JP2004063977A - 電界効果トランジスタ - Google Patents

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Masahiro Kobashi
小橋 昌浩
Akira Watanabe
渡邉 朗
Yumiko Kitakaze
北風 由美子
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Abstract

【課題】有機半導体を用いた電界効果トランジスタであって、より高い移動度と、高いon電流及び低いリーク電流と、高いon/off比とを有する電界効果トランジスタを提供する。
【解決手段】絶縁体層3と、この絶縁体層3により隔離されたゲート電極2及び有機半導体層4と、この有機半導体層4に接するように設けられたソース電極5及びドレイン電極6を、絶縁性支持基板上1に有する電界効果トランジスタ。絶縁体層3の真密度と嵩密度の比率[真密度/嵩密度]を3以下、又は嵩密度を0.28〜4g/cmとすることにより、リーク電流を抑制し、より高い移動度と、高いon電流と、高いon/off比とを実現する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機半導体を用いた電界効果トランジスタに関する。
【0002】
【従来の技術】
電界効果トランジスタは、バイポーラトランジスタと並んで重要なスイッチ、増幅素子として広く利用されている。電界効果トランジスタは、半導体材料にソース電極及びドレイン電極と、絶縁体層を介してゲート電極を設けた構造を有する。電界効果トランジスタの動作特性は、用いられる半導体のキャリア移動度μ、電気伝導度σ、絶縁層の静電容量Ci、素子の構成(ソース電極−ドレイン電極間距離L及び幅W、絶縁層の膜厚d等)により決まるが、この中で、半導体材料の特性としては、高い移動度(μ)を有するものが良好な特性を示すことになる。
【0003】
現在、半導体材料としてはシリコンが広く用いられている。シリコンに代表される無機半導体は、製造時に300℃以上の高温で処理する必要があることから、基板にプラスチック基板やフィルムを用いることが難しく、かつ製造に多くのエネルギーを必要とするという欠点がある。また、真空での素子作製プロセスを経るため、製造ラインに高価な設備を必要とし、高コストになるという欠点もある。
【0004】
これに対して、有機半導体を用いたトランジスタは、その殆どが無機半導体より低温プロセスで製造することができるため、基板としてプラスチック基板やフィルムを用いることができ、軽量で壊れにくい素子を作製することができる。また、溶液の塗布や印刷法を用いた素子作製が可能なものもあり、大面積の素子を低コストで製造することが可能である。更に、材料のバリエーションが豊富であり、分子構造を変化させることにより容易に材料特性を根本的に変化させることが可能であるため、異なる機能を組み合わせることで、無機半導体では不可能な機能、素子を実現することも可能である。
【0005】
半導体として有機半導体を用いたトランジスタについて、特開昭61−202467号公報には、導電性高分子、共役高分子を利用したものが記載され、特許2984370号公報には、低分子化合物を利用したものが記載されている。
【0006】
従来の半導体として有機半導体を用いたトランジスタの代表的な構造を図1〜3に示す。
【0007】
図1の電界効果トランジスタにあっては、絶縁性支持基板1上にゲート電極2が設けられ、更にこの上に絶縁体層3及び有機半導体層4が設けられている。この有機半導体層4に接するように、ソース電極5とドレイン電極6が絶縁体層3上に設けられている。この電界効果トランジスタはボトムゲート・ボトムコンタクト型と称される。
【0008】
図2の電界効果トランジスタにあっては、絶縁体層3上の有機半導体層4上にソース電極5とドレイン電極6が設けられている点が図1に示す電界効果トランジスタと異なり、その他は同様の構成とされている。この電界効果トランジスタはボトムゲート・トップコンタクト型と称される。
【0009】
図3に示す電界効果トランジスタにあっては、絶縁性支持基板1上にソース電極5とドレイン電極6が設けられ、絶縁性支持基板1上に有機半導体層4及び絶縁体層3が積層され、絶縁体層3上にゲート電極2が設けられている。この電界効果トランジスタは、トップゲート・ボトムコンタクト型と称される。
【0010】
