざかる成分はθの関数で与えられる。図7に、角度θと電子ビームが到達する位置のスペーサ3からの距離との関係を示す。縦軸は電子ビーム到達位置であり、横軸は「sinθ」である。図7から分かるように、θが大きくなるほど電子ビーム軌道はスペーサ3から遠ざかることになる。
(2)スペーサ3の底面近傍における電子ビームの軌道:
スペーサ表面には正帯電が生じる場合がある。この結果、スペーサ表面の電位が上昇し、図3Aに示したように、上に凸の等電位線20(フェースプレート側に向けて凸の等電位線20)を生じ、電子ビームはスペーサ3に近付くように飛翔する。また、スペーサと配線との接触状態によっても、上述のようなフェースプレート側に向けて凸の等電位線が形成される場合がある。これについて、以下に説明する。
図16Aは、高抵抗膜で被覆された板状のスペーサを第1の基板(電子源基板)の配線に沿って介在させたときに、高抵抗膜と配線とが意図しない部分接触になった場合のスペーサ表面の電位分布を示した図であり、図16Bは図16Aの等価回路図である。
第1の基板側の、配線と高抵抗膜の接触部分をA点、非接触部分をB点とする。また、第2の基板側のメタルバック11とスペーサ3の高抵抗膜が接触した部分の、A点と対向する部分をC点、B点と対向する部分をD点とし、A点とC点との間の抵抗をR1とする。また、A点とB点との間の抵抗をR2とする。非接触部であるB点では、接触部であるA点との間の抵抗であるR2によって生じる電圧降下分だけA点より電位が持ち上がる。これによって、B点近傍では、上述のようなフェースプレート側に向けて凸の等電位線が形成される。
また、行配線と列配線の間に介在させる絶縁層の形状によって、スペーサと行配線とが部分接触する場合がある。これについて、図2を用いて説明する。
図2Bは、図1に示した表示パネルをスペーサ3の長手方向に切断した場合の断面図、図2Cはスペーサ3の高抵抗膜14と行方向配線5の接触部および非接触部の説明図である。以下、図1および図2A〜図2Cを参照してスペーサ3と行方向配線5との圧接状態について詳細に説明する。
スペーサ3は、リアプレート1とフェースプレート2間に挟み込まれており、その表面を被覆している高抵抗膜14は、リアプレート1側の行方向配線5と、フェースプレート2側のメタルバック11とに圧接され、それぞれの圧接部では電気的な接続がなされている。図2Bに示すように、行方向配線5は、列方向配線6と交差するように形成されている。絶縁層7の形状によっては、行方向配線5の表面は、交差部が他の部分に比して列方向配線6の厚み分だけフェースプレート2側に突出した状態になってため、高抵抗膜14は、行方向配線5の表面の突出した部分でのみ圧接される。このため、高抵抗膜14と行方向配線5は、図2Cに示されるように、行方向配線5の列方向配線6との交差部である接触部15においてのみ電気的接続がなされ、それ以外の部分は非接触部16となっているため、電気的接続はなされていない。このときのスペーサ3表面におけるリアプレート1近傍の等電位線17を模式的に図2Bに太線で示してある。
図2Bに示した等電位線17から分かるように、非接触部16に対応するスペーサの部分にも高抵抗膜14が存在するため、非接触部16近傍の電位が持ち上がる。これは、前述の図16で説明したように、メタルバック11から接触部15へと流れる電流の経路のうち、非接触部16を介する電流経路の抵抗値の方が、非接触部16を介さない電流経路(例えば、接触部15の直上部分からの電流経路)の抵抗値より大きいため、この増加抵抗値による電圧降下分だけ電位が持ち上がるために生じる。よって、この場合も、上述のようにフェースプレート側に凸の等電位線が形成される。
また、この構成においては、先の図16の場合と異なり、非接触部16は等間隔(制御された間隔)に存在するので、電子放出素子との相対的な位置関係にも規則性がある。つまり、列方向配線6は等間隔であることから、接触部15と非接触部16は行方向配線5に沿って等間隔で形成されている。電子放出素子8は、行方向配線5と列方向配線6で区切られた領域に形成されており、スペーサ3に近接する電子放出素子8は全て非接触部16に近接する位置にある。各非接触部16に近接する電子放出素子8から放出される電子ビームは、全て非接触部16におけるスペーサ3の表面電位の影響を等しく受ける。
