JP2001259868A - 後方誘導散乱光を用いた透明材料のナノオーダ微細加工方法及び加工装置 - Google Patents

後方誘導散乱光を用いた透明材料のナノオーダ微細加工方法及び加工装置

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JP2001259868A
JP2001259868A JP2001173171A JP2001173171A JP2001259868A JP 2001259868 A JP2001259868 A JP 2001259868A JP 2001173171 A JP2001173171 A JP 2001173171A JP 2001173171 A JP2001173171 A JP 2001173171A JP 2001259868 A JP2001259868 A JP 2001259868A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】透明材料を直接レーザ照射する加工法その他の
従来のレーザ加工法は、精度が低く、ナノオーダーの微
細加工に適していない。 【解決手段】ガラス板11の被加工面11bを誘導散乱
活性媒質12、例えばローダミンBを含有する二硫化炭
素に接触させ、被加工面11bとは逆側の面11aか
ら、光学系7を介してレーザ光を照射し、湯動産欄活性
媒質12が放出する後方誘導散乱光を利用して、ガラス
板11にエッチング加工を施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】本発明は後方散乱を利用して
行う透明材料の加工装置及び加工方法に関する。
【発明が解決しようとする課題】石英ガラスは、純度が
高いものでバンドギャップが8−10eVであり、通常
150−170nm程度の高エネルギー帯に吸収端を有
しているため、単純にレーザ光等を照射することにより
アブレーションを発生させてドライエッチングを行うに
は、高エネルギー波又は極短パルス波の照射が必要とさ
れている。これに対し、吸収帯の生成を加工に利用し、
より低エネルギーのレーザ光を利用できるよう、エッチ
ングのためのレーザ照射(以下、本照射という。)を行
う前に、予備照射を行い、多段階レーザ照射による多光
子吸収に基づくレーザエッチングが提案されている(特
開平7−256473号公報)。すなわち、石英ガラス
の吸収端よりも短波長側のレーザ光による予備照射によ
り、吸収端よりも長波長側に新たな吸収帯を生成させ、
この吸収帯に近い波長のレーザ光により本照射すること
によりエッチングを実現するものである。しかしなが
ら、この方法には、2種類の波長に対応する複数のレー
ザ光源を必要とし、2段階工程になると共に、位置合わ
せの必要があること、エッチングパターンが予備照射の
範囲と本照射の範囲との共通部分となるため、レーザ出
力のうち、加工に寄与しない無駄な部分が生じることな
どの問題を有している。また、レーザの吸収率が高い液
を透明材料の表面に接触させレーザ光を照射して加工す
る技術が公知であり、この液としてNiSO水溶液、
若しくは金属粒子、酸化金属又は炭素粒子の分散液の例
があるが、これらは何れも液の発熱を透明材料に遷移す
ることを加工原理とするものであって、加工精度が10
0μm程度であり、金属又は炭素粒子は透明基板表面に
残留すると半導体層、電極層等を形成する場合の不純物
となること、可視光領域に強い吸収を有するため透明材
料が着色汚染されること等の問題があるため、数nm−
数百nmオーダの加工精度が必要とされる、ポリシリコ
ン半導体集積回路、液晶素子等のSOG構造、COG構
造、光ディスク、光カード、近接場光ディスク等の記録
媒体、DNAチップ(例えば特開2000−60554
号公報)、各種バイオセンサ、近接場光素子、フォトニ
ック結晶、シリカ光学回路素子(例えばUSP5,89
2,863)等に用いる透明材料のナノオーダ微細加工
には精度が不十分である。
【課題を解決するための手段】上記問題を解決し、低エ
ネルギーにより、実質的に一段階工程で、無駄なレーザ
出力を低減し、高精度の加工を実現するため、加工媒質
とレーザ光照射手段とを有し、当該加工媒質に接して配
置されている透明材料を介してレーザ光を当該加工媒質
に照射し、当該加工媒質から放出される後方散乱光を利
用して、当該透明材料の表面を加工する透明材料の加工
装置の外、各請求項に記載の手段を採用する。
【作用】本発明においては、以下の吸収帯の生成及び/
又は散乱光放射現象のうち、それぞれ一乃至複数が作用
し、以下に述べるように加工媒質の種類、レーザ光のパ
ルス幅等により支配的に加工に寄与する吸収帯の生成現
象及び/又は光放射現象が異なるものと考えられる。<
吸収帯の生成及び改質>一般にガラス材料においては、
エキシマレーザやX線の照射により、通常の吸収域以外
の波長に吸収帯が生じる。ガラス中には種々の非平衡部
分構造が残存し、微量不純物が溶解されているため、こ
れらが放射線による着色中心の前駆体となる。例えば石
英ガラスの場合、酸素過剰構造PO(Si−O−O−S
i)や酸素欠乏構造(Si−Si)等の欠陥前駆体、又
は骨格となる基本構造(Si−O−Si)自体が光子を
吸収することにより、E’センター(≡Si・)やNB
OHC:Non−Bridging Oxygen H
ole Center(≡Si−O・)が生成し、それ
ぞれ約215nm及び約260nmの吸収帯を生じる。
また、水素過剰下で生じるSi−H構造は、光子吸収に
よりE’センターを生成する。これらの吸収帯の他に、
水素原子を伴うE’センター、酸素欠乏欠陥がそれぞれ
約230nm及び約248nmの吸収帯の原因となる。
石英ガラスのバンド構造は、原子価帯が酸素上の孤立電
子対から、また伝導帯が反結合性σ軌道から構成され
る。ドーパントや不純物を含む場合、例えば修飾イオン
X+は、非架橋酸素NBO(Si−O)を作るが、
NBOの孤立電子対は架橋酸素BOの場合よりも高エネ
ルギーであるため、正孔がトラップされやすく、吸収帯
が生成しやすい。また、微量のB,Alは、H又はR
(アルカリ)に正電荷を補償された場合、放射線によ
り正孔をトラップする。電荷補償陽イオンが含まれない
と、Al,Bは平面三角配位となり、放射線によりE’
センターが生じる。更に、Geを導入すると、Ge−O
の結合強度がSi−Oよりもかなり弱いので、構造欠陥
が生じやすく、E’センターの密度が増加する。更にま
た、P,Asを含む場合も、NBOの孤立電子対より高
いエネルギーの孤立電子対が生じ、放射線によりE’セ
ンターが生じる。その他、Ag,Au,Cd,G
2+、Ti2+、Ge3+、(Sn2+、(Sn
4+、Pb3+、Sb4+等のp−block元素
の酸化還元反応によるnsセンターの発生Ti3+
Zr3+、Nd4+、Mo5+、W5+等の遷移金属イ
オンの酸化還元反応によるndセンターの発生、その
他の希土類、遷移金属イオンの酸化還元反応(Ce3+
⇔Ce2+、Mn2+⇔Mn3+、Fe2+⇔F
3+、Cu⇔Cu2++e)が放射線により誘起
され、還元種が正孔捕獲中心、酸化種が電子捕獲中心と
なり、吸収帯が生成する。このように、放射線の照射に
より吸収帯が生成し、石英ガラスが改質される(生成し
た吸収帯に対応する波長のレーザ光の吸収特性が高ま
る、又は吸収帯が生成した結果、吸収端が長波長側にシ
フトする)ので、吸収帯を生成する予備照射を行うこと
により、直接レーザ照射で加工する場合と比較して長波
長の、すなわち低エネルギーのレーザ光による本照射に
より、加工が可能となる。本発明においては、以上説明
してきた吸収帯の生成のための予備照射を、本照射と同
一のレーザ照射手段により、実質的に一工程で行うこと
ができる。特に、以下で説明する、非線形媒質による後
方誘導散乱光を利用することにより、レーザ光源からの
入射光を本照射光として利用すると共に、入射光に対し
て波長及び/又はピーク出力が変換された後方誘導散乱
光を生成し、予備照射光として利用することができる。
<誘導散乱(stimulated scatteri
ng)>一般に媒質に光波を照射すると、光子と媒質と
の相互作用により、入射光周波数ωの他に媒質の固有
振動の周波数ωだけずれた、ω±ωの光が散乱さ
れる。本明細書では、この様な媒質を散乱活性媒質と呼
ぶ。入射光強度が弱いときには、入射光強度に比例する
自然散乱(spontaneous scatteri
ng)が発生するが、誘導散乱による散乱光は、ポンピ
ング光と散乱光強度の両方に比例するので、ポンピング
光がコヒーレントであれば、ある閾値を越えると特定の
散乱光のみが強く散乱され、指向性が鋭い、ポンピング
光と同程度のコヒーレンスを有する放射光となる。この
コヒーレントな誘導散乱光の照射が本発明の加工に寄与
する。誘導散乱には、以下の誘導ラマン散乱、誘導ブリ
ュアン散乱、誘導レイリー散乱等があるが、本発明にお
いてはこれらの散乱における後方散乱、すなわち後方誘
導散乱光が加工に寄与する。非線形媒質へのレーザ光照
射が自己収束(self−focusing)や自己束
縛(self−trapping)を伴う場合、例えば
そのような性質を有する光カー液体を用いる場合には、
極めて強度の大きなコヒーレント光を得ることができ
る。誘導散乱により後方に位相共役波が放出される場合
には、入射光との協働により、集光部近傍で強め合う合
成波が得られるので、本発明の加工に寄与する。また、
非線形媒質の後方誘導散乱光が、入射光に対する高調波
又は高調波から更にストークスシフト(特にラマンシフ
ト)によりずれた波長となる場合があり、加工に寄与す
る。<誘導ラマン散乱(stimulated Ram
an scattering)>ラマン活性媒質に強度
が高いコヒーレント光を入射すると、分子の振動や回
転、固体中の光学活性の格子振動により、媒質の分極率
が変調を受けることによりラマン散乱が発生するが、更
に放射照度が一定の閾値を越えると、特定の方向にきわ
めて強いコヒーレント光が放出される。これを誘導ラマ
ン散乱(SRS)という。媒質が非線形屈折率を有する
場合には、レーザ光が自己収束する場合があるが、この
場合にはビームが最も収束した位置付近において誘導ラ
マン散乱が発生する。後方誘導ラマン散乱はきわめて強
度が大きく短いパルス(例えばメタンの場合、入射した
エキシマレーザと比較し、パルス幅が1/10、ピーク
出力が5倍、エネルギー変換効率50%)として発生す
る。また、後方誘導ラマン散乱では、パルスの立ち上が
りで小信号利得が得られる場合があり、入射レーザパル
スのピーク強度を大きく増幅することができる。このよ
うな後方誘導ラマン散乱による放射光は本発明の加工に
寄与する。又、入射するレーザ光のパルス幅が媒質の横
緩和時間程度、則ちピコ秒領域になると、入射レーザ光
と誘導ラマン散乱により生じるストークス光との2光子
が媒質と結合して、媒質分子をコヒーレントに励起する
ようになり、更にこのコヒーレントな分子振動を媒介と
してレーザ光とストークス光との間に非常に強い相互作
用が生じ、100%に近い効率でエネルギー変換が生じ
る。このような高次の誘導ラマン散乱光も本発明の加工
に寄与し得る。<誘導ブリュアン散乱(stimula
ted Brillouin scattering)
>ブリュアン散乱は、ブリュアン活性媒質に光を照射し
た場合に、媒質中に生じた音響的フォノンによる光の散
乱であるが、コヒーレンスのよいレーザ光では、放射照
度がある閾値を超えると、入射波、散乱波及び音響波の
間のうなりによる強い相互結合によってきわめて強い散
乱光が放出される。これを誘導ブリュアン散乱(SB
S)という。誘導ブリュアン散乱は、通常光の入射方向
と逆向き(後方)における強度が最大となる。この後方
誘導ブリュアン散乱による放射光が本発明の加工に寄与
する。ここで、媒質が励起光を吸収する場合には、吸収
による効果が発生するが、これを誘導熱ブリュアン散乱
という。この現象はブリュアン活性物質中に色素等を溶
解又は分散している場合にも発生し、この場合の利得係
数は、散乱による利得係数と吸収による利得係数との和
になるため、色素がない場合と比較し、利得係数が増大
する条件が存在する。媒質が非線形屈折率を有する場合
には、レーザ光が自己収束することがあるが、この場合
にはビームの径が50μm程度以下に収束した位置で誘
導ブリュアン散乱が発生する。なお、誘導ラマン散乱
(SRS)と誘導ブリュアン散乱(SBS)は競合関係
にあり、同時に発生し得るが、定常状態に近い場合に
は、誘導ブリュアン散乱の利得の方が誘導ラマン散乱の
利得を上回るため、殆どの励起光は誘導ブリュアン散乱
により後方に戻されてしまう。これをブリュアン反射
(Brillouin reflection)ともい
う。一方、誘導ブリュアン散乱を支配する音響形振動の
立ち上がり時間は数ns程度なので、入射レーザパルス
の幅をこれより短くすると、誘導ラマン散乱のほうが優
勢になる。<誘導レイリー散乱(stimulated
Rayleihg scattering)>誘導レ
イリー散乱は、媒質中に局所的に生じているエントロピ
揺らぎに基づくレーザ光の散乱が誘導散乱になったもの
であり、光吸収効果に基づくものを誘導熱レイリー散乱
(STRS:stimulated thermal
Rayleigh scattering)という。本
明細書においては、レイリー散乱を誘起する媒質をレイ
リー活性媒質という。誘導ブリュアン散乱(SBS)と
誘導熱レイリー散乱(STRS)は競合関係にあり、同
時に発生し得るが、媒質の吸収係数κが、ある閾値κ
er以上である場合には誘導熱レイリー散乱(STR
S)が支配的であり、この閾値以下であると誘導ブリュ
アン散乱(SBS)が寄与することとなる。誘導熱レイ
リー散乱(STRS)は吸収係数に比例するので、媒質
の吸収係数をこれらの散乱の競合に関する閾値κer
りも十分に大くなるように媒質、入射光の周波数等を設
定することにより、誘導熱レイリー散乱による大きな利
得を得ることができる。誘導熱レイリー散乱(STR
S)においても、後方散乱光が本発明の加工に寄与し得
る。<色素の光放射>多原子分子特に共役π電子系を有
する有機分子等からなる色素分子は、光励起(ポンピン
グ)された後、光子を吸収して基底状態S→励起一重
項状態Sの遷移を生じるが、フランク−コンドンの原
理により、その後ごく短時間で、Sのうちの最低準位
まで振動緩和等による非放射遷移を生じる。最低励起一
重項状態の色素分子は、一部が蛍光の形で光子を放出し
て、基底状態Sに遷移し、Sに遷移した色素分子
は、短時間でSのうちの最低準位まで非放射遷移を生
じる。また、Sの色素分子は、更に光励起を受けてよ
りエネルギー準位が高いS(n>1)に遷移し、この
の色素分子も、光子の放出により、低い励起状態に
遷移する場合がある。上記の色素分子の蛍光は通常、ス
トークスシフトにより吸収光に対してピークが長波長側
にずれ、かつ周波数に関して反転したスペクトルを有す
る。結果として、蛍光は励起光を長波長側に変換した出
力となる。また、励起光がコヒーレント光である場合に
は、蛍光もまたコヒーレントになるため、色素分子の蛍
光波長が、励起光波長と一致する共鳴蛍光のときには、
色素分子の蛍光が近接する他の色素分子を励起する自己
吸収、自己励起が発生すると共に、透明材料の被加工部
における2光波の相互作用により、励起光のエネルギー
転換効率が上昇し、加工効率が向上する場合がある。色
素の蛍光放出は、蛍光散乱とも呼ばれ、散乱現象の一つ
に位置づけることができる現象である。更に、色素の多
光子吸収及び中間体吸収、並びにこれらに基づく発光
も、本発明の加工に寄与し得る。ここで、加工に至るま
での作用を、図面を参照して説明する。コヒーレント光
パルス列発生装置1から放出された入射光としてのコヒ
ーレント光パルス列(1,2,…,n,n+1…;nは
自然数)は、光学系7を介して非線形光学セル10に照
射されるが、このとき、入射光は焦点手段9により、被
加工物11の媒質側表面11b近傍に収束される。入射
光は、それ自体では透明材料を直接単独で加工する場合
に必要なエネルギーの閾値以下のエネルギーを有してい
るので、パルス列のうち最初のパルスを構成する光子の
大部分は被加工物11としての透明材料を透過する。収
束位置が適切であれば、媒質側表面11bに接している
加工媒質12による後方散乱光が発生する。本願発明に
おいては、加工媒質からの後方散乱光、特に後方誘導散
乱光が単独で、又は入射光と協働して透明材料に作用す
ることにより、透明材料の加工媒質側表面の加工(エッ
チング)が実現する。振動周波数、ピーク出力、パルス
幅等により規定される後方散乱光パルスのエネルギーと
被加工物のバンド構造等との相対的関係により、以下の
4通りの作用が考えられる。1)加工媒質からの後方散
乱光が、それ自体で透明材料をエッチングするに必要な
エネルギーを有している場合:コヒーレント光パルス列
のパルスを構成するレーザ光は透明材料を透過し、媒質
側表面の近傍に収束する。このとき、加工媒質において
誘導散乱が発生し、加工媒質に入射したレーザ光のエネ
ルギーが、後方誘導散乱光として入射方向とは逆向きに
放出される。結合エネルギーが小さい材料、例えば樹脂
材料等においては、入射パルスと比較して振動周波数及
び/又はピーク出力が変化した後方誘導散乱光の一光子
吸収又は多光子吸収により、透明材料のアブレーション
が発生し、エッチングされる。2)加工媒質からの後方
散乱光は、それ自体では透明材料をエッチングするに必
要なエネルギーを有していないが、入射光との協働相互
作用(例えば多光子吸収)により透明材料をエッチング
する場合:上記と同様に、コヒーレント光パルス列の第
n番目のパルスを構成するレーザ光のエネルギーが、後
方誘導散乱光として入射方向とは逆向きに放出される。
