JP2004071008A - 磁気記録媒体および磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐摩耗性、耐環境性にすぐれた磁気記録媒体や磁気記録装置を提供する。
【解決手段】磁気記録媒体の製造方法において、磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、特定のガスで構成する。あるいは、磁性体保護層と潤滑剤層との間にある異物量が、イオンクロマトグラフで測定した場合に1.0μg/m2以下となるように磁気記録媒体を作製する。
【選択図】 なし
【解決手段】磁気記録媒体の製造方法において、磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、特定のガスで構成する。あるいは、磁性体保護層と潤滑剤層との間にある異物量が、イオンクロマトグラフで測定した場合に1.0μg/m2以下となるように磁気記録媒体を作製する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体および磁気記録装置に関し、特に潤滑特性に優れた磁気記録媒体および磁気記録装置、ならびにそのような磁気記録媒体および磁気記録装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気テープ装置あるいはフロッピーディスク装置では動作中磁気ヘッドドラムあるいは磁気ヘッドが常に磁気記録媒体と接触している。また、磁気記録装置であるハードディスク装置でもCSS方式に代表されるように起動時には磁気記録媒体とヘッドとが接触しており、起動後も外部からの振動等により間欠的なヘッドと磁気記録媒体との接触がある。
【0003】
この場合、磁気記録媒体の磁性層自体は潤滑性を有さず、あるいは潤滑性がきわめて低いため、長時間の接触が起こると、磁気ヘッドあるいは磁気記録媒体の磁性体層が摩耗し、いわゆるヘッド目詰まりやヘッドクラッシュが生じる。
【0004】
そこで一般的には、磁性体上に、まず物理的気相成長法(PVD)または化学的気相法(CVD)でシリコン酸化物やシリコン窒化物あるいはダイヤモンドライクカーボンの磁性体保護層を形成し、続いて、その磁性体保護層上に、0.5〜10nmの厚さの極めて薄い潤滑剤層を形成している。
【0005】
従来、このように磁性体上に磁性体保護層,潤滑剤層を形成する際には、磁性体保護層を形成する工程と潤滑剤層を形成する工程との間で処理対象物を大気中で搬送していた。なお、本明細書において「処理対象物」とは、磁気記録媒体を製造するに当たり各工程で取り扱われ、各工程間を移動する磁気記録媒体の製造中間体や最終磁気記録媒体を意味する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この大気中での搬送処理のため、磁性体保護層表面に、固体状の異物が付着するとともに、その他の異物が吸着され、各種の問題を引き起こすことが判明した。
【0007】
固体状の異物は、直接磁気ヘッドを摩耗させ、これにより磁気記録媒体の磁性体層の摩耗を引き起こす原因となる。
【0008】
また、その他の異物とは、磁性体保護層表面に付着した場合、潤滑剤の被覆性を劣化させるとともに、使用環境によっては、使用中の大気中の水分あるいは磁性体保護層あるいは潤滑剤と反応しこれが磁気記録媒体を腐食し、あるいは反応生成物がヘッドに転写されヘッドクラッシュの原因となり得る異物である。
【0009】
ここで潤滑剤の被覆性が劣化するとは、磁性体保護層と潤滑剤層との間に固体粒子が存在したり、潤滑剤で被覆されない磁性体保護層を生じたり、ブリスタ等が存在したり、磁性体保護層と潤滑剤層との間に剥がれが存在したりする状態になることを意味する。
【0010】
なお、これらの原因物質は、必ずしも、曝される大気中に存在していたものとは限らず、たとえば磁性体保護層を形成する真空雰囲気下においてすでに磁性体保護層上に存在していたものや、磁性体保護層を形成する真空雰囲気下においてすでに磁性体保護層上に存在していたものが大気に曝されることにより、化学反応等により変質したものも含まれ得る。
【0011】
本発明の目的は、磁性体保護層と潤滑剤層との界面に不純物が存在しないかあるいは存在してもその影響が少ない磁気記録媒体を得ることにより、耐環境性の高い磁気記録媒体とその製造方法とを提供することにある。ここで、耐環境性が高いとは、使用環境中に長期間放置しても磁気記録媒体の品質が劣化せず、あるいは劣化しがたいことを意味する。
【0012】
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の1態様によれば、磁性体上に磁性体保護層を形成する磁性体保護層形成工程と、これについで当該磁性体保護層上に潤滑剤層を形成する潤滑剤層形成工程とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、
磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、ULPAフィルタとケミカルフィルタとを通過させた、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成する磁気記録媒体の製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の他の1態様によれば、磁性体上に磁性体保護層を形成する磁性体保護層形成工程と、これについで当該磁性体保護層上に潤滑剤層を形成する潤滑剤層形成工程とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、
磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、下記の条件の、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成する磁気記録媒体の製造方法が提供される。
【0015】
平均粒径500nm以上の固体粒子濃度・・40個/m3以下
亜硫酸ガス濃度・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
ギ酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
酢酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
両者の態様を結合することが好ましい。
【0016】
また、前記磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を構成する、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスがナフタレンを含有することが好ましい。
【0017】
さらに、前記磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成するに際し、その前の段階の雰囲気が真空であることが好ましい。
【0018】
また、本発明のさらに他の1態様によれば、磁性体と磁性体保護層と潤滑剤層とをこの順に有する磁気記録媒体であって、
当該磁性体保護層と当該潤滑剤層との間にある異物量が、イオンクロマトグラフで測定した場合に1.0μg/m2以下となる磁気記録媒体が提供される。
【0019】
なお、以下に説明する発明の実施の形態や図面の中で、本発明の更なる特徴が明らかにされる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図、実施例および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0021】
本発明における不純物には、上記したような固体状粒子とその他の異物とがある。
【0022】
固体状粒子としては、製造工程中の雰囲気中に存在する塵等の各種の物が含まれる。
【0023】
その他の異物としては、元来雰囲気中にガス状またはミスト状に存在したもので、磁性体保護層と潤滑剤層との間にトラップされた場合に、潤滑剤の被覆性を劣化させたり、磁気記録媒体を腐食したり、あるいは反応生成物がヘッドに転写されヘッドクラッシュの原因となるものが該当する。
