JP2004059633A - ポリカーボネート樹脂組成物、およびそれより形成された光ディスク基板 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂組成物、およびそれより形成された光ディスク基板 Download PDF

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常守 秀幸
Kunikore Hayashi
林 邦維
Shintaro Nishida
西田 慎太郎
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Abstract

【課題】高剛性、精密転写性、低吸水性および透明性を有するポリカーボネート樹脂組成物、それからのディスク基板およびそれからの光ディスクを提供すること。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂100重量部に対し下記式[1]で表されるベンゾフェノン化合物および/または下記式[2]で表されるジフェニルエタンジオン化合物を0.1〜20重量部含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【化1】
Figure 2004059633

(式中、複数のRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜5のアルコキシ基;シアノ基、ニトリル基、カルボキシアミド基およびカルボキシイミド基からなる群から選ばれた基を表す。)
【化2】
Figure 2004059633

(式中、複数のRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜5のアルコキシ基;シアノ基、ニトリル基、カルボキシアミド基およびカルボキシイミド基からなる群から選ばれた基を表す。)
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高剛性、スタンパー形状に対する精密転写性、低吸水性、透明性を併せ持つポリカーボネート樹脂組成物およびそれから得られた光ディスク基板および光ディスクに関する。さらに詳しくは、CD(コンパクトディスク)やMO(光磁気ディスク)、DVD(Digital Versatile Disk)などの光ディスク分野において精密転写性で且つ、環境変化によるディスクの反りが少ない光ディスク基板および光ディスクに関する。特に本発明は、記録容量の極めて大きな高密度光ディスク用の基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ディスクの記録密度は、CDの0.6GBからDVDの4.7GBと向上の一途を辿っている。しかしながら、情報技術の進展に伴い、光ディスク分野の市場発展は目覚しく、今後はより膨大な情報を記録できる高密度光ディスクの登場が期待されている。例えば、デジタル放送などのハイビジョン映像に対応できる100GBit/inch以上の記録密度を有する光ディスクが要望されている。
【0003】
光ディスクの高密度化は、グルーブもしくはピットの間隔、すなわちトラックピッチを狭めてトラック方向の記録密度を高めることで達成される。例えば、CDからDVDへの高密度化へあたっては、トラックピッチを1.6μmから、0.74μmへと狭めることにより記録密度を高める措置がとられている。
【0004】
光ディスク基板は熱可塑性樹脂を射出成形(射出圧縮成形)して製造される。その際、金型に取り付けた、スタンパー上に予め刻印された記録再生信号のもとになる微細な凹凸形状が、スタンパーから基板表面に転写される。従って、基板の成形時にはスタンパーの凹凸形状をいかに精度良く転写できるか、即ち精密転写性が重要となる。特に、高密度光ディスク基板の成形においては、かかる重要性が顕著なものとなる。
【0005】
高密度光ディスクにおいては、高転写率の基板よりなることに加え、従来の光ディスクに比べ、基板の反りや環境変化に対する反り変化が小さいことが、以下の理由により重要となる。高密度化に伴い、レーザーの短波長化およびピックアップレンズが高開口数(NA)化される為、微小な基板の反りでもコマ収差が大きくなり、フォーカスエラーやトラッキングエラーを引き起こすからである。また、高NA化によってピックアップレンズと基板との距離が接近する為、レンズと基板の接触を回避する為にも、基板の反りおよび環境変化による反り変化は小さいことが重要となる。
【0006】
従来、CD(コンパクトディスク)やMO(光磁気ディスク)、DVD(Digital Versatile Disk)などの光ディスクの基板には、透明性、耐熱性、機械的特性および寸法安定性等が優れていることから、ポリカーボネートが使用されてきた。
【0007】
しかしながら、光ディスクの高密度化に伴い、ポリカーボネートから形成された光ディスク基板も、精密転写性と反りの点から十分満足いくものではなくなってきている。
【0008】
転写性の改善の要求に対しては、これまでも成形技術および材料改質の両側面から種々検討がなされてきた。前者については、例えば、基板成形時のシリンダー温度や金型温度を高く設定する方法が有効であることが確認されている。しかしながら、この方法は高温成形であるがゆえに、金型内での冷却時間を長くしなければならず、成形サイクルが伸びて生産性に劣るという問題が発生する。無理に、ハイサイクル化して成形を行なうと、金型から基板を取り出す際に離型不良が生じ、ピットやグルーブが変形する為、逆に、転写精度が低下するという問題が発生する。後者については、例えば、高流動性を付与するためにポリカーボネート樹脂中に低分子量体を多く含有させる方法(特開平9−208684号公報、特開平11−1551号公報など)、あるいは特定の長鎖アルキルフェノールを末端停止剤として使用する方法(特開平11−269260号公報など)が提案されている。しかし、この低分子量体の含有量を増加する方法、あるいは、長鎖アルキルフェノールによる末端基の改変方法は、一般に熱安定性の低下が大きく、したがって、成形時に熱分解を促進する結果、ディスク基板の機械的強度が著しく低下して、金型からの突出し力により基板の割れを生じたり、また光ディスク基板の取り扱い時にも基板の破損が起こることになる。
