JP2004071011A - 膜面入射型光記録媒体およびその製造方法 - Google Patents

膜面入射型光記録媒体およびその製造方法 Download PDF

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金平 淳
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Abstract

【課題】波長λが500nm以下のレーザ光を入射させて情報の記録、消去及び再生を行う際に、良好なCNR、ジッタを有する膜面入射型光記録媒体を提供すること。
【解決手段】厚さ1.1mmのポリカーボネート製基板11上に、厚さ80nmのAg元素からなる反射層12、厚さ3nmのAl元素からなる中間層13、厚さ14nmのIn15Sb60Sn25(原子%比)からなる光記録層14、厚さ40nmのZn−SiOからなる誘電体層15および厚さ100μmの紫外線硬化樹脂製の透明カバー層16を順次積層してなる層構成を有する膜面入射型光記録媒体であって、波長λが405nm付近の青色レーザ光17は、開口数(NA)0.85の作動距離が短い対物レンズ18を用いて集光されて、透明カバー層16を通して光記録層14の記録層面のうち基板側とは反対側に位置する記録層面から入射する。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、膜面入射型光記録媒体に関し、より詳しくは、良好なCNR(キャリア対ノイズレベル比)、ジッタを有する膜面入射型光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータ用情報等の取り扱う情報量が極めて大きくなることに伴って、これらの情報を保存するための光記録媒体もより大容量化する必要が生じてきている。このため、光記録媒体の高密度化を実現するための手段として、レーザ波長(λ)を小さくすること、あるいはレンズの開口数NAを大きくする等の技術を用いることにより、記録再生用レーザスポット径を縮小し、これによってDVD−RAMやDVD−RWの製品化が実現されたが、今後も情報量はさらに増大する傾向にある。
【0003】
このような要求に応えるべく、最近、波長λが405nm付近の青色レーザ光を、基板面側とは反対側に位置する記録面側から入射させて記録再生を行なう方式による高密度記録光記録媒体が提案されている(Jpn.J.Appl.Phys.vol.39,p756−761,Part1,No.2B,Feb.2000)。この高密度記録光記録媒体を用いる記録再生方式は、従来から行なわれている基板面側からレーザ光を入射する基板面入射方式に対して膜面入射方式といわれ、この膜面入射方式により形成される光記録媒体は膜面入射型光記録媒体と呼ばれている。
【0004】
膜面入射型光記録媒体の構造は、通常、ポリカーボネート製の基板上に、反射層と、有機色素系記録層または無機系記録層からなる光記録層及び誘電体層とを順に設けた層構造からなり、さらにその上に透明カバー層が設けられている。そして、膜面入射方式では、対物レンズにより集光された青色レーザ光は、透明カバー層を通して、基板側とは反対側の光記録層面から入射するように構成されている。このような膜面入射方式を採用することにより、対物レンズの開口数NAを大きく(0.85)してレーザ光を微小径に収束させることができ、その結果、大容量の光記録媒体を製造することが可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、膜面入射型光記録媒体においては、上述の通り、基板と光記録層との間に反射層が設けられているが、波長λが405nm付近の青色レーザを用いる場合、この反射層は、青色レーザ光に対して反射率が十分に高いことが要求される。また、光記録媒体の反射率の低下を防ぎ、また反射層の上に形成される光記録層のノイズの上昇を抑制するために、反射層をスパッタリング等により基板上に直接形成する際には、反射層における表面の凹凸を小さくすることが必要となる。
【0006】
本発明者の検討によれば、波長λが405nm付近の青色レーザ光に対する反射率が十分高い反射層を得ようとすると、反射層にAg、Al、Cr、Ptなどの金属やこれらの金属の合金を用いる必要があることが判明した。さらに、上記金属や合金のうち、反射層表面の凸凹を低減する点においては、反射層にAgを含有させることが特に好ましいことが判明した。
【0007】
ところが、本発明者がさらに検討を進めると、このようなAgを含有する反射層上に、スパッタリング法により、Ga、In、Sn、Se等の元素を含有する光記録層を直接形成すると、CNRが低下する等、光記録媒体としての記録信号の品質が低下することが判明し、解決策が必要とされている。
【0008】
本発明は、このような膜面入射方式において青色レーザ光を用いる場合に浮上してきた技術的課題を解決するためになされたもので、波長λが500nm以下のレーザ光を入射させて情報の記録、消去及び再生を行う際に、良好なCNR、ジッタを有する膜面入射型光記録媒体を提供することを目的とする。なお、本発明において青色レーザ光とは、波長λが350〜500nmの範囲のレーザ光を言う。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、基板上に形成したAg元素からなる反射層上に、スパッタリング法により厚さ3nmのAl元素からなる層を形成した後、さらにその上に光記録層を形成して光記録媒体を調製したところ、青色レーザ光を使用する際に良好なCNRを有する膜面入射型光記録媒体が得られることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成した。
