JP2004061229A - 感染症検査装置、検査方法、及び感染検査用マイクロファブリケーション - Google Patents
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Abstract
【課題】体液中の微量な病原体関連物質を迅速に検出することによって、on−site測定乃至は検査プラットフォームとしての汎用性を高める。
【解決手段】基盤上に、体液を保持する単数又は複数の検体保持部と、前記検体保持部から流出する狭隘な流路と、前記流路からの液体を回収する回収部を有するマイクロファブリケーションと、前記マイクロファブリケーションの前記流路レーザ光を照射するレーザ照射装置と受光装置からなり、前記流路の幅が前記流路を透過するレーザ光束の直径より小さいものである、前記体液中の異物を検出する迅速感染検査装置、迅速感染検査方法、及び迅速感染検査用マイクロファブリケーション。
【効果】体液中の微量病原体関連物質を高感度且つ迅速に検出することが出来る。
【選択図】 図1
【解決手段】基盤上に、体液を保持する単数又は複数の検体保持部と、前記検体保持部から流出する狭隘な流路と、前記流路からの液体を回収する回収部を有するマイクロファブリケーションと、前記マイクロファブリケーションの前記流路レーザ光を照射するレーザ照射装置と受光装置からなり、前記流路の幅が前記流路を透過するレーザ光束の直径より小さいものである、前記体液中の異物を検出する迅速感染検査装置、迅速感染検査方法、及び迅速感染検査用マイクロファブリケーション。
【効果】体液中の微量病原体関連物質を高感度且つ迅速に検出することが出来る。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウィルス等の病原体の高感度且つ迅速な検査装置及び検査方法に関する。好適には、マイクロファブリケーションにレーザ光を照射するウィルス等の病原体の高感度且つ迅速な検査装置及び検査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
二重鎖核酸内に挿入して初めて蛍光物質乃至は発光物質の性質を示すインターカレータというものがある。従来、当該インターカレータにおいて代表的なものは、例えばEtBr(Ethidium Bromide、励起波長526 nm、蛍光波長604 nm、橙色光)であった。しかしEtBrは、二重鎖核酸に挿入していなくとも微弱な発光をするため、S/N(Signal / Noise)が悪いという問題があった。その後EtBr以外にHoechst33258(励起波長346 nm 、蛍光波長460 nm、青色光)乃至はYOYO−1(励起波長491 nm、蛍光波長509 nm、緑色光)等が上市されたが、例えばHoechst33258は、細胞を固定化するなど処理が必要であり、またYOYO−1は、励起波長と蛍光波長が近接しているため、散乱光を避ける手段を設けなければならない問題がある。また蛍光波長が赤色領域のインターカレータも少なくないため、体液の内例えば血液中では、蛍光波長をよく選択しないと蛍光測定そのものができない。
【0003】
輓近、微量な核酸検出することに関する幾つかの特許が公開されている。
特開平6−261795は、ポリヌクレオチド検出法を示している。当該発明によると、高感度で精度の高い定量的なポリヌクレオチドの検出法を提供する。即ち蛍光体が2分子ずつ結合した5種の塩基長の短い蛍光標識プローブと標的ポリヌクレオチド鎖を二重鎖結合条件下で反応させ、反応液を電気泳動担体の試料添加部に添加し電気泳動すると分子サイズの小さな未反応蛍光標識プローブは泳動され除かれる。蛍光標識プローブと標的ポリヌクレオチド鎖の複合体は分子サイズが大きく、試料添加部付近に残ると同時に濃縮される。試料添加部を加熱し、標的ポリヌクレオチド鎖に結合していた蛍光標識プローブが解離し泳動し、蛍光標識プローブが電気泳動担体の一定部位を照射するレーザ光を横切り螢光を発して検出器で検出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
例えば緊急医療の現場では、急患がHCV(ヒトC型肝炎ウィルス)、HIV(エイズ・ウィルス)乃至は結核菌、レジオネラ菌その他感染症等に罹患していた場合、緊急医療作業従事者に感染の危険性がある。当該急患が感染症であるか緊急医療作業従事者が知ることは、緊急医療現場において少なからず潜在的需要が大きい。しかし、従来法は検査に多大な時間がかかり、またサンプル量及び試薬も大量に必要であったことから、急患に対して感染症の検査をすることは困難である。この為、緊急医療において、作業従事者が感染の危険性を知ることは稀であった。また、通常医療においても、少量のサンプルによる、迅速且つ低侵襲な感染検査法が望まれている。
そこで本発明により、少量な体液を用いる、高感度且つ迅速な感染検査法を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基盤上に、体液を保持する単数又は複数の検体保持部と、前記検体保持部から流出する狭隘な流路と、前記流路からの液体を回収する回収部を有するマイクロファブリケーションを用いるとともに、前記マイクロファブリケーションの前記流路レーザ光を照射するレーザ照射装置と受光装置を用い、前記流路の幅が前記流路を透過するレーザ光束の直径より小さくすることによって、前記体液中の異物を高感度且つ迅速に検出する。前記流路の幅を前記流路を透過するレーザ光束の直径より小さくすることによって、流路を通過するウイルス等の病原体関連物質を高効率に検出することが出来る。
【0006】
前記病原体関連物質より特異的に生ずる蛍光または発光が、前記病原体関連物質が短周期レーザを照射されたことに起因するフォトン・バースト(photon−burst)であることにより、より高感度且つ迅速に検査することが出来る。
ここで、前記基盤の表面を疎水性とし、前記検体保持部、前記流路と、前記回収部の表面を親水性とすることで、体液等の外部への湿潤を防止することができる。
【0007】
前記マイクロファブリケーションは、前記検体保持部及び前記流路間に電位を印加する電極を有し、病原体関連物質を電気泳動させるものでもよく、また、前記マイクロファブリケーションを保持するステージに、前記マイクロファブリケーションの傾斜角を調整する装置を設けることにより体液等を重力で移動させるものでも良い。
【0008】
前記マイクロファブリケーションが蓋を有しないとすることで、検査の作業性を向上させることが出来る。
以下、上記及びその他の本発明の新規な特徴と効果について、図面を参酌して説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
図1に本発明の一実施例におけるシステム全体の構成を示す。
図1の感染症検査装置は、1分子以上の病原体関連物質を捉えるため、共焦点顕微鏡ステージ1上に展開している。当該装置は上記マイクロファブリケーション2を挿入する際、当該共焦点顕微鏡の光軸3上に当該マイクロファブリケーション2を固定するように当該共焦点顕微鏡ステージ1には溝4が掘ってある。即ち上記流路5の中央に当該顕微鏡の光軸3が一致するように固定する。ここで、上記流路5の幅および長さは、照射されるレーザ光の光束の直径より短くなっている。当該共焦点顕微鏡は、闇箱9等を用いて観察系を光学的に遮蔽する。
【0010】
患者の体液に病原体特異的な試薬を加えた溶液をマイクロファブリケーション2に滴下する。検体保持部7に検体と試薬を滴下した後、検体保持部7及び流路5末端の間に電極6にポテンショスタット8を用いて電位印加する。上記固定したマイクロファブリケーション2は、共焦点顕微鏡を用いて蛍光を検出する。核酸乃至は細菌は負に帯電しているため、上記検体保持部7上の上記電極6を−極に、上記流路5上の上記電極6を+極に電位を印加することによって、上記病原体関連物質を上記共焦点顕微鏡の上記光軸3に向けて誘導する。当該共焦点顕微鏡上で高周期レーザ10を上記病原体関連物質及び当該病原体特異的な試薬に照射する。そこで発生したフォトン・バースト蛍光をCCDカメラ11で検出し、画像処理装置12によってコンピュータ13で制御することもできる。病原体関連物質が存在すれば、発光が生じるようになっている。これらの情報は速やかに緊急医療作業従事者にフィードバックされ、感染の危険性等を知らせることになる。また通常医療でも、低侵襲且つon−siteでの感染症検査が迅速にできる点において、非常に医療活動に対して有望である。
図2に本発明の一実施例におけるマイクロファブリケーション2の一例を示す。
【0011】
水との接触角が110°以上であり且つ実質的に平面で無色透明の基盤14上に、水との接触角が30°以下であり且つ体液を滴下する検体保持部7と、水との接触角が30°以下であり且つ狭隘な流路5と、水との接触角が30°以下であり且つ上記検体保持部7に滴下した液体を回収する回収部を有する、マイクロファブリケーション2である。但し上記マイクロファブリケーション2は、水との接触角が110°以上であり且つ実質的に平面な基盤14上であり、以下の式で例示される化合物が結合しており、大きさが少なくとも26 mm×76 mm以下である。
【0012】
【化1】
【0013】
