JP2004069495A - コンクリートの厚さ測定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】建物の天井、壁、床、トンネルの覆工等、裏側に測定器具を配置できない場所でコンクリートの厚さを測定する。
【解決手段】コンクリート2の測定面3と接触する振動検出点Q1の近傍位置を打撃して振動を発生させ、該振動検出点Q1及びQ2で衝撃弾性波を検出し、振動検出点Q1で弾性波を検出してから振動検出点Q2で弾性波を検出するまでの時間を測定し、該時間と、前記振動検出点Q1と振動検出点Q2との間隔から弾性波の速度を求め、前記振動検出点Q1で検出された衝撃弾性波を周波数分析して厚さに対する一次共振振動数を求め、前記弾性波の速度と一次共振振動数からコンクリート2の厚さを演算し出力する。
【選択図】 図1
【解決手段】コンクリート2の測定面3と接触する振動検出点Q1の近傍位置を打撃して振動を発生させ、該振動検出点Q1及びQ2で衝撃弾性波を検出し、振動検出点Q1で弾性波を検出してから振動検出点Q2で弾性波を検出するまでの時間を測定し、該時間と、前記振動検出点Q1と振動検出点Q2との間隔から弾性波の速度を求め、前記振動検出点Q1で検出された衝撃弾性波を周波数分析して厚さに対する一次共振振動数を求め、前記弾性波の速度と一次共振振動数からコンクリート2の厚さを演算し出力する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート構造物の床、壁、天井等、大きな平板状のコンクリート部材や、トンネルの覆工のようなコンクリート部材等(以下、単にコンクリートという)、裏面に測定器具を配置することができない場所でコンクリートの厚さを測定するコンクリートの厚さ測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
建物等の床、壁、天井、トンネルの覆工等のような、裏面に測定器具を配置することができない場所で、コンクリートの厚さを測定する方法として、例えば、超音波測定法あるいは衝撃弾性波測定法などが提案されている。
【0003】
前記超音波測定法では、コンクリートの測定面(表面)に超音波の発振器と受信器とを配置し、該発振器から発振された超音波が、コンクリートの反射面(裏面)で反射され受信器に到達するまでの時間を計測し、該時間からコンクリートの厚さを演算する。
【0004】
即ち、このような超音波測定法では、コンクリートの厚さをD、発振器から発振された超音波が、反射面で反射され受信器で受信されるまでの時間をT、コンクリートの厚さD方向に伝播する弾性波の速度をVtとすると、コンクリートの厚さDを、
D=Vt×T/2
で演算する。
【0005】
また、前記衝撃弾性波測定法では、コンクリートの測定面を打撃し、該打撃によって発生する衝撃弾性波を検出して、厚さに対する一次共振振動数を解析し、該一次共振振動数からコンクリートの厚さを算出する。
【0006】
即ち、このような衝撃弾性波測定法では、コンクリートの厚さをD、一次共振振動数をf1、コンクリートの厚さD方向に伝播する弾性波の速度をVtとすると、コンクリートの厚さDを
D=Vt/2・f1
で演算する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記超音波測定法及び衝撃弾性波測定法においては、コンクリートの厚さD方向に伝播する弾性波の速度Vtが既知である場合、時間Tあるいは一次共振振動数f1の測定結果からコンクリートの厚さDを演算することができる。しかし、前記弾性波の速度Vtが判らない場合には、経験的に弾性波の速度Vtを仮定して、コンクリートの厚さDを演算するか、他の方法で該弾性波の速度Vtを測定して、コンクリートの厚さDを演算しなければならない。このため、弾性波の速度Vtを仮定して演算した場合には、測定精度が低下する。他の方法で弾性波の速度Vtを測定する場合には、測定が煩雑になり作業性が低下することになる。
【0008】
上記の事情に鑑み、本発明は、コンクリートを伝播する弾性波の速度が判らない場所でも、弾性波の速度と一次共振振動数を同時に検出し、コンクリートの厚さを効率よく測定できるようにしたコンクリートの厚さ測定装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、フレーム(11)と、該フレーム(11)に、所定の間隔で配置され、コンクリート(2)に発生する衝撃弾性波の内、厚さ方向の弾性波を検出する第1のセンサ(15)と、該衝撃弾性波の内、表層部を伝播する弾性波を検出する第2のセンサ(16)と、を有する振動検出部(10)と、
前記第1及び第2のセンサ(15、16)に接続され、該第1のセンサ(15)の出力に基づいて、前記コンクリート(2)を伝播する弾性波の振動数成分を演算する振動数演算手段(38)と、該第1及び第2のセンサ(15、16)の出力に基づいて、該コンクリート(2)の表層部を伝播する弾性波の速度(Vt)を演算する弾性波速度演算手段(35、36、37)と、前記振動数演算手段(38)により求められた厚さに対する一次共振振動数(f1)と前記弾性波速度演算手段(35、36、37)により求められた弾性波の速度(Vt)から、該コンクリート(2)の厚さ(D)を演算して出力するコンクリート厚さ演算出力手段(40、41、42)と、を設けて構成される。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の発明において、
前記振動検出部(10)は、
前記フレーム(11)に移動自在に支持され、前記第1のセンサ(15)の近傍を打撃する打撃手段(20)を有して構成される。
【0011】
なお、括弧内の符号等は、図面と対照するためのものであり、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであって、特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【0012】
【発明の効果】
