JP2004066293A - レーザ加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】加工中に発生する加工除去物質の被加工物からの除去を促進し、加工性能を高めることのできるレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】超短パルスレーザ光Lが透過する被加工物2に対して超短パルスレーザ光Lを被加工物2の一方側(前面2a)から照射する。照射された超短パルスレーザ光Lが被加工物2の一方側(前面2a)を透過して他方側(後面2b)で集光させ、他方側(後面2b)の面あるいは面近傍から被加工物2を加工する。
【選択図】 図1
【解決手段】超短パルスレーザ光Lが透過する被加工物2に対して超短パルスレーザ光Lを被加工物2の一方側(前面2a)から照射する。照射された超短パルスレーザ光Lが被加工物2の一方側(前面2a)を透過して他方側(後面2b)で集光させ、他方側(後面2b)の面あるいは面近傍から被加工物2を加工する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ加工方法にかかり、特に超短パルスレーザにより被加工物を加工するレーザ加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のレーザ加工方法は、被加工物に対してレーザを集光・照射することにより、高エネルギーを与えて被加工物の加工を行っていた。しかし、レーザを透過する被加工物(例えば、石英ガラス等の透明な被加工物や、ある特定の波長のレーザが透過する可視光では非透明な被加工物等)であると、パルス時間の長いパルスレーザや連続発振レーザを照射しても、レーザが被加工物を透過するためエネルギーが吸収されず、加工することは困難であった。
【0003】
近年、レーザ加工方法に、パルス時間幅が1フェムト秒以上1ピコ秒以下の超短パルスレーザ(フェムト秒レーザ)を用いれば、レーザが透過してしまう被加工物であっても、多光子吸収プロセスによりレーザが集光した部分で被加工物を加工できる技術が開発されている。この超短パルスレーザを用いたレーザ加工方法で、被加工物に穴を形成する場合には、被加工物の前面(レーザ装置と対向する面)でレーザが集光するように被加工物の前面側からレンズによりレーザを集光し一定時間被加工物の前面から照射させて、加工を行うものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した超短パルスレーザを用いたレーザ加工方法であると、穴の形成方向とレーザの照射方向とが同方向となる。図6に示すように、穴H2の形成方向(矢印S2)とレーザの照射方向(矢印I2)とが同方向であると、レーザL2によって発生したプラズマP2による圧力方向(矢印P3)とレーザの照射により発生する加工除去物質の飛散方向(矢印M2)とが対立し、加工除去物質の飛散が妨害される。これにより、図の矢印D2のように加工除去物質が穴H2の内部に残留してしまい、後のレーザ照射による加工の妨げとなるため、例えば穴を形成する場合にはアスペクト比(穴の深さと径の比)の高い穴H2を形成することができなかった。
【0005】
また、形成された穴は、レーザの照射方向に近づくほど径の大きい穴、つまりテーパ形状となってしまう。テーパ形状とならない穴は、大抵の場合、ドリルを用いることにより形成可能であるが、被加工物との磨耗によるドリルの消耗や、加工時間がかかる、という問題がある。例えば、二酸化珪素(SiO2)に直径φ500μmの穴を形成する場合には、その加工速度は0.05mm/s程度である。
【0006】
本発明の課題は、加工中に発生する加工除去物質の被加工物からの除去を促進し、加工性能を高めることのできるレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、
超短パルスレーザが透過する被加工物に対して前記超短パルスレーザを前記被加工物の一方側から照射し、照射された前記超短パルスレーザが前記被加工物の一方側を透過して他方側で集光し、前記他方側の面あるいは面近傍から前記被加工物を加工することを特徴としている。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、被加工物の他方側で集光した超短パルスレーザにより被加工物が加工されるので、被加工物は前記他方側から加工が開始されることとなる。被加工物に凹みを形成する場合には、前記他方側で集光した超短パルスレーザの集光地点を、被加工物の内部に向かうように、被加工物に対して相対的に移動させて加工を行う。この加工で発生する加工除去物質は、レーザの照射に形成された凹みから発散し易い方向、つまり発生位置から被加工物の外部に向かって飛散する。一方、レーザの照射によって発生するプラズマは、常にレーザが照射されている加工部分に存在するため、結果として加工除去物質の飛散方向の上流側に位置することになる。従って、プラズマの発生により生じる圧力の方向と加工除去物質の飛散方向とがほぼ一致するので、プラズマにより加工除去物質の飛散は促進され、加工された凹み内部への加工除去物質の残留を防止することができる。したがって、加工性能を向上させることができる。
【0009】
