JP2004059845A - 生分解性インフレーションフィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】所定の原料樹脂及び成形条件を検討することにより、より高強度をもつフィルムを得ることを目的とする。
【解決手段】脂肪族ポリエステル共重合体をインフレーション成形することによって製造される生分解性のフィルムにおいて、上記脂肪族ポリエステル共重合体は、ガラス転移温度が0℃以下であり、一定速度で昇温した場合の示差走査型熱量計の測定による融点Tmと、融解状態から一定速度で冷却したときの示差走査型熱量計の測定による結晶化温度Tcとの差(Tm−Tc)が50℃以下であり、かつ、JIS K 7210に基づき、試験温度190℃、試験荷重2.16kgの条件で測定したメルトフローレートが8g/10分以下であり、上記フィルムの破断強度が、縦方向・横方向ともに、45MPa以上であり、かつ、縦方向・横方向の破断強度の比率が1.5以下である。
【選択図】 なし
【解決手段】脂肪族ポリエステル共重合体をインフレーション成形することによって製造される生分解性のフィルムにおいて、上記脂肪族ポリエステル共重合体は、ガラス転移温度が0℃以下であり、一定速度で昇温した場合の示差走査型熱量計の測定による融点Tmと、融解状態から一定速度で冷却したときの示差走査型熱量計の測定による結晶化温度Tcとの差(Tm−Tc)が50℃以下であり、かつ、JIS K 7210に基づき、試験温度190℃、試験荷重2.16kgの条件で測定したメルトフローレートが8g/10分以下であり、上記フィルムの破断強度が、縦方向・横方向ともに、45MPa以上であり、かつ、縦方向・横方向の破断強度の比率が1.5以下である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、脂肪族ポリエステル共重合体からなる生分解性インフレーションフィルムおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のプラスチック製品の多く、特にプラスチック包装材は、使用後すぐに棄却されることが多く、その処理問題が指摘されている。一般包装用プラスチックとして代表的なものとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等があげられるが、これら材料は燃焼時の発熱量が高く、焼却処理中に燃焼炉を傷める恐れがある。また、ポリ塩化ビニルは、現在でも使用量の多い材料であるが、自己消火性のため燃焼することができない。このような焼却できない材料も含め、プラスチック製品は埋立処理されることが多いが、その化学的、生物的安定性のため殆ど分解せず残留し、埋立地の寿命を短くすること等の問題を起こしている。従って、燃焼熱量が低く、土壌中で分解し、かつ安全な材料が望まれ、多くの研究がなされている。
【0003】
ところで、熱可塑性樹脂製フィルムは、一般に、原料の熱可塑性樹脂を押出機で加熱、混練して溶融され、ダイより押し出されて所望の厚みのフィルムに成形することにより製造される。このフィルムの中でも、ポリオレフィン類をはじめナイロンやポリ塩化ビニル等の多くの熱可塑性樹脂からなるフィルムの製造法としては、TダイやIダイ等により溶融押し出した後、キャストロールに導かれて冷却することにより、フラット状のいわゆるキャストフィルムとして製膜される方法が、最も一般的に採用されている。さらに、このキャストフィルムをロールや加熱炉(テンター等)に導き、加熱して1軸方向又は縦横2軸方向に延伸し、1軸配向フィルム又は2軸配向フィルムを製造することができる。この配向フィルムは、強度、伸びさらには透明性等の物性の向上を促進し、さらにある温度以上で収縮するシュリンクフィルムとして機能性を付与することができる。
【0004】
上記のフラットフィルムを2方シールまたは3方シールして袋にすることもできる。これに対し、袋状物をより優位に製造する方法としては、フィルムを円筒状に製造し、ボトムシールを行う方法が知られている。このフィルムを円筒状に製造する方法としては、押出機で溶融した樹脂を丸ダイより上向きまたは下向きに引き取り、空気や水を冷媒として冷却固化して製膜する、いわゆるインフレーション法がある。さらに、この工程で一旦固化したフィルムを再度加熱し、縦横適度に延伸して配向フィルムを得る方法、インフレーション延伸法がある。このインフレーション延伸法で得られる配向フィルムは、フラットフィルム同様、物性の向上や収縮性の付与等の高性能・高機能化が可能となる。
【0005】
プラスチック製袋の使用目的としては、内容物を一つにまとめて運搬したり、内容物の保護を主とする。従って、使用中に容易に破れたりする等の不具合が生じないことが重要であり、フィルムの強度、耐衝撃性に優れている方が好ましい。さらに、同じ物性を持つなら、フィルムの厚みは、薄い方が材料コストを安価にすることができ有益である。この点から、インフレーション延伸法で製造したフィルムが好適であるが、必要以上にフィルムが収縮する等の品質上の安定性に問題を生じたり、再加熱工程を必要とするため、製造コストおよび設備コストがかかる等の不利な点もある。また、前者のインフレーション成形では、インフレーション延伸成形ほどではないが、製造条件次第では物性の向上を望めることもある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、プラスチック製袋に使用されるフィルムは、上記のように円筒状で成形されるインフレーション成形が最も汎用的ではあるが、必ずしも、高強度をもったフィルムを得る製造方法とは言い難い。
【0007】
一般にインフレーション成形では、ダイより溶融樹脂を引き取って媒体で冷却される間に縦横ある程度延伸される効果が働き、フィルムを構成する分子が配向する。この配向の度合いは、原料樹脂の溶融粘度と冷却過程における固体化の相違、並びにブロー比に代表されるような延伸倍率等によって変化する。
【0008】
すなわち、インフレーション成形では、原料樹脂ごとに成形条件を決定することは重要であり、このことは汎用樹脂とは異なりインフレーション成形が充分に検討されていない生分解性樹脂にとっては特に、重要である。
【0009】
そこで、この発明は、生分解性樹脂の中でも脂肪族ポリエステル共重合体の成形条件を特定化することにより、高強度をもつフィルムを得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、所定の要件を満たす脂肪族ポリエステル共重合体を、溶融樹脂の吐出口となるダイのリップギャップの0.002〜0.025倍で、かつブロー比が2〜6となるように制御してインフレーション成形することにより、上記課題を解決したのである。
【0011】
上記の脂肪族ポリエステル共重合体としては、下記の(a)〜(c)の要件を満たすものが用いられる。
(a)ガラス転移温度が0℃以下で、一定速度で昇温した場合の示差走査型熱量計の測定による融点Tmと、融解状態から一定速度で冷却したときの示差走査型熱量計の測定による結晶化温度Tcとの差(Tm−Tc)が50℃以下であり、JIS K 7210に基づき、試験温度190℃、試験荷重2.16kgの条件で測定したメルトフローレートが8g/10分以下である。
(b)下記(I)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位を0.02〜30モル%含有すると共に、他の構成成分として、下記(II)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール単位、及び下記(III)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位を含有する。
(I)−O−R1−CO−(式中、R1は2価の脂肪族炭化水素基)