このような理由により、スペーサ近傍では、フェースプレートに向けて凸の等電位線が形成される場合があり、電子放出素子から放出される電子はスペーサに近づく向きに偏向される。
また、電子ビームのスペーサ3に近付く成分は、高抵抗膜14と行方向配線5の接触状態、具体的には、図2Cに示した接触部15の面積(接触面積)Sの関数によっても決まる。図8に、接触面積(当接面積)Sと電子ビームが到達する位置のスペーサ3からの距離との関係を示す。縦軸は電子ビーム到達位置であり、横軸は接触面積Sである。図8から分かるように、接触面積Sが大きくなるほど電子ビームが到達する位置はスペーサから遠ざかることになる。
高抵抗膜14と行方向配線5の接触状態は、接触面積Sの他にも様々なパラメータで表すことができる。例えば、図2Cに示した接触部15の周囲長、行方向配線5の幅方向における非接触部16の長さGy、行方向配線5の長さ方向における隣接する接触部15間の距離Gxなどの関数として、高抵抗膜14と行方向配線5の接触状態を表すこともできる。接触部15の周囲長が小さくなればなるほど、また、Gx、Gyが大きくなればなるほど、電子ビームが到達する位置はスペーサ3に近付くことになる。
以上の説明から、角度θや、高抵抗膜14と行方向配線5の接触状態(例えば接触面積S)という、スペーサ3自体とは関係しない別個の独立なパラメータによって電子ビームの到達位置を制御できることが分かる。
図9に、角度θとスペーサが行方向配線に当接された面積(接触面積)Sとの関係を示す。縦軸はθ、横軸は接触面積Sである。図9に示した例は、電子ビームが所定の照射位置19に到達する場合(図3A参照)の、θと接触部面積Sの関係を示す曲線を表したものである。図9から分かるように、電子ビームが所定の照射位置19に到達する条件(ずれの無い条件)は複数存在する。例えば、A点の条件でも、B点の条件でも、電子ビームが所定の照射位置19に到達する条件を満たす。B点の条件は、A点の条件に比してθが大きく、接触面積Sが小さい。B点の条件で設計する場合、例えば行方向配線5を曲率を有する凸型断面形状とする。このように行方向配線5のスペーサ3が当接される面を平面ではなく、曲面とすることで、接触面積Sを小さくすることができる。
実際の設計では、例えば静電界計算と電子ビーム軌道のシミュレーションから、所定の照射位置19に到達する角度θと接触面積Sを決定する。この他、実測データに基づいてそのような条件を決定することも可能である。
以上説明してきた通り、本実施形態の表示パネルによれば、スペーサ3自体の構成によらず、高抵抗膜14と行方向配線5の接触状態や素子電極の傾きである角度θを制御することで、所望の電子ビーム到達位置を達成することができる。このため、同一構成のスペーサ3を、様々な画像表示装置に使用することが可能となる。例えば、高精細化のために画素ピッチを変更したり、高輝度化のために加速電圧を高くしたりする、といった仕様の変更が行われた場合でも、スペーサ3自体は同一のものを用い、高抵抗膜14と行方向配線5の接触状態や素子電極の傾きである角度θの変更を行うことで対応することができる。従って、生産性を著しく向上させ、コストの大幅な削減を図ることができる。
以上説明した本実施形態の表示パネルにつき、図9に示したA点、B点での条件を満たす面積Sと角度θの具体的な値を表1に示す。この例では、スペーサ3の厚さを300μm、スペーサ3の高さを2.4mm、行方向配線5間の間隔を920μm、行方向配線5の幅(短手方向の長さ)を690μm、電子放出素子8の電子放出部から行方向配線5の上面までの高さを75μm、メタルバック11への印加電圧を15kV、行方向配線5と列方向配線6の間への印加電圧を14Vとしている。条件Aは、図9に示したA点での条件を満たすものであり、θは「6.1°」、接触面積Sは「30625μm2」である。条件Bは、図9に示したB点での条件を満たすものであり、θは「9.5°」、接触面積Sは「22500μm2」である。条件A、Bのいずれにおいても、X方向の電子ビームの位置のずれ(ΔX)は認識されず(検知限界以下)、良好な画像を表示することができた。