【0010】
かくして本発明に用いる膜面入射型光記録媒体は、基板上に、Ag元素を主成分とする反射層と当該反射層に接する中間層と当該中間層に接する光記録層とを、この順番に設け、前記光記録層が、融点が300℃以下の金属元素Aを含有し、前記中間層は、波長が400nmの光に対する反射率が50%以上であり、かつ、前記光記録層中の金属元素Aと化合物を形成しない金属元素Bを含有することを特徴とする。より具体的には、このような中間層に含有される金属元素Bは、融点が1100℃以上である金属元素または金属酸化物を形成しやすい金属元素であることが好ましく、なかでも、Al、CrおよびPtから選ばれる少なくとも1種の金属元素が好ましい。さらに、中間層に含有されるAg元素の濃度が15原子%以下であることが必要である。
【0011】
また、本発明に用いる膜面入射型光記録媒体における反射層は、少なくとも50原子%のAg元素を含有することにより、青色レーザ光に対して十分高い反射率を得ることができる。さらに、このような反射層は基板上に直接設けられていることが好ましい。
【0012】
さらに、光記録層に含有される金属元素Aは、Ga、Se、InおよびSnから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。そして、本発明に用いる膜面入射型光記録媒体における光記録層は、これらの金属元素を組成とする相変化型記録層を備えた追記型光記録媒体であることが好ましい。
【0013】
さて、本発明は、基板上に、Ag元素を主成分とする反射層を形成する工程と、その反射層に接して、融点が1100℃以上である金属元素Bまたは金属酸化物を形成しやすい金属元素Bを含有する中間層を形成する工程と、さらにその中間層に接して、融点が300℃以下の金属元素Aを含有する光記録層を形成する工程と、を有することを特徴とする膜面入射型光記録媒体の製造方法としても捉えることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す本発明に用いる膜面入射型光記録媒体の実施の形態の一例に基づき、本発明を詳述する。
図1は、本実施の形態における膜面入射型光記録媒体の構成および使用方法を説明するための断面の模式図である。
膜面入射型光記録媒体1は、通常、基板11上に、反射層12、中間層13、光記録層14、誘電体層15、さらに、透明カバー層16を順次積層してなる層構成を有している。波長λが405nm付近の青色レーザ光17は、開口数(NA)0.85の作動距離が短い対物レンズ18を用いて集光され、透明カバー層16を通して、光記録層14の記録層面のうち基板側とは反対側に位置する記録層面から入射する。
【0015】
基板11の材料としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィン等の樹脂およびガラスを用いることができる。なかでもポリカーボネート樹脂はCD−ROM等において最も広く用いられている実績もあり、安価でもあるので最も好ましい。基板11の厚さは、通常0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上、一方、20mm以下、好ましくは15mm以下、より好ましくは3mm以下であるが、通常は、1.1mm程度とされる。
【0016】
反射層12は、Ag元素を主成分とするものである。ここで「主成分」とは、Ag元素が、反射層12を形成する金属元素全体の50原子%以上、好ましくは80原子%以上含有されていることを意味する。反射層12中にAg元素が反射層12を形成する金属元素全体の50原子%以上含有されることにより、反射層12の青色レーザ光に対する反射率を十分に高くすることができるのみならず、反射層表面の凹凸を低減することができる。また、反射層12には、Ag元素に、Al、Cr、Pt等の青色レーザ光に対する反射率が高い層を形成することができる金属を添加した合金を使用して、青色レーザ光に対する反射率を高めることもできる。
【0017】
本実施の形態の膜面入射型光記録媒体1は、基板11上にAg元素を主成分とする反射層12が直接設けられている。すなわち、Ag元素を主成分とすることにより、反射層12の表面の凸凹を低減することができ、その結果、基板11に下地層を設けなくとも表面粗さを低く抑えることができるので、反射層12を基板11上に直接設けることによって本発明の効果がより有効に発揮される。
【0018】
反射層12に、Ag元素と共にCu、Au、Ti等の遷移金属元素、Zn等の重金属元素またはNd等の希土類金属の元素を添加して、Ag元素の結晶粒を微細化し反射層12の表面粗さをさらに低下させることができる。また高温高湿下における保存耐久性が向上する。これらの金属元素の添加量は、通常0.2〜5原子%程度である。これらの元素の添加量が過度に多いと、反射層12の熱伝導度が低下する場合がある。
【0019】
反射層12の厚さは、通常40nm以上、好ましくは50nm以上、一方、通常300nm以下、好ましくは200nm以下である。反射層12の厚さが過度に大きいと、基板に形成されたトラッキング用溝の形状が変化し、さらに、成膜に時間がかかり、材料費も増える傾向にある。また、反射層12の厚さが過度に小さいと、光透過が起こり反射層として機能しないのみならず、反射層12の一部分に、膜成長初期に形成される島状構造の影響が出やすく、反射率や熱伝導率が低下することがある。
【0020】