本発明でいう「レーザが透過する被加工物」とは、例えば、石英ガラス等の透明な被加工物や、ある特定の波長のレーザが透過する可視光では非透明な被加工物等であり、レーザ光を完全に透過する、つまりレーザ光に対する吸収が全くないものに限らず、吸収係数α<1の物質を含んだ意味である。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のレーザ加工方法において、
前記他方側で集光した前記超短パルスレーザを前記被加工物の前記他方側から前記一方側に向かうように、前記被加工物に対して相対的に移動させて前記被加工物に穴を形成することを特徴としている。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、他方側で集光した超短パルスレーザが被加工物の他方側から一方側に向かうように、集光した超短パルスレーザを被加工物に対して相対的に移動させて被加工物に穴を形成する。このため穴が深くなっても加工除去物質の飛散が促進されているので、従来のように被加工物の前面側から加工を開始した場合よりも深い穴、つまり高アスペクト比の穴を形成することができる。特に、ドリルなどを用いた機械加工等と比較して、短時間で高アスペクト比の穴を形成することができる。
【0012】
また、残留した加工除去物質の影響をほとんど受けないため、テーパ状でない、すなわち円筒状の穴を形成することができる。
また、超短パルスレーザでは熱的影響の少ない加工が行えるために、被加工物の穴の内周部分への光学損傷も少なく、機械研磨や熱処理等の後処理の必要のない穴を形成することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、請求項1又は請求項2記載のレーザ加工方法において、
超短パルスレーザが透過する被加工物が、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、ダイヤモンド、炭化珪素(SiC)、シリコン(Si)、二酸化チタン(TiO2)を主成分とする材料であることを特徴としている。
ここで、本発明の酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、ダイヤモンド、炭化珪素(SiC)、シリコン(Si)、二酸化チタン(TiO2)を主成分とする材料」とは、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、ダイヤモンド、炭化珪素(SiC)、シリコン(Si)、二酸化チタン(TiO2)単独の材料だけでなく、各種のドーパント等、他の物質を含有する材料も含まれることを意味している。例えば、「酸化アルミニウム」は、ドーパントを含むチタンサファイヤ、ルビー、サファイヤ等 も含む。「二酸化珪素(SiO2)」は石英(結晶)、石英ガラスを含む。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、他方側で集光した超短パルスレーザが被加工物の他方側から加工、例えば凹みを形成する、あるいは、他方側から一方側に向かうように、集光した超短パルスレーザを被加工物に対して相対的に移動させて被加工物に穴を形成するため、従来では加工が困難であった二酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、ダイヤモンド、炭化珪素(SiC)、シリコン(Si)、二酸化チタン(TiO2)を主成分とする材料に対しても、後処理の必要のない精度の高い加工を行うことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図5の図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は本発明に係るレーザ加工方法を実施するためのレーザ加工装置の実施形態を示したもので、このレーザ加工装置1は、レーザ装置4が照射した超短パルスレーザ光(パルス時間幅が1フェムト秒以上1ピコ秒以下のパルスレーザ:以下レーザ光Lと記載)をステージ3上で固定された被加工物2に対して、被加工物2の前面2a側(一方側)から照射し、被加工物2を後面2b(他方側)から加工するものである。
レーザ装置4と被加工物2の間には、レーザ装置4により照射されたレーザ光Lを前記前面2a側から集光するレンズ5が設けられている。このレンズ5に対して、ステージ3が、モータ等のステージ駆動部6によってレーザLの光軸方向(矢印A)に沿って移動させられることで、被加工物2とレンズ5とが相対的に移動させられる。これらレーザ装置4とステージ駆動部6は、制御装置7によって加工条件に適するように制御されている。
【0017】
次に、レーザ加工装置を用いた本発明のレーザ加工方法について図2を参照にして説明する。ここで、被加工物2は、レーザ装置4から照射されるレーザ光Lが透過するものであれば如何なるものでもよく、本実施の形態では、被加工物2として板状の透明な石英ガラスを用いている。
【0018】
制御装置7は、レーザ加工を開始するタイミングになると、図2(a)に示すように、レンズ5による集光地点Fが被加工物2の後面2b側(他方側)となるように、ステージ駆動部6を制御してステージ3を駆動させる。そして、制御装置7は、レーザ装置4を制御してレーザ光Lを被加工物2に向けて照射させる。
【0019】