また、例えば上記検体保持部7及び回収部15は、500 mL程度の液体を保持できる。これにより、検体保持部7に滴下される、検体100 mL、これと同量の上記ウィルス溶解剤、上記相補的な核酸、及びインターカレータを確実に保持できる。上記電極6は、−極を上記検体保持部7に、+極を上記流路5の回収部側末端に配置する。電極6の作製は後述する。そして検出は、当該両極間に共焦点顕微鏡の光軸3を合わせる。更に上記流路5は上記病原体関連物質が微小なため、幅、長さ及び上記顕微鏡の視野に制限がある。即ち当該共焦点顕微鏡に上記CCDカメラ11を結合し、当該顕微鏡の視野に狭隘な流路5が収まらなければならない。例えばウィルスから細菌まで一つのマイクロファブリケーション2で対応しようとすると、幅50mm以下、長さ50 mm程度及び視野×400以上が必要である(Steven A. Soper, Harvey L. Nutter, Richard A. Keller, Lloyd M. Davis, and E.Broocks Shera: ”The Photophysical Constants of Several Fluorescent DyesPertaining to Ultrasensitive Fluorescent Spectroscopy”, photochemistry and Photobiology, Vol. 57, No. 6, pp. 972−977 (1993) 及びRichard A. Keller, W. Patrick Ambrose, Peter M. Goodwin, James H. Jett, John C. Martin,and Ming Wu: ”Ssingle−Molecule Fluorescence Analysis in Solution”, Applied Spectroscopy, Vol.50, No. 7, pp.12A−32A (1996))。
【0014】
図3に検査作業全体のフローを示す。
急患が運ばれてくる。緊急医療作業従事者は、特に出血を伴う場合は、危険度に応じてHCV乃至はHIV等に特異的な核酸断片をそれぞれ用意する。そしてマイクロファブリケーション2を当該共焦点顕微鏡に置載する。急患の血液を100 mL程度採取し、上記マイクロファブリケーション2の検体保持部7に検体及び試薬を滴下し、ピペッティングを行なう。望ましくは、ここで数分放置できるとよい。これによりHCV用試薬は特異的に蛍光物質を内包した二重鎖を形成する。茲で上記検体保持部7及び流路5末端間に電極6を電位印加する。因みに核酸乃至は細菌は負に帯電しているので、検体保持部7には−極、流路5末端には+極を印加すると、流路5上を検体保持部7から回収部15に向かって核酸が移動する。また当該マイクロファブリケーション2は、流路5中央に共焦点顕微鏡の光軸3が合うように固定するため、共焦点顕微鏡のステージ上に溝4が掘ってある。
【0015】
次に闇箱9の蓋を閉め、光学的に遮蔽する。そして短周期レーザ10を上記流路5中の反応物に照射し、発生した蛍光をCCDカメラ11で長周期積算する。その結果、病原体関連物質が核酸の場合、発光点が観察されれば、ウィルスに感染している可能性を示す。この情報は、緊急医療作業従事者に直ちにフィードバックされ、緊急医療に役立てることができる。
【0016】
また病原体関連物質が細菌と疑われる場合は、危険度に応じて結核菌乃至はレジオネラ菌に特異的な蛍光標識抗体をそれぞれ用意する。特に結核菌は空気感染するので非常に注意を要する。マイクロファブリケーション2を共焦点顕微鏡に置載する。急患の喀痰を100 mL程度採取し、上記マイクロファブリケーション2の検体保持部7に検体及び試薬を滴下し、ピペッティングを行なう。望ましくは、ここで数分放置できるとよい。先ず細菌表面抗体のFc部分に蛍光標識をした試薬を滴下し、ピペッティングを行なう。望ましくはここで数分放置できるとよい。これにより蛍光標識した細菌を形成する。茲で上記検体保持部7及び流路5末端間に電極6を電位印加する。因みに核酸乃至は細菌は負に帯電しているので、検体保持部7には−極、流路5末端には+極を印加すると、流路5上を検体保持部7から回収部に向かって核酸が移動する。また当該マイクロファブリケーション2は、流路5中央に共焦点顕微鏡の光軸3が合うように固定するため、共焦点顕微鏡のステージ上に溝4が掘ってある。
【0017】
次に闇箱9の蓋を閉め、光学的に遮蔽する。そしてレーザ10を上記流路5中の病原体関連物質に照射し、発生した蛍光をCCDカメラ11で積算する。その結果、病原体関連物質が細菌の場合、大きな発光点が観察されれば、細菌に感染している可能性を示す。この情報は、緊急医療作業従事者に直ちにフィードバックされ、緊急医療に役立てることができる。
【0018】
図4に、急患がウィルスに感染していた場合の本発明による検出法の一例を説明するフローを示す。
急患がウィルスに感染している虞れがある場合、危険度に応じてHCV及びHIVの核酸に相補的な試薬キットを用意しておく。
【0019】
急患がHCV乃至はHIVを有していない場合、HCV乃至はHIVの核酸16に特異的な核酸断片が二重鎖を形成しない。従ってインターカレータ17が挿入しないため、20 Hzのレーザ10を照射してもフォトン・バースト蛍光を放出しない。よって蛍光は起こらない。この情報は、直ちに緊急医療作業従事者にフィードバックされる。緊急医療作業従事者は、結果を診て擬陽性乃至は擬陰性を疑う場合、もう一度検査を行なう。
【0020】
一方、急患がHCV乃至はHIVを有していた場合、HCV乃至はHIVの核酸に特異的な核酸断片が二重鎖18を形成し、インターカレータ17が挿入する。インターカレータ17は、二重鎖18の外では蛍光を示さないが、二重鎖の中で初めて蛍光を示す物質19である。そこに20 Hzのレーザ10を照射するとフォトン・バースト蛍光を放出するので、CCDカメラ11を用いて2 Hzで長周期積算する。この情報は、直ちに緊急医療作業従事者にフィードバックされる。緊急医療作業従事者は、結果を診て擬陽性乃至は擬陰性を疑う場合、もう一度検査を行なう。
【0021】
図5に、急患が細菌に感染していた場合の本発明による検出法の一例を説明するフローを示す。
急患が細菌に感染している畏れがある場合、危険度に応じて結核菌やレジオネラ菌の細菌表面タンパク質乃至は糖鎖に対するポリクローナル抗体20のFc部分に蛍光物質21を結合させた試薬キットを用意しておく。当該ポリクローナル抗体は、蛍光物質とともに細菌表面に多数結合する。
【0022】
急患が細菌に感染していない場合、20 Hzのレーザ10を照射すると、遊離の当該ポリクローナル抗体に結合した蛍光物質により、フォトン・バースト蛍光を放出するので、CCDカメラ11を用いて2 Hzで積算する。しかし細菌がいないため、細菌に結合した巨大な発光体を観察できない。更に上記蛍光標識抗体が非特異吸着を起こして発光する。また抗体の蛍光波長も単一である。この情報は、直ちに緊急医療作業従事者にフィードバックされる。緊急医療作業従事者は、結果を診て擬陽性乃至は擬陰性を疑う場合、もう一度検査を行なう。
【0023】
一方、急患が細菌に感染している場合、細菌が20 Hzのレーザ10を照射するとフォトン・バースト蛍光を放出するので、CCDカメラ11を用いて2 Hzで積算する。すると細菌に結合した膨大な数の上記蛍光標識抗体が多数発光し、巨大な発光体が観察できる。更に細菌に結合した蛍光標識した抗体と、遊離蛍光標識した抗体との間で蛍光波長が異なるので、両者を弁別することができる。この情報は、直ちに緊急医療作業従事者にフィードバックされる。緊急医療作業従事者は、結果を診て擬陽性乃至は擬陰性を疑う場合、もう一度検査を行なう。
【0024】
次に本発明に使われるマイクロファブリケーション2の作製法の一例を示す。本発明におけるマイクロファブリケーション2の作製法において、基盤基材、親水化、撥水化、及びパターン化について説明する。
【0025】
(基盤基材)
光を透過する基材はガラス、透明性のある樹脂等がある。測定前に血液乃至は尿を目視して状態を把握し、光学的検出を行なうためには、光に対する透過性が高い材料が望ましい。光透過性の高い熱可塑性樹脂は、汎用プラスチック系のアイオノマー樹脂(IO)、ポリエステル樹脂(EPT)、ポリスチレン(PS)、メタクリル樹脂(PMMA)、またエンジニアリングプラスチック系のポリカーボネート(PC)、更にスーパーエンジニアリングプラスチック系のポリエーテルサルホン(PES) 、ポリサルホン(PSF)等がある。また熱硬化性樹脂は、尿素樹脂(UR)、不飽和ポリエステル樹脂(FRP)、メラミン樹脂(MR)等がある。これらは、以下の文献に詳細に開示されている。
【0026】
矢野紳一編著:『アイオノマーの物性と工業的応用』、アイピーシー、 (有)三森製作所編:『プラスチック素材一覧』、
森本孝克著:『プラスチックの使いこなし術』材料選定のキーポイント網羅、 中央印刷株式会社、東レリサーチセンター調査研究部門編:『透明樹脂およびその光学的応用の新展開』、東レリサーチセンター、共友電材工業有限会社編:『プラスチックの特性』。
【0027】
これらの厚さ0.1 mmの樹脂板は340〜800 nmの波長の光を60 %以上透過する。また400〜800 nmに限っては80 %以上透過するので好適である。また同じ材質の場合は、基盤基材が薄いほど透過率が高い。しかし薄すぎると基盤を保持した際乃至は体液を滴下した際に湾曲する等の問題があるので、扱いやすい程度の厚みが必要である。尚、後述する(撥水化)において、加熱工程を含む方法を用いる際は、材料に耐熱性が必要となる。
【0028】
(親水化)
茲に挙げる親水化方法は、塗料を塗布するか乃至はその後加熱等の操作を行なうことによって、親水性を発揮するものである。当該塗料は一般に(1)〜(4)に示すものがあるが、特に限定するものではない。
【0029】
(1)水溶性高分子の溶液