請求項1に係る発明によると、第1及び第2のセンサの出力に基づいて、コンクリートの厚さに対する一次共振振動数と弾性波の速度を同時に検出することができるので、コンクリートを伝播する弾性波の速度が判らなくても、コンクリートの厚さを効率よく測定することができる。
【0013】
請求項2に係る発明によると、第1及び第2のセンサの出力に基づいて、コンクリートの厚さに対する一次共振振動数と弾性波の速度を同時に検出することができるので、コンクリートを伝播する弾性波の速度が判らなくても、コンクリートの厚さを効率よく測定することができる。また、第1のセンサに対する打撃位置と、打撃強度が安定するので、弾性波の速度や、共振振動数を安定した状態で検出することができ、コンクリートの厚さをより正確に測定することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1ないし図4は、本発明によるコンクリートの厚さ測定装置の第1の実施の形態を示すもので、図1は、本発明によるコンクリート厚さ測定装置の側面図、図2は、本発明によるコンクリート厚さ測定装置の制御装置を示すブロック線図、図3は、振動検出部で検出した衝撃弾性波の波形の一例を示す特性図、図4は、図3に示す衝撃弾性波形の周波数分析結果の一例を示す特性図である。
【0016】
図1において、コンクリートの厚さ測定装置1は、測定対象となるコンクリート2の測定面3(厚さ方向に対する垂直面)に配置され、該測定面3の表層部に沿って伝播する弾性波(粗密波)と、厚さ方向に伝播する弾性波を検出するための振動検出部10と、該振動検出部10の検出結果に基づいて、前記コンクリートの厚さを演算する制御装置30を備えている。
【0017】
前記振動検出部10は、前記コンクリート2より弾性波の伝播速度が遅い合成樹脂等で棒状に形成され、取っ手を兼用するフレーム11と、該フレーム11の両端部に所定の間隔Lで固定され、前記コンクリート2の測定面3に接触させるプローブを兼ねる一対の脚部プレート12a、12bを有している。
【0018】
前記脚部プレート12aには、ブラケット13を介して第1のセンサ15が、矢印A方向に振動する弾性波を検出するように固定されている。また、前記脚部プレート12bには、第2のセンサ16が、矢印B方向に振動する粗密波を検出するように固定されている。
【0019】
図2に示すように、前記制御装置30には、主制御部31が設けられ、該主制御部31には、フィルタ・増幅器32を介して前記第1のセンサ15が接続され、フィルタ・増幅器33を介して前記第2のセンサ16が接続されている。また、前記制御装置30には、前記主制御部31に波形解析部35、時間測定部36、弾性波速度演算部37、周波数分析部38、厚さ演算部40、表示部41及び記録部42等が接続されている。なお、前記波形解析部35、時間測定部36及び弾性波速度演算部37で、弾性波速度演算手段を構成し、前記周波数分析部38は、振動数演算手段を構成し、前記厚さ演算部40、表示部41及び記録部42で、コンクリート厚さ演算出力手段を構成している。
【0020】
コンクリートの厚さ測定装置1は、前記のように構成されているので、コンクリート2の厚さを測定する場合、先ず振動検出部10を測定しようとするコンクリート2の厚さ方向に垂直な測定面3に設置する。振動検出部10の設置に際しては、測定用のプローブを兼ねる脚部プレート12a、12bが、測定対象となるコンクリート2の測定面3の測定位置に当接するように配置する。なお、各脚部プレート12a、12bがコンクリート2の測定面3と接触する振動検出点Q1と振動検出点Q2の間隔Lは、事前に測定され既知となっている。
【0021】
次いで、一方の手(例えば、左手)で振動検出部10をコンクリート2の測定面3に押付けた状態で、他方の手(例えば、右手)で保持したハンマー(図示せず)等でコンクリート2の測定面3を打撃して、コンクリート2に振動を発生させる。このとき、測定面3上の打撃点Pは、振動検出点Q1に近い位置とする。例えば、振動検出点Q1と打撃点Pとの間隔lは、1〜2cm程度で、間隔lは小さいほど望ましい。
【0022】
ハンマーによる打撃によって発生した衝撃弾性波の内、測定面3の表層部に沿って伝播する弾性波には僅かな粗密波が含まれている。打撃点Pで発生した粗密波は、コンクリート2の測定面3の表層部を同心円状に広がりながら振動検出点Q1、振動検出点Q2を順次通過して行く。同様に、打撃点Pで発生したせん断波も、コンクリート2の測定面3の表層部を同心円状に広がり、振動検出点Q1、振動検出点Q2を順次通過して行く。また、打撃によって発生する粗密波とせん断波とは、コンクリート2における伝播速度が異なり、それらの速度の間には、粗密波の速度>せん断波の速度、の関係がある。しかし、打撃点Pに近い振動検出点Q1には、粗密波とせん断波とが殆ど同時に到達する。
【0023】
そして、振動検出点Q1では、到達した振動が脚部フレーム12a及びブラケット13を介して第1のセンサ15に伝達され、該センサ15で検出される。このとき、第1のセンサ15は、その振動検出方向が矢印A方向に設定されているため、測定面3に対して垂直な矢印A方向(紙面の上下方向)に振動するせん断波を検出する。
【0024】
第1のセンサ15で検出されたせん断波の振動データは、フィルタ・増幅器32に印加され、該フィルタ・増幅器32により目標とする周波数帯域のデータが抽出され増幅されて主制御部31に送られる。主制御部31は、フィルタ・増幅器32から送られてきたデータを波形解析部35に送る。該波形解析部35は、主制御部31から送られてきたデータに基づいて、せん断波の立上り位置を抽出して主制御部31に送る。このとき、第1のセンサ15で検出されるせん断波の波頭部には粗密波が含まれ、厳密にはせん断波の波形が乱されているが、粗密波はせん断波に比べ極めて僅かであり、せん断波の波頭部を乱すほどにはならないので、せん断波の立上りの検出精度を低下させることはない。
【0025】
一方、打撃点Pで発生した粗密波とせん断波が、振動検出点Q2に到達するときには、コンクリート2におけるそれぞれの伝播速度の差と、振動検出点Q1、Q2の間隔Lにより、伝播速度の速い粗密波が先に到達し、伝播速度が遅いせん断波は遅れて到達し、該粗密波に重畳した形になる。