第n番目の入射パルスに基づく後方誘導散乱光と第n番
目の入射パルス自体との協働作用により、透明材料の多
光子吸収が生じ、アブレーションによりエッチングが生
じる。3)加工媒質からの後方散乱光が、それ自体で透
明材料を改質するに必要なエネルギーを有する場合:上
記と同様に、コヒーレント光パルス列の第n番目のパル
スを構成するレーザ光のエネルギーが、後方誘導散乱光
として入射方向とは逆向きに放出される。第n番目の入
射パルスに基づく後方誘導散乱光は、入射パルスと比較
して振動周波数及び/又はピーク出力が変化し、望まし
くは増大しており、予備照射として一光子吸収又は多光
子吸収により、透明材料を改質する。第n番目の入射パ
ルスに基づく後方誘導散乱光により改質が生じた場合に
は、第n+1番目以降の入射パルスによりエッチングが
生じる。第n+1番目以降の入射パルスを構成する光子
のうち、エッチングに寄与しなかったものは、第n番目
の場合と同様に透明材料を透過し、加工媒質において誘
導散乱を発生させる。4)加工媒質からの後方散乱光
が、それ自体では透明材料を改質するに必要なエネルギ
ーを有していないが、入射光との協働相互作用(例えば
多光子吸収)により透明材料を改質する場合:上記と同
様に、コヒーレント光パルス列の第n番目のパルスを構
成するレーザ光のエネルギーが、後方誘導散乱光として
入射方向とは逆向きに放出される。第n番目の入射パル
スに基づく後方誘導散乱光と第n番目の入射パルス自体
との協働作用により、予備照射光として多光子吸収によ
り透明材料を改質する。改質が生じた場合には、第n+
1番目以降の入射パルスによりエッチングが生じる。第
n+1番目以降の入射パルスを構成する光子のうち、エ
ッチングに寄与しなかったものは、第n番目の場合と同
様にガラス基板を透過し、加工媒質において誘導散乱を
発生させる。なお、後方散乱光は、誘導散乱光のみから
構成することが出来るが、更に蛍光やその他の発光を介
在させてもよい。<回帰光の利用>さて、非線形光学セ
ルとコヒーレント光パルス列発生装置との距離を十分小
さくすると、後方散乱光が回帰光としてコヒーレント光
パルス列発生装置に再入射する結果、加工効率が上昇す
る。すなわち、コヒーレント光パルス列発生装置1から
放出されたコヒーレント光パルス列は、光学系7を介し
て非線形光学セル10に収束されるが、このとき発生す
る後方散乱光の一部は、被加工物11の加工のために消
費され、残りの一部は、コヒーレント光パルス列発生装
置1と光学系7の共通の光軸に沿って、入射時とは逆向
きに進行し、回帰光としてコヒーレント光パルス列発生
装置1を構成する増幅光学媒体2内に再入射する。この
結果、後方散乱光が増幅光学媒体2を補足的に励起する
こととなり、コヒーレント光パルス列発生装置1からの
出力を増大させる効果を生じる。図2は、回帰光がある
場合とない場合のコヒーレント光パルス列発生装置1の
出力Iの応答を比較したものであり、コヒーレント光パ
ルス列発生装置1としてNd:YAGレーザ、回帰光と
して、加工媒質12としての加圧メタンが後方に放出す
る誘導ブリュアン散乱光を用いた場合を例示している。
コヒーレント光パルス列発生装置1は一般に、電力によ
り作動する装置であるから、回帰光による補助的励起
は、消費電力あたりの加工効率を増大させる。
【発明の実施の形態】図1は本願発明における透明材料
の加工装置を表している。この場合の加工とは、表面に
凹構造を形成し、又は凸構造を平坦化することを指し、
ここではこの様な加工を「エッチング」として説明す
る。1はコヒーレント光パルス列発生装置であり、第一
反射手段4と第二反射手段5との間に増幅光学媒体2が
配置されている。励起手段3は、増幅光学媒体2を励起
するため、増幅光学媒体2に応じて選択される。増幅光
学媒体2が例えば共振長の石英ガラスチューブに封入さ
れたネオンやアルゴン等のガスの場合、励起手段3とし
ては、放電電極を用いることができ、同様に希ガスとハ
ロゲンガスの混合物を励起してエキシマ(Excime
r)とするためには、励起手段3として放電電極の外に
電子ビーム発生源を用いて電子ビームによる励起を行う
ことができる。また、Nd:YAG又はNd:YLF結
晶ロッドに対しては、クセノンフラッシュランプ、水銀
灯、クリプトン連続ランプ又は半導体レーザを励起手段
3とすることができる。銅、金又はカドミウム等の金属
蒸気を増幅光学媒体2とした場合、電子ビームにより励
起することができる。アルコール等の溶媒に溶解させた
色素を励起させるためには、YAGレーザ、エキシマレ
ーザ、銅蒸気レーザを用いることができる。更に、半導
体を励起するためには、直流電源を用いることができ
る。第一反射手段4は、本願発明に関係する全ての光波
の波長閾において完全に光を反射することが望ましい。
一方、第二反射手段5は、光学増幅媒体2が放出する第
一の周波数の光に対して部分的に透明である。すなわ
ち、ある透過率を有する。更に第二反射手段5は、後述
の加工媒質12が放出する第二の周波数の光に対して完
全に、又は少なくとも部分的に透明であることが望まし
い。増幅光学媒体2、第一反射手段4及び第二反射手段
5は、共通の光学軸を有している。第一反射手段4と第
二反射手段5との間には、更に必要に応じてQスイッチ
手段6が配置されていてもよい。Qスイッチ手段6は、
増幅光学媒体2によるコヒーレント光パルスの生成の開
始を遅延させる機能を有している。すなわち、Qスイッ
チ手段6は、増幅光学媒体2が励起手段3から与えられ
たエネルギーを完全に吸収しないうちにコヒーレント光
パルスの放出を始めないように増幅光学媒体2内の光学
的励起を抑制する。コヒーレント光パルス列発生装置1
は、第一の周波数及び第一のピーク出力を有するコヒー
レント光パルス列から成る第一の光波を放出する。Qス
イッチ手段6としては一定の光学エネルギーを受けたと
きに透明となる過飽和吸収材、伝搬係数を電気的に制御
することができる光学素子又は音響光学素子(AOM=
AcousticOptical Modulato
r)を用いることができる。コヒーレント光は、コヒー
レント光パルス列発生装置1から放射された後、凹部と
なるエッチングの形状に対応するパターンを有するパタ
ーニング手段8と焦点手段9からなる光学系7を介し
て、非線形光学セル10に収束して照射される。媒質容
器14中には液体の加工媒質12が注入されている。加
工媒質は、例えば色素を含有する二硫化炭素、クマリン
を含有している四塩化炭素又はペリレンを含有している
アセトンとすることができる。加工媒質12は不図示の
ポンプ等の適宜手段により連続的に供給されて流動状態
となっている。液体加工媒質12は流動状態とせず入射
光の照射の前後に交換してもよい。また、密閉容器でな
く、大気圧に対して開放する部分を有していれば、加工
媒質12の急激な体積変化による透明材料や容器の損傷
を防ぐことができる。被加工物11としての透明材料が
不図示の固定手段により、密封手段13を介して媒質容
器14に固定され、非線形光学セル10を構成する。被
加工物11の媒質側表面11bのうち少なくともエッチ
ングを行う部分、則ちエッチングにより凹部が形成され
る部分が、エッチング工程にわたり液体加工媒質12に
触れ、又は浸漬されていれば、順次形成される被加工部
の凹部に液体加工媒質2が侵入してくる。被加工物11
に対し非線形セル10の外側から、則ち被加工物11の
媒質側表面11bとは逆側から、換言すれば液体加工媒
質12を供給側しない入射側表面11aからコヒーレン
ト光を照射することにより、加工媒質12が第二の周波
数及び第二のピーク出力を有する後方誘導散乱光からな
る第二の光波を放出し、媒質側表面11bが加工され
る。この結果、媒質側表面11bは被加工面となる。第
二の周波数は第一の周波数に対してストークスシフトし
ている場合があり、また高調波となっている場合もあ
る。一般にストークスシフトは、前述の通り、加工媒質
に固有のシフトが高周波長側と低周波側の両方に表れ
る。例えば、ラマンシフトがν=2921(c
−1)のアセトンにKrFエキシマレーザ(248n
m)を照射した場合、ラマンシフトにより、約231n
mのストークス線及び約267nmの反ストークス線と
して誘導ラマン散乱光が放出される。当然ながら、反ス
トークス側の第二の光波は、第一の光波に比して一光子
の有するエネルギーが大きくなる。また、高調波又は高
調波から更にストークスシフトしている場合にも、一光
子が有するエネルギーは大きくなる。各要素の配置の相
対関係は適宜設定することができる。例えば、被加工物
11の被加工面11bが自由液面の下方に位置し、か
つ、入射側表面11aが液面よりも上方に位置するよう
に水平に固定し、上方からコヒーレント光を照射するこ
とができる。また、液体加工媒質を上方から滴下供給し
下部又は側部からコヒーレント光照射を行うことも可能
である。例えば、ポリヌクレオチドプローブチップ(特
開2000−60554号公報)を作成する場合、ポリ
メタクリル酸メチルからなる透明基板の表面に、方形状
の複数の小孔がマトリクス状に配置開口する構成におい
て、ポリヌクレオチドプローブを保持しているゲルを小
孔内に保持するために各小孔の内面に分子レベルの凹凸
形状を設けるが、この様な場合には、小孔内に流動性の
特に液体の加工媒質を滴下した後に、透明基板の下方乃
至側方から、所望の凹凸パターンに対応したパターニン
グ手段8としての光学マスク及び/又は回折格子、焦点
手段9としての凸レンズ等を有する光学系7を介して、
コヒーレント光パルス列としてのレーザ光を入射するこ
とにより、ナノレベルの凹凸形状を形成することができ
る。また、透明材料自体を光導波路として透明材料の一
端から入射した光を他端から射出させ、加工媒質に照射
することができる。則ち、光ファイバのような長尺の透
明材料の切断面乃至長手方向端部に加工を施すことが可
能である。本発明の加工方法により光ファイバの端面に
エッチングを施す場合には、上記の透明部材又は不透明
部材をパターン形成するにあたり、能川真一郎らが提案
している、微粒子化したフォトレジスト材料を噴霧して
光ファイバ端面に均一な厚さの膜を形成する製膜技術
(電気学会物理センサ研究会資料、Vol.PS−9
9,No.1−16,p67−72,1999)を用い
ることができる。この場合、当該光ファイバ自体を光導
波路としてレーザ光を加工端面まで到達させることがで
きる。被加工面が平坦である必要はない。光ファイバ端
面へのエッチングは、光ファイバ端面への三次元加工を
可能とし、光コネクタの小型化、機能部品の直接形成が
可能になる。何れの方法で被加工部に加工媒質を供給す
るにせよ、入射光を被加工物の加工が不要な部分から透
明材料中に入射させ、被加工物を透過させた後に被加工
物の被加工部から射出させて、被加工物の被加工部に接
している、又は接することなくその近傍に配されている
加工媒質を照射することとなる。従って、透明材料のう
ち、加工媒質に接し、又は接することなく対向している
表面のみに加工を施すことができる。また、透明材料の
うち、加工が不要な部分からレーザ光を入射し、加工が
必要な部分から射出させることにより、少なくとも入射
光が射出しない部位においては加工を生じさせない。更
に、入射光が透明材料から射出する部位であっても、加
工媒質からの放射光、特に後方散乱光を浴びない部位で
は加工を生じさせない。パターニング手段8としてはフ
ォトマスク及び/又は回折格子を用いることができる
が、そのかわりに被加工物11としての透明基板の被加
工面11b又はこれとは逆側の入射側表面11aに、不
透明部材からなるフォトマスク層を公知の薄膜形成技術
によりパターン形成しておいてもよい。ただし透明基板
11上にフォトマスク層を形成する場合には、エッチン
グ工程と次の工程との間に当該フォトマスク層を除去す
る工程を設ける必要が生じる場合もある。不透明部材と
してポリシリコン層をパターン形成しておけば、SOG
構造における回路要素とすることもできる。透明基板1
1の被加工面11bのうちエッチングが不要な部分則ち
凹部となる部分以外の部分に透明部材からなるエッチン
グ犠牲層を、公知の薄膜形成技術によりパターン形成し
ておき、被加工面11bとは逆側の入射側表面11aか
ら、換言すれば加工が不要な部分からレーザ照射を行っ
てもよい。エッチング犠牲層を形成した部分においては
透明基板11の代わりにエッチング犠牲層がエッチング
され、エッチング犠牲層を形成していない部分では透明
基板11がエッチングされることとなる。透明なエッチ
ング犠牲層をガラス、樹脂等の絶縁体やITO等の透明
導電体によりパターン形成すると共に、必要に応じてレ
ーザ照射によるエッチングを行うことにより、COG構
造における容量、抵抗、導電路等の回路要素を形成する
ことも可能である。一方、エッチング犠牲層が次工程以
降で不要となる場合には透明基板11に対する凹部の形
成終了のときにエッチング犠牲層がすべてエッチングに
より除去されるようエッチング犠牲層の膜厚、レーザ照
射パターンを設定すればエッチング犠牲層の除去工程を
設ける必要がなく好適である。レーザビームが射出され
る透明材料の加工部のうちその表面に透明部材又は不透
明部材からなる層が形成されている部分では透明材料の
加工を生じさせないことになる。更に、エッチング犠牲
層を設けた部分のうち、レーザビームが射出される部位
のみでエッチング犠牲層のエッチングが生じることとな
る。必要に応じて以上のフォトマスクと透明又は不透明
のエッチング犠牲層の形成とを併用することによりエッ
チング深さにバリエーションを有する複雑なエッチング
パターンを形成することが可能となる。本願発明の方法
を用いて透明材料の切断やコンタクトホール等のための
貫通孔の形成も可能である。レーザ光入射方向を変化さ
せ、レーザ光が透明材料から射出する部位及び角度を順
次変化させることにより屈曲した貫通孔を形成すること
も可能である。フォトマスクを介さずレーザ光をガルバ
ノミラー、ポリゴンミラー等の掃引手段により掃引し又
は透明基板11を液体加工媒質に接触させたままX−Y
−Zテーブル等により移動させてもよい。パルス照射回
数を制御することにより所望の深さまで凹部を形成す
る。一パルス当たりのエッチング量は透明材料の素材に
もよるが、ガラスの場合、1−100nmである。レー
ザ光源、パルス幅、エネルギー密度又は周波数は選択さ
れた被加工物の吸収特性、エッチング特性や加工媒質の
誘導散乱等の光放射特性に応じて適宜選択することがで
きる。本発明のエッチング方法により線状パターンのエ
ッチングをする場合には液体加工媒質を流動させる方向
と当該線上パターンの長手方向とを平行乃至略平行に設
定するとエッチングによって形成される微細パターンの
細部まで均一に液体加工媒質が供給されるので好適であ
る。色素含有液体加工媒質を流動させレーザパルスの照
射を用いる場合には加工部に均一に一定濃度で色素が供
給されるに十分な時間的余裕を持って照射周期を設定す
ることが望ましい。色素含有液体加工媒質を流動させな
い場合であっても加工部における色素濃度がエッチング
全工程にわたり極端に変動せぬよう時間的余裕のある照
射周期が望ましい。レーザ照射強度、照射時間又は照射
周期等を変化させる光量調整手段により色素濃度の上昇
に応じて光量を減少させても良い。本願発明において液
体加工媒質を流動等させてレーザ照射をする場合には色
素が加工部に均一に一定密度で供給されエッチング反応
を安定して進行させることができ被加工部の不要な過熱
を防止し被加工部周辺に発生する色素分子断片又は透明
材料分子断片を除去し加工媒質の誘導散乱等の光放射特
性を保つことができる。可視光領域に強い吸収を有さな
い物質を加工媒質又はこれが含有する色素として選択す
れば、視覚的汚染がなく、揮発性液体加工媒質と共に蒸
発する色素を用いる場合には残留汚染がなく好適であ
る。<透明材料>本明細書において透明とは、入射光を
透過する性質を指し、特にレーザ光に代表されるコヒー
レント光を透過する光学的透明、則ち透光性を指す。本
発明において用いられる透明材料は、入射光を100%
透過する必要はないが選択された入射光の透過のみによ
っては破壊、融解、相転移等の変質をせず、当該入射光
を透過する前後において当該入射光を透過する性質を変
化させないことが望ましい。更に、加工媒質からの放射
光によって改質され又はエッチングされ、若しくは入射
光と加工媒質からの放射光との協働作用により改質され
又はエッチングされるものであることが望ましい。より
具体的には、「透明材料」とは、入射光特にレーザ光を
透過する性質を有するガラス、樹脂、セラミクス、金属
材料等を指す。ここでガラスとして用いられるものとし
ては、珪酸ガラス、ホウ酸ガラス、リン酸ガラス、ゲル
マン酸ガラス、亜テルル酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラ
ス、カルコゲン化物ガラス、フッ化物ガラス、酸窒化物
ガラス等から適宜選択して用いることができ、より具体
的には、α−石英(三方晶)、β−石英(六方晶)、溶
融シリカガラス、96%シリカガラス、ソーダ石灰ガラ
ス、鉛アルカリ珪酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラス、アル
ミノ珪酸ガラス、アルミノホウケイ酸塩ガラス、アルミ
ノシリケートガラス、ガラスセラミクス、アルミナセラ
ミクス、パイレクス、パイロセラム、コーニング774
0、コーニング0211、コーニング7059、フッ化
カルシウム等を挙げることができる。このうち石英ガラ
スは光学素子材料として好適であり、パイレクスはシリ
コンウエハと陽極接合ができるため有用である。また、
セラミクスとしては、透光性アルミナ(サファイヤ)を