水溶性の高分子は、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアリルアミン、ポリアリルアミンの塩酸塩、デンプン等がある。即ち分子内に水酸基、アミノ基、カルボキシル基、塩構造の残基等親水性の残基を有しているものが挙げられる。当該高分子溶液を調製し塗料とする。これを基盤の基材に塗布し、乾燥させることで親水性塗膜を形成する。上記水溶性高分子の中では、特にポリエチレングリコールは、塗布した表面の水との接触角を低下させる傾向が強い。塗布する高分子溶液は、当該高分子の分子量が大きいほど光散乱の少ない平滑な親水膜が形成できるので好ましい。また処理する表面の撥水性が高い場合は塗料が弾かれてしまうため、結果として平坦な膜を形成できない。その場合、塗料を塗布する前に予め酸素プラズマ処理をしておくと、平坦な塗膜が形成しやすい。因みにポリエチレングリコールは、テトラヒドロフラン等の有機溶媒に溶解する。そのため当該溶液の表面張力は、水溶液に比べて小さく撥水性の高いアルミ等の表面にも塗布しやすい。
【0030】
(2)親水性粒子を含んだ塗料
親水性アルミナ粒子や親水性シリカ粒子を含んだ分散液とアルコキシシランの溶液を混ぜたものを塗料として用いる。この塗料を用いる場合、基盤の基材に塗布後に加熱することで製膜が完了する。この塗料で主に親水性を発揮するのは、親水性アルミナ粒子乃至は親水性シリカ粒子であり、アルコキシシランは主にこれら粒子の保持体として機能する。そのため親水性を高めるには親水性アルミナ粒子や親水性シリカ粒子の割合を大きくすることで対処することができる。またアルコキシシランの割合を大きくすることで膜の物理的強度が向上する。更にアルコキシシランはある程度分子間で架橋していた方が、塗布後の加熱で揮発する割合が減るので好ましい。あまつさえアルコキシシランには、分子間の重合を促進させるために塩酸等を加えることがあるが、親水性シリカの場合は分散を良好にするため、その分散液は塩基性になっている場合がある。そのため両者を混ぜた場合、親水性シリカが凝集することがあるので混合した場合の液性と親水性シリカの分散の状況には注意するべきである。この点アルミナの場合、分散液は主に酸性であるため、混合の際のトラブルが少ない。アルコキシシランは具体的には、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等がある。尚、液性乃至は溶媒が合えば、アルコキシシランの代わりにアルコキシチタンを用いてもよい。アルコキシチタンとしてはテトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラステアリルチタネート、トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセトネート、チタニウムエチルアセトアセテート、チタニウムラクテート、テトラオクチレングリコールチタネート等がある。また上記化合物が数分子重合したものも用いることも可能である。
【0031】
(3)水溶性高分子とその架橋剤を含んだ塗料
(1)に挙げた水溶性高分子に架橋剤として、(2)に挙げたアルコキシシラン乃至はアルコキシチタンを混ぜることによって、親水化表面を形成する塗料とすることが可能である。この場合、溶媒は水であってもよいが、基盤基材の撥水性が高い場合は塗料を弾いてしまうため、メタノールやエタノール等のアルコール系溶媒が好適である。
【0032】
(4)アルコキシシラン溶液とアルカリ溶液の併用
(2)に挙げたアルコキシシラン溶液を基盤基材に塗布後、120〜180℃程度で数分間加熱すると、基盤基材表面に酸化ケイ素の被膜が形成する。その後アルカリ性の溶液に浸漬すると、表面の親水性が高まる。そしてアルカリ性溶液を水洗することで親水化処理が終了する。アルカリ性溶液は具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等がある。またアルコール溶液乃至は含水アルコール溶液等も可能である。溶液の濃度が高いほど浸漬時間は短くできるが、用いる水酸化物の種類によって異なる。水酸化ナトリウムを用いた場合、1重量%で浸漬時間は1〜5分間、5重量%で10〜30秒間程度が好適である。またアルコキシシラン溶液に用いる溶媒として、アセトン乃至はメチルエチルケトン等ケトン系のものは、アルコキシシランが二酸化ケイ素に変化しやすいので、アルコール系、エステル系乃至はエーテル系の溶媒が好適である。特にアルコール系は、基盤基材が樹脂の場合、樹脂を溶解し難いので特に好適である。
【0033】
(撥水化)
撥水化方法では、分子内にフッ素やシリコンといった元素を含む一般的な撥水材料を用いる。当該材料を溶媒に溶解し、当該溶液を基盤基材に塗布する。その後乾燥し溶媒を揮発させ、撥水材料からなる薄膜を形成する。撥水材料によっては、塗布後加熱することにより基盤表面と化学結合させる材料もある。この場合、基盤表面に撥水材料として安定して存在するので好適である。当該材料としては上記化学式に示すようなものがある。
具体的には以下の化合物1〜12等が挙げられる。
【0034】
【化2】
【0035】
(パターン化)
マイクロファブリケーション2の作製法は種々考えられるが、茲に2つの方法(1)及び(2)を示す。
(1)親水化処理後、撥水性パターンを形成する方法
i)〜iv)の工程で作製する。但し、i)の操作が必要ない場合は省略しても構わない。
i)親水化処理
基盤の水との接触角が大きい場合は、当該基盤の表面を親水化する。基盤基材の親水性が高い場合は必要ない。親水化する方法は基盤の基材によって異なる。具体的に▲1▼〜▲3▼の方法を挙げる。
【0036】
▲1▼ 基盤基材がガラス、石英の場合
基盤基材がガラス乃至は石英の場合、酸素プラズマで処理したり塩基性溶液の浸漬する等の方法により、親水性を向上することが可能である。酸素プラズマの場合、酸素分圧1 Torr、高周波電源出力300 W、処理時間3分間の条件下で、水との接触角が10°以下になる。また塩基性溶液として1重量%水酸化ナトリウム水溶液を用いた場合、5分間の浸漬によって接触角は20°以下になる。
【0037】
▲2▼ 基盤基材が樹脂の場合
基盤基材が樹脂の場合は酸素プラズマで処理したり酸性溶液乃至は塩基性溶液に浸漬する等の方法により、親水性を向上することができる。
酸素プラズマの場合、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等では、酸素分圧1 Torr(トル、以下1 Torr = 133.32 Paとする)、高周波電源出力100 W、処理時間1分間の条件下で、水との接触角が20°以下になる。
【0038】
酸性溶液乃至は塩基性溶液の場合、塩基性溶液は、アクリル樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート等のように分子内にエステル結合を有する材料に対して特に有効である。これは、表面及びその近傍にあるエステル結合を切断することによって、親水性の高いカルボン酸残基及び/乃至は水酸基が生成し、表面の親水性が高まるためである。また塩酸等の酸溶液は、ポリイミド乃至はポリアミド等のアミノ基及びカルボキシル基の縮合により重合する樹脂に対して特に有効である。即ち塩基性溶液が有効なのは、重合時に反応せずに残ったカルボキシル基を親水性の高いカルボン酸塩にすることによって表面の親水性を高め、酸性溶液が有効なのは、重合時に反応せずに残ったアミノ基を親水性の高いアンモニウム塩構造にし、表面の親水性を高めることができるからである。酸性溶液乃至は塩基性溶液への浸漬は、溶液の温度が高い程、また溶液濃度が高い程親水化が迅速に進行する傾向がある。しかし高温及び高濃度溶液への基材の暴露は、基材にダメージを与えやすいので註意が必要である。
【0039】
▲3▼ 汎用的に親水化する方法
基盤基材が金属、ガラス乃至は樹脂であっても処理可能な親水化方法は、親水性を発揮させる塗料を塗布する方法がある。この詳細は(親水化)の項目で前述した。その他、紫外線照射、オゾン雰囲気下に放置する等によっても可能である。
【0040】
ii)マスク形成
親水性パターンを形成する部分をマスクする。この方法は位置制御の面から印刷法が好適である。印刷方法は、マイクロファブリケーション2の基盤を用紙の代わりに印刷機乃至はインクジェットプリンタ等に入れ、マスク剤を印刷する方法がある。乃至はマスク剤を孔版印刷する方法等もある。マスク剤は撥水化処理の後に除去する必要があるので、水乃至は有機溶媒に易溶性で簡便に除去できるものが好適である。また当該マスク剤を除去した際に発生する廃液が環境に対して負荷が少ないものであれば猶好適である。例えば、有機溶媒に溶解するマスク剤は、オフセット印刷用インク乃至はレーザープリンター用トナーの一部等がある。しかしマスク方法は水溶性のインクを用いるオフィス乃至は家庭用のインクジェットプリンタが好適である。それは、当該プリンタ用インクが水に易溶性であり且つ吐出の位置精度が高く、また廃液処理が容易なためである。その他の方法は、テープ乃至はシールによるマスク等も有効である。その際、テープ乃至はシールの粘着部材は水溶性高分子、具体的には、ポリビニルアルコール乃至はポリアクリル酸等が好ましい。水溶性高分子は後述する撥水材を弾きやすい。
【0041】
iii)撥水化処理
基盤基材表面を撥水化処理する方法は、処理剤を単に塗布するだけのもの、その後加熱処理乃至は光照射処理により表面に処理剤を固定するもの等がある。その内、親水性パターンの形状の安定性が高いのは表面に処理剤を固定する方法である。表面に処理剤を塗布後、加熱処理を行なうことにより表面に固定する方法は、撥水化方法の項目で後述する。
【0042】
iv)マスク剤の除去
ii)で形成したマスク剤を除去する。除去の方法は、マスクを水溶媒乃至は有機溶媒で溶解する方法がある。乃至は粘着テープのマスク剤を剥がす等の操作を行なう。
【0043】
(2)撥水化処理後、親水性パターンを形成する方法
当該方法は、予め基盤基材に撥水化処理を行ない、その後親水性パターンを形成するものである。親水性パターン形成には、撥水化処理面にレーザ光、電子線、紫外線を照射することによって、撥水化処理材料を分解乃至は除去する方法がある。乃至は親水性パターンを形成する部分に高温の鏝を接触させることによって、当該撥水化処理材料を分解する方法等がある。