このような電界効果トランジスタでは、ゲート電極2に電圧が印加されると、有機半導体層4と絶縁体層3の界面近傍における有機半導体層のキャリア密度を変化させて、ソース−ドレイン電極5,6間に流れる電流量を変化させる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
このような種々の構造のトランジスタにおいて種々の有機半導体を用いて活発に研究がなされているが、有機電界効果トランジスタに適した絶縁体層に関しての研究は決して充分に行われているわけではなく、絶縁体層の不充分な物性に由来すると思われる有機電界効果トランジスタとしての性能(移動度、リーク電流値、on/off比等)が一定しないという問題がある。
【0012】
本発明は上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、より高い移動度と、高いon電流及び低いリーク電流と、高いon/off比とを達成することができ、かつこれらのトランジスタ性能が安定した有機トランジスタを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1の電界効果トランジスタは、絶縁体層と、該絶縁体層により隔離されたゲート電極及び有機半導体層と、該有機半導体層に接するように設けられたソース電極及びドレイン電極と、絶縁性支持基板とを有する電界効果トランジスタにおいて、前記絶縁体層の真密度と嵩密度の比率[真密度/嵩密度]が3以下であることを特徴とする。
【0014】
請求項5の電界効果トランジスタは、絶縁体層と、該絶縁体層により隔離されたゲート電極及び有機半導体層と、該有機半導体層に接するように設けられたソース電極及びドレイン電極と、絶縁性支持基板とを有する電界効果トランジスタにおいて、前記絶縁体層の嵩密度が0.28〜4g/cmであることを特徴とする。
【0015】
本発明者らは、従来の電界効果トランジスタにおけるトランジスタ性能の不安定性について鋭意検討した結果、有機半導体層に接する絶縁体層の密度がリーク電流の量に影響し、絶縁体層の真密度と嵩密度の比率或いは嵩密度を特定範囲とすることで、高い移動度、高いon電流及び低いリーク電流値と、高いon/off比が達成できること見出した。
【0016】
有機トランジスタがフレキシブルディスプレイにおけるスイッチング素子として用いられることがBell Lab. Lucent Technologies, PNAS., 98, 4835に開示されている。この有機トランジスタの場合、絶縁体層の密度の影響はより重要な問題となると考えられるが、従来、絶縁体層の密度、更には絶縁体層の密度に影響を与える成膜法についても十分な検討がなされていない。
【0017】
本発明の電界効果トランジスタにあっては、絶縁体層の真密度と嵩密度の比率[真密度/嵩密度]を3以下又は嵩密度を0.28〜4g/cmとすることにより、リーク電流を抑制して、高い移動度と高いon電流及び低いリーク電流、高いon/off比が達成される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の電界効果トランジスタの実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
本発明の電界効果トランジスタは、絶縁体層と、この絶縁体層により隔離されたゲート電極及び有機半導体層と、この有機半導体層に接するように設けられたソース電極及びドレイン電極とを、絶縁性支持基板上に有するものであり、その構造には特に制限はなく、図1に示すボトムゲート・ボトムコンタクト型、図2に示すボトムゲート・トップコンタクト型、図3に示すトップゲート・ボトムコンタクト型などが挙げられる。
【0020】
本発明においては、このような電界効果トランジスタにおいて、絶縁体層3の真密度と嵩密度の比率[真密度/嵩密度]を3以下、好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.0以下となるように、或いは、嵩密度が0.28〜4g/cm、好ましくは0.3〜3g/cm、更に好ましくは0.5〜2g/cmとなるように絶縁体層3を成膜する。なお、絶縁体層3の真密度は通常0.85〜10g/cm、好ましくは1.0〜5g/cm、更に好ましくは1.5〜3.4g/cmであることが好ましい。
【0021】
ここで、真密度とは、絶縁体層を非晶質として仮定した場合、絶縁体層を構成する絶縁体の種類に固有の値であり、コンサイス・エンサイクロペディア・オブ・ポリマーサイエンスやポリマーハンドブック等の文献値を採用でき、以下に代表的な値を示す。