そして、制御装置7は、レーザ光Lを照射させたままで、被加工物2が所定の速度(加工速度)で後方(図2では右側)へと移動するようにステージ3を制御する。これにより、レンズ5で集光されたレーザ光Lの集光地点Fは、被加工物2に対して相対的に被加工物2の後面2b側から前面2a側に向かって移動することとなる。この移動によって、集光地点Fが被加工物2の後面2bに位置すると、被加工物2のこの部分には、集光地点Fで集光されたレーザ光Lによって多光子吸収プロセスが生じて加工除去され、図2(b)に示すように、被加工物2に対して穴Hの形成が行われる。
【0020】
その後ステージ3の移動に伴って、図2(c)に示すように、レンズ5で集光されたレーザ光Lにより穴Hが深く形成されていき、集光地点Fが被加工物2の前面2a側に位置すると図2(d)に示すように、穴Hが被加工物2を貫通する。
ここで、穴Hの形成時には、図3に示すように、穴Hの形成方向(矢印S1)とレーザの照射方向(矢印I1)とが逆方向となり、レーザLによって発生したプラズマPにより発生した圧力の方向(矢印P1)と加工除去物質の飛散方向(矢印M1)とが穴Hの形成方向とは逆の方向を向くこととなる。また、穴Hの形成時においては、レーザによって発生するプラズマは、常にレーザが照射されている加工部分に存在するため、結果として加工除去物質の飛散方向の上流側で発生するので、プラズマPの圧力により加工除去物質の飛散が加勢される(矢印D1)。つまり、プラズマPによって加工除去物質の飛散が促進されることになり、アスペクト比の高い穴Hを形成することが可能となる。
【0021】
また、穴Hが被加工物2を貫通するまでは、加工除去物質は後方(2b側)に向かって、つまりレンズ5が配置された方向とは逆の方向に向かって飛散する。これにより、飛散した加工除去物質がレンズ5に付着することを防止することができる。
また、超短パルスレーザでは熱的影響の少ない加工が行えるために、被加工物の穴の内周部分への光学損傷も少なく、機械研磨や熱処理等の後処理の必要のない穴を形成することができる。
このように、本発明の加工方法は、従来のドリル等の加工に比べて、加工時間を大幅に短縮することができるうえ、ドリル加工と同程度の加工性を有するものである。
【0022】
さらに、本発明の加工方法は、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、ダイヤモンド、炭化珪素(SiC)、シリコン(Si)、二酸化チタン(TiO2)を主成分とする材料を被加工物として使用することもできる。これらの、被加工材料としては硬度が大きく、加工が困難な材料に対しても、超短パルスレーザ光を使用し、さらに、上記加工方法を用いることにより、短時間で高精度の加工を行うことができる。
これらの材料は、その硬度が大きいことから加工は困難である反面、工業用品としての需要やその用途、及び、利用価値も大きいものである。
【0023】
このように、高アスペクト比で、かつ、光学的損傷の少ない加工が可能であるため、ダイス、精密部品のガイド、あるいは、近年化学などの分野で用いられているμTAS(Micro Total Analysis System)等の流路の形成等、様々な分野に用いられる物品の形成に、本発明のレーザ加工方法を適用することができる。
【0024】
次に本発明者による実験の結果について説明する。
この実験では、本発明を適用したレーザ加工方法と従来のレーザ加工方法とで、それぞれ被加工物に穴を形成している。
【0025】
[実験1]
実験1では、本発明を適用したレーザ加工方法によって大気中で被加工物に穴を形成した。
本実験1の各条件は以下に示す。なお、実験1で用いたレーザ装置4は、超短パルスレーザを照射するフェムト秒レーザ装置を用いている。
・中心波長 約 800nm
・パルス幅 約 150〜200 fs
・繰り返し周波数 1kHz
・出力 200mW
・レンズ ×5の対物レンズ
・被加工物 石英ガラス
・加工速度 100μm/s
である。
【0026】
そして、上記したレーザ加工方法で石英ガラスG1にレーザ光Lを照射して、図4に示すように深さ3.2mmの穴h1を形成した。図4に示すような内径の一様な穴を形成できた。
【0027】
[実験2]
実験2では、従来のレーザ加工方法によって被加工物に穴を形成した。
ここで、従来のレーザ加工方法も上記したレーザ加工装置1によって実行される。具体的には、制御装置7は、レンズ5の集光地点Fが被加工物2の前面2aに配置されるように、ステージ駆動部6を制御してステージ3を駆動した後その位置で固定する。そして、制御装置7は、レーザ装置4を制御して、レーザ光Lを被加工物2に向けて照射する。
そして、制御装置7は、レーザ光Lの照射を所定の時間(照射時間)行い、被加工物2に穴を形成する。
【0028】
本実験2の各条件は以下に示す。なお、実験2で用いたレーザ装置4についても、超短パルスレーザを照射するフェムト秒レーザ装置を用いている。
・中心波長 約 800nm
・パルス幅 約 150〜200 fs
・繰り返し周波数 1kHz
・出力 590mW
・レンズ f=40のレンズ
・被加工物 石英ガラス
・照射時間 10s、30s、60s、300s、600s
である。
【0029】
そして、上記した従来のレーザ加工方法で、照射時間を10s、30s、60s、300s、600sと異ならせて石英ガラスG2にレーザ光Lを照射し、複数の穴h2〜h6を形成する。
