JP2004060715A - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジン停止中の車輪回転でも変速が起きないようにしてハイ発進を防止すると共に、そのためのポンプの余剰油を潤滑に用い得るようにする。
【解決手段】前進走行中は弁33が図示状態で、回路34の圧Pを元圧とする弁37を介した前進変速制御が行われ、後進走行中はスプール33aが押し込まれ、回路35の圧P を元圧とする弁38を介した後進変速制御が行われる。エンジン停止中は原動機駆動ポンプ21の停止で圧PD,が出力されない。牽引による車輪回転時は出力回転駆動ポンプ22が回路32に吐出圧を発生させる。前進牽引時、弁33が図示状態で、回路32のポンプ圧は弁37に達し、弁37は停車時用最ロー変速比を維持する変速を行う。後進牽引時、弁33が押し込み状態のため、ピストン室18H,18Lは無圧状態にされ、ピストン13は弾性手段51により中立位置を越えてハイ側ピストン室18Hに向かうのを阻止され、後進牽引時のハイ側変速を回避し得る。ポンプ22の余剰油は逆止弁49を開いて回路47よりパワーローラ潤滑部に至ってここを潤滑する。
【選択図】    図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トロイダル型無段変速機、特に車両用として有用なトロイダル型無段変速機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両用のトロイダル型無段変速機は通常、例えば特開平10−331938号公報に記載のごとく、エンジン等の原動機からの回転を入力される入力ディスクと、これに同軸に対向配置されるとともに車輪に常時駆動結合された出力ディスクと、これら入出力ディスク間で油膜の剪断により動力の受け渡しを行うパワーローラと、該パワーローラを回転自在に支持したトラニオンとを具える。
【0003】
トロイダル型無段変速機の変速に際しては、原動機により常時駆動されている原動機駆動ポンプからの制御圧を、車両の前進走行なら前進変速制御弁による制御下で、また後進走行なら後進変速制御弁による制御下で油圧サーボ機構に向かわせ、前進変速制御弁または後進変速制御弁からの制御圧に応動する油圧サーボ機構のサーボピストンによってトラニオンを介しパワーローラを、パワーローラ回転軸線が入出力ディスク回転軸線と交差した中立位置からトラニオン軸線方向へオフセットさせる。
【0004】
これによりパワーローラが入出力ディスクからトラニオン軸線周りの分力を受けるようになる結果、パワーローラはトラニオン軸線周りにおける自己傾転を生起されて入出力ディスクに対するパワーローラの接触軌跡円弧径を連続的に変化され、これにより無段変速を行わせることができる。
一方で上記変速の進行を油圧サーボ機構にフィードバックし、変速の進行につれてトラニオンを元のトラニオン軸線方向位置に向けて戻し、実変速比が指令変速比になったところでパワーローラを上記の中立位置に復帰させるようにして当該指令変速比を維持し得るようになす。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、原動機が運転されている間は原動機駆動ポンプから油圧が吐出されているため、上記サーボ機構が当該油圧によって制御可能であるものの、この変速制御油圧が発生していない原動機の停止状態で車両の牽引や惰性走行などにより出力ディスクに車輪側から回転力が逆入力されると、サーボ機構が無制御状態であるため、トロイダル型無段変速機が以下に説明する理由によって勝手に高速側変速比に変速(アップシフト)される傾向にある。
つまり、出力ディスクが上記の通り車輪により逆駆動される時、入力ディスク側のフリクションを反力受けとしてパワーローラが入力ディスクとの接触部からトラニオン軸線方向の分力を受け、パワーローラが高速側変速比へのアップシフトを生起させるトラニオン軸線方向へオフセットされ、前記の自己傾転によりトロイダル型無段変速機を高速側変速比にしてしまう。
【0006】
しかし、かようにトロイダル型無段変速機が高速側変速比にされた状態から原動機の始動により発進を行おうとすると、以下の問題を生ずる。
つまり、この時トロイダル型無段変速機は発進故に指令変速比を当然最低速変速比にしているが、上記発進前の高速側変速比から当該最低速変速比への変速は車両の発進により回転が発生しないと行われ得ないため、上記高速側変速比が選択された状態での発進(所謂ハイ発進)となる。
このハイ発進時は高速側変速比故のトルク不足で運転者に発進性能が悪いと感じさせるという問題を生ずる。
【0007】
本発明は、原動機の停止中でも車輪が回転すると油圧を発生するような出力回転駆動ポンプを設け、これからの油圧により例えば上記したごとき原動機停止中における不用意な変速の発生を防止し得るようにし、
併せて、当該出力回転駆動ポンプからの余剰油を変速機の潤滑に用い得るようにして、原動機による走行中は勿論、原動機停止中の車輪回転時も要求通りの潤滑を行い得るようにしたトロイダル型無段変速機を提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的のため本発明によるトロイダル型無段変速機は、請求項1に記載のごとく、上記した型式のトロイダル型無段変速機、特に、原動機からの回転を回転方向切替機構等により可逆転下に入力されるトロイダル型無段変速機を前提とし、これに対し、車輪の回転に応動して油圧を発生する出力回転駆動ポンプを設ける。
そして、入力回転方向ごとの変速制御弁をそれぞれ内包し、制御圧発生源から油圧サーボ機構までの制御圧回路のうち、少なくとも一方の制御圧回路に上記出力回転駆動ポンプからの吐出圧を供給して、原動機停止状態で車輪が対応方向へ回転される時のアップシフトを防止するよう、出力回転駆動ポンプの吐出回路を上記少なくとも一方の制御圧回路に接続する。
更に、出力回転駆動ポンプの吐出回路から分岐して潤滑要求箇所に至る潤滑回路を設ける。
【0009】
【発明の効果】
かかる本発明の構成によれば、原動機の停止中に車輪が回転したとしても、この車輪回転が、上記少なくとも一方の制御圧回路における変速制御弁に対応した回転方向である時は、出力回転駆動ポンプから当該少なくとも一方の制御圧回路に至った吐出圧が、上記車輪の回転に伴うアップシフトを防止することとなり、原動機停止中の車輪回転による前記したハイ発進の事態を回避することができる。
【0010】
しかも本発明によれば、出力回転駆動ポンプの吐出回路から分岐して潤滑要求箇所に至る潤滑回路を設けたから、出力回転駆動ポンプの余剰油が潤滑要求箇所に達してここでの潤滑に供され、原動機による走行中であるか、原動機停止中の車輪回転時であるかを問わず、出力回転駆動ポンプの余剰油を有効利用して当該箇所を潤滑することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1〜図4は、本発明の一実施の形態になるトロイダル型無段変速機を示し、図1はトロイダル型無段変速機の伝動系の模式図である。
図1に示すトロイダル型無段変速機の伝動系は、原動機としてのエンジン1からトルクコンバータ2を経てエンジン回転を入力され、このエンジン回転をそのまま伝達したり(Dレンジでの前進走行時)、逆転させて伝達したり(Rレンジでの後進走行時)、後段へ伝えなくする(P,Nレンジでの駐停車時)前後進切り換え機構3を具える。
【0012】
前後進切り換え機構3の後段には、2個のトロイダル伝動ユニット(フロント側トロイダル伝動ユニット4、およびリヤ側トロイダル伝動ユニット5)を同軸背中合わせに設け、トロイダル型無段変速機をダブルキャビティー式トロイダル型無段変速機として構成する。
これらトロイダル伝動ユニット4,5はそれぞれ、入力ディスク6と、これに同軸に対向配置した出力ディスク7と、対応する入出力ディスク間に介在させた一対ずつのパワーローラ8とを具えた同様な構成とする。
【0013】
両トロイダル伝動ユニット4,5は、それぞれの出力ディスク7が背中合わせになるよう同軸に配置し、この配置に当たっては、それぞれの入力ディスク6を主軸9に回転係合させて前後進切り換え機構3からの可逆回転が共通に入力されるようになし、それぞれの出力ディスク7を主軸9上に回転自在に支持する。
また両出力ディスク7は中空出力軸10を介して相互に一体結合し、この中空出力軸10上に出力歯車11を固設する。
【0014】
パワーローラ8は図4に示すように、個々のトラニオン12に回転自在に支持し、各トラニオン12の下端には、油圧サーボ機構を成すサーボピストン13を同軸に結合して設け、サーボピストン13をサーボピストンボディー18内に摺動自在に嵌合してロー側ピストン室18Lおよびハイ側ピストン室18Hを画成する。
なお、図4に示すパワーローラ8では上側のピストン室がロー側ピストン室18L、下側のピストン室がハイ側ピストン室18Hであるが、図1において上下方向反対側に位置するパワーローラ8ではロー側ピストン室18Lおよびハイ側ピストン室18Hが図4の場合と逆になる)。
これらサーボピストン13により全てのトラニオン12を同位相(同じ変速方向)で同期してストロークさせることにより、以下の変速制御を行うものとする。
【0015】