(II)−O−R2−O−(式中、R2は2価の脂肪族炭化水素基または2価の脂環式炭化水素基)
(III)−OC−R3−CO−(式中、R3は直接結合または2価の脂肪族炭化水素基)
(c)数平均分子量が1万〜20万である。
【0012】
上記の製造方法を採用することにより、製造される生分解性インフレーションフィルムの破断強度が、縦方向・横方向ともに、45MPa以上であり、かつ、縦方向・横方向の破断強度の比率が1.5以下となり、十分な高強度をもつフィルムを得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を説明する。
この発明にかかる生分解性インフレーションフィルムは、脂肪族ポリエステル共重合体をインフレーション成形することによって製造されるフィルムである。
【0014】
上記脂肪族ポリエステル共重合体は、所定のガラス転移温度、融点Tmと結晶化温度Tcとの差、及びメルトフローレートを有する。
上記ガラス転移温度は、0℃以下がよく、−10℃以下が好ましい。ガラス転移温度が0℃より高いと、フィルムが保存される環境でフィルム自体の剛性が変化し、違和感を生じる。例えば、夏場あるいは冬場でフィルムの感触が異なることになる。なお、上記ポリエステル共重合体は、通常、ガラス転移温度が−100℃以上のものが使用される。
【0015】
上記融点Tmとは、示差走査型熱量計(以下、「DSC」と略する。)を用いた測定で、一定速度で昇温した場合の融解時点における温度をいう。また、上記結晶化温度Tcは、同様にDSCを用いた測定で、融解状態から一定速度で冷却した場合の結晶化時点における温度をいう。
【0016】
上記融点Tmと結晶化温度Tcとの差(Tm−Tc)は、結晶化速度に影響を与える。すなわち、(Tm−Tc)の差が小さいほど、短い時間に結晶化をすることにつながり、(Tm−Tc)の差が大きいと、結晶化に長時間必要となる。
【0017】
これは、フィルム加工、特にインフレーション法において、配向性等に影響を与える。すなわち、環状ダイから溶融樹脂が引き取られる工程で、まず溶融樹脂の高分子鎖は縦配向が起こり、次いで横方向に膨らまされることで横配向が形成され、縦横ともに配向したフィルムを得るのが通常である。これに対し、結晶化速度が速くかつ結晶化熱量が大きくなると、縦配向過程で結晶化が増大し、かろうじて横方向に非晶部が配向するものの、大部分は縦配向のまま結晶化が終了し、同時にフィルムの幅が一定になる。このため、縦方向の物性のみが長じたフィルムができあがってしまうのである。
【0018】
このためは、(Tm−Tc)は、50℃以下でよく、30℃以下が好ましい。50℃より大きいと、結晶化が遅すぎ、ガラス転移温度0℃以下の脂肪族ポリエステル共重合体では、一向に溶融樹脂の腰(弾性率)が上がらず、フィルム幅が安定しないばかりか、樹脂の溶融張力不足でフィルムを引き上げることも困難となる。上記範囲を満たすことにより、縦横の分子鎖の配向、ひいては縦横の物性の異方性の少ないフィルムとすることができ、その強度をより高いものとすることができる。
【0019】
上記の縦横の分子鎖の配向ひいては縦横の物性の異方性の少ないフィルムを得るため、上記の結晶性の条件ほか、溶融粘度を考慮して樹脂を選定することが重要である。すなわち、空冷インフレーションでは、上向きに溶融樹脂を引き取るため、十分な溶融粘度、さらには溶融張力がなければ引き取ることが困難となる。このため、溶融させる温度を低めにし、溶融粘度・溶融張力を向上させる方法を採ることもできる。この溶融粘度及び溶融張力は、樹脂の分子量並びに分子の分岐構造の程度に大きく依存している。分子量が大きければ一定温度では溶融粘度は高くなり、分岐構造特に長鎖分岐構造を持つものほど高分子鎖間の絡み合いが大きく、溶融粘度および溶融張力の増加をもたらす。さらにこの絡み合いが大きいほど、成形性は低下するがダイから押し出されて、結晶化するまでの間の延伸効果が高く、強度・伸びの向上を促す。
【0020】
この溶融粘度の目安として、上記メルトフローレート(以下、「MFR」と略する。)を用いることができる。このMFRは、JIS K 7210(熱可塑性プラスチックの流れ試験)に基づき、試験温度190℃、試験荷重2.16kgの条件(上記JIS規格に記載の第4条件)で測定した値をいう。このMFRは、8g/10分以下がよく、6g/10分以下が好ましい。MFRが8g/10分を上回ると、上記溶融粘度が低くなりすぎるため引き取りが困難となる。さらに、MFRが高すぎる場合、高分子鎖が短く、高分子鎖間の絡み合いが小さいために、溶融樹脂の引き取り工程で高分子鎖が配向し難く、フィルム物性向上につながらない。MFRが8g/10分以下であれば、少なくとも押出温度を適宜設定することにより、高分子鎖の絡み合いが高くなり分子配向し易く、物性向上につながる。なお、上記MFRの下限は、上記脂肪族ポリエステル共重合体の成形において、ダイから押出しすることが可能な値を採用することができる。
【0021】
上記の要件を満たす脂肪族ポリエステル共重合体としては、下記の(I)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位を含有すると共に、(II)式で表される脂肪族または脂環式ジオール単位、及び/又は(III)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位を含有し、生分解性を有する共重合体が用いられる。
【0022】
(I)−O−R1−CO−
式中、R1は2価の脂肪族炭化水素基を示す。
(II)−O−R2−O−
式中、R2は2価の脂肪族炭化水素基または2価の脂環式炭化水素基を示す。
(III)−OC−R3−CO−
式中、R3は直接結合または2価の脂肪族炭化水素基を示す。
【0023】
上記(I)式の脂肪族オキシカルボン酸単位に相当する脂肪族オキシカルボン酸としては、分子中に1個の水酸基とカルボン酸基を有する脂肪族化合物であれば特に限定されるものではなく、この分子中に1個の水酸基とカルボン酸基を有する脂肪族化合物として、下記(I−1)式で示される脂肪族オキシカルボン酸を用いると、重合反応性向上効果が認められる点で特に好ましい。
【0024】
(I−1) HO−R1−COOH
式中、R1は2価の脂肪族炭化水素基で表わされるものをいう。
【0025】
上記(I−1)式で示される脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、あるいはこれらの混合物が挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体、またはラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体、または水溶液であってもよい。これらの中で好ましいのは、乳酸またはグリコール酸であり、特に好ましいのは、使用時の重合速度の増大が特に顕著で、かつ入手の容易な乳酸またはグリコール酸である。形態は、30〜95%の水溶液のものが容易に入手することができるので好ましい。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。
【0026】
上記(II)式の脂肪族または脂環式ジオール単位を含有するジオールとしては、特に限定されないが、下記(II−1)式で示される脂肪族ジオール又は脂環式ジオールがあげられる。
【0027】
(II−1) HO−R2−OH
式中、R2は、2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環式炭化水素基を有するジオールを示す。好ましい上記2価の脂肪族炭化水素基としては、R2が下記(II−2)式で表される脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0028】