ここで、照射時間と形成された複数の穴h2〜h6についての結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示すように、形成された穴の深度について、従来の方法により形成された複数の穴h2〜h6は、照射時間が異なるにも関わらず深度が全て0.785mmと同じであり、深度の深い穴を形成するのが困難であることがわかる。一方、本発明の加工方法で形成した穴は、3.2mmであり、この穴h1の形成のために照射した時間は、32秒である。このように、本発明の加工方法は、短時間で、従来に比べてはるかに深度の深い穴を形成することができる。
また、複数の穴h2〜h6は、図5に示すように、いずれの穴h2〜h6も先方に向かって内径が小さくなるテーパ状の穴となっている。
このように、実験2ではいずれの穴h2〜h6もテーパ状に形成されているのに対して、実験1では図4に示すように、テーパ状でない円筒状の穴を被加工物に形成していることがわかる。このように、本発明を適用したレーザ加工方法であれば、円筒状の穴を形成することが可能となる。従って、本発明の加工方法により、高アスペクト比の穴h1を形成することが可能となる。
【0032】
尚、実験2において、レンズにf=40のレンズを使用したのは、実験1と同様に対物レンズを使用すると、形成される穴がほとんど測定不能な程小さいためである。
【0033】
なお、本発明は上記実施の形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、本実施の形態では、被加工物2として石英ガラスを例示して説明したが、被加工物2はレーザ光Lが透過する物質であれば如何なるものでもよく、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、ダイヤモンド、炭化珪素(SiC)、シリコン(Si)、二酸化チタン(TiO2)等を主成分とする材料を用いることができる。この他にも、レーザ光Lが透過する物質や、ある特定の波長のレーザが透過する可視光では非透明な物質に対しても、本発明の加工方法を適用することができる。
また、本実施の形態では、被加工物2を移動させることで、被加工物2とレンズ5とを相対的に移動させていたが、被加工物2を移動させなくてもレンズ5を移動させて、両者を相対的に移動させる構成であってもよい。
また、本実施の形態では、大気中でレーザ加工装置1を使用する場合について説明したが、これに限られるものではないことは勿論であり、例えば真空中でレーザ加工装置1を使用してもよい。
【0034】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、被加工物は他方側から加工が開始されため、被加工物に凹みを形成する場合には、他方側で集光した超短パルスレーザを、被加工物の内部に向かうように被加工物に対して相対的に移動させて加工を行う。この加工で発生する加工除去物質は、凹みの開口から被加工物の外部に向かって飛散する。一方、レーザによって発生するプラズマは、常に加工除去物質の上流側に位置することとなる。つまり、プラズマの圧力方向と加工除去物質の飛散方向とがほぼ一致するので、プラズマにより加工除去物質の飛散は促進され、加工された凹み内部からの加工除去物質の除去を促進することができる。したがって、レーザ加工方法の加工性能を高めることができる。
【0035】
請求項2記載の発明によれば、穴が深くなっても加工除去物質の飛散は妨害されることなく、従来のように被加工物の前面側から加工を開始した場合よりも深い穴、つまり高アスペクト比の穴を形成することができる。特に、ドリルなどを用いた機械加工等と比較して、短時間で高アスペクト比の穴を形成することができる。
特に、従来のレーザ加工方法で穴を形成した場合には、入口部分が径の大きいテーパ状の穴になってしまっていたが、この発明では、プラズマが加工除去物質の飛散を促進し、加工除去物質が加工に与える影響も少なく、円筒状の穴を形成することができる。
【0036】
また、超短パルスレーザでは熱的影響の少ない加工が行えるために、被加工物の穴の内周部分が光学損傷をうけることを抑えることができ、機械研磨や熱処理等の後処理の必要のない穴を形成することができる。
さらに、加工に要する時間も従来のドリル等の加工に比べて、大幅に短縮することができる。
【0037】
請求項3記載の発明によれば、他方側で集光した超短パルスレーザが被加工物の他方側から加工、例えば凹みを形成する、あるいは、他方側から一方側に向かうように、集光した超短パルスレーザを被加工物に対して相対的に移動させて被加工物に穴を形成するため、従来では加工が困難であった二酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、ダイヤモンド、炭化珪素(SiC)、シリコン(Si)、二酸化チタン(TiO2)を主成分とする材料に対しても、後処理の必要のない精度の高い加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレーザ加工方法により加工を行うレーザ加工装置の概念構成説明図である。
【図2】図1のレーザ加工装置で被加工物に穴が形成される際の形成手順を表す説明図である。
【図3】図1のレーザ加工装置で穴が形成される際の加工除去物質とプラズマとの関係を表した説明図である。
【図4】実験1で被加工物に形成された穴を表す説明図である。
【図5】実験2で被加工物に形成された穴を表す説明図である。
【図6】従来のレーザ加工方法で穴が形成される際の加工除去物質とプラズマとの関係を表した説明図である。
【符号の説明】
2 被加工物
L レーザ光(超短パルスレーザ光)