【0009】
この様に従来の技術は、いずれも樹脂の流動性を向上させることによる転写性の改善効果を狙ったものであるが、実用に耐えうる基板を高効率で得られるものではなかった。
【0010】
一方、反りの改善要求に対しても、成形技術および材料改質の両側面から種々検討がなされてきた。前者については、成形条件を詳細に調整することによって、基板の反りを小さく抑え込むことができるが、同時にスタンパー形状を精密に転写させるのは困難であった。後者については、曲げまたは引張り弾性率が高い剛性のある材料を使用する事が有効であることが知られている。この為、ポリカーボネート樹脂の剛性を改良することを目的として、ガラス繊維や充填材などの添加物を配合する手法が試みられている。しかし、上記添加物は、ポリカーボネート樹脂の剛性を向上させるが、射出成形時の流動性を低下させる傾向にあるため、転写精度が低下するという問題があった。さらに、成形品表面に浮き出ることが多く、基板の外観不良の原因になるという問題もあった。
【0011】
環境変化に対する反りについては、吸水変形を抑える為に、特開2000−11449号公報では、“基板と、この基板に配置されて情報信号を記録する為の記録層とその記録層に積層される透明保護層を有し、透明保護層側から光を入射する事で情報信号の記録/再生を行なうディスク状の情報記録媒体であり、この基板は、樹脂製のコア層と、コア層に一体となっており、一方の面に記録層側の情報信号の凹凸が存在し、コア層に比べて流動性を有する樹脂製の表層とから構成されていることを特徴とする情報記録媒体”であって、基板表層の吸水率を0.3%以下の樹脂を用いる基板が提案されており、ニ色成形、サンドイッチ成形による複雑な基板構成で問題を解決する方向が示されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高剛性、スタンパー形状に対する精密転写性、低吸水性、透明性を併せ持つポリカーボネート樹脂組成物およびそれから得られた、高転写率で、且つ、環境変化に対して反りにくい光ディスク基板および光ディスク、とりわけ高密度光ディスク用基板を提供する事を目的とするものである。
【0013】
ここで、本発明における「精密転写性」とは、透明熱可塑性樹脂成形材料を用いて射出成形により光ディスク基板を製造する場合に、スタンパーに刻印された微細な凹凸形状を忠実に転写することができる性質のことである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
以下、本発明を詳細に説明する。上記課題を解決する為に、本発明では、ポリカーボネート樹脂100重量部に対しベンゾフェノン化合物(下記式[1])および/またはジフェニルエタンジオン化合物(下記式[2])を0.1〜20重量部含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物および該樹脂からなる光ディスク基板および光記録媒体が提供される。
【0015】
【化3】
Figure 2004059633
【0016】
(式中、複数のRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜5のアルコキシ基、シアノ基、ニトリル基、カルボキシアミド基およびカルボキシイミド基からなる群から選ばれた基を表す。)
【0017】
【化4】
Figure 2004059633
【0018】
(式中、複数のRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜5のアルコキシ基、シアノ基、ニトリル基、カルボキシアミド基およびカルボキシイミド基からなる群から選ばれた基を表す。)
【0019】
ポリカーボネート樹脂にベンゾフェノン化合物および/またはジフェニルエタンジオン化合物を0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜5重量部添加すると、優れた透明性を維持したまま剛性が飛躍的に向上し、さらには吸水性が低減される。また、成形時においては、精密転写性を向上させ、さらには成形基板の環境変化による反りを低減させる。上記ベンゾフェノン化合物および/またはジフェニルエタンジオン化合物を20重量部より過剰に添加すると、ポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度の低下が顕著となり、成形性が悪化する。また添加量が0.1重量部より過小の場合、上記添加剤の効果が発現しない。
【0020】
ベンゾフェノン化合物および/またはジフェニルエタンジオン化合物は2つのベンゼン環がカルボニル基によって結合された化合物であり、ベンゼン環に置換基を有してもよく、特に極性の高い置換基を導入するとポリカーボネート樹脂組成物の剛性を高め、吸水性を低減させる効果がある。かかる極性の高い置換基の例としては、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜5のアルコキシ基、シアノ基、ニトリル基、カルボキシアミド基、カルボキシイミド基などが挙げられる。その中でも特にハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。
【0021】
前記式[1]および[2]において、RおよびRの特に好適な例を示すと、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基、メトキシ基およびエトキシ基を挙げることができる。最も好適な式[1]および[2]で表される化合物は、RおよびRが水素原子である化合物である。