(II−2) −(CH2)n−
式中、nは2〜10の整数を示す。中でも特に好ましいのは、nが2〜6の脂肪族炭化水素基である。
【0029】
また、好ましい2価の脂環式炭化水素基としては、上記式のR2が炭素数3〜10の脂環式炭化水素基であり、中でも特に好ましいのは4〜6の2価の脂環式炭化水素基である。
【0030】
上記(II−1)式で表される脂肪族ジオール又は脂環式ジオールの具体例としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好適に挙げられる。得られる共重合体の物性の面から、特に1,4−ブタンジオールであることが好ましい。これらは単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。
【0031】
上記(III)式の脂肪族ジカルボン酸単位に相当する脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体としては、下記(III−1)式で表される脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体、又はそれらの炭素数1〜4の低級アルコールエステル、例えばジメチルエステル等、若しくはそれらの酸無水物があげられる。
【0032】
(III−1) HOOC−R3−COOH
式中、R3は直接結合、又は2価の脂肪族炭化水素基を示し、好ましくは、−(CH2)m−(但し、mは0又は1〜10の整数、好ましくは0または1〜6の整数を示す。)があげられる。
【0033】
上記(III−1)式で示される脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、及びそれらの低級アルコールエステル、無水コハク酸、無水アジピン酸等が挙げられる。これらの中でも、得られる脂肪族ポリエステル共重合体の物性の面から、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸またはこれらの無水物、又はこれらの低級アルコールエステルが好ましく、特にはコハク酸、無水コハク酸、またはこれらの混合物が好ましい。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0034】
上記の脂肪族ポリエステル共重合体の含有比は、(I)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位が0.02〜30モル%であり、他の構成成分である(II)式で表される脂肪族または脂環式ジオール単位、及び(III)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位は70〜99.98モル%である。(I)式で示される単位が0.02モル%より少ないと、分解速度が低下する傾向にある。一方、30モル%より多いと、結晶性が失われ、成形性が劣る。
【0035】
(II)式で表される脂肪族または脂環式ジオール単位、及び(III)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位の含有比は、特に限定されないが、総モル比で(I)/(II)/(III)=0.02〜30/35〜49.99/35〜49.99が好ましい。
【0036】
上記脂肪族ポリエステル共重合体の数平均分子量は、1万〜20万がよく、3万〜20万が好ましい。1万より少ないと、衝撃性等の実用物性が劣化する。一方、20万より多いと、粘度が高くなり成形加工性が劣化する。
【0037】
上記脂肪族ポリエステル共重合体は、単独の共重合体を用いてもよいが、上記のガラス転移温度、(Tm−Tc)の値、MFR等の要件を満たす上で、かつ、得られるフィルムの破断強度が後述する範囲を満たすために、2種類以上の脂肪族ポリエステル共重合体をブレンドすることもできる。
【0038】
次に、上記脂肪族ポリエステル共重合体から生分解性フィルムを製造する方法について説明する。この生分解性フィルムは、高強度を有するため、縦横の物性の異方性が少ないフィルムとする必要がある。このような生分解性フィルムを製造するには、成形温度、ブロー比、引き取り速度、冷却風量、さらには冷却にかかわる点では押出量等、脂肪族ポリエステルフィルムの製膜条件を、適切に選定する必要がある。
【0039】
[成形温度]
インフレーション法等の製膜法では、上記脂肪族ポリエステル共重合体のペレットまたは粉末をホッパーより押出機に投入し、溶融させて環状ダイより押し出し引き取る。従って、押出成形温度は、通常、脂肪族ポリエステル共重合体の溶融温度以上かつ250℃を超えない範囲が選択される。250℃を超えると、脂肪族ポリエステル共重合体の熱分解又は加水分解の進行が速まる。好ましくは、230℃以下である。
【0040】
[ブロー比・引き取り速度]
インフレーション法において、環状ダイより押し出されたフィルムは、ダイリップの口径よりも数倍の口径を有する円筒状に膨らまされる。この比をブロー比と言い、次式で表される。
ブロー比=フィルム口径/ダイリップ口径
【0041】
ブロー比が高ければ、フィルムは相応に幅方向(横方向)に延伸され、高分子鎖は横方向に配向される。一方、フィルムは縦方向に引き取られているため、縦方向にも延伸され、縦配向をも生じる。従って、引き取り速度およびブロー比の加減によって溶融樹脂膜は2軸配向し、同時に配向による結晶化をも促進して、フィルム物性は向上する。ここで、ブロー比を抑え、引き取りを強調させるとフィルムは縦配向が高くなり、そのため縦方向の強度は向上するものの、同方向に引き裂かれ易くなり、耐衝撃性も低下する。逆に、ブロー比を強調しすぎても、同様に破れ易くなる。
【0042】
上記ブロー比は、2〜6の範囲内に制御するのがよく、2.5〜5の範囲内に制御するのが好ましい。ブロー比が2以下では、縦方向に裂け易いフィルムとなり、ブロー比が6以上では横方向の配向が長じ、横方向に裂け易いフィルムとなる。いずれにしても、僅かな衝撃でどちらか一方にフィルムが裂け易く、耐衝撃性の低いフィルムとなる。
【0043】
[引き取り速度、冷却風量、押出量等]
また、引き取りによる縦方向への配向の制御も考慮すると、ブロー比を上記の範囲に設定するとともに、溶融樹脂の吐出口となる環状ダイのリップギャップに対して、成形するフィルムの厚みを0.002〜0.025倍の範囲にするのがよく、0.008〜0.020倍の範囲にするのが好ましい。この範囲を下回ると、引き取りによる配向が極めて高くなり、ブロー比を少々かせいだところでフィルムの物性は縦方向に長じてしまう。その分、ブロー比をさらに増大させることで縦横の配向バランスを取ることも考えられるが、配向による結晶化が増大し過ぎて、ブロー比を上げることが困難となる。一方、上記の範囲を上回ると、縦方向の配向は低くなり、横配向の大きなフィルムとなる。バランスをとるためブロー比を下げることになり、これでは物性を、具体的には強度を増大させる効果がなくなる。要するに、上記範囲内になるように、引き取り速度、冷却風量、押出量等を制御することにより、フィルムの縦横の配向バランスのよい、耐衝撃性の優れたフィルムを得ることができる。
【0044】
上記の条件下で製造される生分解性フィルムは、縦・横ともに45MPa以上の破断強度を有するものがよく、55MPa以上が好ましい。45MPa未満だと、耐衝撃性に劣る。
【0045】
さらに、縦方向・横方向の破断強度の比率は、1.5以下であり、1.4以下が好ましい。縦方向・横方向の破断強度の比率が1.5以下であれば、縦方向・横方向の破断強度のバランスがとれていることを示し、衝撃を受けても縦方向あるいは横方向に裂けることがない。なお、縦方向・横方向の破断強度の比率とは、フィルム縦方向の破断強度とフィルム横方向の破断強度とのうち、値の小さい方を分母とし、値の大きい方を分子として、得られる分数の値である。