【0024】
具体的には、そのまま、あるいは変質して固体状の異物となり、あるいは化学反応等を受けた状態になり、あるいは、活性化された状態になった結果、そのような問題を引き起こすものと考えられている。たとえば、ギ酸の場合には、そのままの状態で吸着されている場合や、HCOOHといっても、OHの結合がかなり切れやすくなった状態等、部分的に活性化した状態で吸着されている場合や、[HCOO・]ラジカルのような状態で吸着されている場合等各種のものが考えられる。
【0025】
その他の異物には、具体的には、酸性、塩基性または極性のある化合物、たとえば、塩素イオンの源となり得る化合物、亜硫酸ガス、窒素酸化物、アンモニアガス、ギ酸、酢酸、その他の脂肪酸が含まれ得る。
【0026】
本発明においてULPAフィルタとは、JIS8122−1994によれば、定格流量(最大風量)において、直径0.15μmの粒子を99.9995%以上除去する性能を有するフィルタである。また、ケミカルフィルタとは、各種ガスやミストを吸着や化学反応により除去する装置を意味する。
【0027】
前者により固体粒子を除去し、後者により、気体状またはミスト状の各種の化学物質を除去することができる。磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、この両者の組み合わせにより処理した空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガス(以下、「空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガス」を「所定のガス」ともいう)で構成することにより、本発明の目的の一つである、磁性体保護層と潤滑剤層との界面に不純物が存在しないかあるいは存在してもその影響が少ない磁気記録媒体を得ることができる。
【0028】
この理由は、第一に、通常の大気中に曝すことにより、不純物が、大気中から、処理対象物表面に移行することを防止できることであろう。
【0029】
なお、窒素や希ガスを製造業者から入手したままの状態では不純物が存在するとは思えない場合であっても、このガスを使用する工程に至る配管等で汚染が生じる場合があるようであり、ULPAフィルタとケミカルフィルタとの使用は、窒素や希ガスを純粋な状態で使用する場合にも有用であることが多い。なお、ここで、窒素や希ガスの純度としては、99.9999%以上のものが好ましい。
【0030】
磁気記録媒体の品質に影響を及ぼし得る固体状粒子やその他の異物としては、磁性体保護層形成工程から持ち込まれるものも考えられる。通常、磁性体保護層形成工程は真空雰囲気下にあるが、それでも、磁気記録媒体の品質に影響を及ぼし得る固体状粒子やその他の異物については、その影響を無視し得ない。
【0031】
上記のように処理した所定のガスで希釈されることにより、処理対象物表面に存在する固体状粒子やその他の異物の量を減少させることが可能になるものと推定されている。
【0032】
特に、不純物がすでに磁性体保護層上に付着した状態にある場合には、そのままの状態であれば、磁性体保護層上から雰囲気中に離脱し得るものが、大気と接触すると、活性化したり、磁性体保護層上により強固に付着されてしまう場合があり得る。この意味では、空気を使用せず、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスを使用する方が有利である。
【0033】
なお、空気中の炭酸ガスに付いては、空気中に存在する程度の濃度では影響が少ないが、酸性ガスであり、負の影響を与える可能性があるので、ケミカルフィルタやその他の除去装置で除去または減少させることが好ましい場合もある。
【0034】
上記を総括していえば、真空状態から、通常の大気雰囲気ではなく、上記のように処理した所定のガス雰囲気中に移行させることにより、化学反応等による変質を抑制でき、また、上記のように処理した所定のガスで希釈されることにより、処理対象物表面に存在する固体状粒子やその他の異物の量を減少させることが可能になるものと推定されている。すなわち、磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気は、真空から所定のガスに移行する二段階で構成することが好ましい。なお、この場合の真空度は高ければ高い方がよい。具体的には、10Pa以下が好ましい。
【0035】
ケミカルフィルタで除去すべき不純物には、上記のような酸性、塩基性または極性のある化合物が含まれる。具体的には、磁性体保護層と潤滑剤層との間にある異物量に対する影響を見て、どのような不純物を除去すべきかを判断することができる。従って、ケミカルフィルタを採用する際には、各種の物質を除去できるものをテストし、その効果を見て決定することが好ましい。なお、磁性体保護層と潤滑剤層との間にある異物量については後程説明する。
【0036】
不純物に関する影響についての検討の過程から、処理対象物の所定のガス雰囲気としては、ULPAフィルタやケミカルフィルタで処理するか否かを問わず一般的に、下記の条件を満足することが好ましいことが判明した。いずれも、少なければ少ない方が好ましいので、特に下限はない。ULPAフィルタやケミカルフィルタでの処理と組み合わせればより好ましい場合が多い。
【0037】
平均粒径500nm以上の固体粒子濃度・・40個/m3以下
亜硫酸ガス濃度・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
ギ酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
酢酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
上記各範囲を超えると、上記したような磁気ヘッドの摩耗、磁気記録媒体の磁性体層の摩耗、腐食、ヘッドクラッシュといった問題が増加する。
【0038】
なお、本発明において、所定のガスには、本発明の趣旨に反しない限り、他のガス成分を含む場合も含む。本発明の趣旨に反しないか否かは、他の成分を人為的に所定のガスに混ぜ、その品質に対する影響を調べることで確認することができる。一般的には、極性のない炭化水素やそのフッ素置換体は、磁性体保護層上を覆い、磁性体保護層と潤滑剤層との接着力を低下させたりして被覆性を劣化させなければ、使用が可能である場合が多い。
【0039】
特に、所定のガスがナフタレンを含有する場合、良好な結果が得られることが判明した。理由は定かでないが、処理対象物表面にナフタレンが吸着されることにより、処理対象物表面に存在する固体状粒子やその他の異物の量を減少させることができるためと思われる。所定のガス中におけるナフタレンの濃度としては70mg/L以上が好ましく、80mg/L以上がさらに好ましい。70mg/L未満では、ナフタレンを添加する効果が現れにくい。なお、上限はナフタレンの飽和濃度になる。
【0040】
具体的には、潤滑剤層が形成される前に磁性体保護層表面に生成した活性化された不純物にナフタレンが一時的に吸着し潤滑剤層が形成されると同時にこれが潤滑剤溶媒中に離散するため、不純物の悪影響を解消し得るのが理由の一つではないかと推察されている。
【0041】
一方、磁気記録媒体の品質の観点から見た場合には、磁気記録媒体の作製方法のいかんを問わず、磁性体保護層と潤滑剤層との間にある不純物を、異物の質と量とで把握した場合、イオンクロマトグラフ法で測定した場合に1.0μg/m2以下となることが好ましいことが判明した。ピンホール測定の結果0.5個/cm2以下に抑えられるからである。なお、イオンクロマトグラフ法で測定される異物には、ギ酸、酢酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、塩酸等が含まれる。
【0042】