【0026】
振動検出点Q2では、到達した振動が脚部プレート12bを介して第2のセンサ16伝達され、第2のセンサで検出される。このとき、第2のセンサ16は、その振動検出方向が矢印B方向に設定されているため、前記コンクリート2の測定面3に対して平行な矢印B方向(紙面の左右方向)の粗密波を検出する。なお、波の立上りを検出するのに必要な粗密波の波頭部(波形の立上がりから最初の極大値を超えるまでの部分、最長でも粗密波の波長の1/4波長を越える所まで)以降は、波形が遅れて到達するせん断波によって乱されていても、測定精度に影響を与えることはない。
【0027】
ここで、振動検出点Q1と振動検出点Q2との間隔を30cm、粗密波とせん断波の速度比を1.6、粗密波の速度を4000m/sとすると、粗密波が30cm伝播する時間は、0.075msec、せん断波が30cm伝播する時間は0.120msecとなる。従って、粗密波とせん断波が、振動検出点Q1を同時に通過したとしても、粗密波とせん断波が振動検出点Q2に到達する時間には、0.045msecの時間差が発生する。
【0028】
また、粗密波を正弦波と仮定し、その周波数を8000Hzとすると、その波長は50cmであり、1波長分が伝播する時間は、0.125msecとなる。よって、前記時間差の0.045msecがあれば、振動検出点Q2に到達する粗密波とせん断波の間に、粗密波の1/4波長分以上の1.5/4(0.045/0.120)波長の差があることになる。従って、振動検出点Q2において、粗密波の立上りを検出するための波頭部を、遅れてくるせん断波に乱されることなく確実に検出することができる。
【0029】
第2のセンサ16で検出された粗密波の波頭部のデータは、フィルタ・増幅器33に印加され、該フィルタ・増幅器33により目標とする周波数帯域のデータが抽出され、増幅されて主制御部31に送られる。主制御部31は、フィルタ・増幅器33から送られてきたデータを波形解析部35に送る。波形解析部35は、主制御部31から送られてきたデータに基づいて、粗密波の立上り位置を抽出して主制御部31に送る。
【0030】
主制御部31は、波形解析部35から第1のセンサ15及び第2のセンサ16の波の立上り位置のデータが送られてくると、時間測定部36に対し時間の測定を指示する。時間測定部36は、両センサ15、16で捕捉された波の立上り位置から伝達時間差(時間)Tを算出して主制御部31に送る。
【0031】
主制御部31は、予め入力されている振動検出点Q1と振動検出点Q2との間隔Lと、時間測定部36から入力された時間Tを速度演算部37に送る。弾性波速度演算部37では、主制御部31から送られてきた前記間隔Lと時間Tとに基づいて、コンクリート2の測定面3の表層部を伝播する弾性波(粗密波)の速度Vtを、Vt=L/T、で演算し、その結果を主制御部31へ送る。
【0032】
一方、主制御部31には、第1のセンサ15で検出され、フィルタ・増幅器32に印加され、該フィルタ・増幅器32により目標とする周波数帯域のデータが抽出され増幅された、図3に示すような衝撃弾性波の波形が送り込まれる。すると、主制御部31は、該波形を周波数分析部38に送る。
【0033】
周波数分析部38は、主制御部31から送り込まれた衝撃弾性波の波形を周波数分析して、図4に示すような周波数分析結果を表示し、厚さに対する一次共振振動数f1を自動又は手動により求め、主制御部31へ送る。弾性波の速度Vtと一次共振振動数f1が送り込まれた主制御部31は、これらの弾性波の速度Vtと一次共振振動数f1を厚さ演算部40に送る。
【0034】
厚さ演算部40は、主制御部31から送られてきた弾性波の速度Vtと一次共振振動数f1から、コンクリート2の厚さDを、
D=Vt/2・f1
で演算して、その演算結果を主制御部31へ送る。
【0035】
主制御部31は、厚さ演算部38から送られてきた演算結果(コンクリート2の厚さD)を、表示部41に表示させると共に、記録部42に記録させる。
【0036】
このコンクリートの厚さ測定装置1では、振動検出点Q1でせん断波の立上がりを検出し、振動検出点Q2で粗密波の立上がりを検出して、コンクリート2の表層部で伝播される粗密波の速度Vtを演算している。しかし、打撃点Pの位置と振動検出点Q1との位置の間には、間隔lがあるため、振動検出点Q1で検出されるせん断波の立上がりは、粗密波の立上がりとは必ずしも一致していない。
【0037】
例えば、前記例示したように、粗密波とせん断波の速度比を1.6、粗密波の速度を4000m/s、振動検出点Q1と振動検出点Q2との間隔を30cmとすると、粗密波が30cm伝播する時間は、0.075msecとなり、せん断波が30cm伝播する時間は、0.120msecとなる。そして、打撃点Pと振動検出点Q1との間隔lを1cmとする(打撃点Pは振動検出点Q1と振動検出点Q2を結ぶ延長線上とした場合)と、打撃点Pを打撃してから粗密波が振動検出点Q1に到達するまでの時間は、0.0025msec、打撃点Pを打撃してからせん断波が振動検出点Q1に到達するまでの時間は、0.0040msecとなる。よって、振動検出点Q1にせん断波が到達するのは、粗密波より0.0015msec遅れることになる。
【0038】
この0.0015msecの遅れは、振動検出点Q1と振動検出点Q2との間隔30cmを粗密波が伝播する時間0.075msecの2%に相当し、粗密波の速度Vtが実際の速度より2%速くなったように検出される。従って、粗密波の速度Vtと厚さに対する一次共振振動数f1とにより算出されるコンクリート2の厚さDも、実際の厚さより2%厚く算出されることになる。
【0039】
しかし、この振動検出点Q1に到達する粗密波に対するせん断波の遅れ時間0.0015msecは、打撃点Pと振動検出点Q1の間隔lを予め決めておけば、計算により平均的な補正をすることができる。従って、振動検出点Q1でせん断波の立上りを検出し、振動検出点Q2で粗密波の立上がりを検出して演算された粗密波の速度Vtを用いてコンクリート2の厚さDを演算しても、そこで発生する誤差は実用上差し支えないものとすることができる。
