JP2004068222A - 混合紡糸方法、及び混合紡糸口金パック - Google Patents

混合紡糸方法、及び混合紡糸口金パック Download PDF

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Hiroyuki Aisaka
逢坂 浩幸
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Abstract

【課題】熱可塑性ベースポリマーに対して非相溶性の剤が混練されたポリマーの混合紡糸において、紡糸断糸の低減が可能となり、紡糸工程の安定化を可能とする混合紡糸方法と混合紡糸口金パックを提供し、これによって、より高い生産性を実現する。
【解決手段】熱可塑性ベースポリマーに該ベースポリマーと非相溶性の剤を添加して、該ベースポリマーと該添加剤とを混練し、混練したポリマーを混合口金パックへ供給し、更に、該混合口金パック内に形成された狭隘な流路中で流路壁面部と流路中心部とで大きな速度差を付けて伸長流動させた後、紡糸口金に穿設された吐出孔から紡出することを特徴とする混合紡糸方法と、
熱可塑性ベースポリマーに該ベースポリマーと非相溶性の剤が混練されたポリマーを溶融紡糸するための混合紡糸口金パックにおいて、ポリマーの流動方向に沿って斬減する流路断面形状を有し、かつ該流路の壁面に凹凸を形成した伸長流動流路120を混合紡糸口金19の上流部に設けたことを特徴とする混合紡糸口金パック1である。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)やポリアミドなどからなる熱可塑性ベースポリマーに該ベースポリマーと非相溶性の剤が混練されたポリマーを溶融紡糸するための混合紡糸方法と混合紡糸口金パックに関する。
【0002】
【従来の技術】
主成分であるベースポリマーにこのベースポリマーとは異なるポリマーや剤を副成分として添加し、ベースポリマーの持つ特長を更に改質するための技術としてポリマーブレンド、ポリマーアロイなどと呼ばれる技術を用いて複合化された各種ポリマーが今日では市販されている。
【0003】
ところで、ポリメチルメタアクリレート系ポリマー及び/又はポリスチレン系ポリマーをベースポリマーであるポリエステルに0.3〜5.0重量%添加して混合し、この混合ポリマーを紡糸口金から紡出して繊維化する技術が、例えば特開昭58−98418号公報に開示されている。しかしながら、この技術では、ポリメチルメタアクリレート系ポリマー及び/又はポリスチレン系ポリマーをベースポリマーであるポリエステルにどのような方法で混練すれば良いかという点については何等の提案もなされていない。
【0004】
このようなポリマーブレンド技術では、ポリマーをブレンドする方法としては、静的混合素子(スタテック・ミキサー)を使用し、ポリマーが流動する際に採る軌跡である流線を互いに入れ替えることにより混合する静的混合方式が慣用されている。この技術は、通常、流動するポリマーの内部と外部との間に生じた粘度差を解消したり、ポリマーの熱履歴差を解消したりするための技術として多用されている。
【0005】
しかしながら、この静的混合方式では、特にベースポリマーと非相溶性のポリマーや剤をベースポリマーに添加して混合する場合において、ブレンドしたポリマーを配管輸送する際に、途中で非相溶性のポリマーや剤がベースポリマーと分離するという問題を惹起する。このため、このようなブレンドポリマーを溶融紡糸して繊維化するには、紡糸口金に近く位置する混合紡糸口金パック内に静的混合素子を設けることが必要となる。ところが、この静的混合方式では、ポリマーに充分な剪断力を作用させることができないために、充分な混合効果を得ようとすると、静的混合素子の素子数が極めて多くなるという問題がある。このため、どうしても静的混合素子を設けた混合部の長さが長くならざるを得ず、これに対応して、混合紡糸口金パックのサイズも大きくなるために実用的な技術とはいえない。
【0006】