はじめ、Y、MgO、ZrO、ThO、(P
b,La)(Zr,Ti)O(PLZT)等を用いる
ことができる。また、樹脂としては各種透明ポリマー、
具体的にはポリメチルメタクリレート、ポリカーボネー
ト、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、メ
チルメタクリレート・スチレン共重合体、アクリロニト
リル・スチレン共重合体、ポリ(4−メチルペンテン−
1)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピ
レン共重合体、ポリ(−2,2,2−トリフルオロイソ
プロピルメタクリレート)、ポリシクロヘキシルメチル
メタクリレート、ポリn−ブチルメタクリレート、ポリ
ビニルナフタレン、ポリα−ナフチルメタクリレート、
セルロースアセトブチレート、セルロースプロピオネー
ト、ポリビニルクロライド、スチレン・アクリロニトリ
ル共重合体、ポリスチレン、スチレン・無水マレイン酸
共重合体、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリメ
チルイソシアネート等を用いることができる。透明材料
自体が非線形媒質としての性質を有する場合には、透明
材料内における入射光及び/又は加工媒質からの放射光
の自己収束及び/又は自己束縛による高効率の加工が期
待できる。<加工媒質>本発明の加工媒質は、散乱活性
媒質から適宜選択して用いることができ、特に流動性の
媒質が好適である。自己収束、自己束縛を伴う非線形媒
質においては、高効率の加工が期待できる。更に光の吸
収性を有しているか色素を含有(溶解又は分散等)して
いる場合には一層好適である。本発明のラマン活性媒質
としては、気体、液体、ゾル・ゲル、固体の媒質を用い
ることができる。この場合、望ましくは誘導ラマン散乱
による増幅の利得係数が1.2(単位:10−5m/M
W。以下同じ。)以上、より望ましくは1.5以上、更
に望ましくは10以上、最適には20以上である媒質を
用いることができる。具体的には気体または液体の流体
媒質としては、汎用の溶媒としてアセトン(1.2:括
弧内は誘導ラマン散乱による増幅の利得係数。)、シク
ロヘキサン(1.2)、トルエン(1.2)の他、これ
らよりも利得係数が大きい媒質として、気体水素[10
0気圧](1.5)、ブロムベンゼン(1.5)、クロ
ルベンゼン(1.9)、ニトロベンゼン(2.1)、ベ
ンゼン(2.8)、液体酸素(14.5±4)、液体窒
素(17.5±5)、二硫化炭素(23.8)等があ
り、個体媒質では、ダイヤモンド(6.9)、方解石
(4.4)、BaNaNb15(6.7及び18.
9)、珪素(190)、LiTaO(4.4及び1
0)、LiTaO(4.3及び7.9))、Li
NbO(8.9、28.7,9.4及び12.6)、
LiNbO(17.8、35.6,9.4及び1
2.6)、InSb(16.7)等がある。本発明のブ
リュアン活性媒質としては、気体、液体、ゾル・ゲル、
固体の媒質を用いることができる。望ましくは誘導ブリ
ュアン散乱による増幅の利得係数が19(単位:10
−5m/MW。以下同じ。)以上、より望ましくは23
以上、最適には100以上の媒質を用いることができ
る。具体的媒質としては、汎用の溶媒としてアセトン
(19:括弧内は誘導ブリュアン散乱による増幅の利得
係数。)の他、これよりも利得係数が大きい媒質とし
て、気体窒素[120気圧](23)、エチルエーテル
(24)、n−ヘキサン(26)、二硫化炭素(12
8)等があり、固体媒質ではルーサイト(20)等があ
る。その他、SBS媒質としては、気体ではSF、X
e、CH、液体ではCCl、PCl、SnC
、GeCl、TiCl、Freon113,F
C−72,FC−75、固定では有機Lアルギニンリン
酸(LAP)が知られている。本発明のレイリー活性媒
質(単体)としては、望ましくは吸収係数κあたりの誘
導熱レイリー散乱による増幅の利得係数が0.47(単
位:10−4/MW。以下同じ。)以上、より望ま
しくは0.57以上、更に望ましくは0.62以上、最
適には0.82以上の媒質を用いることができる。具体
的には汎用の溶媒としてアセトン(0.47:括弧内は
吸収係数κあたりの誘導熱レイリー散乱による増幅の利
得係数。)の他、これよりも利得係数が大きい媒質とし
てベンゼン(0.57)、四塩化炭素(0.82)、二
硫化炭素(0.62)等がある。その他、エチルエーテ
ル、クロロホルム、トルエン、テトラヒドロフランを好
適に用いることができる。本発明の加工にあたっては、
加工媒質の各散乱における増幅の利得係数又はピーク出
力が大きいほど加工量が大きい傾向にあるため、選択さ
れた被加工対象としての透明材料の材質により、適宜加
工媒質を選択することにより、一パルスあたりの加工量
を調節することができる。利得係数が小さすぎると所望
の加工が行えない場合がある。また、レーザパルスのパ
ルス幅を選択することにより、支配的に発生する誘導散
乱の種類を選択することもできる。例えば加工媒質とし
て二硫化炭素を用いる場合、誘導ブリュアン散乱を支配
する音響形振動の立ち上がり時間が2.2nsであるの
で、入射レーザ光のパルス幅がこの程度以下になると、
誘導ラマン散乱が優勢となり、誘導ブリュアン散乱は抑
制される。従って、この場合にはレーザ光のパルス幅を
3ns以上に設定することにより、誘導ブリュアン散乱
の利得を利用することができる。逆に、パルス幅を2n
s以下乃至ピコ秒レベルとすることにより誘導ラマン散
乱を利用すれば、ピーク出力の大きな後方誘導散乱光を
利用することができる。一方、吸収係数が大きい活性媒
質を用いれば、誘導熱レイリー散乱により、吸収係数に
比例した大きな利得を得ることが可能である。例えば、
ヨウ素を含有する四塩化炭素にパルス幅10nsのレー
ザ光を照射した場合、前述の誘導ブリュアン散乱と誘導
熱レイリー散乱との競合の閾値κerは約0.04(c
−1)であるから、これより吸収係数を大きくするこ
とにより、誘導熱レイリー散乱の利得を利用することが
できる。<色素>本発明の色素は、可視光領域に吸収を
有するもののみならず、可視光領域外に吸収を有するも
のをも含む概念であり、蛍光を発するものを含む。工業
的には現在実用化されているレーザ光源の波長域のうち
可視光領域外特に紫外線波長領域に基底状態の吸収領域
又は中間体吸収領域を有する物質が好適であり使用する
レーザ光の波長付近に吸収ピークを有するものがより好
適である。更にこの中間体吸収に対応する吸収スペクト
ルの強い吸収領域が、基底状態にある場合の吸収領域に
あれば、則ち基底状態にある場合の吸収領域と中間体吸
収に対応する波長領域とが重なっていれば、その共通す
る波長のレーザ光のエネルギーは、基底状態から各励起
状態への遷移エネルギーの供給と中間体吸収に対応する
エネルギーの供給とを担うこととなり、吸収が更に大き
くなる。本発明の色素としては、発蛍光性の有機化合物
特に多環芳香族炭化水素、5員環又は6員環のヘテロ環
化合物、カルボニル基を有する化合物を最適に用いるこ
とができ、有機分子の配位基を有する金属錯体を用いる
こともできる。より具体的には、多環芳香族炭化水素と
してはアントラセン、ペリレン、フェナントレン等の縮
合多環芳香族やターフェニル、t−スチルベン等のよう
にフェニル基が直接あるいは多重結合を介して連結した
多環芳香族を用いることができ、5員環のヘテロ環化合
物としてはピロール、オキサゾール、チアゾール、ピラ
リゾン、オキサジアゾール、フルオレッセイン等が、6
員環のヘテロ環化合物としてはピリジン、キノリン、ピ
ラジン、キノキザリン等を有する化合物を用いることが
できる。カルボニル基を有する化合物としては7−ヒド
ロキシクマリン等のクマリン誘導体、4′−メトキシナ
フトリレンベンツイミダゾールに代表されるナフタルイ
ミド類やナフタレン酸無水物等のナフタレン酸誘導体、
有機分子の配位基を有する金属錯体としてはポルフィリ
ンの金属錯体やキノリノール類の金属錯体を挙げること
ができる。この他、発蛍光性の置換基を有する物質を用
いることができ、発蛍光性の置換基としてはピレニル
(ピレニル基を意味する。以下の列挙において同
じ。)、フェニル、トリフェニルメチル、ビフェニル、
ターフェニル、アンスリル、フェナンスリル、カルバゾ
リル、ナフチル、ペンタレニル、インデニル、アズレニ
ル、ヘプタレニル、ビフェニレリル、as−インダセニ
ル、フクオレニル、s−インダセニル、アセナフチレニ
ル、プレイアデニル、アセナフテニル、フェナレル、フ
ェナレル、フェナントリル、アルキルアミノフェニル、
ジアリールアミノフェニル、アルコキシフェニル、メト
キシフェニル、メチルフェニル、クロロフェニル、アン
トリル、フルオランテニル、トリフェニレニル、クリセ
ニル、ピリジル、フリル、チエニル、チノリニル、ベン
ズピラニル、アクリジニル、チアソリル、ベンゾチアゾ
リル、エチルカルバゾリル、フェニルカルバゾリル、ト
リルカルバゾリル等の各有機置換基を挙げることができ
る。ここでピレニル基を有する物質とは1−ビニルピレ
ン等の他にピレン自身を含み、他の置換基においても同
様である。その他、縮合多環芳香族化合物又はヘテロ環
を有する物質を好適に用いることができ、複数の環構造
を有する物質分子、特に複数の芳香環を有する芳香族等
物質分子等分子内に多重結合乃至環構造を有する物質分
子を用いることもでき、不飽和脂肪族炭化水素、芳香族
炭化水素、芳香族ハロゲン化合物、芳香族ニトロ化合
物、芳香族ニトロソ化合物、芳香族アミン、芳香族ニト
リル、フェノール、フェノールエーテル、芳香族カルボ
ニル化合物、芳香族カルボン酸及びこれらの誘導体、ア
ゾ化合物及び誘導体、スルホン酸誘導体、フラン族化合
物、チオフェン族化合物、ピロール化合物、ピラン化合
物、ピリジン族化合物、ジアジン族化合物その他の有機
化合物等から適宜選択して用いることができる。以下他
との重複もあるが、縮合多環芳香族化合物としてはナフ
タレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、
ナフタセン、ペンタセン、フリセン、ピレン、ペリレ
ン、フルオレン、アセナフテン、フルオランテン、アミ
ノピレン、1,2,3,4,−テトラメチルナフタレ
ン、1−(ジメチルアミノ)−ピレン、1−ピレン酪
酸、ブチルピレン、4−メチル−2H−1−ベンゾピレ
ン−2−オン等を挙げることができ、ヘテロ環を有する
物質としてはベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキ
ノン、ピロール、2−フェニルピロール、インドール、
ピリジン、フルオルピリジン、2−エトキシピリジン、
アミノピリジン、ピリドン、ピリジン−N−オキシド、
4−ニトロピリジン−N−pキシド、4−アミノピリジ
ン−N−オキシド、キノリン、イソキノリン、カルバゾ
ール、フマリン、2,6−ジメチル−4−ピロン等を挙
げることができ、複数の芳香環を有する物質としてはビ
フェニル、ジメチルビフェニル、テトラメチルビフェニ
ル、ヘキサメチルビフェニル、トリフェニル、プロフラ
ビン、1,2−ベンゾアズレン、トリフェニルメチル陽
イオン、トリフェニルメチル陰イオン、スチルベン、
5,5′ジメチルビフェニル、6,6′−ジニトロビフ
ェニル、p−ニトロ−スチルベン、p−メトキシ−p−
ニトロ−スチルベン、フェニルエーテル、ナフトール、
ベンゾフェノン、7−(ジメチルアミノ)−4−メチル
クマリン、ニトロフェニルアゾベンゼン、トリフルオロ
メチルスルフォニルトラン等を挙げることができ、その
他の化合物としてベンゼン、アズレン、ベンゾイン、ベ
ンゾトリアゾール及びこれらの誘導体等を挙げることが
できる。また、本発明の色素としては各種ポリメチン系
色素、キサンテン系色素、クマリン系色素、シンチレー
タ色素、オキサジアゾール誘導体、ローダミン系色素等
のレーザ用色素を好適に用いることができ、具体的には
2,5−ジフェニルオキザゾール(PPO)、α−ナフ
チルフェニルオキサゾール(α−NPO)、POPO
P、4−メチルアンベリフェロン、4−メチルクマリ
ン、フルオレイセイン、ローダミン6G、アクリジンレ
ッド、ローダミンB、3,3′−ジメチル−2,2′オ
キサトリカルボシアニンアイオダイド、1,1′−ジエ
チル4,4′−キノトリカルボシアニンアイオダイド等
を挙げることができる。何れの物質を用いる場合にも紫
外線領域に強い吸収を有すると共に可視光領域には強い
吸収を有していないことが望ましい。可視光領域に吸収
を有する物質は透明材料特にポリマー材料の視覚的汚染
の原因となり得るからである。本発明の実施にあたって
は色素の吸収スペクトルが加工媒質の種類、性状等によ
って変化する場合があることに留意する必要がある。本
願発明における加工媒質として用いる散乱活性媒質は、
後方誘導散乱光のコヒーレンシー及び強度が加工に十分
な程度に得られる限りにおいて、固体、液体、気体、ゾ
ル、ゲル等の何れでもよく、加工媒質を透明材料に接触
させ、又は接触させずにその近傍に配置することができ
る。透明材料との密着性や流動性の観点から、流体特に
液体の媒質を被加工部表面に接触させて配置することが
望ましく、更に、選択された色素を溶解する溶媒として
の機能を有する媒質を用いることが望ましい。複数の物
質により媒質を構成してもよい。更に揮発性溶媒を用い
れば加工後の乾燥工程が不要となる。更に揮発性溶媒が
溶質である色素と共に蒸発する場合には透明材料表面に
これらが残留しないため一層好ましい。なお、透明材料
中における、入射光の光路と、加工媒質からの放射光の
光路は、逆向きで同一であることが望ましい。入射光の
光路を放射光が逆向きに進行することにより、各光波と
透明材料との有効な相互作用が生じる位置及び範囲を被
加工面において一致させることができるからである。加
工媒質の大きさ、特に透明材料から射出されたレーザ光
が進行する方向の厚みは、誘導散乱に関し、光波と加工
媒質との有効な相互作用長が十分に取れるような大きさ
であることが望ましい。本願発明において色素を含有し
ている液体加工媒質を用いる場合、色素が光子の吸収と
放出により、基底状態と複数の励起状態との間の遷移を
繰り返し、エネルギーの吸収、放出を行うのみで色素自
体は殆ど消費されないのに対し被加工部近傍の液体分子
は激しい蒸発等により次々に消費される場合があるた
め、加工の進展につれて液体加工媒質中の色素の濃度が
被加工部表面近傍において局所的に高くなる場合があ
る。これにより同一光量のレーザビーム照射を行っても
加工の進展につれて照射エネルギーあたりのエッチング
量が増加するという問題が生じる場合がある。これは従
来の液相におけるエッチングにおいてエッチャント濃度
が加工の進展に従って次第に低下することとは原理的に
全く異なる本願発明の構成に固有の問題点である。逆
に、強いレーザ光を断続的に長時間照射することによ
り、色素の破壊・損耗が生じる場合がある。この場合に
は、同一光量の入射光照射を行っても加工の進展につれ
て照射エネルギーあたりの加工量が減少するという効果
を生じる。このため加工精度を一定に保つためには、ポ
ンプ等の手段により一定濃度の色素含有液体加工媒質を
連続的に被加工部に供給するか若しくは流動させ又はレ
ーザビームの照射の前後において液体加工媒質を交換す
ることが望ましい。液体加工媒質を流動させ層流を形成
する場合には、被加工物表面に直接液体加工媒質が供給
されることとなり好ましい。乱流を形成する場合には、
被加工物表面近傍に形成される粘性層と乱流境界層との
境界面が流体の激しい蒸発等により乱され物質交換が生
じるため、液体加工媒質の濃度上昇を緩和乃至防止する
ことができる。又、被加工物である透明材料の下部に液
体加工媒質の上昇流をノズル等の噴射手段により形成し
てもよい。本願発明の液体加工媒質としては粘性及び圧
縮性を無視し得る液体のみならず粘性流体、圧縮性流体
を用いることもでき、ゾル、チクソトロピー性物質を用
いることもできる。ゾルを用いる場合には上記溶媒にシ
リカ、アルミナ等の粘着剤を添加して用いてもよい。こ
の場合には被加工物の被加工部を液体加工媒質に接触乃
至浸漬するかわりに印刷等の塗布手段により液体加工媒
質を被加工面一面に又はパターン状に塗布して用いるこ
とができる。さらに選択した液体加工媒質と被加工物で
ある透明物質との親和性が低い場合には「ぬれ」の状態
が不十分で被加工面の一部しか液体加工媒質に接触しな
い等の問題が発生する場合があるので選択された液体加
工媒質の透明材料に対する「ぬれ」の角度、すなわち接
触角をより小さく望ましくは鋭角にするための物質、例
えば界面活性剤等を液体加工媒質中に添加することもで
きる。<入射光/レーザ装置>本願発明における入射光
は、コヒーレント光パルス列発生装置が放射する電波、
マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線等
のコヒーレントな電磁波を指し、中でも紫外線波長領域
のレーザ光を指す。本発明の入射光は被加工物である透
明材料には吸収されにくい性質を有することが望まし
い。散乱現象はパルス幅依存性が大きく波長依存性は小
さいので、本発明のコヒーレント光パルス列発生装置と
しては、パルス発振タイプの各種レーザ装置を好適に用
いることができる。選択された加工媒質又はこれが含有
している色素の吸収領域に対応する波長の電磁波を放出
するものであることが望ましい。レーザ装置としては各
種ガスレーザ、個体レーザ、金属レーザを用いることが
でき、より具体的には、ガスレーザとしてヘリウムネオ
ンレーザ、アルゴンイオンレーザ、COレーザ、CO
レーザ、窒素レーザ、F(157nm、7.9e
V)、ArF(193nm、6.4eV)、KrF(2
48nm、5.0eV)、XeCl(308nm、4.
