JP2004068678A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】エマルジョン燃料を用いた場合のマルチ噴射を適切に制御する。
【解決手段】燃料内に水分を含有させたエマルジョン燃料を用いた内燃機関において、メイン噴射時期よりも以前の圧縮行程中にメイン噴射よりも少量のエマルジョン燃料を複数回に亘って噴射するマルチ噴射を行う。エマルジョン燃料の量に対するエマルジョン燃料中の燃料成分の量の割合を示す燃料含有率を算出する。この燃料含有率に基づいてマルチ噴射を制御する。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関、例えばディーゼル機関において燃料内に水分を含有させたエマルジョン燃料を用いると、水分の気化潜熱により燃焼温度が低下するのでNO の生成量が低下し、また水分の爆発的な沸騰作用により燃料噴霧が微粒化されるのでスモークの発生が低減せしめられる。そこで従来よりエマルジョン燃料を用いたディーゼル機関が公知である(例えば特公表2001−501698号公報参照)。このディーゼル機関ではエマルジョン燃料中に水分を追加し、この追加の水分量を制御することによってエマルジョン燃料中の水分量を制御するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところでこのようなエマルジョン燃料を用いた場合においても良好な燃焼を確保するためには、メイン噴射時期よりも以前の圧縮行程中にメイン噴射よりも少量のエマルジョン燃料を複数回に亘って噴射するマルチ噴射を行うことが好ましい。ところがエマルジョン燃料を用いるとエマルジョン燃料中の水分の量によってマルチ噴射の噴射形態や燃焼状態が大きく変化するので、エマルジョン燃料を用いた場合にはエマルジョン燃料の量に対するエマルジョン燃料中の燃料成分の量の割合を示す燃料含有率に応じてマルチ噴射を制御することが必要となる。しかしながら従来のディーゼル機関ではこのようなことに関して何ら考慮が払われていない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明による1番目の発明では、燃料内に水分を含有させたエマルジョン燃料を用いた内燃機関において、メイン噴射時期よりも以前の圧縮行程中にメイン噴射よりも少量のエマルジョン燃料を複数回に亘って噴射するマルチ噴射を行い、エマルジョン燃料の量に対するエマルジョン燃料中の燃料成分の量の割合を示す燃料含有率を算出し、この燃料含有率に基いてマルチ噴射を制御するようにしている。
【0005】
2番目の発明では1番目の発明において、マルチ噴射において噴射すべきいずれか一回のエマルジョン燃料量が燃料噴射弁の最小噴射量よりも少ないときには燃料含有率を低下させるようにしている。
【0006】
3番目の発明では1番目の発明において、流入する排気ガスの空燃比がリーンのときには排気ガス中のNO を吸収し、流入する排気ガスの空燃比がリッチになると吸収したNO を放出するNO 吸収剤を機関排気通路内に配置し、NO 吸収剤からNO を放出すべくNO 吸収剤に流入する排気ガスの空燃比をリッチにするときには燃料含有率を減少させるようにしている。
【0007】
4番目の発明では1番目の発明において、燃料含有率が低くなるほどマルチ噴射の噴射時期を進角し、噴射時期の早いマルチ噴射ほど進角量を小さくするようにしている。
【0008】
5番目の発明では1番目の発明において、燃料含有率が低くなるほどマルチ噴射の噴射量を減少させるようにしている。
【0009】
6番目の発明では1番目の発明において、燃料含有率が予め定められた含有率よりも低くなったときには噴射圧を低下させるようにしている。
【0010】