そこで、ポリマーを混合する際に外部動力で駆動される攪拌翼を使用して剪断力をポリマーに強く作用させることによって、ポリマーの混練性を向上させる動的混合方式も慣用されている。例えば、このような静的混合方式に使用される公知技術としては、バッチ式溶融混練機、連続式溶融混練機、一軸溶融押出混練機、二軸溶融押出混練機等を使用して、ベースポリマーを溶融しながら添加剤を溶融したベースポリマー中へ分散させながら混練を行う技術が知られている。
【0007】
その具体的な例として一例を挙げるならば、特開平7−173720号公報において、ベースポリマーであるポリエステルにポリメチルメタアクリレートを混合し、次いで直径25mmのスクリュー型溶融押出機にて300℃で溶融混合し、ポリメチルメタアクリレートをポリエステル中へ均一に拡散させる技術が開示されている。したがって、このような動的混合方式によれば、ベースポリマー中に添加したポリマーや剤を分子オーダーの分散状態まで混練できるために、特にポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの合成繊維の製造工程において利用されている。
【0008】
しかしながら、既に述べたように、このような技術では、ポリマーを混練するための前記装置をブレンドされたポリマーを繊維として紡出するための紡糸口金に極めて近い位置に配設することが極めて困難である。したがって、どうしても、動的混合装置と紡糸口金との間をポリマー輸送配管で接続する必要が生じる。このため、一度ブレンドされたポリマーが互いに分離しないような相溶性を有する場合にはこの方式は好ましく用いることができるが、非相溶性ポリマーの場合には、長い配管中を輸送するような際に、互いに分離し易くなるため好ましい方法ではない。
【0009】
そこで、以上に述べたような方式以外の従来技術を探してみると、特開平11−269719号公報において、分子量70000のポリメチルメタアクリレート径共重合体をサイドストリームとして溶融状態で溶融押出機中の溶融ポリエステルへ導入し、次いで20段のスタテック・ミキサーを通して混合分散させた後、紡糸口金直上に設けた25μmのポアサイズをもつ金属繊維フィルター及び直径0.4mm−ランド長0.8mm(L)の吐出孔を36個有する紡糸口金から、口金温度285℃にて製糸することが開示されている。
【0010】
なるほど、この従来技術は、従来の生産速度に対して3割以上、あるいは2倍以上もの生産速度の向上を期待することができるかもしれないが、紡糸口金直上に設けた金属繊維フィルターでポリマー流を微細化したとしても、ブレンドポリマーが一旦分離してしまうと、これを再ブレンドする能力は、20段のミキシング・エレメントからなるスタテック・ミキサーであったとして不足する。したがって、この従来技術によって、巻取りが十分に行われるようになったとしても、非相溶性のポリマーあるいは剤のベースポリマー中での分散性が未だ十分ではなく、紡糸時に断糸が発生しやすいという点に関しては十分ではない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前述のような従来技術を背景になされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、ポリエステルやポリアミドなどからなる熱可塑性ベースポリマーに対して該ベースポリマーと非相溶性の剤が混練されたポリマーを溶融紡糸する混合紡糸において、紡糸断糸の低減が可能となり、紡糸工程の安定化を可能とする混合紡糸方法と混合紡糸口金パックを提供し、これによって、より高い生産性を実現することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
ここに、以上に述べた課題を解決するための本発明の混合紡糸方法として、熱可塑性ベースポリマーに該ベースポリマーと非相溶性の剤を添加して、該ベースポリマーと該添加剤とを混練し、混練したポリマーを混合口金パックへ供給し、更に、該混合口金パック内に形成された狭隘な流路中で流路壁面部と流路中心部とで大きな速度差を付けて伸長流動させた後、紡糸口金に穿設された吐出孔から紡出することを特徴とする混合紡糸方法が提供される。その際、本発明の混合紡糸方法では、前記狭隘な流路の断面をポリマーの流動方向に沿って斬減させることが安定紡糸という本発明の目的を達成する上で好ましい。
