JP2004066310A - 圧延機及び圧延方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、所望の板形状が高応答で得られ、かつコンパクトな設備でコスト低減可能な圧延機及び圧延方法を提供することにある。
【解決手段】圧延材を圧延する作業ロールと、少なくとも圧延材の入側でクーラントを供給するクーラント装置と、圧延後の板形状を測定する形状検出器と、板形状を制御する機械的制御手段とを備え、前記作業ロールの直径を、圧延可能な最大板幅の0.16倍以上0.3倍未満とし、前記クーラント装置には、複数のノズルを板幅方向に配置したクーラントヘッダー列と、クーラントの流量及び温度を夫々調整する手段を備えた複数の供給系統と、を設置し、該機械的制御手段及び該クーラント装置を、前記形状検出器の検出値に基づき制御する制御装置を備えた圧延機。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧延機及び圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧延後の板形状を所望の板形状にする形状制御方法としては、形状検出器で圧延後の形状を測定し、ロールベンダー,シフト等の機械的制御手段を用いて、圧延材の耳伸びや中伸び等の単純な形状を修正し、修正が困難である局部伸びや複合伸びを修正するために、ワークロールに対するクーラントの流量分布を変更して、目標形状との偏差を最小にするように、フィードバック制御を行うものがある。クーラントの流量分布を変更する公知技術としては、特開平2−229612号,特開平4−127909号公報記載のものがある。
【0003】
一方、板厚が非常に薄い箔圧延においては、概ね板幅より外側の作業ロール領域に高温のクーラントを供給して板形状を修正する方法がある。このようなものに特開昭60−180611号,特開平3−297507号記載のものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術においては、形状変化応答の遅れによる歩留まり低下,クーラント総量増加による改造範囲の拡大と導入コストの増大,クーラントに付与する温度差増大による操業コストの増大等の課題がある。
【0005】
本発明の目的は、所望の板形状が高応答で得られ、かつコンパクトな設備でコスト低減可能な圧延機及び圧延方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
作業ロールの直径を所望の範囲内とし、検出した板形状に基づき機械的制御手段及びクーラント制御する。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明による圧延機の一構成例を表している。図1において、圧延機は、圧延材14に直接接触し圧延する作業ロール11と、これら作業ロールを鉛直方向に支持する中間ロール12と、これら中間ロール12を鉛直方向に支持する補強ロール13および、圧延材の形状を測定する形状検出器15を備えている。
【0008】
作業ロール11および中間ロール12には曲げ力を作用させる作業ロールベンディング装置33,中間ロールベンディング装置34,中間ロール12にはロールを軸方向に移動する中間ロールシフト装置35がそれぞれ設けられている。これら作業ロールベンディング装置33,中間ロールベンディング装置34,中間ロールシフト装置35は、ベンダー・シフト制御装置32によってその動作を制御されている。そして、ベンダー・シフト制御装置32は、ベンダー・シフト制御量演算装置31からの信号に基づき制御される。
【0009】
また、本設備には作業ロール11に対してクーラントを噴射するクーラントヘッダー列45a,45bが設けてあり、クーラントヘッダー列45a,45bを構成する個々のノズルに対し独立して流量および温度を調整する調整装置43を介して、クーラントが供給される。流量温度調整装置43は、クーラント制御装置42によって制御される。そして、クーラント制御装置42は、クーラント制御量演算装置41からの信号に基づき制御される。
【0010】
さらに、ベンダー・シフト制御量演算装置31は、形状修正量演算装置21の信号に基づいて、ベンダー・シフトの制御量を演算する。また、クーラント制御量演算装置41は、形状修正量演算装置21の信号に基づき制御される。