上記のようにして、本発明に係る磁気記録媒体および製造法によれば、磁性体保護層と潤滑剤層との界面に不純物が存在しないかあるいは存在してもその影響が少ないので、潤滑剤の被覆性を改善するとともに、使用中に大気中の水分あるいは磁性体保護層あるいは潤滑剤と反応して磁気記録媒体を腐食し、あるいは反応生成物がヘッドに転写されヘッドクラッシュの原因となるような問題を防止でき、耐摩耗性、耐環境性にすぐれた磁気記録媒体を得ることができる。従って、潤滑剤層の薄膜化に対する信頼性向上、高記録密度化およびヘッドの動作安定性に顕著な効果が発揮され、磁気テープ装置、CSS方式あるいはヘッドの低浮上化されたハードディスク装置等に適用した場合極めて有効である。
【0043】
なお、以上は、磁気記録媒体について主に説明したが、ハードディスク装置のように、磁気記録媒体が組み込まれた磁気記録装置においても、本発明の効果が得られることは言うまでもない。すなわち、本発明は、上記の磁気記録媒体を組み込んだ磁気録装置も包含するものである。
【0044】
【実施例】
次に本発明の実施例および比較例を詳述する。
【0045】
[実施例1]
図1に本発明に係る磁気記録媒体の構成をハードディスク装置の記録媒体であるハードディスクを例に示す。ガラス層1の表面に、ガラス層1からの物質の拡散を防止し、磁性体層3に異方性を与える等の機能を有するNiP層2などを形成した基板の上に磁性体層3が形成してある。
【0046】
磁性体層3の上にシリコン化合物やダイヤモンドライクカーボン(DLC)などの硬質保護層(磁性体保護層)4が形成されている。硬質保護層4の上には潤滑剤層5が形成されている。
【0047】
本発明によれば、保護層4と潤滑剤層5との界面には不純物が存在しないかあるいは存在してもその影響が少ないようにでき、潤滑剤を塗布した場合に欠陥のないまたは少ない潤滑塗布膜が得られる。
【0048】
[実施例2]
実施例1のような本発明の磁気記録媒体の一つであるハードディスクの製造方法を図2を用いて説明する。
【0049】
図2に、本発明に係る磁気記録装置の一つであるハードディスクの磁気記録媒体部分を製造するために使用する装置の例のモデル的横断面図を示す。
【0050】
この装置は、気圧調節室6と潤滑剤塗布室17とその間にある搬送室15を備える。気圧調節室6と潤滑剤塗布室17との間にはゲートバルブ12があり、潤滑剤塗布室17と搬送室15との間にはゲートバルブ18がある。気圧調節室6と潤滑剤塗布室17と搬送室15とのそれぞれには、所定のガスの吸気管8と排気管14とが接続されている。吸気管8にはULPAフィルタ22およびケミカルフィルタ21が取り付けられている。潤滑剤塗布室17への供給管にはナフタレンを充填したヒーターカラム23が設置されている。従って、気圧調節室6と搬送室15とには、ULPAフィルタ22とケミカルフィルタ21とで処理した所定のガスが、潤滑剤塗布室17には、さらにナフタレンを含んだ所定のガスが供給されることになる。
【0051】
気圧調節室6には、ゲートバルブ12のある側とは反対の側にゲートバルブ7がある。また、真空状態と常圧との気圧調節室のために真空排気用のロータリーポンプ13とバルブ9,10,11とが備えられている。
【0052】
搬送室15内にはディスク搬送用の搬送アーム16が設置されている。
【0053】
潤滑剤塗布室17には潤滑剤槽20とディスクを浸漬するための昇降式の塗布アーム19とが設置されている。
【0054】
このような図2の構成において、まず、ゲートバルブ7,12、バルブ10、バルブ11を閉とし、バルブ9を開としてロータリポンプ13を作動させ、気圧調節室6を真空状態にする。ついで、ゲートバルブ7を開け、真空下、磁性体保護層を成膜したハードディスクを気圧調節室の左側にある(図示されてない)磁性体保護層成膜装置本体より気圧調節室6に搬送する。磁性体保護層成膜装置では、シリコン化合物やダイヤモンドライクカーボン(DLC)などの硬質保護層(磁性体保護層)がスパッタリング等により形成されている。
【0055】
次にゲートバルブ7を閉じ、バルブ9を閉じ、ロータリポンプ13を停止し、バルブ10を開とし、気圧調節室6を所定のガスで満たす。
【0056】
気圧調節室6の圧力が常圧になった後、バルブ11を開き、気圧調節室6内が所定のガスで置換し続けられるようにする。
【0057】
次にゲートバルブ12を開とし、搬送アーム16がディスクを気圧調節室6から搬送室15に搬送する。このとき搬送室は吸気管8より供給される所定のガスですでに完全に置換されている。
【0058】
次にゲートバルブ18を開とし、搬送アーム16により、ハードディスクを潤滑剤塗布室17内の塗布アーム19に受け渡す。このとき、潤滑剤塗布室17は吸気管8より供給されるナフタレンガスを含む所定のガス雰囲気になっている。
【0059】
その後塗布アーム19を下降させ、ディスクを潤滑剤槽20内の潤滑剤に30秒程度浸漬した後、アームを上昇させて潤滑剤の塗布が完了する。
【0060】
装置内各室を所定のガス雰囲気にすることによって、磁気記録媒体の磁性体保護層と潤滑剤層との界面に不純物が存在しないかあるいは存在してもその影響が少ない磁気記録媒体を得ることのできる保護潤滑層が得られる。供給される所定のガスが空気ではなく、精製された高純度の窒素、アルゴン等の希ガスの場合には、ULPAフィルタ22やケミカルフィルタ21を省略できる場合もあり得る。
【0061】
なお、装置構成を変更して、気圧調節室6や搬送室15の機構を省略することも可能である。
【0062】
所定のガスの流量としては毎分各室の容積の2倍以上となるように設定することが望ましい。
【0063】
[実施例3]
実施例2の装置を用い、次の条件でハードディスクを作製し、ハードディスク装置を完成させた。
【0064】
所定のガスとして、純度99.9999%の純窒素を用いた。
【0065】
所定のガス中のナフタレンの濃度は82mg/Lであった。
【0066】
亜硫酸ガス、ギ酸、酢酸をケミカルフィルタの捕集対象とし、荏原製作所製のEPIX−SCを採用した。
【0067】
雰囲気ガス中の平均粒径500nm以上の固体粒子濃度は40個/m3以下であり、亜硫酸ガス、ギ酸、酢酸の濃度はいずれも2.0体積ppb以下であった。
【0068】
潤滑剤塗布室17では、潤滑剤としてアウジモント社製のAM3001を使用した。
【0069】
ピンホール測定の結果は、0.5個/cm2以下であった。また、イオンクロマトグラフで測定した異物量は1.0μg/m2以下であった。
【0070】
[比較例1]
実施例2の装置を用い、次の条件以外は実施例3と同様にしてハードディスクを作製し、ハードディスク装置を完成させた。
【0071】
所定のガス、ULPAフィルタ、ケミカルフィルタ、ナフタレンを使用せず、所定のガスの代わりに、通常の空気を使用した。
【0072】
ピンホール測定の結果は、100個/cm2以上であった。
【0073】
(付記1) 磁性体上に磁性体保護層を形成する磁性体保護層形成工程と、これについで当該磁性体保護層上に潤滑剤層を形成する潤滑剤層形成工程とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、
磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、ULPAフィルタとケミカルフィルタとを通過させた、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成する磁気記録媒体の製造方法。
【0074】
(付記2) 磁性体上に磁性体保護層を形成する磁性体保護層形成工程と、これについで当該磁性体保護層上に潤滑剤層を形成する潤滑剤層形成工程とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、
磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、下記の条件の、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成する磁気記録媒体の製造方法。
【0075】
平均粒径500nm以上の固体粒子濃度・・40個/m3以下
亜硫酸ガス濃度・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
ギ酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
