まず、本発明に係る電子線装置について図を用いて詳細に説明する。
図1は本発明に係る電子線装置の一例を示す一部切欠斜視図、図2は図1に示されるスペーサ付近の拡大断面図、図3は図1に示される蛍光膜の説明図である。
本例の電子線装置は、パネル型の画像表示装置で、図1および図2において、1015は第一の基板であるリアプレート、1017は第二の基板であるフェースプレート、1016は隙間をもって対向配置されたリアプレート1015とフェースプレート1017の周縁に挟み込まれた側壁であり、これらは気密容器を形成しており、これらによって囲まれた内部空間は真空雰囲気に維持されている。
1020はスペーサであり、リアプレート1015とフェースプレート1017の間隔を所定の間隔に保つとともに、内外の気圧差による気密容器の破損を防止する目的で、必要な数がリアプレート1015とフェースプレート1017間に挟み込まれている。1023はスペーサを所望の位置に固定するために使用するブロックで、リアプレート1015側に固定されていると共に、スペーサ1020の両端を保持している。
リアプレ−ト1015には、N×M個(N,Mは2以上の正の整数であり、目的とする表示画素数に応じて適宜設定される。たとえば、高品位テレビジョンの表示を目的とした表示装置においては、N=3000,M=1000以上の数を設定することが望ましい。)の電子放出素子1012が形成された電子源基板1011が固定されている。図示される電子放出素子1012は、一対の素子電極間に電子放出部である亀裂が形成された導電性薄膜を接続した表面伝導型電子放出素子となっているが、たとえば電界放出型電子放出素子などの他の冷陰極素子を用いることもできる。
上記N×M個の電子放出素子1012は、第一の導電性部材であるM本の行方向配線1013とN本の列方向配線1014により単純マトリクス配線され、マトリクス駆動されるものとなっている。以下、N×M個の電子放出素子1012とM本の行方向配線1013とN本の列方向配線1014によって構成される電子源部分をマルチ電子ビ−ム源と呼ぶ。
フェースプレート1017の下面(内面)には蛍光膜1018aが形成されている。本例の画像表示装置はカラー表示をするものであり、蛍光膜1018aは、赤(R)、青(B)、緑(G)の3原色の蛍光体が塗り分けられている。各色の蛍光体は、図3に示すようにストライプ状に塗り分けられ、各蛍光体のストライプの間には黒色体(ブラックストライプ)1018bが設けられている。
蛍光膜1018aのリアプレ−ト1015側の面には、リアプレート1015側に設けられた行方向配線1013と列方向配線10144とは異なる電位に規定される第二の導電性部材であるメタルバック1019が設けられている。このメタルバック1019は、蛍光膜1018aを構成する蛍光体の発する光の利用効率の向上や、イオンなどの衝撃からの蛍光膜1018aの保護のため、さらには電子放出素子1012から放出された電子を加速するための加速電圧を印加するための電極として用いられる。
なお、マルチ電子ビーム源やフェースプレート、およびそれらを含む表示パネルの構成や製造法に関する詳細は、特開2000−311633号に記載されている通りである。
さらにスペーサ1020について説明すると、スペーサ1020は、図2に示されるように、絶縁性の材料からなる基材1021の表面に高抵抗膜1022を形成したものとなっている。また、この高抵抗膜1022は、電子放出素子1012に隣接するスペーサ1020の側面と、リアプレート1015側の行方向配線1013に対向した第一の対向面と、フェースプレート1017側のメタルバック1019に対向した第二の対向面とに形成されている。なお、本例のスペーサ1020におけるブロック1023側の面は、高抵抗膜1022を形成してもよいが、電子放出素子1012が隣接する面ではないので、この面の高抵抗膜1022の形成は省略することもできる。
スペーサ1020の基材1021は電子線装置に加わる大気圧を支持するための十分な機械的な強度、および電子線装置の作製工程において加えられる熱に対する耐熱性を有することが好ましく、ガラスあるいはセラミックスなどの材料を好適に用いることができる。
高抵抗膜1022は、スペーサ1020表面に生じた帯電を緩和するために形成されるものであり、帯電電荷を除去するために必要な程度のシート抵抗値を有する必要がある。通常、高抵抗膜のシート抵抗値としては、1014Ω/□以下であることが望ましく、さらに十分な効果を得るためには1012Ω/□以下であることが望ましい。一方、抵抗が低すぎる場合、スペーサ1022における消費電力が増加するという問題が生じる。従って、高抵抗膜1022のシート抵抗は107Ω/□以上が望ましい。