【0011】
図2は、流量温度調整装置43およびクーラントヘッダー列45a,45bの一構成例を示しており、クーラントタンクからポンプを介し、クーラント流量調整器432a,432bにてクーラントの流量を制御し、クーラント温度調整器選択433a,433bにてクーラントの温度を制御し、流量および温度が異なる2つのクーラント供給系統と、2つの供給系統からクーラントを選択供給する装置434で構成される。なお、クーラント選択供給装置434においては、両系統のクーラント供給を停止することも可能である。
【0012】
以上のように構成した本実施形態の動作および作用を以下(1)から(5)に説明する。
【0013】
(1)形状制御効果の高応答性について説明する。流体によって固体の加熱や冷却を行う場合、外部流体の流量および温度が一定の場合、その固体の熱容量が大きい場合は、加熱や冷却効果が表面層から内部に浸透するまでに長い時間を要し、逆に、物体の熱容量が小さい場合には、いち早く内部に浸透する。圧延ロールをクーラントによって加熱や冷却を行う場合においても同様であり、ロール径が大きい場合は、熱容量が大きく、加熱や冷却効果が表れるまでに時間を要し、逆にロール径が小さい場合には、熱容量が小さく、加熱や冷却効果が短時間に表れる。したがって、冷却,加熱を問わず、ロールの熱膨張量(温度)分布に変化を与え、圧延後の板形状を制御する場合、ロール径によってその効果が異なる。本発明者らは所望の板形状制御効果を得るための適用ロール径が存在するという知見に着目した。上記従来技術においては、形状制御に対し適用ロール径に関して何ら考慮されていないため、圧延機の形式やロール径が異なるものに従来技術を適用した場合、高応答に板形状を修正できず、板の長手方向の形状が不安定となり、所望の板形状を確保できないばかりか、歩留まりの低下を招くことになる。
【0014】
本発明の実施の形態での高応答化について説明する。図3は、圧延時の圧下率および冷却条件(クーラント総流量)を同一にして、ロール径の違いによるロール平均温度の変化を表している。なお、幅方向の冷却は一様であり、一定時間経過後、クーラント総流量を2倍にしている。入熱・抜熱バランスが平衡状態になるまでの時間は、ロール径が大きい場合には長く、ロール径が小さい場合には短く、平衡状態におけるロール平均温度はほぼ同じ値となる。その後の冷却条件の変化(流量2倍)によって、ロール径が小さい方から順に、次の平衡状態に達する時間が短い。したがって、作業ロール径の大小によって、冷却効果が表れるまでの時間が異なることがわかる。
【0015】
次に、図4は、図3に示したロールの平均温度を熱膨張量に変換したものである。平衡状態では、ロール平均温度が同一であったことからも分かるように、ロール径に比例した値となり、ロール径が大きい場合には、熱膨張量が大きく、ロール径が小さい場合には、熱膨張量は小さい。その後の冷却条件の変化(流量2倍)に伴う熱膨張量の変化勾配(絶対値)は、ロール径によって異なり、ロール径が大きい場合には、勾配が緩やかであり、ロール径が小さい場合は、勾配が急になる。平衡状態に達するまでの熱膨張量変化は、ロール径に比例するが、冷却条件の変化直後の変化勾配(絶対値)は、ロール径が小さいほど大きく、高い応答性が得られる。
【0016】
図5は、ロールの熱膨張変化勾配をロール径毎に示したものであり、ロール径が小さくなるにつれて、熱膨張変化勾配が徐々に大きくなり、ロール径が400mm未満の領域において顕著に大きくなることがわかる。したがってロールの熱膨張変化を利用した板の形状制御手法においては、ロール径によって形状応答速度(単位時間あたりの形状変化量[I−unit/sec])が異なり、概して言えば、ロール径の小さいほうが、形状応答速度は大きく、目標形状から逸脱する板形状に対して、素早い修正能力を持ち、長手方向の板形状に対する歩留まりが向上する。
【0017】