次に、上述した本実施形態の表示パネルの特徴を別の観点で説明する。図10Aに、図4Aおよび図4Bに示した状態Aにおける電子ビームの軌道を示し、図10Bに、図5Aおよび図5Bに示した状態Bにおける電子ビームの軌道を示す。これら図10Aおよび図10B、また後述の他の実施形態に対応する図11から図15では、スペーサと素子電極の配置および電子ビーム到達位置に限って図示しており、他の部分は便宜上、省略している(他の構成については、図3から図5参照)。
図10Aにおいて、矢印Aは、スペーサ3と近接する電子放出素子8から放出された電子の軌道を示し、矢印Bは、スペーサ3から離れた位置にある電子放出素子8から放出された電子の軌道を示す。矢印A、Bの始点が電子の放出点、終点が電子の到達点である。スペーサ3と近接する電子放出素子8から放出された電子の到達点は、ΔSだけスペーサ3寄りにずれを生じる。このずれΔSは、スペーサ3の存在によってもたらされたずれである。
一方、図10Bにおいて、矢印Aは、角度θを有する素子電極からなる電子放出素子8aから放出された電子の軌道を示し、矢印Bは、角度θを持たない電子放出素子8bから放出された電子の軌道を示す。矢印A、Bの始点が電子の放出点、終点が電子の到達点である。電子放出素子8aから放出された電子の到達点は、スペーサとは無関係に、角度θを持たない電子放出素子8bに比してΔYだけずれる。このずれΔYは、スペーサの存在で生じたずれΔSとは逆方向のずれである。よって、図10Bに示した構成を用いることで、スペーサの存在で生じたずれΔSを、角度θによって生じるずれΔYで補償することが可能である。すなわち、図10Bに示した状態Bにおいて、破線で示すスペーサ3を設けた場合は、そのスペーサ3と近接する電子放出素子8aから放出された電子は、所定の照射位置に到達することになり、ずれのない画像表示を実現することができる。
以上の説明では、ずれΔSは、スペーサの当接状態に応じて生じるずれであるとしたが、実際は、これに限ることは無く、何らかの理由でスペーサに関係するビームずれが起こった場合には、電子放出素子の初速度ベクトルを設計することで、そのビームずれを補償することができる。
以下に説明する本発明の第2から第6の実施形態においては、上述した観点に基づき、ΔSの制御および起因については言及せず、スペーサに起因するずれΔSを補償するための、スペーサと素子電極配置の関係、素子印加電圧、および電子ビーム到達位置について、主に状態A、Bを対比させて説明する。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態の表示パネルについて説明する。本実施形態の表示パネルは、スペーサから遠ざかる方向に生じるずれΔSを補償するものであって、その基本構成は、上述した第1の実施形態のものと同様である。
図11Aに、スペーサから遠ざかる方向に生じるずれΔSを示し(状態A:スペーサによってずれが生じる状態)、図11Bに、そのずれΔSとは逆の方向にずれΔYを生じる電子放出素子を模式的に示す(状態B)。図11Aにおいて、矢印Aは、スペーサ3と近接する電子放出素子8から放出された電子の軌道を示し、矢印Bは、スペーサ3から離れた位置にある電子放出素子8から放出された電子の軌道を示す。矢印A、Bの始点が電子の放出点、終点が電子の到達点である。スペーサ3と近接する電子放出素子8から放出された電子の到達点は、スペーサ3から遠ざかる方向にΔSだけずれを生じる。このずれΔSは、スペーサ3の存在によってもたらされたずれである。尚、このようなずれを生じる一例としては、スペーサの電子源側の端面の全面に低抵抗な膜(スペーサ電極)を有するスペーサ等、図3Aに示す、フェースプレート側に凸の等電位線とは逆向きの、リアプレート(電子源基板)側に凸の等電位線を形成するスペーサの場合である。
