JP2004060708A - 弁棒ライニング部のシール構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】弁部11と、弁部から突出した弁棒12と、弁部表面及び弁棒表面の所定領域を覆ったフッ素樹脂からなるライニング13とを備えた弁体10の弁棒12において、弁棒12の外径より大きく弁棒12を覆うライニング13の外径より小さい大径部15がライニングで覆われた弁棒12の所定領域であってかつ弁棒全周にわたって形成され、これによって、フッ素樹脂のコールドフローに起因する弁棒ライニング部のシール性低下を防止する。
【選択図】 図1
Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、フッ素樹脂のライニングを備えた弁体の弁棒ライニング部におけるシール構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から流体の流量を制御する際や流路の開閉を行う際に、例えばダイアフラム操作弁や電動弁等のバルブが一般的に用いられている。
【0003】
かかるバルブの一般的な構造を図3に示す。このバルブ7は、流体の流路を内部に形成するハウジング70と、ハウジング70内に収容され流路の開度を調整する弁体80と、ハウジング70に設けられ弁体80の弁部81が着座する座面71と、ハウジング70と弁体80の弁棒82との間に介装されたガイドブッシュ91と、弁棒82の端部に連結されたシャフト92と、シャフト92をハウジング70内で支承するベアリング93等を備えている。また、かかるシャフト92の端部は、例えばダイアフラム操作弁の場合、布等で補強されたゴム膜からなるダイアフラム(図示せず)に連結されている。そして、ダイアフラムは、操作空気圧力を受けてその空気圧力を変化させることによって弁体80の位置を制御するようになっている。
【0004】
一方、近年、上述のようなバルブを食品製造プラントや薬品製造プラントに使用する機会が多くなっている。このような用途に使用されるバルブは、一般にサニタリバルブと呼ばれ、バルブの弁体の所定領域に耐腐食性や耐摩耗性に優れたフッ素樹脂からなるライニングを設けていることが多い。このようなフッ素樹脂をバルブの構成材料にしたものとして、例えば特開平10−292878号公報(流量調節弁及びその弁棒)、特開平10−318383号公報(バルブとその製造方法)に記載されたバルブがあげられる。
【0005】
以下、図4に示す従来型のサニタリバルブの構造について説明する。このサニタリバルブの弁体80は、弁部81と、弁部81の平坦な端面側(着座部81aと反対面側)から突出し、先端にシャフト92との螺合用ネジ部82aが形成された弁棒82と、弁部81全体及び弁棒82の一定領域を覆うフッ素樹脂からなるライニング83とから構成されている。そして、ライニング83は、図5に示すように、分割された金型100(101〜103)に弁部81及び弁棒82自体を中子として収容し、金型100の一端注入口103aからフッ素樹脂を注入する、いわゆる射出成型またはトランスファー成型によって弁部81及び弁棒82周りに形成されるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
かかるサニタリ仕様のバルブにおいては、弁体80とこれを囲繞するライニング83の端部との間に流体が侵入すると雑菌等が発生するため、確実なシール構造が求められている。そして、このシール構造の一例として、図4に示すO−リング85を使用したものが考えられている。すなわち、ライニング83の端面83aとこの端面83aと接触するシャフト92等の間にO−リング85を介装させてシール性を確保する構造である。
【0007】
しかしながら、例えばフッ素系樹脂であるパーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA;Perfluoro−alkoxyfluoro plastics)をライニング樹脂として使用した場合、以下の問題を生じる。
【0008】
PFA樹脂は、耐薬品性・耐熱性・断熱性に優れた性質を有する反面、接着性が悪く、熱膨張率が大きいという性質を有する。また、PFA樹脂は弾性変形領域内において応力がかかった状態で保持されているとき、ガラス転移温度(285℃)以下であっても樹脂がいわゆるコールドフローと呼ばれるクリープ(塑性変形)を起こすことが知られている。
【0009】