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ加工方法にかかり、特に超短パルスレーザにより被加工物を加工するレーザ加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のレーザ加工方法は、被加工物に対してレーザを集光・照射することにより、高エネルギーを与えて被加工物の加工を行っていた。しかし、レーザを透過する被加工物(例えば、石英ガラス等の透明な被加工物や、ある特定の波長のレーザが透過する可視光では非透明な被加工物等)であると、パルス時間の長いパルスレーザや連続発振レーザを照射しても、レーザが被加工物を透過するためエネルギーが吸収されず、加工することは困難であった。
【0003】
近年、レーザ加工方法に、パルス時間幅が1フェムト秒以上1ピコ秒以下の超短パルスレーザ(フェムト秒レーザ)を用いれば、レーザが透過してしまう被加工物であっても、多光子吸収プロセスによりレーザが集光した部分で被加工物を加工できる技術が開発されている。この超短パルスレーザを用いたレーザ加工方法で、被加工物に穴を形成する場合には、被加工物の前面(レーザ装置と対向する面)でレーザが集光するように被加工物の前面側からレンズによりレーザを集光し一定時間被加工物の前面から照射させて、加工を行うものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した超短パルスレーザを用いたレーザ加工方法であると、穴の形成方向とレーザの照射方向とが同方向となる。図6に示すように、穴H2の形成方向(矢印S2)とレーザの照射方向(矢印I2)とが同方向であると、レーザL2によって発生したプラズマP2による圧力方向(矢印P3)とレーザの照射により発生する加工除去物質の飛散方向(矢印M2)とが対立し、加工除去物質の飛散が妨害される。これにより、図の矢印D2のように加工除去物質が穴H2の内部に残留してしまい、後のレーザ照射による加工の妨げとなるため、例えば穴を形成する場合にはアスペクト比(穴の深さと径の比)の高い穴H2を形成することができなかった。
【0005】
また、形成された穴は、レーザの照射方向に近づくほど径の大きい穴、つまりテーパ形状となってしまう。テーパ形状とならない穴は、大抵の場合、ドリルを用いることにより形成可能であるが、被加工物との磨耗によるドリルの消耗や、加工時間がかかる、という問題がある。例えば、二酸化珪素(SiO2)に直径φ500μmの穴を形成する場合には、その加工速度は0.05mm/s程度である。
【0006】
本発明の課題は、加工中に発生する加工除去物質の被加工物からの除去を促進し、加工性能を高めることのできるレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、
超短パルスレーザが透過する被加工物に対して前記超短パルスレーザを前記被加工物の一方側から照射し、照射された前記超短パルスレーザが前記被加工物の一方側を透過して他方側で集光し、前記他方側の面あるいは面近傍から前記被加工物を加工することを特徴としている。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、被加工物の他方側で集光した超短パルスレーザにより被加工物が加工されるので、被加工物は前記他方側から加工が開始されることとなる。被加工物に凹みを形成する場合には、前記他方側で集光した超短パルスレーザの集光地点を、被加工物の内部に向かうように、被加工物に対して相対的に移動させて加工を行う。この加工で発生する加工除去物質は、レーザの照射に形成された凹みから発散し易い方向、つまり発生位置から被加工物の外部に向かって飛散する。一方、レーザの照射によって発生するプラズマは、常にレーザが照射されている加工部分に存在するため、結果として加工除去物質の飛散方向の上流側に位置することになる。従って、プラズマの発生により生じる圧力の方向と加工除去物質の飛散方向とがほぼ一致するので、プラズマにより加工除去物質の飛散は促進され、加工された凹み内部への加工除去物質の残留を防止することができる。したがって、加工性能を向上させることができる。
【0009】
本発明でいう「レーザが透過する被加工物」とは、例えば、石英ガラス等の透明な被加工物や、ある特定の波長のレーザが透過する可視光では非透明な被加工物等であり、レーザ光を完全に透過する、つまりレーザ光に対する吸収が全くないものに限らず、吸収係数α<1の物質を含んだ意味である。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のレーザ加工方法において、
前記他方側で集光した前記超短パルスレーザを前記被加工物の前記他方側から前記一方側に向かうように、前記被加工物に対して相対的に移動させて前記被加工物に穴を形成することを特徴としている。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、他方側で集光した超短パルスレーザが被加工物の他方側から一方側に向かうように、集光した超短パルスレーザを被加工物に対して相対的に移動させて被加工物に穴を形成する。このため穴が深くなっても加工除去物質の飛散が促進されているので、従来のように被加工物の前面側から加工を開始した場合よりも深い穴、つまり高アスペクト比の穴を形成することができる。特に、ドリルなどを用いた機械加工等と比較して、短時間で高アスペクト比の穴を形成することができる。