7番目の発明では1番目の発明において、燃料圧が許容限界値を越える危険性のある運転状態であるか否かを判断する判断手段を具備し、燃焼圧が許容限界値を越える危険性のある運転状態のときにはエマルジョン燃料の噴射を停止し、水および乳化剤を含まない燃料を噴射するようにしている。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1はエマルジョン燃料を用いたディーゼル機関の全体図を示している。
【0012】
図1を参照すると、1はディーゼル機関本体、2は吸気マニホルド、3は排気マニホルド、4は各気筒内に燃料を噴射するための燃料噴射弁、5は各燃料噴射弁4に噴射すべきエマルジョン燃料を分配するためのコモンレールを夫々示す。吸気マニホルド2は吸気絞り弁6、インタークーラ7、排気ターボチャージャ8のコンプレッサ8aを介してエアクリーナ9に連結され、排気マニホルド3は排気ターボチャージャ8の排気タービン8bを介して酸化触媒、NO 吸収剤、或いはパティキュレートフィルタ等からなる排気浄化装置10に連結される。
【0013】
また、吸気マニホルド2と排気マニホルド3とは排気ガス再循環(以下、EGRと称す)通路11を介して互いに連結され、このEGR通路11内にEGR制御弁12、EGRクーラ13および触媒14が配置される。なお、燃料噴射弁4、吸気絞り弁6およびEGR制御弁12はデジタルコンピュータからなる電子制御ユニット20の出力信号に基づいて制御される。
【0014】
一方、図1に示されるようにディーゼル機関はエマルジョン燃料製造・貯蔵装置21を具備している。このエマルジョン燃料製造・貯蔵装置21は燃料タンク22、水タンク23および乳化剤タンク24を備えており、これら燃料タンク22、水タンク23および乳化剤タンク20は夫々対応する流量制御弁Vf,Vw,Vnを介してエマルジョン燃料製造・貯蔵装置21に連結されている。また、このエマルジョン燃料製造・貯蔵装置21は回転式の撹拌装置25を具備しており、このエマルジョン燃料製造・貯蔵装置21はコモンレール高圧ポンプ26を介してコモンレール5に連結されている。各流量制御弁Vf,Vw,Vn、撹拌装置25およびコモンレール高圧ポンプ26は電子制御ユニット20の出力信号に基づいて制御される。
【0015】
コモンレール5にはコモンレール5内のエマルジョン燃料圧を検出するための燃料圧センサ27が取付けられている。この燃料圧センサ27の出力信号は電子制御ユニット20に入力される。
【0016】
図1に示されるように燃料タンク22内には燃料、即ち軽油が給油され、燃料タンク22内に貯蔵された燃料は流量制御弁Vfを介してエマルジョン燃料製造・貯蔵装置21内に供給される。水タンク23内には通常の水が給水されるか、或いはろ過した雨水が外部導入孔を介して供給され、水タンク23内に貯蔵された水は流量制御弁Vwを介してエマルジョン燃料製造・貯蔵装置21内に供給される。また、燃料と水との親和力を高めるための乳化剤を貯蔵している乳化剤タンク24からは流量制御弁Vnを介して乳化剤がエマルジョン燃料製造・貯蔵装置21内に供給される。
【0017】
エマルジョン燃料製造・貯蔵装置21内に燃料、水および乳化剤が供給されるとこれら燃料、水および乳化剤は撹拌装置25によって撹拌され、それによってエマルジョン燃料が生成される。このとき乳化剤は水の供給量に比例して供給される。生成されるエマルジョン燃料の水含有率は各流量制御弁Vf,Vw,Vnの開度を制御することによって0%から50%の範囲で任意に設定することができる。また、図1に示される実施例では撹拌装置25による撹拌速度(r.p.m.)は流量制御弁Vnの開度に比例するように制御される。
【0018】
エマルジョン燃料製造・貯蔵装置21内において生成されたエマルジョン燃料はコモンレール高圧ポンプ26により昇圧されてコモンレール5内に送り込まれ、コモンレール5内に送り込まれたエマルジョン燃料は各燃料噴射弁4から対応する気筒内に噴射される。
【0019】
図2はエマルジョン燃料を製造制御するためのルーチンを示している。
【0020】