酢酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
(付記3) 磁性体上に磁性体保護層を形成する磁性体保護層形成工程と、これについで当該磁性体保護層上に潤滑剤層を形成する潤滑剤層形成工程とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、
磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、ULPAフィルタとケミカルフィルタとを通過させた、下記の条件の、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成する磁気記録媒体の製造方法。
【0076】
平均粒径500nm以上の固体粒子濃度・・40個/m3以下
亜硫酸ガス濃度・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
ギ酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
酢酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
(付記4) 前記磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を構成する、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスがナフタレンを含有する、付記1〜3のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0077】
(付記5) 前記磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成するに際し、その前の段階の雰囲気が真空である付記1〜4のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0078】
(付記6) 磁性体上に磁性体保護層を形成する磁性体保護層形成工程と、これについで当該磁性体保護層上に潤滑剤層を形成する潤滑剤層形成工程とを含む磁気記録装置の製造方法であって、
磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、ULPAフィルタとケミカルフィルタとを通過させた空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成する磁気記録装置の製造方法。
【0079】
(付記7) 磁性体上に磁性体保護層を形成する磁性体保護層形成工程と、これについで当該磁性体保護層上に潤滑剤層を形成する潤滑剤層形成工程とを含む磁気記録装置の製造方法であって、
磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、下記の条件の空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成する磁気記録装置の製造方法。
【0080】
平均粒径500nm以上の固体粒子濃度・・40個/m3以下
亜硫酸ガス濃度・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
ギ酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
酢酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
(付記8) 磁性体上に磁性体保護層を形成する磁性体保護層形成工程と、これについで当該磁性体保護層上に潤滑剤層を形成する潤滑剤層形成工程とを含む磁気記録装置の製造方法であって、
磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、ULPAフィルタとケミカルフィルタとを通過させた、下記の条件の空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成する磁気記録装置の製造方法。
【0081】
平均粒径500nm以上の固体粒子濃度・・40個/m3以下
亜硫酸ガス濃度・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
ギ酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
酢酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
(付記9) 前記磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を構成する空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスがナフタレンを含有する、付記6〜8のいずれかに記載の磁気記録装置の製造方法。
【0082】
(付記10) 前記磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成するに際し、その前の段階の雰囲気が真空である付記6〜9のいずれかに記載の磁気記録装置の製造方法。
【0083】
(付記11) 磁性体と磁性体保護層と潤滑剤層とをこの順に有する磁気記録媒体であって、
当該磁性体保護層と当該潤滑剤層との間にある異物量が、イオンクロマトグラフで測定した場合に1.0μg/m2以下となる磁気記録媒体。
【0084】
(付記12) 磁性体と磁性体保護層と潤滑剤層とをこの順に有する磁気記録装置であって、
当該磁性体保護層と当該潤滑剤層との間にある異物量が、イオンクロマトグラフで測定した場合に1.0μg/m2以下となる磁気記録装置。
【0085】
【発明の効果】
本発明の磁気記録媒体および製造法によれば、耐摩耗性、耐環境性にすぐれた磁気記録媒体を得ることができる。従って、潤滑剤層の薄膜化に対する信頼性向上、高記録密度化およびヘッドの動作安定性に顕著な効果が発揮され、磁気テープ装置、CSS方式あるいはヘッドの低浮上化されたハードディスク装置等に適用した場合極めて有効である。
【0086】
なお、上記に開示した内容から、下記の付記に示した発明が導き出せる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気記録媒体の構成例を示す概略図である。
【図2】本発明の方法を実施するための装置例の概略図である。
【符号の説明】
1 ガラス層
2 NiP層
3 磁性体層
4 硬質保護層(磁性体保護層)
5 潤滑剤層
6 気圧調節室
7,12,18
ゲートバルブ
8 吸気管
9,10,11
バルブ
13 ロータリーポンプ
14 排気管
15 搬送室
16 搬送アーム
17 潤滑剤塗布室
19 塗布アーム
20 潤滑剤槽
21 ケミカルフィルタ
22 ULPAフィルタ
23 ヒーターカラム
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体および磁気記録装置に関し、特に潤滑特性に優れた磁気記録媒体および磁気記録装置、ならびにそのような磁気記録媒体および磁気記録装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気テープ装置あるいはフロッピーディスク装置では動作中磁気ヘッドドラムあるいは磁気ヘッドが常に磁気記録媒体と接触している。また、磁気記録装置であるハードディスク装置でもCSS方式に代表されるように起動時には磁気記録媒体とヘッドとが接触しており、起動後も外部からの振動等により間欠的なヘッドと磁気記録媒体との接触がある。
【0003】
この場合、磁気記録媒体の磁性層自体は潤滑性を有さず、あるいは潤滑性がきわめて低いため、長時間の接触が起こると、磁気ヘッドあるいは磁気記録媒体の磁性体層が摩耗し、いわゆるヘッド目詰まりやヘッドクラッシュが生じる。
【0004】
そこで一般的には、磁性体上に、まず物理的気相成長法(PVD)または化学的気相法(CVD)でシリコン酸化物やシリコン窒化物あるいはダイヤモンドライクカーボンの磁性体保護層を形成し、続いて、その磁性体保護層上に、0.5〜10nmの厚さの極めて薄い潤滑剤層を形成している。