高抵抗膜1022の構成材料としては、例えば金属酸化物、アルミと遷移金属との窒化物、ゲルマニウムと遷移金属との窒化化合物、炭素、また非晶質カーボン等を用いることができる。金属酸化物の場合、クロム、ニッケル、銅の酸化物が好ましい材料である。その理由は、これらの酸化物は二次電子放出効率が比較的小さく、電子放出素子1012から放出された電子がスペーサ1020に当たった場合においても、発生する帯電量が小さいためである。また、アルミと遷移金属との窒化物は、遷移金属の組成を調整することにより、良伝導体から絶縁体まで広い範囲に抵抗値を制御できるので好適な材料である。遷移金属元素としてはTi,Cr,Taなどが挙げられる。また、ゲルマニウムと遷移金属との窒化化合物も、同様に組成の調整によって良好な帯電緩和特性を有しており、高抵抗膜1022の材料として好適に用いることができる。遷移金属元素としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Hf、Taなどが挙げられる。これらの遷移金属は単独で用いる他、2種類以上の遷移金属を併せて用いることも可能である。また、炭素は二次電子放出効率が小さく好ましい材料である。特に、非晶質カーボンは高抵抗であるため、高抵抗膜1022の抵抗を所望の値に制御しやすい。
高抵抗膜1022は、その種類に応じて、スパッタ、電子ビーム蒸着、イオンプレーティング、イオンアシスト蒸着法、CVD法、プラズマCVD法などの気相系薄膜形成手法により絶縁性の基材1021上に形成することができる他、スプレー法、ディッピングなどの液相系薄膜形成手法によっても形成することができる。
スペーサ1020の第一の対向面と第二の対向面とは、それぞれ行方向配線1013とメタルバック1019に当接しており、高抵抗膜1022を介して行方向配線1013とメタルバック1019を電気的に接続している。なお、本例ではスペーサ1020の第一の対向面は行方向配線1013と当接しているが、別途当接用の配線や電極を第一の導電性部材としてリアプレート1015上に設け、そこへ当接するようにしてもよい。また、スペーサ1020の第二の対向面はメタルバック1019に当接しているが、メタルバック1019が蛍光膜1018aの内側に設けられている場合には、黒色体1018bを導電体で構成し、これを第二の導電性部材としてそこに当接させることができる。
本発明においては、第一の対向面における高抵抗膜1022のシート抵抗値または第二の対向面における高抵抗膜1022のシート抵抗値をR1、好ましくは第一の対向面における高抵抗膜1022のシート抵抗値をR1、より好ましくは第一の対向面と第二の対向面における高抵抗膜1022のシート抵抗値をR1とし、電子放出素子1012に隣接する側面における高抵抗膜1022のシート抵抗値をR2としたときに、R2/R1を2〜200、好ましくは5〜100とすることによって、所望の作用を得ることができる。
図9は本例の電子線装置における、スペーサ1020の位置ずれ量に対する電子軌道の敏感度(影響度)の、当接面と側面の抵抗比R2/R1に対する依存性を、シミュレーションによって求めた結果を示したものである。縦軸の敏感度(影響度)は、正規の位置からのスペーサ1020の位置ずれ量をdxspとしたときの、近傍の電子軌道の正規の到達位置からのずれ量をdxbeamとしたときに、dxbeam/dxspとして定義した。図中に実線でプロットしたのは、スペーサ1020が近づいてくる側の電子放出素子1012から放出された電子に対する計算、破線でプロットしたのは、逆にスペーサ1020が遠ざかる側の電子放出素子1012から放出された電子に対する計算結果である。dxbeamが正の場合、スペーサ1020の位置ずれに伴って電子軌道はスペーサ1020に吸引される方向に移動することを示し、dxbeamが負の場合は、逆に電子軌道がスペーサ1020から反発される方向に移動することを示している。
図9に示すように、抵抗比の変化に伴い、スペーサ1020の位置ずれに対する敏感度は変化する。特に抵抗比が小さい時と、抵抗比が大きい時とでは、スペー1020サの位置ずれに対する電子ビームの変化量の敏感度(影響度)の符号が逆になっており、中間のある条件においてスペーサ1020の位置ずれに対する敏感度が極めて小さくなることが分かる。
さらには、図9の破線で示されるように、スペーサ1020が電子放出素子から遠ざかる方向に位置ずれした場合、抵抗比が2以上となると、ビームずれの変化量は、急減し、また図中では明示していないが、200を超えるとビームずれの変化量は急増する。また、スペーサ1020が電子放出素子から遠ざかる方向に位置ずれした場合に比較して、スペーサ1020が電子放出素子に近づく方向に位置ずれした場合は、敏感度(影響度)が大きい。そして、この場合は、抵抗比が5以上となると、ビームずれの変化量が急減し、また、100を超えると、ビームずれの変化量が急増する。したがって、スペーサ1020の抵抗比は、2〜200を満たすのが良く、より好ましくは、5〜100を満たすのが良い。
このように、抵抗比を2以上とすることで、スペーサ1020の設置位置にずれが生じても、電子ビーム軌道への影響(敏感度)を気にならない程度におさえることを可能とするとともに、スペーサ1020と第一の導電性部材(または第二の導電性部材)との間である程度良好な電気的接続を実現できる。また、抵抗比を200以下とすることで、スペーサ1020と第一の導電性部材との電気的な接続を確実に行いながら、スペーサ1020の設置位置のずれが生じても、電子ビーム軌道への影響(敏感度)を問題ない程度に抑えることが可能となる。また、第一の対向面と第二の対向面への高抵抗膜1022の成膜時に成膜材料が側面へ回り込んで成膜されることがあった場合にも、側面の抵抗分布への影響を電子軌道に影響が無い程度に小さくすることができる。尚、特に好ましくは、抵抗比を5≦R2/R1≦100とすると、先述した側面への回り込みの影響をより低減できるとともに、スペーサ1020と第一または第二の導電性部材との電気的接続を良好に確立しながら、後述するスペーサ1020の位置ずれによる電子軌道変動の敏感度を十分良好に低下させることができる。なお、上記側面、第一の対向面および第二の対向面の高抵抗膜1022は異なる材料であっても同一の材料であってもよい。