【0046】
【実施例】
以下に実施例を示すが、これらによりこの発明はなんら制限を受けるものではない。なお、後記各実施例および比較例中に示す測定、評価は次に示すような条件で行った。
【0047】
(1)ガラス転移温度Tg、結晶化温度Tc、及び結晶化熱量ΔHc
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7を用いて測定した。試料10mgをセットし、昇温速度10℃/分で160℃まで昇温し、その温度で2分間保持して試料を完全に融解させた。その後、降温速度10℃/分で降温したときのDSC曲線に現れる結晶化による発熱ピーク温度を結晶化温度Tcとし、その面積からΔHcをJIS K7122に基づいて求めた。さらに降温を続け、いったん−60℃まで下げて2分間保持し、再度10℃/分で昇温を行い、JIS K7121に基づいて、転移曲線の中間値をガラス転移温度Tgとして求めた。なお、0℃以下の測定を行うための冷却媒体として、液体窒素を用いた。
【0048】
(2)引張破断強度及び破断伸度
東洋精機株式会社テンシロン2型引張試験機を用いて、JIS Z1702の引張試験に基づいて測定を行った。試験片は、中央部が幅10mmのダンベル形を用い、チャック間距離40mm、引張速度500mm/分、温度23℃、相対湿度50%下で測定を行った。フィルムの流れ方向をMD(縦)、それに対して直角方向をTD(横)と表記した。
【0049】
(3)メルトフローレート(MFR)
宝工業株式会社製メルトインデクサーを使用し、JIS K7210に基づき測定した。試験条件は、温度190℃、荷重2.16kgで行った。MFRは、10分間あたりに流れ出る樹脂の重さで表し、値が低いほど、溶融粘度が高いことを示す。
【0050】
(4)耐衝撃性
高さ790mm×縦900mm×横900mm、重さ約5kgのエッジを丸めたSUS製重りを、一片の長さ2000mmの3方シールした生分解性フィルム製袋に入れて、開口部をセロハンテープで密封した。シールはインパルス式卓上シーラーで0.5秒間通電して行った。さらに、ポリプロピレン製バンドで重り一周分くくりつけて、袋と重りがずれないようにした。この袋に入った重りを、IMV社製小型加振機システムVS−20−3型式の振動発生器(VE−20型)上に載せ、最大加速度5Gで30分間振動を与えた後、フィルムの外観を観察した。重りが袋内で振動し、袋に衝撃を与えることになる。フィルムが引き裂かれ易いと、耐衝撃性が低いことを表す。
【0051】
(5)総合評価
上記の破断強度と耐衝撃性との両方共良好なものを○、少なくとも一方が良くなかったものを×とした。
【0052】
(製造例)製膜原料の調製
以下に示す実施例および比較例においては、それぞれ使用する樹脂100重量部に対し、滑剤を0.5重量部練りこみ、これをマスターバッチとした。滑剤には、成形後のフィルムの滑り性、耐ブロッキング性を促すため、エチレンビスステアリン酸ビスアミドを用いた。上記マスターバッチは、40mmφ同方向2軸押出機を用い、所定の温度で混練してストランド状に押し出し、水冷却した後、連続式カッターでペレット状に作成した。各マスターバッチは、その4倍量の各樹脂と混合し、除湿乾燥機で70〜100℃で乾燥した後、製膜原料とした。従って、製膜原料は、約0.05重量%の滑剤を含むこととなる。
【0053】
(製膜装置)
製膜装置として、LLDPE用インフレーション製膜装置を用いた。装置の概要は以下の通りであった。
押出機 :40mmφ単軸押出機
スクリュー :フルフライトスクリュー(圧縮比3.5)
ダイ :口径100mmφの環状ダイ
エアーリング:3重空冷式(300mmφブロワー使用)
【0054】
(実施例1)
攪拌装置、窒素導入管、加熱装置、温度計及び助剤添加口を備えた容量150リットルの反応容器に、コハク酸を59.1kg、1,4−ブタンジオールを49.6kg、90%L−乳酸水溶液を5.0kg、テトラブトキシゲルマニウム0.18μリットルを仕込んだ。容器内容物を攪拌下、窒素ガスを導入し、窒素ガス雰囲気下185℃に昇温し、この温度で50分間反応させたあと、20mmHgの減圧下において、1.8時間反応させた。引き続いて温度を220℃とし、0.5mmHgの減圧下において2時間重合を行った。得られた脂肪族ポリエステル共重合体(以下、「PBSL」と略する。)の1H−NMRによるポリマー組成は、乳酸単位4.4モル%、1,4−ブタンジオール単位47.8モル%、コハク酸単位47.8モル%であり、数平均分子量(Mn)は69,000であった。このPBSLを上記の製造例における樹脂として用い、製膜原料を調製し、上記製膜装置を用いて製膜を行った。押出量は20kg/時間で、ブロー比は4(フィルム口径約400mmφ)、リップギャップは3mm、フィルムの引き取り速度を7.1m/分に設定し、約30μm厚みのフィルムを作製した。このときの押出温度は180℃、室内の温度は25℃で一定に保持した。
破断強度、耐衝撃性、その他諸物性の測定、評価結果を表1に示す。その結果、無延伸フィルムではおよそ38MPaであった破断強度が、縦、横それぞれ58MPa、68MPaと向上し、耐衝撃性も優れていた。
【0055】
(実施例2、3)
ブロー比をそれぞれ2.5及び5とし、そのときのリップギャップをそれぞれ6mm及び1.5mmとし、フィルムの引き取り速度をそれぞれ11.5m/分及び5.3m/分に設定した以外は、実施例1と同様にして、30μm厚みのフィルムを作製した。評価結果を表1に示す。その結果、優れた性質を持つことがわかる。
【0056】
(比較例1、2)
ブロー比をそれぞれ1.5及び6.5とし、そのときのフィルムの引き取り速度をそれぞれ19.2m/分及び4.7m/分とした以外は実施例1と同様にして、30μm厚みのフィルムを作製した。結果を表1に示す。ともに、ブロー比が本発明の範囲内にない。比較例1は縦方向の強度が本発明範囲外であり、比較例2は縦方向・横方向の破断強度の比率が本発明範囲外である。
【0057】
(比較例3、4)
リップギャップを、それぞれ20mm及び1mmに設定した以外は、実施例1と同様にして製膜した。結果を表1に示す。(フィルム厚み/リップギャップ)の比がともに本発明の範囲外である。そして、縦方向・横方向の破断強度の比率が本発明範囲外である。
【0058】
(比較例5)
MFRが0.4のポリ乳酸であるラクティ1000を使用し、実施例2と同様にして製膜した。結果を表1に示す。得られたフィルムは剛性に富むフィルムであった。フィルムを製袋して、評価した結果容易に破れた。ガラス転移温度が59℃と高く、本発明の範囲外にある。
【0059】
【表1】
【0060】
【発明の効果】
この発明によると、原料樹脂として、所定の要件を有する脂肪族ポリエステル共重合体を用い、所定の破断強度を有するフィルムを用いるので、より高強度をもつフィルムを得ることができる。
【0061】
また、インフレーション成形による強度・耐衝撃性等の物性上優れた生分解性プラスチックフィルムとその製造方法の提供が可能となった。
【発明の属する技術分野】
この発明は、脂肪族ポリエステル共重合体からなる生分解性インフレーションフィルムおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のプラスチック製品の多く、特にプラスチック包装材は、使用後すぐに棄却されることが多く、その処理問題が指摘されている。一般包装用プラスチックとして代表的なものとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等があげられるが、これら材料は燃焼時の発熱量が高く、焼却処理中に燃焼炉を傷める恐れがある。また、ポリ塩化ビニルは、現在でも使用量の多い材料であるが、自己消火性のため燃焼することができない。このような焼却できない材料も含め、プラスチック製品は埋立処理されることが多いが、その化学的、生物的安定性のため殆ど分解せず残留し、埋立地の寿命を短くすること等の問題を起こしている。従って、燃焼熱量が低く、土壌中で分解し、かつ安全な材料が望まれ、多くの研究がなされている。