【0005】
従来、このように磁性体上に磁性体保護層,潤滑剤層を形成する際には、磁性体保護層を形成する工程と潤滑剤層を形成する工程との間で処理対象物を大気中で搬送していた。なお、本明細書において「処理対象物」とは、磁気記録媒体を製造するに当たり各工程で取り扱われ、各工程間を移動する磁気記録媒体の製造中間体や最終磁気記録媒体を意味する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この大気中での搬送処理のため、磁性体保護層表面に、固体状の異物が付着するとともに、その他の異物が吸着され、各種の問題を引き起こすことが判明した。
【0007】
固体状の異物は、直接磁気ヘッドを摩耗させ、これにより磁気記録媒体の磁性体層の摩耗を引き起こす原因となる。
【0008】
また、その他の異物とは、磁性体保護層表面に付着した場合、潤滑剤の被覆性を劣化させるとともに、使用環境によっては、使用中の大気中の水分あるいは磁性体保護層あるいは潤滑剤と反応しこれが磁気記録媒体を腐食し、あるいは反応生成物がヘッドに転写されヘッドクラッシュの原因となり得る異物である。
【0009】
ここで潤滑剤の被覆性が劣化するとは、磁性体保護層と潤滑剤層との間に固体粒子が存在したり、潤滑剤で被覆されない磁性体保護層を生じたり、ブリスタ等が存在したり、磁性体保護層と潤滑剤層との間に剥がれが存在したりする状態になることを意味する。
【0010】
なお、これらの原因物質は、必ずしも、曝される大気中に存在していたものとは限らず、たとえば磁性体保護層を形成する真空雰囲気下においてすでに磁性体保護層上に存在していたものや、磁性体保護層を形成する真空雰囲気下においてすでに磁性体保護層上に存在していたものが大気に曝されることにより、化学反応等により変質したものも含まれ得る。
【0011】
本発明の目的は、磁性体保護層と潤滑剤層との界面に不純物が存在しないかあるいは存在してもその影響が少ない磁気記録媒体を得ることにより、耐環境性の高い磁気記録媒体とその製造方法とを提供することにある。ここで、耐環境性が高いとは、使用環境中に長期間放置しても磁気記録媒体の品質が劣化せず、あるいは劣化しがたいことを意味する。
【0012】
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の1態様によれば、磁性体上に磁性体保護層を形成する磁性体保護層形成工程と、これについで当該磁性体保護層上に潤滑剤層を形成する潤滑剤層形成工程とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、
磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、ULPAフィルタとケミカルフィルタとを通過させた、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成する磁気記録媒体の製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の他の1態様によれば、磁性体上に磁性体保護層を形成する磁性体保護層形成工程と、これについで当該磁性体保護層上に潤滑剤層を形成する潤滑剤層形成工程とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、
磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、下記の条件の、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成する磁気記録媒体の製造方法が提供される。
【0015】
平均粒径500nm以上の固体粒子濃度・・40個/m3以下
亜硫酸ガス濃度・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
ギ酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
酢酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
両者の態様を結合することが好ましい。
【0016】
また、前記磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を構成する、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスがナフタレンを含有することが好ましい。
【0017】
さらに、前記磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成するに際し、その前の段階の雰囲気が真空であることが好ましい。
【0018】
また、本発明のさらに他の1態様によれば、磁性体と磁性体保護層と潤滑剤層とをこの順に有する磁気記録媒体であって、
当該磁性体保護層と当該潤滑剤層との間にある異物量が、イオンクロマトグラフで測定した場合に1.0μg/m2以下となる磁気記録媒体が提供される。
【0019】
なお、以下に説明する発明の実施の形態や図面の中で、本発明の更なる特徴が明らかにされる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図、実施例および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0021】
本発明における不純物には、上記したような固体状粒子とその他の異物とがある。
【0022】
固体状粒子としては、製造工程中の雰囲気中に存在する塵等の各種の物が含まれる。
【0023】
その他の異物としては、元来雰囲気中にガス状またはミスト状に存在したもので、磁性体保護層と潤滑剤層との間にトラップされた場合に、潤滑剤の被覆性を劣化させたり、磁気記録媒体を腐食したり、あるいは反応生成物がヘッドに転写されヘッドクラッシュの原因となるものが該当する。
【0024】
具体的には、そのまま、あるいは変質して固体状の異物となり、あるいは化学反応等を受けた状態になり、あるいは、活性化された状態になった結果、そのような問題を引き起こすものと考えられている。たとえば、ギ酸の場合には、そのままの状態で吸着されている場合や、HCOOHといっても、OHの結合がかなり切れやすくなった状態等、部分的に活性化した状態で吸着されている場合や、[HCOO・]ラジカルのような状態で吸着されている場合等各種のものが考えられる。
【0025】
その他の異物には、具体的には、酸性、塩基性または極性のある化合物、たとえば、塩素イオンの源となり得る化合物、亜硫酸ガス、窒素酸化物、アンモニアガス、ギ酸、酢酸、その他の脂肪酸が含まれ得る。
【0026】
本発明においてULPAフィルタとは、JIS8122−1994によれば、定格流量(最大風量)において、直径0.15μmの粒子を99.9995%以上除去する性能を有するフィルタである。また、ケミカルフィルタとは、各種ガスやミストを吸着や化学反応により除去する装置を意味する。
【0027】
前者により固体粒子を除去し、後者により、気体状またはミスト状の各種の化学物質を除去することができる。磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、この両者の組み合わせにより処理した空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガス(以下、「空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガス」を「所定のガス」ともいう)で構成することにより、本発明の目的の一つである、磁性体保護層と潤滑剤層との界面に不純物が存在しないかあるいは存在してもその影響が少ない磁気記録媒体を得ることができる。
【0028】
この理由は、第一に、通常の大気中に曝すことにより、不純物が、大気中から、処理対象物表面に移行することを防止できることであろう。
【0029】