次に、上記スペーサ1022の作用について説明する。
図4に本例におけるスペーサ1020と行方向配線1013との当接部を拡大した模式図を示す。
図示されるように、スペーサ1020の第一の対向面は、スペーサ1020の厚み方向中間部の一部領域において、リアプレート1015側に形成された行方向配線1013と当接している。このような当接形態は、行方向配線1013の上面や第一の対向面が必ずしも平坦面として形成されず、行方向配線1013の上面がフェースプレート1017側に膨出した形状となったり、第一の対向面がリアプレート1015側に膨出した形状となりやすいことに起因する。なお、第一の対向面において、行方向配線1013と当接している領域を当接部、当接していない領域を非当接部と呼ぶ。
基材1021の表面に高抵抗膜1022を形成してなるスペーサ1020の表面の電位は、その表面の抵抗分布に応じて抵抗分割によって定まる電位分布を持つ。一般的に、スペーサ1020表面の電位分布は、スペーサ1020がない状態での電位分布とは異なるものである。従って、スペーサ1020とスペーサ1020近傍の電子放出素子1012との相対的な位置が正規の位置からずれた場合、帯電の有無によらず、スペーサ1020表面の電位分布に応じて周辺の電界が変化するため、電子軌道は少なからず影響を受ける。
図5は、スペーサ1020の第一の対向面に、例えば金属のような低抵抗膜を形成した場合、すなわちスペーサ1020の第一の対向面と側面との抵抗比が大きい場合のスペーサ1020近傍の等電位線と電子軌道の様子を示したものである。第一の対向面に金属のような低抵抗膜が形成されている場合、第一の対向面の電位は、第一の導電性部材(本例においては行方向配線1013)との当接部と非当接部でほとんど変化せず、行方向内線1013の電位とほぼ等しくなる。また、図6は図5のA−A'のライン(スペーサ1020に最も近接している電子放出素子1012(図1、図2参照)の電子放出部を通るリアプレート1015の法線)に沿った電界をプロットしたものである。横軸はリアプレート1015の表面(図1および図2に示される電子放出素子1012の電子放出部)から図5に示されるz方向の距離z、縦軸は図5に示されるx方向とz方向の電界強度の比Ex/Ezである。
スペーサが正規の位置にある場合(図5(a))、第一の対向面の端部(図中S点)の電位は、スペーサ1020が無い場合でのS点に相当する位置での電位と比較して低いため、リアプレート1015近傍で電界強度比Ex/Ezは負となる(図5の実線で示したプロット)。そのため、スペーサ1020近傍の電子放出素子1012(図1、図2参照)から放出された電子は、メタルバック1019(図1、図2参照)に印加された電圧によって生じる電界Ezに加えて、リアプレート1015近傍でややx方向に偏向され、図5(a)に示した軌道に沿って飛翔して、フェースプレート1017側のB点に到達する。
一方、スペーサ1020の位置が電子放出素子1012(図1、図2参照)の方向にある距離dxだけずれた場合(図5(b))、本来あるべき電位よりも低い電位に規定されたS点が電子放出素子1012に近づくことになる。このためA−A'に沿った電界は、図6に破線で示すように、リアプレート1015近傍で電界強度比Ex/Ez<0であり、その大きさはスペーサ1020が正規の位置にあるときよりも大きくなる。従って、電子放出素子1012から放出された電子は、図5(b)に示した軌道に沿って飛翔し、フェースプレート1017上の正規の位置から大きく逸れたC点に到達する。すなわち、第一の対向面に低抵抗膜が形成されたスペーサ1020の位置が正規の位置から電子放出素子1012に近付く方向にずれた場合、スペーサ1020の近づいてきた電子放出素子1012から放出された電子は、スペーサ1020が正規の位置にある場合の到達位置(B点)と比較して、スペーサ1020からより反発される方向に電子軌道が偏向される。
逆に、スペーサ1020が近傍の電子放出素子1012(図1、図2参照)から離れる方向にdxだけずれた場合(図5(c))、本来の電位よりも低い電位に規定されたS点が、電子放出素子1012から遠ざかることになる。その結果、A−A’に沿った電界強度比Ex/Ezは、図6に点線で示すように、スペーサ1020が正規の位置にある場合と比べて小さくなり、ほぼゼロ(Exがほぼゼロ)となる。その結果、スペーサ1020との距離が広がった電子放出素子1012から放出された電子は、ほぼ偏向を受けることなく飛翔し、フェースプレート1017側のD点に到達する。すなわち、スペーサ1020が正規の位置にある場合と比較すると、電子の到達位置はスペーサ1020に吸引される方向に移動する。