一方、図11Bにおいて、矢印Aは、角度θを有する素子電極からなる電子放出素子8aから放出された電子の軌道を示し、矢印Bは、角度θを持たない電子放出素子8bから放出された電子の軌道を示す。この場合の、電子放出素子8aを構成する素子電極の傾き(角度θ)は、図10Bに示した電子放出素子8aを構成する素子電極の傾き(角度θ)とはちょうど反対となる方向の傾きである。矢印A、Bの始点が電子の放出点、終点が電子の到達点である。電子放出素子8aから放出された電子の到達点は、スペーサとは無関係に、角度θを持たない電子放出素子8bに比してΔYだけずれる。このずれΔYは、スペーサの存在で生じたずれΔSとは逆方向のずれである。よって、図11Bに示した構成を用いることで、スペーサの存在で生じたずれΔSをずれΔYで補償することが可能である。すなわち、図11Bに示した構成において、破線で示すようなスペーサ3を設けた場合、このスペーサ3と近接する電子放出素子8aから放出された電子は、所定の照射位置に到達することになる。このように、本実施形態の表示パネルによれば、電子放出素子から放出される電子の放出方向を、スペーサからの距離(スペーサによる影響度)に応じて設定することで、スペーサ起因の電子ビームのずれを補正することができ、ずれのない画像表示を実現することができる。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態の表示パネルについて説明する。本実施形態の表示パネルは、スペーサの両側に近接する電子放出素子のうち、一方の電子放出素子から放出された電子の到達点がΔS1だけスペーサ寄りにずれ、他方の電子放出素子から放出された電子の到達点がΔS2(≠ΔS1)だけスペーサ寄りにずれる場合に、両ずれΔS1、ΔS2を補償するものであって、その基本構成は、上述した第1の実施形態のものと同様である。
図12Aに、ずれΔS1、ΔS2を示し(状態A)、図12Bに、そのずれΔS1、ΔS2とは逆の方向にずれΔY1、ΔY2を生じる電子放出素子を模式的に示す(状態B)。図12Aにおいて、矢印A1は、スペーサ3の一方の側に近接する電子放出素子8から放出された電子の軌道を示し、矢印A2は、スペーサ3の他方の側に近接する電子放出素子8から放出された電子の軌道を示し、矢印Bは、スペーサ3から離れた位置にある電子放出素子8から放出された電子の軌道を示す。矢印A1、A2、Bの始点が電子の放出点、終点が電子の到達点である。スペーサ3の一方の側に近接する電子放出素子8から放出された電子の到達点は、スペーサ3寄りにΔS1だけずれを生じる。スペーサ3の他方の側に近接する電子放出素子8から放出された電子の到達点は、スペーサ3寄りにΔS2(>ΔS1)だけずれを生じる。これらΔS1、ΔS2は、いずれもスペーサ3の存在によってもたらされたずれである。
一方、図12Bにおいて、矢印B1は、素子電極ギャップの長手方向と列方向配線とのなす角度がθ1である電子放出素子80aから放出された電子の軌道を示す。矢印B2は、素子電極ギャップの長手方向と列方向配線とのなす角度がθ2(>θ1)である電子放出素子80bから放出された電子の軌道を示す。矢印Bは、角度θを持たない電子放出素子8bから放出された電子の軌道を示す。この場合の、電子放出素子80aの傾き(角度θ1)および電子放出素子80bの傾き(角度θ2)は、図10Bに示した電子放出素子8aの傾き(角度θ)と同じ方向の傾きである。矢印B1、B2、Bの始点が電子の放出点、終点が電子の到達点である。
電子放出素子80aから放出された電子の到達点は、スペーサとは無関係に、角度θを持たない電子放出素子8bに比してΔY1だけずれる。このΔY1は、スペーサの存在で生じたずれΔS1とは逆方向のずれである。また、電子放出素子80bから放出された電子の到達点は、スペーサとは無関係に、角度θを持たない電子放出素子8bに比してΔY2だけずれる。このΔY2は、スペーサの存在で生じたずれΔS2とは逆方向のずれである。よって、図12Bに示した構成を用いることで、スペーサの存在で生じたずれΔS1、ΔS2をずれΔY1、ΔY2で補償することが可能である。すなわち、図12Bに示した構成において、破線で示すようなスペーサ3を設けた場合、このスペーサ3と近接する電子放出素子80a、80bから放出された電子は、所定の照射位置に到達することになる。このように、本実施形態の表示パネルによれば、スペーサに起因する電子ビームのずれがスペーサ壁面に対し非対称であっても、電子放出素子から放出される電子の放出方向を、スペーサからの距離(スペーサによる影響度)に応じて設定することで、電子ビームの軌道を補正することができ、ずれのない画像表示を実現することができる。