次に、中間層13は、反射層12と後述する光記録層14との間に設けられ、中間層13は、波長λが400nmの光に対する反射率が50%以上であり、かつ、前記光記録層14中の金属元素Aと化合物を形成しない金属元素Bを含有するものである。
【0021】
中間層に用いられる材料として従来から用いられているZnS−SiO等の誘電体材料は、熱伝導度が低いため放熱性が低下し、記録層が高感度な組成である場合には記録パワーマージンが狭くなったり、再生光劣化が起こるまでの再生パワーマージンが低下するといった問題が発生する。
【0022】
上記の問題を抑制するため、本実施の形態においては、中間層13は、光記録層14に存在する金属元素Aとの化合物を形成しない金属元素Bを含有することが必要である。光記録層を反射層上に直接形成するとCNRが低下する等の問題が生じた原因は明確ではない。しかし光記録層中に、融点が300℃以下の金属元素A(以下、「低融点金属元素」と記載することがある。)が存在すると、前記CNRの低下が顕著に発生することから、光記録層中の低融点金属と、反射層表面のAg元素とが、合金、固溶体またはその他の金属間化合物等を形成し、これらの化合物が光記録媒体のCNRを低下させる原因になると考えられる。そして、この金属間化合物は、反射層上に光記録層を成膜する際に形成されるものと考えられる。なぜならば、例えば、スパッタリング法によって光記録層を成膜する場合において、低融点金属元素が反射層上に高エネルギーで入射し、低融点金属元素と反射層のAg金属との合金が形成され易い状態にあるからである。
【0023】
従って、光記録層14に存在する低融点金属元素と反射層12に存在するAg元素とが化合物を形成することを防止するためには、低融点金属元素と化合物を形成しない金属元素Bを含有する中間層13を、光記録層14と反射層12との間に設ける必要がある。本発明者の検討によれば、このような前記低融点金属元素と化合物を形成しない金属元素Bとしては、それ自身が酸化物を形成しやすい金属、又は、融点が1100℃以上の金属であればよいことが判明した。酸化物を形成しやすい金属を中間層に含有させることが有効である理由は明確ではないが、酸化物を形成しやすい金属は、その表面に酸化被膜を形成するために、この酸化被膜がバリアとなって中間層13の金属元素Bと光記録層14に存在する低融点金属元素との反応が抑制されると考えられる。一方、融点が1100℃以上の金属を中間層13に含有させることが有効であるのは、これらの金属が熱的に安定であるため、光記録層14に存在する低融点金属元素との化合物を形成しにくいためと考えられる。
【0024】
光記録層14に含有される低融点金属元素と化合物を形成しにくい金属元素Bの具体例としては、それ自身が酸化物を形成しやすい金属としては、Alを挙げることができる。Alは、その融点が660℃と比較的低いものの、酸化物を形成しやすい金属であるために、光記録層14中の低融点金属元素との合金化が抑制される。
【0025】
また、融点が1100℃以上の金属としては、Cr、Ptを挙げることができる。Cr及びPtは、その融点がそれぞれ1857℃、1769℃と高いため、安定な中間層13を形成することができる。尚、上記Al、Cr及びPtの融点は、化学便覧基礎編 改訂4版(平成5年9月30日発行 日本化学会編 丸善株式会社発行)に掲載されている値を抜粋したものである。
【0026】
なお、本発明者の検討によれば、光記録層14に含有される低融点金属元素と化合物を形成しやすい金属元素は、比較的酸化物を形成しにくい金属、または、1100℃より低い融点を有する金属を挙げることができる。このような金属としては、Au(融点:1064.4℃)、Ag(融点:961.93℃)、Cu(融点:1083.4℃)を挙げることができる。酸化物を形成しにくい金属を用いて中間層13を形成すると、中間層13の最表面に前記金属元素そのものが露出するため、前記金属と記録層中の低融点金属とが化合物を形成しやすくなる。また、融点が1100℃以下である金属により中間層13を形成すると、中間層13が熱的に不安定になることにより、前記金属と記録層中の低融点金属とが化合物を形成しやくすくなる。尚、上記Au、Ag及びCuの融点は、化学便覧基礎編 改訂4版(平成5年9月30日発行 日本化学会編 丸善株式会社発行)に掲載されている値を抜粋したものである。
【0027】
本実施の形態における中間層13は、さらに、波長が500nm以下の短波長の光に対する反射率が高いことが求められる。このような観点から、中間層13に含有させる金属元素は、400nmの光に対する反射率が50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは75%以上となる中間層を形成する金属元素を用いることが必要である。
【0028】
複数の金属について、波長λが400nmの光に対する反射率の値を表1に示す。表1から、Al、Cr、Pt、及びAgの各金属の反射率が大きく、中間層13に用いた場合に大きな反射率を有する光記録媒体を得られることが期待される。しかし、上記金属のうち、Agは反射層12に用いる金属元素と同一となるため、記録層に存在する低融点金属元素との合金化が生じることとなる。このため、中間層13に含有させる金属としては、Al、Cr、及びPtの少なくとも一種であることが好ましい。
【0029】
【表1】
Figure 2004071011
【0030】
尚、中間層13に用いる金属元素の反射率は周知の方法で測定される。具体的には、中間層13として形成された状態の反射率を測定するために、金属薄膜の状態で反射率を測定する方法を挙げることができる。例えば、ポリカーボネート基板11上に、所定の金属ターゲットを用いて、1kW、Arガス圧0.3PaにてDCスパッタ成膜により、金属薄膜を形成し、このようにして形成した金属薄膜の反射率を公知の分光光度計(例えば、島津製作所社製 型名UV−3100S)を用いて測定すればよい。