以下に変速作用を概略説明するに、前後進切り換え機構3からの回転は両入力ディスク6へ共通に伝達され、入力ディスク6の回転は対応するパワーローラ8に伝達されて、これらパワーローラ8を軸線O の周りに回転させる。
そして、パワーローラ8は対応する出力ディスク7に回転を伝達し、この回転が共通な出力ギヤ11から、これに噛合するカウンターギヤ14およびカウンターシャフト15、並びに歯車組16を順次経て、主軸9の後端に同軸配置した変速機出力軸17から取り出され、図示せざる駆動車輪に達する。
【0016】
ここで、パワーローラ8をサーボピストン13(図4参照)によりトラニオン12を介し同期して、パワーローラ回転軸線O と直交するトラニオン(傾転)軸線O の方向に同位相で、図1および図4に示す中立位置(非変速位置)からストロークさせ、パワーローラ回転軸線O を入出力ディスク回転軸線O3 からオフセットさせると、パワーローラ8が回転時の分力によりトラニオン軸線Oの周りに同期して同位相で傾転される。
【0017】
かかるパワーローラ8の自己傾転により、対応する入出力ディスク6,7に対するパワーローラ8の接触軌跡円半径が連続的に変化し、両トロイダル伝動ユニット4,5の変速比を同様に無段階に変化させることができる。
なお変速比が指令変速比になったところで、サーボピストン13によりトラニオン12を介しパワーローラ8を上記オフセットが0の初期ストローク位置に戻すことで、パワーローラ8の自己傾転は行われなくなり指令変速比を保つことができる。
【0018】
前後進切り換え機構3の切り換え制御を含むトロイダル型無段変速機の変速制御のために通常通り、図1に示すごとくエンジン1により駆動される原動機駆動ポンプ21を設けるが、その他に本発明の前記した目的を達成するため、エンジン1に近いカウンターシャフト15の前端により駆動される出力回転駆動ポンプ22を設ける。
ここでカウンターシャフト15は、変速機出力軸17および歯車組16を介して車輪に常時駆動結合されており、従って出力回転駆動ポンプ22は、エンジン1が停止していても車両の牽引中や惰性走行中のように車輪が回転されている間は、この回転に応動して駆動される。
【0019】
出力回転駆動ポンプ22は図2および図3に示す如きもので、カウンターシャフト15の前端にピン23で閂結合した偏心カム24を具え、これをポンプハウジング25内に収納する。
ポンプハウジング25は固定せず、偏心カム24の回転軸線周りに自由に回転可能とし、このポンプハウジング25には更にラジアルプランジャ26を摺動自在に嵌合する。
ラジアルプランジャ26はバネ27で偏心カム24のカム面に押圧し、偏心カム24の回転中そのカム面により半径方向へ往復ストロークされることで、オイルパン液面下に開口するようポンプハウジング25に設けた吸入ポート28より吸入弁29を経てオイルを吸入し、同じくポンプハウジング25に設けた吐出ポート30より吐出弁31を経てオイルを吐出するものとする。
【0020】
偏心カム24はラジアルプランジャ26との接触部における引きずり摩擦により当該ラジアルプランジャ26を介してポンプハウジング25を同方向へ連れ廻し、車輪の前進回転で偏心カム24が図3の矢αで示す方向へ回転されている間、ポンプハウジング25は、出力回転駆動ポンプ22の油圧吐出回路32を構成するパイプ(同符号で示す)の外周フランジ32aと衝接した図3の実線位置に止まり、車輪の後進回転で偏心カム24が図3の矢βで示す方向へ回転されている間、ポンプハウジング25は、吐出ポート30と油圧吐出パイプ32との接続状態を保ったまま図3の二点鎖線位置となり、後で詳述する前後進切り換え弁33のスプール33aを図示の前進位置から限界位置に押し込んだ後進位置にするものとする。
【0021】
出力回転駆動ポンプ22の油圧吐出回路32は、図4のごとく既存の変速制御油圧回路に接続して前記した本発明の目的を達成し得るようになす。
先ず既存の変速制御油圧回路を説明するにこれは、前記した原動機駆動ポンプ21からの作動油をもとに、特開平11−94062号公報に記載のものと同様の回路構成により所定の油圧制御を行って、運転者がマニュアルバルブ(図示せず)をDレンジにした前進走行希望中はDレンジ圧PD をDレンジ圧回路34に出力し、運転者がマニュアルバルブ(図示せず)をRレンジにした後進走行希望中はRレンジ圧PR をRレンジ圧回路35に出力する油圧制御回路36を具える。
これらDレンジ圧回路34およびRレンジ圧回路35にそれぞれ、特開平11−94062号公報に記載のものと同様の前進変速制御弁37および後進変速制御弁38を挿置し、これら変速制御弁37,38とサーボピストン13の両側油室18H,18Lとの間に前後進切り換え弁33を挿入した構成とする。
【0022】
前進変速制御弁37は、スプール37aに連節した変速制御レバー39を具え、該変速制御レバー39の一端をステップモータにより指令変速比に対応した位置にされ、他端にフォワードプリセスカムを経て変速進行状態をフィードバックされるもので、以下のごとくに作用するものとする。
変速制御レバー39の一端をステップモータにより指令変速比に対応した位置にする時、変速制御レバー39はその一端を支点として対応方向へ回動することによりスプール37aを対応方向へストロークさせる。
これにより出力回路40,41の一方に回路34のDレンジ圧PD を供給するとともに他方をドレンさせることで、両者間の差圧により前後進切り換え弁33(前進回転時のため、図4に示す状態である)の出力回路42,43を経てサーボピストン13を中立位置からストロークさせ、指令変速比へ向けての変速を行わせる。
当該前進回転時は、ハイ側ピストン室18Hがロー側ピストン室18Lより高圧になることでアップシフトが行われ、逆にロー側ピストン室18Lがハイ側ピストン室18Hより高圧になることでダウンシフトが行われる。
当該変速の進行はフォワードプリセスカムを介して変速制御レバー39の上記他端にフィードバックされ、変速の進行につれサーボピストン13を中立位置に戻すようストローク制御しつつ、実変速比が指令変速比に達した時に丁度スプール37aを出力回路40,41の双方が閉じられた元の位置に戻すことで指令変速比を維持する。
【0023】
後進変速制御弁38は、Rレンジへの投入時に実変速比が後進用の固定した指令変速比に向かうようスプール38aがリバースプリセスカム(図示せず)を介して対応方向へストロークされ、これにより出力回路44,45の一方に回路35のRレンジ圧PRを供給するとともに他方をドレンさせることで、両者間の差圧により前後進切り換え弁33(後進回転時のため、スプール33aが図4に示す位置から押し込まれている)の出力回路42,43を経てサーボピストン13を中立位置からストロークさせ、指令変速比へ向けての変速を行わせる。
当該後進回転時は前進回転時と逆に、ハイ側ピストン室18Hがロー側ピストン室18Lより高圧になることでダウンシフトが行われ、逆にロー側ピストン室18Lがハイ側ピストン室18Hより高圧になることでアップシフトが行われる。
当該変速の進行につれリバースプリセスカムは、サーボピストン13を中立位置に戻すようストローク制御しつつ、実変速比が後進用の指令変速比に達した時に丁度スプール38aを出力回路44,45の双方が閉じられた元の位置に戻すことで後進用の指令変速比を維持する。
【0024】
前後進切り換え弁33は図3にも示すが、コントロールバルブボディー57に挿置したスプール33aを通常はバネ33bにより図示の前進位置にされて出力回路42,43をそれぞれ回路40,41に通じ、これにより前進変速制御弁37による前記変速制御を可能にする。
一方で前後進切り換え弁33は、図2および図3につき前述したごとく、後進走行時に出力回転駆動ポンプ22のハウジング25によりスプール33aをバネ33bに抗して押し込まれた後進位置にされて出力回路42,43をそれぞれ回路44,45に通じ、これにより後進変速制御弁38による前記変速制御を可能にする。
ここで、前進変速制御弁37および前後進切り換え弁33を含む回路34,40,41,42,43は、前進用の制御圧回路を構成し、後進変速制御弁38および前後進切り換え弁33を含む回路35,44,45,42,43は、後進用の制御圧回路を構成する。
【0025】
出力回転駆動ポンプ22の油圧吐出回路32は前記した本発明の目的を達成するため図4に示すごとく、上記した既存の変速制御油圧回路におけるDレンジ圧回路34に逆止弁46を介して接続し、当該接続箇所よりも油圧制御回路36に近いDレンジ圧回路34の箇所に逆止弁48を挿置する。
出力回転駆動ポンプ22の吐出回路32における逆止弁46は、回路34から出力回転駆動ポンプ22への油流を阻止する向きに配置し、前進用制御圧回路を成すDレンジ圧回路34における逆止弁48は、油圧制御回路36に向かう油流を阻止する向きに配置する。
【0026】
出力回転駆動ポンプ22に近い吐出回路32の箇所に、出力回転駆動ポンプ22のためのリリーフ弁50を設け、吐出回路32には更に潤滑回路47を接続して設け、この潤滑回路に、ポンプ22への油流を阻止する逆止弁49を挿置する。
潤滑回路47は、トロイダル型無段変速機における任意の潤滑要求箇所、例えば図4におけるごとくパワーローラ8の潤滑部に至らしめる。