【0044】
本実施例の感染検査法は、上記のように、基盤上に、体液を滴下する検体保持部と、前記検体保持部から流出する狭隘な流路と、前記流路からの液体を収容する回収部を有するマイクロファブリケーションにおいて、前記検体保持部に、前記体液及び試薬を滴下し、前記流路の幅より広い直径の光束のレーザ光を前記流路に照射し、共焦点顕微鏡下において、上記流路中の病原体関連物質に短周期レーザ等を照射して所謂フォトン・バースト蛍光をCCDカメラ等で長周期光子積算することによって、病原体関連物質の有無を高感度且つ迅速に検出することができる。病原体関連物質を検出するために、上記マイクロファブリケーションにおいて、上記検体保持部に体液に対し当該体液中病原体関連物質と反応するための単数乃至は複数の試薬を滴下することができる。上記検体保持部と、上記流路及び上記回収部が微小であることによって、採取する体液の少量化、患者への低侵襲性、on−site測定乃至は検査の汎用性を高めた、体液ウィルス検出プラットフォームを提供することができる。
【0045】
また、採取する体液量が少なく、体液中の病原体関連物質をon−siteで検出することができる。この為、患者に対する生活の質(QOL)の向上を図ることができる。
また、体液ウィルス等の迅速測定によって、手術執刀医乃至は手術作業従事者に対する註意点として、上記患者の感染症の危険性を認識させることができる。
【0046】
(実施例2)
実施例1記載のマイクロファブリケーション2において、上記検体保持部7及び流路5末端に配置する電極6の代わりに、ITO(Indium Tin Oxide)22に代表される透明導電体を蒸着する方法がある。これを図6に示す。
蒸着するところは検体保持部7及び流路5末端であり、それぞれの部位から上記マイクロファブリケーション2側面に向けて線状に蒸着し、上記マイクロファブリケーション2端に接極部8を設ける。従って電位は上記マイクロファブリケーション2側面から、コネクタ等を付加した電線等を用いて電位を印加する。
【0047】
(実施例3)
また別法として、実施例1記載のマイクロファブリケーション2において、マイクロファブリケーション2を一定の角度に傾ける別法を図7に示す。
当該別法は、電極6乃至は電位印加装置等が不要である。即ち共焦点顕微鏡ステージ1の開口部を利用し、当該開口部に棒状乃至は板状の物体23を挿入する。そして上記マイクロファブリケーション2の一端に棒状乃至は板状の上記物体23を接触させ、駆動部24により当該マイクロファブリケーション2を光軸3に連動的に上下する。従って共焦点顕微鏡ステージ1に上記マイクロファブリケーション2を固定するために、当該マイクロファブリケーションの一端を固定する止め25が必要である。そして上記検体保持部7内の上記反応物を上記流路5に液体ごと通過して上記回収部15に至る。本別法は電極6乃至は電位印加装置等の代わりに、上記物体及び共焦点顕微鏡のステージの駆動し、流路5中央が常に光軸3上にくるように制御する部分が必要になる。詳しくは、Holmlin, RE:“Ru(phen)2dppz2+ Luminescence: Dependence on DNA Sequences and Groove−Binding Agents.”, Inorg. Chem., 37(1), p. 29 (1998)に記載されている。マイクロファブリケーションを一定の角度を以って置載することによって、病原体関連物質を液体ごと移動することができる。
【0048】
(実施例4)
茲で情報に関するシステムについて説明する。個人情報は、例えば記憶媒体によって管理される。急患の名前等の情報を上記マイクロファブリケーション2に入力する。そして出血を伴う場合、危険度の問題からHCVないしはHIVの試薬を選択する。HCV用ないしはHIV用の試薬はキットになっており、上記急患の血液に添加すればいいようになっている。検査結果は、フォトン・バースト蛍光を検出した場合は、核酸を検出したと判定して緊急医療作業従事者にHCVないしはHIV感染を表示する。出血を伴わなくても開腹する場合も同様の処理をする。急患で出血を伴わない場合、危険度の問題から結核菌乃至はレジオネラ菌を選択する。また危険度とは別に、問診等から疑われる感染症を医師が判断し、個人情報として患者名及び検査項目等の情報を上記マイクロファブリケーション2に入力することもできる。
【0049】
各感染症用の試薬はキットになっており、上記急患の血液に添加すればいいようになっている。検査結果は、CCD上の検出画像に1〜数10 mm程度の発光体があり且つ波長の異なる蛍光が混在した場合は、細菌を検出したと判定して緊急医療作業従事者に感染症感染の可能性を表示する。急患でなく通常医療においてウィルス検査をする場合、フォトン・バースト蛍光が検出されない場合は、核酸を検出しなかったと判定して医療作業従事者に非感染の可能性を表示する。また急患でなく通常医療において感染症検査をする場合、問診等から疑われる感染症を医師が判断し、個人情報として患者名及び検査項目等の情報を上記マイクロファブリケーション2に貼付してある記憶媒体に入力する。CCD上の検出画像に1〜数10mm程度の発光体がなく且つ均一な波長の蛍光を得た場合は、細菌を検出しなかったと判定して医療作業従事者に非感染の可能性を表示する。通常医療の場合、病状の情報をデータベースにフィードバックし、整理して個人情報として蓄積する。そして医療作業従事者が上記患者の医療に関するデータが時系列で反映するシステムを構築する。
【0050】
(実施例5)
実施例1記載の検査は危険度が高い疾患について検査を行なったが、緊急医療ではなく通常医療の場合も、診断の目的でさまざまな感染症の検査に用いることができることはいうまでもない。本発明は、少量化のためランニングコストが低いので、今まで値段が高くて常備できなかった病気の診断試薬も常備することができる。従って病気の発見が早く、早期診断に有用である。即ち患者に対する生活の質の向上に繋がる。
【0051】
(実施例6)
実施例1の図3の一例として、インターカレータとしてDAPI(4’, 6−Diamino−2−Phenylindol Dihydrochloride)を用いた。急患が運ばれてくる。緊急医療作業従事者は、特に出血を伴う場合は、危険度に応じてHCV乃至はHIV等に特異的な核酸断片をそれぞれ用意する。そして急患の血液を100 mL程度採取し、上記マイクロファブリケーション2の検体保持部7に滴下する。次にウィルス核溶解剤、当該核酸と相補的な核酸断片及びDAPIを同量滴下し、ピペッティングを行なう。
望ましくは、ここで数分放置できるとよい。これにより露呈したHCV等は特異的な核酸断片と結合して二重鎖を形成する。茲で反応温度はそれそれ核酸断片のTm(Melting Temperature)値程度であることが望ましい。二重鎖を形成した上記核酸にDAPIが挿入する。その後、上記マイクロファブリケーション2を共焦点顕微鏡上に置載する。茲で上記検体保持部7及び流路5末端間に電極6を挿入し、電位を印加する。因みに核酸乃至は細菌は負に帯電しているので、検体保持部7には−極、流路5末端には+極を印加すると、流路5上を検体保持部7から回収部に向かって核酸が移動する。また当該マイクロファブリケーション2は、流路5中央に共焦点顕微鏡の光軸3が合うように固定するため、共焦点顕微鏡のステージ上に溝4が掘ってある。
【0052】
次に闇箱9の蓋を閉め、光学的に遮蔽する。そして短周期レーザ10を上記流路5中の反応物に照射し、蛍光をCCDカメラ11で積算する。その結果、病原体関連物質が核酸の場合、青い発光点が観察されれば、ウィルスに感染している可能性を示す。この情報は、緊急医療作業従事者に直ちにフィードバックされ、緊急医療に役立てることができる。
【0053】
【発明の効果】
本発明により、検査時間が短く、またサンプル量及び試薬も少量である感染症検査が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例におけるマイクロファブリケーションを含めた全体のシステ
ムの一例である。
【図2】図1の一実施例におけるマイクロファブリケーションの平面図である。
【図3】図1の一実施例におけるマイクロファブリケーションの検査作業全体のフローである。
【図4】フォトン・バースト蛍光を用いたウィルス検出法を示す。
【図5】蛍光標識を用いた細菌検出法を示す。
【図6】図1の一実施例におけるマイクロファブリケーションにおいて、上記検体保持部及び流路5末端に配置する電極6の代わりに、ITOに代表される透明導電体を蒸着した平面図である。
【図7】図1の一実施例におけるマイクロファブリケーションにおいて、当該マイクロファブリケーションを傾ける方法の概要断面図である。
【符号の説明】
1:共焦点顕微鏡ステージ
2:マイクロファブリケーション(当該部分は、水との接触角が110°以上)3: 光軸
4: 溝
5: 流路
6: 電極
7:検体保持部
8:ポテンショスタット接極部
9:闇箱
10:レーザ
11:CCDカメラ
12:画像処理装置
13:コンピュータ
14:基盤
15:回収部
16:一本鎖核酸
17:インターカレータ
18:二重鎖核酸
19:二重鎖核酸に挿入したインターカレータ
20:モノクローナル抗体(蛍光標識)
21:蛍光標識
22:ITO (Indium Tin Oxide)
23:棒状乃至は板状の物体
24:駆動部
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウィルス等の病原体の高感度且つ迅速な検査装置及び検査方法に関する。好適には、マイクロファブリケーションにレーザ光を照射するウィルス等の病原体の高感度且つ迅速な検査装置及び検査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