【0031】
本実施の形態における中間層13は、表面粗さが小さいことが好ましい。中間層13の表面粗さが過度に大きいと、信号再生時にノイズレベルが上昇し、また光記録媒体内の光の乱反射により反射率が低下するおそれがある。反射層上に成膜した中間層13の表面粗さを評価する指標として、中心線平均粗さ(Ra)を用いる。ここで、中心線平均粗さ(Ra)とは、表面粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心軸をX軸として、X軸からの粗さ曲線の変位の絶対値を積分したものを長さLで割った値として定義される。数値が小さいほど、中間層13の表面粗さが小さい。具体的には、Raは、通常3nm以下、好ましくは2nm以下、より好ましくは1.5nm以下、特に好ましくは1nm以下とする。一方、中間層13の表面粗さの下限値は、下地の反射層の粗さに影響を受け、通常、0.01nm以上となる。
【0032】
一般に、中間層13の表面粗さは、中間層13の厚さに依存する。このような観点から、中間層13の厚さは、通常0.01nm以上、好ましくは0.1nm以上、特に好ましくは1nm以上であり、一方、通常、15nm以下、好ましくは10nm以下、特に好ましくは5nm以下である。中間層13の厚さがこのような範囲であれば、表面粗さを小さく押さえることができる。特に、中間層13の厚さを1nm以上5nm以下とすれば、反射層12と光記録層との金属化合物の形成を有効に防止しつつ、中間層13の表面粗さをより良好に保つことができる。
【0033】
本実施の形態における中間層13中に含有される金属元素Bの、中間層13中における含有量は、通常50原子%以上、好ましくは70原子%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95原子%以上である。特に上記金属元素Bとして、Al、Cr、及びPtの少なくとも一種の金属元素を用いる場合、その含有量を上記の範囲にすることにより、これらの金属元素の性質を有効に利用して、発明の目的を達成することができる。なお、中間層13には、前記Al、Cr、及びPtを相互に合金化して用いることも可能である。なお、複数の元素で中間層を形成する場合においても、波長λが400nmのレーザ光に対する中間層の反射率を50%以上とする必要がある。前記反射率は、好ましくは60%以上、より好ましくは75%以上である。
【0034】
なお、中間層13には、前記Al、Cr、及びPtの金属元素の他に、他の元素を含有させることができる。このような他の元素としては、例えばTi、Zn、O、N等が挙げられる。これらの元素の種類や含有量を適切に選ぶことにより、本発明の効果をより有効に発揮できるようになる。例えば、中間層13にAlを用いる場合、Alにこれらの元素を微量(5原子%以下)に含有させることによって高温高湿での光記録媒体の腐食性が改善される。
【0035】
また、中間層13に反射層12からAg元素が拡散してくる場合には、その濃度を、好ましくは15原子%以下、より好ましくは10原子%以下、特に好ましくは5原子%以下、最も好ましくは1原子%以下に抑制することが好ましい。中間層13へのAg拡散量が15原子%以下であれば、反射層12と光記録層との金属化合物の形成を有効に抑制することができるようになる。
【0036】
一方、特開平11−232695号公報および特開平11−232696号公報には、基板面側からレーザ光を入射させる基板面入射型光記録媒体において、Ag等の反応性金属を用いて形成した反射層と染料記録層との間の界面に、Ge−C−H、Si―N等の誘電体化合物からなる誘電性中間層又はPd、Ni等の金属からなる金属中間層を設けることにより、光記録媒体の記録安定性が長期間保持されることが報告されている
【0037】
しかしながら、これらの公報において報告されている光記録媒体の記録層は、有機染料を含むものである。一方、本発明においては、融点が300℃以下の金属元素Aを含有する無機系の光記録層を用いる。さらに、これらの公報において報告されている光記録媒体は、CD仕様のため、波長λが780nmのレーザを用いて記録、消去及び再生することを想定したものである。これに対して、本発明においては、青色レーザ光を用いることを意図して光記録媒体の設計を行っている。従って、これらの公報に報告されている光記録媒体と本発明における膜面入射型光記録媒体とは、光記録媒体としての設計思想が根本的に異なるものである。
【0038】
本実施の形態における光記録層14は、融点が300℃以下、好ましくは250℃以下の金属元素A(低融点金属元素)を含有するものである。金属元素Aの融点の下限は、通常0℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは100℃以上、特に好ましくは150℃以上である。なかでも、室温で固体として安定な金属元素が好ましい。なお、本発明において、上記金属元素A(低融点金属元素)には、半金属も含まれるものとする。
【0039】
このような金属元素Aとしては、例えば、Ga、In、Sn等の重金属、Bi等の半金属及び金属Seを挙げることができる。なかでも、Ga(融点29.78℃)、In(融点:156.61℃)、Sn(融点:231.968℃)及び金属Se(融点:217℃(結晶の場合は114℃))が好ましく、とくに、Sn、Inが好ましい。