このため、弁棒82の長手方向にライニング83を施した場合、応力の作用する方向のフッ素樹脂部が長くなり過ぎ、フッ素樹脂が容易に収縮する(やせ細る)。その結果、O−リング85を介装したシール部の面圧が低下し(図4におけるライニング端面とシャフト端面との隙間G参照)、この部分における確実なシールを長期にわたって確保することができない。また、PFA以外の例えばFEP、EPFE等のフッ素樹脂においてもこのような問題は同様に生じる。
【0010】
本発明の目的は、かかる従来の問題点を解消し、弁棒ライニング部と弁棒との確実なシールを長期にわたって維持する弁棒ライニング部のシール構造を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するために、本発明にかかる弁棒ライニング部のシール構造は、弁部と、当該弁部から突出した弁棒と、弁部表面及び弁棒表面の所定領域を覆ったフッ素樹脂からなるライニングとを備えた弁体において、弁棒の外径より大きく弁棒を覆うライニングの外径より小さい大径部がライニングで覆われた弁棒の所定領域に弁棒全周にわたって形成されていることを特徴としている。
【0012】
大径部が弁棒の所定領域に全周にわたって形成されているので、フッ素樹脂からなるライニングのコールドフローを生じ難くする。その結果、弁棒に接続されるシャフトとライニング端面との間のシール性を確保することができる。
【0013】
また、本発明の請求項2に記載の弁棒ライニング部のシール構造は、請求項1に記載の弁棒ライニング部のシール構造において、大径部には貫通孔が形成されていることを特徴としている。
【0014】
大径部に形成された貫通孔にフッ素樹脂が入り込んだ状態でライニングが成型されることで、ライニングが弁棒の長手方向に固定される。従って、ライニングがコールドフローによって弁棒の長手方向に収縮するのを回避し、弁棒ライニング部におけるシール性の低下を阻止する。
【0015】
また、本発明の請求項3に記載の弁棒ライニング部のシール構造は、請求項1に記載の弁棒ライニング部のシール構造において、大径部の端面または側面のうち少なくとも一方に有底穴が形成されていることを特徴としている。
【0016】
かかる有底穴にフッ素樹脂が入り込んだ状態でライニングが成型されることで、ライニングが弁棒の長手方向に固定される。これによって、ライニングがコールドフローによって弁棒の長手方向に収縮するのを回避し、弁棒ライニング部におけるシール性の低下を阻止する。
【0017】
また、本発明の請求項4に記載のバルブは、請求項1乃至請求項3の少なくとも何れか一つの請求項に記載の弁棒ライニング部のシール構造を備えたことを特徴としている。
【0018】
かかるシール構造を備えた弁棒をバルブに用いることで、当該ライニングと弁棒とのシールを長期にわたって確保することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態にかかる弁棒ライニング部のシール構造について説明する。
【0020】
本発明の一実施形態にかかる弁棒ライニング部のシール構造は、図1に示すように、弁体の弁棒を従来とは異なる形状としたものである。
【0021】
具体的には、本発明の弁棒ライニング部のシール構造を適用した弁体10は、ステンレス鋼からなる弁部11と、弁部11の平坦な端面側(着座部11aと反対面側)から突出し、先端にシャフト72との螺合用ネジ部12aが形成されたステンレス鋼の弁棒12と、弁部11全体及び弁棒12の一定領域を覆うフッ素樹脂からなるライニング13とから構成され、弁棒12の、ライニング13で覆われた領域内であってライニング13の端面13a近傍において弁棒全周にわたって大径部15が形成されている。
【0022】
大径部15は、弁棒12の直径より大きくライニング13の直径より小さい径寸法を有している。また、大径部15は、上述の通りライニングの端面13a近傍にこの端面13aに沿って形成されている。また、大径部15の両端面(図1中、上下面)には段部15a,15bが形成されている。そして、大径部15はライニング13で覆われた領域内に形成されているので、大径部15がライニング13内に埋め込まれ、ライニング13の外部に露出していない。
【0023】
大径部15には周囲方向に等間隔で弁軸と平行に多数(図1中では16個)の貫通孔15cが穿設され、この貫通孔15cにはライニング材の一部が入り込み、ライニング13の一部を形成している。
【0024】