図6は、作業ロール直径Dwと当該圧延機おいて圧延可能な最大板幅Bmaxとの比を横軸にとり形状応答速度(単位時間あたりの形状変化量[I−unit/sec])を縦軸にしたものである。各種圧延機(4重,6重等)設計上、圧延可能最大板幅Bmaxを大きくする場合、圧延機の剛性を確保するため、作業ロール径Dwも大きくとり、上記比は、ほぼ同程度の値を保ちながらロール径を選定する。この時、上記比がほぼ一定でも、作業ロール径自体が変化するため、図5に示したロール熱膨張変化勾配に相違が生じると考えられるが、圧延可能最大板幅の変更にともない、ロール冷却装置の仕様も変更(増強)されるため、図6に示す形状応答速度と(ロール径Dw/最大板幅Bmax)比の関係には図示のように大きく影響しない。このように整理した、形状応答速度と(ロール径Dw/最大板幅Bmax)比の関係図から、作業ロール直径Dwと最大板幅Bmaxの比が0.3 未満において形状応答速度は0.1[I−unit/sec]を確保しており、それよりも上記比が大きい場合に比べて、より高い応答性を確保し、形状制御効果を得ることが出来る。
【0018】
一方、(ロール径Dw/最大板幅Bmax)比を小さくするにしたがい、作業ロールに水平方向の曲がりが生じ、板形状制御上の外乱となる。この水平曲がりを抑制するために、作業ロールを水平方向に支持するサポートロールの設置が必要不可欠となるが、サポートロールを設置することによって、ロール面へのクーラントの衝突が阻害され、ロール冷却によって板形状を精度よく制御することが困難となる。このようなサポートロールを必要とせず、水平方向の曲がりが無視できる下限値が、構造条件から導出される(ロール径Dw/最大板幅Bmax)比の下限値となり、その値は、0.16 以上である。
【0019】
上記においては、ロールクーラントの流量を2倍に変化させた場合における、形状応答速度と(ロール径Dw/最大板幅Bmax)比の関係を調査し、より効果の得られる(ロール径Dw/最大板幅Bmax)比の範囲を限定した。当然、流量を3倍,4倍と増加すれば、図3から図6に示した縦軸の値は変化し、より高い応答性が得られ、ロールクーラントによる板形状制御能力も増加するが、図6で示した曲線の傾向はほぼ変化せず、(ロール径Dw/最大板幅Bmax)比の限定範囲は変わらない。
【0020】
この基本原理となるのは、ニュートンの冷却の法則(森北出版,伝熱工学p31)に示されており、固体壁面における流体への熱伝達は、Q=h・S・Δθ(式1)で表される。ここで、Qは単位時間に移動する熱量、hは熱伝達率、Sは表面積、Δθは固体壁面と流体の温度差である。この原理を、圧延ロールとロールクーラントに適用すれば、熱伝達係数hは、クーラントの流量のべき乗(0.5〜0.6乗)にほぼ比例することが分かっており、流体の流量を増加させることによって、その冷却能力を増加させることができ、ロール面から移動する熱量も熱伝達係数hに比例して増加する。
【0021】
同様に、ロールクーラントの温度を下げることによって、上式の温度差Δθが増大することから、ロール面から移動する熱量も熱伝達係数hに比例して増加し、ロールクーラントによる板形状制御能力も増加するが、ロールクーラントの流量増加時と同様に、図6で示した曲線の傾向はほぼ変化せず、(ロール径Dw/最大板幅Bmax)比の限定範囲は変わらない。
【0022】
また、ロールクーラントの温度を高めることによって、冷却時とは逆に、クーラントからロール面へ熱量を移動することができる。この場合も同様に、ロールクーラントの温度を高め、温度差Δθの絶対値を増大させることによって、ロール面へ移動する熱量を増加させることができる。この場合においても、基本原理が不変のため、図6で示した曲線の傾向はほぼ変化せず、(ロール径Dw/最大板幅Bmax)比の限定範囲は変わらない。
【0023】
以上のことから、作業ロールの熱膨張量をロールクーラントの流量または温度によって制御する場合、より高い応答性を確保し、形状制御効果を得ることが出来る(ロール径Dw/最大板幅Bmax)比は、0.16≦Dw/Bmax<0.3(式2)の範囲になる。
【0024】