【0040】
なお、溶融状態のSn、In等の低融点金属元素は、反射層12におけるAg元素と特に合金化しやすい性質を有している。これは、溶融状態のSn、In等の金属元素が他の金属元素と接触する場合に起こる現象と同様のものであり、半田付けと同じ現象であると考えられる。従って、SnやIn等の融点が300℃以下の金属元素Aを含有するターゲットを用いて、スパッタリング法によりAg元素を主成分とする反射層12上に光記録層を直接形成すると、前記金属元素AとAg元素とが反応して化合物を形成する。なお、上記の融点は、化学便覧基礎編改訂4版(平成5年9月30日発行 日本化学会編 丸善株式会社発行)に掲載されている値である。
【0041】
光記録層14は、追記型と書き換え可能型との二種類に分類することができるが、本実施の形態では、追記型であることが好ましい。追記型は製造後1回の記録のみを良好に行えれば十分であるため、書き換え可能型のように、繰り返し記録・消去する場合の光記録層と反射層との間の熱伝導特性を重視する必要がない。また、書き換え可能型は、記録・消去するたびに繰り返し熱負荷を受けるのに対して、追記型が熱負荷を受けるのは、最初の記録の時のみである。すなわち、光記録媒体の設計において、追記型は、繰り返しの記録・消去の際における熱負荷・熱伝導を考慮する必要がなく、その分、層構成を設計する自由度の範囲を広げることができる利点がある。従って、本実施の形態の膜面入射型光記録媒体1における光記録層14を、追記型とすれば、光記録層14と化合物を形成しない点、及び400nmの光に対する反射率が50%以上となるようにする点に注力して中間層13を設計できる利点がある。
【0042】
本実施の形態における追記型の光記録層14としては、例えば、InSbSnの組成を有する相変化型光記録層を挙げることができる。ここで、xは、通常、0原子%以上、好ましくは10原子%以上、一方、20原子%以下、好ましくは17原子%以下である。yは、通常、50原子%以上、好ましくは55原子%以上、一方、70原子%以下、好ましくは65原子%以下である。zは、通常、20原子%以上、好ましくは23原子%以上、一方、通常、30原子%以下、好ましくは27原子%以下である。また、x+y+zは、通常、100原子%であり、y:zを3:4〜4:1の範囲と制御する。上記の範囲とすれば、良好な追記型の光記録層を得ることができるようになる。さらに、上記相変化型光記録層には、例えば、Ge、Ti、Cr等の金属元素を添加することができる。これら元素を添加すると光記録層14の保存耐久性が向上する。これらの元素の添加量は、光記録層14における金属元素全体の2原子%以下にすることが好ましい。添加量が過度に多いと、光記録層14への書き込み速度が低下する場合がある。
【0043】
また、書き換え可能型の光記録層14としては、例えば、GeSbTeやInSbTe、AgSbTe、AgInSbTe等の組成の化合物を有する相変化型光記録層が使用できる。なかでも、{(SbTe1−x(GeTe)1−ySb(0.2<x<0.9、0≦y<0.1)合金または(SbTe1−x1−y(ただし、0.6<x<0.9、0.7<y<1、MはGe、Ag、In、Ga、Zn、Sn、Si、Cu、Au、Pd、Pt、Pb、Cr、Co、O、S、Se、V、Nb、Taより選ばれる少なくとも1種)合金を主成分とする薄膜は、結晶・非晶質いずれの状態も安定でかつ、両状態間の高速の相転移が可能である。さらに、繰り返しオーバーライトを行った時に偏析が生じにくいといった利点があり、最も実用的な材料である。
【0044】
また、光記録層14が、(SbTe1−x1−y(ただし、0.6≦x≦0.9、0.7≦y≦1、MはGe、Ag、In、Ga、Zn、Sn、Si、Cu、Au、Pd、Pt、Pb、Cr、Co、O、S、Se、V、Nb、Taより選ばれる少なくとも1種)合金を主成分とする場合、冷却効率を良くすることが不可欠であるため、この場合は反射層12としてAgを用いることが特に好ましい。
【0045】
光記録層14の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上とする。上記の範囲とすれば、アモルファス状態と結晶状態との十分な光学的コントラストを得ることができる。また、光記録層14の膜厚は、通常30nm以下、好ましくは20nm以下である。上記の範囲とすれば、光記録層14を透過した光が反射層で反射することによる光学的なコントラストの増加を得ることができ、また熱容量を適当な値に制御することができるので高速記録を行うことも可能となる。特に、光記録層14の膜圧を10nm以上、20nm以下とすれば、より高速での記録及びより高い光学的コントラストを両立することができるようになる。
【0046】
光記録層14の厚さを上記の範囲にすることにより、相変化に伴う体積変化を小さくし、光記録層自身及び光記録層の上下と接する他の層に対して、繰り返しオーバーライトによる繰り返し体積変化の影響を小さくすることができる。さらに、光記録層14の不可逆な微視的変形の蓄積が抑えられ、ノイズが低減され、繰り返しオーバーライト耐久性が向上する。
【0047】