【0012】
また、残留した加工除去物質の影響をほとんど受けないため、テーパ状でない、すなわち円筒状の穴を形成することができる。
また、超短パルスレーザでは熱的影響の少ない加工が行えるために、被加工物の穴の内周部分への光学損傷も少なく、機械研磨や熱処理等の後処理の必要のない穴を形成することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、請求項1又は請求項2記載のレーザ加工方法において、
超短パルスレーザが透過する被加工物が、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、ダイヤモンド、炭化珪素(SiC)、シリコン(Si)、二酸化チタン(TiO2)を主成分とする材料であることを特徴としている。
ここで、本発明の酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、ダイヤモンド、炭化珪素(SiC)、シリコン(Si)、二酸化チタン(TiO2)を主成分とする材料」とは、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、ダイヤモンド、炭化珪素(SiC)、シリコン(Si)、二酸化チタン(TiO2)単独の材料だけでなく、各種のドーパント等、他の物質を含有する材料も含まれることを意味している。例えば、「酸化アルミニウム」は、ドーパントを含むチタンサファイヤ、ルビー、サファイヤ等 も含む。「二酸化珪素(SiO2)」は石英(結晶)、石英ガラスを含む。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、他方側で集光した超短パルスレーザが被加工物の他方側から加工、例えば凹みを形成する、あるいは、他方側から一方側に向かうように、集光した超短パルスレーザを被加工物に対して相対的に移動させて被加工物に穴を形成するため、従来では加工が困難であった二酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、ダイヤモンド、炭化珪素(SiC)、シリコン(Si)、二酸化チタン(TiO2)を主成分とする材料に対しても、後処理の必要のない精度の高い加工を行うことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図5の図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は本発明に係るレーザ加工方法を実施するためのレーザ加工装置の実施形態を示したもので、このレーザ加工装置1は、レーザ装置4が照射した超短パルスレーザ光(パルス時間幅が1フェムト秒以上1ピコ秒以下のパルスレーザ:以下レーザ光Lと記載)をステージ3上で固定された被加工物2に対して、被加工物2の前面2a側(一方側)から照射し、被加工物2を後面2b(他方側)から加工するものである。
レーザ装置4と被加工物2の間には、レーザ装置4により照射されたレーザ光Lを前記前面2a側から集光するレンズ5が設けられている。このレンズ5に対して、ステージ3が、モータ等のステージ駆動部6によってレーザLの光軸方向(矢印A)に沿って移動させられることで、被加工物2とレンズ5とが相対的に移動させられる。これらレーザ装置4とステージ駆動部6は、制御装置7によって加工条件に適するように制御されている。
【0017】
次に、レーザ加工装置を用いた本発明のレーザ加工方法について図2を参照にして説明する。ここで、被加工物2は、レーザ装置4から照射されるレーザ光Lが透過するものであれば如何なるものでもよく、本実施の形態では、被加工物2として板状の透明な石英ガラスを用いている。
【0018】
制御装置7は、レーザ加工を開始するタイミングになると、図2(a)に示すように、レンズ5による集光地点Fが被加工物2の後面2b側(他方側)となるように、ステージ駆動部6を制御してステージ3を駆動させる。そして、制御装置7は、レーザ装置4を制御してレーザ光Lを被加工物2に向けて照射させる。
【0019】
そして、制御装置7は、レーザ光Lを照射させたままで、被加工物2が所定の速度(加工速度)で後方(図2では右側)へと移動するようにステージ3を制御する。これにより、レンズ5で集光されたレーザ光Lの集光地点Fは、被加工物2に対して相対的に被加工物2の後面2b側から前面2a側に向かって移動することとなる。この移動によって、集光地点Fが被加工物2の後面2bに位置すると、被加工物2のこの部分には、集光地点Fで集光されたレーザ光Lによって多光子吸収プロセスが生じて加工除去され、図2(b)に示すように、被加工物2に対して穴Hの形成が行われる。
【0020】
その後ステージ3の移動に伴って、図2(c)に示すように、レンズ5で集光されたレーザ光Lにより穴Hが深く形成されていき、集光地点Fが被加工物2の前面2a側に位置すると図2(d)に示すように、穴Hが被加工物2を貫通する。
ここで、穴Hの形成時には、図3に示すように、穴Hの形成方向(矢印S1)とレーザの照射方向(矢印I1)とが逆方向となり、レーザLによって発生したプラズマPにより発生した圧力の方向(矢印P1)と加工除去物質の飛散方向(矢印M1)とが穴Hの形成方向とは逆の方向を向くこととなる。また、穴Hの形成時においては、レーザによって発生するプラズマは、常にレーザが照射されている加工部分に存在するため、結果として加工除去物質の飛散方向の上流側で発生するので、プラズマPの圧力により加工除去物質の飛散が加勢される(矢印D1)。つまり、プラズマPによって加工除去物質の飛散が促進されることになり、アスペクト比の高い穴Hを形成することが可能となる。