二重鎖核酸内に挿入して初めて蛍光物質乃至は発光物質の性質を示すインターカレータというものがある。従来、当該インターカレータにおいて代表的なものは、例えばEtBr(Ethidium Bromide、励起波長526 nm、蛍光波長604 nm、橙色光)であった。しかしEtBrは、二重鎖核酸に挿入していなくとも微弱な発光をするため、S/N(Signal / Noise)が悪いという問題があった。その後EtBr以外にHoechst33258(励起波長346 nm 、蛍光波長460 nm、青色光)乃至はYOYO−1(励起波長491 nm、蛍光波長509 nm、緑色光)等が上市されたが、例えばHoechst33258は、細胞を固定化するなど処理が必要であり、またYOYO−1は、励起波長と蛍光波長が近接しているため、散乱光を避ける手段を設けなければならない問題がある。また蛍光波長が赤色領域のインターカレータも少なくないため、体液の内例えば血液中では、蛍光波長をよく選択しないと蛍光測定そのものができない。
【0003】
輓近、微量な核酸検出することに関する幾つかの特許が公開されている。
特開平6−261795は、ポリヌクレオチド検出法を示している。当該発明によると、高感度で精度の高い定量的なポリヌクレオチドの検出法を提供する。即ち蛍光体が2分子ずつ結合した5種の塩基長の短い蛍光標識プローブと標的ポリヌクレオチド鎖を二重鎖結合条件下で反応させ、反応液を電気泳動担体の試料添加部に添加し電気泳動すると分子サイズの小さな未反応蛍光標識プローブは泳動され除かれる。蛍光標識プローブと標的ポリヌクレオチド鎖の複合体は分子サイズが大きく、試料添加部付近に残ると同時に濃縮される。試料添加部を加熱し、標的ポリヌクレオチド鎖に結合していた蛍光標識プローブが解離し泳動し、蛍光標識プローブが電気泳動担体の一定部位を照射するレーザ光を横切り螢光を発して検出器で検出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
例えば緊急医療の現場では、急患がHCV(ヒトC型肝炎ウィルス)、HIV(エイズ・ウィルス)乃至は結核菌、レジオネラ菌その他感染症等に罹患していた場合、緊急医療作業従事者に感染の危険性がある。当該急患が感染症であるか緊急医療作業従事者が知ることは、緊急医療現場において少なからず潜在的需要が大きい。しかし、従来法は検査に多大な時間がかかり、またサンプル量及び試薬も大量に必要であったことから、急患に対して感染症の検査をすることは困難である。この為、緊急医療において、作業従事者が感染の危険性を知ることは稀であった。また、通常医療においても、少量のサンプルによる、迅速且つ低侵襲な感染検査法が望まれている。
そこで本発明により、少量な体液を用いる、高感度且つ迅速な感染検査法を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基盤上に、体液を保持する単数又は複数の検体保持部と、前記検体保持部から流出する狭隘な流路と、前記流路からの液体を回収する回収部を有するマイクロファブリケーションを用いるとともに、前記マイクロファブリケーションの前記流路レーザ光を照射するレーザ照射装置と受光装置を用い、前記流路の幅が前記流路を透過するレーザ光束の直径より小さくすることによって、前記体液中の異物を高感度且つ迅速に検出する。前記流路の幅を前記流路を透過するレーザ光束の直径より小さくすることによって、流路を通過するウイルス等の病原体関連物質を高効率に検出することが出来る。
【0006】
前記病原体関連物質より特異的に生ずる蛍光または発光が、前記病原体関連物質が短周期レーザを照射されたことに起因するフォトン・バースト(photon−burst)であることにより、より高感度且つ迅速に検査することが出来る。
ここで、前記基盤の表面を疎水性とし、前記検体保持部、前記流路と、前記回収部の表面を親水性とすることで、体液等の外部への湿潤を防止することができる。
【0007】
前記マイクロファブリケーションは、前記検体保持部及び前記流路間に電位を印加する電極を有し、病原体関連物質を電気泳動させるものでもよく、また、前記マイクロファブリケーションを保持するステージに、前記マイクロファブリケーションの傾斜角を調整する装置を設けることにより体液等を重力で移動させるものでも良い。
【0008】
前記マイクロファブリケーションが蓋を有しないとすることで、検査の作業性を向上させることが出来る。
以下、上記及びその他の本発明の新規な特徴と効果について、図面を参酌して説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
図1に本発明の一実施例におけるシステム全体の構成を示す。
図1の感染症検査装置は、1分子以上の病原体関連物質を捉えるため、共焦点顕微鏡ステージ1上に展開している。当該装置は上記マイクロファブリケーション2を挿入する際、当該共焦点顕微鏡の光軸3上に当該マイクロファブリケーション2を固定するように当該共焦点顕微鏡ステージ1には溝4が掘ってある。即ち上記流路5の中央に当該顕微鏡の光軸3が一致するように固定する。ここで、上記流路5の幅および長さは、照射されるレーザ光の光束の直径より短くなっている。当該共焦点顕微鏡は、闇箱9等を用いて観察系を光学的に遮蔽する。
【0010】
患者の体液に病原体特異的な試薬を加えた溶液をマイクロファブリケーション2に滴下する。検体保持部7に検体と試薬を滴下した後、検体保持部7及び流路5末端の間に電極6にポテンショスタット8を用いて電位印加する。上記固定したマイクロファブリケーション2は、共焦点顕微鏡を用いて蛍光を検出する。核酸乃至は細菌は負に帯電しているため、上記検体保持部7上の上記電極6を−極に、上記流路5上の上記電極6を+極に電位を印加することによって、上記病原体関連物質を上記共焦点顕微鏡の上記光軸3に向けて誘導する。当該共焦点顕微鏡上で高周期レーザ10を上記病原体関連物質及び当該病原体特異的な試薬に照射する。そこで発生したフォトン・バースト蛍光をCCDカメラ11で検出し、画像処理装置12によってコンピュータ13で制御することもできる。病原体関連物質が存在すれば、発光が生じるようになっている。これらの情報は速やかに緊急医療作業従事者にフィードバックされ、感染の危険性等を知らせることになる。また通常医療でも、低侵襲且つon−siteでの感染症検査が迅速にできる点において、非常に医療活動に対して有望である。
図2に本発明の一実施例におけるマイクロファブリケーション2の一例を示す。
【0011】
水との接触角が110°以上であり且つ実質的に平面で無色透明の基盤14上に、水との接触角が30°以下であり且つ体液を滴下する検体保持部7と、水との接触角が30°以下であり且つ狭隘な流路5と、水との接触角が30°以下であり且つ上記検体保持部7に滴下した液体を回収する回収部を有する、マイクロファブリケーション2である。但し上記マイクロファブリケーション2は、水との接触角が110°以上であり且つ実質的に平面な基盤14上であり、以下の式で例示される化合物が結合しており、大きさが少なくとも26 mm×76 mm以下である。
【0012】
【化1】
【0013】
また、例えば上記検体保持部7及び回収部15は、500 mL程度の液体を保持できる。これにより、検体保持部7に滴下される、検体100 mL、これと同量の上記ウィルス溶解剤、上記相補的な核酸、及びインターカレータを確実に保持できる。上記電極6は、−極を上記検体保持部7に、+極を上記流路5の回収部側末端に配置する。電極6の作製は後述する。そして検出は、当該両極間に共焦点顕微鏡の光軸3を合わせる。更に上記流路5は上記病原体関連物質が微小なため、幅、長さ及び上記顕微鏡の視野に制限がある。即ち当該共焦点顕微鏡に上記CCDカメラ11を結合し、当該顕微鏡の視野に狭隘な流路5が収まらなければならない。例えばウィルスから細菌まで一つのマイクロファブリケーション2で対応しようとすると、幅50mm以下、長さ50 mm程度及び視野×400以上が必要である(Steven A. Soper, Harvey L. Nutter, Richard A. Keller, Lloyd M. Davis, and E.Broocks Shera: ”The Photophysical Constants of Several Fluorescent DyesPertaining to Ultrasensitive Fluorescent Spectroscopy”, photochemistry and Photobiology, Vol. 57, No. 6, pp. 972−977 (1993) 及びRichard A. Keller, W. Patrick Ambrose, Peter M. Goodwin, James H. Jett, John C. Martin,and Ming Wu: ”Ssingle−Molecule Fluorescence Analysis in Solution”, Applied Spectroscopy, Vol.50, No. 7, pp.12A−32A (1996))。
【0014】
図3に検査作業全体のフローを示す。
急患が運ばれてくる。緊急医療作業従事者は、特に出血を伴う場合は、危険度に応じてHCV乃至はHIV等に特異的な核酸断片をそれぞれ用意する。そしてマイクロファブリケーション2を当該共焦点顕微鏡に置載する。急患の血液を100 mL程度採取し、上記マイクロファブリケーション2の検体保持部7に検体及び試薬を滴下し、ピペッティングを行なう。望ましくは、ここで数分放置できるとよい。これによりHCV用試薬は特異的に蛍光物質を内包した二重鎖を形成する。茲で上記検体保持部7及び流路5末端間に電極6を電位印加する。因みに核酸乃至は細菌は負に帯電しているので、検体保持部7には−極、流路5末端には+極を印加すると、流路5上を検体保持部7から回収部15に向かって核酸が移動する。また当該マイクロファブリケーション2は、流路5中央に共焦点顕微鏡の光軸3が合うように固定するため、共焦点顕微鏡のステージ上に溝4が掘ってある。