【0022】
ポリスチレン        1.04〜1.08g/cm
エポキシ樹脂        1.1〜1.4g/cm
不飽和ポリエステル樹脂   1.1〜1.4g/cm
ポリメチルメタクリレート  1.16〜1.20g/cm
ポリカーボネート      1.20〜1.22g/cm
ポリウレタン        1.20〜1.26g/cm
ポリビニルアルコール    1.21〜1.31g/cm
ポリエステル−エポキシ樹脂 1.8〜2.3g/cm
なお、結晶性の絶縁体層については、その結晶化度に応じて真密度は大きくなる。
【0023】
真密度の文献値がない場合には、絶縁体層を一旦溶解させた後、急冷して固化させた時の密度を、密度勾配管等により測定することによって求めることもできる。
【0024】
一方、嵩密度とは、形成された絶縁体層自体の、その状態での実際の密度であり、絶縁体層の重量をその体積で除した値である。また、絶縁体層の体積が特定しにくい場合には、密度勾配管を用い、絶縁体層の細孔内に含浸しない溶媒を用いて嵩密度を測定することができる。
【0025】
真密度と嵩密度の比率[真密度/嵩密度]とは、絶縁体層の緻密さを表す値であり、この値が小さい程、絶縁体層が緻密であることを示している。
【0026】
作製されたトランジスタ中の絶縁体層の嵩密度又は真密度を直接測定することが困難な場合には、絶縁体層が剥離し易い基体上に、同一条件で絶縁体層を成膜し、次いでこの基体から剥離した絶縁膜の密度を測定することにより求めても良い。
【0027】
本発明において、絶縁体層を特定の密度となるよう成膜するには、例えば絶縁体層を形成する絶縁体の種類や絶縁体層の成膜速度、膜厚等の条件を適宜設定すれば良い。例えば、次のような方法を採用することができる。
【0028】
ゲート電極がコートされた絶縁性支持基板上に溶媒に溶解させた熱硬化性樹脂モノマー等を塗布し、乾燥させて溶媒を揮発させる際に細孔を空けずに熱硬化樹脂が形成できるような比較的遅い加熱速度で加熱し硬化させることにより、緻密な絶縁体層を形成することができる。一方、加熱速度が速い場合は溶媒を揮発させる際に細孔が空いてしまい、嵩密度が小さい絶縁体が形成される。
【0029】
このように絶縁体層の真密度と嵩密度の比率[真密度/嵩密度]、及び/又は嵩密度を特定の範囲とすることで、リーク電流量の増大を防ぎ、高い移動度と、高いon電流、高いon/off比を達成することが可能となる。
【0030】
本発明においては、絶縁体層の真密度と嵩密度の比率[真密度/嵩密度]、及び/又は嵩密度を上記特定の範囲とすること以外は、電界効果トランジスタの構成材料自体には特に制限はなく、従来電界効果トランジスタに適用されているものをいずれも好適に用いることができる。
【0031】
本発明においては、絶縁体層の真密度及び/又は嵩密度に着目したが、電界効果トランジスタにおいては、絶縁体層におけるピンホールもリーク電流に重要な影響を与えると考えられる。従って、例えば数Å〜数10Åの大きさのピンホールを絶縁体層中でできるだけ低減させるよう製膜することが理想である。この絶縁体層中のピンホールの影響は、絶縁破壊電場強度やBET吸着法等で特定することが可能である。
【0032】
絶縁性支持基板の材料としては、絶縁性を示し電界効果トランジスタ及びその上に作成される表示素子、表示パネル等を支持できるものであれば良く、公知のもの、例えばガラス、プラスチック、石英等をいずれでも用いることができ、より具体的には、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、アモルファスポリオレフィン、エポキシ樹脂、ガラス等が挙げられる。中でもポリマー基板が好ましく、強度の点ではポリエステル又はポリカーボネートが好ましく、特にはポリエチレンテレフタレート等のポリエステルが好ましい。絶縁性支持基板の厚みは0.05 mmから2 mmが好ましく、0.1 mmから1 mmが更に好ましい。
【0033】