【0021】
また、穴Hが被加工物2を貫通するまでは、加工除去物質は後方(2b側)に向かって、つまりレンズ5が配置された方向とは逆の方向に向かって飛散する。これにより、飛散した加工除去物質がレンズ5に付着することを防止することができる。
また、超短パルスレーザでは熱的影響の少ない加工が行えるために、被加工物の穴の内周部分への光学損傷も少なく、機械研磨や熱処理等の後処理の必要のない穴を形成することができる。
このように、本発明の加工方法は、従来のドリル等の加工に比べて、加工時間を大幅に短縮することができるうえ、ドリル加工と同程度の加工性を有するものである。
【0022】
さらに、本発明の加工方法は、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、ダイヤモンド、炭化珪素(SiC)、シリコン(Si)、二酸化チタン(TiO2)を主成分とする材料を被加工物として使用することもできる。これらの、被加工材料としては硬度が大きく、加工が困難な材料に対しても、超短パルスレーザ光を使用し、さらに、上記加工方法を用いることにより、短時間で高精度の加工を行うことができる。
これらの材料は、その硬度が大きいことから加工は困難である反面、工業用品としての需要やその用途、及び、利用価値も大きいものである。
【0023】
このように、高アスペクト比で、かつ、光学的損傷の少ない加工が可能であるため、ダイス、精密部品のガイド、あるいは、近年化学などの分野で用いられているμTAS(Micro Total Analysis System)等の流路の形成等、様々な分野に用いられる物品の形成に、本発明のレーザ加工方法を適用することができる。
【0024】
次に本発明者による実験の結果について説明する。
この実験では、本発明を適用したレーザ加工方法と従来のレーザ加工方法とで、それぞれ被加工物に穴を形成している。
【0025】
[実験1]
実験1では、本発明を適用したレーザ加工方法によって大気中で被加工物に穴を形成した。
本実験1の各条件は以下に示す。なお、実験1で用いたレーザ装置4は、超短パルスレーザを照射するフェムト秒レーザ装置を用いている。
・中心波長 約 800nm
・パルス幅 約 150〜200 fs
・繰り返し周波数 1kHz
・出力 200mW
・レンズ ×5の対物レンズ
・被加工物 石英ガラス
・加工速度 100μm/s
である。
【0026】
そして、上記したレーザ加工方法で石英ガラスG1にレーザ光Lを照射して、図4に示すように深さ3.2mmの穴h1を形成した。図4に示すような内径の一様な穴を形成できた。
【0027】
[実験2]
実験2では、従来のレーザ加工方法によって被加工物に穴を形成した。
ここで、従来のレーザ加工方法も上記したレーザ加工装置1によって実行される。具体的には、制御装置7は、レンズ5の集光地点Fが被加工物2の前面2aに配置されるように、ステージ駆動部6を制御してステージ3を駆動した後その位置で固定する。そして、制御装置7は、レーザ装置4を制御して、レーザ光Lを被加工物2に向けて照射する。
そして、制御装置7は、レーザ光Lの照射を所定の時間(照射時間)行い、被加工物2に穴を形成する。
【0028】
本実験2の各条件は以下に示す。なお、実験2で用いたレーザ装置4についても、超短パルスレーザを照射するフェムト秒レーザ装置を用いている。
・中心波長 約 800nm
・パルス幅 約 150〜200 fs
・繰り返し周波数 1kHz
・出力 590mW
・レンズ f=40のレンズ
・被加工物 石英ガラス
・照射時間 10s、30s、60s、300s、600s
である。
【0029】
そして、上記した従来のレーザ加工方法で、照射時間を10s、30s、60s、300s、600sと異ならせて石英ガラスG2にレーザ光Lを照射し、複数の穴h2〜h6を形成する。
ここで、照射時間と形成された複数の穴h2〜h6についての結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示すように、形成された穴の深度について、従来の方法により形成された複数の穴h2〜h6は、照射時間が異なるにも関わらず深度が全て0.785mmと同じであり、深度の深い穴を形成するのが困難であることがわかる。一方、本発明の加工方法で形成した穴は、3.2mmであり、この穴h1の形成のために照射した時間は、32秒である。このように、本発明の加工方法は、短時間で、従来に比べてはるかに深度の深い穴を形成することができる。
また、複数の穴h2〜h6は、図5に示すように、いずれの穴h2〜h6も先方に向かって内径が小さくなるテーパ状の穴となっている。
このように、実験2ではいずれの穴h2〜h6もテーパ状に形成されているのに対して、実験1では図4に示すように、テーパ状でない円筒状の穴を被加工物に形成していることがわかる。このように、本発明を適用したレーザ加工方法であれば、円筒状の穴を形成することが可能となる。従って、本発明の加工方法により、高アスペクト比の穴h1を形成することが可能となる。
【0032】
尚、実験2において、レンズにf=40のレンズを使用したのは、実験1と同様に対物レンズを使用すると、形成される穴がほとんど測定不能な程小さいためである。