【0040】
なお、本明細書では、こうした簡易的な方法による弾性波の速度の概略的な演算についても、「弾性波の速度を演算する」動作と定義して用いている。
【0041】
図5は、本発明の第2の実施の形態を示すもので、本発明によるコンクリート厚さ測定装置の側面図である。
【0042】
同図において、図1と同じものは、同じ符号をつけて示し説明を省略する。コンクリートの厚さ測定装置1は、前記第1の実施の形態に示すコンクリートの厚さ測定装置1と同様に、測定対象となるコンクリート2の測定面3(厚さ方向に対する垂直面)に配置され、該測定面3の表層部に沿って伝播する弾性波と、厚さ方向に伝播する弾性波を検出するための振動検出部10と、該振動検出部10の検出結果に基づいて、前記コンクリートの厚さを演算する制御装置30を有し、該振動検出部10に、打撃手段20が支持されている。
【0043】
前記打撃手段20は、前記フレーム11に、該フレーム11の軸方向に移動可能に装着され、所要の位置に固定された支持金具21と、一端が該支持金具21の端面(図5では右側の端面)に固定されたばね部材(例えば、板ばね)22と、一端が該ばね部材22の端部(図5では右側の端部)に固定されたロッド23と、該ロッド23の端部(図5では右側の端部)に固定された金属製の打撃ヘッド25とを有している。
【0044】
前記打撃ヘッド25は、図5で示す例では、前記第1のセンサ15と第2のセンサ16(即ち、前記脚部プレート12aと脚部プレート12bが、前記コンクリート2の測定面3と接触する振動検出点Q1と振動検出点Q2)を結ぶ直線の延長線上で、該第1のセンサ15(即ち、前記振動検出点Q1)の近傍位置に位置するように配置されている。振動検出点Q1と前記打撃ヘッド25がコンクリート2を打撃する打撃点Pとの間隔lは、1〜2cm程度であるが、間隔lは小さいほど望ましい。
【0045】
本実施の形態における振動検出部10は、前記のように構成されているので、コンクリート2の厚さの測定を行なう場合、先ず振動検出部10を測定しようとするコンクリート2の厚さ方向に垂直な測定面3に設置する。振動検出部10の設置に際しては、測定用のプローブを兼ねる脚部プレート12a、12bが、測定対象となるコンクリート2の測定面3の測定位置に当接するように配置する。
【0046】
次いで、一方の手(例えば、左手)で振動検出部10をコンクリート2の測定面3に押付けた状態で、他方の手(例えば、右手)で打撃ヘッド25を保持し、ばね部材22を撓ませながら打撃ヘッド25を矢印C方向に移動させる。このとき、フレーム11もしくは脚部プレート12aに、打撃ヘッド25の矢印C方向の移動端を示すマーカー(図示せず)や、移動を規制するストッパ(図示せず)を設けておくことにより、コンクリート2に対する打撃力を略一定にすることができる。そして、打撃ヘッド25を所要の位置まで移動させた後、打撃ヘッド25を解放すると、打撃ヘッド25は、ばね部材22のばね力によって反矢印C側へ移動して、コンクリート2の測定面3に衝突(打撃)し、コンクリート2に振動を発生させる。なお、以降の作用は、前記第1の実施の形態と同じであるので、説明は省略する。
【0047】
前記第2の実施の形態においては、前記振動検出点Q1と打撃点Pとの距離lが一定であるので、コンクリート2の粗密波とせん断波の速度の差と、該距離lとに基づいて、時間測定部36で測定された時間Tに対する補正値(定数としてもよい)を設定し、測定された時間を補正することにより、より正確に粗密波の速度を測定することができ、より正確にコンクリート2の厚さを演算することができる。
【0048】
前記第1の実施の形態と、第2の実施の形態においては、コンクリート2の弾性波の速度が判らない場合に、コンクリート2の厚さに対応した一次共振振動数f1と、その測定面3の表層部を伝播する弾性波の速度Vtとを同時に検出して、コンクリート2の厚さDを演算するようにしている。即ち、コンクリート2の測定面3の表層部を伝播する弾性波の速度Vtを、コンクリート2の厚さD方向を伝播する弾性波の速度Vtと見做して、コンクリート2の厚さDを演算している。
【0049】
なお、コンクリート2の測定面3の表層部を伝播する弾性波の速度Vt、もしくは、厚さD方向の弾性波の速度Vtが判っている場合には、コンクリート2の一次共振振動数f1のみを検出するようにしてもよい。
【0050】
また、前記第1及び第2の実施の形態に示すコンクリートの厚さ測定装置1は、前記に示す使用方法だけでなく、コンクリート2の厚さDが判っている場合、コンクリート2の一次共振振動数f1を検出することにより、厚さD方向の弾性波の速度Vtを、Vt=2・f1・D、で演算することができる。
【0051】
従って、コンクリート2の厚さDが判っている場合には、前記各実施の形態で示す厚さ測定装置1を用いて、測定面3の表層部を伝播する弾性波の速度Vtを求めると共に、コンクリート2の厚さDと一次共振振動数とにより、コンクリート2の厚さ方向の弾性波の速度Vdとを求め、各弾性波の速度の差(Vd−Vt)から、コンクリート2の健全性(劣化状態)を推定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるコンクリート厚さ測定装置の側面図。
【図2】本発明によるコンクリート厚さ測定装置の制御装置を示すブロック線図。
【図3】振動検出部で検出した衝撃弾性波の波形の一例を示す特性図。
【図4】図3に示す衝撃弾性波形の周波数分析結果の一例を示す特性図。
【図5】本発明によるコンクリート厚さ測定装置の他の実施の形態を示す側面図。
【符号の説明】
2…コンクリート
10…振動測定部
15…第1のセンサ
16…第2のセンサ
20…打撃手段
35、36、37…弾性波速度演算手段
38…共振振動数演算手段(周波数分析部)
40、41、42…コンクリート厚さ演算出力手段
D…厚さ
f1…厚さに対する一次共振振動数
Vt…弾性波(粗密波)の速度