ここで、吐出回路32における逆止弁46および制御圧回路34における逆止弁48はそれぞれ、本来の逆止機能を果たすだけでよいため、流路抵抗の観点からもその開弁圧をできるだけ低くし、潤滑回路47における逆止弁49の開弁圧はこれらの開弁圧よりも高くするが、リリーフ弁50の開弁圧よりも低くする。
【0027】
そして、サーボピストン13のハイ側ピストン室18Hに板バネ型式の弾性手段51を設け、これによりサーボピストン13をロー側ピストン室18Lに向けて少なくとも前記中立位置に対応した位置まで付勢する。
この弾性手段51は、後進牽引などでサーボピストン13がロー側ピストン室18Lからハイ側ピストン室18Hに向けてストロークするのを、つまり後進時にロー側ピストン室18Lをハイ側ピストン室18Hよりも高圧にした時に生起される変速と同じ方向へのアップシフトを阻止して、後進牽引時にハイ側変速比になるのを防止する、後進時ハイ発進防止用弾性手段を構成する。
【0028】
上記実施の形態になるトロイダル型無段変速機の変速作用を次に説明する。
Dレンジにした前進走行中はカウンターシャフト15が出力回転駆動ポンプ22の偏心カム24を図3の矢印α方向に回転するため、前後進切り換え弁33は図3および図4に示す状態になっており、回路34からのDレンジ圧PD を元圧とする前進変速制御弁37を介した前記の前進変速制御が行われる。
なおこの間、回路34からポンプ22の方向への油流は逆止弁46により阻止され、上記の前進変速制御が阻害されることはない。
Rレンジにした後進走行中はカウンターシャフト15が出力回転駆動ポンプ22の偏心カム24を図3の矢印β方向に回転するため、前後進切り換え弁33は、図3に二点鎖線で示す位置への回動するポンプハウジング25によりスプール33aを押し込まれた状態となって、回路42,43をそれぞれ回路44,45に切り換え接続し、回路35からのRレンジ圧PR を元圧とする後進変速制御弁38を介した前記の後進変速制御が行われる。
【0029】
エンジン1の停止中は、これにより駆動される原動機駆動ポンプ21から作動油が吐出されないため、回路34,35からDレンジ圧PD およびRレンジ圧PR が出力されることはなく、これらを元圧とした変速制御弁37,38による変速制御が行われることはない。
かかるエンジン1の停止中でも、車輪が牽引や惰性走行により回転されると、車輪に常時結合されているカウンターシャフト15が出力回転駆動ポンプ22の偏心カム24を、前進方向の車輪回転時は図3の矢印α方向へ、また後進方向への車輪回転時は図3のβ方向へ回転させる。
【0030】
出力回転駆動ポンプ22はラジアルプランジャポンプであるが故に、偏心カム24が何れの方向へ回転される場合も、回路32に作動油を吐出して油圧を発生させる。
回路32へのポンプ吐出圧は逆止弁46を経て前進変速制御弁37に達し、エンジン停止中で車輪が牽引や惰性走行により前進回転される場合は、前後進切り換え弁33が図4に示す状態であることにより、前進変速制御弁37に達した出力回転駆動ポンプ22のポンプ吐出圧はこの前進変速制御弁37による制御下で前後進切り換え弁33を経てサーボピストン13に向かい、以下の作用を奏する。
【0031】
つまり、エンジン1の停止中に車輪が牽引や惰性走行により前進回転されると、図4のトラニオン12が前記したごとくトラニオン軸線O2 方向へストロークしてパワーローラ8をオフセットさせようとする。
車輪の前進回転によりトラニオン12が図4の矢δで示すように上方へストロークしてアップシフトを生起しようとした場合につき説明すると、この時フォワードプリセスカムが変速制御レバー39の右端を前記のフィードバックにより矢γで示すように逆の下方へ変位させ、スプール37aの同方向ストロークによりロー側ピストン室18Lの圧力を出力回転駆動ポンプ22からの吐出圧で高くするとともにハイ側ピストン室18Hの圧力をドレンして低下させ、トラニオン12を逆方向の下方へストロークさせる。
【0032】
これによりトラニオン12は中立位置を超えて逆方向へストロークするが、この時はフォワードプリセスカムが変速制御レバー39の右端を逆方向へ変位させて、スプール37aの同方向ストロークによりハイ側ピストン室18Hの圧力を出力回転駆動ポンプ22からの吐出圧で高くするとともにロー側ピストン室18Lの圧力をドレンして低下させ、トラニオン12を逆方向へストロークさせる。以上の作用の繰り返しにより、エンジン停止中に車輪が牽引や惰性走行により前進回転されて変速が起きようとしても、変速制御レバー39の左端に指令した指令変速比に実変速比が戻ったところでスプール37aがサーボピストン13の上下両側室18H,18Lを共に閉じた中立位置に戻り、以後はサーボピストン13の上下両側室18H,18Lが共に閉じられているため、トラニオン12の何れ方向のストロークも生ずることがなくて指令変速比が保たれ、前記のハイ発進を回避することができる。
なお上記の作用中、回路32から回路34に達した出力回転駆動ポンプ22の吐出圧が油圧制御回路36の側へ逃げるのを逆止弁48で防止することから、上記のハイ発進防止作用が阻害されることはない。
【0033】
一方で、エンジン停止中に車輪が後進回転される場合、前後進切り換え弁33がスプール33aを図4の位置から押し込まれて回路42,43が回路44,45に切り換え接続されるため、また回路35には出力回転駆動ポンプ22の吐出圧が達しないため、後進変速制御弁38によるハイ発進防止作用を期待できないが、かかる後進回転時のハイ発進防止は以下のようにして得られる。
つまり、この場合サーボピストン13の両側における室18Hおよび18Lの何れも無圧状態にされているため、サーボピストン13は板バネ型式の弾性手段51によりストローク位置を決められ、この弾性手段51がサーボピストン13を前記したごとく、少なくとも中立位置に対応したストローク位置までロー側ピストン室18Lに向け付勢するものであることから、サーボピストン13が中立位置を越えてロー側ピストン室18Lからハイ側ピストン室18Hに向かうのを防止することができ、エンジン停止中に車輪が牽引などで後進回転される時のハイ側変速比へのアップシフトを防止してハイ発進を回避することができる。
【0034】
以下、潤滑回路47による潤滑作用を説明する。
エンジン1の運転により原動機駆動ポンプ21がエンジン駆動されていて、且つ、Dレンジ選択中であれば、回路34にDレンジ圧PD が発生しており、これがトロイダル型無段変速機の元圧であるライン圧と同じ高圧であることから、走行により出力回転駆動ポンプ22から回路32に吐出圧が出力されていても、これに打ち勝って回路34のDレンジ圧PD が逆止弁46を閉状態に保つ。
従って、出力回転駆動ポンプ22から回路32へのポンプ吐出圧が逆止弁49を開いて作動油をパワーローラ潤滑部などの潤滑要求箇所に供給し、ここを潤滑することができる。
【0035】
エンジン停止中に車輪が回転されている間は、出力回転駆動ポンプ22から回路32への作動油が、一方で逆止弁48において行き止まりとなり、他方で後進回転時なら前後進切り換え弁33において、また前進回転時なら前記ハイ発進防止後にピストン室18H,18Lにおいてそれぞれ行き止りとなる。
従って、出力回転駆動ポンプ22から回路32へのポンプ吐出圧が上昇し、これが逆止弁49の開弁圧を越えたところで、逆止弁49が開いて作動油をパワーローラ潤滑部などの潤滑要求箇所に供給し、エンジン停止中の牽引時などにおいてもここを潤滑することができる。
出力回転駆動ポンプ22からの余剰油を上述のように潤滑に用いても尚作動油量が余って回路32が高圧になる場合は、これがリリーフ弁50の開弁圧を越えたところで、作動油を当該リリーフ弁50を経てドレンすることとし、これにより回路への悪影響を回避する。
【0036】
図5は、本発明の他の実施の形態を示し、本実施の形態においては、出力回転駆動ポンプ22の油圧吐出回路32を、図4の場合と異なり、Rレンジ圧回路35に逆止弁46を介して接続し、ポンプ22からの吐出圧を、エンジン停止中の後進回転時におけるハイ側変速防止に用いるようになす。
Rレンジ圧回路35には更に、回路32の接続箇所よりも油圧制御回路36に近い箇所において逆止弁48を挿置する。
出力回転駆動ポンプ22の吐出回路32における逆止弁46は、回路35から出力回転駆動ポンプ22への油流を阻止する向きに配置し、後進制御圧回路を成すRレンジ圧回路35における逆止弁48は、油圧制御回路36に向かう油流を阻止する向きに配置する。
【0037】
出力回転駆動ポンプ22に近い吐出回路32の箇所に、出力回転駆動ポンプ22のためのリリーフ弁50を設け、吐出回路32には更に潤滑回路47を接続して設け、この潤滑回路に、ポンプ22への油流を阻止する逆止弁49を挿置する。
潤滑回路47は、トロイダル型無段変速機における任意の潤滑要求箇所、例えば図4におけるごとくパワーローラ8の潤滑部に至らしめる。
ここで、吐出回路32における逆止弁46および制御圧回路35における逆止弁48はそれぞれ、本来の逆止機能を果たすだけでよいため、流路抵抗の観点からもその開弁圧をできるだけ低くし、潤滑回路47における逆止弁49の開弁圧はこれらの開弁圧よりも高くするが、リリーフ弁50の開弁圧よりも低くする。
【0038】