(2)導入・操業コストの削減につき説明する。クーラントの流量分布を変更する特開平2−229612号,特開平4−127909号公報記載の公知技術を用いて、形状変化応答の遅れによる歩留まり低下という課題を解決しようとした場合、ロールクーラントの総流量を増加させ、ロールの幅方向および局所的な冷却能力を上昇することが容易に推察される。しかしながら、クーラント総流量の増加をともなう改造は、供給系統のみならず、初期に設計されたクーラントの回収系統に付帯するフィルター,回収配管といった設備にもその範囲が及び、コストの増大を招く。また、新規に設置する場合においても、冷却効果は適用するロール径によって異なるため、ロール径が大きい場合には、所望の板形状制御効果を得るために非常に多くの流量が必要となる。また、ロール径が小さい場合には、ロールの水平方向の曲げを制御するサポートロール等の設置により、ロールクーラントのロール面への衝突が阻害され、所望の冷却効果が得られないといった問題が発生する。
【0025】
本実施の形態では、式2で規定された(ロール径Dw/最大板幅Bmax)比範囲における形状応答速度は、範囲外の形状応答速度の概ね2倍以上となる。したがって、範囲外の形状応答速度を向上しようとする場合、熱伝達係数は概ね2倍程度を確保する必要がある。前述のように熱伝達係数hは、クーラントの流量のべき乗(0.5〜0.6乗)にほぼ比例することから、クーラントの流量としては3倍から4倍の流量が必要になる。必要流量が3倍から4倍になれば、それにともなって、クーラント供給ポンプ,供給・回収配管径,熱交換器,フィルター,タンクの大型化が必要なり導入時のコストアップは非常に大きなものとなり、得策ではない。
【0026】
式2で規定された(ロール径Dw/最大板幅Bmax)比範囲では、範囲外のに比べて同一板幅では、作業ロール径も小さくなり、圧延機全体のコンパクト化にも寄与し、圧延機本体のコスト低減効果もある。
【0027】
また、温度差Δθを付与して、作業ロールの冷却,加熱を行う際においても、式(1)から類推すれば、式(2)に限定された(ロール径Dw/最大板幅Bmax)比範囲と範囲外における、必要な温度差Δθは2倍異なり、クーラントの加熱,冷却を行う熱交換器の伝熱面積の大型化や能力増強といった導入及び操業コストの増大につながることになる。また、クーラントの油種によっては、高・低温領域における潤滑性の劣化や、高温領域での発火の危険性があり、操業上不利益となる可能性がある。本発明によれば、従来よりも温度差Δθは1/2程度で充分な形状制御効果を発揮するため導入及び操業コストを低減できる。
【0028】
また、さらに、従来技術では、作業ロール径,圧延機形式やロール径比を考慮していないため、作業ロール径が板幅に対して比較的大きく、M字型やW型といった複合形状を制御できない4段圧延機において、所望の板形状制御効果を得るためには非常に多くの流量を要したり、クーラントによる形状制御効果との組合せが所望の能力に達しないなどの課題があったが本実施例では、適切な流量で適切な制御能力が得られる。
【0029】
また、クーラントの温度分布を変更する特開昭60−180611号公報,特開平3−297507号公報記載の公知技術を用いた場合、ロールクーラントの温度差を増大させ、加熱能力を増大することが容易に推察される。しかしながら、クーラントの温度差を増大させることは、操業時の消費エネルギーコストの増大につながる。油の原液をクーラントとして使用する場合、油の温度上昇による火災防止の観点から、油温をやみくもに上昇させることはできない。さらに、水に数%の油を乳化させたエマルション溶液の場合は、原液に比べて火災の危険性は低いが、エマルションの乳化安定領域を逸脱すると、水と油の分離が促進され、冷却性能や潤滑性能が不安定となり圧延が不安定となるなどの課題があるが、本実施例ではこの課題を解決することができる。
【0030】
(3)機械的制御手段との組合せによる形状制御能力の向上につき説明する。上記のように、より高い応答性を確保し、形状制御効果が得られる(ロール径
Dw/最大板幅Bmax)比範囲を明確にしたが、実際の板圧延においては、4重圧延機ならば作業ロールベンディング力、6重圧延機においては、作業ロールおよび中間ロールベンディング力といった機械的制御手段との組合せによって、板形状の制御が実施される。そこで、まず、圧延時におけるロールの熱膨張プロフィルがロール径によってどのような相違があるかについて調査した。
【0031】
図7は、図4に示したロールの熱膨張量変化カーブにおける、60分経過後のロールプロフィルを示したものである。作業ロール径が小さくなるにつれて、板中央部から板端部にむけてロールプロフィルの傾きが変化する幅方向位置が板端部側に移動する。ロール冷却または加熱による形状応答性が高いロール径範囲においては、このようにロールプロフィルが板端部近傍で急激に変化する傾向があるため、機械的制御手段との組合せを再検討する必要がある。