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態の表示パネルについて説明する。本実施形態の表示パネルは、スペーサに最も近い第1の電子放出素子から放出された電子の到達点がΔS1だけスペーサ寄りにずれ、次にスペーサに近い第2の電子放出素子から放出された電子の到達点がΔS2(<ΔS1)だけスペーサ寄りにずれる場合に、両ずれΔS1、ΔS2を補償するものであって、その基本構成は、上述した第1の実施形態のものと同様である。
図13Aに、ずれΔS1、ΔS2を示し(状態A)、図13Bに、そのずれΔS1、ΔS2とは逆の方向にずれΔY1、ΔY2を生じる電子放出素子を模式的に示す(状態B)。図13Aにおいて、矢印A1は、スペーサ3に最も近い電子放出素子90aから放出された電子の軌道を示し、矢印A2は、次にスペーサ3に近い電子放出素子90bから放出された電子の軌道を示す。電子放出素子90a、90bは、いずれも素子電極ギャップの長手方向が列方向配線に対して平行な素子である。矢印A1、A2の始点が電子の放出点、終点が電子の到達点である。電子放出素子90aから放出された電子の到達点は、スペーサ3寄りにΔS1だけずれを生じる。電子放出素子90bから放出された電子の到達点は、スペーサ3寄りにΔS2だけずれを生じる。これらΔS1、ΔS2は、いずれもスペーサ3の存在によってもたらされたずれである。
一方、図13Bにおいて、矢印B1は、素子電極ギャップの長手方向と列方向配線とのなす角度がθ1である電子放出素子91aから放出された電子の軌道を示す。矢印B2は、素子電極ギャップの長手方向と列方向配線とのなす角度がθ2(<θ1)である電子放出素子91bから放出された電子の軌道を示す。この場合の、電子放出素子91aの傾き(角度θ1)および電子放出素子91bの傾き(角度θ2)は、図10Bに示した電子放出素子8aの傾き(角度θ)と同じ方向の傾きである。矢印B1、B2の始点が電子の放出点、終点が電子の到達点である。
電子放出素子91aから放出された電子の到達点は、スペーサとは無関係にΔY1だけずれる。このΔY1は、スペーサの存在で生じたずれΔS1とは逆方向のずれである。また、電子放出素子91bから放出された電子の到達点は、スペーサとは無関係にΔY2だけずれる。このΔY2は、スペーサの存在で生じたずれΔS2とは逆方向のずれである。よって、図13Bに示した構成を用いることで、スペーサの存在で生じたずれΔS1、ΔS2をずれΔY1、ΔY2で補償することが可能である。すなわち、図13Bに示した構成において、破線で示すようなスペーサ3を設けた場合、このスペーサ3に最も近い電子放出素子91aから放出された電子は、所定の照射位置に到達することになる。同様に、次にスペーサ3に近い電子放出素子91bから放出された電子も、所定の照射位置に到達することになる。このように、本実施形態の表示パネルによれば、スペーサ起因の電子ビームのずれがスペーサに最も近い第1の電子放出素子および次にスペーサに近い第2の電子放出素子に及ぶ場合であっても、電子放出素子から放出される電子の放出方向を、スペーサからの距離(スペーサによる影響度)に応じて段階的に設定することで、電子ビームの軌道を補正することができ、ずれのない画像表示を実現することができる。
このように、本発明においては、スペーサの影響が、第一近接素子、第二近接素子のように、スペーサ近傍の素子におよぶ場合は、これらをまとめてスペーサに近接する素子と考えて、発明を適用してもよい。
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態の表示パネルについて説明する。本実施形態の表示パネルは、スペーサに近接する電子放出素子から放出された電子の到達点がΔSだけスペーサ寄りにずれる場合に、角度θを持たせることに加えて、初速度ベクトルの大きさを変えることで、ΔSとともにX方向における変移量ΔXをも補償するものであって、その基本構成は、上述した第1の実施形態のものと同様である。
図14Aに、ずれΔSを示し(状態A)、図14Bに、そのずれΔSとは逆の方向にずれΔYを生じる電子放出素子を模式的に示す(状態B)。図14Aにおいて、矢印Aは、スペーサ3に近接する電子放出素子8から放出された電子の軌道を示す。矢印Aの始点が電子の放出点、終点が電子の到達点である。スペーサ3に近接する電子放出素子8から放出された電子の到達点は、スペーサ3寄りにΔSだけずれを生じる。このΔSは、スペーサ3の存在によってもたらされたずれである。また、状態Aでは、ずれΔSに加えて、X方向における変移量ΔXが存在する。