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート構造物の床、壁、天井等、大きな平板状のコンクリート部材や、トンネルの覆工のようなコンクリート部材等(以下、単にコンクリートという)、裏面に測定器具を配置することができない場所でコンクリートの厚さを測定するコンクリートの厚さ測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
建物等の床、壁、天井、トンネルの覆工等のような、裏面に測定器具を配置することができない場所で、コンクリートの厚さを測定する方法として、例えば、超音波測定法あるいは衝撃弾性波測定法などが提案されている。
【0003】
前記超音波測定法では、コンクリートの測定面(表面)に超音波の発振器と受信器とを配置し、該発振器から発振された超音波が、コンクリートの反射面(裏面)で反射され受信器に到達するまでの時間を計測し、該時間からコンクリートの厚さを演算する。
【0004】
即ち、このような超音波測定法では、コンクリートの厚さをD、発振器から発振された超音波が、反射面で反射され受信器で受信されるまでの時間をT、コンクリートの厚さD方向に伝播する弾性波の速度をVtとすると、コンクリートの厚さDを、
D=Vt×T/2
で演算する。
【0005】
また、前記衝撃弾性波測定法では、コンクリートの測定面を打撃し、該打撃によって発生する衝撃弾性波を検出して、厚さに対する一次共振振動数を解析し、該一次共振振動数からコンクリートの厚さを算出する。
【0006】
即ち、このような衝撃弾性波測定法では、コンクリートの厚さをD、一次共振振動数をf1、コンクリートの厚さD方向に伝播する弾性波の速度をVtとすると、コンクリートの厚さDを
D=Vt/2・f1
で演算する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記超音波測定法及び衝撃弾性波測定法においては、コンクリートの厚さD方向に伝播する弾性波の速度Vtが既知である場合、時間Tあるいは一次共振振動数f1の測定結果からコンクリートの厚さDを演算することができる。しかし、前記弾性波の速度Vtが判らない場合には、経験的に弾性波の速度Vtを仮定して、コンクリートの厚さDを演算するか、他の方法で該弾性波の速度Vtを測定して、コンクリートの厚さDを演算しなければならない。このため、弾性波の速度Vtを仮定して演算した場合には、測定精度が低下する。他の方法で弾性波の速度Vtを測定する場合には、測定が煩雑になり作業性が低下することになる。
【0008】
上記の事情に鑑み、本発明は、コンクリートを伝播する弾性波の速度が判らない場所でも、弾性波の速度と一次共振振動数を同時に検出し、コンクリートの厚さを効率よく測定できるようにしたコンクリートの厚さ測定装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、フレーム(11)と、該フレーム(11)に、所定の間隔で配置され、コンクリート(2)に発生する衝撃弾性波の内、厚さ方向の弾性波を検出する第1のセンサ(15)と、該衝撃弾性波の内、表層部を伝播する弾性波を検出する第2のセンサ(16)と、を有する振動検出部(10)と、
前記第1及び第2のセンサ(15、16)に接続され、該第1のセンサ(15)の出力に基づいて、前記コンクリート(2)を伝播する弾性波の振動数成分を演算する振動数演算手段(38)と、該第1及び第2のセンサ(15、16)の出力に基づいて、該コンクリート(2)の表層部を伝播する弾性波の速度(Vt)を演算する弾性波速度演算手段(35、36、37)と、前記振動数演算手段(38)により求められた厚さに対する一次共振振動数(f1)と前記弾性波速度演算手段(35、36、37)により求められた弾性波の速度(Vt)から、該コンクリート(2)の厚さ(D)を演算して出力するコンクリート厚さ演算出力手段(40、41、42)と、を設けて構成される。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の発明において、
前記振動検出部(10)は、
前記フレーム(11)に移動自在に支持され、前記第1のセンサ(15)の近傍を打撃する打撃手段(20)を有して構成される。
【0011】
なお、括弧内の符号等は、図面と対照するためのものであり、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであって、特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【0012】
【発明の効果】
請求項1に係る発明によると、第1及び第2のセンサの出力に基づいて、コンクリートの厚さに対する一次共振振動数と弾性波の速度を同時に検出することができるので、コンクリートを伝播する弾性波の速度が判らなくても、コンクリートの厚さを効率よく測定することができる。
【0013】
請求項2に係る発明によると、第1及び第2のセンサの出力に基づいて、コンクリートの厚さに対する一次共振振動数と弾性波の速度を同時に検出することができるので、コンクリートを伝播する弾性波の速度が判らなくても、コンクリートの厚さを効率よく測定することができる。また、第1のセンサに対する打撃位置と、打撃強度が安定するので、弾性波の速度や、共振振動数を安定した状態で検出することができ、コンクリートの厚さをより正確に測定することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1ないし図4は、本発明によるコンクリートの厚さ測定装置の第1の実施の形態を示すもので、図1は、本発明によるコンクリート厚さ測定装置の側面図、図2は、本発明によるコンクリート厚さ測定装置の制御装置を示すブロック線図、図3は、振動検出部で検出した衝撃弾性波の波形の一例を示す特性図、図4は、図3に示す衝撃弾性波形の周波数分析結果の一例を示す特性図である。
【0016】