0eV)、XeF(350nm、3.5eV)各エキシ
マレーザを、個体レーザとしてルビーレーザ、ガラスレ
ーザ、Nd:YAGレーザ、Nd:YLFレーザを、金
属レーザとしてはヘリウムカドミウムレーザ、銅蒸気レ
ーザ、金蒸気レーザを用いることができる。その他、半
導体レーザ、チューナブルダイオードレーザ等の各種レ
ーザ装置から選択して用いることができる。これらのレ
ーザ装置からの放出光をアップコンバージョンすること
により二倍波、四倍波等の高調波を用いることもでき
る。本願発明におけるレーザ照射の条件は、選択された
加工媒質が誘導散乱等の光放射を起こすに足るエネルギ
ーを供給し、かつその放射光が単独で又は入射光との協
働作用により透明材料の改質及び/又は加工が生じるよ
うに設定されている。則ちレーザ照射の強度、パルス
幅、周波数等によって決定される単位時間に単位面積を
通過する光量が加工媒質が誘導散乱等の光放出を起こす
閾値以上に設定されると共に選択された透明材料に直接
レーザ照射を行いエッチング、溶融、穿孔等の加工を発
生させる場合の閾値より小さく設定する手段を有する。
これは、入射光の光子エネルギーが、透明材料、特にガ
ラスのバンドギャップよりも小さいながら、加工媒質に
おいて誘導散乱を発生するに足るエネルギーを有し、て
いることを意味する。更に、誘導散乱光はバンドギャッ
プよりも大きい光子エネルギーを有しているか、若しく
はハンドギャップよりも小さい場合には、誘導散乱光単
独で又は誘導散乱光と入射光との協働作用により、多光
子吸収過程を経てバンド間遷移が起こりうるエネルギー
密度を有していることを意味している。これにより加工
する透明材料の表面のうち、液体加工媒質に対向し又は
接触している表面のみに加工を施すことができる。上記
閾値より大なる光量のレーザ照射をした場合には透明材
料のレーザ光入射側端面や透明材料内部等においてエッ
チング、溶融等が発生するため所望の加工を行うことが
できない。例えば、KrFエキシマレーザ(248n
m)、10J/cmにより照射を行うと、石英ガラス
の入射側表面に損傷を生じる。具体的には、透明材料と
して石英ガラスを選択し、加工媒質として例えば二硫化
炭素、アセトン又は四塩化炭素を選択して色素を含有さ
せ、後方誘導散乱光の発生を利用して加工を行う場合に
は、FWHM=1ps−100ns、エネルギー密度1
−10,000mJ/cm、1−100Hzに設定す
ることができ、例えば、KrFエキシマレーザ(248
nm)のパルス波、FWHM=10−30ns、エネル
ギー密度200−1500mJ/cm、1−10Hz
を用いることができる。KrFエキシマレーザ(248
nm)は、その波長が、石英ガラスに生成する酸素欠乏
欠陥に起因する吸収帯(248nm)と一致し、E′セ
ンターに起因する吸収帯(215nm)に波長が近いの
で、特に好ましい。同様に、ArFエキシマレーザ(1
93nm)は、一光子のエネルギーが大きく、E′セン
ターに起因する吸収帯(215nm)に波長が近いので
好ましい。[実施態様例1]図1は本願発明におけるガ
ラス基板の加工装置を表している。媒質容器14中には
0.1−0.5mol/dmローダミンBを含有する
二硫化炭素が注入されて液体の加工媒質12を形成して
いる。加工媒質12はポンプにより連続的に供給されて
流動状態となっている。加工媒質12に被加工物である
透明基板11の被加工面11bが接するように、密封手
段13としてのO−リングを介し、不図示の固定手段に
より、ガラス基板11が媒質容器14に固定されて、非
線形光学セル10を構成している。ガラス基板11の被
加工面11bのうち少なくともエッチングにより凹部が
形成される部分がエッチング工程にわたり液体加工媒質
2に触れることとなる。ガラス基板11に対し入射側表
面11a側から、エッチングパターンに対応してパター
ニングされたフォトマスク8を介し、更に集光レンズ9
を介して、コヒーレント光パルス列発生装置としてのレ
ーザ装置1から放射されたレーザ光を照射する。レーザ
光としてKrFエキシマレーザ(248nm)のパルス
波例えばFWHM=30ns、エネルギー密度500m
J/cm、2Hzを用いる。コヒーレント光パルス列
の第n番目のパルスを構成するレーザ光はガラス基板1
1を透過し、媒質側表面11bの近傍に収束する。この
とき、加工媒質12において誘導散乱が発生し、加工媒
質12に入射したレーザ光の大部分が、後方誘導散乱光
として入射方向とは逆向きに放出される。第n番目の入
射パルスに基づく後方誘導散乱光は単独で、又は第n番
目の入射パルス自体と協働で、一光子吸収又は多光子吸
収により、ガラス基板にエッチング又は改質を生じさせ
る。改質が生じた場合には、第n+1番目以降の入射パ
ルスによりエッチングが生じる。第n+1番目以降の入
射パルスを構成する光子のうち、エッチングに寄与しな
かったものは、第n番目の場合と同様にガラス基板を透
過し、加工媒質において誘導散乱を発生させる。パルス
照射回数を制御することにより所望の深さまで凹部を形
成する。一パルス当たりのエッチング量は20−30n
mである。[実施態様例2]加工媒質12として、クマ
リンを含有している四塩化炭素、ペリレン又はピレンを
含有しているアセトン、ピレンを含有しているテトラヒ
ドロフラン若しくはローダミン6Gを含有するエタノー
ルから選択すると共に、コヒーレント光パルス列発生装
置1として、XeClエキシマレーザ又はNd:YAG
レーザ(二倍波、四倍波)から選択する以外は、実施態
様例1と同様の操作を行うことにより、透明材料の媒質
側表面に凹部を形成することができる。
【効果】本発明の加工法によれば、透明材料をレーザ光
照射により直接加工する従来法と比較して、レーザ出力
が数桁小さいものでよく、加工領域の周辺に損傷がなく
加工の深さをレーザパルス数等の制御により数nm−数
百nmレベルで制御できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の透明材料の加工装置を示す図。
【図2】回帰光の有無とコヒーレント光パルス列発生装
置の出力の関係を示す図。
【符号の説明】
1:コヒーレント光パルス列発生装置、7:光学系、1
0:非線形光学セル、11:被加工物、12:加工媒質
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成13年4月13日(2001.4.1
3)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 後方誘導散乱光を用いた透明材料のナ
ノオーダ微細加工方法及び加工装置
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は後方散乱を利用して
行う透明材料の加工装置及び加工方法に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】石英ガラスは、純度が
高いものでバンドギャップが8−10eVであり、通常
150−170nm程度の高エネルギー帯に吸収端を有
しているため、単純にレーザ光等を照射することにより
アブレーションを発生させてドライエッチングを行うに
は、高エネルギー波又は極短パルス波の照射が必要とさ
れている。
【0003】これに対し、吸収帯の生成を加工に利用
し、より低エネルギーのレーザ光を利用できるよう、エ
ッチングのためのレーザ照射(以下、本照射という。)
を行う前に、予備照射を行い、多段階レーザ照射による
多光子吸収に基づくレーザエッチングが提案されている
(特開平7−256473号公報)。
【0004】すなわち、石英ガラスの吸収端よりも短波
長側のレーザ光による予備照射により、吸収端よりも長
波長側に新たな吸収帯を生成させ、この吸収帯に近い波
長のレーザ光により本照射することによりエッチングを
実現するものである。
【0005】しかしながら、この方法には、2種類の波
長に対応する複数のレーザ光源を必要とし、2段階工程
になると共に、位置合わせの必要があること、エッチン
グパターンが予備照射の範囲と本照射の範囲との共通部
分となるため、レーザ出力のうち、加工に寄与しない無
駄な部分が生じることなどの問題を有している。
【0006】また、レーザの吸収率が高い液を透明材料
の表面に接触させ、レーザ光を照射して加工する技術が
公知であり、この液としてNiSO水溶液若しくは金
属粒子、酸化金属又は炭素粒子の分散液の例があるが、
これらは何れも液の発熱を透明材料に遷移することを加
工原理とするものであって、加工精度が100μm程度
であり、金属又は炭素粒子は透明基板表面に残留すると
半導体層、電極層等を形成する場合の不純物となるこ
と、可視光領域に強い吸収を有するため透明材料が着色
汚染されること等の問題があるため、数nm−数百nm
オーダの加工精度が必要とされる、ポリシリコン半導体
集積回路、液晶素子等のSOG構造、COG構造、光デ
ィスク、光カード、近接場光ディスク等の記録媒体、D
NAチップ(例えば特開2000−60554号公
報)、各種バイオセンサ、近接場光素子、フォトニック
結晶、シリカ光学回路素子(例えばUSP5,892,
863)等に用いる透明材料のナノオーダ微細加工には
精度が不十分である。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決し、低エ
ネルギーにより、実質的に一段階工程で、無駄なレーザ
出力を低減し、高精度の加工を実現するため、 1 透明材料の第一の表面に加工媒質を接触させ又は対
向して配置し、第一の光波を当該透明材料の第二の表面
から当該透明材料中に入射し、当該透明材料の当該第一
の表面から射出させて当該加工媒質を照射し、第二の光
波を当該加工媒質から放出させ、当該透明材料の当該第
一の表面から当該透明材料中に入射させて当該第一の光
波と同一経路を逆行させることにより、当該第一の表面
をエッチングする透明材料の加工方法、 2 透明材料の加工が不要な部分から当該透明材料中に
コヒーレント光を入射する工程の前に、以下のa)乃至
c)のうち少なくとも一の加工部分を特定するための工
程を有する透明材料の加工方法、 a)当該透明材料の被加工面とは逆側の面に不透明部材
からなる層をパターン形成する工程、 b)当該透明材料の被加工面に透明部材からなる層をパ
ターン形成する工程、 c)当該透明材料の被加工面に、不透明部材からなる層
をパターン形成する工程 3 加工媒質とレーザ光照射手段とを有し、当該加工媒
質に接して配置されている透明材料を介してレーザ光を
当該加工媒質に照射し、当該加工媒質から放出される後
方散乱光を利用して、当該透明材料の表面を加工する透
明材料の加工装置、 4 以下のA)乃至C)の構成要素を有すると共に、
a)乃至i)のうち、少なくとも何れか一の構成要素を
更に有する透明材料の加工装置、 A)コヒーレント光パルス列発生装置、 B)光学系、 C)非線形光学媒質が注入されている媒質容器、 a)当該透明材料の当該被加工面とは逆側の面に、不透
明部材からなる層をパターン形成する手段、 b)当該透明材料の被加工面に、透明部材又は不透明部
材からなる層をパターン形成する手段、 c)当該液相物質を流動させ、層流又は乱流若しくは上
昇流を形成する手段、 d)当該加工媒質を交換する手段、 e)当該加工媒質が含有している色素を一定濃度で当該
透明材料の被加工部に供給する手段、 f)当該透明材料の非加工部周辺を一定温度に保つ手
段、 g)エッチングによって生成される副生成物を加工部分
から除去する手段、 h)当該透明材料の被加工部が当該加工媒質に接し又は
浸漬されるように、当該透明材料を固定する手段、 i)当該コヒーレント光を掃引する手段 を採用する。
【0008】
【作用】本発明においては、以下の吸収帯の生成及び/
又は散乱光放射現象のうち、それぞれ一乃至複数が作用
し、以下に述べるように加工媒質の種類、レーザ光のパ
ルス幅等により支配的に加工に寄与する吸収帯の生成現
象及び/又は光放射現象が異なるものと考えられる。
【0009】<吸収帯の生成及び改質>一般にガラス材
料においては、エキシマレーザやX線の照射により、通
常の吸収域以外の波長に吸収帯が生じる。ガラス中には
種々の非平衡部分構造が残存し、微量不純物が溶解され
ているため、これらが放射線による着色中心の前駆体と
なるからである。
【0010】例えば石英ガラスの場合、酸素過剰構造P
O(Si−O−O−Si)や酸素欠乏構造(Si−S
i)等の欠陥前駆体、又は骨格となる基本構造(Si−
O−Si)自体が光子を吸収することにより、E’セン
ター(≡Si・)やNBOHC:Non−Bridgi
ng Oxygen Hole Center(≡Si
−O・)が生成し、それぞれ約215nm及び約260
nmの吸収帯を生じる。また、水素過剰下で生じるSi
−H構造は、光子吸収によりE’センターを生成する。
これらの吸収帯の他に、水素原子を伴うE’センター、
酸素欠乏欠陥がそれぞれ約230nm及び約248nm
の吸収帯の原因となる。
【0011】石英ガラスのバンド構造は、原子価帯が酸
素上の孤立電子対から、また伝導帯が反結合性σ軌道
から構成される。ドーパントや不純物を含む場合、例え
ば修飾イオンMX+は、非架橋酸素NBO(Si−
)を作るが、NBOの孤立電子対は架橋酸素BOの
場合よりも高エネルギーであるため、正孔がトラップさ
れやすく、吸収帯が生成しやすい。
【0012】また、微量のB,Alは、H+又はR+(ア
ルカリ)に正電荷を補償された場合、放射線により正孔
をトラップする。電荷補償陽イオンが含まれないと、A
l,Bは平面三角配位となり、放射線によりE’センタ
ーが生じる。更に、Geを導入すると、Ge−Oの結合
強度がSi−Oよりもかなり弱いので、構造欠陥が生じ
やすく、E’センターの密度が増加する。
【0013】更にまた、P,Asを含む場合も、NBO
の孤立電子対より高いエネルギーの孤立電子対が生じ、
放射線によりE’センターが生じる。
【0014】その他、Ag,Au,Cd,Ga
2+、Ti2+、Ge3+、(Sn 、(Sn
4+、Pb3+、Sb4+等のp−block元素
の酸化還元反応によるnsセンターの発生、T
3+、Zr3+、Nd4+、Mo5+、W5+等の遷
移金属イオンの酸化還元反応によるndセンターの発
生、その他の希土類、遷移金属イオンの酸化還元反応
(Ce3+⇔Ce2+、Mn2+⇔Mn3+、Fe2+
⇔Fe3+、Cu⇔Cu2++e)が放射線により
誘起され、還元種が正孔捕獲中心、酸化種が電子捕獲中
心となり、吸収帯が生成する。
【0015】このように、放射線の照射により吸収帯が
生成し、石英ガラスが改質される(生成した吸収帯に対
応する波長のレーザ光の吸収特性が高まる、又は吸収帯
が生成した結果、吸収端が長波長側にシフトする)の
で、吸収帯を生成する予備照射を行うことにより、直接
レーザ照射で加工する場合と比較して長波長の、すなわ
ち低エネルギーのレーザ光による本照射により、加工が
可能となる。
【0016】本発明においては、以上説明してきた吸収
帯を生成するための予備照射を、本照射と同一のレーザ
照射手段により、実質的に一工程で行うことができる。
特に、以下で説明する、非線形媒質による後方誘導散乱
光を利用することにより、レーザ光源からの入射光を本
照射光として利用すると共に、入射光に対して波長及び
/又はピーク出力が変換された後方誘導散乱光を生成
し、予備照射光として利用することができる。
【0017】<誘導散乱(stimulated sc
attering)>一般に媒質に光波を照射すると、
光子と媒質との相互作用により、入射光周波数ωの他
に媒質の固有振動の周波数ωだけずれた、ω±ω