【0013】
また、本発明の混合紡糸方法は、前記熱可塑性ベースポリマーがポリエステルであって、該ベースポリマーと非相溶性のポリマーがポリメチルメタアクリレート系ポリマー及び/又はポリスチレン系ポリマーである場合に、本発明の方法を好適に使用できるため好ましい。
【0014】
次に、本発明の混合紡糸口金パックとして、熱可塑性ベースポリマーに該ベースポリマーと非相溶性の剤が混練されたポリマーを溶融紡糸するための混合紡糸口金パックにおいて、ポリマーの流動方向に沿って斬減する流路断面形状を有し、かつ該流路の壁面に凹凸を形成した伸長流動流路を紡糸口金の上流部に設けたことを特徴とする混合紡糸口金パックが提供される。その際、本発明の混合紡糸口金パックにおいては、前記凹凸がジグザグ形状であることがこの部分でのポリマーの伸長流動を充分起こさせる上で好ましい。
【0015】
更には、本発明の混合紡糸口金パックにおいては、前記狭隘な流路のポリマーが流入する流入流路幅Wiと、ポリマーが流出する流出流路幅Woとの比Wi/Woが2以上であって、更に最大流路幅Wjbと最小流路幅Wjsとの比Wjb/Wjsが3以上であることがこの部分でのポリマーの伸長流動を充分起こさせる上で好ましい。
【0016】
また、本発明の混合紡糸口金パックにおいては、凹凸が形成された前記伸長流動流路が混合紡糸口金パック本体の外周側に環状に設けられていることがポリマーの伸長流動を充分に行わせる上で好ましい。
【0017】
そして、本発明の混合紡糸口金パックにおいては、凹凸が形成された前記伸長流動流路と前記紡糸口金との間に円筒状濾過材が設けられていることが、ポリマー流を微細化し、このようにして微細化したポリマーの伸長流動を充分に行わせることができるため好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明でいうポリエステルとは、主たる繰り返し単位に関してエチレンテレフタレートが85モル%以上、好ましくは95モル%以上から成るポリエチレンテレフタレートである。その際、テレフタル酸成分及び/又はエチレングリコール成分以外の成分を少量(通常は、テレフタル酸成分に対して20モル%以下)共重合したものであっても良い。なお、このようなポリエステルの固有粘度(35℃のオルソ−クロロフェノール溶液を溶媒として使用し算出)は、通常衣料用布帛素材として使用されるポリエステルと同じ程度の固有粘度0.7以下のものが好ましい。更にはむ、これらのポリエステルには、公知の添加剤、例えば、顔料、染料、艶消し剤、防汚剤、蛍光増白剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤等を含んでも良い。
【0019】
本発明では、ベースポリマーとしてこのようなポリエステルを採用することが好ましいが、その他の熱可塑性ポリマー、例えばポリアミド、ポリオレフィンなどであっても良い。しかしながら、ポリエステルをベースとしたポリマーに対し、該ベースポリマーとは非相溶性の剤を添加する場合が工業的に、最もその機能が発揮できるため好ましい。
【0020】
本発明は、ポリエステルに非相溶性の剤を添加して混練し、これを溶融紡糸することをする混合紡糸方法とこの混合紡糸に使用する混合紡糸口金パックに関する。このような混合紡糸を行うことにより、溶融混練された後のベースポリマー流は溶融されて流動化する段階では添加剤と非相溶性であるため、ベースポリマー中に混練されて微分散された添加剤あるいは添加ポリマーによるコロ効果によって、溶融粘度の低下が見られる。
【0021】
しかしながら、混合紡糸口金から紡出されて冷却固化後に引取られた後は、伸長粘度が高められ、ベース彫りマー中に微分散された添加剤は、ベースポリマーの結晶化を阻害するとともに、細化・固化される際に紡糸応力が添加剤によって担持されて該添加剤に集中されることにより、溶融吐出された糸条は全体としては配向結晶化が抑制された物性を発現する。したがって、通常の紡糸速度よりも高速で紡糸を行っても、配向が抑制された物性となるため、低速で紡糸した場合の物性を有する糸をより高速の紡糸領域でも得られる。このため、紡糸速度を高速化することが可能となって、生産性を高めることが可能となる。