一方、第一の対向面に金属のような低抵抗膜と比較して何桁も高いシート抵抗値R1を有する高抵抗膜1022(図2参照)を形成した場合、すなわち第一の対向面と側面との抵抗比が小さくなった場合、第一の対向面における行方向配線1013との非当接部の電位が上昇する。非当接部における電位の変化量は、第一の対向面の抵抗値R1と側面の抵抗値R2とで規定されるスペーサ1020表面の抵抗分割によって決まり、非当接部の大きさ、および第一の対向面と側面との抵抗比によって変化する。具体的には、非当接部が大きいほど、また抵抗比が小さいほど(第一の対向面の抵抗値が高いほど)非当接部の電位の上昇量は大きくなる。
図7は第一の対向面の抵抗R1が側面の抵抗R2と等しい場合(抵抗比R2/R1=1の場合)について、スペーサ1020近傍の等電位線と電子軌道の様子を示したものである。また、図8は図7のE−E'のラインに沿った電界をプロットしたものである。
スペーサ1020が正規の位置にある場合(図7(a))、スペーサ1020の第一の対向面の端部(図中S点)の電位は、スペーサ1020が無い場合でのS点に相当する位置での電位と比較して上昇する。この非当接部の電位の上昇に応じて、スペーサ1020周辺の電界はリアプレート1015の近傍でEx/Ez>0となり、スペーサ1020近傍の電子放出素子1012(図1、図2参照)から放出された電子の軌道は、スペーサ1020にやや吸引される方向に偏向され、図7(a)のF点に到達する。
スペーサ1020がその近傍の電子放出素子1012(図1、図2参照)に、ある距離dxだけ近づく方向にずれた場合(図7(b))、非当接部の長さが変化することになる。図7(b)においてはスペーサ1020が移動した側の非当接部の長さが長くなることから、電位の上昇量が大きくなり、電界はEx/Ezがより大きくなる。従って、スペーサ1020が近づいた電子放出素子1012から放出された電子は、スペーサ1020に大きく吸引され、より大きな偏向を受けることになり、図7(b)に示す軌道に沿って飛翔し、G点に到達する。すなわち、第一の対向面と側面との抵抗比が小さいスペーサ1020の位置が正規の位置からずれた場合、スペーサ1020が近づいてきた電子放出素子1012から放出された電子は、スペーサ1020が正規の位置にある場合の到達位置(F点)と比較して、よりスペーサ1020に吸引される方向に電子軌道が偏向される。
逆に、スペーサ1020がdxだけ電子放出素子1012(図1、図2参照)から遠ざかる方向にずれた場合(図7(c))、非当接部の長さが小さくなることから、電位の上昇量が小さくなり、電界Ex/Ezは相対的に小さくなる。このため、スペーサ1020との距離が広がった電子放出素子1012から放出された電子の受ける偏向は小さくなり、スペーサ1020が正規の位置にあるときと比較して、スペーサ1020から遠ざかる側(反発側)へ軌道が変化する。
上述したように、第一の対向面と側面に形成された高抵抗膜1022(図2参照)の抵抗比が大きい場合、逆に第一の対向面と側面に形成された高抵抗膜1022の抵抗比がない(抵抗比が1)場合、ともにスペーサ1020位置のずれに伴って電子軌道が影響を受け、近傍の電子放出素子1012(図1、図2参照)から放出された電子は、スペーサ1020が正規の位置に配置されていた時に到達する位置とは異なる位置に到達するようになり、表示装置としての所望の性能を損なう可能性がある。
発明者らは、図1および図2に示されるようなスペーサ1020と近傍の電子放出素子1012との相対的な位置関係のずれに伴う電子軌道への影響に関して、詳細な数値シミュレーションおよび実験的手法によって検討を行った。その結果、第一の対向面の抵抗R1と側面の抵抗R2との抵抗比R2/R1をある範囲に制御することで、スペーサ1020と電子放出素子1012の間の相対的な位置関係のずれに依らず近傍の電界が略一定に保たれ、その結果電子軌道に与える影響を非常に小さくできることを見出した。
図9は本例の電子線装置における、スペーサ1020の位置ずれ量に対する電子軌道の敏感度(影響度)の、当接面と側面の抵抗比R2/R1に対する依存性を、シミュレーションによって求めた結果を示したものである。縦軸の敏感度(影響度)は、正規の位置からのスペーサ1020の位置ずれ量をdxspとしたときの、近傍の電子軌道の正規の到達位置からのずれ量をdxbeamとしたときに、dxbeam/dxspとして定義した。図中に実線でプロットしたのは、スペーサ1020が近づいてくる側の電子放出素子1012から放出された電子に対する計算、破線でプロットしたのは、逆にスペーサ1020が遠ざかる側の電子放出素子1012から放出された電子に対する計算結果である。dxbeamが正の場合、スペーサ1020の位置ずれに伴って電子軌道はスペーサ1020に吸引される方向に移動することを示し、dxbeamが負の場合は、逆に電子軌道がスペーサ1020から反発される方向に移動することを示している。
図9に示すように、抵抗比の変化に伴い、スペーサ1020の位置ずれに対する敏感度は変化する。特に抵抗比が小さい時と、抵抗比が大きい時とでは、敏感度の符号が逆になっており、中間のある条件においてスペーサ1020の位置ずれに対する敏感度が極めて小さくなることが分かる。