図2を参照すると、まず初めにステップ100においてエマルジョン燃料の水含有率の目標値が設定される。次いでステップ101ではエマルジョン燃料の水含有率が目標値となるように各流量制御弁Vf,Vw,Vnの開度が制御される。次いでステップ102では撹拌装置25の撹拌速度が流量制御弁Vnの開度に比例するように制御される。
【0021】
さて、エマルジョン燃料量をQe、エマルジョン燃料中の燃料成分の量をQf、添加された水分の量をQw、乳化剤の量をQnとするとエマルジョン燃料量Qeは次式によって表わされる。
【0022】
Qe=Qf+Qw+Qn
ところでエマルジョン燃料において燃焼に寄与するのはエマルジョン燃料中の燃料成分であり、エマルジョン燃料中の水分はNO やスモークの生成を抑制する役割を果しているだけで燃焼には寄与していない。そこで本発明では燃焼への寄与率を表すものとして、エマルジョン燃料の量Qeに対するエマルジョン燃料中の燃料成分の量Qfの割合を示す燃料含有率Qr(=Qf/Qe)を用いるようにしている。
【0023】
さて、本発明では図3に示されるようにメイン噴射時期よりも以前の圧縮行程中にメイン噴射よりも少量のエマルジョン燃料を複数回に亘って噴射するマルチ噴射を行うようにしている。図3に示す例では圧縮上死点(圧縮TDC)直前にメイン噴射が行われ、圧縮上死点前(BTDC)60°,50°,40°,30°においてマルチ噴射が行われる。なお、図3に示す例ではメイン噴射の直前に更にパイロット噴射が行われている。本発明では燃料含有率Qrに基いてマルチ噴射が制御される。
【0024】
次に図4を参照しつつ燃料噴射の制御ルーチンについて説明する。
【0025】
図4を参照すると、まず初めにステップ50において機関回転数、アクセルペダルの踏込み量等が読み込まれる。次いでステップ51では噴射すべきエマルジョン燃料中の燃料成分の量Qf、添加された水分の量Qw、乳化剤の量Qnが算出される。次いでステップ52では噴射すべきエマルジョン燃料の量Qeが算出される。次いでステップ53ではマルチ噴射の制御が行われる。次いでステップ54ではパイロット噴射、メイン噴射の制御が行われる。図5から図12は図4のステップ53において行われるマルチ噴射制御の種々の実施例を示している。
【0026】
図5はマルチ噴射制御の第1実施例を示している。
【0027】
少量の燃料を複数回噴射すると良行に予混合気が形成され、予混合気が形成されるとスモークを低減することができると共に燃焼騒音を低減することができる。ところがこのように複数回噴射するようにすると一回当りの噴射量が少くなり、一回当りの噴射量が燃料噴射弁4の噴射限界である最小噴射量よりも少くなるともはや燃料を噴射し得なくなる。しかしながらこの場合、燃料に水を添加すると、即ちエマルジョン燃料を用いるとエマルジョン燃料中の燃料量が同じであっても一回当りの噴射量が増大するので噴射することが可能となる。言い換えるとエマルジョン燃料中の水分の量が少ないとき、即ち燃料含有率Qrが大きいときに噴射し得なくてもエマルジョン中の水分の量を多くすると、即ち燃料含有率Qrを低下させると噴射することが可能となる。
【0028】
そこでこの実施例では、マルチ噴射において噴射すべきいずれか一回のエマルジョン燃料量が燃料噴射弁4の最小噴射量よりも少ないときには燃料含有率を低下させるようにしている。
【0029】
即ち、図5を参照すると、まず初めにステップ100においてマルチ噴射の各噴射におけるエマルジョン燃料中の燃料成分の量Qmが算出される。次いでステップ101では燃料含有率Qr(=Qf/Qe)が算出される。次いでステップ102ではマルチ噴射における各噴射のエマルジョン燃料量Qem(=Qm/Qr)が算出される。次いでステップ103ではエマルジョン燃料量Qemが燃料噴射弁4の最小噴射量Qminよりも少ないか否かが判別される。Qem≧Qminのときにはステップ106にジャンプしてマルチ噴射が行われる。
【0030】