【0022】
ここで、本発明の前記添加剤として使用されるベースポリマーと非相溶性の剤としては、ポリメチルメタアクリレート系ポリマーまたはポリスチレン系ポリマーを好適に使用することができるが、このようなポリマーとしては、アタクチック構造又はシンジオタックチック構造を示すポリマーであっても良い。このとき、前記ポリメチルメタアクリレート系ポリマー及び/又はポリスチレン系ポリマーをポリエステルからなるベースポリマーへ添加する量としては、ベースポリマーに対して0.3〜10.0重量%で、好ましくは、0.5〜5.0重量%の範囲とすることが好ましい。
【0023】
前述のように、このように少量の剤を添加した際の物性は、高速度でありながら低速度で生産した物性と同じとなるため、より生産性を高めることが可能であるが、高速度で紡糸されて引取られる糸条は、先に述べたように紡糸応力が添加剤に集中される。このために紡糸時の断糸は、前記添加剤を添加しない場合よりも非常に高くなる傾向を示す。
【0024】
そこで、このように紡糸断糸が多く発生する原因について本発明者等が特に透過型電子顕微鏡による横断面と縦断面の観察を行った結果、十分な工程安定化が得られない原因として、従来の剪断による混練技術では添加剤のベースポリマー中での微分散状態が充分でないことを確認した。つまり、添加剤をベースポリマーに添加し、これらを一軸溶融混練押出機を使用して溶融混練しても、混合紡糸口金の直前で微分散させない限り、ベースポリマー中への添加剤の微分散状態が改善されないことを見出した。しかも、従来技術のように紡糸口金パック中にスタテック・ミキサーを設置して混練を強化しても、その効果は若干改良されるにしても大きく改善されないことを見出した。
【0025】
このような知見の下に、本発明者等が混合紡糸口金直前でポリマーに大きな剪断速度を作用させると共に、そのポリマー流速をも変えることによって、添加された剤が細長く引き延ばされ、その引き伸ばされる過程で一部は引き千切られる伸長流動が生じる場合に、添加剤がベースポリマー中に細かく分散され、それにより紡糸時の断糸が効果的に抑制できることを見出し、本発明に到達したものである。
【0026】
以下、この伸長流動による添加剤の分散化を可能とする混合紡糸方法と、それに用いる混合紡糸口金パックとに関し、その実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明の混合紡糸方法に好適に使用できる混合紡糸口金パックの一実施形態を模式的に例示した正断面図である。なお、この図1で、(a)図は、パックの全体図であって、(b)図は伸長流動を行わせる流路部の要部拡大図である。
【0028】
この図1において、1は混合紡糸口金パック(以下、単に“パック1”と称する)であって、該パック1は、パックケース10、ポリマー導入部材11、伸長流動部材12、リム付金網フィルター13及び15、メタルサンドなどの濾過部材14、ポリマー集合部材16、ポリマー分配部材17、口金直上フィルター18、そして混合紡糸口金19(以下、単に“口金19”と称する)を含んで構成される。
【0029】
以上のように構成されるパック1において、添加剤が分散されたベースポリマーは、この混合紡糸口金パック1へ入る前に公知の溶融混練押出機によって互いに既に溶融混練されており、図中に矢印で示した方向からポリマー導入部材11に穿設された導入孔110からへ流入して、ポリマー導入部材11、伸長流動部材12、リム付金網フィルター13、メタルサンドなどの濾過部材14、リム付金網フィルター15、ポリマー集合部材16、ポリマー分配部材17、そして、口金直上フィルター18を順次通過した後、口金19に穿設された吐出孔群190から紡出される。なお、以下の説明においては、“非相溶性の添加剤が混練されたベースポリマー”を“ブレンドポリマー”と称する。
【0030】