一般の電子線装置においては、その所望の特性を満たすために許容される電子軌道の正規の位置からのずれ量が存在する。例えば画像形成装置においては、電子到達位置の正規の位置からのずれが視覚上認知されない程度であれば、そのずれは画質を劣化させることは無い。この許容されるずれ量の範囲は電子線装置の機能や構成によって変化する量であり、例えば画像形成装置の場合、画素ピッチや、サイズなどに依存して設定される。そうした許容範囲が設定されれば、スペーサ1020の位置ずれに対する敏感度を低下させ、装置の特性の劣化を起こしにくくなる抵抗比の範囲を設定することができる。尚、図では明示していないが、破線(スペーサ1020が遠ざかる側の電子放出素子1012から放出された電子に対する計算)が、許容されるビーム位置変化量の領域内に収まる抵抗比の範囲が、2〜200である。
なお、上述した例は、いずれもスペーサ1020とリアプレート1015側の第一の導電性部材との当接について説明したものであるが、スペーサ1020とフェースプレート1017側の第二の導電性部材との当接においても、同様の考え方が適用できる。ただし、電子線は、リアプレート1015側からフェースプレート1017側に向かって加速されるので、その軌道の偏向はリアプレート1015側において大きく受けやすい。従って、本発明においては、少なくともスペーサ1020と第一の導電性部材間の当接において、上記スペーサ1020の位置ずれに対する敏感度を低下させ、特性の劣化を起こしにくくなる抵抗比を設定する構成が好ましい。
また、上述した例においては、いずれの場合も、スペーサ1020の第一の対向面が、上面の中央部がフェースプレート1017側に膨出した第一の導電性部材(本例では行方向配線1013)と当接する場合について説明したが、第一の導電性部材の縁部がフェースプレート1017側に膨出している場合、スペーサ1020の第一の対向面の中央部や縁部がリアプレート1015側に膨出している場合についても同様の考え方が適用できる。さらには、長板状またはリブ状のスペーサ1020の厚さが長手方向に不均一な場合や長手方向に蛇行または反っている場合についても同様である。つまり、本発明は、スペーサ1020と、隣接する電子放出素子1012との間の距離の変動に対応することができる。
上述した例においては、スペーサ1020は長板状またはリブ状であるが、柱状であってもよく、何れの場合でも、第一の対向面、好ましくは第一の対向面および第二の対向面と、電子放出素子1012に隣接する側面との抵抗比が指定した範囲内であれば本発明の効果を発揮できる。
次に、上記スペーサ1020の製造方法を説明する。
図1および図2に示される本発明のスペーサ1020は、前記のように、気相系薄膜形成手法の他、液相系薄膜形成手法によっても形成することができるが、本発明の製造方法は、特に気相系薄膜形成手法を用いた方法である。具体的には、基材1021に対し、スパッタ、電子ビーム蒸着、イオンプレーティング、イオンアシスト蒸着法、CVD法、プラズマCVD、スプレー法などの気相系薄膜形成手段で高抵抗膜1022を被着させることでスペーサ1020を製造する方法である。ここで気相系薄膜形成手法とは、空間中を飛翔する微粒子状薄膜形成材料を付着させることで薄膜を形成する手法をいう。
本発明で用いるスペーサ1020は、第一の対向面、好ましくは第一の対向面および第二の対向面と、電子放出素子1012に隣接する側面(リアプレート1015とフェースプレート1017間の空間内に露出する側面)とで抵抗値が異なる。このようなスペーサ1020の製造は、気相系成膜において、第一の対向面、好ましくは第一の対向面および第二の対向面方向から成膜する工程と、電子放出素子1012に隣接する側面方向から成膜する工程とを有し、対向面方向からの成膜条件と、側面方向からの成膜条件を異ならせることによって、対向面と側面間に抵抗比をつけることで容易に行うことができる。具体的には、対向面方向の成膜時間を側面方向からの成膜時間よりも大きくしたり、対向面方向からの成膜材料として、側面方向からの成膜材料より低抵抗な材料を選択することなどによって実現できる。これによって、対向面部分の膜特性と側面部分の膜特性とを独立に制御することができる。尚、本発明でいう、対向面方向、側面方向とは、それぞれ、リアプレート1015との当接面である第一の対向面やフェースプレート1017との当接面である第二の対向面に対して略垂直な方向、側面に対して略垂直な方向を意味するものである。ここで略垂直とは、膜材料が、意図する面(例えば対向面への成膜であれば当該対向面)と、意図しない面(例えば対向面への成膜であれば側面)とで成膜量が異なる程度の垂直を意味し、具体的には、意図しない面には回り込みによってのみ成膜されるような成膜方向のことを意味する。
また、高抵抗膜の製法は上記に限らず、たとえばディッピング法が適用できる。ディッピング法は液相を用いる成膜法であり、高価な真空装置を必要とせず、コスト面で有利である。
ディッピング法による場合、金属酸化物の微粒子、好ましくは200μm以下の微粒子の分散液、または、金属アルコキシド、有機酸金属塩、およびそれらの誘導体などのゾルの溶液を必要に応じて所望の抵抗値に合わせて混合し、塗布し、乾燥後に400℃から1000℃で焼成することにより、亜鉛の酸化膜および亜鉛に遷移金属もしくはランタノイドが混合している酸化膜を得ることで行うことができる。