【0032】
一般に、圧延後の板形状に大きく影響を及ぼす作業ロールの変形としては、熱膨張プロフィル,圧延荷重によるたわみ,表面扁平があり、冷間圧延のような薄い板材の場合、大きな支配因子は、熱膨張プロフィルとたわみである。表面扁平は、熱膨張プロフィルに比べて板幅内での偏差が小さいため、無視しても差し支えない。図11(a)は、図7で示した作業ロール径Φ340mmのロール熱膨張である熱膨張プロフィルを板幅内のみを抜粋したものであり、横軸は板幅方向位置hであり、板幅1250mmの場合の例である。図11(b)は、圧延荷重PによるロールたわみPδを示している。したがって、図11(a)および(b)のプロフィルを重ね合わせたプロフィルを、機械的制御手段およびロールクーラントによる熱膨張プロフィル変更によって制御する必要がある。
【0033】
4重圧延機(4HiHiミルと称す)を考えた場合、機械的制御手段として代表的なものは、作業ロールベンディング機構であり、作業ロールベンディングによるロールたわみWRδに及ぼす影響は、図11(c)に示すように、板端部近傍(板幅の2/3よりも外側)にその制御範囲が限定される。したがって、図
11(b)に示した、圧延荷重によるロールたわみPδのような板幅中央付近から滑らかに変化するたわみを、作業ロールベンディングによって制御することは困難であり、ロールクーラントによってこのたわみを制御しなければならない。しかし、圧延荷重によるロールたわみPδは、非常に大きなものであり、これをロールクーラントによる熱膨張量変化によって制御するためには、非現実的な加熱冷却能力を備えたクーラント設備を導入しなければならない。
【0034】
一方、中間ロールベンディング機構も兼ね備えた6重圧延機(6HiUCミルと称す)を使用する場合、中間ロールベンディングによるロールたわみIMRδは、図11(d)に示すように、中間ロールベンディング機構の制御特性は、板幅中央付近から滑らかに変化するたわみを制御可能であり、図11(b)に示すような圧延荷重によるロールたわみPδを制御することができる。したがって、4Hiミルに比べて、ロールクーラントにかかる設備的負担が軽減されるばかりではなく、各種形状制御機構の制御特性に合せた、機能分担が可能となる。つまり、作業ロールベンディング機構においては、板端部近傍の板形状を制御し、中間ロールベンディング機構においては概ね板幅中央近傍の板形状を制御し、ロールクーラントは作業ロールおよび中間ロールベンディング機構では制御困難な局所的形状を修正すればよい。
【0035】
そこで次に、作業ロール径およびロールクーラントの噴射条件を同一にして、4Hiミルと6HiUCミルの制御能力の比較を行った。
【0036】
図8は、ロールクーラントを一様に噴射した場合における板形状の修正効果を比較したものである。図中の破線は、制御開始前の初期状態のものであり、板形状の伸び側とつっぱり側の偏差は、約160[I−unit](−100[I−unit]から+60[I−unit])存在している。4Hiミルにおいては、110[I−unit](−70[I−unit]から+40[I−unit])まで、6HiUCミルにおいては、60[I−unit](−40[I−unit]から+20[I−unit])まで、板形状を平坦化することが可能である。前述のように、4Hiミルでは、機械的制御能力の欠如から、充分な制御能力が得られていないことが分かる。実操業において求められる偏差は、約20[I−unit](−10[I−unit]から+10[I−unit])であり、6HiUCミルにおいても、不充分である。
【0037】
次に、板形状の伸びが生じている部位のロールクーラントを2倍に増加した結果を示したのが図14である。4Hiミルにおいては、80[I−unit](−50[I−unit]から+30[I−unit])まで、6HiUCミルにおいては、20[I−unit](−10[I−unit]から+10[I−unit])まで、幅方向の板形状偏差を小さくすることが可能である。
【0038】
図15は、板形状の伸びが生じている部位のロールクーラントを周囲よりも