ここで、図1中のリム付金網フィルター13及び15あるいは口金直上フィルター18に関しては、濾過媒体としてステンレス鋼製細線を平織や朱子織にしたり、不織布にしたりした金網で構成されていたり、ステンレス鋼製細線を短繊維化してこれらを焼結したものが通常使用される。さらに、メタルサンドなどからなる濾過部材14は、ステンレス鋼の粉状からなり、通常、40〜100メッシュのメタルサンドが使用される。
【0031】
以上の実施形態例のように構成されるパック1では、前記導入孔110からパック1内に流入したブレンドポリマーは、パック1の外周方向へ分配され、伸長流動を起こさせる伸長流動流路120へと導かれる。ただし、この伸長流動流路120は、図示のような円環状に連結した流動領域を有するスリット状の伸長流動流路であっても、同心円上に等配して穿設された多数の孔から形成されていても良い。要するに、この伸長流動流路120部でブレンドポリマーに充分な伸長流動を作用させることができ、ブレンドポリマーをより細長く引き伸ばしながら、引き伸ばされたブレンドポリマー中の添加剤を引き千切ったりすることによって、ベースポリマー中に微分散させることが肝要となる。
【0032】
このような伸長流動は、先ず、ブレンドポリマーを狭隘な伸長流動流路中へ通過させることによって行うことができる。このとき、狭隘な伸長流動流路壁に凹凸を形成するなどして、その壁面部と中心部とをながれるブレンドポリマーの流速差を大きくすることによって、ブレンドポリマー中の添加剤に充分な剪断力を作用させて充分に引き伸ばしながら、引き千切ることができるため、ベースポリマー中への添加剤の微分散を促進する。なお、その際、前記狭隘な流路をブレンドポリマーが流れる方向に沿って、その流路断面を斬減させるようにすることが、ブレンドポリマーの伸長流動をより促進する上で好ましい。
【0033】
このようにして、パック1内で前述の伸長流動下の剪断力によってベースポリマー中へ一旦微分散されてしまうと、非相溶性のベースポリマー中に遊離された状態で分散されるため、口金19に穿設された吐出孔群190から紡出されるまでの短い滞留時間と流動長では、再び合体することなく紡出されることとなって、既に述べたような本願発明の作用・効果を奏する。
【0034】
なお、図1(b)に例示した伸長流路120では、その流路形状の具体例として、狭隘な内外周壁面に挟まれたジグザグ状流路を有するものを示したが、ブレンドポリマー流が狭隘な流路中でその壁面部と中心部とで大きな速度差を発生させ、その剪断力によってベースポリマー中の添加剤を引き伸ばすことができるものであればよいことは言うまでもない。したがって、伸長流動流路120の長さはできるだけ長いほうが良いが、その長さは実用的なパック1が取り得るものであることが必要である。
【0035】
このとき、伸長流動流路120へ流入するポリマー流入部の幅をWi、伸長流動流路120から流出するポリマー流出部の幅をWo、伸長流動流路120のジグザグ部の最大幅をWjb、そして、伸長流動流路120のジグザグ部の最小幅をWjsと定義する。そうすると、本発明の伸長流動流路ではWi/Woが2以上であって、更に、最大流路幅Wjbと最小流路幅Wjsとの比Wjb/Wjsが3以上であることが好ましい。何故ならば、Wi/Woが2以上とその比が大きくなればなるほど、伸長流動流路120に入ってくるブレンドポリマーは、伸長流動流路120から出て行く際に、より細長く引き伸ばされるからである。
【0036】
また、Wjb/Wjsが3以上であれば、伸長流動流路120内で急縮流や急拡流が行われるため、細長く引き伸ばされた添加剤を引き千切る効果が発現すると共に、壁面部とこの壁面部から離れた中央部との間でブレンドポリマーの流速度差が大きくなって、大きな剪断力がブレンドポリマーに作用する。したがって、ベースポリマー中の添加剤にも必然的に大きな剪断力が作用することとなって、その伸長流動による引き伸ばし効果が大きくなる。
【0037】
なお、図1のパック1の実施形態では、ブレンドポリマーの伸長流動は上下方向で行われている。しかしながら、その詳細なパック構造の説明は省略するが、ブレンドポリマーの伸長流動は前後方向あるいは左右方向であってもよく、このような伸長流動を行えるパックは単なる設計事項であることは言うまでもない。