より具体的には、CrとZnの酸化膜を適用することができる。以下に具体例を示す。
CrとZnの酸化膜は、(株)高純度化学研究所のコート剤SYM−CR015とSYM−ZN20を混合した液を用いて、ディッピング(引上げ速度:0.3mm/sec)によりスペーサ上に塗布し、120℃で乾燥、450℃で焼成することにより成膜することができる。また、コート剤の混合比を変えることでCrとZnの比を調整し、抵抗値の調整を行うことができる。
また、引き上げに際しては、スペーサ1020の当接面(第一の対向面または第二の対向面)を下にすることで、重力による液の偏りを利用し、故意に当接面の膜厚を厚くすることができ、引き上げの条件を最適化することで、対向面のシート抵抗を所望の値に調整することができる。
上記のようにして作製したスペーサ1020の側面における高抵抗膜の膜厚は100μm、シート抵抗値は5×1010Ω/□であり、対向面における高抵抗膜の膜厚は500μm、シート抵抗値は1×1010Ω/□であった。また、スペーサの側面と対向面のシート抵抗比は5である。
以下で、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
なお、以下に述べる各実施例においては、マルチビーム電子源として、前述した、電極間に導電性微粒子膜を有するタイプのN×M個(N=3072、M=1024)の表面伝導型電子放出素子を、M本の行方向配線とN本の列方向配線とによりマトリクス配線したマルチ電子ビーム源を用いた。
実施例1、比較例1
本実施例において用いるスペーサを次のように作製した。
スペーサの基材は、ソーダライムガラスを切削・研磨加工し、高さ2mm、厚さ200μm、長さ4mmの板状体とした。その後清浄化した基材の上に、高抵抗膜としてCrとGeの窒化膜を真空成膜法により形成した。
本実施例で用いたCrとGeの窒化膜は、スパッタリング装置を用いてアルゴンと窒素の混合雰囲気中で、CrとGeのターゲットを同時にスパッタすることにより成膜した。
スペーサ表面への高抵抗膜の成膜は、図10(a)に示すように、側面方向(1),(2)、第一の対向面方向(3)および第二の対向面方向(4)に加え、対向面と側面とがなす稜部(エッジ部)に対して45°の方向(5)〜(8)から((5)〜(8))の成膜を加え、計8回の成膜を実施した。ここで、45°方向からの成膜を実施したのは、稜部の抵抗を制御することにより、側面と対向面とに形成された高抵抗膜間の電気的接続を確実に取るためである。
それぞれの成膜時にはスパッタリングの条件を変更することで、高抵抗膜の抵抗値を制御した。なお、高抵抗膜の抵抗値は、CrとGeのターゲットへの投入電力およびスパッタ時間の調整により、Crの添加量を調整することで行った。
本実施例において作製したスペーサの最終的な側面における高抵抗膜は、膜厚が200nm、シート抵抗値は4×1011Ω/□であった。一方、対向面における高抵抗膜は、膜厚が200nm、シート抵抗値が3×1010Ω/□であった。また45°方向からの成膜においては、側面への成膜時と同様の条件で成膜を実施した。本実施例において用いたスペーサの側面と対向面の高抵抗膜の抵抗比はおよそ13である。
図1および図2に示されるように、高抵抗膜1022を形成したスペーサ1020は、リアプレート1015側で行方向配線1013上に配置し、位置固定用のブロック1023により固定した。スペーサ1020を所望の位置に固定するためのブロック1023は、スペーサ1020と同様にソーダライムガラスで作製した。ブロック1023は4mm×5mm×厚さ1mmの直方体状をしており、その側面にはスペーサ1020の基材1021の長手方向端部を挿入できるよう、幅210μmの溝を形成してある。スペーサ1020およびブロック1023は、パネル内に設置する際に、スペーサ1020がフェースプレート1017や電子源基板1011に対して、斜めに傾くことの無いよう調整を行った上で、セラミック系の接着剤により互いに固定した。なおスペーサ1020を所定の位置に規定する方法はブロック1023によるものに限られるわけではなく、例えばフリットガラスなどにより接着することも可能である。
本実施例においては、発明の効果を確認するために、スペーサ1020の立ち位置(行方向配線1013に対する設置位置)を正規の位置に調整したものの他に、正規の位置から25μmおよび50μmずらして調整したものを用意した。
この後、別途作製しておいたフェースプレート1017および側壁1016とともに、外囲器を形成し、真空排気および電子源の形成を行った。この際スペーサ1020とフェースプレート1017との当接は、黒色体1018b上で当接するように位置調整を行った。この後封止を行うことにより、スペーサ1020は外囲器の外から加わる大気圧により、パネル内の所定の位置に完全に固定された。