本実施の形態では、前記基板11上に反射層12、中間層13および光記録層14をこの順番に設け、さらに前記光記録層14上に、誘電体層15を設けられている。誘電体層15の材料としては、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留意して決定される。一般的には透明性が高く高融点である金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物やCa、Mg、Li等のフッ化物を用いることができる。これらの酸化物、硫化物、窒化物、フッ化物は必ずしも化学量論的組成をとる必要はなく、屈折率等の制御のために組成を調製、混合して用いることも有効である。より具体的には、ZnSや希土類硫化物と酸化物、窒化物、炭化物等の耐熱化合物の混合物が挙げられる。また、ZnSとSiOとの混合物は、相変化型光記録媒体の誘電体層15に用いられる場合が多い。これらの誘電体層15の膜密度は、バルク状態の80%以上であることが機械的強度の面から望ましい。
【0048】
誘電体層15の厚さは、光記録層14の変形を防止する効果を十分なものとするためには、通常5nm以上が好ましい。一方、誘電体層15を構成する誘電体自体の内部応力や、誘電体層15が接している他の層との弾性特性の差を小さくし、クラックが発生しにくくするためには、厚さを500nm以下とするのが好ましい。また、一般に、誘電体層15を構成する材料は成膜レートが小さく成膜時間が長い。成膜時間を短くし製造時間を短縮しコストを削減するためには、誘電体層15の厚さを200nm以下に抑えるのが好ましい。
【0049】
本実施の形態では、前記誘電体層15を被覆(保護コート)するために、紫外線もしくは熱に対して硬化性の樹脂からなる透明カバー層16が設けられている。透明カバー層16は紫外線硬化樹脂を用いて形成することが好ましい。ここで、紫外線硬化樹脂層の膜厚は、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、一方、通常300μm以下、好ましくは200μm以下である。また、最も好ましくは、紫外線硬化樹脂層の膜圧を100μm程度とすることである。上記の範囲とすれば、膜面入射型光記録媒体において、光記録媒体の記録特性を損なうことなく誘電体層15を有効に保護することができるようになる。この場合、紫外線硬化樹脂層は、一般に、光硬化性単量体を含有する溶液をスピンコート法によって前記誘電体層15上に塗布した後に紫外線を照射して、前記単量体を重合することにより形成される。
【0050】
なお、本実施の形態では、必要に応じて基板11と反射層12との間に下地層を設けてもよい。下地層は、温度変化によって生じる基板11と反射層12との膜剥離を抑制する目的で用いられる。下地層の材料は、前記目的を達成するようなものであれば特に制限はないが、例えば、Ti、Cr、GeCrN、SiN、SiO2等の金属や誘電体等の種々の材料を用いることができる。
【0051】
本実施の形態では、波長λが500nm以下のレーザ光17として、例えば、波長が405nm付近の青色半導体レーザ光17、波長が830nmの近赤外波長の高出力半導体レーザをSHG素子(Second Harmonic Generator)によって波長が415nmに変換したもの等を用いる。
【0052】
さて、上記膜面入射型光記録媒体は、以下に示すような製造方法により製造することができる。
まず、基板11を作製する。基板11は例えば射出成形によって形成し、その表面には、所定のピッチと溝深さを有したトラッキング案内溝(図示せず)を形成する。
【0053】
次いで、この基板11の表面に、例えばAg金属をスパッタリング成膜して、Ag元素を主成分とする反射層12を形成する。反射層12を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法の他、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。いずれの方法においても、ターゲットや蒸着材料そのものの不純物量、成膜時に混入する水分、酸素量等を含めて、全不純物量を2原子%未満とするのが好ましい。このため、スパッタリング法によって反射層12を形成する際、プロセスチャンバの到達真空度は1×10−3Pa未満とすることが好ましい。また、到達真空度が10−4Paより低い条件で成膜する場合、成膜レートを1nm/秒以上、好ましくは10nm/秒以上として、不純物が取り込まれるのを防ぐことが好ましい。また、意図的な添加元素を1原子%より多く含む場合は、成膜レートを10nm/秒以上として付加的な不純物混入を極力防ぐことが好ましい。
【0054】
続いて、反射層12上に、例えばCr、Pt等の融点が1100℃以上である金属元素BまたはAl等の金属酸化物を形成しやすい金属元素Bを含有する中間層13を形成する。中間層13は、通常、スパッタリング法や真空蒸着法で形成され、その条件は、前述した反射層12を形成する場合と同様である。
【0055】
次に、中間層13の上に、例えばGa、In、Sn、Se等の融点が300℃以下の金属元素Aを含有する光記録層14を形成する。光記録層14の形成方法としては、不活性ガス、特にArガス中で合金ターゲットを用いて行われるスパッタリング法が通常用いられる。なお、光記録層14および中間層13の厚さは、機械的強度及び信頼性の面からの制限の他に、多層の構成に伴う干渉効果も考慮して、レーザ光17の吸収効率が良く、記録信号の振幅すなわち記録状態と未記録状態のコントラストが大きくなるように選ばれる。
【0056】
さらに、本実施の形態においては、光記録層14の上に、例えば、ZnS−SiO等の誘電体からなる誘電体層15を形成し、しかる後、形成した誘電体層15上に、透明カバー層16を形成する。誘電体層15の形成方法としては、通常、スパッタリング法により形成する。透明カバー層16の形成方法は、通常、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂等を、スピンコート法、キャスト法等により塗布することによって形成する。なかでも、紫外線硬化性樹脂は、単量体そのままもしくは単量体を適当な溶剤に溶解して調製した塗布液を塗布し、紫外線を照射して硬化させることによって形成することができる。