10℃低温にした結果を示している。4Hiミルにおいては、70[I−unit](−45[I−unit]から+25[I−unit])まで、6HiUCミルにおいては、15[I−unit](−10[I−unit]から+5[I−unit])まで、幅方向の板形状偏差を小さくすることが可能である。
【0039】
図16は、板形状のつっぱりが生じている板端部外側のロールクーラントを板幅内よりも20℃高温にした結果を示している。4Hiミルにおいては、50
[I−unit](−20[I−unit]から+30[I−unit])まで、6HiUCミルにおいては、15[I−unit](−5[I−unit]から+10[I−unit])まで、幅方向の板形状偏差を小さくすることが可能である。
【0040】
いずれの場合においても、6HiUCミルにおいては、ロールクーラントによる熱膨張量変化を最小限使用することによって、実操業において求められる偏差約20[I−unit](−10[I−unit]から+10[I−unit])を達成しており、作業ロールベンディング機構,中間ロールベンディング機構といった機械的制御機構との組合せによって充分な効果が得られており、4Hiミルに対して、概ね4倍の効果が得られている。
【0041】
一般に、6HiUCミルの場合、板幅中央付近から滑らかに変化するたわみを制御するには、中間ロール径を作業ロール径よりも大きくし、曲げ力によるたわみ特性を作業ロールのたわみ特性と異にする必要がある。作業ロールと中間ロールの直径がほとんど等しい場合には、たわみ特性の差はほとんどなく、得られる効果は中間ロールシフトによる有害接触部の除外が主である。したがって、板幅中央近傍までそのたわみを制御するには、中間ロール径と作業ロール径の比を検討する必要がある。
【0042】
図9(a)は、作業ロール径Φ340とし、中間ロール径をΦ340,Φ380,Φ440とした場合における、板形状の制御効果を示したものである。このように、中間ロール径Diと作業ロール径Dwの比が1に近づくにつれて、その制御範囲が狭く、板幅中央付近を制御することが困難となり、板形状の修正効果も小さくなる。図9(b)は、(中間ロール径Diと作業ロール径Dw)比を横軸に、4Hiミルに対する形状制御能力の相対値を縦軸にとり、種々のロール径比について調査したものである。ロール径比が1.2 を超える範囲において、その能力向上が著しく、4倍以上の能力を有することが分かった。したがって、作業ロールベンディング機構,中間ロールベンディング機構,中間ロールシフト機能を有する6重の圧延機と、ロールクーラントによる形状制御機構を組合せて、板の形状を制御する場合、中間ロール径Diが作業ロール径Dwの1.2 倍を超える範囲に適用するのが望ましい。
【0043】
(4)3系統温度からの選択供給による形状制御能力の向上につき説明する。さらに、図15,図16を組合せて実施することによって、さらに好ましい形状制御効果が得られる。図10は、板端部の外側に、ロール面よりも高温である
60℃のクーラントを供給し、板幅内の伸びが生じている部位に低温のクーラントを供給した場合の実施例である。このとき、クーラント選択供給装置434によって、3系統温度からクーラントを選択供給することによって、クーラントの総量は不変であり、ポンプ,回収系統,フィルター,タンク等の改造は不要であり、供給系統を図2または図10に示すような構造に変更するだけでよい。
【0044】
このように、板端部近傍のつっぱり形状を、作業ロールベンディング機構と高温クーラント供給によって修正し、板幅全体の大きな形状を中間ロールベンディング機構にて修正し、板幅内の局所的な伸び形状を低温クーラントによって修正することによって、図示のようにほぼ平坦な板形状に修正することができる。
【0045】
(5)クーラントヘッダー構造の変形例につき説明する。図12は、図2に示した流量温度調整装置43およびクーラントヘッダー列45a,45bの変形例であり、両者の違いは、クーラント選択供給装置434を上下(434a,434b)に分離した点にある。コスト面を考慮すると、図2に示すように、上下を共通とし、部品数を低減する方がよい。しかし、クーラント選択供給装置434を上下共通にする場合、選択供給装置434は圧延機上部または下部に設置するため、クーラントヘッダー列45a,45bまでの配管長さが場合によっては上下で不揃いになり、開閉動作を完了してから、ノズル先端において流量または/および温度が実際に変化するまでの時間に上下差が生じる。このような時間差を生じさせないために、クーラント選択供給装置434を上下に分離して、クーラントヘッダー列45a,45bまでの配管長さが最短になる位置に設置すればよい。