なお、窒素や希ガスを製造業者から入手したままの状態では不純物が存在するとは思えない場合であっても、このガスを使用する工程に至る配管等で汚染が生じる場合があるようであり、ULPAフィルタとケミカルフィルタとの使用は、窒素や希ガスを純粋な状態で使用する場合にも有用であることが多い。なお、ここで、窒素や希ガスの純度としては、99.9999%以上のものが好ましい。
【0030】
磁気記録媒体の品質に影響を及ぼし得る固体状粒子やその他の異物としては、磁性体保護層形成工程から持ち込まれるものも考えられる。通常、磁性体保護層形成工程は真空雰囲気下にあるが、それでも、磁気記録媒体の品質に影響を及ぼし得る固体状粒子やその他の異物については、その影響を無視し得ない。
【0031】
上記のように処理した所定のガスで希釈されることにより、処理対象物表面に存在する固体状粒子やその他の異物の量を減少させることが可能になるものと推定されている。
【0032】
特に、不純物がすでに磁性体保護層上に付着した状態にある場合には、そのままの状態であれば、磁性体保護層上から雰囲気中に離脱し得るものが、大気と接触すると、活性化したり、磁性体保護層上により強固に付着されてしまう場合があり得る。この意味では、空気を使用せず、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスを使用する方が有利である。
【0033】
なお、空気中の炭酸ガスに付いては、空気中に存在する程度の濃度では影響が少ないが、酸性ガスであり、負の影響を与える可能性があるので、ケミカルフィルタやその他の除去装置で除去または減少させることが好ましい場合もある。
【0034】
上記を総括していえば、真空状態から、通常の大気雰囲気ではなく、上記のように処理した所定のガス雰囲気中に移行させることにより、化学反応等による変質を抑制でき、また、上記のように処理した所定のガスで希釈されることにより、処理対象物表面に存在する固体状粒子やその他の異物の量を減少させることが可能になるものと推定されている。すなわち、磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気は、真空から所定のガスに移行する二段階で構成することが好ましい。なお、この場合の真空度は高ければ高い方がよい。具体的には、10Pa以下が好ましい。
【0035】
ケミカルフィルタで除去すべき不純物には、上記のような酸性、塩基性または極性のある化合物が含まれる。具体的には、磁性体保護層と潤滑剤層との間にある異物量に対する影響を見て、どのような不純物を除去すべきかを判断することができる。従って、ケミカルフィルタを採用する際には、各種の物質を除去できるものをテストし、その効果を見て決定することが好ましい。なお、磁性体保護層と潤滑剤層との間にある異物量については後程説明する。
【0036】
不純物に関する影響についての検討の過程から、処理対象物の所定のガス雰囲気としては、ULPAフィルタやケミカルフィルタで処理するか否かを問わず一般的に、下記の条件を満足することが好ましいことが判明した。いずれも、少なければ少ない方が好ましいので、特に下限はない。ULPAフィルタやケミカルフィルタでの処理と組み合わせればより好ましい場合が多い。
【0037】
平均粒径500nm以上の固体粒子濃度・・40個/m3以下
亜硫酸ガス濃度・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
ギ酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
酢酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
上記各範囲を超えると、上記したような磁気ヘッドの摩耗、磁気記録媒体の磁性体層の摩耗、腐食、ヘッドクラッシュといった問題が増加する。
【0038】
なお、本発明において、所定のガスには、本発明の趣旨に反しない限り、他のガス成分を含む場合も含む。本発明の趣旨に反しないか否かは、他の成分を人為的に所定のガスに混ぜ、その品質に対する影響を調べることで確認することができる。一般的には、極性のない炭化水素やそのフッ素置換体は、磁性体保護層上を覆い、磁性体保護層と潤滑剤層との接着力を低下させたりして被覆性を劣化させなければ、使用が可能である場合が多い。
【0039】
特に、所定のガスがナフタレンを含有する場合、良好な結果が得られることが判明した。理由は定かでないが、処理対象物表面にナフタレンが吸着されることにより、処理対象物表面に存在する固体状粒子やその他の異物の量を減少させることができるためと思われる。所定のガス中におけるナフタレンの濃度としては70mg/L以上が好ましく、80mg/L以上がさらに好ましい。70mg/L未満では、ナフタレンを添加する効果が現れにくい。なお、上限はナフタレンの飽和濃度になる。
【0040】
具体的には、潤滑剤層が形成される前に磁性体保護層表面に生成した活性化された不純物にナフタレンが一時的に吸着し潤滑剤層が形成されると同時にこれが潤滑剤溶媒中に離散するため、不純物の悪影響を解消し得るのが理由の一つではないかと推察されている。
【0041】
一方、磁気記録媒体の品質の観点から見た場合には、磁気記録媒体の作製方法のいかんを問わず、磁性体保護層と潤滑剤層との間にある不純物を、異物の質と量とで把握した場合、イオンクロマトグラフ法で測定した場合に1.0μg/m2以下となることが好ましいことが判明した。ピンホール測定の結果0.5個/cm2以下に抑えられるからである。なお、イオンクロマトグラフ法で測定される異物には、ギ酸、酢酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、塩酸等が含まれる。
【0042】
上記のようにして、本発明に係る磁気記録媒体および製造法によれば、磁性体保護層と潤滑剤層との界面に不純物が存在しないかあるいは存在してもその影響が少ないので、潤滑剤の被覆性を改善するとともに、使用中に大気中の水分あるいは磁性体保護層あるいは潤滑剤と反応して磁気記録媒体を腐食し、あるいは反応生成物がヘッドに転写されヘッドクラッシュの原因となるような問題を防止でき、耐摩耗性、耐環境性にすぐれた磁気記録媒体を得ることができる。従って、潤滑剤層の薄膜化に対する信頼性向上、高記録密度化およびヘッドの動作安定性に顕著な効果が発揮され、磁気テープ装置、CSS方式あるいはヘッドの低浮上化されたハードディスク装置等に適用した場合極めて有効である。
【0043】
なお、以上は、磁気記録媒体について主に説明したが、ハードディスク装置のように、磁気記録媒体が組み込まれた磁気記録装置においても、本発明の効果が得られることは言うまでもない。すなわち、本発明は、上記の磁気記録媒体を組み込んだ磁気録装置も包含するものである。
【0044】
【実施例】
次に本発明の実施例および比較例を詳述する。
【0045】
[実施例1]
図1に本発明に係る磁気記録媒体の構成をハードディスク装置の記録媒体であるハードディスクを例に示す。ガラス層1の表面に、ガラス層1からの物質の拡散を防止し、磁性体層3に異方性を与える等の機能を有するNiP層2などを形成した基板の上に磁性体層3が形成してある。
【0046】
磁性体層3の上にシリコン化合物やダイヤモンドライクカーボン(DLC)などの硬質保護層(磁性体保護層)4が形成されている。硬質保護層4の上には潤滑剤層5が形成されている。
【0047】
本発明によれば、保護層4と潤滑剤層5との界面には不純物が存在しないかあるいは存在してもその影響が少ないようにでき、潤滑剤を塗布した場合に欠陥のないまたは少ない潤滑塗布膜が得られる。
【0048】
[実施例2]
実施例1のような本発明の磁気記録媒体の一つであるハードディスクの製造方法を図2を用いて説明する。
【0049】
図2に、本発明に係る磁気記録装置の一つであるハードディスクの磁気記録媒体部分を製造するために使用する装置の例のモデル的横断面図を示す。
【0050】