【0003】
ところで、熱可塑性樹脂製フィルムは、一般に、原料の熱可塑性樹脂を押出機で加熱、混練して溶融され、ダイより押し出されて所望の厚みのフィルムに成形することにより製造される。このフィルムの中でも、ポリオレフィン類をはじめナイロンやポリ塩化ビニル等の多くの熱可塑性樹脂からなるフィルムの製造法としては、TダイやIダイ等により溶融押し出した後、キャストロールに導かれて冷却することにより、フラット状のいわゆるキャストフィルムとして製膜される方法が、最も一般的に採用されている。さらに、このキャストフィルムをロールや加熱炉(テンター等)に導き、加熱して1軸方向又は縦横2軸方向に延伸し、1軸配向フィルム又は2軸配向フィルムを製造することができる。この配向フィルムは、強度、伸びさらには透明性等の物性の向上を促進し、さらにある温度以上で収縮するシュリンクフィルムとして機能性を付与することができる。
【0004】
上記のフラットフィルムを2方シールまたは3方シールして袋にすることもできる。これに対し、袋状物をより優位に製造する方法としては、フィルムを円筒状に製造し、ボトムシールを行う方法が知られている。このフィルムを円筒状に製造する方法としては、押出機で溶融した樹脂を丸ダイより上向きまたは下向きに引き取り、空気や水を冷媒として冷却固化して製膜する、いわゆるインフレーション法がある。さらに、この工程で一旦固化したフィルムを再度加熱し、縦横適度に延伸して配向フィルムを得る方法、インフレーション延伸法がある。このインフレーション延伸法で得られる配向フィルムは、フラットフィルム同様、物性の向上や収縮性の付与等の高性能・高機能化が可能となる。
【0005】
プラスチック製袋の使用目的としては、内容物を一つにまとめて運搬したり、内容物の保護を主とする。従って、使用中に容易に破れたりする等の不具合が生じないことが重要であり、フィルムの強度、耐衝撃性に優れている方が好ましい。さらに、同じ物性を持つなら、フィルムの厚みは、薄い方が材料コストを安価にすることができ有益である。この点から、インフレーション延伸法で製造したフィルムが好適であるが、必要以上にフィルムが収縮する等の品質上の安定性に問題を生じたり、再加熱工程を必要とするため、製造コストおよび設備コストがかかる等の不利な点もある。また、前者のインフレーション成形では、インフレーション延伸成形ほどではないが、製造条件次第では物性の向上を望めることもある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、プラスチック製袋に使用されるフィルムは、上記のように円筒状で成形されるインフレーション成形が最も汎用的ではあるが、必ずしも、高強度をもったフィルムを得る製造方法とは言い難い。
【0007】
一般にインフレーション成形では、ダイより溶融樹脂を引き取って媒体で冷却される間に縦横ある程度延伸される効果が働き、フィルムを構成する分子が配向する。この配向の度合いは、原料樹脂の溶融粘度と冷却過程における固体化の相違、並びにブロー比に代表されるような延伸倍率等によって変化する。
【0008】
すなわち、インフレーション成形では、原料樹脂ごとに成形条件を決定することは重要であり、このことは汎用樹脂とは異なりインフレーション成形が充分に検討されていない生分解性樹脂にとっては特に、重要である。
【0009】
そこで、この発明は、生分解性樹脂の中でも脂肪族ポリエステル共重合体の成形条件を特定化することにより、高強度をもつフィルムを得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、所定の要件を満たす脂肪族ポリエステル共重合体を、溶融樹脂の吐出口となるダイのリップギャップの0.002〜0.025倍で、かつブロー比が2〜6となるように制御してインフレーション成形することにより、上記課題を解決したのである。
【0011】
上記の脂肪族ポリエステル共重合体としては、下記の(a)〜(c)の要件を満たすものが用いられる。
(a)ガラス転移温度が0℃以下で、一定速度で昇温した場合の示差走査型熱量計の測定による融点Tmと、融解状態から一定速度で冷却したときの示差走査型熱量計の測定による結晶化温度Tcとの差(Tm−Tc)が50℃以下であり、JIS K 7210に基づき、試験温度190℃、試験荷重2.16kgの条件で測定したメルトフローレートが8g/10分以下である。
(b)下記(I)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位を0.02〜30モル%含有すると共に、他の構成成分として、下記(II)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール単位、及び下記(III)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位を含有する。
(I)−O−R1−CO−(式中、R1は2価の脂肪族炭化水素基)
(II)−O−R2−O−(式中、R2は2価の脂肪族炭化水素基または2価の脂環式炭化水素基)
(III)−OC−R3−CO−(式中、R3は直接結合または2価の脂肪族炭化水素基)
(c)数平均分子量が1万〜20万である。
【0012】
上記の製造方法を採用することにより、製造される生分解性インフレーションフィルムの破断強度が、縦方向・横方向ともに、45MPa以上であり、かつ、縦方向・横方向の破断強度の比率が1.5以下となり、十分な高強度をもつフィルムを得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を説明する。
この発明にかかる生分解性インフレーションフィルムは、脂肪族ポリエステル共重合体をインフレーション成形することによって製造されるフィルムである。
【0014】
上記脂肪族ポリエステル共重合体は、所定のガラス転移温度、融点Tmと結晶化温度Tcとの差、及びメルトフローレートを有する。
上記ガラス転移温度は、0℃以下がよく、−10℃以下が好ましい。ガラス転移温度が0℃より高いと、フィルムが保存される環境でフィルム自体の剛性が変化し、違和感を生じる。例えば、夏場あるいは冬場でフィルムの感触が異なることになる。なお、上記ポリエステル共重合体は、通常、ガラス転移温度が−100℃以上のものが使用される。
【0015】
上記融点Tmとは、示差走査型熱量計(以下、「DSC」と略する。)を用いた測定で、一定速度で昇温した場合の融解時点における温度をいう。また、上記結晶化温度Tcは、同様にDSCを用いた測定で、融解状態から一定速度で冷却した場合の結晶化時点における温度をいう。
【0016】
上記融点Tmと結晶化温度Tcとの差(Tm−Tc)は、結晶化速度に影響を与える。すなわち、(Tm−Tc)の差が小さいほど、短い時間に結晶化をすることにつながり、(Tm−Tc)の差が大きいと、結晶化に長時間必要となる。
【0017】
これは、フィルム加工、特にインフレーション法において、配向性等に影響を与える。すなわち、環状ダイから溶融樹脂が引き取られる工程で、まず溶融樹脂の高分子鎖は縦配向が起こり、次いで横方向に膨らまされることで横配向が形成され、縦横ともに配向したフィルムを得るのが通常である。これに対し、結晶化速度が速くかつ結晶化熱量が大きくなると、縦配向過程で結晶化が増大し、かろうじて横方向に非晶部が配向するものの、大部分は縦配向のまま結晶化が終了し、同時にフィルムの幅が一定になる。このため、縦方向の物性のみが長じたフィルムができあがってしまうのである。