図1において、コンクリートの厚さ測定装置1は、測定対象となるコンクリート2の測定面3(厚さ方向に対する垂直面)に配置され、該測定面3の表層部に沿って伝播する弾性波(粗密波)と、厚さ方向に伝播する弾性波を検出するための振動検出部10と、該振動検出部10の検出結果に基づいて、前記コンクリートの厚さを演算する制御装置30を備えている。
【0017】
前記振動検出部10は、前記コンクリート2より弾性波の伝播速度が遅い合成樹脂等で棒状に形成され、取っ手を兼用するフレーム11と、該フレーム11の両端部に所定の間隔Lで固定され、前記コンクリート2の測定面3に接触させるプローブを兼ねる一対の脚部プレート12a、12bを有している。
【0018】
前記脚部プレート12aには、ブラケット13を介して第1のセンサ15が、矢印A方向に振動する弾性波を検出するように固定されている。また、前記脚部プレート12bには、第2のセンサ16が、矢印B方向に振動する粗密波を検出するように固定されている。
【0019】
図2に示すように、前記制御装置30には、主制御部31が設けられ、該主制御部31には、フィルタ・増幅器32を介して前記第1のセンサ15が接続され、フィルタ・増幅器33を介して前記第2のセンサ16が接続されている。また、前記制御装置30には、前記主制御部31に波形解析部35、時間測定部36、弾性波速度演算部37、周波数分析部38、厚さ演算部40、表示部41及び記録部42等が接続されている。なお、前記波形解析部35、時間測定部36及び弾性波速度演算部37で、弾性波速度演算手段を構成し、前記周波数分析部38は、振動数演算手段を構成し、前記厚さ演算部40、表示部41及び記録部42で、コンクリート厚さ演算出力手段を構成している。
【0020】
コンクリートの厚さ測定装置1は、前記のように構成されているので、コンクリート2の厚さを測定する場合、先ず振動検出部10を測定しようとするコンクリート2の厚さ方向に垂直な測定面3に設置する。振動検出部10の設置に際しては、測定用のプローブを兼ねる脚部プレート12a、12bが、測定対象となるコンクリート2の測定面3の測定位置に当接するように配置する。なお、各脚部プレート12a、12bがコンクリート2の測定面3と接触する振動検出点Q1と振動検出点Q2の間隔Lは、事前に測定され既知となっている。
【0021】
次いで、一方の手(例えば、左手)で振動検出部10をコンクリート2の測定面3に押付けた状態で、他方の手(例えば、右手)で保持したハンマー(図示せず)等でコンクリート2の測定面3を打撃して、コンクリート2に振動を発生させる。このとき、測定面3上の打撃点Pは、振動検出点Q1に近い位置とする。例えば、振動検出点Q1と打撃点Pとの間隔lは、1〜2cm程度で、間隔lは小さいほど望ましい。
【0022】
ハンマーによる打撃によって発生した衝撃弾性波の内、測定面3の表層部に沿って伝播する弾性波には僅かな粗密波が含まれている。打撃点Pで発生した粗密波は、コンクリート2の測定面3の表層部を同心円状に広がりながら振動検出点Q1、振動検出点Q2を順次通過して行く。同様に、打撃点Pで発生したせん断波も、コンクリート2の測定面3の表層部を同心円状に広がり、振動検出点Q1、振動検出点Q2を順次通過して行く。また、打撃によって発生する粗密波とせん断波とは、コンクリート2における伝播速度が異なり、それらの速度の間には、粗密波の速度>せん断波の速度、の関係がある。しかし、打撃点Pに近い振動検出点Q1には、粗密波とせん断波とが殆ど同時に到達する。
【0023】
そして、振動検出点Q1では、到達した振動が脚部フレーム12a及びブラケット13を介して第1のセンサ15に伝達され、該センサ15で検出される。このとき、第1のセンサ15は、その振動検出方向が矢印A方向に設定されているため、測定面3に対して垂直な矢印A方向(紙面の上下方向)に振動するせん断波を検出する。
【0024】
第1のセンサ15で検出されたせん断波の振動データは、フィルタ・増幅器32に印加され、該フィルタ・増幅器32により目標とする周波数帯域のデータが抽出され増幅されて主制御部31に送られる。主制御部31は、フィルタ・増幅器32から送られてきたデータを波形解析部35に送る。該波形解析部35は、主制御部31から送られてきたデータに基づいて、せん断波の立上り位置を抽出して主制御部31に送る。このとき、第1のセンサ15で検出されるせん断波の波頭部には粗密波が含まれ、厳密にはせん断波の波形が乱されているが、粗密波はせん断波に比べ極めて僅かであり、せん断波の波頭部を乱すほどにはならないので、せん断波の立上りの検出精度を低下させることはない。
【0025】
一方、打撃点Pで発生した粗密波とせん断波が、振動検出点Q2に到達するときには、コンクリート2におけるそれぞれの伝播速度の差と、振動検出点Q1、Q2の間隔Lにより、伝播速度の速い粗密波が先に到達し、伝播速度が遅いせん断波は遅れて到達し、該粗密波に重畳した形になる。
【0026】
振動検出点Q2では、到達した振動が脚部プレート12bを介して第2のセンサ16伝達され、第2のセンサで検出される。このとき、第2のセンサ16は、その振動検出方向が矢印B方向に設定されているため、前記コンクリート2の測定面3に対して平行な矢印B方向(紙面の左右方向)の粗密波を検出する。なお、波の立上りを検出するのに必要な粗密波の波頭部(波形の立上がりから最初の極大値を超えるまでの部分、最長でも粗密波の波長の1/4波長を越える所まで)以降は、波形が遅れて到達するせん断波によって乱されていても、測定精度に影響を与えることはない。
【0027】
ここで、振動検出点Q1と振動検出点Q2との間隔を30cm、粗密波とせん断波の速度比を1.6、粗密波の速度を4000m/sとすると、粗密波が30cm伝播する時間は、0.075msec、せん断波が30cm伝播する時間は0.120msecとなる。従って、粗密波とせん断波が、振動検出点Q1を同時に通過したとしても、粗密波とせん断波が振動検出点Q2に到達する時間には、0.045msecの時間差が発生する。
【0028】