ライニング13は、例えばフッ素樹脂の一つであるPFA(パーフルオロアルコキシフッ素樹脂)からなり、従来例で示した図5の金型100と同等の金型を利用して形成される。具体的には、弁体の弁部11及び弁棒12を型の中子として図5に示す金型100内に配置し、金型100の注入口103aからフッ素樹脂を注入する。この際、大径部15に形成された貫通孔15cは、図5の金型100内での弁棒12の配置状況から明らかなように、注入口103aからフッ素樹脂が注入される方向が大径部の貫通孔15cの穿設方向と一致しているので、ライニング成型時に貫通孔15cにフッ素樹脂が無理なく入り込むことができる。従って、いわゆる射出成型やトランスファー成型によってかかる構造のライニング13を備えた弁体10を容易に製造することができる。
【0025】
なお、ライニング13に使用するフッ素樹脂は、PFAに限定されず、FEP(四ふっ化エチレン−六ふっ化プロピレン樹脂)、ETFE(エチレン−四ふっ化エチレン樹脂)、PCTFE(三ふっ化塩化エチレン)、PVDF(ふっ化ビニリデン樹脂)、PVF(ふっ化ビニル樹脂)などを使用しても良いことは言うまでもない。
【0026】
続いて、かかるバルブにおける弁棒ライニング部のシール構造に関する作用について説明する。
【0027】
ライニング13が大径部の貫通孔15cに入り込んだ状態で弁棒周りに形成されているので、ライニング13が弁棒の大径部15とより強固に結合し、ライニング13と弁棒12とが弁軸方向に相対的にずれないようになっている。
【0028】
また、この大径部15は、ライニング13の端部13a近傍に位置しているので、いわゆるコールドフローを起こすのは、大径部上面の薄肉部13bであり、従来型のライニングを備えた弁体に較べてライニング変形量の絶対値がはるかに小さくなる。
【0029】
従って、このような構造にした上でライニング端面とシャフト端面との接合部であるシール面にO−リング17やガスケット(図示せず)を介装すれば、この部分の確実なシール性を確保することができる。
【0030】
一方、上述の弁棒ライニング部のシール構造についての第1の変形例として、図2(a)に示すように、弁棒22の大径部25における一方の(弁着座側の)段部25aがテーパ状に形成されていても良い。このような構造をとることで、この段部25aにおけるライニング厚の急激な変化を避けることができ、その結果、ライニング成型時のひけを抑制することができる。
【0031】
また、上述の弁棒ライニング部のシール構造についての第2の変形例として、図2(b)に示すように、弁棒32の大径部35における他方の(弁棒端部側の)段部35bに弁棒全周にわたってアリ溝35sを形成し、アリ溝35s内にライニング材が入り込むようにしても良い。このアリ溝35sは、図2(b)からも明らかなように、段部35bから大径部周面に向かうように(断面視で斜めに)形成されている。このようなアリ溝35sを形成することで、ライニング33が大径部35にしっかりと結合する。従って、コールドフローによるライニング端部の弁棒軸線方向の収縮を防止することができ、ライニング端部のシール性を確保することができる。
【0032】
さらにまた、上述の弁棒ライニング部のシール構造についての第3の変形例として、図2(c)に示すように、弁棒42の大径部45における直径方向に貫通孔45cを穿設し、この貫通孔45cにライニング材が入り込むようにしても良い。このような構成をとることによっても、上述の第2の変形例と同様に、ライニング43が大径部45によりしっかりと結合してコールドフローによるライニング端部の弁棒軸線方向の収縮を防止することができる。その結果、ライニング端部のシール性を確保することが可能となる。
【0033】
以上の実施形態にかかる弁棒ライニング部のシール構造を備えたバルブ、または上記実施形態の第1の変形例乃至第3の変形例のシール構造を備えたバルブは、従来例のバルブのように弁棒とライニングとの間に空間が生じ難く、この部分にプロセス流体が入り込んで弁棒とライニングとの間のシール性が損なわれるのを阻止する。なお、かかるバルブは、図3で説明した従来例のバルブと弁棒以外は同一の構成要素を有するので、当該本発明にかかるバルブを容易に具体化することができる。すなわち、バルブのハウジング、弁体、シャフト、及びベアリング、並びに例えばダイアフラム操作弁の場合、ダイアフラムについては従来からあるものを流用して、弁棒のみを本発明にかかるライニング部のシール構造を備えた弁棒とすることで上述した効果を奏するバルブを容易に得ることができる。
【0034】
なお、以上の説明は単座弁に関して行ったが、これとは異なり本発明に関する弁棒ライニング部のシール構造を大口径又は差圧の大きい場合に使用するいわゆる複座弁に適用することができる。