【0018】
このためは、(Tm−Tc)は、50℃以下でよく、30℃以下が好ましい。50℃より大きいと、結晶化が遅すぎ、ガラス転移温度0℃以下の脂肪族ポリエステル共重合体では、一向に溶融樹脂の腰(弾性率)が上がらず、フィルム幅が安定しないばかりか、樹脂の溶融張力不足でフィルムを引き上げることも困難となる。上記範囲を満たすことにより、縦横の分子鎖の配向、ひいては縦横の物性の異方性の少ないフィルムとすることができ、その強度をより高いものとすることができる。
【0019】
上記の縦横の分子鎖の配向ひいては縦横の物性の異方性の少ないフィルムを得るため、上記の結晶性の条件ほか、溶融粘度を考慮して樹脂を選定することが重要である。すなわち、空冷インフレーションでは、上向きに溶融樹脂を引き取るため、十分な溶融粘度、さらには溶融張力がなければ引き取ることが困難となる。このため、溶融させる温度を低めにし、溶融粘度・溶融張力を向上させる方法を採ることもできる。この溶融粘度及び溶融張力は、樹脂の分子量並びに分子の分岐構造の程度に大きく依存している。分子量が大きければ一定温度では溶融粘度は高くなり、分岐構造特に長鎖分岐構造を持つものほど高分子鎖間の絡み合いが大きく、溶融粘度および溶融張力の増加をもたらす。さらにこの絡み合いが大きいほど、成形性は低下するがダイから押し出されて、結晶化するまでの間の延伸効果が高く、強度・伸びの向上を促す。
【0020】
この溶融粘度の目安として、上記メルトフローレート(以下、「MFR」と略する。)を用いることができる。このMFRは、JIS K 7210(熱可塑性プラスチックの流れ試験)に基づき、試験温度190℃、試験荷重2.16kgの条件(上記JIS規格に記載の第4条件)で測定した値をいう。このMFRは、8g/10分以下がよく、6g/10分以下が好ましい。MFRが8g/10分を上回ると、上記溶融粘度が低くなりすぎるため引き取りが困難となる。さらに、MFRが高すぎる場合、高分子鎖が短く、高分子鎖間の絡み合いが小さいために、溶融樹脂の引き取り工程で高分子鎖が配向し難く、フィルム物性向上につながらない。MFRが8g/10分以下であれば、少なくとも押出温度を適宜設定することにより、高分子鎖の絡み合いが高くなり分子配向し易く、物性向上につながる。なお、上記MFRの下限は、上記脂肪族ポリエステル共重合体の成形において、ダイから押出しすることが可能な値を採用することができる。
【0021】
上記の要件を満たす脂肪族ポリエステル共重合体としては、下記の(I)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位を含有すると共に、(II)式で表される脂肪族または脂環式ジオール単位、及び/又は(III)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位を含有し、生分解性を有する共重合体が用いられる。
【0022】
(I)−O−R1−CO−
式中、R1は2価の脂肪族炭化水素基を示す。
(II)−O−R2−O−
式中、R2は2価の脂肪族炭化水素基または2価の脂環式炭化水素基を示す。
(III)−OC−R3−CO−
式中、R3は直接結合または2価の脂肪族炭化水素基を示す。
【0023】
上記(I)式の脂肪族オキシカルボン酸単位に相当する脂肪族オキシカルボン酸としては、分子中に1個の水酸基とカルボン酸基を有する脂肪族化合物であれば特に限定されるものではなく、この分子中に1個の水酸基とカルボン酸基を有する脂肪族化合物として、下記(I−1)式で示される脂肪族オキシカルボン酸を用いると、重合反応性向上効果が認められる点で特に好ましい。
【0024】
(I−1) HO−R1−COOH
式中、R1は2価の脂肪族炭化水素基で表わされるものをいう。
【0025】
上記(I−1)式で示される脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、あるいはこれらの混合物が挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体、またはラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体、または水溶液であってもよい。これらの中で好ましいのは、乳酸またはグリコール酸であり、特に好ましいのは、使用時の重合速度の増大が特に顕著で、かつ入手の容易な乳酸またはグリコール酸である。形態は、30〜95%の水溶液のものが容易に入手することができるので好ましい。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。
【0026】
上記(II)式の脂肪族または脂環式ジオール単位を含有するジオールとしては、特に限定されないが、下記(II−1)式で示される脂肪族ジオール又は脂環式ジオールがあげられる。
【0027】
(II−1) HO−R2−OH
式中、R2は、2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環式炭化水素基を有するジオールを示す。好ましい上記2価の脂肪族炭化水素基としては、R2が下記(II−2)式で表される脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0028】
(II−2) −(CH2)n−
式中、nは2〜10の整数を示す。中でも特に好ましいのは、nが2〜6の脂肪族炭化水素基である。
【0029】
また、好ましい2価の脂環式炭化水素基としては、上記式のR2が炭素数3〜10の脂環式炭化水素基であり、中でも特に好ましいのは4〜6の2価の脂環式炭化水素基である。
【0030】
上記(II−1)式で表される脂肪族ジオール又は脂環式ジオールの具体例としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好適に挙げられる。得られる共重合体の物性の面から、特に1,4−ブタンジオールであることが好ましい。これらは単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。
【0031】
上記(III)式の脂肪族ジカルボン酸単位に相当する脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体としては、下記(III−1)式で表される脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体、又はそれらの炭素数1〜4の低級アルコールエステル、例えばジメチルエステル等、若しくはそれらの酸無水物があげられる。
【0032】
(III−1) HOOC−R3−COOH
式中、R3は直接結合、又は2価の脂肪族炭化水素基を示し、好ましくは、−(CH2)m−(但し、mは0又は1〜10の整数、好ましくは0または1〜6の整数を示す。)があげられる。
【0033】
上記(III−1)式で示される脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、及びそれらの低級アルコールエステル、無水コハク酸、無水アジピン酸等が挙げられる。これらの中でも、得られる脂肪族ポリエステル共重合体の物性の面から、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸またはこれらの無水物、又はこれらの低級アルコールエステルが好ましく、特にはコハク酸、無水コハク酸、またはこれらの混合物が好ましい。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0034】