そして、サーボピストン13のロー側ピストン室18Lに板バネ型式の弾性手段52を設け、これによりサーボピストン13をハイ側ピストン室18Hに向けて少なくとも前記中立位置に対応した位置まで付勢する。
この弾性手段52は、前進牽引などでサーボピストン13がハイ側ピストン室18Hからロー側ピストン室18Lに向けてストロークするのを、つまり前進時にハイ側ピストン室18Hをロー側ピストン室18Lよりも高圧にした時に生起される変速と同じ方向へのアップシフトを阻止して、前進牽引時にハイ側変速比になるのを防止する、前進時ハイ発進防止用弾性手段を構成する。
【0039】
上記実施の形態になるトロイダル型無段変速機の変速作用を次に説明する。
エンジン回転時における変速作用は、図4につき前述したと同様に行われるためその重複説明を避け、エンジン停止時における変速作用を以下に説明する。
エンジン1の停止中は、原動機駆動ポンプ21から作動油が吐出されないため、回路34,35からDレンジ圧PD およびRレンジ圧PR が出力されることはなく、これらを元圧とした変速制御弁37,38による変速制御が行われることはない。
かかるエンジン停止中でも、車輪が牽引や惰性走行により回転されると、出力回転駆動ポンプ22は回路32に作動油を吐出して油圧を発生させる。
回路32へのポンプ吐出圧は逆止弁46を経て後進変速制御弁38に達し、エンジン停止中で車輪が牽引や惰性走行により後進回転される場合は、前後進切り換え弁33がスプール33aを図4に示す位置から押し込まれていることにより、後進変速制御弁38に達した出力回転駆動ポンプ22のポンプ吐出圧はこの後進変速制御弁38による制御下で前後進切り換え弁33を経てサーボピストン13に向かい、以下の作用を奏する。
【0040】
つまり、エンジン1の停止中に車輪が牽引や惰性走行により後進回転されると、図5のトラニオン12が前記したごとくトラニオン軸線O2 方向へストロークしてパワーローラ8をオフセットさせようとする。
トラニオン12が中立位置から少しでも矢εで示すアップシフト方向にずれてトロイダル型無段変速機をアップシフトさせようとすると、これがリバースプリセスカムを介して後進変速制御弁38のスプール38aに矢ρで示すようにフィードバックされる。
【0041】
これにより後進変速制御弁38が、回路44をドレンすると共に回路45へ回路35の出力回転駆動ポンプ吐出圧を供給する結果、ロー側ピストン室18Lの内圧が低下し、ハイ側ピストン室18Hの内圧が上昇することでトラニオン12の上記ストロークεは行われることがない。
そして、上記ロー側ピストン室18Lの内圧低下、およびハイ側ピストン室18Hの内圧上昇に起因してサーボピストン13は板バネ52に抗し押動されることとなり、トラニオン12の対応方向へのストロークによりトロイダル型無段変速機のダウンシフトを生起させることができる。
以上の作用の繰り返しにより、エンジン停止中に車輪が牽引や惰性走行で後進回転されても変速機を、後進変速制御弁38に指示された後進用の指令変速比(ロー側変速比)に保持することができる。
なお上記の作用中、回路32から回路35への出力回転駆動ポンプ吐出圧が原動機駆動ポンプ21の方向へ逃げるのを逆止弁48により阻止することができ、上記のハイ発進防止作用が不能になることはない。
【0042】
一方で、エンジン停止中に車輪が前進回転される場合、前後進切り換え弁33が図5の状態にあって回路42,43が回路40,41に切り換え接続されるため、また回路34には出力回転駆動ポンプ22の吐出圧が達しないため、前進変速制御弁37によるハイ発進防止作用を期待できないが、かかる前進回転時のハイ発進防止は以下のようにして得られる。
つまり、この場合サーボピストン13の両側における室18Hおよび18Lの何れも無圧状態にされているため、サーボピストン13は板バネ型式の弾性手段52によりストローク位置を決められ、この弾性手段52がサーボピストン13を前記したごとく、少なくとも中立位置に対応したストローク位置までハイ側ピストン室18H向け付勢するものであることから、サーボピストン13が中立位置を越えてハイ側ピストン室18Hからロー側ピストン室18Lに向かうのを防止することができ、エンジン停止中に車輪が牽引などで前進回転される時のハイ側変速比へのアップシフトを防止してハイ発進を回避することができる。
【0043】
潤滑回路47による潤滑作用は、図4につき前述したとほぼ同様の原理で行われ、
エンジン1の運転により原動機駆動ポンプ21がエンジン駆動されていて、且つ、Rレンジ選択中であれば、回路35にRレンジ圧PR が発生しており、これがトロイダル型無段変速機の元圧であるライン圧と同じ高圧であることから、走行により出力回転駆動ポンプ22から回路32に吐出圧が出力されていても、これに打ち勝って回路35のRレンジ圧PR が逆止弁46を閉状態に保つ。
従って、出力回転駆動ポンプ22から回路32へのポンプ吐出圧が逆止弁49を開いて作動油をパワーローラ潤滑部などの潤滑要求箇所に供給し、ここを潤滑することができる。
【0044】
エンジン停止中に車輪が回転されている間は、出力回転駆動ポンプ22から回路32への作動油が、一方で逆止弁48において行き止まりとなり、他方で後進回転時なら前後進切り換え弁33において、また前進回転時なら前記ハイ発進防止後にピストン室18H,18Lにおいてそれぞれ行き止りとなる。
従って、出力回転駆動ポンプ22から回路32へのポンプ吐出圧が上昇し、これが逆止弁49の開弁圧を越えたところで、逆止弁49が開いて作動油をパワーローラ潤滑部などの潤滑要求箇所に供給し、エンジン停止中の牽引時などにおいてもここを潤滑することができる。
出力回転駆動ポンプ22からの余剰油を上述のように潤滑に用いても尚作動油量が余って回路32が高圧になる場合は、これがリリーフ弁50の開弁圧を越えたところで、作動油を当該リリーフ弁50を経てドレンすることとし、これにより回路への悪影響を回避する。
【0045】
図6および図7は、本発明の更に他の実施の形態になるトロイダル型無段変速機を示し、本実施の形態においては、図6に示すごとく油圧源として油圧制御回路53を設ける。
この油圧制御回路53は、前記した原動機駆動ポンプ21からの作動油を媒体としてこれを所定のライン圧PL に調圧するもので、このライン圧Pはメイン回路54およびこれから分岐したサブ回路55にそれぞれ出力する。
メイン回路54には、前記したと同様な前進変速制御弁37を挿置し、サブ回路55は、前後進切り換え弁33のポート33c,33dを経てサブ回路56に接続し、このサブ回路56に前記したと同様な後進変速制御弁38を挿置する。これら変速制御弁37,38とサーボピストン13の両側ピストン室18L,18Hとの間に前後進切り換え弁33を挿入し、この前後進切り換え弁33は、前進変速制御弁37、後進変速制御弁38、およびその他の弁と共にコントロールバルブボディー57(図7参照)に内蔵させる。
【0046】
前進変速制御弁37および後進変速制御弁38はそれぞれ、図4および図5におけるDレンジ圧P およびRレンジ圧P に代えてライン圧P をされる以外は前記したと同様に機能するものとする。
前後進切り換え弁33は図7にも示すが、コントロールバルブボディー57内に摺動自在に挿入したスプール33aを通常はバネ33bにより図示の前進位置にされて出力回路42,43をそれぞれ回路40,41に通じ、これにより前進変速制御弁37による前記の変速制御を可能にする。
前後進切り換え弁33は更に前記したポート33c,33dを具え、図示の前進位置では、ポート33c,33d間を遮断しているため、サブ回路55から後進変速制御弁38にライン圧PL を供給せず、後進変速制御弁37による前記の変速制御が無駄に行われることはない。
【0047】
一方で前後進切り換え弁33は、図3につき前述したと同様、後進走行中、出力回転駆動ポンプ22のハウジング25により、または、出力回転駆動ポンプ22を図8につき後述するごとくに構成した場合に必要な周知のリバースセンサによりスプール33aをバネ33bに抗して押し込まれた後進位置にされ、出力回路42,43をそれぞれ回路44,45に切り換え接続する。
また当該前後進切り換え弁33の後進位置ではポート33c,33d間が開通されるため、サブ回路55からサブ回路56を経て後進変速制御弁38にライン圧Pが供給され、従って後進変速制御弁37による前記の変速制御が可能である。
なお、前後進切り換え弁33のスプール33aを図2および図3につき前述したように出力回転駆動ポンプ22のハウジング25により後進位置に押し込む代わりに、出力回転駆動ポンプ22を図8につき後述するごとくに構成した場合に採用すべき周知のリバースセンサによりスプール33aを押し込む場合は後進時において当該リバースセンサの潤滑が必要であるが、この潤滑はサブ回路56から逆止弁58を経て供給される作動油で行う。
ここで逆止弁58の開弁圧は、サブ回路56内のライン圧Pが後進変速制御弁38による変速制御に影響するほどに低下することのない設定圧とする。
【0048】
なお出力回転駆動ポンプ22は、図2、図3、および図7に示すごとき前述構成とする代わりに、図8に示すごとく全てのサーボピストン13に共通なサーボピストンボディー18に内蔵させることができる。