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の構成材料は、導電性を示すものであれば良く、公知のものをいずれでも用いることができ、例えば白金、金、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属、InO、SnO、ITO等の導電性酸化物、樟脳スルホン酸がドープされたポリアニリン、パラトルエンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェン等のドープされ良好な電気伝導度を示す導電性高分子、カーボンブラック、金属微粒子、グラファイト粉等がバインダーに分散されてなり良好な電気伝導度を示す導電性複合材料などが挙げられる。
【0034】
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の形成法としては、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、ゾルゲル法等が挙げられ、更にそのパターニング方法としては、フォトレジストのパターニングとエッチング液や反応性のプラズマでのエッチングを組み合わせたフォトリソグラフィー法、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法及びこれらの手法を複数組み合わせた手法などが挙げられる。また、レーザーや電子線等のエネルギー線を照射して材料を除去することや材料の導電性を変化させることにより、直接パターンを作製することも可能である。
【0035】
これらゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の厚みは0.01μmから2μmが好ましく、0.02μmから1μmが更に好ましい。
【0036】
なお、ソース電極−ドレイン電極間距離(チャンネル長さL)は通常100μm以下、好ましくは50μm以下であり、チャンネル幅Wは通常2000μm以下、好ましくは500μm以下であり、L/Wは通常0.1以下、好ましくは0.05以下である。
【0037】
絶縁層の絶縁体としては、ゲート電極への電流の漏れを防ぎかつ低ゲート電圧で電界効果トランジスタを駆動させることができるように絶縁性に優れかつ比較的大きな比誘電率を持つものであれば公知のものをいずれでも用いることができるが、中でも有機材料が好ましく、例えばポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のポリマー及びこれらを組み合わせた共重合体等が挙げられる。その他、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物、窒化珪素等の窒化物、SrTiO、BaTiO等の強誘電性酸化物、あるいは、上記酸化物や窒化物、強誘電性酸化物等の粒子を分散させたポリマー膜等が挙げられる。中でもエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂が好ましい。また、絶縁体の前駆物質としてモノマーを塗布した後、光を照射して硬化させることにより絶縁体を形成する光硬化樹脂を用いると、絶縁体層の密度を本発明の範囲に調節することが容易である点において好ましい。
【0038】
絶縁体層の形成方法としては、スピンコートやブレードコートなどの塗布法、蒸着法、スパッタ法、スクリーン印刷やインクジェット等の印刷法等、材料の特性に合わせた形成方法を採用することができる。
【0039】
このようにして形成される絶縁体層は、前述の如く、ゲート電極への漏れ電流、電界効果トランジスタの低ゲート電圧駆動に関係することから、室温での電気伝導度が10−12 S/cm以下、更には10−14 S/cm以下、比誘電率が2.0以上、更には2.5以上を示すことが好ましい。
【0040】
このような絶縁体層の厚みは0.1μmから4μmが好ましく、0.2μmから2μmが更に好ましい。
【0041】
有機半導体層を形成する有機半導体は特に限定されず、π共役系の低分子及び高分子であれば公知のものをいずれでも用いることができ、例えばペンタセン、オリゴチオフェン、置換基を有するオリゴチオフェン、ビスジチエノチオフェン、置換基を有するジアルキルアントラジチオフェン、金属フタロシアニン、ベンゾポルフィリン、フッ素置換された銅フタロシアニン、N, N’−ジアルキル−ナフタレン−1, 4, 5, 8−テトラカルボン酸ジイミド置換体、3, 4, 9, 10−ペリレンテトラカルボン酸ジアンハイドライド、N, N’−ジアルキル−3, 4, 9, 10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、フラーレンなどのπ共役系低分子やレジオレギュラーポリ(3−ヘキシルチオフェン)に代表されるレジオレギュラーポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ−9, 9’−ジアルキルフルオレンコビチオフェンなどのπ共役系共重合体等のπ共役系高分子が挙げられる。