【0046】
図13(a)は、作業ロール11に対してクーラントを噴射するクーラントヘッダー列451a,451b,452a,452bを入側上下2対にした場合の適用例であり、1対のノズルでは、クーラントの噴射面積が小さいときに、噴射面積を確保することができる。
【0047】
図13(b),図13(c)は、既存のクーラント供給設備を流用し、本発明を適用する場合の実施形態である。図13(b)に示す既設のクーラント供給装置45cは、圧延材の入出側で幅方向に一様流量,温度でクーラントを供給し、入側ではロールと圧延材間の潤滑を、出側では、板表面に残存する鉄粉やダル粉の洗浄を主たる供給目的としている。そこに、本発明の入側ノズルヘッダー451a,451bおよび出側ノズルヘッダー452a,452bを増設または改造することによって、ロールの熱膨張量を制御し、板形状の制御を行う。
【0048】
図13(c)は、入側に既存のクーラント供給設備45cを残し、本発明を出側でクーラントヘッダー列45a,45bを適用した場合である。一般に圧延直後のロール表面は高温であり、半径方向に熱が伝導する前に冷却を行うと冷却効果が高くなる。本発明を圧延材の出側に適用することで板の形状制御効果も高いものとなる。
【0049】
【発明の効果】
本発明によると、所望の板形状が高応答で得られ、かつコンパクトな設備でコスト低減可能な圧延機及び圧延方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による6重圧延機構成図を示す。
【図2】クーラントノズル流量・温度調整装置およびクーラントヘッダー列の構成図を示す。
【図3】ロール平均温度変化を示す図。
【図4】ロール熱膨張量変化を示す図。
【図5】ロール熱膨張変化勾配を示す図。
【図6】作業ロール直径Dwと最大板幅Bmaxの比と形状応答速度の関係を示す図。
【図7】ロールプロフィルに及ぼすロール直径の影響を示す図。
【図8】2系統のクーラント供給系統の流量・温度調整実施形態とその結果を示す図。
【図9】中間ロール直径が6重圧延機の形状制御能力に与える影響を示す図。
【図10】3系統のクーラント供給系統の流量・温度調整実施形態とその結果を示す図。
【図11】圧延後の板形状に影響を及ぼす各種因子の幅方向プロフィル。
【図12】クーラントノズル流量・温度調整装置およびクーラントヘッダー列の変形例。
【図13】クーラントヘッダー列配置図。
【図14】2系統のクーラント供給系統の流量・温度調整実施形態とその結果を示す図。
【図15】2系統のクーラント供給系統の流量・温度調整実施形態とその結果を示す図。
【図16】2系統のクーラント供給系統の流量・温度調整実施形態とその結果を示す図。
【符号の説明】
11…作業ロール、12…中間ロール、13…補強ロール、14…圧延材、
15…形状検出器、21…形状修正量演算装置、31…ベンダー・シフト制御量演算装置、32…ベンダー・シフト制御装置、33…作業ロールベンディング装置、34…中間ロールベンディング装置、35…中間ロールシフト装置、41…クーラント制御量演算装置、42…クーラント制御装置、43…流量温度調整装置、45a,45b…クーラントヘッダー列(a:上,b:下)、432a,
432b…クーラント流量調整器、433a,433b…クーラント温度調整器選択、434…クーラント選択供給装置。

Claims (8)

  1. 圧延材を圧延する作業ロールと、少なくとも圧延材の入側でクーラントを供給するクーラント装置と、圧延後の板形状を測定する形状検出器と、板形状を制御する機械的制御手段とを備え、
    前記作業ロールの直径を、圧延可能な最大板幅の0.16倍以上0.3倍未満とし、
    前記クーラント装置には、複数のノズルを板幅方向に配置したクーラントヘッダー列と、クーラントの流量及び温度を夫々調整する手段を備えた複数の供給系統と、を設置し、