つまり、カウンターシャフト15と共に回転する偏心カム24によりストロークされるラジアルプランジャ26をサーボピストンボディー18に摺動自在に嵌合し、このラジアルプランジャ26をバネ27で偏心カム24のカム面に押圧する。
ラジアルプランジャ26は偏心カム24のカム面により半径方向へ往復ストロークされることで、オイルパン液面下に開口するようサーボピストンボディー18に形成した吸入ポート28より図2に示す吸入弁29と同様な図示せざる吸入弁を経てオイルを吸入し、同じくサーボピストンボディー18に形成した吐出ポート30より図2に示す吐出弁31と同様な吐出弁を経てオイルを吐出するものとする。
サーボピストンボディー18には更に、吐出ポート30に通じる油圧吐出回路32を形成する。
【0049】
かように出力回転駆動ポンプ22をサーボピストンボディー18に内蔵させる場合、このポンプ22が図2、図3、および図7に示す構成のように後進回転時において前後進切り換え弁33のスプール33aを図7に示す前進位置から限界位置に押し込んだ後進位置にする機能を持たないことから、後進回転時において前後進切り換え弁33のスプール33aを前進位置から後進位置にするには、カウンターシャフト15の後進回転を機械的に検知する周知のリバースセンサによりこれを行う必要があること勿論である。
なお出力回転駆動ポンプ22は、サーボピストンボディー18に内蔵させる代わりに、図示しなかったが、これとは別体に構成してサーボピストンボディー18に取り付けたり、変速制御用のコントロールバルブボディー57(図3および図7参照)に内蔵させたり、これとは別体に構成してコントロールバルブボディー57に取り付けることもできるのは言うまでもない。
【0050】
出力回転駆動ポンプ22の油圧吐出回路32を本実施の形態においては、前記した本発明の目的を達成するため図6に示すごとく、上記したサブ回路55に接続する。
出力回転駆動ポンプ22には、前記した実施の形態と同様にリリーフ弁50を設け、これにより出力回転駆動ポンプ油圧吐出回路32の内圧がリリーフ弁50の開弁圧を越えて高くなることのないようにする。
【0051】
出力回転駆動ポンプ油圧吐出回路32には、前記した実施の形態におけると同様な逆流防止のための逆止弁46を設け、サブ回路55中には、出力回転駆動ポンプ油圧吐出回路32の接続箇所よりも原動機駆動ポンプ21に近い箇所に逆止弁59を挿置し、これを原動機駆動ポンプ21に向かう油流を阻止する向きに配置する。
逆止弁46の上流側において出力回転駆動ポンプ油圧吐出回路32に、前記実施の形態におけると同様な潤滑回路47を接続して設け、この潤滑回路47をパワーローラ8の潤滑部など、潤滑要求箇所に導くと共にこの潤滑回路47中に逆止弁49を挿入する。
ここで逆止弁46,59はそれぞれ、本来の逆止機能を果たすだけでよいため、流路抵抗の観点からもその開弁圧をできるだけ低くし、逆止弁49の開弁圧はこれらの開弁圧よりも高くするが、リリーフ弁50の開弁圧よりも低くする。
【0052】
そして、サーボピストン13のロー側ピストン室18Lに、図5におけると同様な板バネ型式の弾性手段52を設け、これによりサーボピストン13をハイ側ピストン室18Hに向けて少なくとも前記中立位置に対応した位置まで付勢する。
ここで弾性手段52は、前進牽引などでサーボピストン13がハイ側ピストン室18Hからロー側ピストン室18Lに向けてストロークするのを、つまり前進時にハイ側ピストン室18Hをロー側ピストン室18Lよりも高圧にした時に生起される変速と同じ方向へのアップシフトを阻止して、前進牽引時にハイ側変速比になるのを防止する、前進時ハイ発進防止用弾性手段を構成する。
【0053】
上記実施の形態になるトロイダル型無段変速機の変速作用を次に説明する。
前進走行中は前後進切り換え弁33が図6および図7に示す状態になっており、メイン回路54からのライン圧Pを元圧とする前進変速制御弁37を介した前記の前進変速制御が行われる。
後進走行中は前後進切り換え弁33がスプール33aを押し込まれた状態になり、サブ回路55,56からのライン圧P を元圧とする後進変速制御弁38を介した前記の後進変速制御が行われる。
なお後進走行時の当該変速中において、サブ回路55から出力回転駆動ポンプ22の方向への油流は逆止弁46により阻止され、サブ回路55のライン圧Pが逃げて上記の変速が妨げられる事態の発生を回避することができる。
【0054】
エンジン1の停止中は、これにより駆動される原動機駆動ポンプ21から作動油が吐出されないため、メイン回路54からライン圧Pが出力されることはなく、これを元圧とした変速制御弁37,38による上記の変速制御が行われることはない。
かかるエンジン停止中でも、車輪が牽引や惰性走行により回転されると出力回転駆動ポンプ22は回路32に作動油を吐出して回転数に応じた油圧を発生させる。
【0055】
エンジン停止中に車輪が後進回転されている場合、前後進切り換え弁33が図6および図7の位置から押し込まれてポート33c,33d間を開通しているため、回路32の出力回転駆動ポンプ吐出圧は逆止弁46、ポート33c,33d、およびサブ回路56を経て後進変速制御弁38に達する。
ここで後進変速制御弁38は、サブ回路56からの出力回転駆動ポンプ吐出圧を元圧として前記の作用により固定の後進時用変速比(後進用のためロー側変速比)を維持するような変速を行う。
なお、後進回転速度低下による出力回転駆動ポンプ吐出圧の低下で上記の変速制御が所定通りになされ得なくなり、後進回転時の逆駆動力によりトラニオン12が中立位置から少しでも矢εで示すアップシフト方向にずれてトロイダル型無段変速機をアップシフトさせようとすると、これがリバースプリセスカムを介して後進変速制御弁38のスプール38aに矢ρで示すようにフィードバックされる。
【0056】
これにより後進変速制御弁38が、回路44をドレンポート38bに通じると共に回路45へ回路48の出力回転駆動ポンプ吐出圧を供給する結果、ロー側ピストン室18Lの内圧が低下し、ハイ側ピストン室18Hの内圧が上昇することでトラニオン12の上記ストロークεは行われることがない。
そして、上記ロー側ピストン室18Lの内圧低下、およびハイ側ピストン室18Hの内圧上昇に起因してサーボピストン13は板バネ52に抗し押動されることとなり、トラニオン12の対応方向へのストロークによりトロイダル型無段変速機のダウンシフトを生起させることができる。
以上の作用の繰り返しにより、エンジン1の停止中に車輪が牽引や惰性走行で後進回転されても変速機を、後進変速制御弁38に指示された後進用の指令変速比(ロー側変速比)に保持することができる。
なお上記の作用中、回路32からサブ回路55への出力回転駆動ポンプ吐出圧が原動機駆動ポンプ21の方向へ逃げるのを逆止弁59により阻止することができ、上記のハイ発進防止作用が不能になることはない。
【0057】
一方で、エンジン停止中に車輪が前進回転されている場合、前後進切り換え弁33が図6の位置にあってポート33c,33d間を遮断しているため、回路32の出力回転駆動ポンプ吐出圧は逆止弁51、ポート33c,33d、およびサブ回路56を経て後進変速制御弁38に達することがなく、前進変速制御弁37にも何ら元圧が供給されることがないため、サーボピストン13の両側における室18Hおよび18Lの何れも無圧状態にされている。
従って、サーボピストン13は板バネ型式の弾性手段52によりストローク位置を決められ、この弾性手段52がサーボピストン13を前記したごとく、少なくとも前記中立位置に対応したストローク位置までハイ側ピストン室18Hに向け付勢するものであることから、サーボピストン13が中立位置を越えてハイ側ピストン室18Hからロー側ピストン室18Lに向かうのを防止することができ、エンジン停止中に車輪が牽引や惰性走行で前進回転される時のハイ側変速比への変速を回避してハイ発進を回避することができる。
【0058】
以上により本実施の形態においても、エンジン停止中に車輪が牽引や惰性走行によって前進回転される場合も、また逆に後進回転される場合も、トロイダル型無段変速機がハイ側変速比にされることがなく、ハイ発進を回避することができる。
しかも本実施の形態によれば、出力回転駆動ポンプ22からの油圧が後進変速制御弁38にしか供給されないために、前進変速制御弁37からの作動油の漏洩による作動油の無駄を少なくすることができ、その分、出力回転駆動ポンプ22の小型化を実現し得てスペース的にもコスト的にも有利になる。
【0059】
以下、潤滑回路47による潤滑作用を説明する。
エンジン1の運転により原動機駆動ポンプ21がエンジン駆動されている場合、メイン回路54にライン圧P が発生しており、これがトロイダル型無段変速機の元圧であって高圧であることから、走行により出力回転駆動ポンプ22から回路32に吐出圧が出力されていても、これに打ち勝ってサブ回路55のライン圧P が逆止弁46を閉状態に保つ。
従って、出力回転駆動ポンプ22から回路32へのポンプ吐出圧が逆止弁49を開いて作動油をパワーローラ潤滑部などの潤滑要求箇所に供給し、ここを潤滑することができる。
【0060】
エンジン停止中に車輪が回転されている間は、出力回転駆動ポンプ22から回路32への作動油が、一方で逆止弁59において行き止まりとなり、他方で前進回転時なら前後進切り換え弁33のポート33cにおいて、また後進回転時なら前記ハイ発進防止後にピストン室18H,18Lにおいてそれぞれ行き止りとなる。