この装置は、気圧調節室6と潤滑剤塗布室17とその間にある搬送室15を備える。気圧調節室6と潤滑剤塗布室17との間にはゲートバルブ12があり、潤滑剤塗布室17と搬送室15との間にはゲートバルブ18がある。気圧調節室6と潤滑剤塗布室17と搬送室15とのそれぞれには、所定のガスの吸気管8と排気管14とが接続されている。吸気管8にはULPAフィルタ22およびケミカルフィルタ21が取り付けられている。潤滑剤塗布室17への供給管にはナフタレンを充填したヒーターカラム23が設置されている。従って、気圧調節室6と搬送室15とには、ULPAフィルタ22とケミカルフィルタ21とで処理した所定のガスが、潤滑剤塗布室17には、さらにナフタレンを含んだ所定のガスが供給されることになる。
【0051】
気圧調節室6には、ゲートバルブ12のある側とは反対の側にゲートバルブ7がある。また、真空状態と常圧との気圧調節室のために真空排気用のロータリーポンプ13とバルブ9,10,11とが備えられている。
【0052】
搬送室15内にはディスク搬送用の搬送アーム16が設置されている。
【0053】
潤滑剤塗布室17には潤滑剤槽20とディスクを浸漬するための昇降式の塗布アーム19とが設置されている。
【0054】
このような図2の構成において、まず、ゲートバルブ7,12、バルブ10、バルブ11を閉とし、バルブ9を開としてロータリポンプ13を作動させ、気圧調節室6を真空状態にする。ついで、ゲートバルブ7を開け、真空下、磁性体保護層を成膜したハードディスクを気圧調節室の左側にある(図示されてない)磁性体保護層成膜装置本体より気圧調節室6に搬送する。磁性体保護層成膜装置では、シリコン化合物やダイヤモンドライクカーボン(DLC)などの硬質保護層(磁性体保護層)がスパッタリング等により形成されている。
【0055】
次にゲートバルブ7を閉じ、バルブ9を閉じ、ロータリポンプ13を停止し、バルブ10を開とし、気圧調節室6を所定のガスで満たす。
【0056】
気圧調節室6の圧力が常圧になった後、バルブ11を開き、気圧調節室6内が所定のガスで置換し続けられるようにする。
【0057】
次にゲートバルブ12を開とし、搬送アーム16がディスクを気圧調節室6から搬送室15に搬送する。このとき搬送室は吸気管8より供給される所定のガスですでに完全に置換されている。
【0058】
次にゲートバルブ18を開とし、搬送アーム16により、ハードディスクを潤滑剤塗布室17内の塗布アーム19に受け渡す。このとき、潤滑剤塗布室17は吸気管8より供給されるナフタレンガスを含む所定のガス雰囲気になっている。
【0059】
その後塗布アーム19を下降させ、ディスクを潤滑剤槽20内の潤滑剤に30秒程度浸漬した後、アームを上昇させて潤滑剤の塗布が完了する。
【0060】
装置内各室を所定のガス雰囲気にすることによって、磁気記録媒体の磁性体保護層と潤滑剤層との界面に不純物が存在しないかあるいは存在してもその影響が少ない磁気記録媒体を得ることのできる保護潤滑層が得られる。供給される所定のガスが空気ではなく、精製された高純度の窒素、アルゴン等の希ガスの場合には、ULPAフィルタ22やケミカルフィルタ21を省略できる場合もあり得る。
【0061】
なお、装置構成を変更して、気圧調節室6や搬送室15の機構を省略することも可能である。
【0062】
所定のガスの流量としては毎分各室の容積の2倍以上となるように設定することが望ましい。
【0063】
[実施例3]
実施例2の装置を用い、次の条件でハードディスクを作製し、ハードディスク装置を完成させた。
【0064】
所定のガスとして、純度99.9999%の純窒素を用いた。
【0065】
所定のガス中のナフタレンの濃度は82mg/Lであった。
【0066】
亜硫酸ガス、ギ酸、酢酸をケミカルフィルタの捕集対象とし、荏原製作所製のEPIX−SCを採用した。
【0067】
雰囲気ガス中の平均粒径500nm以上の固体粒子濃度は40個/m3以下であり、亜硫酸ガス、ギ酸、酢酸の濃度はいずれも2.0体積ppb以下であった。
【0068】
潤滑剤塗布室17では、潤滑剤としてアウジモント社製のAM3001を使用した。
【0069】
ピンホール測定の結果は、0.5個/cm2以下であった。また、イオンクロマトグラフで測定した異物量は1.0μg/m2以下であった。
【0070】
[比較例1]
実施例2の装置を用い、次の条件以外は実施例3と同様にしてハードディスクを作製し、ハードディスク装置を完成させた。
【0071】
所定のガス、ULPAフィルタ、ケミカルフィルタ、ナフタレンを使用せず、所定のガスの代わりに、通常の空気を使用した。
【0072】
ピンホール測定の結果は、100個/cm2以上であった。
【0073】
(付記1) 磁性体上に磁性体保護層を形成する磁性体保護層形成工程と、これについで当該磁性体保護層上に潤滑剤層を形成する潤滑剤層形成工程とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、
磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、ULPAフィルタとケミカルフィルタとを通過させた、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成する磁気記録媒体の製造方法。
【0074】
(付記2) 磁性体上に磁性体保護層を形成する磁性体保護層形成工程と、これについで当該磁性体保護層上に潤滑剤層を形成する潤滑剤層形成工程とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、
磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、下記の条件の、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成する磁気記録媒体の製造方法。
【0075】
平均粒径500nm以上の固体粒子濃度・・40個/m3以下
亜硫酸ガス濃度・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
ギ酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
酢酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
(付記3) 磁性体上に磁性体保護層を形成する磁性体保護層形成工程と、これについで当該磁性体保護層上に潤滑剤層を形成する潤滑剤層形成工程とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、
磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、ULPAフィルタとケミカルフィルタとを通過させた、下記の条件の、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成する磁気記録媒体の製造方法。
【0076】
平均粒径500nm以上の固体粒子濃度・・40個/m3以下
亜硫酸ガス濃度・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
ギ酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
酢酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
(付記4) 前記磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を構成する、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスがナフタレンを含有する、付記1〜3のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0077】
(付記5) 前記磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成するに際し、その前の段階の雰囲気が真空である付記1〜4のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0078】
(付記6) 磁性体上に磁性体保護層を形成する磁性体保護層形成工程と、これについで当該磁性体保護層上に潤滑剤層を形成する潤滑剤層形成工程とを含む磁気記録装置の製造方法であって、
磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、ULPAフィルタとケミカルフィルタとを通過させた空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成する磁気記録装置の製造方法。
【0079】
(付記7) 磁性体上に磁性体保護層を形成する磁性体保護層形成工程と、これについで当該磁性体保護層上に潤滑剤層を形成する潤滑剤層形成工程とを含む磁気記録装置の製造方法であって、
磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、下記の条件の空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成する磁気記録装置の製造方法。
【0080】
平均粒径500nm以上の固体粒子濃度・・40個/m3以下
亜硫酸ガス濃度・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
ギ酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
酢酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
(付記8) 磁性体上に磁性体保護層を形成する磁性体保護層形成工程と、これについで当該磁性体保護層上に潤滑剤層を形成する潤滑剤層形成工程とを含む磁気記録装置の製造方法であって、
磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、ULPAフィルタとケミカルフィルタとを通過させた、下記の条件の空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成する磁気記録装置の製造方法。
【0081】
平均粒径500nm以上の固体粒子濃度・・40個/m3以下
亜硫酸ガス濃度・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
ギ酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
酢酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
(付記9) 前記磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を構成する空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスがナフタレンを含有する、付記6〜8のいずれかに記載の磁気記録装置の製造方法。
【0082】
(付記10) 前記磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成するに際し、その前の段階の雰囲気が真空である付記6〜9のいずれかに記載の磁気記録装置の製造方法。
【0083】
(付記11) 磁性体と磁性体保護層と潤滑剤層とをこの順に有する磁気記録媒体であって、
当該磁性体保護層と当該潤滑剤層との間にある異物量が、イオンクロマトグラフで測定した場合に1.0μg/m2以下となる磁気記録媒体。
【0084】
(付記12) 磁性体と磁性体保護層と潤滑剤層とをこの順に有する磁気記録装置であって、
当該磁性体保護層と当該潤滑剤層との間にある異物量が、イオンクロマトグラフで測定した場合に1.0μg/m2以下となる磁気記録装置。
【0085】
【発明の効果】
本発明の磁気記録媒体および製造法によれば、耐摩耗性、耐環境性にすぐれた磁気記録媒体を得ることができる。従って、潤滑剤層の薄膜化に対する信頼性向上、高記録密度化およびヘッドの動作安定性に顕著な効果が発揮され、磁気テープ装置、CSS方式あるいはヘッドの低浮上化されたハードディスク装置等に適用した場合極めて有効である。
【0086】
なお、上記に開示した内容から、下記の付記に示した発明が導き出せる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気記録媒体の構成例を示す概略図である。
【図2】本発明の方法を実施するための装置例の概略図である。
【符号の説明】
1 ガラス層
2 NiP層
3 磁性体層
4 硬質保護層(磁性体保護層)
5 潤滑剤層
6 気圧調節室
7,12,18
ゲートバルブ
8 吸気管
9,10,11
バルブ
13 ロータリーポンプ
14 排気管
15 搬送室
16 搬送アーム
17 潤滑剤塗布室
19 塗布アーム
20 潤滑剤槽
21 ケミカルフィルタ
22 ULPAフィルタ
23 ヒーターカラム
Claims (5)
- 磁性体上に磁性体保護層を形成する磁性体保護層形成工程と、これについで当該磁性体保護層上に潤滑剤層を形成する潤滑剤層形成工程とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、
磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、ULPAフィルタとケミカルフィルタとを通過させた、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成する磁気記録媒体の製造方法。 - 磁性体上に磁性体保護層を形成する磁性体保護層形成工程と、これについで当該磁性体保護層上に潤滑剤層を形成する潤滑剤層形成工程とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、
磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、下記の条件の、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成する磁気記録媒体の製造方法。
平均粒径500nm以上の固体粒子濃度・・40個/m3以下
亜硫酸ガス濃度・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
ギ酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下
酢酸濃度・・・・・・・・・・・・・・・・2.0体積ppb以下 - 前記磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を構成する、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスがナフタレンを含有する、請求項1または2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
- 前記磁性体保護層形成工程後潤滑剤層形成工程完了までの間の雰囲気を、空気、窒素および希ガスからなる群から選択された少なくとも一つのガスで構成するに際し、その前の段階の雰囲気が真空である請求項1〜3のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
- 磁性体と磁性体保護層と潤滑剤層とをこの順に有する磁気記録媒体であって、
当該磁性体保護層と当該潤滑剤層との間にある異物量が、イオンクロマトグラフで測定した場合に1.0μg/m2以下となる磁気記録媒体。
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JP2002226301A JP2004071008A (ja) | 2002-08-02 | 2002-08-02 | 磁気記録媒体および磁気記録媒体の製造方法 |
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JP2012233643A (ja) * | 2011-05-02 | 2012-11-29 | Nissan Motor Co Ltd | 熱的異方性を備えた熱伝導部材及びそれを用いた磁気冷凍機 |
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2002
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