以上のように完成した表示パネルを用いた画像形成装置において、各電子放出素子1012には、容器外端子Dx1〜Dxm,Dy1〜Dynを通じ、走査信号および変調信号を不図示の信号発生手段よりそれぞれ印加することにより電子を放出させ、メタルバック1019には、高圧端子Hvを通じて高圧を印加することにより放出電子ビームを加速し、蛍光膜1018に電子を衝突させ、各色蛍光を励起・発光させることで画像を表示した。なお、高圧端子Hvへの印加電圧Vaは3kV〜12kVの範囲で徐々に放電が発生する限界電圧まで印加し、各配線1013,1014間への印加電圧Vfは14Vとした。
画像形成装置を駆動した状態で、スペーサ1020の最近接にある電子放出素子1012からの放出電子による発光スポットの位置を、詳細に観測した結果、スペーサ1020の立ち位置(行方向配線1013に対する設置位置)に依らず、常に正規の位置で発光スポットが観測された。
一方、比較例として前記と同様の方法で高抵抗膜を形成したスペーサの第一の対向面に、アルミニウムによる電極を形成したスペーサを用意し、実施例と同様にスペーサ立ち位置を変えたときの、スペーサ最近接の電子放出素子からの放出電子による発光スポットの位置を詳細に観察した。その結果、スペーサが正規の位置に立てられている場合は、正規の位置に発光スポットが観察できたが、スペーサ立ち位置がずれることにより、発光スポット位置が正規の位置からずれていく様子が観察された。
第一の対向面に電極を形成したスペーサを用いた場合、その立ち位置が10μm以上ずれることにより、画質に影響を与える程度の発光スポットの位置ずれを引き起こすのに対し、本発明によるスペーサを用いた場合には、50μm以上の立ち位置ずれがある場合も、画質を劣化させるような発光スポットの位置ずれは観察されなかったことから、本発明の有効性、および優位性を確認することができた。
実施例2、比較例2
本実施例においては、直径100μmのガラスファイバーを切断加工することにより、図10に示すような円柱形のスペーサ基材を作製した。スペーサの高さは2mmである。
清浄化した基材の表面に、実施例1と同様のCrとGeの窒化膜を高抵抗膜として形成した。スペーサ表面への高抵抗膜の成膜にあたっては、第一の対向面方向と第二の対向面方向および側面方向への計3回の成膜を行った。尚、第一の対向面および第二の対向面と側面とでは、CrとGeの材料比を異ならせることで成膜条件を変更し、抵抗値の制御を行った。また、側面への成膜にあたっては、スパッタチャンバー中で成膜中に基材を回転させることにより、側面全域に均等な高抵抗膜を形成した。
本実施例において作製したスペーサの側面における高抵抗膜の膜厚は300nm、シート抵抗値は5×1010Ω/□であり、第一および第二の対向面における高抵抗膜の膜厚は200nm、シート抵抗値は1×1010Ω/□であった。本実施例において用いたスペーサの側面と対向面のシート抵抗比は5である。
図10(b)に示される方法で、高抵抗膜1022(図2参照)を成膜したスペーサ1020をリアプレート1015上の行方向配線1013と列方向配線1014との交点上に配置して画像形成装置を作製した。スペーサ1020の立ち位置は正規の位置を中心として、50μm以内の範囲でばらついて配置された。なお、本実施例における正規のスペーサ1020位置とは、スペーサ1020を配置する行方向配線1013と列方向配線1014の交点の周辺にある4つの電子放出素子1012の中心位置と、スペーサ1020の中心軸とが一致する位置である。
完成した表示パネルを用いた画像形成装置において、各電子放出素子1012には、容器外端子Dx1〜Dxm,Dy1〜Dynを通じ、走査信号および変調信号を不図示の信号発生手段よりそれぞれ印加することにより電子を放出させ、メタルバック1019には、高圧端子Hvを通じて高圧を印加することにより放出電子ビームを加速し、蛍光膜1018に電子を衝突させ、各色蛍光を励起・発光させることで画像を表示した。なお、高圧端子Hvへの印加電圧Vaは3kV〜12kVの範囲で徐々に放電が発生する限界電圧まで印加し、各配線1013、1014間への印加電圧Vfは14Vとした。
画像形成装置を駆動した状態で、スペーサ1020の最近接にある電子放出素子1012からの放出電子による発光スポットの位置を、詳細に観測した結果、スペーサ1020の立ち位置に依らず、常に正規の位置で発光スポットが観測された。
比較例として、第一の対向面にAl電極を形成した円柱状スペーサを用いて作製した画像形成装置で、同様の評価を行った結果、スペーサの位置に応じて、周辺の発光スポット位置にばらつきが見られた。
本実施例においても、本発明の有効性と優位性を確認することができた。
実施例3
本実施例においては、ソーダライムガラスの母材を加熱延伸法で加工した長板状の基材を、必要な長さに切断することで、矩形の平板状の基材を作成した。基材の寸法は、高さ2mm、厚さ200μm、長さは100mmである。
清浄化した基材表面には、高抵抗膜としてWとGeの窒化膜を実施例1と同様に真空成膜法にて形成した。
本実施例で用いたWとGe窒化膜は、スパッタリング装置を用いて、アルゴンと窒素の混合雰囲気中でWとGeのターゲットを同時スパッタすることにより成膜した。