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、通常ニ価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重合法または溶融重合法で反応させて得られるものである。ここで使用されるニ価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール−A)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−オルト−ジイソプロピルベンゼン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタ−ジイソプロピルベンゼン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−パラ−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)4メチルペンタン等が挙げられる、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。特にビスフェノールAタイプの二価フェノールが好ましい。
【0023】
前記ニ価フェノールを使用してポリカーボネートを製造する際に使用されるカーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が挙げられ、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたはニ価フェノールのジハロホルメート等が挙げられるが、ホスゲンまたはジフェニルカーボネートが好ましい。
【0024】
上記ニ価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法または溶融重合法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、ニ価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。
【0025】
界面重合法による反応は、通常ニ価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0026】
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる単官能フェノール類としては、一般にはフェノールまたは低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式[3]
【0027】
【化5】
Figure 2004059633
【0028】
(式中、Aは水素原子または炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはフェニル置換アルキル基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。)
で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0029】
上記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、フェニルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
【0030】
また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族エステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類を使用することができ、これらを用いてポリカーボネート重合体の末端を封鎖すると、これらは末端停止剤または分子量調節剤として機能するのみならず、樹脂の溶融流動性が改良され、成形加工が容易になるばかりでなく、基板としての物性、特に樹脂の吸水率を低くする効果があり、また、基板の複屈折が低減される効果もあり好ましく使用される。なかでも、下記式[4]および[5]
【0031】
【化6】
Figure 2004059633
【0032】
【化7】
Figure 2004059633
【0033】
[式中、Xは−R−CO−O−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5のニ価の脂肪族炭化水素基を示し、nは10〜50の整数を示す。]
で表される長鎖のアルキル基を置換基として有するフェノール類が好ましく使用される。
【0034】
前記式[4]の置換フェノール類としてはnが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。
【0035】
また、前記式[5]の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適であって、その具体例としては例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。
【0036】
これらの末端停止剤は、得られたポリカーボネート樹脂の全末端に対して少なくとも5モル%、好ましくは少なくとも10モル%末端に導入されることが望ましく、また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0037】
溶融重合法による反応は、通常ニ価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応が代表的であり、不活性ガスの存在下にニ価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を10〜0.1Torr(1,300Pa〜13Pa)程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0038】
カーボネートエステルとしては、置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0039】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ニ価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物;アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド類;アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩類;その他に亜鉛化合物類、ホウ素化合物類、アルミニウム化合物類、珪素化合物類、ゲルマニウム化合物類、有機スズ化合物類、鉛化合物類、オスミウム化合物類、アンチモン化合物類、マンガン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせ使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料のニ価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10−8〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−7〜5×10−4当量の範囲で選ばれる。