一方、図14Bにおいて、矢印Bは、素子電極ギャップの長手方向と列方向配線とのなす角度がθである電子放出素子92から放出された電子の軌道を示す。この場合の、電子放出素子92の傾き(角度θ)は、図10Bに示した電子放出素子8aの傾き(角度θ)と同じ方向の傾きである。矢印Bの始点が電子の放出点、終点が電子の到達点である。なお、矢印Bの長さが図14Aに示した矢印Aに比べて長くなっているが、これは、電子放出素子92から放出される電子の初速度ベクトルの大きさが、図14Aに示した電子放出素子8よりも大きいことを表している。
電子放出素子92から放出された電子の到達点は、スペーサとは無関係にΔYだけずれる。このΔYは、スペーサの存在で生じたずれΔSとは逆方向のずれである。よって、図14Bに示した構成を用いることで、スペーサの存在で生じたずれΔS1をずれΔYで補償することが可能である。また、初速度ベクトルの大きさを大きくするために、電子放出素子92に印加する電圧を図14Aに示した電子放出素子8に印加される電圧より大きくしている。これにより、X方向における変移量ΔXを補償することが可能である。このように、図14Bに示した構成を用いることで、スペーサの存在で生じたずれΔSおよびΔXを補償することが可能である。すなわち、図14Bに示した構成において、破線で示すようなスペーサ3を設けた場合、このスペーサ3に近接する電子放出素子92から放出された電子は、所定の照射位置に到達することになる。このように、本実施形態の表示パネルによれば、電子放出素子から放出される電子の放出方向および放出速度を、スペーサからの距離(スペーサによる影響度)に応じて設定することで、スペーサ起因の電子ビームのずれΔSとともにX方向における変移量ΔXをも補償することができ、ずれのない画像表示を実現することができる。
なお、実際は、電子ビームの到達点を所望の位置に補正できるよう、角度θと印加電圧が適宜設計される。本実施形態は、高精細化、或いはΔSが大きい場合に特に有効である。
(参考例)
本発明の参考例の表示パネルについて説明する。本参考例の表示パネルは、円柱状のスペーサ3に最も近い第1の電子放出素子から放出された電子の到達点がΔS1だけスペーサ寄りにずれ、次にスペーサ3に近い第2の電子放出素子から放出された電子の到達点がΔS2(<ΔS1)だけスペーサ寄りにずれる場合に、両ずれΔS1、ΔS2を補償するものであって、その基本構成は、上述した第1の実施形態のものと同様である。
図15Aに、ずれΔS1、ΔS2を示し(状態A)、図15Bに、そのずれΔS1、ΔS2とは逆の方向にずれΔY1、ΔY2を生じる電子放出素子を模式的に示す(状態B)。図15Aにおいて、矢印A1は、スペーサ3に最も近い電子放出素子90aから放出された電子の軌道を示し、矢印A2は、次にスペーサ3に近い電子放出素子90bから放出された電子の軌道を示す。電子放出素子90a、90bは、いずれも素子電極ギャップの長手方向が列方向配線に対して平行な素子である。矢印A1、A2の始点が電子の放出点、終点が電子の到達点である。電子放出素子90aから放出された電子の到達点は、スペーサ3寄りにΔS1だけずれを生じる。電子放出素子90bから放出された電子の到達点は、スペーサ3寄りにΔS2だけずれを生じる。これらΔS1、ΔS2は、いずれもスペーサ3の存在によってもたらされたずれである。
一方、図15Bにおいて、矢印B1は、素子電極ギャップの長手方向と列方向配線とのなす角度がθ1である電子放出素子91aから放出された電子の軌道を示す。矢印B2は、素子電極ギャップの長さ方向と行方向配線とのなす角度がθ2(<θ1)である電子放出素子91bから放出された電子の軌道を示す。この場合の、電子放出素子91aの傾き(角度θ1)および電子放出素子91bの傾き(角度θ2)は、図10Bに示した電子放出素子8aの傾き(角度θ)と同じ方向の傾きである。矢印B1、B2の始点が電子の放出点、終点が電子の到達点である。