の光が散乱される。本明細書では、この様な媒質を散乱
活性媒質と呼ぶ。入射光強度が弱いときには、入射光強
度に比例する自然散乱(spontaneous sc
attering)が発生するが、誘導散乱による散乱
光は、ポンピング光と散乱光強度の両方に比例するの
で、ポンピング光がコヒーレントであれば、ある閾値を
越えると特定の散乱光のみが強く散乱され、指向性が鋭
い、ポンピング光と同程度のコヒーレンスを有する放射
光となる。このコヒーレントな誘導散乱光の照射が本発
明の加工に寄与する。
【0018】誘導散乱には、以下の誘導ラマン散乱、誘
導ブリユアン散乱、誘導レイリー散乱等があるが、本発
明においてはこれらの散乱における後方散乱、すなわち
後方誘導散乱光が加工に寄与する。
【0019】非線形媒質へのレーザ光照射が自己収束
(self−focusing)や自己束縛(self
−trapping)を伴う場合、例えばそのような性
質を有する光カー液体を用いる場合には、極めて強度の
大きなコヒーレント光を得ることができる。
【0020】誘導散乱により後方に位相共役波が放出さ
れる場合には、入射光との協働により、集光部近傍で強
め合う合成波が得られるので、本発明の加工に寄与す
る。
【0021】また、非線形媒質の後方誘導散乱光が、入
射光に対する高調波又は高調波から更にストークスシフ
ト(特にラマンシフト)によりずれた波長となる場合が
あり、加工に寄与する。
【0022】<誘導ラマン散乱(stimulated
Raman scattering)>ラマン活性媒
質に強度が高いコヒーレント光を入射すると、分子の振
動や回転、固体中の光学活性の格子振動により、媒質の
分極率が変調を受けることによりラマン散乱が発生する
が、更に放射照度が一定の閾値を越えると、特定の方向
にきわめて強いコヒーレント光が放出される。これを誘
導ラマン散乱(SRS)という。
【0023】媒質が非線形屈折率を有する場合には、レ
ーザ光が自己収束する場合があるが、この場合にはビー
ムが最も収束した位置付近において誘導ラマン散乱が発
生する。
【0024】後方誘導ラマン散乱はきわめて強度が大き
く短いパルス(例えばメタンの場合、入射したエキシマ
レーザと比較し、パルス幅が1/10、ピーク出力が5
倍、エネルギー変換効率50%)として発生する。ま
た、後方誘導ラマン散乱では、パルスの立ち上がりで小
信号利得が得られる場合があり、入射レーザパルスのピ
ーク強度を大きく増幅することができる。このような後
方誘導ラマン散乱による放射光は本発明の加工に寄与す
る。
【0025】また、入射するレーザ光のパルス幅が媒質
の横緩和時間程度、すなわちピコ秒領域になると、入射
レーザ光と誘導ラマン散乱により生じるストークス光と
の2光子が媒質と結合して、媒質分子をコヒーレントに
励起するようになり、更にこのコヒーレントな分子振動
を媒介としてレーザ光とストークス光との間に非常に強
い相互作用が生じ、100%に近い効率でエネルギー変
換が生じる。このような高次の誘導ラマン散乱光も本発
明の加工に寄与し得る。
【0026】<誘導ブリユアン散乱(stimulat
ed Brillouin scattering)>
ブリユアン散乱は、ブリユアン活性媒質に光を照射した
場合に、媒質中に生じた音響的フォノンによる光の散乱
であるが、コヒーレンスのよいレーザ光では、放射照度
がある閾値を超えると、入射波、散乱波及び音響波の間
のうなりによる強い相互結合によってきわめて強い散乱
光が放出される。これを誘導ブリユアン散乱(SBS)
という。誘導ブリユアン散乱は、通常光の入射方向と逆
向き(後方)における強度が最大となる。この後方誘導
ブリユアン散乱による放射光が本発明の加工に寄与す
る。
【0027】ここで、媒質が励起光を吸収する場合に
は、吸収による効果が発生するが、これを誘導熱ブリユ
アン散乱という。この現象はブリユアン活性物質中に色
素等を溶解又は分散している場合にも発生し、この場合
の利得係数は、散乱による利得係数と吸収による利得係
数との和になるため、色素がない場合と比較し、利得係
数が増大する条件が存在する。
【0028】媒質が非線形屈折率を有する場合には、レ
ーザ光が自己収束することがあるが、この場合にはビー
ムの径が50μm程度以下に収束した位置で誘導ブリユ
アン散乱が発生する。
【0029】なお、誘導ラマン散乱(SRS)と誘導ブ
リユアン散乱(SBS)は競合関係にあり、同時に発生
し得るが、定常状態に近い場合には、誘導ブリユアン散
乱の利得の方が誘導ラマン散乱の利得を上回るため、殆
どの励起光は誘導ブリユアン散乱により後方に戻されて
しまう。これをブリユアン反射(Brillouinr
eflection)ともいう。
【0030】一方、誘導ブリユアン散乱を支配する音響
形振動の立ち上がり時間は数ns程度なので、入射レー
ザパルスの幅をこれより短くすると、誘導ラマン散乱の
ほうが優勢になる。
【0031】<誘導レイリー散乱(stimulate
d Rayleihg scattering)>誘導
レイリー散乱は、媒質中に局所的に生じているエントロ
ピ揺らぎに基づくレーザ光の散乱が誘導散乱になったも
のであり、光吸収効果に基づくものを誘導熱レイリー散
乱(STRS:stimulated thermal
Rayleigh scattering)という。
本明細書においては、レイリー散乱を誘起する媒質をレ
イリー活性媒質という。
【0032】誘導ブリユアン散乱(SBS)と誘導熱レ
イリー散乱(STRS)は競合関係にあり、同時に発生
し得るが、媒質の吸収係数κが、ある閾値κer以上で
ある場合には誘導熱レイリー散乱(STRS)が支配的
であり、この閾値以下であると誘導ブリユアン散乱(S
BS)が寄与することとなる。
【0033】誘導熱レイリー散乱(STRS)は吸収係
数に比例するので、媒質の吸収係数をこれらの散乱の競
合に関する閾値κerよりも十分に大くなるように媒
質、入射光の周波数等を設定することにより、誘導熱レ
イリー散乱による大きな利得を得ることができる。誘導
熱レイリー散乱(STRS)においても、後方散乱光が
本発明の加工に寄与し得る。
【0034】<色素の光放射>多原子分子特に共役π電
子系を有する有機分子等からなる色素分子は、光励起
(ポンピング)された後、光子を吸収して基底状態S
→励起一重項状態Sの遷移を生じるが、フランクーコ
ンドンの原理により、その後ごく短時間で、Sのうち
の最低準位まで振動緩和等による非放射遷移を生じる。
【0035】最低励起一重項状態の色素分子は、一部が
蛍光の形で光子を放出して、基底状態Sに遷移し、S
に遷移した色素分子は、短時間でSのうちの最低準
位まで非放射遷移を生じる。また、Sの色素分子は、
更に光励起を受けてよりエネルギー準位が高いS(n
>1)に遷移し、このSの色素分子も、光子の放出に
より、低い励起状態に遷移する場合がある。
【0036】上記の色素分子の蛍光は通常、ストークス
シフトにより吸収光に対してピークが長波長側にずれ、
かつ周波数に関して反転したスペクトルを有する。結果
として、蛍光は励起光を長波長側に変換した出力とな
る。
【0037】また、励起光がコヒーレント光である場合
には、蛍光もまたコヒーレントになるため、色素分子の
蛍光波長が、励起光波長と一致する共鳴蛍光のときに
は、色素分子の蛍光が近接する他の色素分子を励起する
自己吸収、自己励起が発生すると共に、透明材料の被加
工部における2光波の相互作用により、励起光のエネル
ギー転換効率が上昇し、加工効率が向上する場合があ
る。
【0038】色素の蛍光放出は、蛍光散乱とも呼ばれ、
散乱現象の一つに位置づけることができる現象である。
【0039】更に、色素の多光子吸収及び中間体吸収、
並びにこれらに基づく発光も、本発明の加工に寄与し得
る。
【0040】ここで、加工に至るまでの作用を、図面を
参照して説明する。コヒーレント光パルス列発生装置1
から放出された入射光としてのコヒーレント光パルス列
(1,2,…,n ,n+1…;nは自然数)は、光学
系7を介して非線形光学セル10に照射されるが、この
とき、入射光は焦点手段9により、被加工物11の媒質
側表面11b近傍に収束される。入射光は、それ自体で
は透明材料を直接単独で加工する場合に必要なエネルギ
ーの閾値以下のエネルギーを有しているので、パルス列
のうち最初のパルスを構成する光子の大部分は被加工物
11としての透明材料を透過する。
【0041】収束位置が適切であれば、媒質側表面11
bに接している加工媒質12による後方散乱光が発生す
る。
【0042】本願発明においては、加工媒質からの後方
散乱光、特に後方誘導散乱光が単独で、又は入射光と協
働して透明材料に作用することにより、透明材料の加工
媒質側表面の加工(エッチング)が実現する。
【0043】振動周波数、ピーク出力、パルス幅等によ
り規定される後方散乱光パルスのエネルギーと被加工物
のバンド構造等との相対的関係により、以下の4通りの
作用が考えられる。
【0044】1) 加工媒質からの後方散乱光が、それ
自体で透明材料をエッチングするに必要なエネルギーを
有している場合:コヒーレント光パルス列のパルスを構
成するレーザ光は透明材料を透過し、媒質側表面の近傍
に収束する。このとき、加工媒質において誘導散乱が発
生し、加工媒質に入射したレーザ光のエネルギーが、後
方誘導散乱光として入射方向とは逆向きに放出される。
結合エネルギーが小さい材料、例えば樹脂材料等におい
ては、入射パルスと比較して振動周波数及び/又はピー
ク出力が変化した後方誘導散乱光の一光子吸収又は多光
子吸収により、透明材料のアブレーションが発生し、エ
ッチングされる。
【0045】2) 加工媒質からの後方散乱光は、それ
自体では透明材料をエッチングするに必要なエネルギー
を有していないが、入射光との協働相互作用(例えば多
光子吸収)により透明材料をエッチングする場合:上記
と同様に、コヒーレント光パルス列の第n番目のパルス
を構成するレーザ光のエネルギーが、後方誘導散乱光と
して入射方向とは逆向きに放出される。第n番目の入射
パルスに基づく後方誘導散乱光と第n番目の入射パルス
自体との協働作用により、透明材料の多光子吸収が生
じ、アブレーションによりエッチングが生じる。
【0046】3) 加工媒質からの後方散乱光が、それ
自体で透明材料を改質するに必要なエネルギーを有する
場合:上記と同様に、コヒーレント光パルス列の第n番
目のパルスを構成するレーザ光のエネルギーが、後方誘
導散乱光として入射方向とは逆向きに放出される。第n
番目の入射パルスに基づく後方誘導散乱光は、入射パル
スと比較して振動周波数及び/又はピーク出力が変化
し、望ましくは増大しており、予備照射として一光子吸
収又は多光子吸収により、透明材料を改質する。第n番
目の入射パルスに基づく後方誘導散乱光により改質が生
じた場合には、第n+1番目以降の入射パルスによりエ
ッチングが生じる。第n+1番目以降の入射パルスを構
成する光子のうち、エッチングに寄与しなかったもの
は、第n番目の場合と同様に透明材料を透過し、加工媒
質において誘導散乱を発生させる。
【0047】4) 加工媒質からの後方散乱光が、それ
自体では透明材料を改質するに必要なエネルギーを有し
ていないが、入射光との協働相互作用(例えば多光子吸
収)により透明材料を改質する場合:上記と同様に、コ
ヒーレント光パルス列の第n番目のパルスを構成するレ
ーザ光のエネルギーが、後方誘導散乱光として入射方向
とは逆向きに放出される。第n番目の入射パルスに基づ
く後方誘導散乱光と第n番目の入射パルス自体との協働
作用により、予備照射光として多光子吸収により透明材
料を改質する。改質が生じた場合には、第n+1番目以
降の入射パルスによりエッチングが生じる。第n+1番
目以降の入射パルスを構成する光子のうち、エッチング
に寄与しなかったものは、第n番目の場合と同様にガラ
ス基板を透過し、加工媒質において誘導散乱を発生させ
る。
【0048】なお、後方散乱光は、誘導散乱光のみから
構成することが出来るが、更に蛍光やその他の発光を介
在させてもよい。
【0049】<回帰光の利用>さて、非線形光学セルと
コヒーレント光パルス列発生装置との距離を十分小さく
すると、後方散乱光が回帰光としてコヒーレント光パル
ス列発生装置に再入射する結果、加工効率が上昇する。
【0050】すなわち、コヒーレント光パルス列発生装
置1から放出されたコヒーレント光パルス列は、光学系
7を介して非線形光学セル10に収束されるが、このと
き発生する後方散乱光の一部は、被加工物11の加工の
ために消費され、残りの一部は、コヒーレント光パルス
列発生装置1と光学系7の共通の光軸に沿って、入射時
とは逆向きに進行し、回帰光としてコヒーレント光パル
ス列発生装置1を構成する増幅光学媒体2内に再入射す
る。この結果、後方散乱光が増幅光学媒体2を補足的に
励起することとなり、コヒーレント光パルス列発生装置
1からの出力を増大させる効果を生じる。
【0051】図2は、回帰光がある場合とない場合のコ
ヒーレント光パルス列発生装置1の出力Iの応答を比較
したものであり、コヒーレント光パルス列発生装置1と
してNd:YAGレーザ、回帰光として、加工媒質12
としての加圧メタンが後方に放出する誘導ブリユアン散
乱光を用いた場合を例示している。
【0052】コヒーレント光パルス列発生装置1は一般
に、電力により作動する装置であるから、回帰光による
補助的励起は、消費電力あたりの加工効率を増大させ
る。
【0053】
【発明の実施の形態】図1は本願発明における透明材料
の加工装置を表している。この場合の加工とは、表面に
凹構造を形成し、又は凸構造を平坦化することを指し、
ここではこの様な加工を「エッチング」として説明する。
【0054】1はコヒーレント光パルス列発生装置であ
り、第一反射手段4と第二反射手段5との間に増幅光学
媒体2が配置されている。励起手段3は、増幅光学媒体
2を励起するため、増幅光学媒体2に応じて選択され
る。
【0055】増幅光学媒体2が例えば共振長の石英ガラ
スチューブに封入されたネオンやアルゴン等のガスの場
合、励起手段3としては、放電電極を用いることがで
き、同様に希ガスとハロゲンガスの混合物を励起してエ
キシマ(Excimer)とするためには、励起手段3
として放電電極の外に電子ビーム発生源を用いて電子ビ
ームによる励起を行うことができる。また、Nd:YA
G又はNd:YLF結晶ロッドに対しては、クセノンフ
ラッシュランプ、水銀灯、クリプトン連続ランプ又は半
導体レーザを励起手段3とすることができる。銅、金又
はカドミウム等の金属蒸気を増幅光学媒体2とした場
合、電子ビームにより励起することができる。アルコー
ル等の溶媒に溶解させた色素を励起させるためには、Y
AGレーザ、エキシマレーザ、銅蒸気レーザを用いるこ
とができる。更に、半導体を励起するためには、直流電
源を用いることができる。
【0056】第一反射手段4は、本願発明に関係する全
ての光波の波長閾において完全に光を反射することが望
ましい。一方、第二反射手段5は、光学増幅媒体2が放
出する第一の周波数の光に対して部分的に透明である。
すなわち、ある透過率を有する。更に第二反射手段5
は、後述の加工媒質12が放出する第二の周波数の光に
対して完全に、又は少なくとも部分的に透明であること
が望ましい。
【0057】増幅光学媒体2、第一反射手段4及び第二
反射手段5は、共通の光学軸を有している。第一反射手
段4と第二反射手段5との間には、更に必要に応じてQ
スイッチ手段6が配置されていてもよい。Qスイッチ手
段6は、増幅光学媒体2によるコヒーレント光パルスの
生成の開始を遅延させる機能を有している。
【0058】すなわち、Qスイッチ手段6は、増幅光学