【0038】
以上に述べた本発明の混合紡糸口金パックを使用して、混合紡糸を実施して得られたポリエステル繊維糸条の品質に関しては、特にU%や強伸度バラツキは従来方法と同様に良好な品質を維持しており、従来方法では得られなかった紡糸工程の工程調子に関しては、その調子を良好に維持することができた。
【0039】
次に、図2の実施形態例について説明すると、図2の実施形態例は、FIBER CHEMICAL誌等に記載されて公知となっているドイツのBARMAG社製のシリンドリカル(円柱状)フィルターを用いたパックを示したものである。この例では、濾過媒体が円柱形状を採り、ブレンドポリマーは、この円柱状濾過媒体20とパックケース10’との間の間隙からパック外周方向から内周方向へ円柱状濾過媒体20に流入して濾過され、ポリマーブレーカー21から整流されながら流出するように構成されている。このような濾過媒体20を使用することによって、製糸の安定化が図られるとされているが、本発明のパックにおいてもこのような方式のものを使用することができる。なお、前記円柱状濾過媒体20の形状としては、円柱、もしくは、円柱の中心部の径が太くなっていても構わず、40〜100メッシュの濾過媒体20で構成され、そのメッシュサイズは紡糸する糸の銘柄やポリマーにより適宜最適なものに変更される。
【0040】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、紡糸におけるU%、強伸度バラツキ、工程調子、仮撚加工における染斑、そして、加工調子については下記の方法で測定した。
【0041】
(1) U%
ウースターIV測定器を使用し、糸速200m/分で、試料の張力をデニール当たり1/30gに設定し、撚りを2500rpm、測定長300mで行い、ハーフイナート標示で結果を出した。
【0042】
(2) 強伸度バラツキ
テンシロン型引張試験機を用いて試験長25cm、引っ張り速度30cm/分に設定し、破断時の強度、伸度を連続で50回測定し、そのバラツキ(標準偏差σ)を見た。
【0043】
(3) 紡糸調子
紡糸口金が6個(6錘)有する紡糸装置で1日1錘当たりの紡糸断糸回数を記録し、1週間連続運転した際の1日当りの断糸回数の平均値で示し、次の基準で評価した。
◎:0.3回未満
○:0.3回以上0.7回未満
△:0.7回以上2.0回未満
×:2.0回以上。
【0044】
(4)加工による染斑
延伸仮撚を実施した後に、仮撚加工糸を筒編みとしてシームレス編機を使用し、1錘毎に編み、その後、Eastman Polyesther Blue−GLF染料を2%で浴比1:100で70℃から100℃までの昇温が30分で、100℃保持90分で染色し、編地を目視判定し、等位付けを行い、次の基準で評価した。等位付けは、基準サンプルがあり、その基準サンプルの等位に合わせて、目視判定する。
◎:非常に良い(等位4.0〜4.5)
○:良い(等位3.0〜3.5)
△:やや悪い(等位2.5〜)
×:不良(等位2.5以下)
【0045】
(5)加工調子
延伸仮撚を実施した際に、1日当たり延伸仮撚加工機1台における断糸回数を記録し、1週間連続運転した際の断糸回数の平均値で示し、次の基準で評価した。ちなみに、断糸回数は、糸繋ぎ前後による断糸や自動切換えによる断糸は含まず、原糸要因による断糸のみの回数で示した。
◎:15回未満
○:15回以上23回未満
△:23回以上30回未満
×:30回以上
[実施例1〜3、比較例1〜4]
一方で、固有粘度が0.64で酸化チタンを0.3重量%含有するポリエチレンテレフタレートをベースポリマーとするペレットを、シリンダー部の温度を設定するためのヒーターが5箇所有り、もっとも高い温度で290℃に設定された55φ径の縦型1軸押出機で溶融押出した。他方で、該ベースポリマーに添加する添加剤として、ポリスチレン(表1の添加剤の欄には、ポリスチレンをPSの略記号で示した)単独を285℃に設定された25φ径の小型横型一軸溶融押出機から溶融押出した。
【0046】