【0015】
次に闇箱9の蓋を閉め、光学的に遮蔽する。そして短周期レーザ10を上記流路5中の反応物に照射し、発生した蛍光をCCDカメラ11で長周期積算する。その結果、病原体関連物質が核酸の場合、発光点が観察されれば、ウィルスに感染している可能性を示す。この情報は、緊急医療作業従事者に直ちにフィードバックされ、緊急医療に役立てることができる。
【0016】
また病原体関連物質が細菌と疑われる場合は、危険度に応じて結核菌乃至はレジオネラ菌に特異的な蛍光標識抗体をそれぞれ用意する。特に結核菌は空気感染するので非常に注意を要する。マイクロファブリケーション2を共焦点顕微鏡に置載する。急患の喀痰を100 mL程度採取し、上記マイクロファブリケーション2の検体保持部7に検体及び試薬を滴下し、ピペッティングを行なう。望ましくは、ここで数分放置できるとよい。先ず細菌表面抗体のFc部分に蛍光標識をした試薬を滴下し、ピペッティングを行なう。望ましくはここで数分放置できるとよい。これにより蛍光標識した細菌を形成する。茲で上記検体保持部7及び流路5末端間に電極6を電位印加する。因みに核酸乃至は細菌は負に帯電しているので、検体保持部7には−極、流路5末端には+極を印加すると、流路5上を検体保持部7から回収部に向かって核酸が移動する。また当該マイクロファブリケーション2は、流路5中央に共焦点顕微鏡の光軸3が合うように固定するため、共焦点顕微鏡のステージ上に溝4が掘ってある。
【0017】
次に闇箱9の蓋を閉め、光学的に遮蔽する。そしてレーザ10を上記流路5中の病原体関連物質に照射し、発生した蛍光をCCDカメラ11で積算する。その結果、病原体関連物質が細菌の場合、大きな発光点が観察されれば、細菌に感染している可能性を示す。この情報は、緊急医療作業従事者に直ちにフィードバックされ、緊急医療に役立てることができる。
【0018】
図4に、急患がウィルスに感染していた場合の本発明による検出法の一例を説明するフローを示す。
急患がウィルスに感染している虞れがある場合、危険度に応じてHCV及びHIVの核酸に相補的な試薬キットを用意しておく。
【0019】
急患がHCV乃至はHIVを有していない場合、HCV乃至はHIVの核酸16に特異的な核酸断片が二重鎖を形成しない。従ってインターカレータ17が挿入しないため、20 Hzのレーザ10を照射してもフォトン・バースト蛍光を放出しない。よって蛍光は起こらない。この情報は、直ちに緊急医療作業従事者にフィードバックされる。緊急医療作業従事者は、結果を診て擬陽性乃至は擬陰性を疑う場合、もう一度検査を行なう。
【0020】
一方、急患がHCV乃至はHIVを有していた場合、HCV乃至はHIVの核酸に特異的な核酸断片が二重鎖18を形成し、インターカレータ17が挿入する。インターカレータ17は、二重鎖18の外では蛍光を示さないが、二重鎖の中で初めて蛍光を示す物質19である。そこに20 Hzのレーザ10を照射するとフォトン・バースト蛍光を放出するので、CCDカメラ11を用いて2 Hzで長周期積算する。この情報は、直ちに緊急医療作業従事者にフィードバックされる。緊急医療作業従事者は、結果を診て擬陽性乃至は擬陰性を疑う場合、もう一度検査を行なう。
【0021】
図5に、急患が細菌に感染していた場合の本発明による検出法の一例を説明するフローを示す。
急患が細菌に感染している畏れがある場合、危険度に応じて結核菌やレジオネラ菌の細菌表面タンパク質乃至は糖鎖に対するポリクローナル抗体20のFc部分に蛍光物質21を結合させた試薬キットを用意しておく。当該ポリクローナル抗体は、蛍光物質とともに細菌表面に多数結合する。
【0022】
急患が細菌に感染していない場合、20 Hzのレーザ10を照射すると、遊離の当該ポリクローナル抗体に結合した蛍光物質により、フォトン・バースト蛍光を放出するので、CCDカメラ11を用いて2 Hzで積算する。しかし細菌がいないため、細菌に結合した巨大な発光体を観察できない。更に上記蛍光標識抗体が非特異吸着を起こして発光する。また抗体の蛍光波長も単一である。この情報は、直ちに緊急医療作業従事者にフィードバックされる。緊急医療作業従事者は、結果を診て擬陽性乃至は擬陰性を疑う場合、もう一度検査を行なう。
【0023】
一方、急患が細菌に感染している場合、細菌が20 Hzのレーザ10を照射するとフォトン・バースト蛍光を放出するので、CCDカメラ11を用いて2 Hzで積算する。すると細菌に結合した膨大な数の上記蛍光標識抗体が多数発光し、巨大な発光体が観察できる。更に細菌に結合した蛍光標識した抗体と、遊離蛍光標識した抗体との間で蛍光波長が異なるので、両者を弁別することができる。この情報は、直ちに緊急医療作業従事者にフィードバックされる。緊急医療作業従事者は、結果を診て擬陽性乃至は擬陰性を疑う場合、もう一度検査を行なう。
【0024】
次に本発明に使われるマイクロファブリケーション2の作製法の一例を示す。本発明におけるマイクロファブリケーション2の作製法において、基盤基材、親水化、撥水化、及びパターン化について説明する。
【0025】
(基盤基材)
光を透過する基材はガラス、透明性のある樹脂等がある。測定前に血液乃至は尿を目視して状態を把握し、光学的検出を行なうためには、光に対する透過性が高い材料が望ましい。光透過性の高い熱可塑性樹脂は、汎用プラスチック系のアイオノマー樹脂(IO)、ポリエステル樹脂(EPT)、ポリスチレン(PS)、メタクリル樹脂(PMMA)、またエンジニアリングプラスチック系のポリカーボネート(PC)、更にスーパーエンジニアリングプラスチック系のポリエーテルサルホン(PES) 、ポリサルホン(PSF)等がある。また熱硬化性樹脂は、尿素樹脂(UR)、不飽和ポリエステル樹脂(FRP)、メラミン樹脂(MR)等がある。これらは、以下の文献に詳細に開示されている。
【0026】
矢野紳一編著:『アイオノマーの物性と工業的応用』、アイピーシー、 (有)三森製作所編:『プラスチック素材一覧』、
森本孝克著:『プラスチックの使いこなし術』材料選定のキーポイント網羅、 中央印刷株式会社、東レリサーチセンター調査研究部門編:『透明樹脂およびその光学的応用の新展開』、東レリサーチセンター、共友電材工業有限会社編:『プラスチックの特性』。
【0027】
これらの厚さ0.1 mmの樹脂板は340〜800 nmの波長の光を60 %以上透過する。また400〜800 nmに限っては80 %以上透過するので好適である。また同じ材質の場合は、基盤基材が薄いほど透過率が高い。しかし薄すぎると基盤を保持した際乃至は体液を滴下した際に湾曲する等の問題があるので、扱いやすい程度の厚みが必要である。尚、後述する(撥水化)において、加熱工程を含む方法を用いる際は、材料に耐熱性が必要となる。
【0028】
(親水化)
茲に挙げる親水化方法は、塗料を塗布するか乃至はその後加熱等の操作を行なうことによって、親水性を発揮するものである。当該塗料は一般に(1)〜(4)に示すものがあるが、特に限定するものではない。
【0029】
(1)水溶性高分子の溶液
水溶性の高分子は、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアリルアミン、ポリアリルアミンの塩酸塩、デンプン等がある。即ち分子内に水酸基、アミノ基、カルボキシル基、塩構造の残基等親水性の残基を有しているものが挙げられる。当該高分子溶液を調製し塗料とする。これを基盤の基材に塗布し、乾燥させることで親水性塗膜を形成する。上記水溶性高分子の中では、特にポリエチレングリコールは、塗布した表面の水との接触角を低下させる傾向が強い。塗布する高分子溶液は、当該高分子の分子量が大きいほど光散乱の少ない平滑な親水膜が形成できるので好ましい。また処理する表面の撥水性が高い場合は塗料が弾かれてしまうため、結果として平坦な膜を形成できない。その場合、塗料を塗布する前に予め酸素プラズマ処理をしておくと、平坦な塗膜が形成しやすい。因みにポリエチレングリコールは、テトラヒドロフラン等の有機溶媒に溶解する。そのため当該溶液の表面張力は、水溶液に比べて小さく撥水性の高いアルミ等の表面にも塗布しやすい。
【0030】
(2)親水性粒子を含んだ塗料
親水性アルミナ粒子や親水性シリカ粒子を含んだ分散液とアルコキシシランの溶液を混ぜたものを塗料として用いる。この塗料を用いる場合、基盤の基材に塗布後に加熱することで製膜が完了する。この塗料で主に親水性を発揮するのは、親水性アルミナ粒子乃至は親水性シリカ粒子であり、アルコキシシランは主にこれら粒子の保持体として機能する。そのため親水性を高めるには親水性アルミナ粒子や親水性シリカ粒子の割合を大きくすることで対処することができる。またアルコキシシランの割合を大きくすることで膜の物理的強度が向上する。更にアルコキシシランはある程度分子間で架橋していた方が、塗布後の加熱で揮発する割合が減るので好ましい。あまつさえアルコキシシランには、分子間の重合を促進させるために塩酸等を加えることがあるが、親水性シリカの場合は分散を良好にするため、その分散液は塩基性になっている場合がある。そのため両者を混ぜた場合、親水性シリカが凝集することがあるので混合した場合の液性と親水性シリカの分散の状況には注意するべきである。この点アルミナの場合、分散液は主に酸性であるため、混合の際のトラブルが少ない。アルコキシシランは具体的には、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等がある。尚、液性乃至は溶媒が合えば、アルコキシシランの代わりにアルコキシチタンを用いてもよい。アルコキシチタンとしてはテトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラステアリルチタネート、トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセトネート、チタニウムエチルアセトアセテート、チタニウムラクテート、テトラオクチレングリコールチタネート等がある。また上記化合物が数分子重合したものも用いることも可能である。