媒体2が励起手段3から与えられたエネルギーを完全に
吸収しないうちにコヒーレント光パルスの放出を始めな
いように増幅光学媒体2内の光学的励起を抑制する。
【0059】Qスイッチ手段6としては一定の光学エネ
ルギーを受けたときに透明となる過飽和吸収材、伝搬係
数を電気的に制御することができる光学素子又は音響光
学素子(AOM=Acoustic Optical
Modulator)を用いることができる。
【0060】コヒーレント光パルス列発生装置1は、第
一の周波数及び第一のピーク出力を有するコヒーレント
光パルス列から成る第一の光波を放出する。
【0061】コヒーレント光は、コヒーレント光パルス
列発生装置1から放射された後、凹部となるエッチング
の形状に対応するパターンを有するパターニング手段8
と焦点手段9からなる光学系7を介して、非線形光学セ
ル10に収束して照射される。
【0062】媒質容器14中には液体の加工媒質12が
注入されている。加工媒質は、例えば色素を含有する二
硫化炭素、クマリンを含有している四塩化炭素又はペリ
レンを含有しているアセトンとすることができる。
【0063】加工媒質12は不図示のポンプ等の適宜手
段により連続的に供給されて流動状態となっている。液
体加工媒質12は流動状態とせず入射光の照射の前後に
交換してもよい。また、密閉容器でなく、大気圧に対し
て開放する部分を有していれば、加工媒質12の急激な
体積変化による透明材料や容器の損傷を防ぐことができ
る。
【0064】被加工物11としての透明材料が不図示の
固定手段により、密封手段13を介して媒質容器14に
固定され、非線形光学セル10を構成する。被加工物1
1の媒質側表面11bのうち少なくともエッチングを行
う部分、すなわちエッチングにより凹部が形成される部
分が、エッチング工程にわたり液体加工媒質12に触
れ、又は浸漬されていれば、順次形成される被加工部の
凹部に液体加工媒質2が侵入してくる。
【0065】被加工物11に対し非線形セル10の外側
から、すなわち被加工物11の媒質側表面11bとは逆
側から、換言すれば液体加工媒質12を供給側しない入
射側表面11aからコヒーレント光を照射することによ
り、加工媒質12が第二の周波数及び第二のピーク出力
を有する後方誘導散乱光からなる第二の光波を放出し、
媒質側表面11bが加工される。この結果、媒質側表面
11bは被加工面となる。
【0066】第二の周波数は第一の周波数に対してスト
ークスシフトしている場合があり、また高調波となって
いる場合もある。一般にストークスシフトは、前述の通
り、加工媒質に固有のシフトが高周波側と低周波側の両
方に表れる。例えば、ラマンシフトがν=2921
(cm−1)のアセトンにKrFエキシマレーザ(24
8nm)を照射した場合、ラマンシフトにより、約23
1nmのストークス線及び約267nmの反ストークス
線として誘導ラマン散乱光が放出される。
【0067】当然ながら、反ストークス側の第二の光波
は、第一の光波に比して一光子の有するエネルギーが大
きくなる。また、高調波又は高調波から更にストークス
シフトしている場合にも、一光子が有するエネルギーは
大きくなる。
【0068】各要素の配置の相対関係は適宜設定するこ
とができる。
【0069】例えば、被加工物11の被加工面11bが
自由液面の下方に位置し、かつ、入射側表面11aが液
面よりも上方に位置するように水平に固定し、上方から
コヒーレント光を照射することができる。また、液体加
工媒質を上方から滴下供給し下部又は側部からコヒーレ
ント光照射を行うことも可能である。
【0070】例えば、ポリヌクレオチドプローブチップ
(特開2000−60554号公報)を作成する場合、
ポリメタクリル酸メチルからなる透明基板の表面に、方
形状の複数の小孔がマトリクス状に配置開口する構成に
おいて、ポリヌクレオチドプローブを保持しているゲル
を小孔内に保持するために、各小孔の内面に分子レベル
の凹凸形状を設けるが、この様な場合には、小孔内に流
動性の、特に液体の加工媒質を滴下した後に、透明基板
の下方乃至側方から、所望の凹凸パターンに対応したパ
ターニング手段8としての光学マスク及び/又は回折格
子、焦点手段9としての凸レンズ等を有する光学系7を
介して、コヒーレント光パルス列としてのレーザ光を入
射することにより、ナノレベルの凹凸形状を形成するこ
とができる。
【0071】また、透明材料自体を光導波路として透明
材料の一端から入射した光を他端から射出させ、加工媒
質を照射することができる。
【0072】すなわち、光ファイバのような長尺の透明
材料の切断面乃至長手方向端部に加工を施すことが可能
である。本発明の加工方法により光ファイバの端面にエ
ッチングを施す場合には、上記の透明部材又は不透明部
材をパターン形成するにあたり、能川真一郎らが提案し
ている、微粒子化したフォトレジスト材料を噴霧して光
ファイバ端面に均一な厚さの膜を作成する製膜技術(電
気学会物理センサ研究会資料、Vol.PS−99,N
o.1−16,p67−72,1999)を用いること
ができる。この場合、当該光ファイバ自体を光導波路と
してレーザ光を加工端面まで到達させることができる。
被加工面が平坦である必要はない。
【0073】光ファイバ端面へのエッチングは、光ファ
イバ端面への三次元加工を可能とし、光コネクタの小型
化、機能部品の直接形成が可能になる。
【0074】何れの方法で被加工部に加工媒質を供給す
るにせよ、入射光を被加工物の加工が不要な部分から透
明材料中に入射させ、被加工物を透過させた後に被加工
物の被加工部から射出させて、被加工物の被加工部に接
している、又は接することなくその近傍に配されている
加工媒質を照射することとなる。
【0075】従って、透明材料のうち、加工媒質に接
し、又は接することなく対向している表面のみに加工を
施すことができる。また、透明材料のうち、加工が不要
な部分からレーザ光を入射し、加工が必要な部分から射
出させることにより、少なくとも入射光が射出しない部
位においては加工を生じさせない。
【0076】更に、入射光が透明材料から射出する部位
であっても、加工媒質からの放射光、特に後方散乱光を
浴びない部位では加工を生じさせない。
【0077】パターニング手段8としてはフォトマスク
及び/又は回折格子を用いることができるが、そのかわ
りに被加工物11としての透明基板の被加工面11b又
はこれとは逆側の入射側表面11aに、不透明部材から
なるフォトマスク層を公知の薄膜形成技術によりパター
ン形成しておいてもよい。ただし透明基板11上にフォ
トマスク層を形成する場合には、エッチング工程と次の
工程との間に当該フォトマスク層を除去する工程を設け
る必要が生じる場合もある。
【0078】不透明部材としてポリシリコン層をパター
ン形成しておけば、SOG構造における回路要素とする
こともできる。
【0079】透明基板11の被加工面11bのうちエッ
チングが不要な部分すなわち凹部となる部分以外の部分
に透明部材からなるエッチング犠牲層を、公知の薄膜形
成技術によりパターン形成しておき、被加工面11bと
は逆側の入射側表面11aから、換言すれば加工が不要
な部分からレーザ照射を行ってもよい。エッチング犠牲
層を形成した部分においては透明基板11の代わりにエ
ッチング犠牲層がエッチングされ、エッチング犠牲層を
形成していない部分では透明基板11がエッチングされ
ることとなる。
【0080】透明なエッチング犠牲層をガラス、樹脂等
の絶縁体やITO等の透明導電体によりパターン形成す
ると共に、必要に応じてレーザ照射によるエッチングを
行うことにより、COG構造における容量、抵抗、導電
路等の回路要素を形成することも可能である。
【0081】一方、エッチング犠牲層が次工程以降で不
要となる場合には透明基板11に対する凹部の形成終了
のときにエッチング犠牲層がすべてエッチングにより除
去されるようエッチング犠牲層の膜厚、レーザ照射パタ
ーンを設定すればエッチング犠牲層の除去工程を設ける
必要がなく好適である。
【0082】レーザビームが射出される透明材料の加工
部のうちその表面に透明部材又は不透明部材からなる層
が形成されている部分では透明材料の加工を生じさせな
いことになる。更に、エッチング犠牲層を設けた部分の
うち、レーザビームが射出される部位のみでエッチング
犠牲層のエッチングが生じることとなる。
【0083】必要に応じて以上のフォトマスクと透明又
は不透明のエッチング犠牲層の形成とを併用することに
よりエッチング深さにバリエーションを有する複雑なエ
ッチングパターンを形成することが可能となる。
【0084】本願発明の方法を用いて透明材料の切断や
コンタクトホール等のために貫通孔を形成することも可
能である。レーザ光入射方向を変化させ、レーザ光が透
明材料から射出する部位及び角度を順次変化させること
により、屈曲した貫通孔を形成することも可能である。
フォトマスクを介さず、レーザ光をガルバノミラー、ポ
リゴンミラー等の掃引手段により掃引し、又は透明基板
11を液体加工媒質に接触させたままX−Y−Zテーブ
ル等により移動させてもよい。
【0085】パルス照射回数を制御することにより所望
の深さまで凹部を形成する。一パルス当たりのエッチン
グ量は透明材料の素材にもよるが、ガラスの場合、1−
100nmである。レーザ光源、パルス幅、エネルギー
密度又は周波数は選択された被加工物の吸収特性、エッ
チング特性や加工媒質の誘導散乱等の光放射特性に応じ
て適宜選択することができる。
【0086】本発明のエッチング方法により線状パター
ンのエッチングをする場合には、液体加工媒質を流動さ
せる方向と当該線上パターンの長手方向とを平行乃至略
平行に設定すると、エッチングによって形成される微細
パターンの細部まで均一に液体加工媒質が供給されるの
で好適である。色素含有液体加工媒質を流動させ、レー
ザパルスの照射を用いる場合には、加工部に均一に一定
濃度で色素が供給されるに十分な時間的余裕を持って照
射周期を設定することが望ましい。
【0087】色素含有液体加工媒質を流動させない場合
であっても、加工部における色素濃度がエッチング全工
程にわたり極端に変動せぬよう、時間的余裕のある照射
周期が望ましい。レーザ照射強度、照射時間又は照射周
期等を変化させる光量調整手段により色素濃度の上昇に
応じて光量を減少させても良い。
【0088】本願発明において液体加工媒質を流動等さ
せてレーザ照射をする場合には、色素が加工部に均一に
一定密度で供給され、エッチング反応を安定して進行さ
せることができ、被加工部の不要な過熱を防止し、被加
工部周辺に発生する色素分子断片又は透明材料分子断片
を除去し、加工媒質の誘導散乱等の光放射特性を保つこ
とができる。
【0089】可視光領域に強い吸収を有さない物質を、
加工媒質又はこれが含有する色素として選択すれば、視
覚的汚染がなく、揮発性液体加工媒質と共に蒸発する色
素を用いる場合には、残留汚染がなく好適である。
【0090】<透明材料>本明細書において透明とは、
入射光を透過する性質を指し、特にレーザ光に代表され
るコヒーレント光を透過する光学的透明、すなわち透光
性を指す。本発明において用いられる透明材料は、入射
光を100%透過する必要はないが、選択された入射光
の透過のみによっては破壊、融解、相転移等の変質をせ
ず、当該入射光を透過する前後において当該入射光を透
過する性質を変化させないことが望ましい。
【0091】更に、加工媒質からの放射光によって改質
され又はエッチングされ、若しくは入射光と加工媒質か
らの放射光との協働作用により改質され又はエッチング
されるものであることが望ましい。
【0092】より具体的には、「透明材料」とは、入射光
特にレーザ光を透過する性質を有するガラス、樹脂、セ
ラミクス、金属材料等を指す。
【0093】ここでガラスとして用いられるものとして
は、珪酸ガラス、ホウ酸ガラス、リン酸ガラス、ゲルマ
ン酸ガラス、亜テルル酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラ
ス、カルコゲン化物ガラス、フッ化物ガラス、酸窒化物
ガラス等から適宜選択して用いることができ、より具体
的には、α−石英(三方晶)、β−石英(六方晶)、溶
融シリカガラス、96%シリカガラス、ソーダ石灰ガラ
ス、鉛アルカリ珪酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラス、アル
ミノ珪酸ガラス、アルミノホウケイ酸塩ガラス、アルミ
ノシリケートガラス、ガラスセラミクス、アルミナセラ
ミクス、パイレクス、パイロセラム、コーニング774
0、コーニング0211、コーニング7059、フッ化
カルシウム等を挙げることができる。
【0094】このうち石英ガラスは光学素子材料として
好適であり、パイレクスはシリコンウエハと陽極接合が
できるため有用である。
【0095】また、セラミクスとしては、透光性アルミ
ナ(サファイヤ)をはじめ、Y 、MgO、ZrO
、ThO、(Pb,La)(Zr,Ti)O(P
LZT)等を用いることができる。
【0096】また、樹脂としては各種透明ポリマー、具
体的にはポリメチルメタクリレート、ポリカーボネー
ト、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、メ
チルメタクリレート・スチレン共重合体、アクリロニト
リル・スチレン共重合体、ポリ(4−メチルペンテン−
1)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピ
レン共重合体、ポリ(−2,2,2−トリフルオロイソ
プロピルメタクリレート)、ポリシクロヘキシルメチル
メタクリレート、ポリn−ブチルメタクリレート、ポリ
ビニルナフタレン、ポリα−ナフチルメタクリレート、
セルロースアセトブチレート、セルロースプロピオネー
ト、ポリビニルクロライド、スチレン・アクリロニトリ
ル共重合体、ポリスチレン、スチレン・無水マレイン酸
共重合体、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリメ
チルイソシアネート等を用いることができる。
【0097】透明材料自体が非線形媒質としての性質を
有する場合には、透明材料内における入射光及び/又は
加工媒質からの放射光の自己収束及び/又は自己束縛に
よる高効率の加工が期待できる。
【0098】<加工媒質>本発明の加工媒質は、散乱活
性媒質から適宜選択して用いることができ、特に流動性
の媒質が好適である。自己収束、自己束縛を伴う非線形
媒質においては、高効率の加工が期待できる。更に光の
吸収性を有しているか色素を含有(溶解又は分散等)し
ている場合には一層好適である。
【0099】本発明のラマン活性媒質としては、気体、
液体、ゾル・ゲル、固体の媒質を用いることができる。
この場合、望ましくは誘導ラマン散乱による増幅の利得
係数が1.2(単位:10−5m/MW。以下同じ。)
以上、より望ましくは1.5以上、更に望ましくは10
以上、最適には20以上である媒質を用いることができ
る。
【0100】具体的には、気体または液体の流体媒質と
しては、汎用の溶媒としてアセトン(1.2:括弧内は
誘導ラマン散乱による増幅の利得係数。)、シクロヘキ
サン(1.2)、トルエン(1.2)の他、これらより
も利得係数が大きい媒質として、気体水素[100気
圧](1.5)、ブロムベンゼン(1.5)、クロルベ
ンゼン(1.9)、ニトロベンゼン(2.1)、ベンゼ
ン(2.8)、液体酸素(14.5±4)、液体窒素
(17.5±5)、二硫化炭素(23.8)等があり、
固体媒質では、ダイヤモンド(6.9)、方解石(4.