【0035】
また、本発明に関する弁棒ライニング部のシール構造は、ダイアフラム操作弁や電動弁に限定されず、電磁弁、油圧モータ操作弁、空気圧モータ操作弁等の様々なバルブに適用可能である。
【0036】
また、弁部や弁棒の材質はステンレス鋼に限定されるものではない。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る弁棒ライニング部のシール構造は、弁棒の外径より大きく弁棒を覆うライニングの外径より小さい大径部が弁棒のライニング内において弁棒の所定領域に弁棒全周にわたって形成されているので、フッ素樹脂からなるライニングにおいて弁棒の長手方向に特に生じやすいコールドフローを防止することができる。その結果、弁棒に接続されるシャフトとライニング端面との間のシール性を確保することができる。
【0038】
また、本発明の請求項2にかかる弁棒ライニング部のシール構造は、貫通孔を大径部に形成することで、この貫通孔にフッ素樹脂が入り込んだ状態でライニングが成型される。これによって、ライニングが弁棒の長手方向に固定され、ライニングがコールドフローによって弁棒の長手方向に収縮するのを回避し、弁棒ライニング部におけるシール性の低下を阻止できる。
【0039】
また、本発明の請求項3にかかる弁棒ライニング部のシール構造は、大径部の端面または側面のうち少なくとも一方に有底穴が形成され、この有底穴にフッ素樹脂が入り込んだ状態でライニングが成型されることで、ライニングが弁棒の長手方向に固定される。これによって、ライニングがコールドフローによって弁軸の長手方向に収縮するのを回避し、弁棒ライニング部におけるシール性の低下を阻止できる。
【0040】
また、本発明の請求項4に記載のバルブは、請求項1又は請求項2の少なくとも何れか一方の請求項に記載の弁棒ライニング部のシール構造を備えているので、当該ライニングと弁棒とのシール性を長期にわたって確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における弁棒ライニング部のシール構造を示した弁体の長手方向断面図(図1(b))及びこの矢視A−A図(図1(a))である。
【図2】図1に示した弁棒ライニング部のシール構造に関する第1の変形例(図2(a))、第2の変形例(図2(b))、及び第3の変形例(図2(c))を示す弁棒長手方向断面図である。
【図3】従来から一般に使用されているバルブの軸線方向断面図である。
【図4】従来の弁棒ライニング部におけるシール構造を説明する、弁体の軸線方向断面図である。
【図5】従来のサニタリバルブのライニング成型方法をこれに使用する金型と共に示した弁部と弁棒の軸線方向断面図である。
【符号の説明】
7 バルブ
10 弁体
11 弁部
11a 着座部
12 弁棒
12a ネジ部
13 ライニング
13a 端面
13b 薄肉部
15 大径部
15a,15b 段部
15c 貫通孔
22 弁棒
25 大径部
25a 段部
32 弁棒
35 大径部
35s アリ溝
42 弁棒
43 ライニング
45 大径部
45c 貫通孔
70 ハウジング
71 座面
80 弁体
81 弁部
82 弁棒
83 ライニング
85 O−リング
91 ガイドブッシュ
92 シャフト
93 ベアリング
100(101〜103) 金型
Claims (4)
- 弁部と、当該弁部から突出した弁棒と、前記弁部表面及び弁棒表面の所定領域を覆ったフッ素樹脂からなるライニングとを備えた弁体における弁棒ライニング部のシール構造であって、
前記弁棒の外径より大きく前記弁棒を覆うライニングの外径より小さい大径部が前記ライニングで覆われた弁棒の所定領域に前記弁棒全周にわたって形成されていることを特徴とする弁棒ライニング部のシール構造。 - 前記大径部には貫通孔が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の弁棒ライニング部のシール構造。
- 前記大径部の端面または側面のうち少なくとも一方に有底穴が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の弁棒ライニング部のシール構造。
- 請求項1乃至請求項3の少なくとも何れか一つの請求項に記載の弁棒ライニング部のシール構造を備えたことを特徴とするバルブ。
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