また、粗密波を正弦波と仮定し、その周波数を8000Hzとすると、その波長は50cmであり、1波長分が伝播する時間は、0.125msecとなる。よって、前記時間差の0.045msecがあれば、振動検出点Q2に到達する粗密波とせん断波の間に、粗密波の1/4波長分以上の1.5/4(0.045/0.120)波長の差があることになる。従って、振動検出点Q2において、粗密波の立上りを検出するための波頭部を、遅れてくるせん断波に乱されることなく確実に検出することができる。
【0029】
第2のセンサ16で検出された粗密波の波頭部のデータは、フィルタ・増幅器33に印加され、該フィルタ・増幅器33により目標とする周波数帯域のデータが抽出され、増幅されて主制御部31に送られる。主制御部31は、フィルタ・増幅器33から送られてきたデータを波形解析部35に送る。波形解析部35は、主制御部31から送られてきたデータに基づいて、粗密波の立上り位置を抽出して主制御部31に送る。
【0030】
主制御部31は、波形解析部35から第1のセンサ15及び第2のセンサ16の波の立上り位置のデータが送られてくると、時間測定部36に対し時間の測定を指示する。時間測定部36は、両センサ15、16で捕捉された波の立上り位置から伝達時間差(時間)Tを算出して主制御部31に送る。
【0031】
主制御部31は、予め入力されている振動検出点Q1と振動検出点Q2との間隔Lと、時間測定部36から入力された時間Tを速度演算部37に送る。弾性波速度演算部37では、主制御部31から送られてきた前記間隔Lと時間Tとに基づいて、コンクリート2の測定面3の表層部を伝播する弾性波(粗密波)の速度Vtを、Vt=L/T、で演算し、その結果を主制御部31へ送る。
【0032】
一方、主制御部31には、第1のセンサ15で検出され、フィルタ・増幅器32に印加され、該フィルタ・増幅器32により目標とする周波数帯域のデータが抽出され増幅された、図3に示すような衝撃弾性波の波形が送り込まれる。すると、主制御部31は、該波形を周波数分析部38に送る。
【0033】
周波数分析部38は、主制御部31から送り込まれた衝撃弾性波の波形を周波数分析して、図4に示すような周波数分析結果を表示し、厚さに対する一次共振振動数f1を自動又は手動により求め、主制御部31へ送る。弾性波の速度Vtと一次共振振動数f1が送り込まれた主制御部31は、これらの弾性波の速度Vtと一次共振振動数f1を厚さ演算部40に送る。
【0034】
厚さ演算部40は、主制御部31から送られてきた弾性波の速度Vtと一次共振振動数f1から、コンクリート2の厚さDを、
D=Vt/2・f1
で演算して、その演算結果を主制御部31へ送る。
【0035】
主制御部31は、厚さ演算部38から送られてきた演算結果(コンクリート2の厚さD)を、表示部41に表示させると共に、記録部42に記録させる。
【0036】
このコンクリートの厚さ測定装置1では、振動検出点Q1でせん断波の立上がりを検出し、振動検出点Q2で粗密波の立上がりを検出して、コンクリート2の表層部で伝播される粗密波の速度Vtを演算している。しかし、打撃点Pの位置と振動検出点Q1との位置の間には、間隔lがあるため、振動検出点Q1で検出されるせん断波の立上がりは、粗密波の立上がりとは必ずしも一致していない。
【0037】
例えば、前記例示したように、粗密波とせん断波の速度比を1.6、粗密波の速度を4000m/s、振動検出点Q1と振動検出点Q2との間隔を30cmとすると、粗密波が30cm伝播する時間は、0.075msecとなり、せん断波が30cm伝播する時間は、0.120msecとなる。そして、打撃点Pと振動検出点Q1との間隔lを1cmとする(打撃点Pは振動検出点Q1と振動検出点Q2を結ぶ延長線上とした場合)と、打撃点Pを打撃してから粗密波が振動検出点Q1に到達するまでの時間は、0.0025msec、打撃点Pを打撃してからせん断波が振動検出点Q1に到達するまでの時間は、0.0040msecとなる。よって、振動検出点Q1にせん断波が到達するのは、粗密波より0.0015msec遅れることになる。
【0038】
この0.0015msecの遅れは、振動検出点Q1と振動検出点Q2との間隔30cmを粗密波が伝播する時間0.075msecの2%に相当し、粗密波の速度Vtが実際の速度より2%速くなったように検出される。従って、粗密波の速度Vtと厚さに対する一次共振振動数f1とにより算出されるコンクリート2の厚さDも、実際の厚さより2%厚く算出されることになる。
【0039】
しかし、この振動検出点Q1に到達する粗密波に対するせん断波の遅れ時間0.0015msecは、打撃点Pと振動検出点Q1の間隔lを予め決めておけば、計算により平均的な補正をすることができる。従って、振動検出点Q1でせん断波の立上りを検出し、振動検出点Q2で粗密波の立上がりを検出して演算された粗密波の速度Vtを用いてコンクリート2の厚さDを演算しても、そこで発生する誤差は実用上差し支えないものとすることができる。
【0040】
なお、本明細書では、こうした簡易的な方法による弾性波の速度の概略的な演算についても、「弾性波の速度を演算する」動作と定義して用いている。
【0041】
図5は、本発明の第2の実施の形態を示すもので、本発明によるコンクリート厚さ測定装置の側面図である。
【0042】
同図において、図1と同じものは、同じ符号をつけて示し説明を省略する。コンクリートの厚さ測定装置1は、前記第1の実施の形態に示すコンクリートの厚さ測定装置1と同様に、測定対象となるコンクリート2の測定面3(厚さ方向に対する垂直面)に配置され、該測定面3の表層部に沿って伝播する弾性波と、厚さ方向に伝播する弾性波を検出するための振動検出部10と、該振動検出部10の検出結果に基づいて、前記コンクリートの厚さを演算する制御装置30を有し、該振動検出部10に、打撃手段20が支持されている。
【0043】
前記打撃手段20は、前記フレーム11に、該フレーム11の軸方向に移動可能に装着され、所要の位置に固定された支持金具21と、一端が該支持金具21の端面(図5では右側の端面)に固定されたばね部材(例えば、板ばね)22と、一端が該ばね部材22の端部(図5では右側の端部)に固定されたロッド23と、該ロッド23の端部(図5では右側の端部)に固定された金属製の打撃ヘッド25とを有している。