これに対してQem<Qminのときにはステップ104に進んで燃料成分の量Qmを最小噴射量Qminで除算した値が燃料含有率Qr(=Qm/Qmin)とされる。ここでQem<Qminであるので燃料含有率Qrが低下せしめられていることがわかる。次いでステップ105ではステップ104で算出された燃料含有率Qrとなるように各流量制御弁Vf,Vm,Vnが制御され、次いでステップ106に進む。このときには燃料噴射弁4の最小噴射量Qminでもってエマルジョン燃料が噴射される。なお、ステップ104ではQn<Qm/Qminとすることもでき、このとき燃料含有率Qrは更に減少せしめられる。
【0031】
図6はマルチ噴射制御の第2実施例を示している。
【0032】
この実施例は、排気浄化装置10として貴金属およびNO 吸収剤を担体上、又はパティキュレートフィルタ上に担持したものを用いた場合を示している。このNO 吸収剤は、排気浄化装置10に流入する排気ガスの空燃比がリーンのときには排気ガス中のNO を吸収し、排気浄化装置10に流入する排気ガスの空燃比がリッチになると吸収したNO を放出し還元する機能を有する。従ってこのNO 吸収剤を用いた場合にはリーン空燃比のもとで機関の運転が行われているときに排気ガス中に含まれるNO はNO 吸収剤に吸収される。
【0033】
一方、NO 吸収剤のNO 吸収能力が飽和する前に排気ガスの空燃比が一時的にリッチにされ、それによってNO 吸収剤からNO が放出され、放出されたNO は排気ガス中に含まれる未燃HC等の還元成分によって還元される。ところで燃料含有率Qrを小さくするとエマルジョン燃料は燃えずらくなるので排気ガス中の還元成分の量、例えば未燃HCの量が増大し、従ってNO 吸収剤から放出されたNO を良好に還元しうるようになる。そこでこの実施例では、NO 吸収剤からNO を放出すべく排気ガスの空燃比をリッチにするときには燃料含有率Qrを減少させるようにしている。
【0034】
即ち、図6を参照すると、まず初めにステップ200においてマルチ噴射の各噴射におけるエマルジョン燃料中の燃料成分の量Qmが算出される。次いでステップ201では燃料含有率Qr(=Qf/Qe)が算出される。次いでステップ202ではNO 吸収剤からNO を放出すべきか否かが判別される。NO 吸収剤からNO を放出すべきときではないと判別されたときにはステップ205にジャンプしてマルチ噴射が行われる。このとき空燃比はリーンとされる。
【0035】
これに対してステップ202においてNO 吸収剤からNO を放出すべきであると判断されたときにはステップ203に進んで燃料含有率Qrが予め定められた燃料含有率Qrrまで低減せしめられ、燃料含有率QrがQrrとなるように各流量制御弁Vf,Vw,Vnの開度が制御される。次いでステップ204では空燃比をリッチとするのに必要な噴射量が算出され、ステップ205に進む。このとき空燃比は一時的にリッチとされる。
【0036】
図7および図8はマルチ噴射制御の第3実施例を示している。
【0037】
この実施例では、燃料含有率Qrが低くなるほどマルチ噴射の噴射時期を進角し、噴射時期の早いマルチ噴射ほど進角量を小さくするようにしている。即ち、燃料含有率Qrが低くなるほど着火遅れ期間が増大し、未燃HCの排出量が増大するばかりでなく燃焼騒音が大きくなる。この場合、着火遅れ期間を短くして未燃HCの排出量および燃焼騒音を抑制するにはマルチ噴射の噴射時期を早める必要がある。そこでこの実施例では図7(A)に示されるように燃料含有率Qrが小さくなるにつれてマルチ噴射の噴射時期の進角量ATを増大するようにしている。
【0038】
ところがマルチ噴射の噴射時期を早めると噴射時におけるピストンの位置が低くなるために噴射燃料がシリンダボア内壁に付着して潤滑油を希釈してしまうという、いわゆるボアフラッシングが生じる。この場合、噴射時期の早いマルチ噴射ほどボアフラッシングを生じる危険性が高くなる。そこでこの実施例では図7(B)に示されるように進角量ATに乗算する補正係数Kの値をマルチ噴射の噴射時期が早いときほど小さくし、進角量ATに補正係数Kを乗算することによって得られるAT・Kの値を進角量とするようにしている。