    該機械的制御手段及び該クーラント装置を、前記形状検出器の検出値に基づき制御する制御装置を備えた圧延機。
  2. 上下一対の作業ロール,中間ロール,補強ロールと、中間ロールの軸方向シフト装置,作業ロールおよび中間ロールのベンディング装置と、少なくとも圧延材の入側でクーラントを供給する装置と圧延後の板形状を測定する形状検出器と、前記中間ロールシフト,作業ロールベンディング,中間ロールベンディング装置およびクーラント供給装置の動作を制御する装置を備えた圧延機において、
    前記作業ロールの直径は、前記圧延機において圧延可能な最大板幅の0.16 倍以上0.3 倍未満であり、
    前記クーラント供給装置は、前記形状検出器の板幅方向測定間隔に対応する複数のノズルを板幅方向に配置した少なくとも上下1対以上のクーラントヘッダー列と、クーラントの流量または/および温度を夫々調整する手段を備えた複数の供給系統を備え、
    前記中間ロールシフト,作業ロールベンディング,中間ロールベンディング制御装置およびクーラント制御装置は、前記形状検出器の出力信号と目標形状の偏差を基に、各々の制御量を演算処理する装置を備え、さらに前記クーラント制御装置は、前記複数のクーラント供給系統の中から前記クーラントヘッダー列の個々のノズルに1系統のクーラントを選択供給する手段を備えたことを特徴とする圧延機。
  3. 請求項2に記載の圧延機において、
    前記中間ロールの直径は、前記作業ロール直径の1.2 倍を超えることを特徴とする圧延機。
  4. 請求項2に記載の圧延機において、
    前記クーラント供給装置は、前記形状検出器の板幅方向測定間隔に対応する複数のノズルを板幅方向に配置した少なくとも上下1対のクーラントヘッダー列と、クーラントの流量を夫々調整する手段を備えた2つの供給系統を備え、第2の供給系統における1ノズルあたりの流量を第1の供給系統における1ノズルあたりの流量よりも多くすることを特徴とする圧延機。
  5. 請求項2に記載の圧延機において、
    前記クーラント供給装置は、前記形状検出器の板幅方向測定間隔に対応する複数のノズルを板幅方向に配置した少なくとも上下1対のクーラントヘッダー列と、クーラントの温度を夫々調整する手段を備えた2つの供給系統を備え、第2の供給系統における温度を第1の供給系統における温度よりも低くすることを特徴とする圧延機。
  6. 請求項2に記載の圧延機において、
    前記クーラント供給装置は、前記形状検出器の板幅方向測定間隔に対応する複数のノズルを板幅方向に配置した少なくとも上下1対のクーラントヘッダー列と、クーラントの温度を夫々調整する手段を備えた3つの供給系統を備え、第2の供給系統における温度を第1の供給系統における温度よりも低くし、第3の供給系統における温度を第1の供給系統における温度よりも高くすることを特徴とする圧延機。
  7. 圧延材を圧延する作業ロールと、少なくとも圧延材の入側でクーラントを供給するクーラント装置と、圧延後の板形状を測定する形状検出器と、板形状を制御する機械的制御手段とを備え、前記作業ロールの直径を、圧延可能な最大板幅の0.16 倍以上0.3 倍未満とした圧延機の圧延方法において、
    前記クーラント装置で、そのクーラントの流量及び温度を夫々調整しながら、複数のノズルを板幅方向に配置したクーラントヘッダー列へ複数の供給系統からクーラントを供給し、
    該機械的制御手段及び該クーラント装置により前記形状検出器の検出値に基づき板形状を制御して圧延する圧延方法。
  8. 少なくとも圧延材の入側でクーラントを供給するクーラント装置と、圧延後の板形状を測定する形状検出器と、板形状を制御する機械的制御手段とを備え、圧延材を圧延する作業ロールの直径を圧延可能な最大板幅の0.16倍以上0.3倍未満とした圧延機用制御装置であって、
    前記クーラント装置は、そのクーラントの流量及び温度を夫々調整しながら、複数のノズルを板幅方向に配置したクーラントヘッダー列へ複数の供給系統からクーラントを供給する手段を有し、該機械的制御手段及び該クーラント装置により前記形状検出器の検出値に基づき板形状を制御する圧延機用制御装置。
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