そして、添加剤であるポリスチレンを前記ベースポリマーに対して2.5重量%の添加量で溶融状態のベースポリマーと導管内に設置された素子数が20段のスタテック・ミキサー20を用いて溶融混練を行って、溶融状態のブレンドポリマーをギアポンプで連続的に計量しながら、溶融温度が290℃に設定されたスピンブロック内に取り付けられた図1に例示したパック1の導入孔110へ導入した。
【0047】
このとき、図1に例示したパック1には、円環の中心間直径が60mmであるスリット状の伸長流動流路120が形成されており、パック1に導入されたブレンドポリマーは伸長流動を起こさせた後、φ0.2mmの孔径と0.8mmの孔長(ランド長)を有する吐出孔190が36個穿設されたφ64mmの直径を有する口金19より紡出させた。なお、このときの前記伸長流動流路120のディメンジョンであるWi、Wo、Wjb、Wjsは表1に示す通りとした。次いで、常法に従って、紡出された糸条に対して、冷却、油剤付与、交絡処理などを施した後、紡糸引取速度4500m/分でゴデット・ローラーを介し、そのまま巻取った。なお、得られた糸の繊度は140デシテックスであった。
【0048】
前述のようにして得られた原糸を帝人製機(株)製216錘立て「HTS−1500」にて、延伸倍率1.70倍、1000m/分の仮撚加工速度で、26cm長の前段ヒーター温度550℃と、69cm長の後段350℃とからなる1段ヒーターを使用して、ウレタンデイスクの厚みが9mmである公知の外接式摩擦撚掛ユニットを使用して延伸仮撚して加工糸を得た。この時得られた加工調子及び染斑に関しては、その結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
Figure 2004068222
【0050】
次に、本発明の混合紡糸方法を採用する場合、得られる糸の品質が従来の方法と比較して劣っているかどうかを検討した。その結果は、添加剤(ポリスチレン)を1.0重量%添加したポリエステルを4500m/分の紡糸引取速度で引取った原糸強度の平均値は、2.7cN/dTであり、原糸伸度の平均値は、110%であった。これを本発明の方法による場合と従来方法による場合とで比較したところ、物性平均値は両者の間で差がないレベルであった。また、同様に、紡糸引取速度は同じにして、添加剤(ポリスチレン)を2.5重量%添加した際の強度の平均値は2.4cN/dTであり、伸度の平均値は160%であった。ポリメチルメタアクリレート(PMMA)については、ポリスチレンよりも強度が若干高く、伸度が低い傾向を示したが、これは伸長粘度の差による剤種固有の問題といえ、非溶性の剤を添加することにより伸度が向上していくことには変わりはない。また、このような原糸を仮撚加工工程に供して得た仮撚加工糸の強度は、ほぼ3.7〜3.9cN/dTで伸度18〜22%の範囲であり、強伸度物性としては何等問題ない加工糸であった。
【0051】
実施例1〜3はPSを添加量2.5重量%添加した際、図1に例示したパック1を使用して表1に示した条件で混合紡糸を行い、その条件で得られた結果であるが、製糸における紡糸断糸、加工断糸ともに問題のないレベルであり、強伸度ともバラツキは良方向であった。
【0052】
比較例1では、図3に例示したような通常一般に用いられる公知の混合紡糸パックを使用したが、このパックでは図1に例示した本発明のパック1とは異なり、伸長流動流路120は形成していなかった。
【0053】
このような混合紡糸パックを使用した比較例1では、添加剤をベースポリマーに添加しなかった他は、実施例1〜3の条件に準じた。このような条件で得られた原糸の強度は、表1に示すように、3.6cN/dT、伸度は84%であった。この表1からも分かるように、比較例1は、剤添加なしの場合の結果であるため、強伸度のバラツキが少なく、製糸性(紡糸断糸、加工断糸)とも良い結果になっているが、本発明は、より生産性を上げ、しかも、品質・工程安定化を得るための方法を示しており、その意味では、実施例は、添加剤の添加により高伸度となる傾向であり、その分、物性合わせでは添加剤を用いることによる高生産性を示し、おおよそ、3〜5割の生産性向上につながっている。