【0039】
即ち、図8を参照すると、まず初めにステップ300においてマルチ噴射の各噴射におけるエマルジョン燃料中の燃料成分の量Qm1,Qm2,Qm3,Qm4が算出される。次いでステップ301では燃料含有率Qr(=Qf/Qe)が算出される。次いでステップ303ではこの燃料含有率Qrに基づいて図7(A)に示す関係から進角量TAが算出される。次いでステップ304では図7(B)に示す関係から各マルチ噴射の噴射時期に応じた補正係数Kの値K ,K ,K ,K が算出される。次いでステップ305では各マルチ噴射の噴射時間IN ,IN ,IN ,IN が基本噴射時期INJ ,INJ ,INJ ,INJ に対して夫々AT・K ,AT・K ,AT・K ,AT・K だけ進角される。次いでステップ306ではマルチ噴射が実行される。
【0040】
図9および図10はマルチ噴射制御の第4実施例を示している。
【0041】
エマルジョン燃料を用いた場合にはエマルジョン燃料中の水分の量が多くなるほど、即ち燃料含有率Qrが低くなるほど粘性抵抗が小さくなるので噴射燃料の速度及び飛行距離が増大し、その結果ボアフラッシングが生じやすくなる。そこでこの実施例では燃料含有率が低くなるほどマルチ噴射の噴射量を減少させて噴射エネルギを低減させ、それによってボアフラッシングが発生するのを抑制するようにしている。図9はこの実施例においてマルチ噴射の各噴射における噴射量に乗算すべき補正係数Jの値を示している。
【0042】
この実施例では図10に示されるように、まず初めにステップ400においてマルチ噴射の各噴射におけるエマルジョン燃料中の燃料成分の量Qm1,Qm2,Qm3,Qm4が算出される。次いでステップ401では燃料含有率Qr(=Qf/Qe)が算出される。次いでステップ402ではマルチ噴射における各噴射の噴射時期INJ ,INJ ,INJ ,INJ が算出される。次いでステップ403ではマルチ噴射における各噴射量QOm1,QOm2,QOm3,QOm4がステップ400において算出されたQm1,Qm2,Qm3,Qm4に図9から算出された補正係数Jの値を乗算することによって算出される。次いでステップ404においてマルチ噴射が実行される。
【0043】
図11および図12はマルチ噴射制御の第5実施例を示している。
【0044】
EGRガス等の必要量は実際に燃焼に寄与してトルクを発生させる実燃料量によって定まり、従ってEGRガス等の量は実燃料量に基づいて制御しなければならない。しかしながらこの実燃料量はエマルジョン燃料中に含まれる燃料成分の量に必ずしも一致しない。そこでこの実施例では実燃料量を算出し、この実燃料量に基づいてEGRガス等を制御しうるようにしている。
【0045】
即ち、マルチ噴射において噴射時期が早くなるほどトルクを発生させる実噴射量の割合は少くなる。従って噴射されたエマルジョン燃料中の燃料成分の量に対する実噴射量の割合Kf1は図11(A)に示されるように噴射時期が早いほど小さくなる。一方、エマルジョン燃料中の水分の量が増大すると、即ち燃料含有率Qrが低下すると燃料は燃えずらくなるので図11(B)に示されるように、噴射されたエマルジョン燃料中の燃料成分の量に対する実噴射量の割合Kf2は燃料含有率Qrが低下するほど小さくなる。この実施例では実燃料量がエマルジョン燃料中の燃料成分の量に各割合Kf1・Kf2を乗算することによって算出される。
【0046】
即ち、この実施例では図12に示されるように、まず初めにステップ500においてマルチ噴射の各噴射におけるエマルジョン燃料中の燃料成分の量Qm1,Qm2,Qm3,Qm4が算出される。次いでステップ501では燃料含有率Qr(=Qf/Qe)が算出される。次いでステップ502ではマルチ噴射における各噴射の噴射時期INJ ,INJ ,INJ ,INJ が算出される。次いでステップ503ではマルチ噴射における各噴射の噴射時期から図11(A)に基づいて各割合Kf1 ,Kf1 ,Kf1 ,Kf1 が算出される。次いでステップ504では燃料含有率Qrから図11(B)に基づいて割合Kf2が算出される。