上記の脂肪族ポリエステル共重合体の含有比は、(I)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位が0.02〜30モル%であり、他の構成成分である(II)式で表される脂肪族または脂環式ジオール単位、及び(III)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位は70〜99.98モル%である。(I)式で示される単位が0.02モル%より少ないと、分解速度が低下する傾向にある。一方、30モル%より多いと、結晶性が失われ、成形性が劣る。
【0035】
(II)式で表される脂肪族または脂環式ジオール単位、及び(III)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位の含有比は、特に限定されないが、総モル比で(I)/(II)/(III)=0.02〜30/35〜49.99/35〜49.99が好ましい。
【0036】
上記脂肪族ポリエステル共重合体の数平均分子量は、1万〜20万がよく、3万〜20万が好ましい。1万より少ないと、衝撃性等の実用物性が劣化する。一方、20万より多いと、粘度が高くなり成形加工性が劣化する。
【0037】
上記脂肪族ポリエステル共重合体は、単独の共重合体を用いてもよいが、上記のガラス転移温度、(Tm−Tc)の値、MFR等の要件を満たす上で、かつ、得られるフィルムの破断強度が後述する範囲を満たすために、2種類以上の脂肪族ポリエステル共重合体をブレンドすることもできる。
【0038】
次に、上記脂肪族ポリエステル共重合体から生分解性フィルムを製造する方法について説明する。この生分解性フィルムは、高強度を有するため、縦横の物性の異方性が少ないフィルムとする必要がある。このような生分解性フィルムを製造するには、成形温度、ブロー比、引き取り速度、冷却風量、さらには冷却にかかわる点では押出量等、脂肪族ポリエステルフィルムの製膜条件を、適切に選定する必要がある。
【0039】
[成形温度]
インフレーション法等の製膜法では、上記脂肪族ポリエステル共重合体のペレットまたは粉末をホッパーより押出機に投入し、溶融させて環状ダイより押し出し引き取る。従って、押出成形温度は、通常、脂肪族ポリエステル共重合体の溶融温度以上かつ250℃を超えない範囲が選択される。250℃を超えると、脂肪族ポリエステル共重合体の熱分解又は加水分解の進行が速まる。好ましくは、230℃以下である。
【0040】
[ブロー比・引き取り速度]
インフレーション法において、環状ダイより押し出されたフィルムは、ダイリップの口径よりも数倍の口径を有する円筒状に膨らまされる。この比をブロー比と言い、次式で表される。
ブロー比=フィルム口径/ダイリップ口径
【0041】
ブロー比が高ければ、フィルムは相応に幅方向(横方向)に延伸され、高分子鎖は横方向に配向される。一方、フィルムは縦方向に引き取られているため、縦方向にも延伸され、縦配向をも生じる。従って、引き取り速度およびブロー比の加減によって溶融樹脂膜は2軸配向し、同時に配向による結晶化をも促進して、フィルム物性は向上する。ここで、ブロー比を抑え、引き取りを強調させるとフィルムは縦配向が高くなり、そのため縦方向の強度は向上するものの、同方向に引き裂かれ易くなり、耐衝撃性も低下する。逆に、ブロー比を強調しすぎても、同様に破れ易くなる。
【0042】
上記ブロー比は、2〜6の範囲内に制御するのがよく、2.5〜5の範囲内に制御するのが好ましい。ブロー比が2以下では、縦方向に裂け易いフィルムとなり、ブロー比が6以上では横方向の配向が長じ、横方向に裂け易いフィルムとなる。いずれにしても、僅かな衝撃でどちらか一方にフィルムが裂け易く、耐衝撃性の低いフィルムとなる。
【0043】
[引き取り速度、冷却風量、押出量等]
また、引き取りによる縦方向への配向の制御も考慮すると、ブロー比を上記の範囲に設定するとともに、溶融樹脂の吐出口となる環状ダイのリップギャップに対して、成形するフィルムの厚みを0.002〜0.025倍の範囲にするのがよく、0.008〜0.020倍の範囲にするのが好ましい。この範囲を下回ると、引き取りによる配向が極めて高くなり、ブロー比を少々かせいだところでフィルムの物性は縦方向に長じてしまう。その分、ブロー比をさらに増大させることで縦横の配向バランスを取ることも考えられるが、配向による結晶化が増大し過ぎて、ブロー比を上げることが困難となる。一方、上記の範囲を上回ると、縦方向の配向は低くなり、横配向の大きなフィルムとなる。バランスをとるためブロー比を下げることになり、これでは物性を、具体的には強度を増大させる効果がなくなる。要するに、上記範囲内になるように、引き取り速度、冷却風量、押出量等を制御することにより、フィルムの縦横の配向バランスのよい、耐衝撃性の優れたフィルムを得ることができる。
【0044】
上記の条件下で製造される生分解性フィルムは、縦・横ともに45MPa以上の破断強度を有するものがよく、55MPa以上が好ましい。45MPa未満だと、耐衝撃性に劣る。
【0045】
さらに、縦方向・横方向の破断強度の比率は、1.5以下であり、1.4以下が好ましい。縦方向・横方向の破断強度の比率が1.5以下であれば、縦方向・横方向の破断強度のバランスがとれていることを示し、衝撃を受けても縦方向あるいは横方向に裂けることがない。なお、縦方向・横方向の破断強度の比率とは、フィルム縦方向の破断強度とフィルム横方向の破断強度とのうち、値の小さい方を分母とし、値の大きい方を分子として、得られる分数の値である。
【0046】
【実施例】
以下に実施例を示すが、これらによりこの発明はなんら制限を受けるものではない。なお、後記各実施例および比較例中に示す測定、評価は次に示すような条件で行った。
【0047】
(1)ガラス転移温度Tg、結晶化温度Tc、及び結晶化熱量ΔHc
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7を用いて測定した。試料10mgをセットし、昇温速度10℃/分で160℃まで昇温し、その温度で2分間保持して試料を完全に融解させた。その後、降温速度10℃/分で降温したときのDSC曲線に現れる結晶化による発熱ピーク温度を結晶化温度Tcとし、その面積からΔHcをJIS K7122に基づいて求めた。さらに降温を続け、いったん−60℃まで下げて2分間保持し、再度10℃/分で昇温を行い、JIS K7121に基づいて、転移曲線の中間値をガラス転移温度Tgとして求めた。なお、0℃以下の測定を行うための冷却媒体として、液体窒素を用いた。
【0048】
(2)引張破断強度及び破断伸度
東洋精機株式会社テンシロン2型引張試験機を用いて、JIS Z1702の引張試験に基づいて測定を行った。試験片は、中央部が幅10mmのダンベル形を用い、チャック間距離40mm、引張速度500mm/分、温度23℃、相対湿度50%下で測定を行った。フィルムの流れ方向をMD(縦)、それに対して直角方向をTD(横)と表記した。
【0049】
(3)メルトフローレート(MFR)
宝工業株式会社製メルトインデクサーを使用し、JIS K7210に基づき測定した。試験条件は、温度190℃、荷重2.16kgで行った。MFRは、10分間あたりに流れ出る樹脂の重さで表し、値が低いほど、溶融粘度が高いことを示す。
【0050】
(4)耐衝撃性
高さ790mm×縦900mm×横900mm、重さ約5kgのエッジを丸めたSUS製重りを、一片の長さ2000mmの3方シールした生分解性フィルム製袋に入れて、開口部をセロハンテープで密封した。シールはインパルス式卓上シーラーで0.5秒間通電して行った。さらに、ポリプロピレン製バンドで重り一周分くくりつけて、袋と重りがずれないようにした。この袋に入った重りを、IMV社製小型加振機システムVS−20−3型式の振動発生器(VE−20型)上に載せ、最大加速度5Gで30分間振動を与えた後、フィルムの外観を観察した。重りが袋内で振動し、袋に衝撃を与えることになる。フィルムが引き裂かれ易いと、耐衝撃性が低いことを表す。