従って、出力回転駆動ポンプ22から回路32へのポンプ吐出圧が上昇し、これが逆止弁49の開弁圧を越えたところで、逆止弁49が開いて作動油をパワーローラ潤滑部などの潤滑要求箇所に供給し、エンジン停止中の牽引時などにおいてもここを潤滑することができる。
出力回転駆動ポンプ22からの余剰油を上述のように潤滑に用いても尚作動油量が余って回路32が高圧になる場合は、これがリリーフ弁50の開弁圧を越えたところで、作動油を当該リリーフ弁50を経てドレンすることとし、これにより回路への悪影響を回避する。
【0061】
図9は、本発明の更に他の実施の形態になるトロイダル型無段変速機の変速制御油圧回路を示し、本実施の形態においては、図6の場合とは逆に後進変速制御弁38をメイン回路54中に挿置し、前進変速制御弁37をサブ回路56に接続する。
これがため前後進切り換え弁33も、図6の場合と逆に後進回転時に図示位置となり、前進回転時にスプール33aを押し込まれるようなものとし、従って、図7に示す出力回転駆動ポンプ22に関し、前後進切り換え弁33および出力回転駆動ポンプ油圧吐出パイプ32を図7の場合とは左右逆に配置する。
なお、前進回転時に前後進切り換え弁33のスプール33aを出力回転駆動ポンプ22のポンプハウジング25で押し込まない場合は、前記した機械的なリバースセンサに対応したフォワードセンサを用いることとし、当該フォワードセンサの潤滑を図9における逆止弁58からの作動油で行うこととする。
【0062】
そして本実施の形態においては、図6における弾性手段52に代えて、サーボピストン13のハイ側ピストン室18Hに、図4におけると同様な板バネ型式の弾性手段51を設け、これによりサーボピストン13をロー側ピストン室18Lに向けて少なくとも前記中立位置に対応した位置まで付勢する。
ここで弾性手段51は、後進牽引などでサーボピストン13がロー側ピストン室18Lからハイ側ピストン室18Hに向けてストロークするのを、つまり後進時にロー側ピストン室18Lをハイ側ピストン室18Hよりも高圧にした時に生起される変速と同じ方向へのアップシフトを阻止して、後進牽引時にハイ側変速比になるのを防止する、後進時ハイ発進防止用弾性手段を構成する。
【0063】
本実施の形態になるトロイダル型無段変速機の変速作用を次に説明する。
後進走行中は前後進切り換え弁33が図9に示す状態になっており、メイン回路54からのライン圧Pを元圧とする後進変速制御弁38を介した前記の後進変速制御が行われる。
前進走行中は前後進切り換え弁33がスプール33aを図9に示す位置から押し込まれた状態になり、サブ回路55,56からのライン圧P を元圧とする前進変速制御弁37を介した前記の前進変速制御が行われる。
なお前進走行時の当該変速中において、サブ回路55から出力回転駆動ポンプ22の方向への油流は逆止弁46により阻止され、サブ回路55のライン圧Pが逃げて上記の変速が妨げられる事態の発生を回避することができる。
【0064】
エンジン1の停止中は、原動機駆動ポンプ21から作動油が吐出されないため、メイン回路54からライン圧Pが出力されることはなく、これを元圧とした変速制御弁37,38による上記の変速制御が行われることはない。
かかるエンジン停止中でも、車輪が牽引や惰性走行により回転されると、出力回転駆動ポンプ22は何れの方向の回転であっても、出力回転駆動ポンプ油圧出力回路32に作動油を吐出して回転数に応じた油圧を発生させる。
【0065】
エンジン停止中に車輪が前進回転されている場合、前後進切り換え弁33が図9の位置から押し込まれてポート33c,33d間を開通しているため、回路32の出力回転駆動ポンプ吐出圧は逆止弁46、ポート33c、33d、サブ回路56を経て前進変速制御弁37に達する。
ここで前進変速制御弁37は、サブ回路56からの出力回転駆動ポンプ吐出圧を元圧として前記の作用により停車時用最ロー変速比を維持するような変速を行う。
なお、前進回転速度低下による出力回転駆動ポンプ吐出圧の低下で上記の変速制御が所定通りになされ得なくなり、前進回転時の逆駆動力によりトラニオン12が中立位置から少しでも矢δで示すアップシフト方向にずれてトロイダル型無段変速機をアップシフトさせようとすると、これがフォワードプリセスカムを介して変速制御レバー39の対応端に矢γで示すようにフィードバックされる。
【0066】
これにより前進変速制御弁37が、回路44をサブ回路56に通じると共に回路45をドレンポート37bに通じる結果、ロー側ピストン室18Lの内圧が回路56の出力回転駆動ポンプ吐出圧により上昇され、ハイ側ピストン室18Hの内圧が低下されることで、トラニオン12の上記ストロークδは行われることがない。
そして、上記ロー側ピストン室18Lの内圧上昇、およびハイ側ピストン室18Hの内圧低下に起因してサーボピストン13は板バネ51に抗し押動されることとなり、トラニオン12の対応方向へのストロークによりトロイダル型無段変速機のダウンシフトを生起させることができる。
以上の作用の繰り返しにより、エンジン1の停止中に車輪が牽引や惰性走行で前進回転されても変速機を、前進変速制御弁37に指示された停車時用の最ロー指令変速比に保持することができる。
なお上記の作用中、回路32からサブ回路55への出力回転駆動ポンプ吐出圧が原動機駆動ポンプ21の方向へ逃げるのを逆止弁59により阻止することができ、上記のハイ発進防止作用が不能になることはない。
【0067】
一方で、エンジン停止中に車輪が後進回転されている場合、前後進切り換え弁33が図9の位置にあってポート33c,33d間を遮断しているため、回路32の出力回転駆動ポンプ吐出圧は逆止弁46、ポート33c、33d、サブ回路56を経て前進変速制御弁37に達することがなく、後進変速制御弁38にも何ら元圧が供給されることがないため、サーボピストン13の両側における室18Hおよび18Lの何れも無圧状態にされている。
従って、サーボピストン13は板バネ型式の弾性手段51によりストローク位置を決められ、この弾性手段51がサーボピストン13を前記したごとく、少なくとも中立位置に対応したストローク位置までロー側ピストン室18Lに向け付勢するものであることから、サーボピストン13が中立位置を越えてロー側ピストン室18Lからハイ側ピストン室18Hに向かうのを防止することができ、エンジン停止中に車輪が牽引や惰性走行で後進回転される時のハイ側変速比への変速を回避してハイ発進を回避することができる。
【0068】
以上により本実施の形態においても、エンジン停止中に車輪が牽引や惰性走行によって前進回転される場合も、また逆に後進回転される場合も、トロイダル型無段変速機がハイ側変速比にされることがなく、ハイ発進を回避することができる。
加えて本実施の形態によれば、出力回転駆動ポンプ22からの油圧が前進変速制御弁37にしか供給されないために、後進変速制御弁38からの作動油の漏洩による作動油の無駄を少なくすることができ、その分、出力回転駆動ポンプ22の小型化を実現し得てスペース的にもコスト的にも有利になる。
【0069】
以下、潤滑回路47による潤滑作用を説明する。
エンジン1の運転により原動機駆動ポンプ21がエンジン駆動されている場合、メイン回路54にライン圧P が発生しており、これがトロイダル型無段変速機の元圧であって高圧であることから、走行により出力回転駆動ポンプ22から回路32に吐出圧が出力されていても、これに打ち勝ってサブ回路55のライン圧P が逆止弁46を閉状態に保つ。
従って、出力回転駆動ポンプ22から回路32へのポンプ吐出圧が逆止弁49を開いて作動油をパワーローラ潤滑部などの潤滑要求箇所に供給し、ここを潤滑することができる。
【0070】
エンジン停止中に車輪が回転されている間は、出力回転駆動ポンプ22から回路32への作動油が、一方で逆止弁59において行き止まりとなり、他方で後進回転時なら前後進切り換え弁33のポート33cにおいて、また前進回転時なら前記ハイ発進防止後にピストン室18H,18Lにおいてそれぞれ行き止りとなる。
従って、出力回転駆動ポンプ22から回路32へのポンプ吐出圧が上昇し、これが逆止弁49の開弁圧を越えたところで、逆止弁49が開いて作動油をパワーローラ潤滑部などの潤滑要求箇所に供給し、エンジン停止中の牽引時などにおいてもここを潤滑することができる。
出力回転駆動ポンプ22からの余剰油を上述のように潤滑に用いても尚作動油量が余って回路32が高圧になる場合は、これがリリーフ弁50の開弁圧を越えたところで、作動油を当該リリーフ弁50を経てドレンすることとし、これにより回路への悪影響を回避する。
【0071】
図10は、本発明の更に別の実施の形態になるトロイダル型無段変速機の変速制御油圧回路を示し、本実施の形態においては基本的に図6におけると同様な変速制御回路とするが、出力回転駆動ポンプ22からの吐出圧を供給される、逆止弁46およびリリーフ弁50付のポンプ吐出回路32を、ロー側ピストン室18Lに通じた回路42、若しくは、ロー側ピストン室18Lにダイレクトに接続する。
これがため、図6における逆止弁59と同様の機能を、メイン回路54およびサブ回路56にそれぞれ挿置した逆止弁59a,59bにより達成するようになし、従ってこれら逆止弁59a,59bを、原動機駆動ポンプ21への油流を阻止する向きに配置する。