【0031】
(3)水溶性高分子とその架橋剤を含んだ塗料
(1)に挙げた水溶性高分子に架橋剤として、(2)に挙げたアルコキシシラン乃至はアルコキシチタンを混ぜることによって、親水化表面を形成する塗料とすることが可能である。この場合、溶媒は水であってもよいが、基盤基材の撥水性が高い場合は塗料を弾いてしまうため、メタノールやエタノール等のアルコール系溶媒が好適である。
【0032】
(4)アルコキシシラン溶液とアルカリ溶液の併用
(2)に挙げたアルコキシシラン溶液を基盤基材に塗布後、120〜180℃程度で数分間加熱すると、基盤基材表面に酸化ケイ素の被膜が形成する。その後アルカリ性の溶液に浸漬すると、表面の親水性が高まる。そしてアルカリ性溶液を水洗することで親水化処理が終了する。アルカリ性溶液は具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等がある。またアルコール溶液乃至は含水アルコール溶液等も可能である。溶液の濃度が高いほど浸漬時間は短くできるが、用いる水酸化物の種類によって異なる。水酸化ナトリウムを用いた場合、1重量%で浸漬時間は1〜5分間、5重量%で10〜30秒間程度が好適である。またアルコキシシラン溶液に用いる溶媒として、アセトン乃至はメチルエチルケトン等ケトン系のものは、アルコキシシランが二酸化ケイ素に変化しやすいので、アルコール系、エステル系乃至はエーテル系の溶媒が好適である。特にアルコール系は、基盤基材が樹脂の場合、樹脂を溶解し難いので特に好適である。
【0033】
(撥水化)
撥水化方法では、分子内にフッ素やシリコンといった元素を含む一般的な撥水材料を用いる。当該材料を溶媒に溶解し、当該溶液を基盤基材に塗布する。その後乾燥し溶媒を揮発させ、撥水材料からなる薄膜を形成する。撥水材料によっては、塗布後加熱することにより基盤表面と化学結合させる材料もある。この場合、基盤表面に撥水材料として安定して存在するので好適である。当該材料としては上記化学式に示すようなものがある。
具体的には以下の化合物1〜12等が挙げられる。
【0034】
【化2】
【0035】
(パターン化)
マイクロファブリケーション2の作製法は種々考えられるが、茲に2つの方法(1)及び(2)を示す。
(1)親水化処理後、撥水性パターンを形成する方法
i)〜iv)の工程で作製する。但し、i)の操作が必要ない場合は省略しても構わない。
i)親水化処理
基盤の水との接触角が大きい場合は、当該基盤の表面を親水化する。基盤基材の親水性が高い場合は必要ない。親水化する方法は基盤の基材によって異なる。具体的に▲1▼〜▲3▼の方法を挙げる。
【0036】
▲1▼ 基盤基材がガラス、石英の場合
基盤基材がガラス乃至は石英の場合、酸素プラズマで処理したり塩基性溶液の浸漬する等の方法により、親水性を向上することが可能である。酸素プラズマの場合、酸素分圧1 Torr、高周波電源出力300 W、処理時間3分間の条件下で、水との接触角が10°以下になる。また塩基性溶液として1重量%水酸化ナトリウム水溶液を用いた場合、5分間の浸漬によって接触角は20°以下になる。
【0037】
▲2▼ 基盤基材が樹脂の場合
基盤基材が樹脂の場合は酸素プラズマで処理したり酸性溶液乃至は塩基性溶液に浸漬する等の方法により、親水性を向上することができる。
酸素プラズマの場合、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等では、酸素分圧1 Torr(トル、以下1 Torr = 133.32 Paとする)、高周波電源出力100 W、処理時間1分間の条件下で、水との接触角が20°以下になる。
【0038】
酸性溶液乃至は塩基性溶液の場合、塩基性溶液は、アクリル樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート等のように分子内にエステル結合を有する材料に対して特に有効である。これは、表面及びその近傍にあるエステル結合を切断することによって、親水性の高いカルボン酸残基及び/乃至は水酸基が生成し、表面の親水性が高まるためである。また塩酸等の酸溶液は、ポリイミド乃至はポリアミド等のアミノ基及びカルボキシル基の縮合により重合する樹脂に対して特に有効である。即ち塩基性溶液が有効なのは、重合時に反応せずに残ったカルボキシル基を親水性の高いカルボン酸塩にすることによって表面の親水性を高め、酸性溶液が有効なのは、重合時に反応せずに残ったアミノ基を親水性の高いアンモニウム塩構造にし、表面の親水性を高めることができるからである。酸性溶液乃至は塩基性溶液への浸漬は、溶液の温度が高い程、また溶液濃度が高い程親水化が迅速に進行する傾向がある。しかし高温及び高濃度溶液への基材の暴露は、基材にダメージを与えやすいので註意が必要である。
【0039】
▲3▼ 汎用的に親水化する方法
基盤基材が金属、ガラス乃至は樹脂であっても処理可能な親水化方法は、親水性を発揮させる塗料を塗布する方法がある。この詳細は(親水化)の項目で前述した。その他、紫外線照射、オゾン雰囲気下に放置する等によっても可能である。
【0040】
ii)マスク形成
親水性パターンを形成する部分をマスクする。この方法は位置制御の面から印刷法が好適である。印刷方法は、マイクロファブリケーション2の基盤を用紙の代わりに印刷機乃至はインクジェットプリンタ等に入れ、マスク剤を印刷する方法がある。乃至はマスク剤を孔版印刷する方法等もある。マスク剤は撥水化処理の後に除去する必要があるので、水乃至は有機溶媒に易溶性で簡便に除去できるものが好適である。また当該マスク剤を除去した際に発生する廃液が環境に対して負荷が少ないものであれば猶好適である。例えば、有機溶媒に溶解するマスク剤は、オフセット印刷用インク乃至はレーザープリンター用トナーの一部等がある。しかしマスク方法は水溶性のインクを用いるオフィス乃至は家庭用のインクジェットプリンタが好適である。それは、当該プリンタ用インクが水に易溶性であり且つ吐出の位置精度が高く、また廃液処理が容易なためである。その他の方法は、テープ乃至はシールによるマスク等も有効である。その際、テープ乃至はシールの粘着部材は水溶性高分子、具体的には、ポリビニルアルコール乃至はポリアクリル酸等が好ましい。水溶性高分子は後述する撥水材を弾きやすい。
【0041】
iii)撥水化処理
基盤基材表面を撥水化処理する方法は、処理剤を単に塗布するだけのもの、その後加熱処理乃至は光照射処理により表面に処理剤を固定するもの等がある。その内、親水性パターンの形状の安定性が高いのは表面に処理剤を固定する方法である。表面に処理剤を塗布後、加熱処理を行なうことにより表面に固定する方法は、撥水化方法の項目で後述する。
【0042】
iv)マスク剤の除去
ii)で形成したマスク剤を除去する。除去の方法は、マスクを水溶媒乃至は有機溶媒で溶解する方法がある。乃至は粘着テープのマスク剤を剥がす等の操作を行なう。
【0043】
(2)撥水化処理後、親水性パターンを形成する方法
当該方法は、予め基盤基材に撥水化処理を行ない、その後親水性パターンを形成するものである。親水性パターン形成には、撥水化処理面にレーザ光、電子線、紫外線を照射することによって、撥水化処理材料を分解乃至は除去する方法がある。乃至は親水性パターンを形成する部分に高温の鏝を接触させることによって、当該撥水化処理材料を分解する方法等がある。
【0044】
本実施例の感染検査法は、上記のように、基盤上に、体液を滴下する検体保持部と、前記検体保持部から流出する狭隘な流路と、前記流路からの液体を収容する回収部を有するマイクロファブリケーションにおいて、前記検体保持部に、前記体液及び試薬を滴下し、前記流路の幅より広い直径の光束のレーザ光を前記流路に照射し、共焦点顕微鏡下において、上記流路中の病原体関連物質に短周期レーザ等を照射して所謂フォトン・バースト蛍光をCCDカメラ等で長周期光子積算することによって、病原体関連物質の有無を高感度且つ迅速に検出することができる。病原体関連物質を検出するために、上記マイクロファブリケーションにおいて、上記検体保持部に体液に対し当該体液中病原体関連物質と反応するための単数乃至は複数の試薬を滴下することができる。上記検体保持部と、上記流路及び上記回収部が微小であることによって、採取する体液の少量化、患者への低侵襲性、on−site測定乃至は検査の汎用性を高めた、体液ウィルス検出プラットフォームを提供することができる。
【0045】
また、採取する体液量が少なく、体液中の病原体関連物質をon−siteで検出することができる。この為、患者に対する生活の質(QOL)の向上を図ることができる。
また、体液ウィルス等の迅速測定によって、手術執刀医乃至は手術作業従事者に対する註意点として、上記患者の感染症の危険性を認識させることができる。
【0046】
(実施例2)
実施例1記載のマイクロファブリケーション2において、上記検体保持部7及び流路5末端に配置する電極6の代わりに、ITO(Indium Tin Oxide)22に代表される透明導電体を蒸着する方法がある。これを図6に示す。
蒸着するところは検体保持部7及び流路5末端であり、それぞれの部位から上記マイクロファブリケーション2側面に向けて線状に蒸着し、上記マイクロファブリケーション2端に接極部8を設ける。従って電位は上記マイクロファブリケーション2側面から、コネクタ等を付加した電線等を用いて電位を印加する。
【0047】
(実施例3)