【0042】
これらπ共役系低分子、高分子のなかでも、有機半導体層を形成した場合、そのソース電極−ドレイン電極方向の電気伝導度が10−4 S/cm以下、10−12 S/cm以上を示すものが好ましく、特に10−6 S/cm以下、10−11 S/cm以上、とりわけ10−7 S/cm以下、10−10 S/cm以上を示すものがより好ましい。更にまた、これらπ共役系低分子、高分子のなかでも、有機半導体層を形成した場合に電界効果移動度とソース電極−ドレイン電極方向の電気伝導度、及び電荷素量から求めたキャリア密度が10 cm−3以上、1018 cm−3以下を示すものが好ましく、特に10 cm−3以上、1017 cm−3以下を示すものがより好ましい。また、これらπ共役系低分子、高分子のなかでも、有機半導体層を形成した場合に電界効果移動度の室温以下での温度依存性から求められる電荷移動に要する活性化エネルギーが0.2eV以下を示すものが好ましく、特に0.1eV以下を示すものがより好ましい。
【0043】
更にまた、これらπ共役系低分子のなかでも分子長が40Å以下のものにおいては、該電界効果トランジスタに用いた絶縁体層と同じ絶縁体層上に有機半導体層を形成した場合、層表面に対する法線に対して60°の角度から入射光を入れて測定した偏光吸収において、これらπ共役系低分子の分子軸方向の遷移モーメントに由来する吸収ピーク強度のp偏光成分とs偏光成分の比であるp偏光成分/s偏光成分が1.5以上、更には2.0以上、特には3.0以上を示す特性を持つものが好ましい。
【0044】
また一方で、分子長が40Åより大きいπ共役系高分子においては、該電界効果トランジスタに用いた絶縁体層と同じ絶縁体層上に有機半導体層を形成した場合、層表面に垂直方向から入射光を入れて測定した偏光吸収において、これらπ共役系高分子の主鎖方向の遷移モーメントに由来する吸収ピーク強度のソース電極−ドレイン電極方向成分とそれに垂直方向成分の比であるソース電極−ドレイン電極方向成分/垂直方向成分が3.5以上、更には4.5以上、特には5.0以上を示す特性を持つものが好ましい。
【0045】
更にまた、これらπ共役系低分子、高分子のなかでも、該電界効果トランジスタに用いた絶縁体層と同じ絶縁体層上に有機半導体層を形成した場合、最隣接分子或いは高分子間の距離が3.9Å以下、更には3.85Å以下、特には3.8Å以下である特性を示すものが好ましい。
【0046】
このような有機半導体層の膜厚は1 nmから10 μmが好ましく、10 nmから500nmが更に好ましい。
【0047】
これらの有機半導体を用いた有機半導体層を形成する方法としては、低分子有機半導体の場合には、真空蒸着により絶縁体層又は絶縁性支持基板上に蒸着して形成する方法、溶媒に溶解してキャスト、ディップ、スピンコートなどにより塗布して形成する方法などが挙げられる。高分子有機半導体の場合は、溶媒に溶解してキャスト、ディップ、スピンコートなどにより塗布して形成する方法などが挙げられる。また、目的とする低分子前駆体或いは目的とする高分子前駆体を用いて前述の適切な方法により層形成し、その後に加熱処理等により目的とする有機半導体層に変換する方法も挙げられる。
【0048】
本発明の電界効果トランジスタの基本的な構造は、絶縁体層と、この絶縁体層により隔離されたゲート電極及び有機半導体層と、この有機半導体層に接するように設けられたソース電極及びドレイン電極とを絶縁性支持基板上に有するものであり、その具体的な構造としては図1〜3に示すようなものが挙げられるが、本発明の電界効果トランジスタは、何ら図1〜3に示す構造の電界効果トランジスタに限定されず、更に図1〜3に示される層以外の層が形成されていても良い。
【0049】
例えば、図1,2に示す電界効果トランジスタのように、有機半導体層が表出している電界効果トランジスタにあっては、有機半導体に対する外気の影響を最小限にするために、更にこの上に保護膜を形成しても良く、この場合、保護膜の材料としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコール等のポリマーや酸化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物や窒化物等が挙げられる。保護膜の形成方法としては塗布法や真空蒸着法などが挙げられる。