【0047】
次いでステップ505では実噴射量Qe1,Qe2,Qe3,Qe4がエマルジョン燃料中の燃料成分の量Qm1,Qm2,Qm3,Qm4に夫々Kf1 ・Kf2,Kf1 ・Kf2,Kf1 ・Kf2,Kf1 ・Kf2を乗算することによって算出される。EGRガス量等はこの実噴射量Qe1,Qe2,Qe3,Qe4に基づいて制御される。次いでステップ506においてマルチ噴射が実行される。
【0048】
図13および図14は噴射圧に制御するようにした実施例を示している。
【0049】
図13(A)に示すように噴射圧、即ちコモンレール5内の目標燃料圧POが上昇するとコモンレール5内の実際の燃料圧はオーバシュートし、その結果目標燃料圧POよりも高くなる。一方、エマルジョン燃料中の水分の量が増大すると、即ち燃料含有率Qrが小さくなると着火遅れ時間が長くなるために急激な燃焼が生じる。従って燃料含有率Qrが小さいときにコモンレール5内の目標燃料圧POが高くなると燃焼が極めて急激となるために燃焼圧が許容限界値を越える危険性がある。
【0050】
そこでこの実施例では図13(B)に示されるように、燃料含有率Qrが予め定められた含有率よりも低くなったときには噴射圧POを低下させるようにしている。
【0051】
即ち、図14を参照すると、まず初めにステップ600においてコモンレール5内の目標燃料圧POが算出される。次いでステップ601では燃料含有率Qrが予め定められた含有率QXよりも低いか否かが判別される。Qr≧QXのときにはステップ603にジャンプしてコモンレール5内の燃料圧が目標燃料圧POとなるようにコモンレール高圧ポンプ26が制御される。これに対してステップ601においてQr<QXであると判別されたときにはステップ602に進んで目標燃料圧POから一定圧ΔPが減算され、次いでステップ603に進む。従ってこのときにはコモンレール5内の目標燃料圧POが低下せしめられる。
【0052】
図15および図16は燃料含有率の増大制御をするようにした実施例を示している。
【0053】
図15に示されるようにこの実施例ではコモンレール高圧ポンプ26に加え、燃料タンク22内の燃料をコモンレール5内に供給するための燃料高圧ポンプ28を具備している。この実施例では燃料の着火遅れ期間が長くなって燃焼が極度に急激になる危険性があるときにはエマルジョン燃料に代えて燃料タンク22内の燃料をコモンレール5内に供給するようにしている。即ち、この実施例では、燃焼圧が許容限界値を越える危険性のある運転状態であるか否かを判断し、燃焼圧が許容限界値を越える危険性のある運転状態のときにはエマルジョン燃料の噴射を停止し、水および乳化剤を含まない燃料を噴射するようにしている。
【0054】
即ち、図16に示されるようにまず初めにステップ700においてコモンレール5内の目標燃料圧POが設定値PPよりも高いか否かが判別される。PO≦PPのときには燃焼圧が許容限界値を越える危険性がないと判断され、ステップ702に進む。一方、ステップ700においてPO>PPであると判断されたときにはステップ701に進んで燃料含有率Qrが設定値QYよりも小さいか否かが判別される。Qr≧QYのときには燃焼圧が許容限界値を越える危険性がないと判断され、ステップ702に進む。
【0055】
ステップ702ではコモンレール高圧ポンプ26が作動せしめられ、燃料高圧ポンプ28が停止される。このときコモンレール5内にはエマルジョン燃料が供給される。次いでステップ706において燃料噴射が実行される。
【0056】
一方、ステップ700においてPO>PPであると判断され、ステップ701においてQr<QYであると判断されたとき、即ち燃焼圧が許容限界値を越える危険性があるときにはステップ704に進んでコモンレール高圧ポンプ26が停止され、ステップ705において燃料高圧ポンプ28が作動せしめられる。このとき燃料タンク22内の燃料が直接コモンレール5内に供給される。