【0033】
なお、本発明は上記実施の形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、本実施の形態では、被加工物2として石英ガラスを例示して説明したが、被加工物2はレーザ光Lが透過する物質であれば如何なるものでもよく、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、ダイヤモンド、炭化珪素(SiC)、シリコン(Si)、二酸化チタン(TiO2)等を主成分とする材料を用いることができる。この他にも、レーザ光Lが透過する物質や、ある特定の波長のレーザが透過する可視光では非透明な物質に対しても、本発明の加工方法を適用することができる。
また、本実施の形態では、被加工物2を移動させることで、被加工物2とレンズ5とを相対的に移動させていたが、被加工物2を移動させなくてもレンズ5を移動させて、両者を相対的に移動させる構成であってもよい。
また、本実施の形態では、大気中でレーザ加工装置1を使用する場合について説明したが、これに限られるものではないことは勿論であり、例えば真空中でレーザ加工装置1を使用してもよい。
【0034】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、被加工物は他方側から加工が開始されため、被加工物に凹みを形成する場合には、他方側で集光した超短パルスレーザを、被加工物の内部に向かうように被加工物に対して相対的に移動させて加工を行う。この加工で発生する加工除去物質は、凹みの開口から被加工物の外部に向かって飛散する。一方、レーザによって発生するプラズマは、常に加工除去物質の上流側に位置することとなる。つまり、プラズマの圧力方向と加工除去物質の飛散方向とがほぼ一致するので、プラズマにより加工除去物質の飛散は促進され、加工された凹み内部からの加工除去物質の除去を促進することができる。したがって、レーザ加工方法の加工性能を高めることができる。
【0035】
請求項2記載の発明によれば、穴が深くなっても加工除去物質の飛散は妨害されることなく、従来のように被加工物の前面側から加工を開始した場合よりも深い穴、つまり高アスペクト比の穴を形成することができる。特に、ドリルなどを用いた機械加工等と比較して、短時間で高アスペクト比の穴を形成することができる。
特に、従来のレーザ加工方法で穴を形成した場合には、入口部分が径の大きいテーパ状の穴になってしまっていたが、この発明では、プラズマが加工除去物質の飛散を促進し、加工除去物質が加工に与える影響も少なく、円筒状の穴を形成することができる。
【0036】
また、超短パルスレーザでは熱的影響の少ない加工が行えるために、被加工物の穴の内周部分が光学損傷をうけることを抑えることができ、機械研磨や熱処理等の後処理の必要のない穴を形成することができる。
さらに、加工に要する時間も従来のドリル等の加工に比べて、大幅に短縮することができる。
【0037】
請求項3記載の発明によれば、他方側で集光した超短パルスレーザが被加工物の他方側から加工、例えば凹みを形成する、あるいは、他方側から一方側に向かうように、集光した超短パルスレーザを被加工物に対して相対的に移動させて被加工物に穴を形成するため、従来では加工が困難であった二酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、ダイヤモンド、炭化珪素(SiC)、シリコン(Si)、二酸化チタン(TiO2)を主成分とする材料に対しても、後処理の必要のない精度の高い加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレーザ加工方法により加工を行うレーザ加工装置の概念構成説明図である。
【図2】図1のレーザ加工装置で被加工物に穴が形成される際の形成手順を表す説明図である。
【図3】図1のレーザ加工装置で穴が形成される際の加工除去物質とプラズマとの関係を表した説明図である。
【図4】実験1で被加工物に形成された穴を表す説明図である。
【図5】実験2で被加工物に形成された穴を表す説明図である。
【図6】従来のレーザ加工方法で穴が形成される際の加工除去物質とプラズマとの関係を表した説明図である。
【符号の説明】
2 被加工物
L レーザ光(超短パルスレーザ光)
Claims (3)
- 超短パルスレーザが透過する被加工物に対して前記超短パルスレーザを前記被加工物の一方側から照射し、照射された前記超短パルスレーザが前記被加工物の一方側を透過して他方側で集光し、前記他方側の面あるいは面近傍から前記被加工物を加工することを特徴とするレーザ加工方法。
- 請求項1記載のレーザ加工方法において、
前記他方側で集光した前記超短パルスレーザを前記被加工物の前記他方側から前記一方側に向かうように、前記被加工物に対して相対的に移動させて前記被加工物に穴を形成することを特徴とするレーザ加工方法。 - 請求項1又は請求項2記載のレーザ加工方法において、
超短パルスレーザが透過する被加工物が、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、ダイヤモンド、炭化珪素(SiC)、シリコン(Si)、二酸化チタン(TiO2)を主成分とする材料であることを特徴とするレーザ加工方法。
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