【0050】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の電界効果トランジスタによれば、絶縁体層の真密度と嵩密度の比率[真密度/嵩密度]、又は嵩密度を特定の範囲に制御することにより、リーク電流を抑制し、より高い移動度と、高いon電流と、高いon/off比とを有する電界効果トランジスタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電界効果トランジスタの構造例を示す断面図である。
【図2】電界効果トランジスタの構造例を示す断面図である。
【図3】電界効果トランジスタの構造例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 絶縁性支持基板
2 ゲート電極
3 絶縁体層
4 有機半導体層
5 ソース電極
6 ドレイン電極
7 界面

Claims (13)

  1. 絶縁体層と、該絶縁体層により隔離されたゲート電極及び有機半導体層と、該有機半導体層に接するように設けられたソース電極及びドレイン電極と、絶縁性支持基板とを有する電界効果トランジスタにおいて、
    前記絶縁体層の真密度と嵩密度の比率[真密度/嵩密度]が3以下であることを特徴とする電界効果トランジスタ。
  2. 請求項1において、前記絶縁体層の真密度と嵩密度の比率[真密度/嵩密度]が2.5以下であることを特徴とする電界効果トランジスタ。
  3. 請求項1又は2において、前記絶縁体層の真密度が0.85〜10g/cmであることを特徴とする電界効果トランジスタ。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、前記絶縁体層の嵩密度が0.28〜4g/cmであることを特徴とする電界効果トランジスタ。
  5. 絶縁体層と、該絶縁体層により隔離されたゲート電極及び有機半導体層と、該有機半導体層に接するように設けられたソース電極及びドレイン電極と、絶縁性支持基板とを有する電界効果トランジスタにおいて、
    前記絶縁体層の嵩密度が0.28〜4g/cmであることを特徴とする電界効果トランジスタ。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項において、前記絶縁体層がポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、エポキシ樹脂、及びフェノール樹脂よりなる群から選択されるポリマー或いはこれらを組み合わせた共重合体よりなることを特徴とする電界効果トランジスタ。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項において、前記ゲート電極が前記絶縁性支持基板上に設けられており、該ゲート電極上に絶縁体層を介して有機半導体層が設けられていることを特徴とする電界効果トランジスタ。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項において、前記ソース電極及びドレイン電極が前記絶縁体層に接していることを特徴とする電界効果トランジスタ。
  9. 請求項1ないし7のいずれか1項において、前記ソース電極及びドレイン電極が前記有機半導体層上に設けられていることを特徴とする電界効果トランジスタ。
  10. 請求項1ないし6のいずれか1項において、前記ソース電極及びドレイン電極が前記絶縁性支持基板上に設けられていることを特徴とする電界効果トランジスタ。
  11. 請求項1ないし10のいずれか1項において、前記絶縁性支持基板が、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、アモスファスポリオレフィン、エポキシ樹脂、及びポリエーテルスルフォンよりなる群から選択されるプラスチック基板であることを特徴とする電界効果トランジスタ。
  12. 請求項1ないし11のいずれか1項において、前記絶縁体層における比誘電率が2.0以上であることを特徴とする電界効果トランジスタ。
  13. 請求項1ないし12のいずれか1項において、前記絶縁体層における電気伝導度が10−12S/cm以下であることを特徴とする電界効果トランジスタ。
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