スペーサ表面への高抵抗膜の成膜にあたっては、図10(b)に示すように、側面方向(1),(2)、第一の対向面方向(3)および第二の対向面方向(4)の合計4方向からの成膜を実施した。本実施例で用いたWとGeの窒化膜は、成膜時の成膜方向に対する基板の角度によって形成される高抵抗膜の抵抗値が変化する。成膜方向に対して基板面が垂直な場合、言い換えると基板面の真上から成膜を行う場合が最も抵抗が低く、成膜面に対して基板面の傾きが大きくなるのに従い抵抗が増加する。最も抵抗が高くなるのは成膜方向と基板面が平行な場合であり、WとGeの窒化膜の場合、成膜方向と基板面が垂直な場合に比べて、膜の抵抗値は100〜1000倍となる。
加熱延伸法で加工したスペーサの基材は、側面と対向面との稜部が曲率を有するため、当接面からの成膜時、および側面からの成膜時の双方で、稜部へも高抵抗膜が形成されるため、実施例1で実施したような45°方向からの成膜を行わなくても、側面と対向面の高抵抗膜抵抗値を調整することで、側面と対向面との電気的接続を確保することができた。
それぞれの成膜時にはスパッタリングの条件を変更することで、高抵抗膜の抵抗値を制御した。なお、高抵抗膜の抵抗値は、WとGeのターゲットへの投入電力およびスパッタ時間の調整により、Wの添加量を調整することで行った。
本実施例において作製したスペーサの、最終的な側面における高抵抗膜は、膜厚が200nm、シート抵抗値は2×1011Ω/□であった。一方、対向面における高抵抗膜は、膜厚が200nm、シート抵抗値が3×1010Ω/□であった。本実施例において用いたスペーサの側面と対向面の高抵抗膜の抵抗比はおよそ6.7である。
図1に示されるように、高抵抗膜を形成したスペーサ1020は、実施例1と同様に、位置固定用のブロック1023を用いて行方向配線1013上に固定し、フェースプレート1017や側壁1016と組み合わせて、画像形成装置を作製した。
本実施例においても実施例1と同様に、発明の効果を確認するために、スペーサ1020の立ち位置を正規の位置に調整したものの他に、正規の位置から25μmおよび50μmずらして調整したものを用意した。
完成した画像形成装置において、各電子放出素子1012には、容器外端子Dx1〜Dxm、Dy1〜Dynを通じ、走査信号および変調信号を不図示の信号発生手段よりそれぞれ印加することにより電子を放出させ、メタルバック1019には、高圧端子Hvを通じて高圧を印加することにより放出電子ビームを加速し、蛍光膜1018に電子を衝突させ、各色蛍光を励起・発光させることで画像を表示した。なお、高圧端子Hvへの印加電圧Vaは3kV〜12kVの範囲で徐々に放電が発生する限界電圧まで印加し、各配線1013,1014間への印加電圧Vfは14Vとした。
画像形成装置を駆動した状態で、スペーサ1020の最近接にある電子放出素子1012からの放出電子による発光スポットの位置を詳細に観測した結果、スペーサ1020の立ち位置に依らず、常に正規の位置で発光スポットが観測され、本発明の有効性を確認することができた。
実施例4
本実施例において用いたスペーサは、実施例3と同様に加熱延伸法で加工したソーダライムガラスの母材を切断した基材の表面に、高抵抗膜としてWとGeの窒化膜を成膜したものである。スペーサ基材の寸法は実施例3と同様である。
本実施例においては、スペーサ表面への高抵抗膜の成膜にあたって図9(c)に示すように、第一の対向面方向(1)および第二の対向面方向(2)の2方向からの成膜のみを行った。側面の高抵抗膜の成膜は、対向面への高抵抗膜成膜時の側面への回り込みのみで行った。本実施例のように回り込みを利用することで、最小限の成膜回数で高抵抗膜を形成できることになり、スペーサの作製が簡単になり、製造コストの点で有利となる。
本実施例において、対向面の高抵抗膜は、膜厚が500nm、シート抵抗が1×109Ω/□であるのに対し、側面の高抵抗膜は、膜厚が200nm、シート抵抗は1×1011Ω/□であった。本実施例におけるスペーサの側面と対向面の抵抗比はおよそ100であった。
図1および図2に示されるように、高抵抗膜1022を形成したスペーサ1020は、実施例1と同様に、位置固定用のブロック1023を用いて業方向配線1013上に固定し、フェースプレート1017や側壁1016と組み合わせることで、画像形成装置を作製した。
本実施例においても、実施例1同様に、発明の効果を確認するために、スペーサ1020の立ち位置を正規の位置に調整したものの他に、正規の位置から25μmおよび50μmずらして調整したものを用意した。
完成した画像形成装置において、各電子放出素子1012には、容器外端子Dx1〜Dxm,Dy1〜Dynを通じ、走査信号および変調信号を不図示の信号発生手段よりそれぞれ印加することにより電子を放出させ、メタルバック1019には、高圧端子Hvを通じて高圧を印加することにより放出電子ビームを加速し、蛍光膜1018に電子を衝突させ、各色蛍光を励起・発光させることで画像を表示した。なお、高圧端子Hvへの印加電圧Vaは3kV〜12kVの範囲で徐々に放電が発生する限界電圧まで印加し、各配線1013、1014間への印加電圧Vfは14Vとした。
画像形成装置を駆動した状態で、スペーサ1020の最近接にある電子放出素子1012からの放出電子による発光スポットの位置を、詳細に観測した結果、スペーサ1020の立ち位置に依らず、常に正規の位置で発光スポットが観測され、本発明の有効性を確認することができた。