4)、BaNaNb 15(6.7及び18.9)、
珪素(190)、LiTaO(4.4及び10)、
LiTaO(4.3及び7.9))、LiNbO
(8.9、28.7,9.4及び12.6)、Li
NbO(17.8、35.6,9.4及び12.
6)、InSb(16.7)等がある。
【0101】本発明のブリユアン活性媒質としては、気
体、液体、ゾル・ゲル、固体の媒質を用いることができ
る。望ましくは誘導ブリユアン散乱による増幅の利得係
数が19(単位:10−5m/MW。以下同じ。)以
上、より望ましくは23以上、最適には100以上の媒
質を用いることができる。
【0102】具体的媒質としては、汎用の溶媒としてア
セトン(19:括弧内は誘導ブリユアン散乱による増幅
の利得係数。)の他、これよりも利得係数が大きい媒質
として、気体窒素[120気圧](23)、エチルエー
テル(24)、n−ヘキサン(26)、二硫化炭素(1
28)等があり、固体媒質ではルーサイト(20)等が
ある。
【0103】その他、SBS媒質としては、気体ではS
、Xe、CH、液体ではCCl、PCl、S
nCl、GeCl、TiCl、Freon11
3、FC−72、FC−75、固体では有機Lアルギニ
ンリン酸(LAP)が知られている。
【0104】本発明のレイリー活性媒質(単体)として
は、望ましくは吸収係数κあたりの誘導熱レイリー散乱
による増幅の利得係数が0.47(単位:10−4
/MW。以下同じ。)以上、より望ましくは0.57以
上、更に望ましくは0.62以上、最適には0.82以
上の媒質を用いることができる。
【0105】具体的には汎用の溶媒としてアセトン
(0.47:括弧内は吸収係数κあたりの誘導熱レイリ
ー散乱による増幅の利得係数。)の他、これよりも利得
係数が大きい媒質としてベンゼン(0.57)、四塩化
炭素(0.82)、二硫化炭素(0.62)等がある。
その他、エチルエーテル、クロロホルム、トルエン、テ
トラヒドロフランを好適に用いることができる。
【0106】本発明の加工にあたっては、加工媒質の各
散乱における増幅の利得係数又はピーク出力が大きいほ
ど加工量が大きい傾向にあるため、選択された被加工対
象としての透明材料の材質により、適宜加工媒質を選択
することにより、一パルスあたりの加工量を調節するこ
とができる。利得係数が小さすぎると所望の加工が行え
ない場合がある。
【0107】また、レーザパルスのパルス幅を選択する
ことにより、支配的に発生する誘導散乱の種類を選択す
ることもできる。
【0108】例えば加工媒質として二硫化炭素を用いる
場合、誘導ブリユアン散乱を支配する音響形振動の立ち
上がり時間が2.2nsであるので、入射レーザ光のパ
ルス幅がこの程度以下になると、誘導ラマン散乱が優勢
となり、誘導ブリユアン散乱は抑制される。従って、こ
の場合にはレーザ光のパルス幅を3ns以上に設定する
ことにより、誘導ブリユアン散乱の利得を利用すること
ができる。逆に、パルス幅を2ns以下乃至ピコ秒レベ
ルとすることにより誘導ラマン散乱を利用すれば、ピー
ク出力の大きな後方誘導散乱光を利用することができ
る。
【0109】一方、吸収係数が大きい活性媒質を用いれ
ば、誘導熱レイリー散乱により、吸収係数に比例した大
きな利得を得ることが可能である。
【0110】例えば、ヨウ素を含有する四塩化炭素にパ
ルス幅10nsのレーザ光を照射した場合、前述の誘導
ブリユアン散乱と誘導熱レイリー散乱との競合の閾値κ
erは約0.04(cm−1)であるから、これより吸
収係数を大きくすることにより、誘導熱レイリー散乱の
利得を利用することができる。
【0111】<色素>本発明の色素は、可視光領域に吸
収を有するもののみならず、可視光領域外に吸収を有す
るものをも含む概念であり、蛍光を発するものを含む。
【0112】工業的には現在実用化されているレーザ光
源の波長域のうち可視光領域外特に紫外線波長領域に基
底状態の吸収領域又は中間体吸収領域を有する物質が好
適であり、使用するレーザ光の波長付近に吸収ピークを
有するものがより好適である。
【0113】更に、この中間体吸収に対応する吸収スペ
クトルの強い吸収領域が、基底状態にある場合の吸収領
域にあれば、すなわち基底状態にある場合の吸収領域と
中間体吸収に対応する波長領域とが重なっていれば、そ
の共通する波長のレーザ光のエネルギーは、基底状態か
ら各励起状態への遷移エネルギーの供給と中間体吸収に
対応するエネルギーの供給とを担うこととなり、吸収が
更に大きくなる。
【0114】本発明の色素としては、発蛍光性の有機化
合物特に多環芳香族炭化水素、5員環又は6員環のヘテ
ロ環化合物、カルボニル基を有する化合物を最適に用い
ることができ、有機分子の配位基を有する金属錯体を用
いることもできる。
【0115】より具体的には、多環芳香族炭化水素とし
てはアントラセン、ペリレン、フェナントレン等の縮合
多環芳香族やターフェニル、t−スチルベン等のように
フェニル基が直接あるいは多重結合を介して連結した多
環芳香族を用いることができ、5員環のヘテロ環化合物
としてはピロール、オキサゾール、チアゾール、ピラリ
ゾン、オキサジアゾール、フルオレッセイン等が、6員
環のヘテロ環化合物としてはピリジン、キノリン、ピラ
ジン、キノキザリン等を有する化合物を用いることがで
きる。カルボニル基を有する化合物としては7−ヒドロ
キシクマリン等のクマリン誘導体、4’−メトキシナフ
トリレンベンツイミダゾールに代表されるナフタルイミ
ド類やナフタレン酸無水物等のナフタレン酸誘導体、有
機分子の配位基を有する金属錯体としてはポルフィリン
の金属錯体やキノリノール類の金属錯体を挙げることが
できる。
【0116】この他、発蛍光性の置換基を有する物質を
用いることができ、発蛍光性の置換基としてはピレニル
(ピレニル基を意味する。以下の列挙において同
じ。)、フェニル、トリフェニル、ビフェニル、ターフ
ェニル、アンスリル、フェナンスリル、カルバゾリル、
ナフチル、ペンタレニル、インデニル、アズレニル、ヘ
プタレニル、ビフェニレリル、as−インダセニル、フ
クオレニル、s−インダセニル、アセナフチレニル、プ
レイアデニル、アセナフテニル、フェナレル、フェナン
トリル、アルキルアミノフェニル、ジアリールアミノフ
ェニル、アルコキシフェニル、メトキシフェニル、メチ
ルフェニル、クロロフェニル、アントリル、フルオラン
テニル、トリフェニレニル、クリセニル、ピリジル、フ
リル、チエニル、チノリニル、ベンズピラニル、アクリ
ジニル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、エチルカルバ
ゾリル、フェニルカルバゾリル、トリルカルバゾリル等
の各有機置換基を挙げることができる。
【0117】ここでピレニル基を有する物質とは1−ビ
ニルピレン等の他にピレン自身を含み、他の置換基にお
いても同様である。
【0118】その他、縮合多環芳香族化合物又はヘテロ
環を有する物質を好適に用いることができ、複数の環構
造を有する物質分子、特に複数の芳香環を有する芳香族
等物質分子等分子内に多重結合乃至環構造を有する物質
分子を用いることもでき、不飽和脂肪族炭化水素、芳香
族炭化水素、芳香族ハロゲン化合物、芳香族ニトロ化合
物、芳香族ニトロソ化合物、芳香族アミン、芳香族ニト
リル、フェノール、フェノールエーテル、芳香族カルボ
ニル化合物、芳香族カルボン酸及びこれらの誘導体、ア
ゾ化合物及び誘導体、スルホン酸誘導体、フラン族化合
物、チオフェン族化合物、ピロール化合物、ピラン化合
物、ピリジン族化合物、ジアジン族化合物その他の有機
化合物等から適宜選択して用いることができる。
【0119】以下他との重複もあるが、縮合多環芳香族
化合物としてはナフタレン、アントラセン、フェナント
レン、ナフタセン、ペンタセン、クリセン、ピレン、ペ
リレン、フルオレン、アセナフテン、フルオランテン、
アミノピレン、1,2,3,4,−テトラメチルナフタ
レン、1−(ジメチルアミノ)−ピレン、1−ピレン酪
酸、ブチルピレン、4−メチル−2H−1−ベンゾピレ
ン−2−オン等を挙げることができ、ヘテロ環を有する
物質としてはベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキ
ノン、ピロール、2−フェニルピロール、インドール、
ピリジン、フルオルピリジン、2−エトキシピリジン、
アミノピリジン、ピリドン、ピリジン−N−オキシド、
4−ニトロピリジン−N−オキシド、4−アミノピリジ
ン−N−オキシド、キノリン、イソキノリン、カルバゾ
ール、クマリン、2,6−ジメチル−4−ピロン等を挙
げることができ、複数の芳香環を有する物質としてはビ
フェニル、ジメチルビフェニル、テトラメチルビフェニ
ル、ヘキサメチルビフェニル、トリフェニル、プロフラ
ビン、1,2−ベンゾアズレン、トリフェニルメチル陽
イオン、トリフェニルメチル陰イオン、スチルベン、
5,5’ジメチルビフェニル、6,6’−ジニトロビフ
ェニル、p−ニトロ−スチルベン、p−メトキシ−p−
ニトロ−スチルベン、フェニルエーテル、ナフトール、
ベンゾフェノン、7−(ジメチルアミノ)−4−メチル
クマリン、ニトロフェニルアゾベンゼン、トリフルオロ
メチルスルフォニルトラン等を挙げることができ、その
他の化合物としてベンゼン、アズレン、ベンゾイン、ベ
ンゾトリアゾール及びこれらの誘導体等を挙げることが
できる。
【0120】また、本発明の色素としては、各種ポリメ
チン系色素、キサンテン系色素、クマリン系色素、シン
チレータ色素、オキサジアゾール誘導体、ローダミン系
色素等のレーザ用色素を好適に用いることができ、具体
的には2,5−ジフェニルオキサゾール(PPO)、α
−ナフチルフェニルオキサゾール(α−NPO)、PO
POP、4−メチルアンベリフェロン、4−メチルクマ
リン、フルオレイセイン、ローダミン6G、アクリジン
レッド、ローダミンB、3,3’−ジメチル−2,2’
オキサトリカルボシアニンアイオダイド、1,1’−ジ
エチル−4,4’−キノトリカルボシアニンアイオダイ
ド等を挙げることができる。
【0121】何れの物質を用いる場合にも、紫外線領域
に強い吸収を有すると共に可視光領域には強い吸収を有
していないことが望ましい。可視光領域に吸収を有する
物質は透明材料、特にポリマー材料の視覚的汚染の原因
となり得るからである。
【0122】本発明の実施にあたっては、色素の吸収ス
ペクトルが加工媒質の種類、性状等によって変化する場
合があることに留意する必要がある。
【0123】本願発明における加工媒質として用いる散
乱活性媒質は、後方誘導散乱光のコヒーレンシー及び強
度が加工に十分な程度に得られる限りにおいて、固体、
液体、気体、ゾル、ゲル等の何れでもよく、加工媒質を
透明材料に接触させ、又は接触させずにその近傍に配置
することができる。
【0124】透明材料との密着性や流動性の観点から、
流体特に液体の媒質を被加工部表面に接触させて配置す
ることが望ましく、更に、選択された色素を溶解する溶
媒としての機能を有する媒質を用いることが望ましい。
【0125】複数の物質により媒質を構成してもよい。
更に揮発性溶媒を用いれば加工後の乾燥工程が不要とな
る。更に揮発性溶媒が溶質である色素と共に蒸発する場
合には、透明材料表面にこれらが残留しないため一層好
ましい。
【0126】なお、透明材料中における、入射光の光路
と、加工媒質からの放射光の光路は、逆向きで同一であ
ることが望ましい。入射光の光路を放射光が逆向きに進
行することにより、各光波と透明材料との有効な相互作
用が生じる位置及び範囲を被加工面において一致させる
ことができるからである。
【0127】加工媒質の大きさ、特に透明材料から射出
されたレーザ光が進行する方向の厚みは、誘導散乱に関
し、光波と加工媒質との有効な相互作用長が十分に取れ
るような大きさであることが望ましい。
【0128】本願発明において色素を含有している液体
加工媒質を用いる場合、色素が光子の吸収と放出によ
り、基底状態と複数の励起状態との間の遷移を繰り返
し、エネルギーの吸収、放出を行うのみで色素自体は殆
ど消費されないのに対し被加工部近傍の液体分子は激し
い蒸発等により次々に消費される場合があるため、加工
の進展につれて液体加工媒質中の色素の濃度が被加工部
表面近傍において局所的に高くなる場合がある。
【0129】これにより同一光量のレーザビーム照射を
行っても、加工の進展につれて照射エネルギーあたりの
エッチング量が増加するという問題が生じる場合があ
る。
【0130】これは、従来の液相におけるエッチングに
おいて、エッチャント濃度が加工の進展に従って次第に
低下することとは原理的に全く異なる、本願発明の構成
に固有の問題点である。
【0131】逆に、強いレーザ光を断続的に長時間照射
することにより、色素の破壊・損耗が生じる場合があ
る。この場合には、同一光量の入射光照射を行っても加
工の進展につれて照射エネルギーあたりの加工量が減少
するという効果を生じる。
【0132】このため、加工精度を一定に保つために
は、ポンプ等の手段により一定濃度の色素含有液体加工
媒質を連続的に被加工部に供給するか若しくは流動させ
又はレーザビームの照射の前後において液体加工媒質を
交換することが望ましい。
【0133】液体加工媒質を流動させ層流を形成する場
合には、被加工物表面に直接液体加工媒質が供給される
こととなり好ましい。乱流を形成する場合には、被加工
物表面近傍に形成される粘性層と乱流境界層との境界面
が流体の激しい蒸発等により乱され物質交換が生じるた
め、液体加工媒質の濃度上昇を緩和乃至防止することが
できる。また、被加工物である透明材料の下部に液体加
工媒質の上昇流をノズル等の噴射手段により形成しても
よい。
【0134】本願発明の液体加工媒質としては粘性及び
圧縮性を無視し得る液体のみならず粘性流体、圧縮性流
体を用いることもでき、ゾル、チクソトロピー性物質を
用いることもできる。ゾルを用いる場合には上記溶媒に
シリカ、アルミナ等の粘着剤を添加して用いてもよい。
この場合には被加工物の被加工部を液体加工媒質に接触
乃至浸漬するかわりに、印刷等の塗布手段により液体加
工媒質を被加工面一面に又はパターン状に塗布して用い
ることができる。
【0135】更に、選択した液体加工媒質と被加工物で
ある透明物質との親和性が低い場合には、「ぬれ」の状態
が不十分で、被加工面の一部しか液体加工媒質に接触し
ない等の問題が発生する場合があるので、選択された液
体加工媒質の透明材料に対する「ぬれ」の角度、すなわち
接触角をより小さく、望ましくは鋭角にするための物
質、例えば界面活性剤等を液体加工媒質中に添加するこ
ともできる。
【0136】<入射光/レーザ装置>本願発明における
入射光は、コヒーレント光パルス列発生装置が放射する
電波、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、
γ線等のコヒーレントな電磁波を指し、中でも紫外線波
長領域のレーザ光を指す。
【0137】本発明の入射光は、被加工物である透明材
料には吸収されにくい性質を有することが望ましい。散
乱現象はパルス幅依存性が大きく波長依存性は小さいの
で、本発明のコヒーレント光パルス列発生装置として
は、パルス発振タイプの各種レーザ装置を好適に用いる
ことができる。選択された加工媒質又はこれが含有して
いる色素の吸収領域に対応する波長の電磁波を放出する
ものであることが望ましい。
【0138】レーザ装置としては各種ガスレーザ、個体
レーザ、金属レーザを用いることができ、より具体的に
は、ガスレーザとしてヘリウムネオンレーザ、アルゴン
イオンレーザ、COレーザ、COレーザ、窒素レー