このような工程を経ることによって、光記録媒体が製造されることになる。
【0057】
【実施例】
以下に、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜3、比較例1〜3)
光記録層の金属と中間層の金属との間で、合金が形成されているか否かを評価するために、Ag金属からなる反射層上に、表2に示した種々の金属からなる厚さ3nmの中間層を有する膜面入射型光記録媒体(以下、単に「光ディスク」という場合がある。)を作製してCNR(キャリア対ノイズ比)の測定を行った。光記録層と中間層との間で合金が形成されなければ、光記録層と反射層との間でも合金が形成されないことになる。以下、光ディスクの製法について詳細に説明する。
【0058】
0.32μmのトラックピッチでトラッキング用の溝が形成された厚さ1.1mmのポリカーボネート製基板上に、Agターゲットを用いて、1kW、Arガス圧0.3Paの条件下でDCスパッタリング成膜して、厚さ80nmのAg金属からなる反射層を直接形成した。
【0059】
次に、前記反射層の上に、表2に示す種々の金属を、反射層と同様な条件でスパッタリング成膜して、厚さ3nmの中間層を形成した。
【0060】
さらに、中間層の上に、In15Sb60Sn25(原子%比)を、300W、Arガス圧0.3Paの条件でRFスパッタにて成膜して、厚さ14nmの光記録層を形成した。
【0061】
さらにその上に、ZnS−SiO(20mol)を、600W、Arガス圧0.3Paの条件でRFスパッタにて成膜して、厚さ40nmの透明誘電体層を形成し、最後に紫外線硬化樹脂をスピンコート成膜して、厚さ100μmのカバー層を形成し、膜面入射型光記録媒体を調製した。
【0062】
このようにして調製した膜面入射型光記録媒体について、波長λが405nm、開口数(NA)0.85のレンズを有する評価機(パルステック社製 形式DDU−1000)を用いて、線速5.3m/s、4.1MHzの信号を記録した際の各膜面入射型光記録媒体のCNR(キャリア対ノイズレベル比)(単位:db)を、スペクトラムアナライザ(アドバンテスト社 形式TR−4171)にて測定した。結果を表2に示す。なお、表2中、合金が形成されていない場合は○、合金が形成されている場合は×と表示した。
【0063】
表2の結果から、中間層が、Al(実施例1)、Cr(実施例2)、Pt(実施例3)を含有する場合はCNRが十分に高い数値を示していることから、これらの金属と光記録層に存在するIn、SbおよびSn金属との合金が形成されないことが分かる(合金化の有無:○)。
【0064】
これに対して、中間層が、Au(比較例1)、Cu(比較例2)及びAg(比較例3)を含有する場合は、CNRの数値が低下していることから、これらの金属と光記録層に存在するIn、SbおよびSn金属との合金が形成されていることが分かる(合金化の有無:×)。
【0065】
【表2】
Figure 2004071011
【0066】
(実施例4)
図2は、Al、Cr、Ptの金属元素を、厚さ50nmのAg反射層上にスパッタ成膜した時の、各金属層の膜厚(nm)と表面粗さRa(nm)との関係図である。図2の縦軸は、Ag反射層上にスパッタ成膜した各金属層の表面粗さRa(nm)、横軸は、Ag反射層上にスパッタ成膜した各金属層の膜厚(nm)である。図中の符号は、Al(●)、Cr(■)、Pt(△)を示す。
【0067】
図2から、Ag膜の上に形成したAl、CrおよびPtの金属層表面のRaは3nm以下の数値を示し、良好な表面粗さが得られている。また、Ag膜の上に形成したこれらの金属層の厚さが10nm以下の場合は、表面のRaがさらに減少する。とくに、厚さが5nm以下になると、これらの金属層表面のRaは、ガラス基板上に形成したAg層の表面粗さRa(0.8nm程度)とほぼ同様の数値を示している。
【0068】
以上の結果より、Ag元素からなる反射層の表面に設けたAl、Cr及びPtから選ばれる元素またはこれらの合金からなる中間層は、表面粗さRaが小さく、光記録媒体内の光の乱反射が起こりにくい等の性能を有するものであることが分かる。とくに、各金属層の厚さが10nm以下、さらに5nm以下の場合は、金属層表面のRaは、ガラス基板上に形成したAg層の表面粗さRa(0.8nm程度)と同程度になり、表面粗さが極めて小さくなる。その結果、反射層のAg金属と光記録層に含有される金属とが合金を形成することを防止することができ、かつ表面粗さが良好な界面層が得られることがわかる。
【0069】
なお、実験方法は以下のとおりである。まず、DCスパッタ装置を用いて、1kw、0.3PaのArガス雰囲気中で、厚さ1mmのガラス基板上に、厚さ50nmのAg層を成膜して、その表面粗さ(Ra:中心線平均粗さ)を測定した。つぎに、1kW、0.3PaのArガス雰囲気中で、Al、CrおよびPtの金属のターゲットを用いて、Ag層の上に、厚さ1〜20nmのそれぞれの金属層を形成し、表面粗さ(Ra)を測定した。
【0070】
また、表面粗さ(Ra:中心線平均粗さ)の測定は、原子間力顕微鏡AFM(ディジタルインスツルメント社製 ナノスコープ3)を用いて行った。この測定は尖った探針と試料表面との原子間力を検出して、試料表面をXY方向に走査することにより行うものである。
【0071】
(実施例5)