電子放出素子91aから放出された電子の到達点は、スペーサとは無関係にΔY1だけずれる。このΔY1は、スペーサの存在で生じたずれΔS1とは逆方向のずれである。また、電子放出素子91bから放出された電子の到達点は、スペーサとは無関係にΔY2だけずれる。このΔY2は、スペーサの存在で生じたずれΔS2とは逆方向のずれである。よって、図15Bに示した構成を用いることで、スペーサの存在で生じたずれΔS1、ΔS2をずれΔY1、ΔY2で補償することが可能である。すなわち、図15Bに示した構成において、破線で示すような円柱状のスペーサ3を設けた場合、このスペーサ3に最も近い電子放出素子91aから放出された電子は、所定の照射位置に到達することになる。同様に、次にスペーサ3に近い電子放出素子91bから放出された電子も、所定の照射位置に到達することになる。このように、本参考例の表示パネルによれば、スペーサの形状が円柱状のものであっても、電子放出素子から放出される電子の放出方向を、スペーサからの距離(スペーサによる影響度)に応じて段階的に設定することで、スペーサに起因する電子ビームのずれを補正することができ、ずれのない画像表示を実現することができる。
なお、図15Aおよび図15に示した例では、円柱状のスペーサ3を用いているが、この他の形状のスペーサであっても、スペーサに起因するずれΔSを補償するように角度θを設定すれば、同様な電子ビームのずれの補正を行うことができる。
また、ΔS1およびΔS2は、スペーサ3寄りにずれたものとしたが、反対にスペーサ3から遠ざかる方向へずれたものとしてもよい。この場合は、電子放出素子91a、91bの素子電極の傾きの方向が図10Bに示した場合と反対の方向となる。
さらに、スペーサ3を挟んで対向して配置された2つの電子放出素子91a、及び2つの電子放出素子91bは、それぞれの素子電極の傾きの方向が互いに反対の方向とされ、その傾きの大きさ(角度θ1、θ2)が異なるようになっているが、この構成に限定されるものではない。設計によっては、角度θ1が角度θ2と同じになる場合も考えられる。
以上各実施形態および参考例で説明したように、本発明の画像表示装置では、一対の素子電極間のギャップの長手方向を制御して、電子放出素子から放出される電子の初速度ベクトル、具体的には、電子放出素子から放出される電子の放出方向、好ましくは放出速度を、スペーサからの距離(スペーサによる影響度)に応じて設定する。このような設定により、スペーサに起因する電子ビームの不規則なずれを補償することができ、その結果、スペーサの高精度な設置や設計変更を行うことなく、電子ビームを所望の位置に到達させることができ、電子ビーム軌道を設計通りとすることができる。
尚、本発明で言う、一対の素子電極間のギャップの長手方向とは、ギャップの両端を結ぶ直線の方向を意味する。よって、例えば一対の素子電極が、図17に示す形状の場合、一対の素子電極のギャップの長手方向は、図の線分A-A‘の延びる方向となる。尚、上述の他の図面と同様、81a、81bは素子電極、82は電子放出部を表す。
また、上記の各実施形態および参考例においては、スペーサに近接する全ての電子放出素子と、近接しない全ての電子放出素子とで、ギャップの長手方向が互いに異なる形態を説明してきた。しかし本発明はこれらに限らず、スペーサに近接する電子放出素子のうちの一部の電子放出素子のみが、スペーサに近接しない電子放出素子と、ギャップの長手方向が異なる形態も発明に含む。このような形態は、例えばスペーサ表面に部分的に電極を有する等の理由から、スペーサ表面で部分的に電位分布が異なる表示装置などに適用できる。
また、各実施形態および参考例で説明した構成は、一例であって、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。例えば、第1から第4の実施形態および参考例では電子放出素子から放出される電子の放出方向のみを制御しているが、第5の実施形態のように、放出方向の制御に加えて、放出される電子の行方向における初速度を制御するようにしてもよい。具体的には、スペーサに近接する電子放出素子(スペーサの影響を受ける電子放出素子)から放出される電子の行方向における初速度と、それ以外の電子放出素子から放出される電子の行方向における初速度とが異なるように設定していもよい。これにより、Y方向(列方向)におけるずれΔSとX方向(行方向)におけるずれΔXをともに補正することが可能となる。特に、素子電極の傾き(角度θ)が大きくなるような場合は、ΔXが大きくなるため、より良好な画像表示を得るには初速度の制御が重要となる。