ザ、F(157nm、7.9eV)、ArF(193
nm、6.4eV)、KrF(248nm、5.0e
V)、XeCl(308nm、4.0eV)、XeF
(350nm、3.5eV)各エキシマレーザを、個体
レーザとしてルビーレーザ、ガラスレーザ、Nd:YA
Gレーザ、Nd:YLFレーザを、金属レーザとしては
ヘリウムカドミウムレーザ、銅蒸気レーザ、金蒸気レー
ザを用いることができる。その他、半導体レーザ、チュ
ーナブルダイオードレーザ等の各種レーザ装置から選択
して用いることができる。
【0139】これらのレーザ装置からの放出光をアップ
コンバージョンすることにより二倍波、四倍波等の高調
波を用いることもできる。
【0140】本願発明におけるレーザ照射の条件は、選
択された加工媒質が誘導散乱等の光放射を起こすに足る
エネルギーを供給し、かつその放射光が単独で又は入射
光との協働作用により透明材料の改質及び/又は加工が
生じるように設定されている。
【0141】すなわち、レーザ照射の強度、パルス幅、
周波数等によって決定される、単位時間に単位面積を通
過する光量が、加工媒質が誘導散乱等の光放出を起こす
閾値以上に設定されると共に、選択された透明材料に直
接レーザ照射を行いエッチング、溶融、穿孔等の加工を
発生させる場合の閾値より小さく設定する手段を有す
る。
【0142】これは、入射光の光子エネルギーが、透明
材料、特にガラスのバンドギャップよりも小さいなが
ら、加工媒質において誘導散乱を発生するに足るエネル
ギーを有していることを意味する。
【0143】更に、誘導散乱光はバンドギャップよりも
大きい光子エネルギーを有しているか、若しくはバンド
ギャップよりも小さい場合には、誘導散乱光単独で又は
誘導散乱光と入射光との協働作用により、多光子吸収過
程を経てバンド間遷移が起こり得るエネルギー密度を有
していることを意味している。
【0144】これにより、加工する透明材料の表面のう
ち、液体加工媒質に対向し又は接触している表面のみに
加工を施すことができる。
【0145】上記、閾値より大なる光量のレーザ照射を
した場合には、透明材料のレーザ光入射側端面や透明材
料内部等においてエッチング、溶融等が発生するため所
望の加工を行うことができない。例えば、KrFエキシ
マレーザ(248nm)、10J/cmにより照射を
行うと、石英ガラスの入射側表面に損傷を生じる。
【0146】具体的には、透明材料として石英ガラスを
選択し、加工媒質として例えば二硫化炭素、アセトン又
は四塩化炭素を選択して色素を含有させ、後方誘導散乱
光の発生を利用して加工を行う場合には、FWHM=1
ps−100ns、エネルギー密度1−10,000m
J/cm、1−100Hzに設定することができ、例
えば、KrFエキシマレーザ(248nm)のパルス
波、FWHM=10−30ns、エネルギー密度200
−1500mJ/cm、1−10Hzを用いることが
できる。KrFエキシマレーザ(248nm)は、その
波長が、石英ガラスに生成する酸素欠乏欠陥に起因する
吸収帯(248nm)と一致し、E’センターに起因す
る吸収帯(215nm)に波長が近いので、特に好まし
い。同様に、ArFエキシマレーザ(193nm)は、
一光子のエネルギーが大きく、E’センターに起因する
吸収帯(215nm)に波長が近いので好ましい。
【0147】[実施態様例1]図1は本願発明における
ガラス基板の加工装置を表している。
【0148】媒質容器14中には0.1−0.5 mo
l/dmローダミンBを含有する二硫化炭素が注入さ
れて液体の加工媒質12を形成している。加工媒質12
はポンプにより連続的に供給されて流動状態となってい
る。
【0149】加工媒質12に被加工物である透明基板1
1の被加工面11bが接するように、密封手段13とし
てのO−リングを介し、不図示の固定手段により、ガラ
ス基板11が媒質容器14に固定されて、非線形光学セ
ル10を構成している。
【0150】ガラス基板11の被加工面11bのうち少
なくともエッチングにより凹部が形成される部分がエッ
チング工程にわたり液体加工媒質2に触れることとな
る。
【0151】ガラス基板11に対し入射側表面11a側
から、エッチングパターンに対応してパターニングされ
たフォトマスク8を介し、更に集光レンズ9を介して、
コヒーレント光パルス列発生装置としてのレーザ装置1
から放射されたレーザ光を照射する。レーザ光としてK
rFエキシマレーザ(248nm)のパルス波、例えば
FWHM=30ns、エネルギー密度500mJ/cm
、2Hzを用いる。
【0152】コヒーレント光パルス列の第n番目のパル
スを構成するレーザ光はガラス基板11を透過し、媒質
側表面11bの近傍に収束する。このとき、加工媒質1
2において誘導散乱が発生し、加工媒質12に入射した
レーザ光の大部分が、後方誘導散乱光として入射方向と
は逆向きに放出される。
【0153】第n番目の入射パルスに基づく後方誘導散
乱光は単独で、又は第n番目の入射パルス自体と協働
で、一光子吸収又は多光子吸収により、ガラス基板にエ
ッチング又は改質を生じさせる。改質が生じた場合に
は、第n+1番目以降の入射パルスによりエッチングが
生じる。
【0154】第n+1番目以降の入射パルスを構成する
光子のうち、エッチングに寄与しなかったものは、第n
番目の場合と同様にガラス基板を透過し、加工媒質にお
いて誘導散乱を発生させる。
【0155】パルス照射回数を制御することにより所望
の深さまで凹部を形成する。一パルス当たりのエッチン
グ量は20−30nmである。
【0156】[実施態様例2]加工媒質12として、ク
マリンを含有している四塩化炭素、ペリレン又はピレン
を含有しているアセトン、ピレンを含有しているテトラ
ヒドロフラン若しくはローダミン6Gを含有するエタノ
ールから選択すると共に、コヒーレント光パルス列発生
装置1として、XeClエキシマレーザ又はNd:YA
Gレーザ(二倍波、四倍波)から選択する以外は、実施
態様例1と同様の操作を行うことにより、透明材料の媒
質側表面に凹部を形成することができる。
【0157】
【効果】本発明の加工法によれば、透明材料をレーザ光
照射により直接加工する従来法と比較して、レーザ出力
が数桁小さいものでよく、加工領域の周辺に損傷がなく
加工の深さをレーザパルス数等の制御により数nm−数
百nmレベルで制御できる。また、低エネルギーによ
り、実質的に一段階工程で、無駄なレーザ出力を低減
し、高精度の加工を実現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の透明材料の加工装置を示す図。
【図2】 回帰光の有無とコヒーレント光パルス列発生
装置の出力の関係を示す図。
【符号の説明】 1:コヒーレント光パルス列発生装置 2:増幅光学媒体 3:励起手段 4:第一反射手段 5:第二反射手段 6:Qスイッチ手段 7:光学系 8:パターニング手段 9:焦点手段 10:非線形光学セル 11:被加工物、11a:入射側表面、11b:媒質側
表面 12:加工媒質 13:密封手段 14:媒質容器

Claims (28)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】透明材料の第一の表面に加工媒質を接触さ
    せ又は対向して配置し、第一の光波を当該透明材料の第
    二の表面から当該透明材料中に入射し、当該透明材料の
    当該第一の表面から照射させて当該加工媒質を照射し、
    第二の光波を当該加工媒質から放出させて当該透明材料
    の当該第一の表面から当該透明材料中に入射させて当該
    第一の光波と同一経路を逆行させることにより、当該第
    一の表面をエッチングする透明材料の加工方法。
  2. 【請求項2】第一の光波がコヒーレント光パルス列から
    なる請求項1記載の加工方法。
  3. 【請求項3】第二の光波が第一の光波に対する後方散乱
    光である請求項1又は2記載の加工方法。
  4. 【請求項4】第二の光波が第一の光波に対する誘導散乱
    光である請求項1乃至3記載の加工方法。
  5. 【請求項5】第二の光波が第一の光波に対し短いパルス
    からなる請求項3又は4記載の加工方法。
  6. 【請求項6】第二の光波が第一の光波に対し増大したピ
    ーク出力を有する請求項3乃至5記載の加工方法。
  7. 【請求項7】第二の光波が第一の光波に対し高調波であ
    る請求項3乃至6記載の加工方法。
  8. 【請求項8】第二の光波が第一の光波に対しストークス
    シフトしている3乃至6載の加工方法。
  9. 【請求項9】第二の光波が第一の光波を生成するための
    補助的励起を行う請求項1乃至8記載の加工方法。
  10. 【請求項10】加工媒質が第一の光波に対し誘導散乱活
    性である請求項1乃至9記載の加工方法。
  11. 【請求項11】加工媒質が第一の光波に対し光カー効果
    を有する請求項1乃至10記載の加工方法。
  12. 【請求項12】加工媒質が第一の光波に対し非線形屈折
    率を有する請求項1乃至11記載の加工方法。
  13. 【請求項13】加工媒質が第一の光波に対し誘導熱散乱
    活性である請求項1乃至12記載の加工方法。
  14. 【請求項14】加工媒質が第一の光波に対し吸収を有す
    る請求項1乃至13記載の加工方法。
  15. 【請求項15】加工媒質が第一の光波に対し吸収を有す
    る色素を含有している請求項1乃至14記載の加工方
    法。
  16. 【請求項16】第二の光波光が、それ自体で透明材料を
    エッチングするに必要なエネルギーを有しており、第二
    の光波の一光子吸収又は多光子吸収により、透明材料を
    エッチングする請求項1乃至15記載の加工方法。
  17. 【請求項17】第二の光波は、それ自体では透明材料を
    エッチングするに必要なエネルギーを有していないが、
    第一の光波との協働相互作用により透明材料をエッチン
    グするに必要なエネルギーを供給するに至り、第一の光
    波の第n番目のパルスに基づく第二の光波の第n番目の
    パルスと、第一の光波の当該第n番目のパルスとの協働
    作用により、透明材料の多光子吸収を生じさせ、透明材
    料をエッチングする請求項1乃至15記載の加工方法。
  18. 【請求項18】第二の光波が、それ自体で透明材料を改
    質するに必要なエネルギーを有しており、第一の光波の
    第n番目のパルスに基づく第二の光波の第n番目のパル
    スが、一光子吸収又は多光子吸収により透明材料を改質
    し、第一の光波の第n+1番目以降のパルスによりエッ
    チングする請求項1乃至15記載の加工方法。
  19. 【請求項19】第二の光波は、それ自体では透明材料を
    改質するに必要なエネルギーを有していないが、第一の
    光波との協働相互作用により透明材料を改質するに必要
    なエネルギーを供給するに至り、第一の光波の第n番目
    のパルスに基づく第二の光波の第n番目のパルスと、第
    一の光波の当該第n番目のパルスとの協働作用による多
    光子吸収により透明材料を改質し、第一の光波の第n+
    1番目以降のパルスによりエッチングする請求項1乃至
    15記載の加工方法。
  20. 【請求項20】改質が、新たな吸収帯の生成を伴う請求
    項18又は19記載の加工方法。
  21. 【請求項21】改質が、吸収端の長波長側へのシフトを
    伴う請求項18乃至20記載の加工方法。
  22. 【請求項22】改質が、共有結合の切断を伴う請求項1
    8乃至21記載の加工方法。
  23. 【請求項23】透明材料の加工が不要な部分から当該透
    明材料中にコヒーレント光を入射する工程の前に以下の
    a)乃至c)のうち少なくとも一の加工部分を特定する
    ための工程を有する透明材料の加工方法。a)当該透明
    材料の被加工面とは逆側の面に不透明部材からなる層を
    パターン形成する工程b)当該透明材料の被加工面に透
    明部材からなる層をパターン形成する工程c)当該透明
    材料の被加工面に、不透明部材からなる層をパターン形
    成する工程
  24. 【請求項24】コヒーレント光が透明材料の被加工部か
    ら射出して液体加工媒質を照射する工程と、当該液体加
    工媒質に層流、乱流若しくは上昇流を形成させる工程と
    を更に有する請求項23記載の加工方法。
  25. 【請求項25】以下のa)乃至f)のうち、少なくとも
    何れか一の工程を更に有する請求項22又は23記載の
    加工方法。a)当該加工媒質に接している当該透明材料
    を移動させる工程、b)当該加工媒質を流動させ、層流
    若しくは乱流又は上昇流を形成する工程、c)当該加工
    媒質を交換する工程、d)当該加工媒質が含有している
    色素を当該被加工部近傍に一定濃度で供給する工程、
    e)当該加工媒質が含有している色素の濃度変化に応じ
    て、当該コヒーレント光の照射強度、照射時間又は照射
    回数を変化させる工程、f)当該コヒーレント光を掃引
    する工程
  26. 【請求項26】光ファイバの一方の端面に薄膜をパター
    ン形成し、当該光ファイバを光導波路として他方の端面
    から一方の端面までレーザ光を導き、薄膜のパターンに
    対応して当該一方の端面をエッチングする請求項1乃至
    25記載の加工方法。
  27. 【請求項27】加工媒質とレーザ光照射手段とを有し、
    当該加工媒質に接して配置されている透明材料を介して
    レーザ光を当該加工媒質に照射し、当該加工媒質から放
    出される後方散乱光を利用して、当該透明材料の表面を
    加工する透明材料の加工装置。
  28. 【請求項28】以下のA)乃至C)の構成要素を有する
    と共に、a)乃至i)のうち、少なくとも何れか一の構
    成要素を更に有する透明材料の加工装置。A)コヒーレ
    ント光パルス発生装置、B)光学系、C)非線形光学媒
    質が注入されている媒質容器、a)当該透明材料の当該
    被加工面とは逆側の面に、不透明部材からなる層をパタ
    ーン形成する手段、b)当該透明材料の被加工面に、透
    明部材又は不透明部材からなる層をパターン形成する手
    段、c)当該液相物質を流動させ、層流又は乱流若しく
    は上昇流を形成する手段、d)当該加工媒質を交換する
    手段、e)当該加工媒質が含有している色素を一定濃度
    で当該透明材料の被加工部に供給する手段、f)当該透
    明材料の非加工部周辺を一定温度に保つ手段、g)エッ
    チングによって生成される副生成物を加工部分から除去
    する手段、h)当該透明材料の被加工部が当該加工媒質
    に接し又は浸漬されるように、当該透明材料を固定する
    手段、i)当該コヒーレント光を掃引する手段
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WO2004016387A1 (ja) * 2002-08-06 2004-02-26 Namiki Seimitsu Houseki Kabushiki Kaisha レーザ加工方法
JP2013539911A (ja) * 2010-09-21 2013-10-28 中国科学院理化技術研究所 レーザマイクロ・ナノ加工システム及び方法
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