【0044】
前記打撃ヘッド25は、図5で示す例では、前記第1のセンサ15と第2のセンサ16(即ち、前記脚部プレート12aと脚部プレート12bが、前記コンクリート2の測定面3と接触する振動検出点Q1と振動検出点Q2)を結ぶ直線の延長線上で、該第1のセンサ15(即ち、前記振動検出点Q1)の近傍位置に位置するように配置されている。振動検出点Q1と前記打撃ヘッド25がコンクリート2を打撃する打撃点Pとの間隔lは、1〜2cm程度であるが、間隔lは小さいほど望ましい。
【0045】
本実施の形態における振動検出部10は、前記のように構成されているので、コンクリート2の厚さの測定を行なう場合、先ず振動検出部10を測定しようとするコンクリート2の厚さ方向に垂直な測定面3に設置する。振動検出部10の設置に際しては、測定用のプローブを兼ねる脚部プレート12a、12bが、測定対象となるコンクリート2の測定面3の測定位置に当接するように配置する。
【0046】
次いで、一方の手(例えば、左手)で振動検出部10をコンクリート2の測定面3に押付けた状態で、他方の手(例えば、右手)で打撃ヘッド25を保持し、ばね部材22を撓ませながら打撃ヘッド25を矢印C方向に移動させる。このとき、フレーム11もしくは脚部プレート12aに、打撃ヘッド25の矢印C方向の移動端を示すマーカー(図示せず)や、移動を規制するストッパ(図示せず)を設けておくことにより、コンクリート2に対する打撃力を略一定にすることができる。そして、打撃ヘッド25を所要の位置まで移動させた後、打撃ヘッド25を解放すると、打撃ヘッド25は、ばね部材22のばね力によって反矢印C側へ移動して、コンクリート2の測定面3に衝突(打撃)し、コンクリート2に振動を発生させる。なお、以降の作用は、前記第1の実施の形態と同じであるので、説明は省略する。
【0047】
前記第2の実施の形態においては、前記振動検出点Q1と打撃点Pとの距離lが一定であるので、コンクリート2の粗密波とせん断波の速度の差と、該距離lとに基づいて、時間測定部36で測定された時間Tに対する補正値(定数としてもよい)を設定し、測定された時間を補正することにより、より正確に粗密波の速度を測定することができ、より正確にコンクリート2の厚さを演算することができる。
【0048】
前記第1の実施の形態と、第2の実施の形態においては、コンクリート2の弾性波の速度が判らない場合に、コンクリート2の厚さに対応した一次共振振動数f1と、その測定面3の表層部を伝播する弾性波の速度Vtとを同時に検出して、コンクリート2の厚さDを演算するようにしている。即ち、コンクリート2の測定面3の表層部を伝播する弾性波の速度Vtを、コンクリート2の厚さD方向を伝播する弾性波の速度Vtと見做して、コンクリート2の厚さDを演算している。
【0049】
なお、コンクリート2の測定面3の表層部を伝播する弾性波の速度Vt、もしくは、厚さD方向の弾性波の速度Vtが判っている場合には、コンクリート2の一次共振振動数f1のみを検出するようにしてもよい。
【0050】
また、前記第1及び第2の実施の形態に示すコンクリートの厚さ測定装置1は、前記に示す使用方法だけでなく、コンクリート2の厚さDが判っている場合、コンクリート2の一次共振振動数f1を検出することにより、厚さD方向の弾性波の速度Vtを、Vt=2・f1・D、で演算することができる。
【0051】
従って、コンクリート2の厚さDが判っている場合には、前記各実施の形態で示す厚さ測定装置1を用いて、測定面3の表層部を伝播する弾性波の速度Vtを求めると共に、コンクリート2の厚さDと一次共振振動数とにより、コンクリート2の厚さ方向の弾性波の速度Vdとを求め、各弾性波の速度の差(Vd−Vt)から、コンクリート2の健全性(劣化状態)を推定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるコンクリート厚さ測定装置の側面図。
【図2】本発明によるコンクリート厚さ測定装置の制御装置を示すブロック線図。
【図3】振動検出部で検出した衝撃弾性波の波形の一例を示す特性図。
【図4】図3に示す衝撃弾性波形の周波数分析結果の一例を示す特性図。
【図5】本発明によるコンクリート厚さ測定装置の他の実施の形態を示す側面図。
【符号の説明】
2…コンクリート
10…振動測定部
15…第1のセンサ
16…第2のセンサ
20…打撃手段
35、36、37…弾性波速度演算手段
38…共振振動数演算手段(周波数分析部)
40、41、42…コンクリート厚さ演算出力手段
D…厚さ
f1…厚さに対する一次共振振動数
Vt…弾性波(粗密波)の速度
Claims (2)
- フレームと、該フレームに、所定の間隔で配置され、コンクリートの厚さ測定方向に打撃して発生させた衝撃弾性波の内、厚さ方向の弾性波を検出する第1のセンサと、該衝撃弾性波の内、表層部を伝播する弾性波を検出する第2のセンサと、を有する振動検出部と、
前記第1及び第2のセンサに接続され、該第1のセンサの出力に基づいて、前記コンクリートを伝播する衝撃弾性波の振動数成分を演算する振動数演算手段と、該第1及び第2のセンサの出力に基づいて、該コンクリートの表層部を伝播する弾性波の速度を演算する弾性波速度演算手段と、前記振動数演算手段により求めた厚さに対する共振振動数と前記弾性波速度演算手段で求めた弾性波の速度から、該コンクリートの厚さを演算して出力するコンクリート厚さ演算出力手段と、
を設けた、ことを特徴とする、コンクリートの厚さ測定装置。 - 前記振動検出部は、
前記フレームに移動自在に支持され、前記第1のセンサの近傍を打撃する打撃手段を有する、
ことを特徴とする、請求項1記載のコンクリートの厚さ測定装置。
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CN109253934A (zh) * | 2017-07-12 | 2019-01-22 | 上海宝钢工业技术服务有限公司 | 屋面彩钢板安全性的现场检测方法 |
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