【0057】
【発明の効果】
エマルジョン燃料を用いた場合のマルチ噴射を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ディーゼル機関の全体図である。
【図2】エマルジョン燃料の製造を制御するためのフローチャートである。
【図3】マルチ噴射を説明するための図である。
【図4】噴射制御を行うためのフローチャートである。
【図5】マルチ噴射を制御するための第1実施例を示すフローチャートである。
【図6】マルチ噴射を制御するための第2実施例を示すフローチャートである。
【図7】進角量ATと補正係数Kを示す図である。
【図8】マルチ噴射を制御するための第3実施例を示すフローチャートである。
【図9】補正係数Jを示す図である。
【図10】マルチ噴射を制御するための第4実施例を示すフローチャートである。
【図11】割合Kf1,Kf2を示す図である。
【図12】マルチ噴射を制御するための第5実施例を示すフローチャートである。
【図13】噴射圧の変化を示す図である。
【図14】噴射圧を制御するためのフローチャートである。
【図15】ディーゼル機関の別の実施例を示す全体図である。
【図16】燃料含有率の増大を制御するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1…ディーゼル機関本体
4…燃料噴射弁
5…コモンレール

Claims (7)

  1. 燃料内に水分を含有させたエマルジョン燃料を用いた内燃機関において、メイン噴射時期よりも以前の圧縮行程中にメイン噴射よりも少量のエマルジョン燃料を複数回に亘って噴射するマルチ噴射を行い、エマルジョン燃料の量に対するエマルジョン燃料中の燃料成分の量の割合を示す燃料含有率を算出し、この燃料含有率に基いて上記マルチ噴射を制御するようにした内燃機関の制御装置。
  2. マルチ噴射において噴射すべきいずれか一回のエマルジョン燃料量が燃料噴射弁の最小噴射量よりも少ないときには燃料含有率を低下させるようにした請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 流入する排気ガスの空燃比がリーンのときには排気ガス中のNO を吸収し、流入する排気ガスの空燃比がリッチになると吸収したNO を放出するNO 吸収剤を機関排気通路内に配置し、NO 吸収剤からNO を放出すべくNO 吸収剤に流入する排気ガスの空燃比をリッチにするときには燃料含有率を減少させるようにした請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 燃料含有率が低くなるほどマルチ噴射の噴射時期を進角し、噴射時期の早いマルチ噴射ほど進角量を小さくするようにした請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  5. 燃料含有率が低くなるほどマルチ噴射の噴射量を減少させるようにした請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  6. 燃料含有率が予め定められた含有率よりも低くなったときには噴射圧を低下させるようにした請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  7. 燃焼圧が許容限界値を越える危険性のある運転状態であるか否かを判断する判断手段を具備し、燃焼圧が許容限界値を越える危険性のある運転状態のときにはエマルジョン燃料の噴射を停止し、水および乳化剤を含まない燃料を噴射するようにした請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
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