また別法として、実施例1記載のマイクロファブリケーション2において、マイクロファブリケーション2を一定の角度に傾ける別法を図7に示す。
当該別法は、電極6乃至は電位印加装置等が不要である。即ち共焦点顕微鏡ステージ1の開口部を利用し、当該開口部に棒状乃至は板状の物体23を挿入する。そして上記マイクロファブリケーション2の一端に棒状乃至は板状の上記物体23を接触させ、駆動部24により当該マイクロファブリケーション2を光軸3に連動的に上下する。従って共焦点顕微鏡ステージ1に上記マイクロファブリケーション2を固定するために、当該マイクロファブリケーションの一端を固定する止め25が必要である。そして上記検体保持部7内の上記反応物を上記流路5に液体ごと通過して上記回収部15に至る。本別法は電極6乃至は電位印加装置等の代わりに、上記物体及び共焦点顕微鏡のステージの駆動し、流路5中央が常に光軸3上にくるように制御する部分が必要になる。詳しくは、Holmlin, RE:“Ru(phen)2dppz2+ Luminescence: Dependence on DNA Sequences and Groove−Binding Agents.”, Inorg. Chem., 37(1), p. 29 (1998)に記載されている。マイクロファブリケーションを一定の角度を以って置載することによって、病原体関連物質を液体ごと移動することができる。
【0048】
(実施例4)
茲で情報に関するシステムについて説明する。個人情報は、例えば記憶媒体によって管理される。急患の名前等の情報を上記マイクロファブリケーション2に入力する。そして出血を伴う場合、危険度の問題からHCVないしはHIVの試薬を選択する。HCV用ないしはHIV用の試薬はキットになっており、上記急患の血液に添加すればいいようになっている。検査結果は、フォトン・バースト蛍光を検出した場合は、核酸を検出したと判定して緊急医療作業従事者にHCVないしはHIV感染を表示する。出血を伴わなくても開腹する場合も同様の処理をする。急患で出血を伴わない場合、危険度の問題から結核菌乃至はレジオネラ菌を選択する。また危険度とは別に、問診等から疑われる感染症を医師が判断し、個人情報として患者名及び検査項目等の情報を上記マイクロファブリケーション2に入力することもできる。
【0049】
各感染症用の試薬はキットになっており、上記急患の血液に添加すればいいようになっている。検査結果は、CCD上の検出画像に1〜数10 mm程度の発光体があり且つ波長の異なる蛍光が混在した場合は、細菌を検出したと判定して緊急医療作業従事者に感染症感染の可能性を表示する。急患でなく通常医療においてウィルス検査をする場合、フォトン・バースト蛍光が検出されない場合は、核酸を検出しなかったと判定して医療作業従事者に非感染の可能性を表示する。また急患でなく通常医療において感染症検査をする場合、問診等から疑われる感染症を医師が判断し、個人情報として患者名及び検査項目等の情報を上記マイクロファブリケーション2に貼付してある記憶媒体に入力する。CCD上の検出画像に1〜数10mm程度の発光体がなく且つ均一な波長の蛍光を得た場合は、細菌を検出しなかったと判定して医療作業従事者に非感染の可能性を表示する。通常医療の場合、病状の情報をデータベースにフィードバックし、整理して個人情報として蓄積する。そして医療作業従事者が上記患者の医療に関するデータが時系列で反映するシステムを構築する。
【0050】
(実施例5)
実施例1記載の検査は危険度が高い疾患について検査を行なったが、緊急医療ではなく通常医療の場合も、診断の目的でさまざまな感染症の検査に用いることができることはいうまでもない。本発明は、少量化のためランニングコストが低いので、今まで値段が高くて常備できなかった病気の診断試薬も常備することができる。従って病気の発見が早く、早期診断に有用である。即ち患者に対する生活の質の向上に繋がる。
【0051】
(実施例6)
実施例1の図3の一例として、インターカレータとしてDAPI(4’, 6−Diamino−2−Phenylindol Dihydrochloride)を用いた。急患が運ばれてくる。緊急医療作業従事者は、特に出血を伴う場合は、危険度に応じてHCV乃至はHIV等に特異的な核酸断片をそれぞれ用意する。そして急患の血液を100 mL程度採取し、上記マイクロファブリケーション2の検体保持部7に滴下する。次にウィルス核溶解剤、当該核酸と相補的な核酸断片及びDAPIを同量滴下し、ピペッティングを行なう。
望ましくは、ここで数分放置できるとよい。これにより露呈したHCV等は特異的な核酸断片と結合して二重鎖を形成する。茲で反応温度はそれそれ核酸断片のTm(Melting Temperature)値程度であることが望ましい。二重鎖を形成した上記核酸にDAPIが挿入する。その後、上記マイクロファブリケーション2を共焦点顕微鏡上に置載する。茲で上記検体保持部7及び流路5末端間に電極6を挿入し、電位を印加する。因みに核酸乃至は細菌は負に帯電しているので、検体保持部7には−極、流路5末端には+極を印加すると、流路5上を検体保持部7から回収部に向かって核酸が移動する。また当該マイクロファブリケーション2は、流路5中央に共焦点顕微鏡の光軸3が合うように固定するため、共焦点顕微鏡のステージ上に溝4が掘ってある。
【0052】
次に闇箱9の蓋を閉め、光学的に遮蔽する。そして短周期レーザ10を上記流路5中の反応物に照射し、蛍光をCCDカメラ11で積算する。その結果、病原体関連物質が核酸の場合、青い発光点が観察されれば、ウィルスに感染している可能性を示す。この情報は、緊急医療作業従事者に直ちにフィードバックされ、緊急医療に役立てることができる。
【0053】
【発明の効果】
本発明により、検査時間が短く、またサンプル量及び試薬も少量である感染症検査が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例におけるマイクロファブリケーションを含めた全体のシステ
ムの一例である。
【図2】図1の一実施例におけるマイクロファブリケーションの平面図である。
【図3】図1の一実施例におけるマイクロファブリケーションの検査作業全体のフローである。
【図4】フォトン・バースト蛍光を用いたウィルス検出法を示す。
【図5】蛍光標識を用いた細菌検出法を示す。
【図6】図1の一実施例におけるマイクロファブリケーションにおいて、上記検体保持部及び流路5末端に配置する電極6の代わりに、ITOに代表される透明導電体を蒸着した平面図である。
【図7】図1の一実施例におけるマイクロファブリケーションにおいて、当該マイクロファブリケーションを傾ける方法の概要断面図である。
【符号の説明】
1:共焦点顕微鏡ステージ
2:マイクロファブリケーション(当該部分は、水との接触角が110°以上)3: 光軸
4: 溝
5: 流路
6: 電極
7:検体保持部
8:ポテンショスタット接極部
9:闇箱
10:レーザ
11:CCDカメラ
12:画像処理装置
13:コンピュータ
14:基盤
15:回収部
16:一本鎖核酸
17:インターカレータ
18:二重鎖核酸
19:二重鎖核酸に挿入したインターカレータ
20:モノクローナル抗体(蛍光標識)
21:蛍光標識
22:ITO (Indium Tin Oxide)
23:棒状乃至は板状の物体
24:駆動部
Claims (11)
- 基盤上に、体液を保持する単数又は複数の検体保持部と、前記検体保持部から流出する狭隘な流路と、前記流路からの液体を回収する回収部を有するマイクロファブリケーションと、前記マイクロファブリケーションの前記流路にレーザ光を照射するレーザ照射装置と受光装置からなり、前記流路の幅が前記流路を透過するレーザ光束の直径より小さいものである、前記体液中の異物を検出する感染検査装置。
- 請求項1において、前記基盤の表面が疎水性であり、前記検体保持部、前記流路と、前記回収部の表面が親水性であることを特徴とする感染検査装置。
- 請求項1において、前記レーザ照射装置からレーザが短周期で照射され、前記受光装置において該レーザによる蛍光または発光を該レーザの照射周期より長い周期で検出することを特徴とする感染検査装置。
- 請求項1において、前記マイクロファブリケーションが、前記検体保持部及び前記流路間に電位を印加する電極を有することを特徴とする感染検査装置。
- 請求項1において、前記マイクロファブリケーションが蓋を有しないことを特徴とする感染検査装置。
- 請求項1において、前記回収部の面積が前記検体保持部の面積と略等しいかそれ以上であることを特徴とする感染検査装置。
- 請求項4において、前記検体保持部及び前記流路末端間に電位を印加する前記電極が透明金属酸化物電極であることを特徴とする感染検査装置。
- 請求項1において、前記マイクロファブリケーションを保持するステージに、前記マイクロファブリケーションの傾斜角を調整する装置を設けたことを特徴とする感染検査装置。
- 基盤上に、体液を保持する単数又は複数の検体保持部と、前記検体保持部から流出する狭隘な流路と、前記流路からの液体を回収する回収部を有するマイクロファブリケーションを用い、前記流路に対して流路の幅より大きな直径の光束を有する短周期レーザを照射し、病原体関連物質より特異的に生ずる蛍光または発光を長周期に受光することによって、前記体液中の病原体を検出することを特徴とする感染検査方法。
- 請求項9において、前記病原体関連物質より特異的に生ずる蛍光または発光が、前記病原体関連物質が短周期レーザを照射されたことに起因するフォトン・バースト(photon−burst)であることを特徴とする感染検査方法。
- 基盤上に、体液を保持する単数又は複数の検体保持部と、前記検体保持部から流出する狭隘な流路と、前記流路からの液体を回収する回収部を有する感染検査用マイクロファブリケーション。
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