光記録層としてIn15Sb60Sn25(原子%比)合金を用いた。この光記録層は、成膜形成時は低反射率の非晶質状態であるが、レーザ光を照射することにより高反射率の結晶質となり高コントラストの信号が書き込まれる追記型光記録層である。
【0072】
0.32μmのトラックピッチでトラッキング用の溝が形成された厚さ1.1mmのポリカーボネート製基板上に、Ag97CuAu(原子%比)合金のターゲット用いて、1kW、Arガス圧0.3Paの条件にてDCスパッタ成膜して、厚さ80nmの反射層を形成した。実施例4と同様にして、AFMにより反射層表面の表面粗さを測定したところ、Ra=0.8nmと良好な表面粗さを示した。
【0073】
次に、前記反射層の上にAl95Cr(原子%比)合金を、反射層と同様な条件でスパッタ成膜して、厚さ3nmの中間層を形成した。この状態で、AFMで表面粗さを測定したところRa=0.85nmであった。
【0074】
続いて、これらの反射層と中間層が形成された上に、In15Sb60Sn25(原子%比)合金を、300W、Arガス圧0.3Paの条件でRFスパッタ成膜して、厚さ14nmの追記型光記録層を形成した。
【0075】
さらに、その追記型光記録層の上に、ZnS−SiO(20mol)を、600W、Arガス圧0.3PaでRFスパッタ成膜して、厚さ40nmの透明誘電体層を形成し、最後に、紫外線硬化樹脂をスピンコート成膜して厚さ100μmのカバー層を形成し、膜面入射型光記録媒体を調製した。
【0076】
このようにして調製した膜面入射型光記録媒体に、波長λが405nm、開口数(NA)0.85のレンズを有する評価機(パルステック社製 形式DDU−1000)を用いて、線速5.3m/sにて0.16μmマーク長の信号(17.1MHz)を記録し、0.3mwの再生パワーで再生したところ、45dBのCNRが得られた。光記録媒体が高感度であるため、1.6mwの低パワーにおいて記録可能であった。さらに、同様な記録パワーで1−7変調のランダムパターンを記録したところ、6.5%の良好なジッタ値が得られた。
【0077】
(比較例4)
反射層と光記録層との間に中間層を設けなかったこと以外は実施例5と同様にして、膜面入射型光記録媒体を作製した。この膜面入射型光記録媒体に、波長λが405nmの青色レーザ光を、開口数(NA)0.85のレンズにより収束し、線速5.3m/sにて0.16μmマーク長の信号を記録し、0.3mwの再生パワーで再生したところ、CNRが32dBの低い数値を示した。CNRが低い原因は、反射層と光記録層との界面の混合により、ノイズレベルが10dB以上増大するためである。
【0078】
【発明の効果】
かくして本発明によれば、波長λが500nm以下のレーザ光を入射させて情報の記録、消去及び再生を行う際に、良好なCNR、ジッタを有する膜面入射型光記録媒体を得ることができる。
本発明の膜面入射型光記録媒体は、反射層と光記録層との界面の混合が防止されるために、長期保存環境下での安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の膜面入射型光記録媒体の1実施形態における層構成を示す断面模式図である。
【図2】Al、Cr、Ptの金属元素を、厚さ50nmのAg反射層上にスパッタ成膜した時の、各金属層の膜厚と表面粗さとの関係図である。
【符号の説明】
11…基板、12…反射層、13…中間層、14…光記録層、15…誘電体層、16…透明カバー層、17…レーザ光、18…対物レンズ

Claims (8)

  1. 基板上に、Ag元素を主成分とする反射層と当該反射層に接する中間層と当該中間層に接する光記録層とを、この順番に設け、
    前記光記録層が、融点が300℃以下の金属元素Aを含有し、
    前記中間層は、波長が400nmの光に対する反射率が50%以上であり、かつ、前記光記録層中の金属元素Aと化合物を形成しない金属元素Bを含有することを特徴とする膜面入射型光記録媒体。
  2. 前記中間層に含有される金属元素Bが、融点が1100℃以上である金属元素または金属酸化物を形成しやすい金属元素であることを特徴とする請求項1記載の膜面入射型光記録媒体。
  3. 前記中間層に含有される金属元素Bが、Al、CrおよびPtから選ばれる少なくとも1種の金属元素であることを特徴とする請求項1または2記載の膜面入射型光記録媒体。
  4. 前記中間層に含有されるAg元素の濃度が15原子%以下であることを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の膜面入射型光記録媒体。
  5. 前記反射層は、少なくとも50原子%のAg元素を含有し、かつ、前記基板上に直接設けられていることを特徴とする請求項1乃至4何れか1項記載の膜面入射型光記録媒体。
  6. 前記光記録層に含有される前記金属元素Aが、Ga、Se、InおよびSnから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至5何れか1項記載の膜面入射型光記録媒体。
  7. 前記膜面入射型光記録媒体が、追記型光記録媒体であることを特徴とする請求項1乃至6何れか1項記載の膜面入射型光記録媒体。
  8. 基板上に、Ag元素を主成分とする反射層を形成する工程と、
    前記反射層に接して、融点が1100℃以上である金属元素Bまたは金属酸化物を形成しやすい金属元素Bを含有する中間層を形成する工程と、
    前記中間層に接して、融点が300℃以下の金属元素Aを含有する光記録層を形成する工程と、
    を有することを特徴とする膜面入射型光記録媒体の製造方法。
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