【0040】
また、かかる重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えばビス(クロロフェニル)カーボネート、ビス(ブロモフェニル)カーボネート、ビス(ニトロフェニル)カーボネート、ビス(フェニルフェニル)カーボネート、クロロフェニルフェニルカーボネート、ブロモフェニルフェニルカーボネート、ニトロフェニルフェニルカーボネート、フェニルフェニルカーボネート、メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよびエトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることが好ましい。なかでも2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく、特に2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく使用される。
【0041】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、10,000〜30,000の範囲内に制御される事が好ましく、12,000〜20,000の範囲内にある事がより好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂光学用成形材料は、光学用材料として十分な強度が得られ、また、成形時の溶融流動性も良好であり成形歪みが発生せず好ましい。過剰に低い分子量では、成形後の基板としての強度に問題が生じ、また逆に過剰に高いと成形時の溶融流動性が悪く、基板に好ましくない光学歪みが増大する。
【0042】
ここで粘度平均分子量は、塩化メチレン100mLにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した20℃溶液を用いて求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めた。
【0043】
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
【0044】
原料ポリカーボネート樹脂は、従来公知の常法(溶液重合法、溶融重合法など)により製造した後、溶液状態において濾過処理を行ない未反応成分等の不純物や異物を除去することが好ましい。
【0045】
本発明の組成物を調製する時には、任意の方法が採用される。例えば溶液状態のポリカーボネート樹脂に、ベンゾフェノン化合物および/またはジフェニルエタンジオン化合物を混合した後、溶媒を留去し、次いでベント式押出機等で溶融ペレット化する方法、または、ポリカーボネート樹脂とベンゾフェノン化合物および/またはジフェニルエタンジオン化合物をスーパーミキサー、タンブラー、ナウターミキサー等で混合し、二軸ルーダー等でペレット化する方法等が用いられる。また、必要に応じて安定剤、酸化防止剤、光安定剤、着色材、滑り材、離型剤等の添加剤を加える事もできる。さらに射出成形に供するためのペレット状ポリカーボネート樹脂を得る押出工程(ペレット化工程)では溶融状態の時に濾過精度10μmの焼結金属フィルターを通すなどして異物を除去することが好ましい。いずれにしても射出成形前の原料樹脂は異物、不純物、溶媒などの含有量を極力低くしておくことが必要である。
【0046】
上記ポリカーボネート樹脂より光ディスク基板を製造する場合には射出成形機(射出圧縮成形機を含む)を用いる。この射出成形機としては一般的に使用されているものでよいが、炭化物の発生を抑制しディスク基板の信頼性を高める観点からシリンダーやスクリューとして樹脂との付着性が低く、かつ耐蝕性、耐摩耗性を示す材料を使用してなるものを用いるのが好ましい。射出成形の条件としてはシリンダー温度300〜400℃、金型温度50〜140℃が好ましく、これらにより光学的に優れた光ディスク基板を得ることができる。成形工程での環境は、本発明の目的から考えて、可能な限りクリーンであることが好ましい。また、成形に供する材料を十分乾燥して水分を除去することや、溶融樹脂の分解を招くような滞留を起こさないように配慮することも重要となる。
【0047】
このように成形された光ディスク基板は、コンパクトディスク(CD)、や光磁気ディスク(MO)、DVDなど現行の光ディスクはもちろん、ディスク基板上に被せた厚さ0.1mmの透明なカバー層を介して記録再生を行うBlu−ray Disc(BD)等に代表される高密度光ディスク用基板としても好適に使用される。
【0048】
本発明のポリカーボネート樹脂光学用成形材料は、高精密転写性に優れているので、グルーブ列もしくはピット列の間隔が0.1μm〜0.8μm、好ましくは0.1〜0.5μm、さらに好ましくは0.1〜0.35μmである光ディスク基板を成形によって容易に得ることが可能となる。またグルーブもしくはピットの光学的深さが、記録再生に使用されるレーザ光の波長λと基板の屈折率nに対してλ/8n〜λ/2n、好ましくはλ/6n〜λ/2n、さらに好ましくはλ/4n〜λ/2nの範囲にある光ディスク基板を得ることができる。かくして記録密度が100Gbit/inch以上である高密度光学ディスク記録媒体の基材を容易に提供することができる。
【0049】
【実施例】
以下、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、何らこれに限定されるものではない。実施例および比較例において「部」は重量部である。なお評価は下記の方法に従った。
【0050】
(1)ガラス転移温度
TAインスツルメント社製の熱分析システム DSC−2910を使用して、窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
【0051】