ポンプ吐出回路32には、図6におけると同様に、逆止弁49を含む潤滑回路47を接続して設け、この回路47をパワーローラ潤滑部などの潤滑要求箇所に延在させる。
逆止弁59a,59bの開弁圧はそれぞれ、図6における逆止弁59と同様に定め、潤滑回路47における逆止弁49の開弁圧を逆止弁59a,59bの開弁圧よりも高くするが、リリーフ弁50の開弁圧よりも低くする。
そしてハイ側ピストン室18H内に、図9におけると同様な弾性手段51を設け、これによりサーボピストン13を、少なくとも中立位置に対応したストローク位置までロー側ピストン室18Lに向け付勢する。
【0072】
なお上記のように、出力回転駆動ポンプ22の吐出回路32をロー側ピストン室18Lにダイレクトに接続する場合(ハイ側ピストン室18Hにダイレクトに接続する場合も同様)、出力回転駆動ポンプ22を図11に示すごとく、全てのサーボピストン13に共通なサーボピストンボディー18に内蔵させるのがよい。
つまり、カウンターシャフト15と共に回転する偏心カム24によりストロークされるラジアルプランジャ26をサーボピストンボディー18に摺動自在に嵌合し、このラジアルプランジャ26をバネ27で偏心カム24のカム面に押圧する。
ラジアルプランジャ26は偏心カム24のカム面により半径方向へ往復ストロークされることで、オイルパン液面下に開口するようサーボピストンボディー18に形成した吸入ポート28より図2に示す吸入弁29と同様な図示せざる吸入弁を経てオイルを吸入し、同じくサーボピストンボディー18に形成した吐出ポート30より図2に示す吐出弁31と同様な吐出弁を経てオイルを吐出するものとする。
サーボピストンボディー18には更に、吐出ポート30に通じる油圧吐出回路32を形成し、これをロー側ピストン室18Lにダイレクトに通じさせて回路構成を簡易なものにすることができる。
【0073】
上記実施の形態になるトロイダル型無段変速機の変速作用のうち、エンジン運転中で原動機駆動ポンプ21がエンジン駆動されている間における変速作用は、図6につき前述したと同様であるから、ここではその重複説明を避け、エンジン停止中の変速作用についてのみ以下に説明する。
エンジン停止中は原動機駆動ポンプ21から作動油が吐出されないため、回路54にライン圧P が出力されることはなく、これを元圧とした変速制御弁37,38による変速制御が行われることはない。
かかるエンジン停止中でも、車輪が牽引や惰性走行により回転されると出力回転駆動ポンプ22は回路32に作動油を吐出して回転数に応じた油圧を発生させる。
【0074】
この回路32におけるポンプ吐出圧は逆止弁46を経てロー側ピストン室18Lに達し、トラニオン12を対応方向へストロークさせる。
ここで車輪が前進回転されている場合、上記トラニオン12のストロークはトロイダル型無段変速機のダウンシフトを生起させ、変速機をロー側変速比に保持する。
なお、車輪回転数が低くて回路32へのポンプ吐出圧が低いことでトラニオン12がバネ51により中立位置から少しでも矢δで示すアップシフト方向にずれると、これがフォワードプリセスカムを介して変速制御レバー39の対応端部に矢γで示すようにフィードバックされる。
これにより前進変速制御弁37が回路40を回路54に通じる結果、ロー側ピストン室18Lの内圧が回路42、前後進切り換え弁33、および回路40,54を経て排圧されようとするが、この排圧を逆止弁59aが阻止するためにロー側ピストン室18Lの内圧が上昇してサーボピストン13をバネ51に抗してストロークさせることができ、これによりトロイダル型無段変速機のダウンシフトを生起させて変速機をロー側変速比に保持することができる。
以上の作用の繰り返しにより結果として、エンジン停止中に車輪が牽引や惰性走行で前進回転されるとき変速機を、変速制御レバー39にステップモータで指示された指令変速比(停車故にロー側変速比)に保持することができる。
【0075】
エンジン停止中に車輪が逆に後進回転されている場合、上記出力回転駆動ポンプ22からロー側ピストン室18Lへの油圧によるトラニオン12のストロークはトロイダル型無段変速機をアップシフトさせようとする。
しかし、トラニオン12がロー側ピストン室18Lへの油圧により中立位置から少しでも矢εで示すアップシフト方向にずれると、これがリバースプリセスカムを介して後進変速制御弁38のスプール38aに矢ρで示すようにフィードバックされる。
これにより後進変速制御弁38が回路44をドレンポート38bに通じる結果、ロー側ピストン室18Lの内圧が回路42、前後進切り換え弁33(後進回転時故にスプール33aを押し込まれた状態になっている)、回路44、およびドレンポート38bを経て排圧される。後進変速制御弁38は同時に、回路45を回路56に通じてハイ側ピストン室18Hの内圧も回路43、前後進切り換え弁33、回路45、および回路56を経て排圧しようとするが、この排圧は逆止弁59bにより阻止されるためハイ側ピストン室18Hの内圧が低下することはない。
従って、ロー側ピストン室18Lの内圧によるトラニオン12の上記ストロークは行われることはない。
そして、上記ロー側ピストン室18Lの内圧低下に起因してサーボピストン13は皿バネ51により押動されることとなり、トラニオン12の対応方向へのストロークによりトロイダル型無段変速機のダウンシフトを生起させることができる。
以上の作用の繰り返しにより、エンジン停止中に車輪が牽引や惰性走行で後進回転されても変速機を、後進変速制御弁38に指示された後進用の指令変速比(ロー側変速比)に保持することができる。
【0076】
以上により本実施の形態においては、エンジン停止中に車輪が牽引や惰性走行によって前進回転される場合も、また逆に後進回転される場合も、変速制御レバー39の左端に指令した指令変速比(前進回転時)に、また後進変速制御弁38に指令した指令変速比(後進回転時)に実変速比が戻ったところで、トラニオン12の何れ方向のストロークも生ずることがなくて指令変速比(停車故に最ロー変速比)が保たれ、ハイ発進の事態を回避することができる。
【0077】
以下、潤滑回路47による潤滑作用を説明する。
エンジン1の運転により原動機駆動ポンプ21がエンジン駆動されていれば回路54にライン圧P が発生しており、これがトロイダル型無段変速機の元圧であって高圧であることから、走行により出力回転駆動ポンプ22から回路32に吐出圧が出力されていても、これに打ち勝って回路42のライン圧P が逆止弁46を閉状態に保つ。
従って、出力回転駆動ポンプ22から回路32へのポンプ吐出圧が逆止弁49を開いて作動油をパワーローラ潤滑部などの潤滑要求箇所に供給し、ここを潤滑することができる。
【0078】
エンジン停止中に車輪が回転されている間は、出力回転駆動ポンプ22から回路32への作動油が、一方で前後進切り換え弁33、または変速制御弁37,38、或いは逆止弁59a,59bにおいて行き止まりとなり、他方でハイ発進防止後にピストン室18Lにおいて行き止りとなる。
従って、出力回転駆動ポンプ22から回路32へのポンプ吐出圧が上昇し、これが逆止弁49の開弁圧を越えたところで、逆止弁49が開いて作動油をパワーローラ潤滑部などの潤滑要求箇所に供給し、エンジン停止中の牽引時などにおいてもここを潤滑することができる。
出力回転駆動ポンプ22からの余剰油を上述のように潤滑に用いても尚作動油量が余って回路32が高圧になる場合は、これがリリーフ弁50の開弁圧を越えたところで、作動油を当該リリーフ弁50を経てドレンすることとし、これにより回路への悪影響を回避する。
【0079】
図12は、本発明の更に他の実施の形態になるトロイダル型無段変速機の変速制御油圧回路を示し、本実施の形態においては、出力回転駆動ポンプ22の吐出回路32を、図10とは逆にハイ側ピストン室18Hに通じた回路43、若しくは、ハイ側ピストン室18Hにダイレクトに接続する。
また、図10の場合とは逆に、ロー側ピストン室18L内に、図6におけると同様な弾性手段52を設け、これによりサーボピストン13を、少なくとも中立位置に対応したストローク位置までハイ側ピストン室18Hに向け付勢する。
【0080】
本実施の形態になるトロイダル型無段変速機においても、エンジン運転中で原動機駆動ポンプ21がエンジン駆動されている間における変速作用は、図6につき前述したと同様であるから、ここではエンジン停止中の変速作用についてのみ以下に説明する。
エンジン停止中に車輪が牽引や惰性走行により回転される時、出力回転駆動ポンプ22から逆止弁46を経てハイ側ピストン室18Hに達した油圧はトラニオン12を対応方向へ付勢する。
車輪の回転数が低いときは出力回転駆動ポンプ22からハイ側ピストン室18Hに向かう油圧も低いため、サーボピストン13は皿バネ52によりトラニオン12を伴って対応方向へストロークする。
ここで車輪が前進回転されている場合、上記トラニオン12のストロークはトロイダル型無段変速機のダウンシフトを生起させ、変速機をロー側変速比に保持して前記したと同様のハイ発進防止作用が得られる。
【0081】