【0054】
比較例2〜4は、PSを使用し混合紡糸口金パックのWi、Wo、Wjb、Wjsとしては、本発明の条件を満たさない表1に示す値で行い、その条件で得られた結果である。この表1の結果から明らかなように、製糸における紡糸断糸、加工断糸ともに問題ないレベルであったが、逆に、糸品質は強伸度ともバラツキは悪い方向であった。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリエステルやポリアミドなどからなる熱可塑性ベースポリマーに対して該ベースポリマーと非相溶性の剤が混練されたポリマーを溶融紡糸する混合紡糸において紡糸断糸の低減が可能となり、紡糸工程並びに仮撚加工工程の安定化を可能とする混合紡糸方法と混合紡糸口金パックを提供し、これによって、より高い生産性を実現することができる。しかも、得られた糸の品質については、強伸度のバラツキ、U%等については従来方法で得られるものと同等レベルであるため、従来の生産方法と比較して極めて大きな利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の混合紡糸口金パックの一実施形態を例示した模式説明図であって、図(a)はその全体を示す正断面図、図(b)は図(a)の要部拡大図をそれぞれ示した図である。
【図2】本発明の混合紡糸口金パックの他の実施形態を例示した模式説明図(正断面図)である。
【図3】従来技術で使用する混合紡糸口金パックの実施形態を例示した模式説明図(正断面図)である。
【符号の説明】
1:混合紡糸口金パック本体
10:パックケース
11:ポリマー導入部材
12:伸長流動部材
13:リム付金網フィルター
14:メタルサンドなどの濾過部材
15:リム付金網フィルター
16:ポリマー集合部材
17:ポリマー分配部材
18:口金直上フィルター
19:混合紡糸口金

Claims (8)

  1. 熱可塑性ベースポリマーに該ベースポリマーと非相溶性の剤を添加して、該ベースポリマーと該添加剤とを混練し、混練したポリマーを混合口金パックへ供給し、更に、該混合口金パック内に形成された狭隘な流路中で流路壁面部と流路中心部とで大きな速度差を付けて伸長流動させた後、紡糸口金に穿設された吐出孔から紡出することを特徴とする混合紡糸方法。
  2. 前記狭隘な流路の断面をポリマーの流動方向に沿って斬減させた請求項1記載の混合紡糸方法。
  3. 前記熱可塑性ベースポリマーがポリエステルであって、該ベースポリマーと非相溶性のポリマーがポリメチルメタアクリレート系ポリマー及び/又はポリスチレン系ポリマーである請求項1又は2記載の混合紡糸方法。
  4. 熱可塑性ベースポリマーに該ベースポリマーと非相溶性の剤が混練されたポリマーを溶融紡糸するための混合紡糸口金パックにおいて、
    ポリマーの流動方向に沿って斬減する流路断面形状を有し、かつ該流路の壁面に凹凸を形成した伸長流動流路を混合紡糸口金の上流部に設けたことを特徴とする混合紡糸口金パック。
  5. 前記凹凸がジグザグ形状である請求項4記載の混合紡糸口金パック。
  6. 前記伸長流動流路のポリマーが流入する流入流路幅Wiと、ポリマーが流出する流出流路幅Woとの比Wi/Woが2以上であって、更に、最大流路幅Wjbと最小流路幅Wjsとの比Wjb/Wjsが3以上である請求項4又は5に記載の混合紡糸口金パック。
  7. 凹凸が形成された前記伸長流動流路が混合紡糸口金パック本体の外周側に環状に設けられた請求項1〜6の何れか一項に記載の混合紡糸口金パック。
  8. 凹凸が形成された前記伸長流動流路と前記紡糸口金との間に円筒状濾過材が設けられた請求項1〜7の何れか一項に記載の混合紡糸口金パック。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN109072483A (zh) * 2016-04-25 2018-12-21 塞特工业公司 用于纺丝聚合物纤维的喷丝头组件

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