(2)吸水率
ASTM D−570に従い、φ45mm成形プレートを水中浸漬し重量変化率(重量%)により求めた。
【0052】
(3)曲げ弾性率
ASTM D−790に従い、測定した。
【0053】
(4)転写性
日精樹脂工業製の射出成形機 MO40D−3H、深さ200nm、間隔0.5μm、幅0.2μmの溝が刻まれたスタンパーを用いて、直径120mm、厚さ1.2mmの光ディスク基板を成形した。なお、シリンダー温度は360℃、型締め力は40トン一定とし、金型温度を表1に記載の通り各樹脂ごとに設定した。
上記基板にスタンパーから転写した溝の深さを、原子間力顕微鏡(セイコー電子工業 SPI3700)を用いて、半径40mmの位置にて5箇所を測定した。転写性は、次式で示される転写率として表した。この値が大きいほど転写性に優れている。
転写率(%)=100×ディスクの溝深さ/スタンパーの溝深さ
【0054】
(5)初期機械特性(初期T−Tilt)
日精樹脂工業製の射出成形機 MO40D−3Hを用いて、直径120mm、厚さ1.2mmの光ディスク基板を成形した。その後、射出成形により得られたディスク基板の信号面側に反射膜、誘電体層1、相変化記録膜、誘電体層2をスパッタ蒸着させ、その上にポリカーボネート製薄膜カバー層を貼りあわせ光ディスクを作成した。続いて、ディスクが互いに接触しないようスペーサーを挟み、温度23℃、湿度50%RH環境に2日間以上放置した。熱収縮および環境変化に対するTiltの変化が安定した時点でジャパン・イー・エム(株)製3次元形状測定器DLD−3000UによりTiltの評価を行い、初期機械特性とした。
【0055】
(6)反り変形量の最大値(ΔT−Tiltmax)
初期機械特性を評価した基板を30℃、湿度90%RHの恒温恒湿機に72hr放置した後、このディスクを23℃、湿度50%RHの環境下に移し、その後のディスクの反り変形量の最大値(ΔT−Tiltmax)をジャパン・イー・エム(株)製3次元形状測定器DLD−3000Uにより評価した。
【0056】
実施例1〜3、比較例1〜2
2価フェノール成分がビスフェノールAであり、粘度平均分子量が15,200のポリカーボネート樹脂(帝人化成製)100重量部に対し、添加物を表1に記載した重量部で添加し、均一に混合した。続いて、かかるパウダーをベント式二軸押出機[神戸製鋼(株)製KTX−46]によりシリンダー温度260℃で脱気しながら溶融混練し、樹脂組成物のペレットを得た。この樹脂組成物ペレットを用いて、上記に記載の方法によって、各種物性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0057】
この樹脂組成物のペレットから、日精樹脂工業製の射出成形機MO40D−3H、深さ200nm、間隔0.5μm、幅0.2μmの溝が刻まれたスタンパーを用いて、直径120mm、厚さ1.2mmの光ディスク基板を成形した。なお、シリンダー温度は360℃、型締め力は40トン一定とし、金型温度を表1に記載の通り各樹脂ごとに設定した。このディスク基板を用いて、上記に記載の方法によって、各種基板特性を評価した。評価結果を表1に示す。なお、表1に記載したベンゾフェノン化合物および/またはジフェニルエタンジオン化合物は、下記の通りである。
ベンゾフェノン:和光純薬製 ベンゾフェノン
ジフェニルエタンジオン:和光純薬製 ジフェニルエタンジオン(ベンジル)
【0058】
【表1】
Figure 2004059633
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、特定のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる光記録媒体、とりわけ高密度記録媒体としての、スタンパー形状を高精密に転写し、さらに環境変化による反りの少ない光ディスク基板の提供が可能になり、その奏する効果は甚大である。

Claims (8)

  1. ポリカーボネート樹脂100重量部に対し下記式[1]で表されるベンゾフェノン化合物および/または下記式[2]で表されるジフェニルエタンジオン化合物を0.1〜20重量部含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 2004059633
    (式中、複数のRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜5のアルコキシ基;シアノ基、ニトリル基、カルボキシアミド基およびカルボキシイミド基からなる群から選ばれた基を表す。)
    Figure 2004059633
    (式中、複数のRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜5のアルコキシ基;シアノ基、ニトリル基、カルボキシアミド基およびカルボキシイミド基からなる群から選ばれた基を表す。)
  2. 複数のRまたはRが同一若しくは異なり、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数1〜5のアルコキシ基からなる群から選ばれた基である請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 該ポリカーボネート樹脂は、20℃の塩化メチレン溶液で測定された粘度平均分子量が10,000〜30,000である請求項1または2記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3記載のいずれかのポリカーボネート樹脂組成物よりなる光学用成形材料。
  5. 請求項4記載の光学用成形材料を用いて成形された光ディスク基板。
  6. 請求項4記載の光学用成形材料を用いて成形されたグルーブ列もしくはピット列の間隔が0.1μm〜0.8μmである光ディスク基板。
  7. 請求項4記載の光学用成形材料を用いて成形されたグルーブもしくはピットの光学的深さが、記録再生に使われるレーザー光の波長λと基板の屈折率nに対してλ/8n〜λ/2nの範囲である光ディスク基板。
  8. 請求項5〜7記載のいずれかの光ディスク基板を用いた光学記録媒体。
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