しかし、車輪の前進回転数が高くなって出力回転駆動ポンプ22からハイ側ピストン室18Hに向かう油量が、予め設定した回路内各部のオイル漏洩総量を越えるようになると、ハイ側ピストン室18Hの内圧が高くなってサーボピストン13をトラニオン12と共に皿バネ52に抗し対応方向へストロークさせる。
当該トラニオン12のストロークはトロイダル型無段変速機のアップシフトを生起させ、後進時よりも高速になることが多い前進方向牽引時において前後進切り換え機構3(図1参照)の回転数を抑制することができ、その耐久性を向上させることができる。
そして、上記した牽引の終了時点の直前では車輪の前進回転数が低下するから、この時トロイダル型無段変速機は上記の作用によりロー側変速比に戻されるため、ハイ発進防止作用が阻害されることはない。
【0082】
エンジン停止中に車輪が後進回転される場合は、出力回転駆動ポンプ22からハイ側ピストン室18Hへの油圧でサーボピストン13がトラニオン12と共に皿バネ52に抗して対応方向へストロークされる時、トロイダル型無段変速機のダウンシフトが生起されてハイ発進を防止することができる。
ここで車輪の後進回転数が低くなって出力回転駆動ポンプ22からハイ側ピストン室18Hへの油圧が低下し、サーボピストン13がトラニオン12と共に皿バネ52により中立位置から少しでも図12のεで示す方向へストロークされると、これをフィードバックされて後進変速制御弁38のスプール38aがリバースプリセスカムにより矢ρで示す方向へストロークされ、回路45,56間を通じさせる。
この時、ハイ側ピストン室18Hから回路43、前後進切り換え弁33(後進回転故にスプール33aを押し込まれている)、回路45、および回路56を経て行われるべきハイ側ピストン室18Hの排圧が逆止弁59bにより阻止されることとなり、ハイ側ピストン室18Hの内圧が出力回転駆動ポンプ22からの油流で上昇される。
ハイ側ピストン室18Hのかかる内圧上昇はサーボピストン13を皿バネ52に抗してストロークさせることができ、これによりトロイダル型無段変速機のダウンシフトを生起させて変速機をロー側変速比に保持することができ、ハイ発進を防止することが可能である。
【0083】
以下、潤滑回路47による潤滑作用を説明する。
エンジン1の運転により原動機駆動ポンプ21がエンジン駆動されていれば回路54にライン圧P が発生しており、これがトロイダル型無段変速機の元圧であって高圧であることから、走行により出力回転駆動ポンプ22から回路32に吐出圧が出力されていても、これに打ち勝って回路43のライン圧P が逆止弁46を閉状態に保つ。
従って、出力回転駆動ポンプ22から回路32へのポンプ吐出圧が逆止弁49を開いて作動油をパワーローラ潤滑部などの潤滑要求箇所に供給し、ここを潤滑することができる。
【0084】
エンジン停止中に車輪が回転されている間は、出力回転駆動ポンプ22から回路32への作動油が、一方で前後進切り換え弁33、または変速制御弁37,38、或いは逆止弁59a,59bにおいて行き止まりとなり、他方でハイ発進防止後にピストン室18Hにおいて行き止りとなる。
従って、出力回転駆動ポンプ22から回路32へのポンプ吐出圧が上昇し、これが逆止弁49の開弁圧を越えたところで、逆止弁49が開いて作動油をパワーローラ潤滑部などの潤滑要求箇所に供給し、エンジン停止中の牽引時などにおいてもここを潤滑することができる。
出力回転駆動ポンプ22からの余剰油を上述のように潤滑に用いても尚作動油量が余って回路32が高圧になる場合は、これがリリーフ弁50の開弁圧を越えたところで、作動油を当該リリーフ弁50を経てドレンすることとし、これにより回路への悪影響を回避する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態になるトロイダル型無段変速機の伝動系を示す模式図である。
【図2】同トロイダル型無段変速機における出力回転駆動ポンプを示す要部拡大断面図である。
【図3】同出力回転駆動ポンプを前後進切り換え弁と共に示す要部拡大正面図である。
【図4】同トロイダル型無段変速機における変速制御油圧回路を示す回路図である。
【図5】本発明の他の実施の形態になるトロイダル型無段変速機の変速制御油圧回路を示す回路図である。
【図6】本発明の更に他の実施の形態になるトロイダル型無段変速機の変速制御油圧回路を示す回路図である。
【図7】同実施の形態になるトロイダル型無段変速機における出力回転駆動ポンプを前後進切り換え弁と共に示す要部拡大正面図である。
【図8】出力回転駆動ポンプの他の構成例を示すサーボピストンボディーの要部拡大断面図である。
【図9】本発明の更に別の実施の形態になるトロイダル型無段変速機の変速制御油圧回路を示す回路図である。
【図10】本発明の更に他の実施の形態になるトロイダル型無段変速機の変速制御油圧回路を示す回路図である。
【図11】本実施の形態における出力回転駆動ポンプの他の構成例を示すサーボピストンボディーの要部拡大断面図である。
【図12】本発明の更に他の実施の形態になるトロイダル型無段変速機の変速制御油圧回路を示す回路図である。
【符号の説明】
1 エンジン(原動機)
2 トルクコンバータ
3 前後進切り換え機構
4 フロント側トロイダル伝動ユニット
5 リヤ側トロイダル伝動ユニット
6 入力ディスク
7 出力ディスク
8 パワーローラ
9 主軸
10 中空出力軸
11 出力歯車
12 トラニオン
13 サーボピストン(油圧サーボ機構)
14 カウンターギヤ
15 カウンターシャフト
16 歯車組
17 変速機出力軸
21 原動機駆動ポンプ
22 出力回転駆動ポンプ
24 偏心カム
25 ポンプハウジング
26 ラジアルプランジャ
28 吸入ポート
29 吸入弁
30 吐出ポート
31 吐出弁
32 ポンプ油圧吐出回路
33 前後進切り換え弁
34 Dレンジ圧回路
35 Rレンジ圧回路
37 前進変速制御弁
38 後進変速制御弁
39 変速制御レバー
46 ポンプ吐出回路の逆止弁
47 潤滑回路
48 制御圧回路の逆止弁
49 潤滑回路の逆止弁
50 リリーフ弁
51 弾性手段
52 弾性手段
54 メイン回路
55 サブ回路
56 サブ回路
59 制御圧回路の逆止弁

Claims (5)

  1. 原動機からの回転を可逆転下に入力される入力ディスクと、該入力ディスクに同軸に対向配置されると共に車輪に常時駆動結合された出力ディスクと、これら入出力ディスク間で動力の受渡しを行うパワーローラとを具え、
    パワーローラを回転自在に支持したトラニオンを、原動機駆動ポンプから入力回転方向ごとの変速制御弁を経由した制御圧に応動する油圧サーボ機構により、パワーローラ回転軸線が入出力ディスク回転軸線と交差した中立位置からトラニオン軸線方向へオフセットするようストロークさせることで変速を生起させ、
    該変速の進行を前記油圧サーボ機構にフィードバックして指令変速比になったところでパワーローラを前記中立位置に戻すようにしたトロイダル型無段変速機において、
    前記車輪の回転に応動して油圧を発生する出力回転駆動ポンプを設け、
    前記入力回転方向ごとの変速制御弁をそれぞれ含む、前記制御圧の発生源から前記油圧サーボ機構までの制御圧回路のうち、少なくとも一方の制御圧回路に前記出力回転駆動ポンプからの吐出圧を供給して、原動機停止状態で車輪が対応方向へ回転される時のアップシフトを防止するよう、出力回転駆動ポンプの吐出回路を前記少なくとも一方の制御圧回路に接続し、
    該出力回転駆動ポンプの吐出回路から分岐して潤滑要求箇所に至る潤滑回路を設けたことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
  2. 請求項1に記載のトロイダル型無段変速機において、前記出力回転駆動ポンプの吐出回路を接続されなかった他方の制御圧回路中における変速制御弁が、アップシフトを生起させるために前記トラニオンをオフセットさせる時と同じ方向のトラニオンのオフセットに対し抵抗を付与する弾性手段を設けたことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
  3. 請求項1または2に記載のトロイダル型無段変速機において、前記出力回転駆動ポンプの吐出回路を接続された少なくとも一方の制御圧回路中に、前記出力回転駆動ポンプの接続箇所よりも原動機駆動ポンプに近い箇所において、該接続箇所から遠ざかる方向への油流を阻止する逆止弁を挿置したことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトロイダル型無段変速機において、前記出力回転駆動ポンプの吐出回路および潤滑回路にそれぞれ逆止弁を挿置し、吐出回路における逆止弁の開弁圧を潤滑回路における逆止弁の開弁圧よりも低くしたことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
  5. 請求項4に記載のトロイダル型無段変速機において、前記出力回転駆動ポンプ用のリリーフ弁を設け、該リリーフ弁の開弁圧を前記潤滑回路における逆止弁の開弁圧よりも高くしたことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
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