【0051】
(5)総合評価
上記の破断強度と耐衝撃性との両方共良好なものを○、少なくとも一方が良くなかったものを×とした。
【0052】
(製造例)製膜原料の調製
以下に示す実施例および比較例においては、それぞれ使用する樹脂100重量部に対し、滑剤を0.5重量部練りこみ、これをマスターバッチとした。滑剤には、成形後のフィルムの滑り性、耐ブロッキング性を促すため、エチレンビスステアリン酸ビスアミドを用いた。上記マスターバッチは、40mmφ同方向2軸押出機を用い、所定の温度で混練してストランド状に押し出し、水冷却した後、連続式カッターでペレット状に作成した。各マスターバッチは、その4倍量の各樹脂と混合し、除湿乾燥機で70〜100℃で乾燥した後、製膜原料とした。従って、製膜原料は、約0.05重量%の滑剤を含むこととなる。
【0053】
(製膜装置)
製膜装置として、LLDPE用インフレーション製膜装置を用いた。装置の概要は以下の通りであった。
押出機 :40mmφ単軸押出機
スクリュー :フルフライトスクリュー(圧縮比3.5)
ダイ :口径100mmφの環状ダイ
エアーリング:3重空冷式(300mmφブロワー使用)
【0054】
(実施例1)
攪拌装置、窒素導入管、加熱装置、温度計及び助剤添加口を備えた容量150リットルの反応容器に、コハク酸を59.1kg、1,4−ブタンジオールを49.6kg、90%L−乳酸水溶液を5.0kg、テトラブトキシゲルマニウム0.18μリットルを仕込んだ。容器内容物を攪拌下、窒素ガスを導入し、窒素ガス雰囲気下185℃に昇温し、この温度で50分間反応させたあと、20mmHgの減圧下において、1.8時間反応させた。引き続いて温度を220℃とし、0.5mmHgの減圧下において2時間重合を行った。得られた脂肪族ポリエステル共重合体(以下、「PBSL」と略する。)の1H−NMRによるポリマー組成は、乳酸単位4.4モル%、1,4−ブタンジオール単位47.8モル%、コハク酸単位47.8モル%であり、数平均分子量(Mn)は69,000であった。このPBSLを上記の製造例における樹脂として用い、製膜原料を調製し、上記製膜装置を用いて製膜を行った。押出量は20kg/時間で、ブロー比は4(フィルム口径約400mmφ)、リップギャップは3mm、フィルムの引き取り速度を7.1m/分に設定し、約30μm厚みのフィルムを作製した。このときの押出温度は180℃、室内の温度は25℃で一定に保持した。
破断強度、耐衝撃性、その他諸物性の測定、評価結果を表1に示す。その結果、無延伸フィルムではおよそ38MPaであった破断強度が、縦、横それぞれ58MPa、68MPaと向上し、耐衝撃性も優れていた。
【0055】
(実施例2、3)
ブロー比をそれぞれ2.5及び5とし、そのときのリップギャップをそれぞれ6mm及び1.5mmとし、フィルムの引き取り速度をそれぞれ11.5m/分及び5.3m/分に設定した以外は、実施例1と同様にして、30μm厚みのフィルムを作製した。評価結果を表1に示す。その結果、優れた性質を持つことがわかる。
【0056】
(比較例1、2)
ブロー比をそれぞれ1.5及び6.5とし、そのときのフィルムの引き取り速度をそれぞれ19.2m/分及び4.7m/分とした以外は実施例1と同様にして、30μm厚みのフィルムを作製した。結果を表1に示す。ともに、ブロー比が本発明の範囲内にない。比較例1は縦方向の強度が本発明範囲外であり、比較例2は縦方向・横方向の破断強度の比率が本発明範囲外である。
【0057】
(比較例3、4)
リップギャップを、それぞれ20mm及び1mmに設定した以外は、実施例1と同様にして製膜した。結果を表1に示す。(フィルム厚み/リップギャップ)の比がともに本発明の範囲外である。そして、縦方向・横方向の破断強度の比率が本発明範囲外である。
【0058】
(比較例5)
MFRが0.4のポリ乳酸であるラクティ1000を使用し、実施例2と同様にして製膜した。結果を表1に示す。得られたフィルムは剛性に富むフィルムであった。フィルムを製袋して、評価した結果容易に破れた。ガラス転移温度が59℃と高く、本発明の範囲外にある。
【0059】
【表1】
【0060】
【発明の効果】
この発明によると、原料樹脂として、所定の要件を有する脂肪族ポリエステル共重合体を用い、所定の破断強度を有するフィルムを用いるので、より高強度をもつフィルムを得ることができる。
【0061】
また、インフレーション成形による強度・耐衝撃性等の物性上優れた生分解性プラスチックフィルムとその製造方法の提供が可能となった。
Claims (3)
- 脂肪族ポリエステル共重合体をインフレーション成形することによって製造される生分解性のフィルムにおいて、
上記脂肪族ポリエステル共重合体は、ガラス転移温度が0℃以下であり、一定速度で昇温した場合の示差走査型熱量計の測定による融点Tmと、融解状態から一定速度で冷却したときの示差走査型熱量計の測定による結晶化温度Tcとの差(Tm−Tc)が50℃以下であり、かつ、JIS K 7210に基づき、試験温度190℃、試験荷重2.16kgの条件で測定したメルトフローレートが8g/10分以下であり、
上記フィルムの破断強度が、縦方向・横方向ともに、45MPa以上であり、かつ、縦方向・横方向の破断強度の比率が1.5以下である生分解性インフレーションフィルム。 - 上記脂肪族ポリエステル共重合体が、下記(I)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜30モル%を含有すると共に、他の構成成分として、下記(II)式で表される脂肪族または脂環式ジオール単位、及び下記(III)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位を含有し、かつ、数平均分子量が1万〜20万である請求項1に記載の生分解性インフレーションフィルム。
(I)−O−R1−CO−(式中、R1は2価の脂肪族炭化水素基)
(II)−O−R2−O−(式中、R2は2価の脂肪族炭化水素基または2価の脂環式炭化水素基)
(III)−OC−R3−CO−(式中、R3は直接結合または2価の脂肪族炭化水素基) - 下記(a)〜(c)の要件を満たす脂肪族ポリエステル共重合体を、溶融樹脂の吐出口となるダイのリップギャップの0.002〜0.025倍で、かつブロー比が2〜6となるように制御してインフレーション成形する生分解性インフレーションフィルムの製造方法。
(a)ガラス転移温度が0℃以下で、一定速度で昇温した場合の示差走査型熱量計の測定による融点Tmと、融解状態から一定速度で冷却したときの示差走査型熱量計の測定による結晶化温度Tcとの差(Tm−Tc)が50℃以下であり、JIS K 7210に基づき、試験温度190℃、試験荷重2.16kgの条件で測定したメルトフローレートが8g/10分以下である。
(b)下記(I)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位を0.02〜30モル%含有すると共に、他の構成成分として、下記(II)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール単位、及び下記(III)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位を含有する。
(I)−O−R1−CO−(式中、R1は2価の脂肪族炭化水素基)
(II)−O−R2−O−(式中、R2は2価の脂肪族炭化水素基または2価の脂環式炭化水素基)
(III)−OC−R3−CO−(式中、R3は直接結合または2価の脂肪族炭化水素基)
(c)数平均分子量が1万〜20万である。
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